JP2009279593A - パンチ - Google Patents
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Abstract
【課題】DLC膜がパンチ基材表面より剥離・欠落し、パンチ基材表面と圧力発生室形成部材との摩擦抵抗が増加によって生じる、少ないショット数でのパンチ折れを防止する。
【解決手段】パンチ10には、パンチ10に設けられた突条部の基材31の少なくとも被形成部材に当接する外表面に、径(Φ)が0.01μm≦Φ≦1μmの凹部が多数設けられている梨地面が形成されている。その梨地面上に中間層32、及び、摺動膜33が形成されている。
【選択図】図3
【解決手段】パンチ10には、パンチ10に設けられた突条部の基材31の少なくとも被形成部材に当接する外表面に、径(Φ)が0.01μm≦Φ≦1μmの凹部が多数設けられている梨地面が形成されている。その梨地面上に中間層32、及び、摺動膜33が形成されている。
【選択図】図3
Description
本発明は金属などの成形加工に用いるパンチに関する。
従来から、パンチを用いた金属素材のプレス加工は、種々の製品の分野で活用されている。このプレス加工は、例えば、インクジェット式記録ヘッドの圧力発生室を形成する圧力室形成部材の加工に用いられる。
インクジェット式記録ヘッドの圧力発生室は、インクを吐出するノズルと流路を介して連通し、ノズルの開口数に対応させて複数備えられている。この圧力発生室は、高密度記録を可能にするために、高密度に配置されたノズルに対応して細かいピッチに形成する必要がある。この細かいピッチの圧力発生室を形成するために、圧力発生室形成部材には、パンチによって圧力発生室の一部となる微細な溝状窪部を列設することが求められている。しかし、加工時にパンチの両サイド方向へ金属流動が生じ、パンチへの引っ張り応力となる。この引っ張り応力が加わることが一因となり、パンチ折れの生じることがある。
そこで、引っ張り応力発生の原因であるパンチ基材表面と圧力発生室形成部材との表面の摩擦抵抗を減少させるために、パンチ基材表面に、例えば、ダイヤモンドライクカーボン膜(以下、DLC膜という)、窒化チタン膜などのコーティング膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、コーティング膜のパンチ基材表面との密着力は弱く、コーティング膜を有するパンチを使用した場合、コーティング膜は短時間でパンチ基材表面より剥離し、欠落することがある。その結果、パンチ基材表面と圧力発生室形成部材との摩擦抵抗が増加し、大きな応力がパンチに加わるため少ないショット数でパンチ折れを引き起こすことがあった。
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態、または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例のパンチは、被形成部材に当接するパンチであって、パンチ基材と、前記パンチ基材の表面に形成された凹凸部と、前記凹凸部の表面に形成された摺動膜を有することを特徴とする。
本適用例のパンチは、被形成部材に当接するパンチであって、パンチ基材と、前記パンチ基材の表面に形成された凹凸部と、前記凹凸部の表面に形成された摺動膜を有することを特徴とする。
この構成によれば、パンチ基材の表面に、凹凸が形成されているため、パンチ基材と摺動膜との接触面積が大きくなり、パンチ基材と摺動膜との接合力を向上させたパンチとなる。従って、このパンチは、小さな摩擦係数で、かつ、パンチ基材との接合耐久性が優れた摺動膜を持つパンチとなる。このパンチを用いた金型で加工する時、このパンチと被形成部材との摩擦係数を小さくすることができる。その結果、このパンチは、長時間の加工に用いても折れ難くなり、耐用数の高いパンチとなる。
[適用例2]
また、上記適用例において、前記凹凸部は、表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmであり、且つ表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmで形成された面に、径(Φ)が0.01μm≦Φ≦1μmの凹部が多数形成された梨地面であることが好ましい。
