JP2008095153A - ダイヤモンド被覆摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い摺動性と、優れた耐久性を発揮することができるダイヤモンド被覆摺動部材を提供する。
【解決手段】ダイヤモンド被覆摺動部材は、基材13表面の少なくとも一部にダイヤモンド粒子層14が被覆されたものである。ダイヤモンド粒子層14は、ダイヤモンド粒子15を噴射ノズル12から基材13に噴射させ固着させて形成され、かつダイヤモンド粒子層14の平均厚さが0.05〜15μmである。ダイヤモンド粒子15の平均粒子径は0.05〜15μmであることが好ましい。また、基材13についてJIS B 0601に規定されている算術平均粗さ(Ra)は、ダイヤモンド粒子15の平均粒子径よりも小さくなることが好ましい。基材13としては、金属、セラミックス又はプラスチックのいずれも使用することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば軸受け、ギヤ、ピストン等の機械部品として使用され、摺動性及び耐久性に優れるダイヤモンド被覆摺動部材に関するものである。
ダイヤモンド膜やダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等の硬質炭素薄膜は、優れた低摩擦性と耐摩耗性を示すことから、摺動面に固体潤滑材として薄膜状に固定させる方法が種々検討されてきた。例えば、化学的蒸着法(CVD法)や物理的蒸着法(PVD法)によりダイヤモンド薄膜を鋼材表面上に形成する方法や、プラズマCVD法によりDLC膜をセラミックス基材表面上に形成する方法が知られている。これらの技術では、硬質炭素薄膜を基材に強く密着させるために、炭化物系化合物を作りやすい鋼材やセラミックスを基材として選ぶ必要があることや、成膜中の加熱時に炭素薄膜が基材から剥離しないようにするために、基材の線膨張率は炭素薄膜に近いことが必要とされる。また、これらの基材選定に関する制限に加えて、CVD法やPVD法によるダイヤモンド膜の作製には低圧プロセスが必要であるために大型の成膜装置が必須となる上に、成膜処理を施す基材のサイズに自由度がないという問題があった。
近年、これらの成膜技術とは別に、高速のキャリアガスを使用して基材に衝突させる成膜技術が開発され、産業への応用が検討されてきた。例えば、固体潤滑剤となる数μmの二硫化モリブデン微粒子を50μmの錫等の軟質金属に担持させて高圧空気をキャリアガスとして基材に吹き付けるショットピーニング装置を用いた処理によって、摺動面に潤滑処理を施す方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、ポリエチレンテレフタレートの基材上に酸化アルミニウム微粒子を付着させて下地層を形成し、基材が軟化する温度で表面を押圧して微粒子を基材に食い込ませた後、この下地層の上に微粒子ビーム堆積法により51.5μm厚の酸化アルミニウム膜を形成させる方法が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。前者の方法では基材となる金属部材表面に容易に固着できるように軟質金属を使用し、後者の方法では下地層を形成し、基材と膜との間の密着性が改善されている。しかし、二硫化モリブデン微粒子や酸化アルミニウム粒子を被覆層の表面に均一に露出させることが難しく、表面の摺動性が不十分であると共に、耐久性にも欠けるという問題があった。
さらに、金属アルミニウムの基材上に0.5μm程度の酸化アルミニウム微粒子を噴射して堆積厚さ50μmという緻密質のセラミック構造物を形成させるエアロゾルデポジション法(AD法)やパウダージェットデポジション法(PJD法)が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。
特開2000−282259号公報(第2頁〜第4頁) 特開2003−34003号公報(第2頁、第7頁及び第8頁) 特許第3348154号公報(第1頁及び第11頁)
しかしながら、この特許文献3に記載の方法では基材表面に固着された粒子上へさらに別の粒子を堆積させるため、摺動部材として使用する場合には堆積された粒子同士の結合が不十分であり、堆積層の欠落が生じ易いという欠点があった。このため、摺動部材表面の摺動性が低くなり、しかも耐久性が劣るという問題があった。
