JP5206187B2 - 光半導体装置 - Google Patents
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Description
リング共振器型変調器は、バス導波路にリング状の導波路(リング導波路)を結合した構造になっている。また、リング導波路の周囲には導波路の屈折率を変調するための電極が形成されている。
このようなリング共振器型変調器では、印加電圧に応じて、リング共振器の透過スペクトルにおける遮断波長帯の位置をシフトさせることで、光の変調動作を実現する。
Qianfan Xu et al., "Micrometre-scale silicon electro-optic modulator", Nature, vol. 435, pp.325-327, 19 May 2005
しかしながら、上述のようなリング共振器型変調器では、Q値の大きなリング共振器の共振波長付近における急峻な透過スペクトルの変化を利用することで、印加電圧の変化が小さく(つまり、導波路の屈折率変化も小さく)、透過スペクトルの遮断帯(リング共振器の共振波長)のシフト量が僅かであっても、透過スペクトルのディップ内に設定される動作波長において、透過率が大きく変化し、大きな出力光強度の変化が得られるようにして、十分な消光比を実現する。
このシフト量は、リング共振器を構成するリング光導波路に印加する電圧に応じて生じるリング光導波路の屈折率の変化量に比例する。
そこで、半導体レーザの発振波長と光変調器の共振波長との間の波長合わせを容易に行なえるようにしたい。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態にかかる光半導体装置について、図1〜図13を参照しながら説明する。
本実施形態では、光半導体装置として、光通信用の変調器を含む光集積素子(光半導体装置)を例に挙げて説明する。
図1に示すように、本光集積素子1は、半導体レーザ2と、半導体レーザ2に接続された光共振構造を持つ光変調器(共振器型光変調器)3とを備える。なお、本光集積素子1は、半導体レーザ2と共振器型光変調器3とを集積したものであるため、共振器型変調器集積レーザともいう。
ここでは、波長フィルタ4は、透過型波長フィルタである。具体的には、リング共振器を用いたリング共振器型波長フィルタを用いている。このリング共振器型波長フィルタ4は、2つのバス導波路4A,4Bの間にリング導波路(ここでは3つ)4Cを結合させた構造になっている。このため、本実施形態の半導体レーザは、リング共振器型半導体レーザである。
本実施形態では、光変調器3は、導波路型の光変調器である。具体的には、光共振構造としてリング共振器を備えるリング共振器型光変調器である。
ここで、図2は、リング共振器型変調器3の透過スペクトル、及び、半導体レーザ2の発振スペクトル(レーザ発振スペクトル)を示している。なお、図2では、実線と点線の2本の透過スペクトルが示されているが、これらは、リング共振器3に印加する電圧がローの場合(実線)とハイの場合(点線)に対応している。
本光集積素子1では、半導体レーザ2から入力される連続光(ここでは複数の発振モードの中の一つ)の波長と、例えば、実線(印加電圧がローの場合)の透過スペクトルにおけるディップの波長、即ち、リング共振器の共振波長(リング共振波長;光変調器3の動作波長)とを合わせる。
一方、印加電圧をハイにした場合、リング導波路3Bの屈折率が変化し、これに応じて、リング共振器の共振波長が変化する。この結果、透過スペクトルのディップの位置が、図2中、実線から点線へとシフトする。このシフトによって、半導体レーザ2からの連続光の波長が、透過スペクトルのディップの位置から外れて、透過スペクトルの透過帯上に位置するようになる。この場合、半導体レーザ2からの連続光はリング共振器を透過する。この結果、光変調器3から出力される光の強度がオン状態となる。
例えば図12に示すように、リング共振器型変調器に連続光を供給するのに、単一モード性の優れたDFB(Distributed Feedback)レーザを用いると、DFBレーザは、例えば図13に示すように、レーザ発振スペクトルにおける発振波長の広がり、即ち、線幅が非常に狭いため、この線幅が無視できるほど狭いDFBレーザの発振波長(発振モード)を、例えば0.1nm以下という非常に狭いリング共振器の動作波長帯域に合わせる必要がある。