また、上記適用例において、前記凹凸部は、表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmであり、且つ表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmで形成された面に、径(Φ)が0.01μm≦Φ≦1μmの凹部が多数形成された梨地面であることが好ましい。
この構成によれば、表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmの全面に、径(Φ)が0.01μm≦Φ≦1μmの凹部が多数形成されているので、適度な平滑度で、表面積の大きいパンチ基材の面となる。従って、パンチ基材と摺動膜との接合力を向上させた、摩擦係数の小さいパンチとなる。このパンチを用いた金型で加工する時、このパンチと被形成部材との摩擦係数を小さくすることができる。その結果、このパンチは、長時間の加工に用いても折れ難くなり、耐用数の高いパンチとなる。
[適用例3]
また、上記適用例において、前記パンチ基材と前記摺動膜との間に設けられ、前記パンチ基材と前記摺動膜との接合強度を高める中間層を有することが好ましい。
また、上記適用例において、前記パンチ基材と前記摺動膜との間に設けられ、前記パンチ基材と前記摺動膜との接合強度を高める中間層を有することが好ましい。
この構成によれば、摺動膜との接合強度を高める中間層を、パンチ基材と摺動膜との間に設けることにより、パンチ基材と摺動膜との接合力を向上させたパンチとなる。従って、このパンチは、小さな摩擦係数で、かつ、パンチ基材との接合耐久性が優れた摺動膜を持つパンチとなる。このパンチを用いた金型で加工する時、摺動膜がより欠落し難く、かつ、このパンチと被形成部材との摩擦係数を小さくすることができる。その結果、このパンチは、長時間の加工に用いても折れ難くなり、耐用数の高いパンチとなる。
[適用例4]
また、上記適用例において、前記摺動膜が非晶質カーボン膜であることが好ましい。
また、上記適用例において、前記摺動膜が非晶質カーボン膜であることが好ましい。
この構成によれば、パンチ表面の摺動膜が非晶質カーボン膜であるので、非常に小さな摩擦係数を有する。その結果、このパンチを用いた金型で加工する時、このパンチと被形成部材との摩擦係数をより小さくすることができるため、このパンチは、長時間の加工に用いても折れ難くなり、耐用数の高いパンチとなる。
[適用例5]
また、上記適用例において、前記中間層がSiまたは元素周期表のVIA族元素であることが好ましい。
また、上記適用例において、前記中間層がSiまたは元素周期表のVIA族元素であることが好ましい。
この構成によれば、中間層は、非晶質カーボン膜と親和性が高く、かつ、パンチ基材との接合力も強いSiまたは元素周期表のVIA族元素であるので、この中間層が介在することにより、非晶質カーボン膜はパンチ基材に対して強い接合力を示す。従って、表面にパンチ基材との接合力が非常に強い非晶質カーボン膜を有するパンチとなる。このパンチを用いた金型で加工する時、このパンチと被形成部材との摩擦係数をより小さくすることができるため、このパンチは、長時間の加工に用いても折れ難くなり、耐用数の高いパンチとなる。
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。なお、以下に述べる実施例では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされている。しかし、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
まず、被成形部材としての圧力発生室形成部材の鍛造加工に使用したパンチの例を挙げて説明する。図1は実施例1のパンチ要部を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。また、図2は実施例1のパンチを用いて、鍛造加工した被形成部材要部を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