そこで本発明の目的とするところは、高い摺動性と、優れた耐久性を発揮することができるダイヤモンド被覆摺動部材を提供することにある。
前記の目的を達成するために、第1の発明のダイヤモンド被覆摺動部材は、基材表面の少なくとも一部にダイヤモンド粒子層が被覆された摺動部材であって、前記ダイヤモンド粒子層がダイヤモンド粒子を基材に衝突させ固着させて形成されたものであり、かつダイヤモンド粒子層の平均厚さが0.05〜15μmであることを特徴とするものである。
第2の発明のダイヤモンド被覆摺動部材は、第1の発明において、前記ダイヤモンド粒子の平均粒子径が0.05〜15μmであることを特徴とするものである。
第3の発明のダイヤモンド被覆摺動部材は、第1又は第2の発明において、前記基材についてJIS B 0601に規定されている算術平均粗さ(Ra)がダイヤモンド粒子の平均粒子径よりも小さくなるように設定されていることを特徴とするものである。
第4の発明のダイヤモンド被覆摺動部材は、第1から第3のいずれかに係る発明において、前記基材が金属、セラミックス又はプラスチックであることを特徴とするものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明によれば、ダイヤモンド粒子層が非常に硬いダイヤモンド粒子を基材に衝突させ固着させて形成され、基材に対するダイヤモンド粒子の貫入性が高いために、ダイヤモンドが有する性質を十分に発現できると共に、基材に対するダイヤモンド粒子層の密着性が高められる。その結果、ダイヤモンド被覆摺動部材は、高い摺動性と、優れた耐久性を発揮することができる。
第2の発明によれば、ダイヤモンド粒子の平均粒子径が0.05〜15μmという微小なものに設定されることから、第1の発明の効果に加えて、基材表面に凹凸の小さいダイヤモンド粒子層を作製することができ、低摩擦性を発現でき、摺動性を向上させることができる。
第3の発明によれば、基材についてJIS B 0601に規定されている算術平均粗さ(Ra)がダイヤモンド粒子の平均粒子径よりも小さくなるように設定されている。このため、ダイヤモンド粒子が基材表面より均一に露出し、第1又は第2の発明の効果を有効に発揮させることができる。
第4の発明によれば、基材が金属、セラミックス又はプラスチックであることから、基材について制限を受けることなく、第1から第3のいずれかに係る発明の効果を発揮させることができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
本実施形態のダイヤモンド被覆摺動部材は、基材表面の少なくとも一部にダイヤモンド粒子層が被覆されたものである。該ダイヤモンド粒子層は、噴射ノズルから噴出させた非常に硬いダイヤモンド粒子を基材に衝突させ固着させて形成され、かつそのダイヤモンド粒子層の平均厚さが0.05〜15μmに形成される。
まず、ダイヤモンド粒子層を形成する装置、すなわちダイヤモンド粒子を噴射ノズルから噴出させ、基材に衝突させる装置を図面に基づいて説明する。
図1はダイヤモンド粒子を基材上に噴射する状態を示す斜視図、図2は噴射装置の全体を示す概略斜視図、図3は噴射装置の作用を示す概略斜視図である。図1に示すように、噴射装置11の噴射ノズル12から基材13表面に窒素ガス等の搬送ガスに含まれるダイヤモンド粒子15を噴射することにより、すなわちショットコーティング法(ショットブラスト法)により基材13表面にダイヤモンド粒子層14が形成される。
噴射装置11を構成する円筒状の噴射ノズル12と基材(基板)13表面とのなす噴射角度θは、噴射ノズル12の軸線と基材13上に形成されるダイヤモンド粒子層14の延びる方向とのなす角度で定義される。この噴射角度θは0〜90°の間で可変であり、好ましくは10〜90°である。基材13の種類にも依存するが、噴射角度θが10°よりも小さい場合には基材13表面で反射されるダイヤモンド粒子15が多くなり、基材13へのダイヤモンド粒子15の埋め込みが難しくなる。しかし、これは普遍的な傾向ではなく、基材13の種類に応じて噴射圧力及び噴射角度θを変化させることで、密着性の高いダイヤモンド粒子層14を作製することが可能である。なお、噴射角度θが90°を越える場合にも同様に、90〜170°であることが好ましい。