このような波長合わせを、製造コスト及び消費電力の増大を招くことなく実現することは、実際上、非常に困難である。
つまり、リング共振器型変調器を例えばシリコン基板上に形成し、半導体レーザを例えばInPやGaAsなどの化合物半導体基板上に形成すると、リング共振器型変調器と半導体レーザとは、異なる導波路構造を持つものとして形成されることになる。
そこで、本実施形態では、半導体レーザ2の発振波長(発振モード)を規定する波長フィルタ4と、光変調器3の共振波長を規定する光共振構造とが、同一基板8上に集積され、実質的に同一の導波路構造になっている。
このように、半導体レーザ2の波長フィルタ4と光変調器3の光共振構造とが、同一基板8上に集積され、同一の導波路構造になっているため、例えば、導波路の幅、厚さ、後述のリブ型導波路コアの両側へ延びるスラブ部分の厚さ等において、作製上の誤差が生じても、このような誤差は、半導体レーザ2の波長フィルタ4と光変調器3の光共振構造との間でほぼ同様の量だけ生じることになる。したがって、このような作製上の誤差が、導波路の屈折率に与える変化も両者の間でほぼ同一である。
δλ=λ0(δn/n0)
ここで、λ0は、屈折率変化がない時の共振波長、δnは、作製誤差等によって生じる導波路の屈折率変化、n0は、屈折率変化がない時の導波路の屈折率である。
したがって、導波路の幅や厚さ等の作製上の誤差に対する、光変調器3の共振波長の変化と半導体レーザ2の発振波長の変化は、ほぼ同一であり、両者の間の波長合わせは、このような誤差に対して影響を受けない。
また、例えば、環境温度が変化した場合にも、光変調器3の光共振構造と半導体レーザ2の波長フィルタ4との間で、導波路の屈折率が同じように変化する。この場合、共振波長の変化も、やはり上記の式に従うため、両者の間で一定である。
具体的には、本実施形態では、図1に示すように、半導体レーザ2の波長フィルタ4はリング共振器型波長フィルタである。つまり、光変調器3の光共振構造と半導体レーザ2の波長フィルタ4とが、共にリング共振器によって構成されている。このように、半導体レーザ2の波長フィルタ4と光変調器3とが、同一の光共振構造を持つものとして構成されている。この場合、導波路の断面構造を両者の間で完全に一致させることが可能である。
一方、半導体レーザ2の利得導波路5は、異なる基板(例えばInP、GaAs又は他の化合物半導体材料からなる基板)上に、異なる材料によって形成されており、異なる導波路構造を持っている。このため、本光集積素子1は、図1に示すように、半導体レーザ2の利得導波路5を構成する素子(発光素子;利得導波路素子;例えば半導体光増幅器)10を含むことになる。
つまり、波長フィルタ4の透過波長帯域を十分に大きくし、フラットトップにすることによって、半導体レーザ2の発振スペクトルにおいて、複数の共振器モード(発振モード)で発振するようにしている。
そこで、本光集積素子1は、図1に示すように、光変調器3の後段に、光変調器3の共振波長帯域に含まれる発振モードの光(変調光)のみを取り出すための導波路型の波長フィルタ(第2の波長フィルタ;発振モード選択フィルタ)11を備える。
したがって、上述のように構成することで、半導体レーザ2と光変調器3とを集積した光送信器1の製造コストや消費電力を低く抑えながら、半導体レーザ2の発振波長(入力連続光の波長)とリング共振器型変調器3の共振波長との間の波長合わせが容易に行なえるようになる。
以下、さらに具体的な構成例について説明する。
まず、光変調器部分の構造について、図3、図4を参照しながら説明する。
ここで、図4は、図3の点線Aに沿う断面構造を示している。
ここでは、バルクのシリコン基板8上に、例えばSiO2からなる埋め込み酸化膜(BOX層;例えば厚さ3μm)12が形成され、このBOX層12上に、シリコン薄膜層(SOI層;例えば厚さ250nm)13が形成されたSOI基板14を用いている。