このパンチ10は、被形成部材20に溝状窪部21、及び隔壁部22を形成するための突条部11を、溝状窪部21と同じ数だけ列設してある。ここでは、突条部11及び溝状窪部21の数を3列で示しているが、1列以上多数列であっても良い。図1(b)の寸法Wで示される方向が突条部11の幅方向である。突条部11の被形成部材20に最初に当接する端面で、図1(b)の寸法Wの中点を頂点として、幅方向に略45度程度の角度をなす2面で楔状の先端部11aが形成されている。この楔状の先端部11aは、突条部11の被形成部材20に最初に当接する側の端面全域に形成されている。図1(a)の寸法Lで示される方向が、突条部11の長さ方向である。先端部11aにおける長さ方向の両端は、図1(a)に示すように、略45度の角度で面取りした形状となっている。
このパンチ10は、被形成部材20に溝状窪部21、及び隔壁部22を形成するための突条部11を、溝状窪部21と同じ数だけ列設してある。ここでは、突条部11及び溝状窪部21の数を3列で示しているが、1列以上多数列であっても良い。図1(b)の寸法Wで示される方向が突条部11の幅方向である。突条部11の被形成部材20に最初に当接する端面で、図1(b)の寸法Wの中点を頂点として、幅方向に略45度程度の角度をなす2面で楔状の先端部11aが形成されている。この楔状の先端部11aは、突条部11の被形成部材20に最初に当接する側の端面全域に形成されている。図1(a)の寸法Lで示される方向が、突条部11の長さ方向である。先端部11aにおける長さ方向の両端は、図1(a)に示すように、略45度の角度で面取りした形状となっている。
また、図1(a)及び図1(b)に示されるL、T、W、H、及びDの寸法は、L=1.5mm、T=30μm、W=0.1mm、H=45μm、及びD=0.5mmである。なお、この寸法は一例であり、これに限られるものではない。
突条部11の図1に示すX部分を図3に拡大して示す。突条部11の基材31は、高硬度、高靭性を有するハイス鋼、たとえば、コベルコ製窒化粉末ハイス鋼を適用する。この基材31の形状を形成する方法としては、ワイヤー放電加工やプロファイルグラインダーがある。ワイヤー放電加工では、基材31の表面にクラックを有する変質層(図示せず)が形成される恐れがある。そこで、パンチ10の作成時は、ワイヤー放電加工後にプロファイルグラインダーで変質層を除去する。なお、プロファイルグラインダーは通常用いられている加工装置であり、変質層の除去を簡便に行うことが可能である。このように形成された基材31は、表面粗さが、1μm以上、5μm以下である。その後、サンドブラスト処理(図示せず)を行い、中間層32(詳細説明は後述)、及び摺動膜33(詳細説明は後述)を形成する。このサンドブラスト処理は、基材31の変質層が除去されたままの表面に行われる。
図4は、前述のサンドブラスト処理の説明図である。変質層が除去された突条部11は、先端部11aをノズル40に向けて、装置内に置かれる。サンドブラスト処理のノズル40,41,42は、突条部11に対して3方向に設けられる。ノズル40は、突条部11の中心線Zの略延長線上で、先端部11aに対向し設けられる。ノズル41は、突条部11の中心線Zと略垂線方向に設けられる。ノズル42は、突条部11に対してノズル41と略対称の位置に設けられる。各々のノズル40,41,42は順番に、または同時に研磨粒子43を噴射する。その際、各々のノズル40,41,42は、図4のYで示す方向へ突条部11と平行に、定速で移動しながら噴射する。前述では、ノズル40,41,42が移動する例を示したが、ノズル40,41,42と突条部11とが相対移動すれば良く、被サンドブラスト処理物である突条部11が移動しても良い。また、ノズルの個数や配置は、この限りでない。
研磨粒子43は、ダイヤモンド粒子、またはジルコニア粒子で、0.05μm以上、5μm以下の範囲の粒径のものを用いる。好ましくは、0.05μm以上、0.1μm以下の粒径のナノ粒子で、ダイヤモンド粒子、またはジルコニア粒子を用いる。本例では、噴射圧力を約0.5MPaとするが、この限りでない。