図2及び図3に示す噴射装置11において、前後に移動可能な基台16上には上下動可能な支柱17が支持され、該支柱17の側面には左右に移動可能な支持梁18が取付けられている。支持梁18の先端部前面には保持板19が取付けられ、その前面にはダイヤモンド粒子15が収容されたタンク20が固定されている。該タンク20の下方位置には、ダイヤモンド粒子15のチャージ部21が設けられ、中央下部にチャージ孔22が穿設されたチャージパイプ23が配設されている。チャージパイプ23の一端(図2及び図3の右端)は第1供給パイプ24に接続され、図示しない窒素ボンベから第1バルブ25を介して搬送ガスとしての窒素(N)ガスが供給されるようになっている。チャージ部21の側方には混合室26が設けられ、タンク20内から下降したダイヤモンド粒子15がチャージ孔22からチャージパイプ23内に吸い込まれ、窒素ガスと共に混合室26に供給される。
混合室26の側部には第2供給パイプ27が接続され、加速ガスとしての窒素ガスが図示しない窒素ボンベから第2バルブ28を介して供給されるようになっている。また、混合室26の前部にはダイヤモンド粒子15を噴射するための噴射ノズル12が突出形成されている。そして、混合室26内のダイヤモンド粒子15は第2供給パイプ27から供給される窒素ガスによって加速された状態で噴射ノズル12から噴出されるようになっている。前記第1バルブ25及び第2バルブ28をコンピュータで制御することにより、噴射ノズル12から所定条件のダイヤモンド粒子15を噴射する仕組みになっている。
加速ガスの圧力は0.1〜1MPaが好ましく、0.2〜0.5MPaがより好ましい。この加速ガスの圧力が0.1MPa未満の場合には、窒素ガスの圧力が低くなり過ぎ、噴射圧力が低下して基材13表面へダイヤモンド粒子15を十分に埋め込むことができなくなる。その一方、加速ガスの圧力が1MPaを越える場合には、加速ガスの圧力が高くなり過ぎ、噴射圧力が過大になってダイヤモンド粒子15が基材13表面で反射、飛散し、効率が低下する。
また、ダイヤモンド粒子15の逆流を防ぐために、搬送ガスの圧力は加速ガスの圧力よりも大きい必要がある。従って、搬送ガスの圧力は0.2〜1.2MPaが好ましく、0.3〜0.7MPaがより好ましい。搬送ガスの圧力が0.2MPa未満の場合には、搬送ガスの圧力が低く、噴射圧力が低下して基材13表面へダイヤモンド粒子15を十分に供給することができなくなる。その一方、搬送ガスの圧力が1.2MPaを越える場合には、搬送ガスの圧力が高くなり過ぎ、基材13表面においてダイヤモンド粒子層14の厚さを調整することが難しくなる。なお、搬送ガス及び加速ガスの種類は特に制限されないが、一般には窒素等の不活性ガス又は空気が用いられる。
ダイヤモンド粒子15を基材13表面に噴射する場合には、図1に示すように、噴射角度θ及び噴射ノズル12の先端部と基材13との距離dを一定に保ちながら、一定速度で噴射ノズル12を1回又は複数回基材13に沿って走査し、基材13表面にダイヤモンド粒子15を埋め込ませる。噴射角度θは任意に変更することが可能である。また、走査回数を重ねることでダイヤモンド粒子層14を基材13表面の所望する部分全体に渡って均一に被覆することができる。
基材13の材質は限定されず、鋼材、アルミニウム合金、黄銅などの金属、シリコン等の半導体、アルミナ等のセラミックス、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック等が使用できる。これらの材質はいずれもダイヤモンドより硬度が低いため、衝突によって基材13内部にダイヤモンド粒子15を埋め込ませることが可能である。しかし、半導体やセラミックスなどの脆性材料では、ダイヤモンド粒子15との衝突で割れを生じ、基材13の表面粗度の増大及び摩擦抵抗の増大に繋がり、またプラスチックではその弾性のために、ダイヤモンド粒子15が表面で跳ね返され、埋め込みが困難な場合がある。
従って、一般には金属が基材13として最も好適であるが、セラミックスやプラスチックでも噴射ノズル12からの噴射速度及び噴射角度θを調整することで埋め込みを効果的に行うことができる。これらの材質は金属の使用が制限される場合や軽量の摺動部材を必要とする場合に有効であり、工業用部材としての価値は高い。
