JP2009094994A - 近接センサ - Google Patents

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正久 丹羽
Kunitaka Okada
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Abstract

【課題】被検知体の存在検知に加え、被検知体との距離も検知できる近接センサを提供することにある。
【解決手段】近接センサは、被検知体の検知用の検知コイル10を有したLC共振回路部1と、LC共振回路部1の発振電圧を増幅する増幅回路21、増幅回路21の出力電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換回路22、および電圧電流変換回路22が出力する電流の大きさに応じた帰還電流をLC共振回路部1に供給する電流帰還回路23を有するとともに増幅回路21の増幅率を調整する可変抵抗部21cを有し、LC共振回路部1を発振させる発振回路部2と、LC共振回路部1の発振振幅に基づいて可変抵抗部21cの抵抗値を設定することで発振回路部2の負性コンダクタンスをLC共振回路部1が発振可能な臨界値に設定する制御部4と、可変抵抗部21cの抵抗値に基づいて被検知体と検知コイル10との距離を示す検知信号を作成する信号処理部5とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、高周波発振型の近接センサに関するものである。
従来から、非接触で金属体(導電体)や磁性体などからなる被検知体を検知する近接センサとして、高周波発振型の近接センサが提案されている。
上記高周波発振型の近接センサは、検知コイルとコンデンサとの並列回路よりなるLC共振回路部を有している。この近接センサでは、LC共振回路部を構成する検知コイルに被検知体が接近した際に、電磁誘導作用によって渦電流損が生じて検知コイルの実効抵抗値(インピーダンス)が変化するという現象を利用して被検知体の検知を行っている。つまり、検知コイルのインピーダンスが変化するとLC共振回路部の発振条件も変化するため、LC共振回路部を発振させている状態から、LC共振回路部の発振が停止または発振振幅が所定値以上減衰した際に、被検知体が存在していると判定する(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−295248号公報
上述した従来の近接センサは、被検知体と検知コイルとの距離が、LC共振回路部の発振が停止または発振振幅が所定値未満になる距離(検知距離)より長ければ、被検知体が検知コイルの検知範囲内に存在しないと判定し、上記検知距離より短ければ、被検知体が検知コイルの検知範囲内に存在すると判定するから、近接センサから出力される検知信号は、被検知体が存在しているか否かの2値しかないデジタル(ディジタル)な値である。
このように従来の近接センサでは、被検知体と検知コイルとの距離が上記検知距離より短くなれば、被検知体が存在していると判定する、つまり、被検知体が検知コイルの検知範囲内に存在するか否かを検知するだけであるから、被検知体が存在しているか否かのデジタルな検知信号を得ることはできていたが、被検知体が検知コイルに対してどの程度接近しているかまでは検知することができないため、被検知体と検知コイルとの距離を示すようなアナログな検知信号を得ることはできなかった。
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、被検知体の存在検知に加え、被検知体との距離も検知できる近接センサを提供することにある。
上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、被検知体の検知に用いられる検知コイルおよびコンデンサからなるLC共振回路部と、LC共振回路部を発振させる発振回路部と、LC共振回路部の発振振幅を検出するモニタ部と、モニタ部で検出した発振振幅に基づいて発振回路部の負性コンダクタンスをLC共振回路部が発振可能な臨界値に設定する制御部と、被検知体と検知コイルとの距離を示す検知信号を作成する信号処理部とを備え、発振回路部は、LC共振回路部の発振電圧を増幅する増幅回路と、増幅回路で増幅された発振電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換回路と、電圧電流変換回路が出力する電流の大きさに応じた帰還電流をLC共振回路部に供給する電流帰還回路と、増幅回路には、発振電圧の増幅率を調整する可変抵抗部が設けられ、制御部は、発振回路部の負性コンダクタンスが上記臨界値となるように可変抵抗部の抵抗値を設定し、信号処理部は、可変抵抗部の抵抗値に基づいて上記検知信号を作成することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、LC共振回路部が発振する条件は、発振回路部の負性コンダクタンスの絶対値が、検知コイルのコンダクタンスの絶対値以上であることであるから、発振回路部の負性コンダクタンスがLC共振回路部が発振可能な臨界値である場合、当該負性コンダクタンスの絶対値は、検知コイルのコンダクタンスの絶対値に等しいと考えることができ、ここで、検知コイルのコンダクタンスは、被検知体と検知コイルとの距離に起因する渦電流損の変化、つまり検知コイルと被検知体との距離に応じて変化し、検知コイルのコンダクタンスに等しい発振回路部の負性コンダクタンスは、LC共振回路部に供給される帰還電流とLC共振回路部の発振振幅によって決定され、LC共振回路部に供給される帰還電流は、増幅回路の増幅率に応じて増減するので、増幅回路の増幅率を調整する可変抵抗部の抵抗値を検知コイルと被検知体との距離を示す値として用いることができ、このような可変抵抗部の抵抗値を用いることで、従来例のような被検知体が存在しているか否かのデジタルな検知信号ではなく、被検知体と検知コイルとの距離を示すアナログな検知信号を得ることができ、また、このような検知信号を閾値処理することで、被検知体が存在しているか否かのデジタルな検知信号も得ることができるから、被検知体の存在検知に加え、被検知体との距離も検知できる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記可変抵抗部は、1乃至複数の固定抵抗器と、1乃至複数の可変抵抗器との直列または並列回路からなることを特徴とする。
請求項2の発明によれば、固定抵抗器の抵抗値を可変抵抗部の抵抗値のオフセットとして利用することができ、可変抵抗器のみを用いる場合に比べれば、被検知体と検知コイルとの距離の分解能(位置精度)を向上できる。
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、上記可変抵抗部は、デジタルコードにて抵抗値を設定可能なデジタルポテンショメータからなる可変抵抗器を有し、上記制御部は、上記発振回路部の負性コンダクタンスが上記臨界値となるように上記可変抵抗部の抵抗値を設定するデジタルコードを上記可変抵抗部および上記信号処理部に出力し、上記信号処理部は、上記制御部が出力したデジタルコードに基づいて上記検知信号を作成することを特徴とする。