このサンドブラスト処理により、突条部11の全面、または一部に、凹部が多数形成された面(以下、梨地面50という)ができる。図5(a)及び図5(b)に示す網掛け部は、梨地面50が形成される場所を示し、突条部11の全面、または突条部11の一部分で先端部11aを含む。さらに詳しく説明すると、梨地面50は、突条部11の先端部11a、及び、突条部11の一部分で、被形成部材20が加工時に当接する突条部11に形成されている。この梨地面50の凹部(図示せず)の径(Φ1)は、0.01μm≦Φ1≦1μmの範囲である。このように、表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmで規定された面に、径(Φ1)が0.01μm≦Φ1≦1μmの凹部が多数形成されている梨地面50は、基材31の表面加工の加工作業性に優れており、且つ表面積を大きくすることが可能な面である。その結果、梨地面50が形成される基材31と中間層32、または、摺動膜33の接合力が大きくなる。
梨地面50を形成する際、図5(b)に示すように、先端部11aの楔先端エッジ部分が、取り除かれる研磨面51を形成しても良い。研磨面51は、図5(b)に示す幅Fが、1μm≦F≦20μmとなる平面または曲面の形状を有する。なお、研磨面51の幅Fは、この範囲を超えて設けられても良い。もちろん、この研磨面51の表面は、上記に記載された梨地面50を有する。なお、この処理は、図4に示すノズル40の位置で、ノズル径の小さいノズルを使用する。この楔先端エッジ部分が取り除かれる形状の研磨面51は、被形成部材20に押し当たる時の単位面積当りの衝撃力が小さくなり、かつ、梨地面50が形成されている面積が拡大するため、中間層32、または摺動膜33が剥離し難くいものとなる。
図3に示すように、梨地面50が形成された基材31の表面に、中間層32が形成される。中間層32の素材としては、摺動膜33、特に、非晶質カーボン膜と親和性の高いSiや元素周期表のVIA族元素を適用する。VIA族元素のうち、DLC膜とも親和性の高いCrを用いることが好ましい。膜形成方法としては、スパッタ、イオンプレーティング、抵抗加熱真空蒸着、プラズマCVDが適用できる。
ここでは、イオンプレーティング法によるCr膜の形成方法を説明する。図6はイオンプレーティングにて、Cr膜を形成する方法を説明する模式図である。電子銃61から素材ターゲット62(本実施例ではクロム)に向けて電子ビームEBを照射し、素材ターゲット62を加熱・蒸気化させて突条部11の表面に堆積させる。本実施例においては、スリットSを有する遮蔽板63を、素材ターゲット62と突条部11との間に配置し、この遮蔽板63と突条部11の距離を適切に設定することで、膜厚の調整を行うことができる。このように、摺動膜33と親和性の高い中間層32が形成されることにより、基材31と摺動膜33の接合力は、より大きくなる。
中間層32の形成後、摺動膜33を中間層32の表面に形成する。摺動膜33の素材としては、窒化チタン、または非晶質カーボン膜が選ばれる。非晶質カーボン膜は、窒化チタンのような多結晶構造の膜より、より小さな摩擦係数を有することから、摺動膜33に適用するのにより好ましい。さらに、非晶質カーボン膜の一例であるDLC膜は、非晶質カーボン膜の中で小さな摩擦係数を有し、かつ、高硬度の膜となるので、最も好ましい膜の一つである。膜形成方法としては、スパッタ、イオンプレーティング、抵抗加熱真空蒸着、プラズマCVDが適用できる。摺動膜33は、中間層32表面に形成することは好ましいが、梨地面50が形成された基材31の表面に直接形成しても良い。このように形成される摺動膜33は、高硬度、かつ小さな摩擦係数の膜となる。