基材13表面にダイヤモンド粒子15が被覆される部分は予め適当な研摩処理によって平面仕上げを施したり、各種溶剤による洗浄や超音波洗浄を施したりした後にダイヤモンド粒子15を被覆することが好ましい。そして、基材13についてJIS B 0601に規定されている算術平均粗さ(Ra)は、ダイヤモンド粒子15の平均粒子径よりも小さくなるように設定されることが好ましい。具体的には、算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは5〜50nm、より好ましくは10〜25nmである。Raをこのような範囲に設定することにより、ダイヤモンド粒子15が基材13表面より均一に露出し、ダイヤモンド粒子層14表面の摺動性と耐久性を良好に発揮させることができる。このRaが5nm未満の場合には、研摩に時間を要し、製造効率が低下する。一方、Raが50nmを越える場合には、基材13表面からのダイヤモンド粒子15の露出がばらつき、摺動性が悪くなる傾向を示す。
前記ダイヤモンド粒子15は、天然に産出されるもの又は人工的に合成されるもののどちらでもよい。人工的に合成されるものとしては、爆薬又は火薬の化学反応エネルギー等を利用して発生させた動的な高圧力場を利用して合成したダイヤモンド粒子15や、高圧プレス等による静的な高圧力場を利用して合成したダイヤモンド粒子15が挙げられる。これらは単結晶体又は多結晶体によらず使用することが可能である。これらの中では粒子形状の観点から、衝撃合成ダイヤモンドや爆轟合成ダイヤモンド(クラスターダイヤモンド)が好ましい。衝撃合成ダイヤモンドやクラスターダイヤモンドは一次粒子の形状が球形であり、アスペクト比の小さい凝集体を形成するため、より平滑で引っ掛りの少ない被膜が形成され、その表面に接触する相手部材との摩擦抵抗を小さくすることができる。
ダイヤモンド粒子15は単分散体でも凝集体でも差し支えないが、平均粒子径は0.05〜15μm、好ましくは0.1〜10μmである。ダイヤモンド粒子15の平均粒子径が0.05μm未満の場合には、基材13の表面粗さがダイヤモンド粒子15の大きさに対して無視できなくなり、基材13とその基材13表面に摺動する相手部材が直接接触するようになる。その一方、ダイヤモンド粒子15の平均粒子径が15μmを越える場合にはダイヤモンド粒子層14の表面粗さが大きくなり、摩擦抵抗が大きくなる傾向にある。
基材13表面上に固着層として形成された前記ダイヤモンド粒子層14の平均厚さは0.05〜15μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜7μmである。ダイヤモンド粒子層14の平均厚さが0.05μm未満の場合には、ダイヤモンド粒子層14の耐久性が不足し、またダイヤモンド粒子15が付着されていない基材13の領域の影響が顕著になる。一方、ダイヤモンド粒子層14の平均厚さが15μmを越える場合には、実質的にダイヤモンド粒子15の堆積層が生じるため、摩擦力が加えられた際に堆積層の剥離が顕著になる。
上記のようにして得られるダイヤモンド被覆摺動部材は、高い摺動性と優れた耐久性を有するので、種々の摺動部材、例えば軸受け、ギヤ、ピストン等の機械部品関連産業、記憶媒体読取り装置等のコンピューター関連産業、人工関節等の医療関連産業などへの適用が可能であり、産業上利用できる領域は非常に広範である。
さて、本実施形態の作用について説明すると、ダイヤモンド被覆摺動部材を得る場合には、金属などの基材13表面に噴射ノズル12からダイヤモンド粒子15を吹き付けて衝突させ、ダイヤモンド粒子15を基材13表面に埋め込ませ固着させてダイヤモンド粒子層14を形成することにより得られる。金属などの基材13は最も硬いダイヤモンドに比べて軟らかいことから、基材13に対するダイヤモンド粒子15の貫入性が高く、十分に固着される。また、ダイヤモンド粒子層14の平均厚さが0.05〜15μm、すなわちダイヤモンド粒子層14の平均厚さはダイヤモンド粒子1個分程度であり、実質的に堆積層を持たない。従って、ダイヤモンド被覆摺動部材の表面に摩擦力が加えられた際に、ダイヤモンド粒子層14では堆積層に見られる剥離が生じ難いため、繰り返しの摩擦力に対して十分に耐え得ることができる。