請求項3の発明によれば、制御部が出力したデジタルコードを信号処理部が読み込むだけで可変抵抗部の抵抗値を得ることができるから、例えば、可変抵抗部が、制御部の出力する制御信号によるスイッチのオン・オフで抵抗値の設定を行うものである場合に比べれば、可変抵抗部の抵抗値を容易に得ることができる。
請求項4の発明では、請求項3の発明において、上記モニタ部は、上記LC共振回路部の発振振幅を検出し発振振幅を示すアナログ信号を出力する検出部と、当該検出部が出力した発振振幅を示すアナログ信号をデジタル信号に変換して上記制御部に出力するA/Dコンバータとを備え、上記制御部は、A/Dコンバータが出力した発振振幅を示すデジタル信号から上記デジタルコードを作成することを特徴とする。
請求項4の発明によれば、アナログ回路により可変抵抗部の抵抗値を変更する場合に比べれば、処理速度(可変抵抗部の抵抗値の変化の応答性、追随性)を向上でき、被検知体の移動速度が速い場合であっても、迅速に、発振回路部の負性コンダクタンスをLC共振回路部が発振可能な臨界値に設定することができる。
請求項5の発明では、請求項3の発明において、上記制御部は、上記モニタ部で検出した発振振幅と所定の閾値とを比較する比較部を有し、当該比較部の比較結果によって上記デジタルポテンショメータの抵抗値を変更するか否かを決定し、上記デジタルポテンショメータの抵抗値を変更するにあたっては、上記デジタルコードを1ずつ変化させることを特徴とする。
請求項5の発明によれば、可変抵抗部の抵抗値を、発振回路部の負性コンダクタンスが臨界値となる値に設定するにあたって、オーバーシュートやアンダーシュートが生じてしまうことを防止できる。しかも、デジタルコードを1ずつ増やすようにしているので、発振振幅から可変抵抗部の抵抗値の目標値を直接的に演算する処理を行わなくて済み、比較部としては、AD変換回路やCPUなどの複雑な装置に比べれば安価なコンパレータを用いることができるから、低コスト化が図れる。
請求項6の発明では、請求項3〜5のうちいずれか1項の発明において、上記制御部は、上記デジタルコードを出力するタイミングを指示する信号を所定周波数で出力するタイミング回路を有し、上記所定周波数は、LC共振回路部の発振周波数より低いことを特徴とする。
請求項6の発明によれば、可変抵抗部の抵抗値を変更したことに起因するLC共振回路部の発振を防止でき、安定した制御が行えるようになる。
請求項7の発明では、請求項3〜6のうちいずれか1項の発明において、上記信号処理部は、上記制御部が出力した上記デジタルコードの値にオフセットとゲインの少なくとも一方を加える出力調整部を有していることを特徴とする。
請求項7の発明によれば、検知信号の値を所望の範囲内の値とすることができる。
請求項8の発明では、請求項7の発明において、上記出力調整部における上記オフセットと上記ゲインは変更可能であることを特徴とする。
請求項8の発明によれば、製品毎に、検知コイルの特性や、検知コイルと被検知体との相対位置、発振回路部などの回路の特性にばらつきがあっても、このようなばらつきによって製品毎に検知信号の値の範囲が異なってしまうことを防止でき、いずれの製品においても検知信号の値を所望の範囲内の値とすることが可能となる。
請求項9の発明では、請求項3〜8のうちいずれか1項の発明において、周囲の温度を検知する温度検知部を備え、上記信号処理部は、上記制御部が出力した上記デジタルコードの値に温度検知部で検知した温度に対応する補正温度係数を乗じることで温度補償を行う温度補償部を有していることを特徴とする。
請求項9の発明によれば、検知コイルや、被検知体、発振回路部などの回路の温度特性に起因する検知精度の悪化を防止でき、検知精度の向上が図れる。
請求項10の発明では、請求項9の発明において、上記温度補償部における上記補正温度係数は変更可能であることを特徴とする。
請求項10の発明によれば、製品毎に、検知コイルの特性や、検知コイルと被検知体との相対位置、発振回路部などの回路の温度特性にばらつきがあっても、このようなばらつきによって製品毎に検知信号の値が異なってしまうことを防止でき、いずれの製品においても所望の検知信号を得ることが可能となる。
請求項11の発明では、請求項1〜10のうちいずれか1項の発明において、上記発振回路部と、上記モニタ部と、上記制御部と、上記信号処理部とはモノリシックICとして一体化されていることを特徴とする。
請求項11の発明によれば、上記発振回路部と、上記発振検出部と、上記制御部と、上記位置情報生成部とをそれぞれ別のICにより構成する場合に比べれば、小型化が図れるとともに低コスト化が図れ、さらに耐ノイズ性能を向上できる。
本発明は、被検知体の検知に加え、被検知体との距離も検知できるという効果を奏する。
(実施形態1)
本実施形態の近接センサは、図1に示すように、被検知体(図示せず)の検知に用いられる検知コイル10およびコンデンサ11の並列回路からなるLC共振回路部1と、LC共振回路部1を発振させる発振回路部2と、LC共振回路部1の発振振幅を検出するモニタ部3と、モニタ部3で検出した発振振幅に基づいて発振回路部2の負性コンダクタンスをLC共振回路部1が発振可能な臨界値に設定する制御部4と、被検知体と検知コイル10との距離を示す検知信号を作成する信号処理部5とを備えている。
LC共振回路部1に用いる検知コイル10は、例えば、円筒状のコイルボビン(図示せず)の外周面に、コイルボビンの軸方向に巻軸方向を沿わせた形で巻回されたものを用いている。そして、被検知体は、例えば、金属体(導電体)よりパイプ状に形成されたものであって、検知コイル10の巻軸方向に沿って検知コイル10のすぐ外側を通る形で配置されている。LC共振回路部1の発振電圧の周波数は、検知コイル10のインダクタンスとコンデンサ11の静電容量とにより決定される。なお、上述したような検知コイル10および被検知体の構成は一例に過ぎず、例えば、被検知体は磁性体により形成されたものであってもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更できる。
本実施形態の近接センサでは、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とはモノリシックICとして一体化されている。
発振回路部2は、内部電源VccよりLC共振回路1に一定のバイアス電流を供給する定電流源であるバイアス回路20と、LC共振回路部1の発振電圧(LC共振回路部1の両端電圧)を増幅する増幅回路21と、増幅回路21で増幅された発振電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換回路22と、電圧電流変換回路22が出力する電流の大きさに応じた帰還電流をLC共振回路部1に供給する電流帰還回路23と、LC共振回路部1の発振電圧(LC共振回路部1の両端電圧)をレベルシフトするレベルシフト回路25とを備えている。