図7は、図1のパンチ10を使用した金型で、被形成部材に、微細な溝状窪部を形成する鍛造加工の工程を説明する図であり、(a)はパンチ上死点待機状態図、(b)はパンチ鍛造加工状態図、(c)はパンチ上死点復帰状態図である。図7(a)に示すように、雌型71の上面に素材である帯板状の被形成部材20を載置し、被形成部材20の上方に図1のパンチ10(雄型)を配置する。ここで使用した帯板状の被形成部材20はNi素材で、板厚は0.35mm、硬度(ビッカース硬度)はHv170、及び伸び10%である。図7(b)に示すように、パンチ10を下降させて突条部11の先端部11aを被形成部材20内に押し込む。この突条部11の押し込みは、被形成部材20の板厚方向の途中まで行う。突条部11の押し込みにより、被形成部材20の一部分が流動し、図7(c)に示す溝状窪部21が形成される。先端部11aで押された部分が円滑に流れるので、形成される溝状窪部21は突条部11の形状に倣った形状に形成される。この時に、先端部11aで押し分けられるようにして流動した被形成部材20は、突条部11のあいだに設けられた空隙部72内に流入し、図7(c)に示す隔壁部22が成形される。さらに、先端部11aにおける長さ方向の両端も面取りしてあるので、当該先端部11aで押圧された被形成部材20も円滑に流れる。従って、溝状窪部21の長さ方向両端部についても隔壁部22が形成される。図7(c)は、被形成部材20の鍛造加工が終了し、パンチ10が上死点へ復帰した状態を示したものである。これで、1ショットが終了であり、鍛造加工が終了した被形成部材20を金型(70)外へ排出後、新たな被形成部材20を載置し、繰り返し鍛造加工を行う。
図7(b)に示すように、突条部11の先端部11aが、被形成部材20に深く押し込まれると、パンチ10の両側方向へ被形成部材20の金属流動が発生する。この金属流動の発生は、引っ張り応力73を増大させる。引っ張り応力73の増大は、突条部11と被形成部材20との総摩擦抵抗も大きくする。この状態で突条部11を被形成部材20から引き離す時に大きな負荷となり、パンチ10にクラック74を発生させ、パンチ10折れの一因となる。この引っ張り応力73を小さくするのには、押し分けられた被形成部材20が、突条部11のあいだに設けられた空隙部72内にスムーズに流入させることである。そのために、本発明のパンチ10は、摺動膜33を表面に有し、突条部11の摩擦係数を小さくする。しかも、基材31の表面を梨地面にする処理や中間層32を形成することにより、摺動膜33と基材31との密着性を向上させ、摺動膜33の耐久性を向上させている。また、この構成のパンチ10は、突条部11を被形成部材20から引き離す時に、突条部11と被形成部材20との総摩擦抵抗を減ずることもできる。
実施例1のパンチ10と比較例のパンチを用いた上記の金型と同じ構造の金型で、上記の被形成部材20を鍛造加工し、各パンチの耐用数を比較した結果を表1に示す。表1に示す耐用数は、パンチ折れ、または、パンチにクラックが発生するまでのショット数である。表1からわかるように、放電加工後変質層除去した梨地面の基材にDLC膜を形成した構成のパンチ(2)は、梨地面の無い基材にDLC膜を形成した構成の比較例のパンチ(1)より、耐用数は優れる。また、放電加工後変質層除去した梨地面の基材に、Siの中間層を介してDLC膜を形成した構成のパンチ(3)、及びCrの中間層を介してDLC膜を形成した構成のパンチ(4)は、パンチ(2)より、さらに優れた耐用数を示す。
特に、パンチ(4)の構成のように、基材31の表面に梨地面が形成された後、Crの中間層32が形成され、さらに中間層32の表面にDLC膜が形成されるパンチ10は、最も好ましい構成のパンチである。
特に、パンチ(4)の構成のように、基材31の表面に梨地面が形成された後、Crの中間層32が形成され、さらに中間層32の表面にDLC膜が形成されるパンチ10は、最も好ましい構成のパンチである。
図8は、実施例2のパンチを適用する下孔形成用金型の要部断面図である。図8で示すように、下孔形成用金型80(以下、金型80という)は、ダイプレート82、ストリッパプレート83、パンチホルダ84、及び、パンチ81を有する。ストリッパプレート83は、コイルスプリングなどの付勢部材を巻装したストリッパボルト(図示せず)によって、ダイプレート82側に付勢された状態でパンチホルダ84に対して相対的に近接・離隔可能に取付けられている。このストリッパプレート83には、パンチ81のパンチ胴部81aの外径よりも若干大きい内径に設定された断面円形のガイド孔85が開設されている。複数のパンチ81は、パンチ先端部81bをダイプレート82側に向け、ガイド孔85にパンチ胴部81aを挿通した状態で、パンチホルダ84に取付けられている。パンチホルダ84は、図示しない上型ダイセットに取付けられており、ダイプレート82に対して上下動可能に構成されている。一方、ダイプレート82は、図示しない下型ダイセット上に配置されている。このダイプレート82には、各パンチ81に対応して逃げ孔86が夫々開設されており、この逃げ孔86の内径は、パンチ81のパンチ胴部81aの外径よりも若干大きい内径に設定されている。