ここでは、図4に示すように、リブ型導波路コア3BXのリブ部分(Siコア)の幅は450nmである。また、リブ型導波路コア3BXのリブ部分の厚さは250nmであり、リブ型導波路コア3BXの両側へ延びるスラブ部分(Siスラブ)14A,14Bの厚さは50nmである。
また、上述のリブ型導波路コア3BXが埋め込まれるように、SiO2オーバクラッド層15が形成されている。
次に、半導体レーザ部分の構造について、図5、図6を参照しながら説明する。
本構成例では、図5に示すように、半導体レーザ2の発振波長を決める波長フィルタ4は、上述の光変調器3と同一の基板8上に形成されている。なお、図5では、上述の実施形態と同一のもの(図1参照)には同一の符号を付している。
本構成例では、波長フィルタ4の透過帯域を広げるため、図5に示すように、3個のリング共振器(リング導波路)4Cを直列に接続した構造(3段の直列接続リング共振器)になっており、両端のリング共振器(リング導波路)4Cのそれぞれにバス導波路4A,4Bが接続された構造になっている。つまり、入力側、出力側の2本のバス導波路4A,4Bの間に3個のリング導波路4Cを直列に接続した構造になっている。
また、2本のバス導波路4A,4Bのうち一方のバス導波路4A(入力側バス導波路;図5中、上側のバス導波路)は、その全長が約500μmであり、半導体レーザ2を構成する利得導波路5(発光素子10)に接続(光結合)されている。
さらに、図5に示したように、リング導波路4Cとリング導波路4Cとの間の結合係数(結合効率)、及び、リング導波路4Cとバス導波路4A,4Bとの間の結合係数(結合効率)は、それぞれ、2%、25%としている。
つまり、波長フィルタ4を構成するリング導波路構造は、図6に示すように、シリコン基板8上にシリコン酸化膜(埋め込み酸化膜)12を挟んでシリコン薄膜層13が形成された基板[SOI(Silicon On Insulator)基板]14上に形成されている。なお、図6では、上述の光変調器部分の断面構造(図4参照)と同一のものには同一の符号を付している。
そして、このSOI基板14を加工し、図6に示すような断面構造の導波路を形成している。つまり、図6に示すように、SOI層13を加工して、リング共振器を構成するリング導波路4Cの導波路コア4CXとして、リブ型光導波路(シリコン材料を含むリブ型光導波路)の導波路コア(リブ型導波路コア)を形成している。
また、上述のリブ型導波路コア4CXが埋め込まれるように、SiO2オーバクラッド層15が形成されている。
まず、図7(A)に示すように、Si基板8上に、BOX層12及びSOI層13を備えるSOI基板14を用意する。
次いで、図7(B)に示すように、このSOI基板14上に、導波路を形成するためのストライプ状のSiO2マスク(SiO2ストライプマスク)17を形成する。
最後に、図7(D)に示すように、SiO2からなるオーバクラッド層15を全体に堆積させる。
なお、本構成例では、図4、図6に示すように、光変調器3を構成するリング共振器のみにドーピングによる伝導領域及び金属電極を設け、半導体レーザ2の波長フィルタ4を構成するリング共振器にはドーピングによる伝導領域及び金属電極を設けていない。これは、導波路の構造及び製造方法が、半導体レーザ2の波長フィルタ4を構成するリング共振器と光変調器3のリング共振器との間で、完全に同一でないことを意味し、両者の共振波長の間に差を生じさせる要因となる可能性がある。そこで、半導体レーザ2の波長フィルタ4を構成するリング共振器においても、光変調器3のリング共振器と同様に、ドーピングによる伝導領域と金属電極のいずれか一方又は両方を設けても良い。これにより、半導体レーザ2の波長フィルタ4を構成するリング共振器と光変調器3を構成するリング共振器との間で、各導波路の構造及び製造方法を完全に同一にすることができ、これらの間の共振波長を、より一致させやすくなる。
また、発光素子10には電極が形成されており、この電極を介してMQWコアに電流注入(ここでは直流電流の注入)が行なわれ、MQWコアにおいて光利得を生じさせるようにしている。なお、図5では、これらの電極、及び、直流電流源は省略している。