レベルシフト回路25は、npn形のトランジスタQにより構成される。トランジスタQのコレクタはバイアス回路20の出力端に接続され、エミッタは一端が接地されたLC共振回路部1の他端に接続されている(図示例ではトランジスタQのエミッタとグラウンドとの間に検知コイル10とコンデンサ11とからなる並列回路が挿入されている)。また、トランジスタQにおいてはコレクタとベースとが接続されている。したがって、トランジスタQのエミッタの電位は、LC共振回路部1の発振電圧に等しい。このようなレベルシフト回路25は、モニタ部3の後述のnpn形のトランジスタ30のベース−エミッタ間電圧の分だけ発振電圧をレベルシフトする。この構成により、トランジスタ30のエミッタとグラウンドとの間に、発振の正の半サイクルのみ、LC共振回路部1の発振電圧に等しい電圧が印加されるようにしている。
増幅回路21は、オペアンプ21aを用いて構成されている。オペアンプ21aの非反転入力端子はLC共振回路部1とレベルシフト回路25との間に接続され、反転入力端子は固定抵抗部21bを介してグラウンドに接続されている。したがって、非反転入力端子には、LC共振回路部1の発振電圧に等しい電位が与えられる。また、オペアンプ21aの出力端子は、可変抵抗部21cを介してオペアンプ21aの反転入力端子に接続されている。したがって、増幅回路21は、非反転入力端子に入力された電圧と出力端子から出力された電圧の位相とが同位相となる非反転増幅器を構成しており、その増幅率は、固定抵抗部21bの抵抗値をRs、可変抵抗部21cの抵抗値をRvとすれば、(Rs+Rv)/Rsで表される。つまり、本実施形態における増幅回路21には、発振電圧の増幅率を調整する可変抵抗部21cが設けられている。この可変抵抗部21cは、例えば、固定抵抗器およびトランジスタなどの半導体スイッチング素子からなる直列回路を並列接続してなる可変抵抗器であって、各スイッチのオン・オフによって使用する固定抵抗器を選択することで、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを変更することができるようになっている。なお、固定抵抗部21bの抵抗値Rsおよび可変抵抗部21cの抵抗値Rvは、LC共振回路部1の発振に影響を与えないように十分に大きい抵抗値とすることが好ましい。
電圧電流変換回路22は、オペアンプ22aと、npn形のトランジスタ22bとにより構成されている。トランジスタ22bのエミッタはエミッタ電位設定(電流調整)用の抵抗器24を介してグラウンドに接続されている。トランジスタ22bのベースにはオペアンプ22aの出力端子が接続され、オペアンプ22aの反転入力端子はトランジスタ22bのエミッタに接続され、オペアンプ22aの非反転入力端子は増幅回路21のオペアンプ21aの出力端子に接続されている。これによりオペアンプ22aの反転入力端子と出力端子との間には、トランジスタ22bのベース−エミッタ間電圧に等しい電圧が印加されるため、オペアンプ22aの出力端子からは、増幅回路21の出力電圧(増幅回路21で増幅された発振電圧)とトランジスタ22bのベース−エミッタ間電圧とを加算してなる電圧(増幅回路21の出力電圧よりトランジスタ22bのベース−エミッタ間電圧の絶対値だけ低い電圧)が出力される。
したがって、トランジスタ22bのエミッタとグラウンドとの間には、発振の正の半サイクルのみ、増幅回路21の出力電圧(増幅回路21で増幅されたLC共振回路部1の発振電圧)に等しい電圧が印加され、これによって、電圧電流変換回路22は、増幅回路21の出力電圧に応じた電流を出力する。ただし、電圧変換回路22が出力する電流は抵抗器24の抵抗値に応じて限流される。
電流帰還回路23は、pnp形のトランジスタ23a,23bにより構成されたカレントミラー回路であり、LC共振回路部1の発振を維持するためにLC共振回路部1に電流を正帰還させる。トランジスタ23aは、電圧電流変換回路22のトランジスタ22bと内部電源Vccとの間に、コレクタをトランジスタ22bのコレクタに、エミッタを内部電源Vccにそれぞれ接続する形で挿入されている。トランジスタ23aのベースは、トランジスタ23bのベースに接続され、トランジスタ23bのエミッタは内部電源Vccに接続され、コレクタはレベルシフト回路25のトランジスタQのベースに接続されている。電圧電流変換回路22から電流が出力される際には、この電流に等しいトランジスタ22bのコレクタ電流が、トランジスタ23aのエミッタ−コレクタ間に流れることになる。そして、トランジスタ23bのエミッタ−コレクタ間には、トランジスタ23aのエミッタ−コレクタ間に流れた電流に等しい電流が流れ、この電流がLC共振回路部1に供給される帰還電流となる。つまり、本実施形態における電流帰還回路23は、電圧電流変換回路22が出力する電流に等しい帰還電流をLC共振回路部1に供給する。
モニタ部3は、前述のnpn形のトランジスタ30と、抵抗31と、コンデンサ32とで構成された検波回路からなる。トランジスタ30は、コレクタが内部電源Vccに接続され、ベースがレベルシフト回路25のトランジスタQのベースに接続され、エミッタが抵抗31およびコンデンサ32に接続されている。そして、トランジスタ30のコレクタ−エミッタ間には、ベースに入力される電圧(レベルシフト回路25により生成されたレベルシフト電圧)に応じた電流が流れ、この電流によってコンデンサ32が充電される。本実施形態におけるモニタ部3では、このコンデンサ32の両端電圧をLC共振回路部1の発振振幅を示す値として検出している。
制御部4は、例えばCPUなどからなり、上述したように、モニタ部3で検出した発振振幅に基づいて発振回路部2の負性コンダクタンスをLC共振回路部1が発振可能な臨界値に設定する。このような制御部4の動作はロジック回路やプログラムなどにより実現されている。本実施形態における制御部4は、増幅回路21の可変抵抗部21cの抵抗値Rvを調整することによって、発振回路部2の負性コンダクタンスを上記臨界値に設定する。ここで、発振回路部2の負性コンダクタンスをGosc(ただしGoscの値は負である)、LC共振回路部1の発振振幅をVT、帰還電流をIfbとすると、負性コンダクタンスGoscは、次式(1)で表すことができる。
Figure 2009094994
したがって、発振振幅VTに対してどれだけの帰還電流Ifbを与えるかによって、負性コンダクタンスGoscを調整することができる。そして、電圧電流変換回路22には、増幅回路21で増幅された発振電圧が入力されるため、電圧電流変換回路22が出力する電流をI0、抵抗器24の抵抗値をReとすると、この電流I0は次式(2)で表すことができる。そして、トランジスタ22bのエミッタとグラウンドとの間には、発振の正の半サイクルのみ、増幅回路22の出力電圧に等しい電圧が印加されるから、式(1),(2)により、負性コンダクタンスGoscは、次式(3)で表すことができる。
Figure 2009094994
上記の式より明らかなように、可変抵抗部21cの抵抗値Rvによって、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの値を調整することができる。