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態のダイヤモンド被覆摺動部材では、ダイヤモンド粒子層14が噴射ノズル12から噴出させたダイヤモンド粒子15を基材13に衝突させ固着させて形成されるため、ダイヤモンドが有する性質を十分に発現できると共に、基材13に対するダイヤモンド粒子層14の密着性が高められる。その結果、ダイヤモンド被覆摺動部材は、高い摺動性と、優れた耐久性を発揮することができる。しかも、ダイヤモンド粒子層14が非常に薄いことから、ダイヤモンド粒子15の使用量を抑制することができると共に、経済性にも優れている。
・ ダイヤモンド粒子15の平均粒子径が0.05〜15μmという微小なものに設定されることにより、基材13表面に凹凸の小さいダイヤモンド粒子層14を作製することができ、低摩擦性を発現でき、摺動性を向上させることができる。
・ 基材13についてJIS B 0601に規定されている算術平均粗さ(Ra)がダイヤモンド粒子15の平均粒子径よりも小さくなるように設定することにより、ダイヤモンド粒子15が基材13表面より均一に露出し、上記の効果を有効に発揮させることができる。
・ 基材13が金属、セラミックス又はプラスチックであることにより、基材13について制限を受けることなく、前記の効果を発揮させることができる。
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
青銅を基材13としてダイヤモンド粒子15の噴射加工を行った。使用したダイヤモンド粒子15は衝撃合成法で合成した多結晶ダイヤモンドで、平均粒子径1.5μm、粒子径範囲0.25〜15μmのものであった。ダイヤモンド粒子15の粒度分布を図4に示す。図4に示すように、ダイヤモンド粒子15は、粒子径が0.5〜0.6μm及び6〜7μmの2つのピークをもつ分布を有している。基材13表面は予め、粒径1μmのダイヤモンドスラリーを用いて表面粗さ、すなわち算術平均粗さ(Ra)10nmまでバフ研摩を施し、代替フロン及びヘキサンを使用して超音波洗浄を行い、真空乾燥した後に噴射加工に使用した。
この場合、ダイヤモンド粒子15の噴射角度90°、供給ガス圧0.3MPa、加速ガス圧0.2MPa、ノズル走査速度10mm/s、噴射ノズル12の先端部と基材13との距離dが1mm、噴射ノズル走査回数1回及び4回の条件で噴射加工を行い、基材13上にダイヤモンド粒子層14を形成した。ダイヤモンド粒子層14の厚さを三次元表面粗さ測定機((株)東京精密製、サーフコム1400A)で測定したところ、走査回数1回では0.7μm、走査回数4回では3.9μmであった。
噴射加工によって作製したダイヤモンド被覆摺動部材の摩擦試験を、往復型摩擦試験装置(新東科学(株)製、HEIDON−22)を使用して行った。すなわち、ダイヤモンド被覆摺動部材は試料ステージに固定されており、相手部材のアルミナ製ボールを上部アームに固定して上方から接触させ、垂直荷重0.196Nを加えながら滑り速度0.01m/sで試料ステージを繰り返し往復運動させた。摩擦力は上部アームに取り付けられたひずみゲージによって検出し、計測された摩擦力を試験時に印加した垂直荷重で除して摩擦係数を算出した。繰り返し摩擦回数2000回までの試験結果を図5に示す。その図5に示すように、噴射加工なしの場合(図5中の×印)では摩擦係数は約0.4であるのに対し、ダイヤモンド噴射加工を施した場合(図5中、走査回数4回の場合が○印、走査回数1回の場合が△印)では0.12となり、摺動性の向上が確認された。なお、走査回数1回と4回では摺動性に明確な差異は認められなかった。また、垂直荷重を1.96Nにまで増加しても、同様の摺動性であった。
(実施例2)
アルミナを基材13としてダイヤモンド粒子15の噴射加工を行った。使用したダイヤモンド粒子15は実施例1と同じものであり、基材13表面は予めバフ研摩によって基材13の表面粗さ、すなわち算術平均粗さ(Ra)を19nmとした。また、ダイヤモンド粒子15の噴射角度30°、供給ガス圧0.3MPa、加速ガス圧0.2MPa、噴射ノズル走査速度10mm/s、噴射ノズル12の先端部と基材13との距離dが1mm、噴射ノズル走査回数4回の条件で噴射加工を行い、基材13上にダイヤモンド粒子層14を形成した。形成されたダイヤモンド粒子層14の厚さを三次元表面粗さ測定機で測定したところ、1.3μmであった。実施例1と同様に繰り返し回数2000回の摩擦試験を実施したところ、噴射加工なしの場合には摩擦係数が0.20であったが、噴射加工を行った場合には0.10となり、摺動性の向上が確認された。なお、垂直荷重を1.96Nにまで増加しても、同様の摺動性であった。
