(実施形態1)
本実施形態の近接センサは、図1に示すように、被検知体(図示せず)の検知に用いられる検知コイル10およびコンデンサ11の並列回路からなるLC共振回路部1と、LC共振回路部1を発振させる発振回路部2と、LC共振回路部1の発振振幅(LC共振回路部1の発振電圧の最大値と最小値との差)を検出するモニタ部3と、モニタ部3で検出した発振振幅に基づいて発振回路部2の負性コンダクタンスをLC共振回路部1が発振可能な臨界値に設定する制御部4と、被検知体と検知コイル10との距離を示す検知信号を作成する信号処理部5とを備えている。
LC共振回路部1の発振電圧の周波数は、検知コイル10のインダクタンスとコンデンサ11の静電容量とにより決定される。検知コイル10は、例えば導線(絶縁被覆電線など)を円筒状のコイルボビン(図示せず)の外周面に当該コイルボビンの軸方向に巻軸方向を沿わせた形で巻回することにより構成される。上記被検知体は、例えば金属体などの導電体よりパイプ状に形成され、検知コイル10の巻軸方向に沿って検知コイル10のすぐ外側を通る形に配置される。なお、上述した検知コイル10および被検知体の構成は一例に過ぎず、例えば、被検知体は磁性体により形成されたものであってもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更できる。
本実施形態の近接センサでは、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とはモノリシックICとして一体化されている。
発振回路部2は、内部電源である基準電源VccよりLC共振回路1に一定のバイアス電流を供給する定電流源であるバイアス回路20を有する。また、LC共振回路部1の発振を維持するためには、LC共振回路部1に電流を正帰還させる必要があり、発振回路部2はLC共振回路部1に帰還電流Ifbを供給するための構成として、LC共振回路部1の発振電圧(LC共振回路部1の両端電圧)をレベルシフトするレベルシフト回路21と、LC共振回路部1の発振電圧に応じた電流(増幅電流)Ibを出力する増幅回路22と、制御部4で設定されたデジタルコードに対応した出力電流Ioを出力する電流調整部23とを有する。
レベルシフト回路21は、npn形のトランジスタ210により構成される。トランジスタ210のコレクタはバイアス回路20の出力端に接続され、エミッタは一端が接地されたLC共振回路部1の他端に接続される。図示例ではトランジスタ210のエミッタと基準電位(グラウンド)との間に検知コイル10とコンデンサ11とからなる並列回路が挿入されている。また、トランジスタ210のコレクタはベースに接続されている。つまり、レベルシフト回路21においては、トランジスタ210のエミッタの電位はLC共振回路部1の発振電圧に等しい。
増幅回路22は、npn形のトランジスタよりなる増幅用トランジスタBTrを有する。増幅用トランジスタBTrのベースはレベルシフト回路21のトランジスタ210のベースに接続される。したがって、増幅用トランジスタBTrのベースには、レベルシフト回路21によりレベルシフトされたトランジスタ210のエミッタの電位、すなわちレベルシフト回路21により生成されたレベルシフト電圧が入力される。
ここで、レベルシフト回路21は、増幅用トランジスタBTrのベース−エミッタ間電圧の分だけ発振電圧をレベルシフトするように構成されており、これによって、増幅用トランジスタBTrのエミッタとグラウンドとの間に、発振の正の半サイクルのみ、LC共振回路部1の発振電圧に等しい電圧が印加されるようにしている。
一方、増幅用トランジスタBTrのエミッタはエミッタ電位設定用(増幅電流制限用)の抵抗器である抵抗部Rbを介してグラウンド(グランド)に接続され(接地され)ている。すなわち、増幅回路22は、所謂エミッタフォロワ(エミッタホロワ)回路である。
したがって、増幅回路22からは、LC共振回路部1の発振電圧に応じた電流である増幅電流Ibが出力される。なお、増幅回路22としては、エミッタフォロワ回路の代わりに、MOSFETを利用したソースフォロワ(ソースホロワ)回路を採用することができる。
電流調整部23は、入力側カレントミラートランジスタ(以下、「入力側トランジスタ」と略称する)ITrと、複数の出力側カレントミラートランジスタ(以下、「出力側トランジスタ」と略称する)OTrとを有するカレントミラー回路部230を備える。入力側トランジスタITrおよび出力側トランジスタOTrはいずれもpnp形のトランジスタよりなる。
入力側トランジスタITrのコレクタは、増幅回路22の増幅用トランジスタBTrのコレクタに接続され、エミッタは基準電源Vccに接続されている。また、入力側トランジスタITrのコレクタとベースとは相互に接続される。一方、出力側トランジスタOTrのエミッタは、スイッチSWを介して基準電源Vccに接続され、コレクタはトランジスタ210のエミッタとコンデンサ11との間に接続される。また、複数の出力側トランジスタOTrのベースそれぞれは、入力側トランジスタITrのベースに共通に接続される。なお、以下の説明では、複数の出力側トランジスタOTrを区別するために、必要に応じて符号OTr1〜OTr4で表す。また、出力側トランジスタOTr1〜OTr4それぞれに対応するミラー電流Imを必要に応じて符号Im1〜Im4で表し、出力側トランジスタOTr1〜OTr4それぞれに対応するスイッチSWを必要に応じて符号SW1〜SW4で表す。
カレントミラー回路部230では、LC共振回路部1の発振電圧に応じた電流である増幅電流Ibが基準電流として入力側トランジスタITrに与えられ、各出力側トランジスタOTrを通じて基準電流に比例した大きさのミラー電流Imが基準電源VccからLC共振回路部1に供給される。したがって、ミラー電流Imnの大きさは、ミラー比(ミラー電流Imnの基準電流に対する比)をMnとすれば、次式(1)で表すことができる。
なお、本実施形態では、入力側トランジスタITrと各出力側トランジスタOTrとのトランジスタサイズはいずれも同じにしている。そのため、入力側トランジスタITrと各出力側トランジスタOTrとでは、エミッタサイズ(エミッタ面積)はいずれも同じであり(すなわちMn=1)、ミラー電流Im1〜Im4の大きさはいずれも基準電流(本実施形態の場合は増幅電流Ib)の大きさに等しい。
スイッチSWは、例えばトランジスタやサイリスタなどの半導体スイッチング素子よりなり、オン時に基準電源Vccと出力側トランジスタOTrのエミッタとを接続し、オフ時に基準電源Vccと出力側トランジスタOTrのエミッタとを非接続とする(基準電源Vccと出力側トランジスタOTrとの間の電路を遮断する)。そのため、スイッチSWがオフであるときには、ミラー電流ImがLC共振回路部1に供給されない。このスイッチSWの制御状態(オン・オフ)によって、ミラー電流がLC共振回路部1に供給されるか否かが決まる。
電流調整部23は、入力されたデジタル信号のデジタルコードに応じてスイッチを制御するスイッチ制御部231を有する。スイッチ制御部231は、例えば所定のプログラムを実行するマイクロコンピュータやロジック回路などにより構成される。
上記のデジタルコードは、例えば右端を最下位ビット(LSB、あるいはLSBit)、左端を最上位ビット(MSB、あるいはMSBit)とする4ビットのストレート・バイナリコードであり、複数のスイッチSWそれぞれはデジタルコードの各ビットと一対一で関係付けられている。例えば、デジタルコードの最下位ビットである第0ビット(ビット番号が0であるビット)はスイッチSW1に、第1ビット(ビット番号が1であるビット)はスイッチSW2に、第2ビット(ビット番号が2であるビット)はスイッチSW3に、最上位ビットである第3ビット(ビット番号が3であるビット)はスイッチSW4にそれぞれ対応する。
スイッチ制御部231は、デジタルコードのビットの値が”0”であれば、スイッチSWをオフ、”1”であればスイッチSWをオンにする。したがって、スイッチSWは、制御部4で設定されるデジタルコードに基づいて制御される。
例えば、デジタルコードが”1010”(ただし、右から順に第0ビット、第1ビット、第2ビット、第3ビットとする)であれば、スイッチ制御部231は、スイッチSW2,SW4をオン、スイッチSW1,SW3をオフとする。この場合、LC共振回路部1には、ミラー電流Im2,Im4が供給されるから、電流調整部23の出力電流Ioの大きさは、ミラー電流Im2とミラー電流Im4とを加算した大きさになる。
つまり、カレントミラー回路部230は、基準電源VccからLC共振回路部1に供給されるミラー電流Imを加算して出力電流Ioを作成するから、出力電流Ioは、次式(2)で表すことができる。なお、δnは、スイッチSWnのオン・オフを示す関数であり、スイッチSWnがオンであればδn=1、スイッチSWnがオフであればδn=0とする。
本実施形態の場合、ミラー電流Imは全て等しいため、出力電流Ioは、オンになっているスイッチSWの数によって決定される。したがって、本実施形態における出力電流Ioは、0、Ib、2Ib、3Ib、4Ibの5つの値をとり得る。
このように発振回路部2は、制御部4で設定されたデジタルコード(電流調整部23に入力されたデジタル信号のデジタルコード)に対応した出力電流Ioを出力するD/Aコンバータよりなる電流調整部23を有しており、当該電流調整部23の出力電流Ioが帰還電流IfbとしてLC共振回路部1に供給される。すなわち、本実施形態においては、Ifb=Ioが成立する。
ここで、発振回路部2の負性コンダクタンスをGosc(ただしGoscの値は負である)、LC共振回路部1の発振振幅をVTとすると、負性コンダクタンスGoscは、次式(3)で表すことができる。
すなわち、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscは、発振振幅VTに対してどれだけの帰還電流Ifbを与えるかによって決定される。そして、増幅用トランジスタBTrのエミッタとグラウンドとの間には、発振の正の半サイクルのみ、LC共振回路部1の発振電圧に等しい電圧が印加されるから、上記の式(1)〜(3)により、負性コンダクタンスGoscは、次式(4)で表すことができる。なお、Rはエミッタ電位設定用の抵抗部Rbの抵抗値である。
上記の式(4)より明らかなように、電流調整部23のスイッチSWのオン・オフ、すなわち電流調整部23に入力するデジタルコードによって、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの値を調整することができる。
ここで、LC共振回路部1が発振する条件は、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの絶対値が、検知コイル10のコンダクタンスの絶対値以上であること、すなわち、検知コイル10のコンダクタンスをGcoilとすれば、負性コンダクタンスGoscとコンダクタンスGcoilとが、Gcoil≦|Gosc|の関係にあるときである。