ここで、LC共振回路部1が発振する条件は、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの絶対値が、検知コイル10のコンダクタンスの絶対値以上であること、すなわち、検知コイル10のコンダクタンスをGcoilとすれば、負性コンダクタンスGoscとコンダクタンスGcoilとが、Gcoil≦|Gosc|の関係にあるときであり、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscが、Gcoil=|Gosc|であるときに、負性コンダクタンスGoscは、LC共振回路部1が発振可能な最大値となる。つまり、検知コイルのコンダクタンスGcoilの負の値である−Gcoilが、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの臨界値となる。
したがって、負性コンダクタンスGoscが臨界値である場合には、コンダクタンスGcoilは次式(4)で表すことができる。
Figure 2009094994
そして、検知コイル10のコンダクタンスGcoilは、被検知体と検知コイル10との距離に起因する渦電流損の変化、つまり検知コイル10と被検知体との距離に応じて変化するから、負性コンダクタンスGoscが上記臨界値である限り、検知コイル10のコンダクタンスGcoilは、可変抵抗部21cの抵抗値Rvに反比例する。そのため、抵抗値Rvを、検知コイル10と被検知体との距離を示す値として用いることができる。
本実施形態における制御部4は、モニタ部3より得た発振振幅VTに基づいて負性コンダクタンスGoscが上記臨界値か否かの判定を行い、その判定結果に応じて発振回路部2の負性コンダクタンスGoscを調整する。例えば、制御部4は、モニタ部3より得た発振振幅VTが所定値(負性コンダクタンスGoscの絶対値とコンダクタンスGcoilの絶対値が等しいときの発振振幅VTの値)になるように、可変抵抗部21cの各直列回路それぞれの半導体スイッチング素子をオン・オフする制御信号を出力し、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを、負性コンダクタンスGoscが上記臨界値となるように調整する。なお、負性コンダクタンスGoscの絶対値とコンダクタンスGcoilの絶対値とは一致させるのが好ましいが、必ずしも一致させる必要はなく、負性コンダクタンスGoscの絶対値がコンダクタンスGcoilの絶対値におおよそ等しいとみなせる範囲(例えば上記臨界値よりやや小さい値)であれば問題はない。したがって、本実施形態では、制御部4は、モニタ部3より得た発振振幅VTが所定の範囲内の値(負性コンダクタンスGoscの絶対値とコンダクタンスGcoilの絶対値とがおおよそ等しいとみなせる範囲における発振振幅VTの値)になるように、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを設定する。
信号処理部5は、検知用可変抵抗部(図示せず)を有している。検知用可変抵抗部は、可変抵抗部21cと同様のものである。この検知用可変抵抗部には、制御部4の上記制御信号が入力されるようになっており、これによって、検知用可変抵抗部の抵抗値は、可変抵抗部21cの抵抗値Rvと連動して変化するように(可変抵抗部21cの抵抗値Rvと等しく)なっている。そして、信号処理部5は、可変抵抗部21cの抵抗値Rvに等しい検知用可変抵抗部の抵抗値を測定し、当該測定した抵抗値(可変抵抗部21cの抵抗値Rv)に基づいてアナログ形式の電気信号からなる検知信号(例えば、被検知体と検知コイル10との距離に比例して値が大きくなる信号)を作成し、外部へ出力する。
次に本実施形態の近接センサの動作について説明する。LC共振回路部1の両端には、検知コイル10のインダクタンスとコンデンサ11の静電容量とから決まる周波数の発振電圧が生じ、電流帰還回路23のトランジスタ23bから帰還電流を正帰還することによってLC共振回路部1の発振を持続させている。LC共振回路部1の発振振幅VTはモニタ部3により検出され、制御部4はモニタ部3にて検出した発振振幅VTに基づき、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscが上記臨界値となるように可変抵抗部21cに上記制御信号を出力して抵抗値Rvを設定する。制御部4の上記制御信号は信号処理部5にも入力されて信号処理部5の検知用可変抵抗部の抵抗値が可変抵抗部21cの抵抗値Rvと同じ値に設定され、信号処理部5は検知用可変抵抗部の抵抗値に基づいて上記検知信号を作成して出力する。
ここで、被検知体が検知コイル10に接近し、検知コイル10における渦電流損が大きくなると、検知コイル10のコンダクタンスGcoilの絶対値が、負性コンダクタンスGoscの絶対値より大きくなるため、上記発振条件を満たさなくなって、LC共振回路部1の発振が停止しようとし、発振振幅VTが小さくなる。制御部4は、モニタ部3で検出した発振振幅VTが上記所定範囲内の値にならなくなった場合には、発振振幅VTが上記所定範囲内の値となるように可変抵抗部21cの抵抗値Rvを設定する(負性コンダクタンスGoscを調整する)から、上記の場合、負性コンダクタンスGoscの絶対値を大きくするために、抵抗値Rvを大きくする。そして、信号処理部5は、このように制御部4により設定された抵抗値Rvに基づいて上記検知信号を作成して出力する。
逆に被検知体が検知コイル10から離れ、検知コイル10における渦電流損が小さくなると、検知コイル10のコンダクタンスGcoilの絶対値が、負性コンダクタンスGoscの絶対値より小さくなって、LC共振回路部1の発振振幅VTが大きくなる。制御部4は、モニタ部3で検出した発振振幅VTが上記所定範囲内の値にならなくなった場合には、発振振幅VTが上記所定範囲内の値となるように可変抵抗部21cの抵抗値Rvを設定する(負性コンダクタンスGoscを調整する)から、上記の場合、負性コンダクタンスGoscの絶対値を小さくするために、抵抗値Rvを小さくする。そして、信号処理部5は、このように制御部4により設定された抵抗値Rvに基づいて上記検知信号を作成して出力する。
このように、信号処理部5からは、抵抗値Rvに基づく上記検知信号が出力され、この上記検知信号をモニタすることによって、被検知体と検知コイル10との距離、つまり位置関係を知ることができる。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、LC共振回路部1が発振する条件は、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscの絶対値が、検知コイル10のコンダクタンスGcoilの絶対値以上であることであるから、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscがLC共振回路部1が発振可能な臨界値である場合、当該負性コンダクタンスGoscの絶対値は、検知コイル10のコンダクタンスGcoilの絶対値に等しいと考えることができ、ここで、検知コイル10のコンダクタンスGcoilは、被検知体と検知コイル10との距離に起因する渦電流損の変化、つまり検知コイル10と被検知体との距離に応じて変化し、検知コイル10のコンダクタンスGcoilに等しい発振回路部2の負性コンダクタンスGoscは、LC共振回路部1に供給される帰還電流IfbとLC共振回路部1の発振振幅VTによって決定され、LC共振回路部1に供給される帰還電流Ifbは、増幅回路21の増幅率に応じて増減するので、増幅回路21の増幅率を調整する可変抵抗部21cの抵抗値Rvを検知コイル10と被検知体との距離を示す値として用いることができ、このような可変抵抗部21cの抵抗値Rvを用いることで、従来例のような被検知体が存在しているか否かのデジタルな検知信号ではなく、被検知体と検知コイル10との距離を示すアナログな検知信号を得ることができる。