この場合、レーザ発振を生じさせる共振器は、発光素子10の端面に形成されている高反射膜(HRコーティング)6と、波長フィルタ4を構成するバス導波路4Bに形成されたギャップミラー7との間に形成される。つまり、発光素子10において発生した光は、この共振器の中を往復しながら、発光素子10において増幅をうけることで、レーザ発振へと導かれる。
次に、光変調器3の後段に設けられる第2の波長フィルタ11の構造について、図8を参照しながら説明する。
また、図8に示すように、この第2の波長フィルタ11は、光変調器3及び半導体レーザ2の波長フィルタ4と同様にリング共振器を用いて構成されている。
本構成例では、2本のバス導波路11A,11Bの間にリング導波路11Cを接続(光結合)した構造になっている。
また、図8に示したように、リング導波路11Cとバス導波路11A,11Bとの間の結合係数(結合効率)は、いずれも1%としている。
まず、半導体レーザ2の動作について説明する。
半導体レーザ2の発振波長は、レーザ共振器内に設けられたSi基板8上のリング共振器型の波長フィルタ4によって決められる。つまり、リング共振器型波長フィルタ4のドロップ波長帯域(透過波長帯域)内にある波長の光のみが、発光素子10から見て後段のギャップミラー7まで到達し、ここで反射されることで、レーザ共振器内を往復し、光増幅を受け、レーザ発振することになる。
図9に示すように、ドロップ波長帯(透過波長帯)は、波長1.55μmを中心に幅約2.0nmとなっている。この波長帯において、ドロップ光の強度は幅0.15dB以内に収まっており、フラットトップなドロップ特性(透過スペクトル特性)が実現されている。
上述のように、本構成例では、図5に示すように、発光素子10の長さ、及び、発光素子10とリング共振器型波長フィルタ4の発光素子10に接続される側のバス導波路4Aの長さは、いずれも、500μmである。これらの長さと、それぞれの導波路の屈折率を元に見積もられる共振器モード間隔は、約0.3nmである。このため、上述の2nmのドロップ波長帯域に含まれる共振器モードの本数は6本程度と見積もられる。したがって、本構成例の半導体レーザ2においては、1.55μmを中心に0.3nmの波長間隔で並んだ6本程度の共振器モードが発振する多モード発振のスペクトルが得られることになる(図2参照)。
既に図2を用いて説明したように、上述のリング共振器型変調器3では、その透過スペクトルの共振波長付近に生じるディップの中にある波長の光のみを選択的に変調する。
本構成例では、このディップの幅は、上述の共振器モード間隔0.3nmよりも小さい。
上述の光変調器3から出力される光は、その後段に設けられた第2の波長フィルタ11としてのリング共振器型波長フィルタに入力される。つまり、光変調器3で強度変調を受けた光のみならず、強度変調を受けずに通過した光も第2の波長フィルタ11としてのリング共振器型波長フィルタに入力される。
したがって、第2の波長フィルタ11では、光変調器3を構成するリング共振器の共振波長と同じ波長の光、すなわち、光変調器3において強度変調を受けた波長のレーザ光のみを選択的に一方のバス導波路(ドロップポート)11A(光集積素子1の出力ポート)へ出力し、それ以外のレーザ光を他方のバス導波路(スルーポート)11Bへ出力する。
図10に示すように、光変調器3の共振波長中心(動作波長中心)の1.55μmにおいて、ドロップ光の強度が大きくなっていることがわかる。また、図10に示すように、1.55μmを中心に半導体レーザ2の共振器モード間隔と同じ0.3nm離れた波長においては、ドロップ光の強度は−15dB以下まで低下していることがわかる。
このように、本構成例では、複数の共振器モードで多モード発振しているレーザ光のうち、光変調器3の共振波長帯域に含まれる波長のレーザ光のみを、光変調器3において選択的に強度変調し、さらに、この変調を受けたレーザ光のみを、変調器後段の第2の波長フィルタ11によって選択的に出力するようになっている。
なお、上述の実施形態では、具体的な光集積素子1の構成例について説明しているが、本発明は、これらの具体的な構成例に限定されるものではない。
上記(2)だけを採用する場合、半導体レーザ2の波長フィルタ4と光変調器3の光共振構造とが同一基板上に集積されていなくても良い。