したがって、振回路部2の負性コンダクタンスGoscが、Gcoil=|Gosc|であるときに、負性コンダクタンスGoscは、LC共振回路部1が発振可能な最大値となる。そのため、検知コイルのコンダクタンスGcoilの負の値である−Gcoilが、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの上述の臨界値となる。そうすると、負性コンダクタンスGoscが臨界値である場合には、コンダクタンスGcoilは次式(5)で表すことができる。
そして、検知コイル10のコンダクタンスGcoilは、被検知体と検知コイル10との距離に起因する渦電流損の変化、つまり検知コイル10と被検知体との距離に応じて変化するから、負性コンダクタンスGoscが上記臨界値である限り、検知コイル10のコンダクタンスGcoilとデジタルコードとは対応関係にある(制御部4で設定されるデジタルコードのビットパターンは、検知コイル10と被検知体との距離によって変化する)。
モニタ部3は、npn形のトランジスタ30と、抵抗31と、コンデンサ32とで構成された検波回路からなる。トランジスタ30は、コレクタが基準電源Vccに接続され、ベースがLC共振回路部1に接続され、エミッタが抵抗31およびコンデンサ32に接続されている。そして、トランジスタ30のコレクタ−エミッタ間には、ベースに入力される電圧(LC共振回路部1の発振電圧)に応じた電流が流れ、この電流によってコンデンサ32が充電される。本実施形態におけるモニタ部3では、このコンデンサ32の両端電圧をLC共振回路部1の発振振幅を示す値として検出する。
制御部4は、例えば所定のプログラムを実行するマイクロコンピュータやロジック回路などにより構成される。制御部4は、モニタ部3より得た発振振幅VTが所定値、すなわち負性コンダクタンスGoscの絶対値とコンダクタンスGcoilの絶対値が等しいときの発振振幅VTの値(つまりは発振回路部2の負性コンダクタンスGoscが臨界値)となるようにデジタルコードを設定する。制御部4は、デジタルコードを設定した後は、当該デジタルコードをデジタル信号により電流調整部23のスイッチ制御部321と、信号処理部5との双方に送信する。
ここで、負性コンダクタンスGoscの絶対値とコンダクタンスGcoilの絶対値とは一致させるのが好ましいが、必ずしも一致させる必要はなく、負性コンダクタンスGoscの絶対値がコンダクタンスGcoilの絶対値におおよそ等しいとみなせる範囲(例えば上記臨界値よりやや小さい値)であれば問題はない。したがって、本実施形態では、制御部4は、モニタ部3より得た発振振幅VTが所定の範囲内の値(負性コンダクタンスGoscの絶対値とコンダクタンスGcoilの絶対値とがおおよそ等しいとみなせる範囲における発振振幅VTの値)になるように、デジタルコードを設定する。
信号処理部5は、入力されたデジタル信号(制御部4より出力されたデジタル信号)からデジタルコードを取得する機能を備え、当該機能により取得したデジタルコードに基づいてアナログ形式の電気信号からなる検知信号(例えば、被検知体と検知コイル10との距離に比例して値が大きくなる信号)を作成し、図示しない外部機器(例えば、パーソナルコンピュータやプログラマブルコントローラなどの制御装置)に出力する。上記検知信号は、例えば、デジタルコード(のビットパターン)と、被検知体と検知コイル10との距離との関係を示すデータテーブルや、デジタルコードにより表される値(本実施形態の場合であれば、値が”1”であるビットの総数)を被検知体と検知コイル10との距離に変換する演算式などを利用することができる。なお、デジタルコードにより表される値としては、デジタルコードを10進数に変換した値を採用することもできる。この種のデータテーブルや上記演算式は、実際の測定結果などから求めることができる
上述したように信号処理部5は、デジタルコードに基づいて検知信号を作成し出力するが、当該検知信号を閾値処理することで、被検知体が存在しているか否かのデジタルな検知信号を作成し出力するようにしてもよい。例えば、信号処理部5は、検知信号(アナログな検知信号)の値が所定の閾値以上である場合に、被検知体が検知コイル10の検知範囲内に存在し、所定の閾値未満である場合に、被検知体が検知コイル10の検知範囲外に存在すると判断して、被検知体の存否を示す検知信号(デジタルな検知信号)を出力するように構成されていてもよい。このようにすれば、被検知体との距離に加えて、被検知体の存在検知も同時に行えるようになる。
本実施形態の近接センサは上述した構成を有しており、以下にその動作について簡単に説明する。近接センサが動作を開始すると、LC共振回路部1の両端には所定周波数(検知コイル10のインダクタンスとコンデンサ11の静電容量とで決定される周波数)の発振電圧が生じる。LC共振回路部1の発振は、発振回路部2より供給される帰還電流Ifbによって維持される。
LC共振回路部1の発振振幅VTはモニタ部3により検出され、制御部4はモニタ部3にて検出した発振振幅VTに基づき、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscが上記臨界値となるようにデジタルコードを設定し、当該デジタルコードをデジタル信号により電流調整部23に送信して出力電流Io(=帰還電流Ifb)の大きさを調整する。制御部4が出力するデジタル信号は信号処理部5にも入力され、信号処理部5では入力されたデジタル信号のデジタルコードに基づいて検知信号が作成される。
ここで、被検知体が検知コイル10に接近し、検知コイル10における渦電流損が大きくなると、検知コイル10のコンダクタンスGcoilの絶対値が負性コンダクタンスGoscの絶対値より大きくなる。そのため、上記発振条件を満たさなくなって、LC共振回路部1の発振が停止しようとし、発振振幅VTが小さくなる。制御部4は、モニタ部3で検出した発振振幅VTが上記所定範囲内の値にならなくなると、発振振幅VTが上記所定範囲内の値となるように出力電流Ioを調整する(負性コンダクタンスGoscを調整する)。上記の場合、制御部4は、負性コンダクタンスGoscの絶対値を大きくするために、出力電流Ioが大きくなるようにデジタルコードを設定する。そして、信号処理部5は、制御部4により新たに設定されたデジタルコードに基づいて検知信号を作成して出力する。
上記とは逆に被検知体が検知コイル10から離れ、検知コイル10における渦電流損が小さくなると、検知コイル10のコンダクタンスGcoilの絶対値が負性コンダクタンスGoscの絶対値より小さくなり、その結果、発振振幅VTが大きくなる。制御部4は、モニタ部3で検出した発振振幅VTが上記所定範囲内の値にならなくなると、発振振幅VTが上記所定範囲内の値となるように出力電流Ioを調整するから、上記の場合、負性コンダクタンスGoscの絶対値を小さくするために、出力電流Ioが小さくなるようにデジタルコードを設定する。そして、信号処理部5は、制御部4により新たに設定されたデジタルコードに基づいて上記検知信号を作成して出力する。
上述したように信号処理部5からは、制御部4で設定されたデジタルコードに基づく検知信号が出力され、当該検知信号をモニタすることによって、被検知体と検知コイル10との距離、つまり位置関係を知ることができる。
以上述べたように、発振回路部2は、制御部4で設定されたデジタルコードに対応した出力電流Ioを出力するD/Aコンバータよりなる電流調整部23を有し、当該電流調整部の出力電流Ioに正比例する帰還電流Ifb(本実施形態の場合は出力電流Ioと帰還電流Ifbとは等しい)をLC共振回路部1に供給し、制御部4は、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscが臨界値となるようにデジタルコードが設定されたデジタル信号を電流調整部23に出力し、信号処理部5は、制御部4より出力されたデジタル信号のデジタルコードに基づいて検知信号を作成する。
そして、LC共振回路部1が発振する条件は、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの絶対値が、検知コイル10のコンダクタンスGcoilの絶対値以上であることであるから、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscがLC共振回路部1が発振可能な臨界値である場合、当該負性コンダクタンスGoscの絶対値は、検知コイル10のコンダクタンスGcoilの絶対値に等しいと考えることができ、ここで、検知コイル10のコンダクタンスGcoilは、被検知体と検知コイル10との距離に起因する渦電流損の変化、つまり検知コイル10と被検知体との距離に応じて変化し、検知コイル10のコンダクタンスGcoilに等しい発振回路部2の負性コンダクタンスGoscは、LC共振回路部1に供給される帰還電流IfbとLC共振回路部1の発振振幅VTによって決定される。
そして、本実施形態の近接センサでは、LC共振回路部1に供給される帰還電流Ifbは電流調整部23の出力電流Ioに正比例するので、電流調整部23に入力するデジタル信号のデジタルコードにより検知コイル10と被検知体との距離を求めることができるから、デジタルコードを用いることで、従来例のような被検知体が存在しているか否かのデジタルな検知信号ではなく、被検知体と検知コイル10との距離を示すアナログな検知信号を得ることができる。また、検知信号を閾値処理することで、被検知体が存在しているか否かのデジタルな検知信号も得ることもできる。
したがって、本実施形態の近接センサによれば、被検知体の存在検知に加え、被検知体との距離も検知できる。また、デジタルコードを用いるために、各種通信やPWMなどに使用するデジタル信号を容易に得ることができる(すなわちデジタル信号の親和性が高くなる)。しかも、デジタル信号を取り扱う回路は微細パターンでの小型化が容易であるため、制御部や発振回路部などをIC化する際に低コスト化を図ることができ、またセンサ特性にICばらつきによる影響が生じてしまうことを抑制することができる。
また、信号処理部5は、制御部4からデジタルコードを取得し、当該デジタルコードを用いて検知信号を作成するので、例えば、負性コンダクタンスGoscの大きさを得るために帰還電流Ifbなどを利用する場合とは異なり、帰還電流Ifbの大きさを検出する検出回路などが必要なくなるから、回路構成を簡素化することができて、小型化、製造コストの低減などが図れる。
特に、本実施形態における発振回路部2は、電流調整部23の出力電流Ioを帰還電流IfbとしてLC共振回路部1に供給しており、また電流調整部23はLC共振回路部1の発振電圧VTに応じた電流(増幅電流Ib)を基準電流とする入力側トランジスタITr、および基準電流に比例した大きさのミラー電流Imを基準電源VccからLC共振回路部1に供給させる複数の出力側トランジスタOTtを有し、ミラー電流Imを加算して出力電流Ioを作成するカレントミラー回路部230と、ミラー電流ImをLC共振回路部1に供給するか否かを決定するスイッチSWと、入力されたデジタル信号のデジタルコードに応じてスイッチを制御するスイッチ制御部231とを有してなるので、カレントミラー回路部とD/Aコンバータとを別個に設ける場合に比べれば、回路規模を小型化することができ、低コスト化が図れる。