しかも、このような検知信号を閾値処理することで、被検知体が存在しているか否かのデジタルな検知信号も得ることができるから、被検知体の存在検知に加え、被検知体との距離も検知できる。この場合、信号処理部5は、例えば、検知信号(アナログな検知信号)の値が所定の閾値以上である場合に、被検知体が検知コイル10の検知範囲内に存在し、所定の閾値未満である場合に、被検知体が検知コイル10の検知範囲外に存在すると判断して、被検知体の存否を示す検知信号(デジタルな検知信号)を出力するように構成されていてもよい。
また、信号処理部5は、制御部4から可変抵抗部21cの抵抗値Rvを取得し、当該抵抗値Rvを用いて検知信号を作成するから、例えば、負性コンダクタンスGoscの大きさを得るために帰還電流Ifbなどを利用する場合とは異なり、帰還電流Ifbの大きさを検出する検出回路などが必要なくなるから、回路構成を簡素化することができて、小型化、製造コストの低減などが図れる。
ところで、本実施形態における可変抵抗部21cは、上述したような可変抵抗器に限定されるものではなく、例えば、1乃至複数の固定抵抗器と、1乃至複数の可変抵抗器との直列または並列回路からなるものであってもよい。このようにすれば、固定抵抗器の抵抗値を可変抵抗部21cの抵抗値Rvのオフセットとして利用することができ、可変抵抗器のみを用いる場合に比べれば、被検知体と検知コイル10との距離の分解能(位置精度)を向上できる。なお、本実施形態における増幅回路21では、オペアンプ21aの反転入力端子と出力端子との間に可変抵抗部21cを挿入し、オペアンプ21aの反転入力端子とグラウンドとの間に固定抵抗部21bを挿入しているが、これは逆であってもよい。すなわち、オペアンプ21aの反転入力端子と出力端子との間に固定抵抗部21bを挿入し、オペアンプ21aの反転入力端子とグラウンドとの間に可変抵抗部21cを挿入するようにしてもよい。これらの点は後述する実施形態2〜4においても同様である。
ところで、負性コンダクタンスGsocを調整する方法としては、抵抗器24とグラウンドとの間に可変抵抗部21cを挿入し、当該可変抵抗部21cの抵抗値Rvを変えることによって、帰還電流Ifbの大きさを調整し、負性コンダクタンスGoscを調整する方法が考えられる。この場合、可変抵抗部21cに流れる電流によって帰還電流Ifbが決定される。ここで、可変抵抗部21cの抵抗値を大きくした際には、当然ながら帰還電流Ifbが小さくなるため、可変抵抗部21cの抵抗値Rvの絶対値(大きさ)に設計上の制約が生じ、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを比較的小さい値としなければならず、可変抵抗部21cを設計するにあたっては、抵抗値が比較的小さい抵抗を用いて可変抵抗部21cを設計する必要がある。
これに対して、本実施形態では、増幅回路21に固定抵抗部21bと可変抵抗部21cとを設けてあり、上記式(3)で示されているように、負性コンダクタンスGoscは、可変抵抗部21cと固定抵抗部21bとの合成抵抗値Rs+Rvと固定抵抗部21bの抵抗値Rsとの比に依存するため、可変抵抗部21cの抵抗値Rvおよび固定抵抗部21bの抵抗値Rsそれぞれの大きさに対する設計上の制約がなくなり、抵抗値が比較的大きい抵抗を用いて可変抵抗部21cを設計することができるから、上述したように抵抗値が比較的小さい抵抗を用いて可変抵抗部21cを設計する場合に比べれば、可変抵抗部21cの設計が容易になる。
本実施形態における近接センサでは、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とはモノリシックICとして一体化されているので、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とをそれぞれ別のICなどにより構成する場合に比べれば、小型化が図れるとともに低コスト化が図れ、さらに耐ノイズ性能を向上できる。ここで、可変抵抗部21cを上述したように1乃至複数の固定抵抗器と1乃至複数の可変抵抗器との直列または並列回路により構成した場合には、可変抵抗部21cの可変抵抗器をモノリシックICに組み込み、固定抵抗器はモノリシックICに組み込まないようにしてもよく、このようにすれば、固定抵抗器の交換によって、可変抵抗部21cの抵抗値Rvの可変範囲を調整することができ、近接センサの設計変更が容易になる。
ところで、発振回路部2と、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5とをモノリシックICとして一体化するにあたっては、電圧電流変換回路22のエミッタ電位設定用の抵抗器24をモノリシックICに組み込まずに外付けするようにしてもよい。この場合、増幅回路21の可変抵抗部21cおよび固定抵抗部21bそれぞれの抵抗値の絶対値はICプロセスのばらつきによってばらつく(通常±20%程度ばらつく)ことになるが、負性コンダクタンスGoscは、上記(3)式より可変抵抗部21cと固定抵抗部21bとの合成抵抗値Rs+Rvと固定抵抗部21bの抵抗値Rsとの比に依存しており、またモノリシックICでは各抵抗の相対比はほぼ一定となる。そのため、負性コンダクタンスGoscは、ICプロセスのばらつきの影響は受けない。したがって、外付け部品である抵抗器24として、ばらつきが小さいものを選択することによって、負性コンダクタンスGoscのばらつきを抑制できる。つまり、上述したように抵抗器24をモノリシックICに組み込まずに外付けするようにすることで、負性コンダクタンスGoscのばらつきを抑制できるというメリットがある。その上、上記(3)式からも明らかなように、抵抗器24の抵抗値Reによって負性コンダクタンスGoscを調整できるから、各種コイルに対する設計の柔軟性を向上できる。
なお、本実施形態における発振回路部2や、モニタ部3の回路構成はあくまでも一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない程度に変更することができる。例えば、発振回路部2の電圧電流変換回路22を、トランジスタを用いたレベルシフト回路と、エミッタフォロワ(エミッタホロワ)回路とにより構成してもよいし、また、モニタ部3としては、発振振幅を示す値として、図1に示すような発振電圧のピーク値を検出する構成の他に、発振電圧の積分値を検出する構成や、発振電圧の実効値を検出する構成であってもよい。このように、交流成分のみを検波し、それが一定になるように制御する方式にすると、バイアス電流や検知コイル10の直流抵抗分の影響(当然、それらの温度特性も)を排除することが可能になるという利点がある。