(実施例3)
ポリアミド66(ナイロン66)を基材13として、ダイヤモンド粒子15の噴射加工を行った。使用したダイヤモンド粒子15は実施例1と同じものであった。なお、基材13表面は研摩加工を施さずに使用し、表面粗さすなわち算術平均粗さ(Ra)は24nmであった。噴射角度30°、供給ガス圧0.3MPa、加速ガス圧0.2MPa、噴射ノズル走査速度10mm/s、噴射ノズル12の先端部と基材13との距離dが1mm、噴射ノズル走査回数4回の条件で噴射加工を行い、基材13上にダイヤモンド粒子層14を形成した。形成されたダイヤモンド粒子層14の厚さを三次元表面粗さ測定機で測定したところ、0.1μmであった。実施例1と同様に繰り返し回数2000回の摩擦試験を実施したところ、噴射加工なしの場合には摩擦係数が0.17であったが、噴射加工を行った場合には0.12となり、摺動性の向上が確認された。なお、垂直荷重を1.96Nにまで増加しても、同様の摺動性であった。
(実施例4)
ステンレス鋼(SUS304)を基材13としてダイヤモンド粒子15の噴射加工を行った。使用したダイヤモンド粒子15は衝撃合成法で合成した多結晶ダイヤモンドで、平均粒子径0.5μm、粒径範囲0.3〜1μmのものであった。ダイヤモンド粒子15の粒度分布を図6に示す。図6に示すように、ダイヤモンド粒子15は、粒子径範囲が0.3〜0.95μmで、粒子径0.5〜0.6μmにピークをもつ分布を有している。基材13表面は予めバフ研摩を施し、算術平均粗さ(Ra)10nmとした。
そして、噴射角度10°、供給ガス圧0.6MPa、加速ガス圧0.2MPa、噴射ノズル走査速度10mm/s、噴射ノズル12の先端部と基材13との距離dが2mm、噴射ノズル走査回数4回の条件で噴射加工を行い、基材13上にダイヤモンド粒子層14を形成した。形成されたダイヤモンド粒子層14の厚さを三次元表面粗さ測定機で測定したところ、0.25μmであった。作製した摺動部材について、実施例1と同様の条件で繰り返し回数1000回の摩擦試験を実施したところ、噴射加工なしの場合には摩擦係数が0.7であったが、噴射加工を行った場合には0.2となり、摺動性の向上が確認された。
(実施例5)
青銅を基材13とし、噴射角度を60°とした他は実施例1と同じ条件、同じダイヤモンド粒子15を使用して噴射加工を行い、基材13上にダイヤモンド粒子層14を形成した。形成されたダイヤモンド粒子層14の厚さを三次元表面粗さ測定機で測定したところ、走査回数1回では0.35μm、走査回数4回では5.5μmであった。実施例1と同様に繰り返し回数2000回の摩擦試験を実施したところ、走査回数1回では摩擦係数が0.12、走査回数4回では0.16となり、ともに噴射加工なし(摩擦係数は0.4)よりも摺動性の向上が確認されたが、ダイヤモンド粒子層14の厚い走査回数4回の方が高い摩擦係数を示しており、走査回数による差異が認められた。
(比較例1)
青銅を基材13としてダイヤモンド粒子15の噴射加工を行った。使用したダイヤモンド粒子15は実施例4と同様のものであった。基材13表面は実施例1と同様の処理で算術平均粗さ(Ra)を10nmとした。噴射角度30°、供給ガス圧0.3MPa、加速ガス圧0.2MPa、噴射ノズル走査速度10mm/s、噴射ノズル12の先端部と基材13との距離dが1mm、噴射ノズル走査回数4回の条件で噴射加工を行い、基材13上にダイヤモンド粒子層14を形成した。形成されたダイヤモンド粒子層14の厚さを三次元表面粗さ測定機で測定したところ、0.025μmであった。実施例1と同様に繰り返し回数2000回の摩擦試験を実施したところ、噴射加工なしの場合には摩擦係数が0.40であったが、噴射加工を行ったものは0.36となり、際立った摺動性の向上は見られなかった。
(実施例6)