また、スイッチSWは、出力側トランジスタOTr(のエミッタ)と基準電源Vccとの間に挿入されているので、出力電流Ioを小さくする際(スイッチSWをオフにした際)には、ミラー電流Imが遮断されるから(出力側トランジスタOTrにはミラー電流Imが流れないから)、低消費電力化を図ることができる。なお、スイッチSWは、出力側トランジスタOTr(のベース)と入力側トランジスタITr(のベース)との間に挿入するようにしてもよく、このようにした場合であっても、出力電流Ioを小さくする際(スイッチSWをオフにした際)には、出力側トランジスタOTrにミラー電流Imが流れなくなるから、低消費電力化を図ることができる。すなわち、スイッチSWは、出力側トランジスタOTrと入力側トランジスタITrとの間、あるいは出力側トランジスタOTrと基準電源Vccとの間のいずれかに挿入されていればよい。
また、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とはモノリシックICとして一体化されているので、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とをそれぞれ別のICなどにより構成する場合に比べれば、小型化が図れるとともに低コスト化が図れ、さらに耐ノイズ性能を向上できる。
なお、本実施形態における発振回路部2や、モニタ部3の回路構成はあくまでも一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない程度に変更することができる。例えば、発振回路部2の出力側トランジスタOTrおよびスイッチSWの数は、図示例の4つに限定されず、例えば、8、16、32などの4より大きい数、あるいは2、3などの4より小さい数であってもよい。当然ながら出力側トランジスタOTrおよびスイッチSWの数が多いほど出力電流Ioの変化範囲や、変化幅を細かく設定することができるから、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。このような点は、後述する実施形態2〜6においても同様である。
ところで、モニタ部3としては、発振振幅を示す値として、図1に示すような発振電圧のピーク値を検出する構成の他に、発振電圧の積分値を検出する構成や、発振電圧の実効値を検出する構成であってもよく、このように交流成分のみを検波し、それが一定になるように制御する方式にすると、バイアス電流や検知コイル10の直流抵抗分の影響(当然、それらの温度特性も)を排除することが可能になるという利点がある。ところで、本実施形態の近接センサは、常時はLC共振回路部1が発振しており、被検知体の接近によってLC共振回路部1の発振が停止する近接センサを利用しているが、常時はLC共振回路部1の発振が停止しており、被検知体の接近によってLC共振回路部1が発振する近接センサを利用するようにしてもよい。ところで、本実施形態における検知コイル10のコンダクタンスGcoilは、被検知体との距離のほかに、LC共振回路部1の発振周波数によっても変化する。つまり、コンデンサ11の容量が変化した場合であっても、検知コイル10のコンダクタンスGcoilが変化する。したがって、本実施形態の近接センサは、静電容量センサとしても利用することができ、この場合であっても、制御部4が設定するデジタルコードをセンサの出力として利用することができる。また、本実施形態では、トランジスタ210や、増幅用トランジスタBTr、入力側トランジスタITr、出力側トランジスタOTrとして、バイポーラトランジスタを利用した近接センサの回路の構成例を示しているが、トランジスタとしてはMOSトランジスタ(MOSFET)を利用してもよい。このような点は、後述する実施形態2〜14においても同様である。
(実施形態2)
本実施形態の近接センサは、図2に示すように、発振回路部2の電流調整部23の構成が実施形態1と異なっており、その他の構成は実施形態1と同様であるから、同様の構成については実施形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における電流調整部23では、出力側トランジスタOTrのコレクタそれぞれとLC共振回路部1との間に逆流阻止用のダイオードDが挿入されている。また、スイッチSWは、上記実施形態1では出力側トランジスタOTrのエミッタと基準電源Vccとの間に挿入されていたが、本実施形態では出力側トランジスタOTrのエミッタと基準電位との間に挿入されている。なお、ダイオードDのアノードは出力側トランジスタOTrにカソードはLC共振回路部1に接続されている。
上記構成の本実施形態における電流調整部23では、スイッチSWがオンであれば、出力側トランジスタOTrのエミッタが基準電位に接続されて、ミラー電流Imは基準電位に流れる。一方、スイッチSWがオフであれば、出力側トランジスタOTrのエミッタと基準電位との間は遮断されて、ミラー電流ImはダイオードDを経由してLC共振回路部1に流れる。
つまり、本実施形態における電流調整部23は、ミラー電流ImをLC共振回路部1に供給する供給路(ダイオードDを通る電路)と、ミラー電流ImをLC共振回路部1に供給しない非供給路(スイッチSWを通る電路)とを有する。そして、供給路と非供給路とのいずれにミラー電流Imが流れるかは、スイッチSWがオンであるかオフであるかによって決定される(すなわち、スイッチSWにより選択される)。
本実施形態の近接センサでは、供給路と非供給路との切り換えによって出力電流Ioが調整されるので、出力側トランジスタOTrにはスイッチSWの制御状態(オン・オフ)に関わらずミラー電流Imが流れる。そのため、本実施形態の近接センサによれば、実施形態1のようにスイッチSWがオンであるときだけ、出力側トランジスタOTrにミラー電流Imが流れるものとは異なり、ミラー電流Imの供給開始や供給停止に伴う出力側トランジスタOTrにおける電流変動が生じることがないから、このような電流変動によって、入力側トランジスタITrの基準電流が変動してしまうことを防止することができ、安定した動作が可能になる。本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態1と同様であるから説明を省略する。
なお、ミラー電流ImをLC共振回路部1に供給する供給路と、ミラー電流ImをLC共振回路部1に供給しない非供給路との構成は図示例のものに限定されず、使用形態などに応じて適宜変更することができる。
(実施形態3)
本実施形態の近接センサは、発振回路部2の電流調整部23、特にカレントミラー回路部230の構成が実施形態1と異なっており、その他の構成は実施形態1と同様であるから、同様の構成については実施形態1と同一の符号を付して図示および説明を省略する。
本実施形態におけるカレントミラー回路部230は、出力側トランジスタOTr1〜OTr4のエミッタサイズがいずれも異なっている。さらに詳しく説明すると、出力側トランジスタOTr1は入力側トランジスタITrとエミッタサイズが等しいが、出力側トランジスタOTr2〜Tr4それぞれのエミッタサイズは入力側トランジスタITrのエミッタサイズの2倍、4倍、8倍としている。
そのため、本実施形態におけるカレントミラー回路部230では、ミラー電流Im1は基準電流(=増幅電流Ib)に等しいが、ミラー電流Im2は2×Ib、ミラー電流Im3は4×Ib、ミラー電流Im4は8×Ib)になる。
つまり、ミラー比Mnは一律に1ではなく、Mn=2n−1である。ここで、スイッチSW1〜SW4それぞれは第0〜第3ビットそれぞれに対応しているから、ミラー比Mnは、スイッチSWnに関係付けられたビットのビット番号を指数として2を累乗した値である。
換言すれば、本実施形態におけるカレントミラー回路230では、ビット番号が0であるビットに関係付けられたスイッチSW1によりLC共振回路部1に供給するか否かが決定されるミラー電流(スイッチSW1に対応するミラー電流)Im1を基準ミラー電流とすると、ビット番号が0以外、例えばビット番号1であるビットに関係付けられたスイッチSW2に対応するミラー電流Im2と基準ミラー電流Im1との比(=Im2/Im1)は、スイッチSW2に対応するビットのビット番号(すなわち1)を指数として2を累乗した値(=2)である。同様に、スイッチSW3,SW4それぞれに対応するミラー電流Im3,Im4と基準ミラー電流Im1との比(=Im3/Im1、あるいはIm4/Im1)は、スイッチSW3,SW4に対応するビットのビット番号(すなわち2,3)を指数として2を累乗した値(=4,8)である。
例えば、デジタルコードが”0001”であればIo=1×Ibになり、”0101”であればIo=4×Ib+1×Ib=5×Ibになる。デジタルコードがストレート・バイナリコードであれば、デジタルコードにより表される十進数の値が、出力電流Ioの倍率(=Io/Ib)に等しくなる。したがって、デジタルコードが4ビットであれば、出力電流Ioを16種類の値(0含む)の中から選択することができる。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、出力側トランジスタOTrの数が同じであれば、実施形態1のように出力側トランジスタOTrのエミッタサイズがいずれも同じ(出力側トランジスタOTrのミラー電流Imの大きさが全て同じ)である場合に比べて、出力可能な出力電流Ioの値を増やすことができるから、出力電流Ioを細かく設定することができるようになって、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。
特に、ビット番号が0以外であるビットに関係付けられたスイッチSWによりLC共振回路部1に供給するか否かが決定されるミラー電流Imと基準ミラー電流Im1との比は、スイッチSWに対応するビットのビット番号を指数として2を累乗した値であるので、ストレート・バイナリコードなどの2進数のデジタルコードによって出力電流Ioを設定でき、スイッチSWnの数を少なくしながらも、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態1と同様であるから説明を省略する。
ところで、上記の例では、ミラー電流Imnと基準ミラー電流Im1との比(本実施形態の場合はミラー比Mnに等しい)をスイッチSWnに関係付けられたビットのビット番号を指数として2を累乗した値としているが、必ずしも上記のように比を設定する必要はなく、要は、複数の出力側トランジスタOTrのうちの少なくとも1つは、トランジスタサイズ(あるいはエミッタサイズ)が他と異なっていればよく、このようにすれば、トランジスタサイズがいずれも同じである場合よりも分解能の向上を図ることができる。また、本実施形態におけるカレントミラー回路230の構成は実施形態2に適用することができる。