また、上述の実施形態では、リング共振器を構成するリング光導波路として、リブ型で横方向にpn接合を形成した断面構造を持つものを例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、チャネル型の導波路とし、縦方向にpn接合を形成したものとしても良い。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる光半導体装置について、図14を参照しながら説明する。
DBRミラー40を構成する導波路の断面構造(導波路構造)は、基本的に、上述の第1実施形態のリング共振器型波長フィルタ4と同様にすれば良い(図6参照)。
ところで、本実施形態では、光変調器3の光共振構造はリング型のものを用いているのに対し、半導体レーザ2の波長フィルタ40はDBR型のものを用いており、両者をリング型のものとしている第1実施形態の場合とは異なる。
δλ=λ0(δn/n0)
つまり、屈折率変化が両者の間で等しければ、その結果としての共振波長の変化も両者の間で等しくなる。
このため、本実施形態の構造においても、上述の第1実施形態の構造ほどではないものの、光変調器3の共振波長と半導体レーザ2の発振波長との間の波長合わせが容易になるという効果が得られる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる光半導体装置について、図15を参照しながら説明する。
つまり、上述の第2実施形態では、光変調器としてリング共振器型変調器3を用いているのに対し、本実施形態では、図15に示すように、リング共振器をアームに装荷したマッハツェンダ(MZ)型変調器30を用いている点が異なる。
この際、アーム31,32のそれぞれに装荷された複数のリング共振器33に電界を印加し、リング導波路33Aの屈折率を変化させることで、アーム31,32を伝搬する光の位相を変調する。
このように、本実施形態では、MZ干渉計を構成する2つのアーム31,32を伝搬する光が結合する位置に設けられた複数のリング共振器33によって、伝搬する光の位相を変化させた後、MZ干渉計によって、伝搬する光の強度を変化させて、入力された連続光を変調する。
つまり、本変調器30では、MZ干渉計のアーム31,32にリング共振器33が装荷されているため、アーム31,32を伝搬する光のうち、リング共振器33の共振波長帯域に含まれる波長の光は、リング導波路33Aに結合し、リング導波路33Aを伝搬した後、再びアーム31,32に結合して伝搬することになる。これは、リング導波路33Aが設けられている部分を通過した後、リング共振器33の共振波長帯域において、位相が波長によって大きく変化することになる(即ち、位相スペクトルに大きな傾きが生じる)ことと等価である。
そして、変調のための電気信号を、電極33Bを介して、リング導波路33Aに印加して、リング導波路33Aの屈折率を変化させると、図16(B)に示すように、リング出力光の位相スペクトルが波長軸方向へシフトする。この場合、リング共振器33の広いリング共振波長帯域では、図16(B)に示すように、位相スペクトルの傾きが大きくなっているため、わずかな屈折率変化で位相スペクトルがわずかにシフトすれば、リング出力光の位相が大きく変化する。このため、本変調器30では、図16(B)に示すように、位相スペクトルのリング共振波長帯域内に動作波長を設定すれば良い。したがって、本変調器30では、動作波長帯域がリング共振器33の広いリング共振波長帯域とほぼ等しくなり、広い動作波長帯域が得られることになる。
このように、本変調器30では、リング共振器33によって位相変化を生じさせて、MZ干渉計の2本のアーム31,32を伝搬する光に位相差を生じさせ、これらをMZ干渉計によって干渉させることで強度変調を行なう。
本変調器30では、図17に示すように、広い動作波長帯域において所望の消光比(変調器出力光の強度変化)が得られることになる。
このようなリング共振器装荷MZ変調器30を用いる場合、変調器30の出力側の一方のポート35から強度変調を受けた変調光が出力光として出力される一方、他方のポート36から変調器30の共振波長帯域外の波長を有し、強度変調を受けなかった不要な連続光が出力されることになる。つまり、リング共振器装荷MZ変調器30は、連続光をカットし、変調光のみを取り出す波長フィルタ(変調光選択フィルタ)としても機能する。このため、上述の第2実施形態の場合と異なり、光変調器30の後段に第2の波長フィルタ11を設ける必要がない。