また、本実施形態における近接センサは、常時はLC共振回路部1が発振しており、被検知体の接近によってLC共振回路部1の発振が停止する近接センサを利用しているが、常時はLC共振回路部1の発振が停止しており、被検知体の接近によってLC共振回路部1が発振する近接センサを利用するようにしてもよい。
ところで、本実施形態における検知コイル10のコンダクタンスは、被検知体との距離のほかに、LC共振回路部1の発振周波数によっても変化する。つまり、コンデンサ11の容量が変化した場合であっても、検知コイル10のコンダクタンスが変化する。したがって、本実施形態の近接センサは、静電容量センサとしても利用することができ、この場合であっても、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを出力として利用することができる。
(実施形態2)
本実施形態の近接センサは、可変抵抗部21cと、モニタ部3と、制御部4と、信号処理部5との構成が実施形態1と異なっており、その他の構成については実施形態1と同様であるから同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における可変抵抗部21cは、デジタルコード(すなわち、00000111などのビット列)にて抵抗値Rvを設定可能なデジタルポテンショメータからなる。なお、このようなデジタルポテンショメータは従来周知の物品であるから説明を省略する。
本実施形態におけるモニタ部3は、npn形のトランジスタ30と、抵抗31と、コンデンサ32と、A/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換器)33とを備えている。ここで、トランジスタ30と、抵抗31と、コンデンサ32とは、LC共振回路部1の発振振幅VTを検出する検出部を構成しており、当該検出部は、発振振幅VTを示すアナログ信号をA/Dコンバータに出力する。A/Dコンバータ33は、検出部が出力したアナログ信号を所定の量子化幅でデジタル信号に変換して制御部4に出力する。なお、このようなA/Dコンバータ33は従来周知の構成により実現できるから詳細な説明を省略する。
本実施形態における制御部4は、発振回路部2の負性コンダクタンスGoscが上記臨界値となるように可変抵抗部21cの抵抗値Rvを設定するデジタルコードを作成し、当該デジタルコードを可変抵抗部21cおよび信号処理部5に出力する。ここで、制御部4は、デジタルコードを作成するにあたっては、A/Dコンバータ33が出力した発振振幅VTを示すデジタル信号からデジタルコードを作成する。本実施形態における制御部4は、A/Dコンバータ33より得たデジタル信号と、負性コンダクタンスGoscの絶対値とコンダクタンスGcoilの絶対値が等しいときの発振振幅VTのデジタル信号とを比較し、その差分に応じてデジタルコードを作成する。
本実施形態における信号処理部5は、上記の検知用可変抵抗部を備える代わりに、制御部4が出力するデジタルコードから可変抵抗部21cの抵抗値Rvを取得する機能を備え、検知コイル10と被検知体との距離を示す上記検知信号を作成するにあたっては、制御部4が出力したデジタルコードを用いて上記検知信号の作成を行う。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、上記実施形態1と同様の効果を奏する上に、信号処理部5は、制御部4が出力したデジタルコードを演算処理することで可変抵抗部21cの抵抗値Rvを得ることができ、このような演算処理はプログラムなどにより容易に実現可能であるから、例えば、実施形態1のように可変抵抗部21cが固定抵抗器と半導体スイッチング素子の直列回路を並列接続した可変抵抗器であり、制御部4の出力する制御信号による半導体スイッチング素子(スイッチ)のオン・オフで抵抗値Rvの設定を行うものである場合に比べれば、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを容易に得ることができる。
また、モニタ部3は、LC共振回路部1の発振振幅VTを検出し発振振幅VTを示すアナログ信号を出力する検出部と、当該検出部が出力した発振振幅VTを示すアナログ信号をデジタル信号に変換して制御部4に出力するA/Dコンバータ33とを備え、制御部4は、A/Dコンバータ33が出力した発振振幅VTを示すデジタル信号からデジタルコードを作成するから、例えば比較器などを用いて、モニタ部3より得た発振振幅VTが所定値を越えているか、あるいは下回っているかを判断し、その結果に応じて、抵抗値Rvを変更する場合に比べれば(つまりアナログ演算によって抵抗値Rvを設定する場合に比べれば)、抵抗値Rvをすぐに負性コンダクタンスGoscの絶対値がコンダクタンスGcoilの絶対値に等しくなる値に設定できるから、処理速度(可変抵抗部21cの抵抗値Rvの変化の応答性、追随性)を向上でき、例えば、近接センサの起動時や、被検知体の移動速度が速い場合であっても、迅速に、発振回路部2の負性コンダクタンスをLC共振回路部1が発振可能な臨界値に設定することができ、遅れが生じてしまうことを抑制できる。
(実施形態3)
本実施形態の近接センサは、可変抵抗部21cの構成と、制御部4の構成と、信号処理部5の構成とが実施形態1と異なっており、その他の構成については実施形態1と同様であるから同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における可変抵抗部21cは、実施形態2と同様のデジタルポテンショメータからなる。つまり、本実施形態においても可変抵抗部21cは、デジタルコードにて抵抗値Rvを設定可能なデジタルポテンショメータからなる。また、本実施形態における信号処理部5は、上記実施形態2と同様のものであるから詳細な説明は省略する。
本実施形態における制御部4は、所定周期でモニタ部3により検出した発振振幅VTと所定の閾値とを比較する比較部40と、タイミング回路41と、比較部40の比較結果に基づいてデジタルコードを可変抵抗部21cおよび信号処理部4に出力する演算処理部42とにより構成されている。
比較部40は、内部電源Vccとグラウンドとの間に挿入された抵抗R1〜R3の直列回路からなる分圧回路と、第1のコンパレータCOMP1と、第2のコンパレータCOMP2と、第1の否定ゲート(NOTゲート、インバータともいう)40aと、論理積ゲート(ANDゲート)40bと、第2の否定ゲート40cとで構成されている。
上記分圧回路は、第1のコンパレータCOMP1と第2のコンパレータCOMP2とに所定の閾値V1,V2を与えるためのものであって、抵抗R1,R2の接続点の電位からなる閾値V1は発振振幅VTの上限となる値であり、抵抗R2,R3の接続点の電位からなる閾値V2は発振振幅VTの下限となる値である。