(実施形態4)
本実施形態の近接センサは、図3に示すように、発振回路部2の電流調整部23、特にカレントミラー回路部230の構成が実施形態1と異なっており、その他の構成は実施形態1と同様であるから、同様の構成については実施形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態におけるカレントミラー回路部230では、入力側トランジスタITrのエミッタと基準電位Vccとの間に基準用のエミッタ抵抗として抵抗部Rrefが挿入されるとともに、複数の出力側トランジスタOTrのエミッタとそれぞれ対応するスイッチSWとの間に個別にミラー電流制限用(ミラー比設定用)のエミッタ抵抗として抵抗部Rmが挿入される。なお、以下の説明では、出力側トランジスタOTr1〜OTr4それぞれに対応する抵抗部Rmを必要に応じて符号Rm1〜Rm4で表す。また、本実施形態では、実施形態1と同様に、入力側トランジスタITrおよび複数の出力側トランジスタOTrのエミッタサイズはいずれも等しい。
本実施形態においては、複数の抵抗部Rmは抵抗値がいずれも異なっている。さらに詳しく説明すると、抵抗部Rm4の抵抗値は抵抗部Rrefの抵抗値と等しいが、抵抗部Rm1〜Rm3それぞれの抵抗値は抵抗部Rm4の抵抗値の8倍、4倍、2倍としている。すなわち、Rref:Rm1:Rm2:Rm3:Rm4=8:1:2:4:8である。
したがって、ミラー電流Im4は基準電流(=増幅電流Ib)に等しいが、ミラー電流Im1=Im4/8、ミラー電流Im2=Im4/4、ミラー電流Im3=Im4/2になる。そのため、本実施形態におけるカレントミラー回路部230では、ミラー比Mnは一律に1ではなく、Mn=2n−tである(ただしtはデジタルコードの総ビット数であり、本実施形態では4である)。本実施形態におけるカレントミラー回路230では、スイッチSW1に対応するミラー電流Im1を基準ミラー電流とすると、スイッチSW2,SW3,SW4それぞれに対応するミラー電流Im2,Im3,Im4それぞれと基準ミラー電流Im1との比は、それぞれ2(=21)、4(=22)、8(=23)になり、各指数はスイッチSWnに対応するビットのビット番号に等しい。例えば、デジタルコードが”0001”であればIo=1×Im1になり、”0101”であればIo=5×Im1になる。したがって、デジタルコードが4ビットであれば、出力電流Ioを16種類の値(0含む)の中から選択することができる。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、出力側トランジスタOTrの数が同じであれば、実施形態1のようにミラー電流Imがいずれも同じである場合(あるいは、抵抗部Rmの抵抗値がいずれも等しい場合)に比べて、出力可能な出力電流Ioの値を増やすことができるから、出力電流Ioを細かく設定することができて、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。
特に、スイッチSWnによりLC共振回路部1に供給するか否かが決定されるミラー電流Imnと基準ミラー電流Im1との比は、スイッチSWnに対応するビットのビット番号を指数として2を累乗した値であるので、ストレート・バイナリコードなどの2進数のデジタルコードによって出力電流Ioを設定でき、スイッチSWの数を少なくしながらも、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態2と同様であるから説明を省略する。
ところで、上記の例では、ミラー電流Imnと基準ミラー電流Im1との比をスイッチSWnに関係付けられたビットのビット番号を指数として2を累乗した値としているが、必ずしも上記のように比を設定する必要はなく、要は、複数の抵抗部Rmのうちの少なくとも1つは抵抗値が他と異なっていれば、抵抗部Rmの抵抗値がいずれも同じである場合よりも、分解能の向上を図ることができる。
(実施形態5)
本実施形態の近接センサは、図4に示すように、発振回路部2の電流調整部23、特にカレントミラー回路部230の構成が実施形態4と異なっており、その他の構成は実施形態2と同様であるから、同様の構成については実施形態4と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態におけるカレントミラー回路部230は、出力側トランジスタOTrを5つ備える。なお、以下の説明では、5つの出力側トランジスタOTrを区別するために必要に応じて符号OTr0〜OTr4で表す。また、出力側トランジスタOTr0〜OTr4それぞれに対応するミラー電流Imを必要に応じてIm0〜Im4で表す。
出力側トランジスタOTr1〜OTr4については、実施形態2と同様に、ミラー電流Im0をLC共振回路部1に供給する供給路と、ミラー電流Im0をLC共振回路部1に供給しない非供給路とが設けられている。一方、出力側トランジスタOTr0については、ミラー電流Im0をLC共振回路部1に供給する供給路のみが設けられ、ミラー電流Im0をLC共振回路部1に供給しない非供給路は設けられていない。したがって、ミラー電流Im0は、デジタルコードのビットの値に関係なく(スイッチSWの制御状態に関係なく)、LC共振回路部1に供給される。つまり、出力側トランジスタOTr0は、オフセット用の出力側トランジスタOTrである。
また、本実施形態では、実施形態4と同様に、入力側トランジスタITrのエミッタと基準電位Vccとの間に基準用のエミッタ抵抗として抵抗部Rrefが挿入されるとともに、複数の出力側トランジスタOTrのエミッタと基準電源Vccとの間に個別にミラー電流制限用(ミラー比設定用)のエミッタ抵抗として抵抗部Rmが挿入される。なお、以下の説明では、出力側トランジスタOTr0〜OTr4それぞれに対応する抵抗部Rmを必要に応じて符号Rm0〜Rm4で表す。また、本実施形態では、入力側トランジスタITrおよび複数の出力側トランジスタOTrのエミッタサイズはいずれも等しくしている。
上述した抵抗部Rmは抵抗値がいずれも異なっており、抵抗部Rm4の抵抗値は抵抗部Rrefの抵抗値と等しい(すなわちミラー電流Im4=Ib)が、抵抗部Rm0〜Rm3それぞれの抵抗値は抵抗部Rm4の抵抗値の1/4倍、8倍、4倍、2倍としている。すなわち、Rref:Rm0:Rm1:Rm2:Rm3:Rm4=8:32:1:2:4:8である。したがって、ミラー電流Im0=4×Im4、ミラー電流Im1=Im4/8、ミラー電流Im2=Im4/4、ミラー電流Im3=Im4/2になる。ここで、ミラー電流Im1を基準ミラー電流とすると、ミラー電流Im2〜Im4と基準ミラー電流Im1との比は、スイッチSW2〜SW4に対応するビットのビット番号を指数として2を累乗した値である。そのため、デジタルコードが”0001”であればIo=Im0+Im1になり、”0101”であればIo=Im0+5×Im1になる。したがって、本実施形態においても実施形態4と同様に、デジタルコードが4ビットであれば、出力電流Ioを16種類の値(0含む)の中から選択することができる。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、カレントミラー回路部230は、デジタルコードのビットの値に関係なくミラー電流Im0を基準電源VccからLC共振回路部1に供給させるオフセット用の出力側トランジスタOTr0を有しているので、出力電流Ioにオフセットを設けることができるから、オフセットを設けない場合に比べて、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。
例えば、検知コイル10のコンダクタンスGcoilが400μs〜600μsの範囲で変化するときに、負性コンダクタンス|Gosc|に400μsのオフセットを設け、負性コンダクタンス|Gosc|の変化幅を0〜200μsとすれば、負性コンダクタンス|Gosc|の変化幅を0〜600μsとする場合に比べれば、デジタルコードのビット数を同じであるにも関わらず、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を3倍ほど向上させることができる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態2と同様であるから説明を省略する。また、上述したオフセット用の出力側トランジスタOTr0は、実施形態1〜3にも設けることができる。
(実施形態6)
本実施形態の近接センサは、図5に示すように、発振回路部2の電流調整部23と、制御部4の構成が実施形態1と異なっており、その他の構成は実施形態1と同様であるから、同様の構成については実施形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における電流調整部23は、スイッチ制御部231を有していない点で実施形態1と異なる。なお、その他の構成は実施形態1と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における制御部4は、例えばCPUおよびメモリを具備したマイクロコンピュータなどにより構成されており、当該マイクロコンピュータのメモリの記憶領域に、デジタルコードを書き込むデータレジスタ(アキュムレータ)が設けられている。このデータレジスタの総ビット数はデジタルコードの総ビット数に等しく、デジタルコードの第Nビットはデータレジスタの第Nビットに対応する(ただし、Nは0以上の整数)。なお、当該デジタルコードは、上記実施形態1と同様に、モニタ部3の検出結果に基づいて設定されるものである。
本実施形態における制御部4には、複数のスイッチSWそれぞれに制御信号を出力する複数の制御信号出力部(図示せず)が設けられており、当該複数の制御信号出力部それぞれはデータレジスタの各ビットと一対一で関係付けられている(換言すれば、複数のスイッチSWそれぞれはデータレジスタの各ビットと一対一で関係付けられている)。ここで、データレジスタの最下位ビットである第0ビット(ビット番号が0であるビット)がスイッチSW1に、第1ビット(ビット番号が1であるビット)がスイッチSW2に、第2ビット(ビット番号が2であるビット)がスイッチSW3に、最上位ビットである第3ビット(ビット番号が3であるビット)がスイッチSW4にそれぞれ対応している。