また、各リング共振器33を構成するリング光導波路33Aの半径(リング径)は約8μmとし、その共振波長が約1.55μm(動作波長)になるようにしている。
このように構成される本光集積素子は、以下のように動作する。
まず、上述の第2実施形態の場合と同様に、半導体レーザ2は複数の共振器モードで多モード発振する。そして、これらの複数の共振器モードのレーザ光が、リング共振器装荷型MZ変調器30に入力される。
したがって、本光集積素子1によれば、上述の第2実施形態の場合と同様に、半導体レーザ2の発振波長と光変調器30の共振波長との間の波長合わせを容易に行なえるようになるという利点がある。これにより、低駆動電圧でサイズの小さいリング共振器33を用いた共振器型変調器集積レーザ1を低コスト、低消費電力で実現できることになる。
なお、上述の実施形態では、リング径、リング径の差、結合係数、リング共振器の個数などについて、具体的な数値を記載しているが、これらは、変調器に要求される消光比、動作波長帯域、総作用長等によって、適宜、変更しても良い。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態にかかる光半導体装置について、図19を参照しながら説明する。
まず、本実施形態において、ヒータ21を設けている理由について説明する。
上述の第1実施形態のように構成することで、光変調器3の共振波長と半導体レーザ2の発振波長とを一致又はほぼ一致させることができるため、半導体レーザ2の発振波長と光変調器3の共振波長との間の波長合わせのために、これらの波長を制御するための温度調整機構を設けなくても良い。
この場合、完全に温度調整機構をなくした場合ほどのコスト低減や消費電力低減の効果は得られないものの、上述の第1実施形態の構成を採用することで温度調整の必要性が小さくなるため、全体のシステムを簡略化できるという利点はある。
また、仮に初期状態において半導体レーザ2の発振波長と光変調器3の共振波長とが合っていたとしても、その後、動作時の環境温度の変化によってずれてしまう場合もある。
この場合、半導体レーザ2の波長フィルタ4の温度を制御することで、共振器モードの波長をモード間隔程度の範囲で調整することが有効である。このような調整が必要となる場合でも、本光集積素子1においては、半導体レーザと光変調器とを異なる基板上に形成した場合(図12参照)と比較して、半導体レーザ2の発振波長と光変調器3の共振波長とが大きく離れてしまうことがないため、これらの間の波長合わせが容易になるという効果は得られる。
具体的な構成例としては、図19に示すように、半導体レーザ2の波長フィルタ4を構成する3つのリング共振器(リング導波路4C)の直上に、一本の線状のヒータ(局所ヒータ)21が蛇行するように設けられている。
また、図19に示すように、ヒータ21には直流電源22が接続されている。そして、ヒータ21に接続された直流電源22からの電流を制御することで、ヒータ21で発生する熱量を制御し、これにより、半導体レーザ2の波長フィルタ4部分の温度を制御するようにしている。
なお、その他の構成、動作、製造方法等については、上述の第1実施形態のものと同様であるため、ここではその説明を省略する。
特に、本実施形態によれば、例えば作製誤差や環境温度の変化によって、半導体レーザ2の発振波長と光変調器3の共振波長とがずれてしまった場合や多モード発振しているレーザの共振器モードの間の波長に光変調器3の共振波長(動作波長)が位置してしまった場合であっても、半導体レーザ2の発振波長と光変調器3の共振波長との間の波長合わせを容易に行なえるという利点がある。
例えば、レーザ共振器内のバス導波路(波長フィルタ4を構成するバス導波路4A又は4B)の直上に、同様のヒータを設けても良い。この場合、レーザ共振器内の光の位相を制御することができ、これにより、レーザ発振スペクトルにおける共振器モードの位置を微調整することができ、半導体レーザの発振波長と光変調器の共振波長との間の波長合わせを行なうことができる。