第1のコンパレータCOMP1の非反転入力端子は抵抗R1,R2の接続点に接続され、反転入力端子はモニタ部3の出力端子に接続されている。したがって、第1のコンパレータCOMP1は、モニタ部3で検出した発振振幅VTが閾値V1以下であれば、ハイレベルの信号を出力し、発振振幅VTが閾値V1を越えていれば、ロウレベルの信号を出力する。第1のコンパレータCOMP1の出力端子は、第1の否定ゲート40aおよび論理積ゲート40bに接続されている。
第2のコンパレータCOMP2の反転入力端子は抵抗R2,R3の接続点に接続され、非反転入力端子はモニタ部3の出力端子に接続されている。したがって、第2のコンパレータCOMP2は、モニタ部3で検出した発振振幅VTが閾値V2を越えていれば、ハイレベルの信号を出力し、発振振幅VTが閾値V2以下であれば、ロウレベルの信号を出力する。第2のコンパレータCOMP2の出力端子は、第2の否定ゲート40cおよび論理積ゲート40bに接続されている。
第1の否定ゲート40a、論理積ゲート40b、および第2の否定ゲート40cそれぞれの出力端子は、演算処理部42に別個に接続されている。
したがって、このような比較部40では、発振振幅VTが閾値V1超過であれば、第1の否定ゲート40aからはハイレベルの信号が出力され、論理積ゲート40bおよび第2の否定ゲート40cからはロウレベルの信号が出力され、発振振幅VTが閾値V1以下、閾値V2超過であれば、第1の否定ゲート40aおよび第2の否定ゲート40cからはロウレベルの信号が出力され、論理積ゲート40bからはハイレベルの信号が出力され、発振振幅VTが閾値V2以下であれば、第1の否定ゲート40aおよび論理積ゲート40bからはロウレベルの信号が出力され、第2の否定ゲート40cからはハイレベルの信号が出力される。
タイミング回路部41は、所定周波数で演算処理部42にパルス信号を出力する発振回路からなる。ここで、タイミング回路部41の周波数は、LC共振回路部1の発振周波数より低く設定されている。
演算処理部42は、第1の否定ゲート40aからハイレベルの信号を受け取ると、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを減少させ、論理積ゲート40bからハイレベルの信号を受け取ると、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを現状のまま維持し、第2の否定ゲート40cからハイレベルの信号を受け取ると、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを増加させる。つまり、本実施形態における制御部4は、比較部40の比較結果によってデジタルポテンショメータからなる可変抵抗部21cの抵抗値Rvを変更するか否かを決定する。
また、演算処理部42は、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを変更するにあたっては、デジタルコードを1ずつ変化させる。例えば、可変抵抗部21cの抵抗値Rvに対応するデジタルコードが’00100110’であるときに、第1の否定ゲート40aからハイレベルの信号を受け取ると、現時点でのデジタルコードを1減少させて、’00100101’からなるデジタルコードを作成して、このデジタルコードを出力する。一方、第2の否定ゲート40cからハイレベルの信号を受け取ると、現時点でのデジタルコードを1増加させて、’00100111’からなるデジタルコードを作成して、このデジタルコードを出力する。
さらに、演算処理部43は、デジタルコードを出力するにあたっては、タイミング回路部41よりパルス信号を得た際に、デジタルコードを出力するようになっており、これによりタイミング回路部41の周波数より低い周波数で、演算処理部43からデジタルコードが出力されないようにしている。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、実施形態1と同様の効果を奏する。その上、制御部4は、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを発振回路部2の負性コンダクタンスGoscが上記臨界値となる値に設定するにあたって、デジタルコードを1ずつ増減させる(すなわち、抵抗Rvを最小の変化幅で変化させる)ので、抵抗値Rvを増加させる際に、抵抗値Rvが目標値を上回ってしまうことを防止できるから、オーバーシュートが生じてしまうことを防止でき、また抵抗値Rvを減少させる際に、抵抗値Rvが目標値を下回ってしまうことを防止できるから、アンダーシュートが生じてしまうことを防止できる。しかも、デジタルコードを1ずつ増やすようにしているので、発振振幅VTから可変抵抗部21cの抵抗値Rvの目標値を直接的に演算する処理を行わなくて済み、AD変換回路やCPUなどの複雑な装置に比べれば安価なコンパレータにより比較部40を構成することができるから、低コスト化が図れる。
また、制御部4は、タイミング回路部43よりパルス信号が入力された際にデジタルコードを出力するようになっており、タイミング回路部43からパルス信号が出力される周波数はLC共振回路部1の発振周波数より低くしているので、LC共振回路部1の発振周期より短い時間間隔でデジタルコードが可変抵抗部21cに与えられることがなく、可変抵抗部21cの抵抗値Rvを変更したことに起因するLC共振回路部1の発振を防止でき、安定した制御が行えるようになる。
(実施形態4)
本実施形態の近接センサは、温度検知部となる温度センサ6を備えている点と、信号処理部5の構成とが実施形態3と異なっており、その他の構成については実施形態3と同様であるから同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
温度センサ6は、サーミスタなどの従来周知の感熱素子を用いて構成されている。このような温度センサ6は、周囲の温度、例えば検知コイル10の周囲の温度を検知するために、検知コイル10の近傍に配置されている。なお、温度センサ6は、状況に応じて好適な位置に配置すればよい。
本実施形態における信号処理部5は、図4に示すように、制御部4が出力したデジタルコードの値に温度センサ6で検知した温度に対応する補正温度係数(補正係数)を乗じることで温度補償を行う温度補償部50と、温度補償部50による温度補償が行われた上記デジタルコードの値にオフセットとゲインの少なくとも一方を加えてデジタルコードの値を調整する出力調整部51と、温度補償部50による温度補償および出力調整部51による調整が行われた上記デジタルコードから可変抵抗部21cの抵抗値Rvを演算して、検知コイル10と被検知体との距離を示す上記検知信号を作成する出力回路部52とを有している。なお、温度補償部50や出力調整部51はプログラムなどにより実現されている。
さらに、本実施形態における信号処理部5は、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリからなる記憶部53を有し、当該記憶部53には、温度補償部50で使用する補正温度係数のデータテーブルと、出力調整部51で使用するオフセットやゲインが記憶されている。このような記憶部53に記憶されている補正温度係数のデータテーブルや、オフセット、ゲインは、変更可能としている。