このような制御信号出力部は、対応するデータレジスタのビット値に応じてスイッチSWに制御信号を出力する。例えば、制御信号出力部は、データレジスタのビット値が”1”であればスイッチSWをオン、ビット値が”0”であればスイッチSWをオフするようにスイッチSWに制御信号を出力する。例えば、デジタルコードが、”1010”であれば、データレジスタも”1010”になり、第1ビットおよび第3ビットそれぞれに関係付けられた各制御信号出力部からはスイッチSWをオンにする制御信号が出力され、第0ビットおよび第2ビットそれぞれに関係付けられた各制御信号出力部からはスイッチSWをオフにする制御信号が出力される。その結果、スイッチSW2,SW4はオン、スイッチSW1,SW3はオフになる。なお、本実施形態では、制御部4から電流調整部23には制御信号が個別に出力されるが、信号処理部5には、実施形態1と同様にデジタルコードを示すデジタル信号が出力される。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、スイッチ制御部231の構成を省略することができ、データレジスタのビット値によって直接的に発振回路部2の負性コンダクタンスの値を変更することが可能になるから、ハードウェア構成を簡単にすることができて、低コスト化を図ることができる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態2と同様であるから説明を省略する。また、本実施形態の電流調整部23および制御部4の構成は、実施形態2〜5にも適用することができる。
(実施形態7)
本実施形態の近接センサは、図6に示すように、発振回路部2の構成が実施形態1と異なっており、その他の構成については実施形態1と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における発振回路部2は、バイアス回路20と、レベルシフト回路21と、電流調整部23と、カレントミラー回路部24とを有している。なお、バイアス回路20とレベルシフト回路21とについては実施形態1と同様のものであるから説明を省略する。
カレントミラー回路部24は、実施形態1のカレントミラー回路部231とは異なる構成のものであって、電流調整部23の出力電流Ioを基準電流とする入力側トランジスタITrおよび基準電流に比例した大きさのミラー電流Imよりなる帰還電流Ifbを基準電源VccからLC共振回路部1に供給させる出力側トランジスタOTrとで構成される。入力側トランジスタITrと、出力側トランジスタOTrとはいずれも同じエミッタサイズのpnp形のトランジスタよりなる。
入力側トランジスタITrのエミッタは基準電源Vccに接続され、入力側トランジスタITrのコレクタとベースとは相互に接続される。一方、出力側トランジスタOTrのエミッタは基準電源Vccに接続され、コレクタはトランジスタ210のエミッタとコンデンサ11との間に接続される。また、出力側トランジスタOTrのベースは、入力側トランジスタITrのベースに接続される。
このカレントミラー回路部24では、電流調整部23の出力電流Ioが基準電流として入力側トランジスタITrに与えられ、出力側トランジスタOTrにより、基準電流に比例した大きさのミラー電流Imが基準電源VccからLC共振回路部1に供給される。ここで、入力側トランジスタITrと、出力側トランジスタOTrとはエミッタサイズが同じにしてあり、これによってミラー比を1としているから、ミラー電流Imは出力電流Ioに等しい。
本実施形態における電流調整部23は、実施形態1とは異なり、LC共振回路部1の発振電圧に応じた増幅電流Ibを基準電源Vccから入力側トランジスタITrに供給させる複数(図示例では4つ)の増幅回路232aを有する増幅部232を備えたものである。
増幅回路232aは、npn形のトランジスタよりなる増幅用トランジスタBTrを有する。増幅用トランジスタBTrのコレクタは入力側トランジスタITrのコレクタに接続される。また、増幅用トランジスタBTrのベースはレベルシフト回路21のトランジスタ210のベースに接続される。したがって、増幅用トランジスタBTrのベースには、レベルシフト回路21によりレベルシフトされたトランジスタ210のエミッタの電位、すなわちレベルシフト回路21により生成されたレベルシフト電圧が入力される。
ここで、レベルシフト回路21は、増幅用トランジスタBTrのベース−エミッタ間電圧の分だけ発振電圧をレベルシフトするように構成されており、これによって、増幅用トランジスタBTrのエミッタとグラウンドとの間に、発振の正の半サイクルのみ、LC共振回路部1の発振電圧に等しい電圧が印加されるようにしている。
一方、増幅用トランジスタBTrのエミッタはエミッタ電位設定用(増幅電流制限用)の抵抗器である抵抗部Rbを介してグラウンド(グランド)に接続され(接地され)ている。すなわち、増幅回路232aは、所謂エミッタフォロワ回路である。
したがって、増幅回路232aからは、LC共振回路部1の発振電圧に応じた電流である増幅電流Ibが出力される。本実施形態では、増幅用トランジスタBTrおよび抵抗部Rbはいずれも同じものを用いており、これによって各増幅回路232aにおける増幅電流Ibは全て等しい。なお、以下の説明では、複数の増幅回路232aを区別するために必要に応じて符号232a1〜232a4で表す。また、増幅回路232a1〜232a4それぞれに対応する増幅電流Ibを必要に応じて符号Ib1〜Ib4で、増幅用トランジスタBTrを必要に応じて符号BTr1〜BTr4で、抵抗部RbをRb1〜Rb4でそれぞれ表す。
また、電流調整部23は、増幅回路232aの抵抗部Rbそれぞれと基準電位との間にそれぞれ挿入された複数のスイッチSWと、複数のスイッチSWを制御するスイッチ制御部231とを有する。
スイッチSWは、例えば半導体スイッチング素子よりなり、オン時に抵抗部Rbと基準電位とを接続し、オフ時に抵抗部Rbと基準電位とを非接続とする。そのため、スイッチSWがオフであるときには、増幅電流Ibが入力側トランジスタITrに供給されない。つまりスイッチSWの制御状態(オン・オフ)によって、各増幅回路232aの増幅電流Ibが入力側トランジスタITrに供給されるか否かが決まる。なお、以下の説明では、増幅回路232a1〜232a4それぞれに対応するスイッチSWを必要に応じて符号SW1〜SW4で表す。
スイッチ制御部231は、例えば所定のプログラムを実行するマイクロコンピュータやロジック回路などにより構成される。上記のデジタルコードは、例えば4ビットのストレート・バイナリコードであり、スイッチSWは、デジタルコードの各ビットと一対一で関係付けられている。例えば、デジタルコードの最下位ビットである第0ビット(ビット番号が0であるビット)はスイッチSW1に、第1ビット(ビット番号が1であるビット)はスイッチSW2に、第2ビット(ビット番号が2であるビット)はスイッチSW3に、最上位ビットである第3ビット(ビット番号が3であるビット)はスイッチSW4にそれぞれ対応する。そして、スイッチ制御部231は、デジタルコードのビットの値が”0”であれば、スイッチSWをオフ、”1”であればスイッチSWをオンにする。
例えば、デジタルコードが、”1010”であれば、スイッチ制御部231は、スイッチSW2,SW4をオン、スイッチSW1,SW3をオフとする。この場合、入力側トランジスタITrには、増幅電流Ib2,Ib4が供給されるから、電流調整部23の出力電流Ioは、増幅電流Ib2と増幅電流Ib4とを加算した電流となる。
つまり、増幅部232は、基準電源Vccから入力側トランジスタITrに供給される増幅電流Ibを加算して出力電流Ioを作成するから、出力電流Ioは、次式(6)で表すことができる。なお、δnは、スイッチSWnのオン・オフを示す関数であり、スイッチSWnがオンであればδn=1、スイッチSWnがオフであればδn=0とする。
本実施形態では、増幅電流Ibは全て等しいため、出力電流Ioは、オンになっているスイッチSWの数によって決定される。したがって、本実施形態における出力電流Ioは、0、Ib、2Ib、3Ib、4Ibの5つの値をとり得る。
このように発振回路部2は、制御部4で設定されたデジタルコード(電流調整部23に入力されたデジタル信号のデジタルコード)に対応した出力電流Ioを出力するD/Aコンバータよりなる電流調整部23と、出力電流Ioに等しいミラー電流Imを帰還電流IfbとしてLC共振回路部1に供給するカレントミラー回路部24とを有しており、本実施形態においては、Ifb=Ioが成立する。
ここで、増幅用トランジスタBTrのエミッタとグラウンドとの間には、発振の正の半サイクルのみ、LC共振回路部1の発振電圧に等しい電圧が印加されるから、LC共振回路部1の発振振幅をVT、抵抗部Rbnの抵抗値をRnとすると、各増幅回路232aの増幅電流Ibnは次式(7)で表すことができる。
そうすると、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscは、上記式(3)および式(6),(7)により、次式(8)で表すことができる。
上記の式(8)より明らかなように、電流調整部23のスイッチSWのオン・オフ、すなわち電流調整部23に入力するデジタルコードによって、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの値を調整することができる。
ここで、LC共振回路部1が発振する条件は、実施形態1で述べたように、負性コンダクタンスGoscと検知コイル10のコンダクタンスGcoilとが、Gcoil≦|Gosc|の関係にあるときであり、上述の臨界値は、−Gcoilである。
そのため、負性コンダクタンスGoscが臨界値である場合には、コンダクタンスGcoilは次式(9)で表すことができる。
したがって、本実施形態においても、実施形態1と同様に、制御部4で設定されたデジタルコードを用いて検知コイル10と被検知体との距離を検出することができる。なお、本実施形態の近接センサの動作は実施形態1と同様であるから、説明を省略する。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、実施形態1と同様に、被検知体の存在検知に加え、被検知体との距離も検知できる。また、デジタルコードを用いるために、各種通信やPWMなどに使用するデジタル信号を容易に得ることができる(すなわちデジタル信号の親和性が高くなる)。しかも、デジタル信号を取り扱う回路は微細パターンでの小型化が容易であるため、制御部や発振回路部などをIC化する際に低コスト化を図ることができ、またセンサ特性にICばらつきによる影響が生じてしまうことを抑制することができる。また、信号処理部5は、制御部4からデジタルコードを取得し、当該デジタルコードを用いて検知信号を作成するので、例えば、負性コンダクタンスGoscの大きさを得るために帰還電流Ifbなどを利用する場合とは異なり、帰還電流Ifbの大きさを検出する検出回路などが必要なくなるから、回路構成を簡素化することができて、小型化、製造コストの低減などが図れる。また、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とはモノリシックICとして一体化されているので、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とをそれぞれ別のICなどにより構成する場合に比べれば、小型化が図れるとともに低コスト化が図れ、さらに耐ノイズ性能を向上できる。