要するに、本光集積素子1において、光変調器3の光共振構造、半導体レーザ2の波長フィルタ4を構成するリング導波路4C、バス導波路4A又は4B、半導体レーザ2の利得導波路5、第2の波長フィルタ11のうちの少なくとも1つに、温度を制御するためのヒータ(温度調整機構)又はキャリアを注入するための電極(位相制御領域)を設けるようにしても良い。
[その他]
なお、上述の各実施形態では、半導体レーザの波長フィルタ及び光変調器の後段の波長フィルタとして、リング共振器型波長フィルタや回折格子型波長フィルタを用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、他の波長フィルタを用いても良い。例えば、アレイ回折格子(AWG)やフォトニック結晶スラブ導波路を用いた波長フィルタを用いても良い。
2 半導体レーザ
3 光変調器(リング共振器型変調器)
3A バス導波路
3B リング導波路
3BX リブ型導波路コア
3C 電極
4 半導体レーザの波長フィルタ(第1の波長フィルタ)
4A,4B バス導波路
4C リング導波路
4CX リブ型導波路コア
5 利得導波路
6 ミラー(高反射膜)
7 ギャップミラー(ハーフミラー)
8 基板(Si基板)
9 光集積素子(波長フィルタ集積型光変調素子)
10 発光素子
11 波長フィルタ(第2の波長フィルタ)
11A,11B バス導波路
11C リング導波路
12 シリコン酸化膜(埋め込み酸化膜;BOX層)
13 シリコン薄膜層(SOI層)
14 SOI基板
14A スラブ部分(Siスラブ;n型領域;n+型伝導領域)
14B スラブ部分(Siスラブ;p型領域;p+型伝導領域)
15 SiO2オーバクラッド層
16 反射防止膜
17 SiO2マスク(SiO2ストライプマスク)
20 高周波信号源(変調電源)
21 ヒータ
22 直流電源
30 リング装荷型MZ変調器
31 第1光導波路(アーム)
32 第2光導波路(アーム)
33 リング共振器
33A リング導波路
33B 電極
34 高周波信号源(変調電源)
35,36 ポート
40 DBRミラー
Claims (7)
- 半導体レーザの発振波長を規定する第1の波長フィルタと、
光共振構造を持ち、前記光共振構造への電気信号の印加により光を変調する光変調器とを備え、
前記第1の波長フィルタと前記光変調器の光共振構造とが、同一基板上に集積されていることを特徴とする光半導体装置。 - 前記半導体レーザの利得導波路を構成する発光素子を備え、
前記発光素子は、前記基板と異なる基板上に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の光半導体装置。 - 前記光変調器は、リング共振器型光変調器であることを特徴とする、請求項1又は2記載の光半導体装置。
- 前記光変調器は、
マッハツェンダ干渉計を構成する第1光導波路及び第2光導波路と、
前記第1光導波路又は前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられ、リング共振器を構成するリング導波路と、
前記リング導波路に沿って設けられ、伝搬する光の位相が変化するように前記リング導波路の屈折率を変化させるための電極とを備えることを特徴とする、請求項1又は2記載の光半導体装置。 - 前記第1の波長フィルタは、リング共振器型波長フィルタ又は回折格子型波長フィルタであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体装置。
- 前記第1の波長フィルタは、前記半導体レーザの発振モード間隔よりも広い反射又は透過波長帯域を有し、前記半導体レーザの発振モードを規定し、
前記光変調器は、共振波長帯域に含まれる発振モードの光を変調することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光半導体装置。 - 前記光変調器の前段又は後段に接続され、共振波長帯域外の発振モードの光を取り除く第2の波長フィルタを備えることを特徴とする、請求項6に記載の光半導体装置。
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