本例のパンチ81は丸パンチであり、ストリッパプレート83に設けられたガイド孔85に摺動する長尺な円柱状のパンチ胴部81aと、このパンチ胴部81aの先端側に連続し、基端側から先端側に向けて縮径したパンチテーパー部81cと、このパンチテーパー部81cの先端に連続し、パンチ胴部81aよりも細い円柱状のパンチストレート部81dとから構成されている。
上記の下孔形成工程では、基材プレート87をダイプレート82とストリッパプレート83との間に配置し、パンチホルダ84をダイプレート82側に向けて下降させる。すると、先ずストリッパプレート83の下面が、基材プレート87の上面に当接する。その後、コイルスプリングの付勢力に抗しながらパンチホルダ84をさらに下方に押し下げると、図9(a)に示すように、ストリッパプレート83のガイド孔85にパンチ胴部81aが案内されつつ、パンチ81が基材プレート87の表面側から裏面側に向けて押し込まれる。この際、パンチストレート部81d及びパンチテーパー部81c(パンチ先端部81b)は、基材プレート87の素材の一部を流動させながら内部に進入する。そして、パンチストレート部81dの先端が基材プレート87の裏面を若干超える程度までパンチ81を押し込むと、パンチ81からの押圧力を受けた基材プレート87の一部が、ダイプレート82の逃げ孔86側に押し出されて膨隆部92となる。
パンチ81を基材プレート87に十分な深さまで押し込んだならば、次に、パンチホルダ84を上昇させる。すると、下方に付勢されたストリッパプレート83が基材プレート87に圧接したまま、パンチ81が基材プレート87から引き抜かれる。その後、パンチホルダ84が上死点に戻るにつれて、ストリッパプレート83が基材プレート87から離れる。そして、基材プレート87には、図9(b)に示すように、パンチ先端部81bに倣った形状の下孔91が形成される。
基材プレート87に下孔91を形成したならば、膨隆部除去工程に移行して、基材プレート87の裏面を研磨し、上記の膨隆部92を除去する。膨隆部92を除去すると、図9(c)に示すように、下孔91は、基材プレート87の厚さ方向に貫通する孔となる。
上記のように、金型80に適用されるパンチ81のパンチ胴部81aは、ストリッパプレート83のガイド孔85内を摺動する。また、パンチ先端部81bは、基材プレート87に大きな力で圧接し、基材プレート87にできる下孔91と擦れあう。そこで、このパンチ81の表面には、耐久性がある高硬度で、かつ摩擦係数の小さい膜を形成する。
表面に上記の膜を持つパンチ81について、下記に説明する。パンチ81は、コベルコ製窒化粉末ハイス鋼を使用し、ワイヤー放電加工後、プロファイルグラインダーで、表面粗さ(Φ2)が1μm≦Φ2≦5μmになるように加工される。次に、図10に示すように、サンドブラストにより、パンチ81の表面に梨地面(図示せず)を形成する。本例では、図10のように、パンチ81は、サンドブラスト機(図示せず)内に置かれ、矢印aが示す方向に回転する。ノズル95は円柱状のパンチ81の高さ方向に対して、略垂直方向に配置する。ノズル95を矢印bが示す方向に、パンチ81に平行に移動させながら、研磨粒子96をパンチ81表面に噴射する。研磨粒子96は、ダイヤモンド粒子、またはジルコニア粒子で、0.05μm以上、5μm以下の範囲の粒径のものを用いる。本例では、噴射圧力を約0.5MPaとするが、この限りでない。また、本例では、梨地面(図示せず)は、パンチ81のパンチ胴部81a及びパンチ先端部81bに形成する。しかし、この限りではなく、パンチ81の全面に、または、基材プレート87及びガイド孔85に当接する部分に、梨地面を形成しても良い。このようなサンドブラスト処理により、パンチ81は、表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmの面に、径(Φ2)が0.01μm≦Φ2≦1μmの凹部が多数形成されている梨地面ができる。