実施例1〜3と同様の方法で作製した3種の基材13(青銅、アルミナ及びポリアミド66)について、2000回以上の繰り返し摩擦試験を実施し、ダイヤモンド粒子層14の耐久試験を行った。相手部材はアルミナ製ボールで、垂直荷重0.196N、すべり速度0.01m/sであった。試験結果を図7に示す。図7に示すように、基材13がポリアミド66の場合には5万5千回、青銅の場合には10万回、及びアルミナの場合には約28万回の繰り返し摩擦で摩擦係数が0.2以下となり、作製したダイヤモンド粒子層14の耐久性を確認することができた。つまり、基材13に対するダイヤモンド粒子層14の密着性が良いため、耐久性の向上を図ることができた。本実施例の結果から、基材13が金属、セラミックス、プラスチックのいずれにおいても、耐久性の高いダイヤモンド粒子層14を作製可能なことが確認された。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ダイヤモンド粒子層14を形成する場合、基材13表面が曲面、凹凸面などのときに噴射ノズル12を、その先端部と基材13との距離dを一定にするように移動させて実施することもできる。
・ 噴射ノズル12の形状を、四角筒状、楕円筒状、円錐筒状などに形成することもできる。
・ ダイヤモンド粒子層14を形成する場合、複数の噴射ノズル12を用いてダイヤモンド粒子15を基材13に噴射することも可能である。
・ ダイヤモンド粒子15には、黒鉛、窒化ホウ素、炭化ケイ素等を配合して使用することも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記ダイヤモンド粒子層は、ダイヤモンド粒子を不活性ガス又は空気によって搬送し、噴射ノズルから基材に噴射させて形成されたものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆摺動部材。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、ダイヤモンド粒子層を効率良く形成することができる。
・ 請求項1に記載のダイヤモンド被覆摺動部材の製造方法であって、基材表面の少なくとも一部に、噴射ノズルから噴出させたダイヤモンド粒子を衝突させ固着させてダイヤモンド粒子層を形成することを特徴とするダイヤモンド被覆摺動部材の製造方法。この製造方法によれば、請求項1に係る発明の効果を有するダイヤモンド被覆摺動部材を簡易な操作により製造することができる。
実施形態において、ダイヤモンド粒子を基材上に噴射するときの基材と噴射装置のノズルとの関係を示す斜視図。 ダイヤモンド粒子を噴射する噴射装置の全体を示す概略斜視図。 ダイヤモンド粒子を噴射する噴射装置の作用を示す概略斜視図。 実施例1におけるダイヤモンド粒子の粒子径(μm)と粒子量(%)との関係を示すグラフ。 実施例1における繰返し数と摩擦係数との関係を示すグラフ。 実施例4におけるダイヤモンド粒子の粒子径(μm)と粒子量(%)との関係を示すグラフ。 実施例6における繰返し数と摩擦係数との関係を示すグラフ。
符号の説明
13…基材、14…ダイヤモンド粒子層、15…ダイヤモンド粒子。

Claims (4)

  1. 基材表面の少なくとも一部にダイヤモンド粒子層が被覆された摺動部材であって、前記ダイヤモンド粒子層がダイヤモンド粒子を基材に衝突させ固着させて形成されたものであり、かつダイヤモンド粒子層の平均厚さが0.05〜15μmであることを特徴とするダイヤモンド被覆摺動部材。
  2. 前記ダイヤモンド粒子の平均粒子径が0.05〜15μmであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆摺動部材。
  3. 前記基材についてJIS B 0601に規定されている算術平均粗さ(Ra)がダイヤモンド粒子の平均粒子径よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダイヤモンド被覆摺動部材。
  4. 前記基材が金属、セラミックス又はプラスチックであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のダイヤモンド被覆摺動部材。
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