特に、本実施形態における発振回路部2は、電流調整部23の出力電流Ioを基準電流とする入力側トランジスタITrと、基準電流に比例した大きさのミラー電流Imよりなる帰還電流Ifbを基準電源VccからLC共振回路部1に供給させる出力側トランジスタOTrとを有したカレントミラー回路部24を有するとともに、LC共振回路部1の発振電圧に応じた増幅電流Ibを基準電源Vccから入力側トランジスタITrに供給させる複数の増幅回路232aを有し、増幅電流Ibを加算して出力電流Ioを作成する増幅部232と、増幅電流Ibを入力側トランジスタITrに供給するか否かを決定するスイッチSWと、入力されたデジタル信号のデジタルコードに応じてスイッチSWを制御するスイッチ制御部231とを備えた電流調整部23を有してなるので、増幅回路とD/Aコンバータとを別個に設ける場合に比べれば、回路規模を小型化することができ、低コスト化が図れる。
また、スイッチSWは、増幅用トランジスタBTr(のエミッタ)と基準電位との間に挿入されているので、増幅電流Ibを小さくする際(スイッチSWをオフにした際)には、増幅電流Ibが遮断され、増幅用トランジスタBTrには増幅電流Ibが流れないから、低消費電力化を図ることができる。なお、スイッチSWは、増幅用トランジスタBTr(のベース)とレベルシフト回路21のトランジスタ210(のベース)との間に挿入するようにしてもよく、このようにした場合であっても、増幅電流Ibを小さくする際(スイッチSWをオフにした際)には、増幅用トランジスタBTrに増幅電流Ibが流れなくなるから、低消費電力化を図ることができる。すなわち、スイッチSWは、基準電位と他方の被制御電極(本実施形態の場合はエミッタ)との間、あるいはレベルシフト回路21の出力端と制御電極(本実施形態の場合はベース)との間に挿入されていればよい。
なお、増幅回路232aでは、エミッタフォロワ回路の代わりに、MOSFETを利用したソースフォロワ(ソースホロワ)回路を使用することも可能であり、この場合、ドレインが上記一方の被制御電極、ソースが上記他方の被制御電極、ゲートが上記制御電極として採用される。
なお、本実施形態における発振回路部2や、モニタ部3の回路構成はあくまでも一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない程度に変更することができる。例えば、発振回路部2の増幅回路232aおよびスイッチSWの数は、図示例の4つに限定されず、例えば、8,16,32などの4より大きい数、あるいは2,3などの4より小さい数であってもよい。当然ながら増幅回路232aおよびスイッチSWの数が多いほど出力電流Ioの変化範囲や、変化幅を細かく設定することができるから、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。
(実施形態8)
本実施形態の近接センサは、図7に示すように、発振回路部2の電流調整部23の構成が実施形態7と異なっており、その他の構成は実施形態7と同様であるから、同様の構成については実施形態7と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における電流調整部23では、増幅用トランジスタBTrのコレクタそれぞれと入力側トランジスタITrのコレクタとの間に逆流阻止用のダイオードDが挿入されている。また、スイッチSWは、上記実施形態7では増幅用トランジスタBTrのエミッタと基準電位との間に挿入されていたが、本実施形態では増幅用トランジスタBTrのコレクタとダイオードDとの接続点と基準電源Vcc電位との間に挿入されている。なお、ダイオードDのアノードは入力側トランジスタITrにカソードは増幅用トランジスタBTrに接続されている。
上記構成の本実施形態における電流調整部23では、スイッチSWがオンであれば、増幅用トランジスタBTrのコレクタが基準電源Vccに接続されて、増幅電流Ibは入力側トランジスタITrに流れない。一方、スイッチSWがオフであれば、増幅用トランジスタBTrのコレクタと基準電源Vccとの間は遮断されて、増幅電流Ibは入力側トランジスタITrのエミッタ−コレクタ間に流れる。
つまり、本実施形態における電流調整部23は、増幅電流Ibを入力側トランジスタITrに供給する供給路(ダイオードDを通る電路)と、増幅電流Ibを入力側トランジスタITrに供給しない非供給路(スイッチSWを通る電路)とを有する。そして、供給路と非供給路とのいずれに増幅電流Ibが流れるかは、スイッチSWがオンであるかオフであるかによって決定される(すなわち、スイッチSWにより選択される)。
本実施形態の近接センサによれば、供給路と非供給路との切り換えによって出力電流Ioが調整されるので、増幅用トランジスタBTrにはスイッチSWの制御状態(オン・オフ)に関わらず増幅電流Ibが流れる。そのため、本実施形態の近接センサによれば、実施形態7のようにスイッチSWがオンであるときだけ、増幅用トランジスタBTrに増幅電流Ibが流れるものとは異なり、増幅電流Ibの供給開始や供給停止によって、増幅用トランジスタBTrにおいて電流変動が生じることがないから、このような電流変動によって、入力側トランジスタITrの基準電流が変動してしまうことを防止することができ、安定した動作が可能になる。本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態7と同様であるから説明を省略する。
なお、増幅電流Ibを入力側トランジスタITrに供給する供給路と、増幅電流Ibを入力側トランジスタITrに供給しない非供給路との構成は図示例のものに限定されず、使用形態などに応じて適宜変更することができる。
(実施形態9)
本実施形態の近接センサは、発振回路部2の電流調整部23、特に増幅部232の構成が実施形態7と異なっており、その他の構成は実施形態7と同様であるから、同様の構成については実施形態7と同一の符号を付して図示および説明を省略する。
本実施形態における増幅部232は、増幅回路232aの抵抗部Rbの抵抗値がいずれも異なっている。さらに詳しく説明すると、抵抗部Rb1の抵抗値が最も大きく、抵抗部Rb2〜Rb4それぞれの抵抗値は抵抗部Rb1の抵抗値の1/2倍、1/4倍、1/8倍である。すなわち、Rb1:Rb2:Rb3:Rb4=8:4:2:1である。
そのため、本実施形態における増幅部232では、増幅電流Ib2は2×Ib1、増幅電流Ib3=4×Ib1、増幅電流Ib4=8×Ib1になる。
本実施形態における増幅部232では、ビット番号が0であるビットに関係付けられたスイッチSW1により入力側トランジスタITrに供給するか否かが決定される増幅電流(スイッチSW1に対応する増幅電流)Ib1を基準増幅電流とすると、ビット番号が0以外、例えばビット番号1であるビットに関係付けられたスイッチSW2に対応する増幅電流Ib2と基準増幅電流との比(=Ib2/Ib1)は、スイッチSW2に対応するビットのビット番号(すなわち1)を指数として2を累乗した値(=2)である。同様に、スイッチSW3,SW4それぞれに対応する増幅電流Ib3,Ib4と基準増幅電流との比(=Ib3/Ib1、あるいはIb4/Ib1)は、スイッチSW3,SW4に対応するビットのビット番号(すなわち2,3)を指数として2を累乗した値(=4,8)である。
例えば、デジタルコードが”0001”であればIo=1×Ib1になり、”0101”であればIo=4×Ib1+Ib1=5×Ib1になる。デジタルコードがストレート・バイナリコードであれば、デジタルコードにより表される十進数の値が、出力電流Ioと基準増幅電流との比(=Io/Ib1)に等しくなる。したがって、デジタルコードが4ビットであれば、出力電流Ioを16種類の値(0含む)の中から選択することができる。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、増幅回路232aの数が同じであれば、実施形態7のように増幅回路232aの抵抗部Rbの抵抗値がいずれも同じ(増幅回路232aの増幅電流Ibの大きさが全て同じ)である場合に比べて、出力可能な出力電流Ioの値を増やすことができるから、出力電流Ioを細かく設定することができるようになって、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。
特に、ビット番号が0以外であるビットに関係付けられたスイッチSWにより入力側トランジスタITrに供給するか否かが決定される増幅電流Ibnと基準増幅電流との比は、スイッチSWに対応するビットのビット番号を指数として2を累乗した値であるので、ストレート・バイナリコードなどの2進数のデジタルコードによって出力電流Ioを設定でき、スイッチSWnの数を少なくしながらも、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上できる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態7と同様であるから説明を省略する。
なお、上記の例では、増幅電流Ibnと基準増幅電流との比をスイッチSWnに関係付けられたビットのビット番号を指数として2を累乗した値としているが、必ずしも上記のように比を設定する必要はなく、要は、複数の抵抗部Rbのうちの少なくとも1つは、抵抗値が他と異なっていればよく、このようにすれば、抵抗部Rbの抵抗値がいずれも同じである場合よりも、分解能の向上を図ることが可能である。また、本実施形態における増幅部232の構成は実施形態8に適用することができる。
(実施形態10)
本実施形態の近接センサは、図8に示すように、発振回路部2の電流調整部23、特に増幅部232の構成が実施形態9と異なっており、その他の構成は実施形態7と同様であるから、同様の構成については実施形態9と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における増幅部232は、増幅回路232aを5つ備える。なお、以下の説明では、5つの増幅回路232aを区別するために必要に応じて符号232a0〜232a4で表し、増幅回路232aそれぞれに対応する増幅用トランジスタBTrを必要に応じてBTr0〜BTr4で表し、また抵抗部Rbを必要に応じて符号Rb0〜Rb4で表す。また、増幅回路232a0〜232a4それぞれに対応する増幅電流Ibを必要に応じてIb0〜Ib4で表す。
図8に示すように、増幅部232の抵抗部Rb1〜Rb4それぞれと基準電位との間には、それぞれスイッチSW1〜SW4が挿入されているが、抵抗部Rb0と基準電位との間にはスイッチSWは挿入されていない。したがって、増幅電流Ib0は、デジタルコードのビットの値に関係なく(スイッチSWの制御状態に関係なく)、入力側トランジスタITrに供給される。つまり、増幅回路232a0は、オフセット用の増幅回路232aである。