梨地面を形成後、実施例1と同様に、梨地面に中間層を形成する。その後、実施例1と同様に、中間層の表面に摺動層を形成する。また、梨地面に摺動層を直接形成しても良い。本例のパンチ81は、梨地面に膜厚1μmのCrの中間層を形成後、中間層の表面に膜厚2μmのDLC膜を形成した構成のパンチである。
このように構成された本例のパンチ81は、パンチ基材との接合力が大きく、高硬度で、かつ摩擦係数の小さい摺動層が表面に形成される。そこで、パンチ81は、図8に示す金型80に使用される時、パンチ81と、基材プレート87及びガイド孔85との摩擦係数が小さくなり、摺動層が欠落し難いパンチとなる。その結果、パンチ81は折れ難く、高耐久性を有する。
また、パンチ胴部81aのDLC膜は、欠落し難く、ガイド孔85との摩擦抵抗が小さく摩耗し難い。その結果、パンチ81は、ガイド孔85とのクリアランスの変化が少なくなり、高精度の下孔加工ができる。
10…パンチ、11…突条部、11a…先端部、20…被形成部材、21…溝状窪部、22…隔壁部、31…基材、32…中間層、33…摺動膜、40…ノズル、41…ノズル、42…ノズル、50…梨地面、61…電子銃、62…素材ターゲット、63…遮蔽板、70…金型、71…雌型、72…空隙部、73…引っ張り応力、74…クラック、80…金型、81…パンチ、81a…パンチ胴部、81b…パンチ先端部、81c…パンチテーパー部、81d…パンチストレート部、82…ダイプレート、83…ストリッパプレート、84…パンチホルダ、85…ガイド孔、86…逃げ孔、87…基材プレート、91…下孔、92…膨隆部、95…ノズル、96…研磨粒子。
Claims (5)
- 被形成部材に当接するパンチであって、
パンチ基材と、
前記パンチ基材の表面に形成された凹凸部と、
前記凹凸部の表面に形成された摺動膜とを有することを特徴とするパンチ。 - 前記凹凸部は、表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmであり、且つ表面粗さ(Ra)が1μm≦Ra≦5μmで形成された面に、径(Φ)が0.01μm≦Φ≦1μmの凹部が多数形成された梨地面であることを特徴とする請求項1に記載のパンチ。
- 前記パンチ基材と前記摺動膜との間に設けられ、前記パンチ基材と前記摺動膜との接合強度を高める中間層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパンチ。
- 前記摺動膜が非晶質カーボン膜であること特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパンチ。
- 前記中間層がSiまたは元素周期表のVIA族元素であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパンチ。
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JP2008131654A JP2009279593A (ja) | 2008-05-20 | 2008-05-20 | パンチ |
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ID=41450616
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JP2008131654A Withdrawn JP2009279593A (ja) | 2008-05-20 | 2008-05-20 | パンチ |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015198161A (ja) * | 2014-04-01 | 2015-11-09 | Tdk株式会社 | 圧電素子 |
-
2008
- 2008-05-20 JP JP2008131654A patent/JP2009279593A/ja not_active Withdrawn
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