また、上述した複数の抵抗部Rbは抵抗値がいずれも異なっており、抵抗部Rb2〜Rb3それぞれの抵抗値は抵抗部Rb1の抵抗値の1/2倍、1/4倍、1/8倍としている。すなわち、Rb1:Rb2:Rb3:Rb4=8:4:2:1である。一方、抵抗部Rb0の抵抗値は、抵抗部Rb4の抵抗値の1/2に設定している。したがって、増幅電流Ib2=2×Ib1、増幅電流Ib3=4×Ib1、増幅電流Ib4=8×Ib1、増幅電流Ib0=16×Ib1である。ここで、増幅電流Ib1を基準増幅電流とすると、増幅電流Ib2〜Ib4と基準増幅電流Ib1との比は、スイッチSW2〜SW4に対応するビットのビット番号を指数として2を累乗した値である。そのため、デジタルコードが”0001”であればIo=Ib0+Ib1になり、”0101”であればIo=Ib0+5×Ib1になる。したがって、本実施形態においても実施形態9と同様に、デジタルコードが4ビットであれば、出力電流Ioを16種類の値(0含む)の中から選択することができる。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、増幅部232は、デジタルコードのビットの値に関係なく増幅電流Ib0を基準電源Vccから入力側トランジスタITrに供給させるオフセット用の増幅回路232a0を有しているので、出力電流Ioにオフセットを設けることができるから、オフセットを設けない場合に比べて、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上することができる。
例えば、検知コイル10のコンダクタンスGcoilが400μs〜600μsの範囲で変化するときに、負性コンダクタンス|Gosc|に400μsのオフセットを設け、負性コンダクタンス|Gosc|の変化幅を0〜200μsとすれば、負性コンダクタンス|Gosc|の変化幅を0〜600μsとする場合に比べれば、デジタルコードのビット数を同じであるにも関わらず、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を3倍ほど向上させることができる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態9と同様であるから説明を省略する。また、上述したオフセット用の増幅回路232a0は、実施形態7,8にも設けることができる。
(実施形態11)
本実施形態の近接センサは、図9に示すように、発振回路部2の電流調整部23と、制御部4の構成が実施形態7と異なっており、その他の構成は実施形態7と同様であるから、同様の構成については実施形態7と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における電流調整部23は、スイッチ制御部231を有していない点で実施形態7と異なる。なお、その他の構成は実施形態7と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における制御部4は、例えばCPUおよびメモリを具備したマイクロコンピュータなどにより構成されており、当該マイクロコンピュータのメモリの記憶領域に、デジタルコードを書き込むデータレジスタ(アキュムレータ)が設けられている。このデータレジスタの総ビット数はデジタルコードの総ビット数に等しく、デジタルコードの第Nビットはデータレジスタの第Nビットに対応する(ただし、Nは0以上の整数)。なお、当該デジタルコードは、上記実施形態1と同様に、モニタ部3の検出結果に基づいて設定されるものである。
本実施形態における制御部4には、複数のスイッチSWそれぞれに制御信号を出力する複数の制御信号出力部(図示せず)が設けられており、当該複数の制御信号出力部それぞれはデータレジスタの各ビットと一対一で関係付けられている(換言すれば、複数のスイッチSWそれぞれはデータレジスタの各ビットと一対一で関係付けられている)。ここで、データレジスタの最下位ビットである第0ビット(ビット番号が0であるビット)がスイッチSW1に、第1ビット(ビット番号が1であるビット)がスイッチSW2に、第2ビット(ビット番号が2であるビット)がスイッチSW3に、最上位ビットである第3ビット(ビット番号が3であるビット)がスイッチSW4にそれぞれ対応している。
このような制御信号出力部は、対応するデータレジスタのビット値に応じてスイッチSWに制御信号を出力する。例えば、制御信号出力部は、データレジスタのビット値が”1”であればスイッチSWをオン、ビット値が”0”であればスイッチSWをオフするようにスイッチSWに制御信号を出力する。例えば、デジタルコードが、”1010”であれば、データレジスタも”1010”になり、第1ビットおよび第3ビットそれぞれに関係付けられた各制御信号出力部からはスイッチSWをオンにする制御信号が出力され、第0ビットおよび第2ビットそれぞれに関係付けられた各制御信号出力部からはスイッチSWをオフにする制御信号が出力される。その結果、スイッチSW2,SW4はオン、スイッチSW1,SW3はオフになる。なお、本実施形態では、制御部4から電流調整部23には制御信号が個別に出力されるが、信号処理部5には、実施形態7と同様にデジタルコードを示すデジタル信号が出力される。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、スイッチ制御部231の構成を省略することができ、データレジスタのビット値によって直接的に発振回路部2の負性コンダクタンスの値を変更することが可能になるから、ハードウェア構成を簡単にすることができて、低コスト化を図ることができる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態7と同様であるから説明を省略する。また、本実施形態の電流調整部23および制御部4の構成は、実施形態8〜10にも適用することができる。
(実施形態12)
本実施形態の近接センサは、図10に示すように、モニタ部3および制御部4の構成が実施形態1と異なっており、その他の構成は実施形態1と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。なお、図10ではモニタ部3のみを図示している。
本実施形態におけるモニタ部3は、npn形のトランジスタ30と、抵抗31と、コンデンサ32と、A/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換器)33とを備えている。ここで、トランジスタ30と、抵抗31と、コンデンサ32とは、LC共振回路部1の発振振幅VTを検出する検出部を構成しており、当該検出部は、発振振幅VTを示すアナログ信号をA/Dコンバータに出力する。A/Dコンバータ33は、検出部が出力したアナログ信号を所定の量子化幅でデジタル信号に変換して制御部4に出力する。なお、このようなA/Dコンバータ33は従来周知の構成により実現できるから詳細な説明を省略する。
本実施形態における制御部4は、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscが上記臨界値となるようにデジタルコードを設定するにあたって、A/Dコンバータ33が出力した発振振幅VTを示すデジタル信号を利用する。例えば、制御部4は、A/Dコンバータ33より得たデジタル信号と、負性コンダクタンスGoscの絶対値とコンダクタンスGcoilの絶対値が等しいときの発振振幅VTのデジタル信号とを比較し、その差分に応じてデジタルコードを作成する。なお、制御部4のその他の構成については実施形態1と同様であるから、説明を省略する。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、モニタ部3は、LC共振回路部1の発振振幅VTを検出し発振振幅VTを示すアナログ信号を出力する検出部と、当該検出部が出力した発振振幅VTを示すアナログ信号をデジタル信号に変換して制御部4に出力するA/Dコンバータ33とを備え、制御部4は、A/Dコンバータ33が出力した発振振幅VTを示すデジタル信号からデジタルコードを作成するから、例えば比較器などを用いて、モニタ部3より得た発振振幅VTが所定値を越えているか、あるいは下回っているかを判断し、その結果に応じて、デジタルコードを設定する場合に比べれば(つまりアナログ演算によってデジタルコードを設定する場合に比べれば)、出力電流Ioをすぐに負性コンダクタンスGoscの絶対値がコンダクタンスGcoilの絶対値に等しくなる値に設定できるから、処理速度(出力電流Ioの変化の応答性、追随性)を向上でき、例えば、近接センサの起動時や、被検知体の移動速度が速い場合であっても、迅速に、発振回路部2の負性コンダクタンスをLC共振回路部1が発振可能な臨界値に設定することができ、遅れが生じてしまうことを抑制できる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態1と同様であるから説明を省略する。また、本実施形態のモニタ部3および制御部4の構成は、実施形態2〜11にも適用することができる。
(実施形態13)
本実施形態の近接センサは、図11に示すように制御部4の構成が実施形態1と異なっており、その他の構成については実施形態1と同様であるから同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。なお、図11では制御部4のみを図示している。
本実施形態における制御部4は、所定周期でモニタ部3により検出した発振振幅VTと所定の閾値とを比較する比較判定部40と、タイミング回路41と、比較判定部40の比較結果に基づいてデジタルコードを設定する演算処理部42とにより構成されている。
比較判定部40は、基準電源Vccとグラウンドとの間に挿入された抵抗R1〜R3の直列回路からなる分圧回路と、第1のコンパレータCOMP1と、第2のコンパレータCOMP2と、第1の否定ゲート(NOTゲート、インバータともいう)40aと、論理積ゲート(ANDゲート)40bと、第2の否定ゲート40cとで構成されている。
上記分圧回路は、第1のコンパレータCOMP1と第2のコンパレータCOMP2とに所定の閾値V1,V2を与えるためのものであって、抵抗R1,R2の接続点の電位からなる閾値V1は発振振幅VTの上限となる値であり、抵抗R2,R3の接続点の電位からなる閾値V2は発振振幅VTの下限となる値である。
第1のコンパレータCOMP1の非反転入力端子は抵抗R1,R2の接続点に接続され、反転入力端子はモニタ部3の出力端子に接続されている。したがって、第1のコンパレータCOMP1は、モニタ部3で検出した発振振幅VTが閾値V1以下であれば、ハイレベルの信号を出力し、発振振幅VTが閾値V1を越えていれば、ロウレベルの信号を出力する。第1のコンパレータCOMP1の出力端は、第1の否定ゲート40aおよび論理積ゲート40bに接続されている。
第2のコンパレータCOMP2の反転入力端子は抵抗R2,R3の接続点に接続され、非反転入力端子はモニタ部3の出力端子に接続されている。したがって、第2のコンパレータCOMP2は、モニタ部3で検出した発振振幅VTが閾値V2を越えていれば、ハイレベルの信号を出力し、発振振幅VTが閾値V2以下であれば、ロウレベルの信号を出力する。第2のコンパレータCOMP2の出力端は、第2の否定ゲート40cおよび論理積ゲート40bに接続されている。
第1の否定ゲート40a、論理積ゲート40b、および第2の否定ゲート40cそれぞれの出力端は、演算処理部42に別個に接続されている。
したがって、このような比較判定部40では、発振振幅VTが閾値V1超過であれば、第1の否定ゲート40aからはハイレベルの信号が出力され、論理積ゲート40bおよび第2の否定ゲート40cからはロウレベルの信号が出力され、発振振幅VTが閾値V1以下、閾値V2超過であれば、第1の否定ゲート40aおよび第2の否定ゲート40cからはロウレベルの信号が出力され、論理積ゲート40bからはハイレベルの信号が出力され、発振振幅VTが閾値V2以下であれば、第1の否定ゲート40aおよび論理積ゲート40bからはロウレベルの信号が出力され、第2の否定ゲート40cからはハイレベルの信号が出力される。
タイミング回路部41は、デジタル信号を出力するタイミング(電流調整部23のデジタルコードを更新するタイミング)を指示する信号(パルス信号)を所定周波数で出力する発振回路からなり、上記所定周波数は、LC共振回路部1の発振周波数より低く設定されている。
演算処理部42は、第1の否定ゲート40aからハイレベルの信号を受け取ると、帰還電流Ifbを増加させ、論理積ゲート40bからハイレベルの信号を受け取ると、帰還電流Ifbを現状のまま維持し、第2の否定ゲート40cからハイレベルの信号を受け取ると、帰還電流Ifbを減少させるように、出力電流Ioを調整する。つまり、本実施形態における制御部4は、比較判定部40の比較結果によって出力電流Ioを変更するか否かを決定する。
また、演算処理部42は、出力電流Ioを変更するにあたっては、デジタルコードの最下位ビット(第0ビット)に1を加算、あるいはデジタルコードの最下位ビットより1を減算する。例えば、デジタルコードが’0010’であるときに、第1の否定ゲート40aからハイレベルの信号を受け取ると、デジタルコードの最下位ビットに1を加算して、デジタルコードを’0011’に設定する一方、第2の否定ゲート40cからハイレベルの信号を受け取ると、デジタルコードの最下位ビットから1を減算して、デジタルコードを’0001’に設定する。
さらに、演算処理部43は、デジタルコードを示すデジタル信号を出力するにあたっては、タイミング回路部41よりパルス信号を得た際に、当該デジタル信号を出力するようになっており、これによりタイミング回路部41の周波数より低い周波数で、演算処理部43からデジタルコードが出力されないようにしている。なお、実施形態6,11のように、デジタル信号ではなく制御信号を電流調整部23に出力する場合には、制御部4は、タイミング回路部41よりパルス信号を得た際に、制御信号を出力するようにすればよい。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、デジタルコードの最下位ビットに1を加算あるいは減算することによってデジタルコードを変更するので、出力電流Ioの調整時に、オーバーシュートやアンダーシュートが生じてしまうことを防止でき、また、発振振幅からデジタルコードの目標値を直接的に演算する処理を行わなくて済むから、比較判定部40としては、AD変換回路やCPUなどの複雑な装置に比べれば安価なウィンドウコンパレータを用いることができるようになって、低コスト化が図れる。
また、制御部4は、タイミング回路部43よりパルス信号が入力された際にデジタルコードを示すデジタル信号を出力するようになっており、タイミング回路部43からパルス信号が出力される周波数はLC共振回路部1の発振周波数より低くしているので、LC共振回路部1の発振周期より短い時間間隔でデジタルコードが電流調整部23に与えられることがなく、電流調整部23の出力電流Ioを変更したことに起因するLC共振回路部1の発振を防止でき、安定した制御が行えるようになる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態1と同様であるから説明を省略する。
ところで、比較判定部40の構成は、図11に示すものに限定されず、例えば、単にモニタ部3で検出した発振振幅と所定の閾値を越えているか否かを判定するだけのものであってもよく、このような場合であっても、発振振幅からデジタルコードの目標値を直接的に演算する処理を行わなくて済み、比較判定部40としては、AD変換回路やCPUなどの複雑な装置に比べれば安価なコンパレータを用いることができるから、低コスト化が図れる。また、本実施形態の制御部4の構成は、実施形態2〜12にも適用することができる。
(実施形態14)
本実施形態の近接センサは、図12に示すように、温度検知部となる温度センサ6を備えている点と、信号処理部5の構成とが実施形態1と異なっており、その他の構成については実施形態1と同様であるから同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。なお、図12では温度センサ6と信号処理部5のみを図示している。
温度センサ6は、サーミスタなどの従来周知の感熱素子を用いて構成されている。このような温度センサ6は、周囲の温度、例えば検知コイル10の周囲の温度を検知するために、検知コイル10の近傍に配置されている。なお、温度センサ6は、状況に応じて好適な位置に配置すればよい。
本実施形態における信号処理部5は、制御部4より出力されたデジタル信号よりデジタルコードを取得し、取得したデジタルコードにより表される値に温度センサ6で検知した温度に対応する補正温度係数(補正係数)を乗じることで温度補償を行う温度補償部50を備える。また、信号処理部5は、デジタルコードに所定の加算値を加算するオフセット処理と、デジタルコードに所定の乗算値を乗算するゲイン処理とが実行可能である出力調整部51を有している。なお、温度補償部50や出力調整部51は、プログラムなどにより実現されていてもよいし、回路により構成されていてもよい。
さらに、信号処理部5は、温度補償部50による温度補償および出力調整部51による調整が行われたデジタルコードに基づいて、検知コイル10と被検知体との距離を示す検知信号を作成する出力回路部52を有している。出力回路部52において、検知信号を作成するにあたっては、実施形態1で述べたように、デジタルコードと、被検知体と検知コイル10との距離との関係を示すデータテーブルや、デジタルコードにより表される値を被検知体と検知コイル10との距離に変換する演算式などを利用することができる。
また、信号処理部5は、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリからなる記憶部53を有し、当該記憶部53には、温度補償部50で使用する補正温度係数のデータテーブルと、出力調整部51で使用する加算値や乗算値が記憶されている。このような記憶部53に記憶されている補正温度係数のデータテーブルや、加算値、乗算値はいずれも変更可能としている。
上述した温度補償部50は、デジタルコードが入力されると、記憶部53に記憶されている補正温度係数のデータテーブルから、温度センサ6の検知温度に対応する補正温度係数を取得し、取得した補正温度係数とデジタルコードにより表される値との乗算を行い、その結果を、新たなデジタルコードとして出力する。なお、温度補償部50で使用する補正温度係数は、検知コイル10や、被検知体、発振回路部2などの回路の温度特性を考慮して設定された値であって、リファレンスなどを用いた温度測定の結果などから求めることができる。
出力調整部51は、デジタルコードが入力されると、上述したオフセット処理とゲイン処理との少なくとも一方を実行し、得られた結果を、新たなデジタルコードとして出力する。ここで、オフセット処理に使用される加算値は、デジタルコードにより表される値に加算される正または負の値であり、乗算値は、デジタルコードにより表される値に乗算される値(つまり倍率を指定する値)である。したがって、デジタルコードにより表される値を正側にシフトさせたい場合には、加算値を正の値に設定し、デジタルコードの値を負側にシフトさせたい場合には、加算値を負の値に設定すればよい。また、デジタルコードにより表される値同士の差を大きくしたい場合には、乗算値を1より大きい値に設定すればよく、デジタルコードにより表される値同士の差を小さくしたい場合には、乗算値を0以上1未満の値に設定すればよい。
このような出力調整部51によるオフセット処理やゲイン処理は、例えば、出力回路部52が出力する検知信号が取り得る値を所望の範囲内の値に設定することを目的として行われる。例えば、近接センサの使用状況(例えば被検知体の材料の種類)によっては、デジタルコードより得た検知信号の大きさが、出力回路部52により出力可能な大きさより大きく、検知信号が飽和(サチュレーション)してしまい、検知コイル10と被検知体との距離が得られなくなってしまうおそれがある。このような場合には、出力調整部51によりデジタルコードにより表される値を調整して検知信号の大きさを出力回路部52により出力可能な大きさの範囲内に収まるようにすることで、検知信号の飽和に起因する不具合を防止できる。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、温度センサ6で検知した温度に応じてデジタルコード(により表される値)が補正されるから、検知コイル10や、被検知体、発振回路部2などの回路の温度特性に起因する検知精度の悪化を防止でき、検知精度の向上が図れる。さらに、温度補償部50における補正温度係数は変更可能(書き換え可能)であるから、製品毎に、検知コイル10の特性や、検知コイル10と被検知体との相対位置、発振回路部2などの回路の温度特性にばらつきがあっても、このようなばらつきによって製品毎に検知信号の値が異なってしまうことを防止でき、いずれの製品においても所望の検知信号を得ることが可能となる。
また、オフセット処理やゲイン処理を実行することによって、デジタルコードにより表される値を任意に調整することができるから、検知信号の値を所望の範囲内の値とすることができる。その上、オフセット処理で用いる加算値や、ゲイン処理で用いる乗算値は変更可能(書き換え可能)であるから、製品毎に、検知コイル10の特性や、検知コイル10と被検知体との相対位置、発振回路部2などの回路の特性にばらつきがあっても、このようなばらつきによって製品毎に検知信号の値の範囲が異なってしまうことを防止でき、いずれの製品においても検知信号の値を所望の範囲内の値とすることが可能となる。
なお、本実施形態の近接センサのその他の効果については実施形態1と同様であるから説明を省略する。
ところで、本実施形態における信号処理部5は、温度補償部50と、出力調整部51との両方を備えているが、必ずしも両方を備えている必要はなく、温度補償部50と出力調整部51とのいずれか一方のみを備えているようなものであってもよい。また、本実施形態における信号処理部5の構成は実施形態2〜13にも適用することができる。