温度補償部50は、デジタルコードが入力されると、記憶部53に記憶されている補正温度係数のデータテーブルから、温度センサ6の検知温度に対応する補正温度係数を取得し、取得した補正温度係数とデジタルコードの値との乗算を行い、その結果を、新たなデジタルコードとして出力する。なお、温度補償部50で使用する補正温度係数は、検知コイル10や、被検知体、発振回路部2などの回路の温度特性を考慮して設定された値であって、リファレンスなどを用いた温度測定の結果などから求めることができる。
出力調整部51は、デジタルコードが入力されると、記憶部53に記憶されているオフセットやゲインを入力されたデジタルコードの値に加え、その結果を、新たなデジタルコードとして出力する。ここで、オフセットの値は、デジタルコードの値に加算あるいは減算される値であり、ゲインの値は0を除く数であって、デジタルコードの値に乗算あるいは除算される値である。したがって、デジタルコードの値を正側にシフトさせたい場合には、オフセットの値を正の値に設定し、デジタルコードの値を負側にシフトさせたい場合には、オフセットの値を負の値に設定すればよい。また、デジタルコード間の値の差を大きくしたい場合には、ゲインの値を1より大きい値に設定すればよく、デジタルコード間の値の差を小さくしたい場合には、ゲインの値を0以上1未満の値に設定すればよい。
このような出力調整部51によるデジタルコードの値の調整は、例えば、出力回路部52が出力する検知信号が取り得る値を所望の範囲内の値に設定することを目的として行われる。例えば、近接センサの使用状況(例えば被検知体の材料の種類)によっては、デジタルコードの値から得た検知信号の大きさが、出力回路部52により出力可能な大きさより大きく、検知信号が飽和(サチュレーション)してしまい、検知コイル10と被検知体との距離が得られなくなってしまうおそれがある。このような場合には、出力調整部51によりデジタルコードの値を調整して検知信号の大きさを出力回路部52により出力可能な大きさの範囲内に収まるようにすることで、検知信号の飽和に起因する不具合を防止できる。
出力回路部52は、温度補償部50および出力調整部51を経たデジタルコードから可変抵抗部21cの抵抗値Rvを演算し、デジタルコードから得た抵抗値Rvを用いて検知コイル10と被検知体との距離を示す上記検知信号を作成し、外部に出力する。
以上述べた本実施形態の近接センサによれば、実施形態3と同様の効果を奏する上に、温度センサ6で検知した温度に応じてデジタルコードの値が補正されるから、検知コイル10や、被検知体、発振回路部2などの回路の温度特性に起因する検知精度の悪化を防止でき、検知精度の向上が図れる。また、デジタルコードの値に任意にオフセットやゲインを加えることができるから、検知信号の値を所望の範囲内の値とすることができる。
また、温度補償部50における補正温度係数は変更可能(書き換え可能)であるから、製品毎に、検知コイル10の特性や、検知コイル10と被検知体との相対位置、発振回路部2などの回路の温度特性にばらつきがあっても、このようなばらつきによって製品毎に検知信号の値が異なってしまうことを防止でき、いずれの製品においても所望の検知信号を得ることが可能となる。
さらに、出力調整部51におけるオフセットやゲインは変更可能(書き換え可能)であるから、製品毎に、検知コイル10の特性や、検知コイル10と被検知体との相対位置、発振回路部2などの回路の特性にばらつきがあっても、このようなばらつきによって製品毎に検知信号の値の範囲が異なってしまうことを防止でき、いずれの製品においても検知信号の値を所望の範囲内の値とすることが可能となる。
なお、本実施形態における信号処理部5は、温度補償部50と、出力調整部51との両方を備えているが、必ずしも両方を備えている必要はなく、温度補償部50と出力調整部51とのいずれか一方のみを備えているようなものであってもよい。
実施形態1の近接センサの回路ブロック図である。 実施形態2の近接センサの回路ブロック図である。 実施形態3の近接センサの回路ブロック図である。 実施形態4の近接センサの回路ブロック図である。
符号の説明
1 LC共振回路
2 発振回路部
3 モニタ部
4 制御部
5 信号処理部
6 温度センサ(温度検知部)
10 検知コイル
21 増幅回路
22 電圧電流変換回路
23 電流帰還回路
21c 可変抵抗部
33 A/Dコンバータ
40 比較部
41 タイミング回路部
50 温度補償部
51 出力調整部

Claims (11)

  1. 被検知体の検知に用いられる検知コイルおよびコンデンサからなるLC共振回路部と、
    LC共振回路部を発振させる発振回路部と、
    LC共振回路部の発振振幅を検出するモニタ部と、
    モニタ部で検出した発振振幅に基づいて発振回路部の負性コンダクタンスをLC共振回路部が発振可能な臨界値に設定する制御部と、
    被検知体と検知コイルとの距離を示す検知信号を作成する信号処理部とを備え、
    発振回路部は、LC共振回路部の発振電圧を増幅する増幅回路と、増幅回路で増幅された発振電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換回路と、電圧電流変換回路が出力する電流の大きさに応じた帰還電流をLC共振回路部に供給する電流帰還回路と、
    増幅回路には、発振電圧の増幅率を調整する可変抵抗部が設けられ、
    制御部は、発振回路部の負性コンダクタンスが上記臨界値となるように可変抵抗部の抵抗値を設定し、
    信号処理部は、可変抵抗部の抵抗値に基づいて上記検知信号を作成することを特徴とする近接センサ。
  2. 上記可変抵抗部は、1乃至複数の固定抵抗器と、1乃至複数の可変抵抗器との直列または並列回路からなることを特徴とする請求項1記載の近接センサ。
  3. 上記可変抵抗部は、デジタルコードにて抵抗値を設定可能なデジタルポテンショメータからなる可変抵抗器を有し、
    上記制御部は、上記発振回路部の負性コンダクタンスが上記臨界値となるように上記可変抵抗部の抵抗値を設定するデジタルコードを上記可変抵抗部および上記信号処理部に出力し、
    上記信号処理部は、上記制御部が出力したデジタルコードに基づいて上記検知信号を作成することを特徴とする請求項1または2記載の近接センサ。
  4. 上記モニタ部は、上記LC共振回路部の発振振幅を検出し発振振幅を示すアナログ信号を出力する検出部と、当該検出部が出力した発振振幅を示すアナログ信号をデジタル信号に変換して上記制御部に出力するA/Dコンバータとを備え、
    上記制御部は、A/Dコンバータが出力した発振振幅を示すデジタル信号から上記デジタルコードを作成することを特徴とする請求項3記載の近接センサ。
  5. 上記制御部は、上記モニタ部で検出した発振振幅と所定の閾値とを比較する比較部を有し、当該比較部の比較結果によって上記デジタルポテンショメータの抵抗値を変更するか否かを決定し、上記デジタルポテンショメータの抵抗値を変更するにあたっては、上記デジタルコードを1ずつ変化させることを特徴とする請求項3記載の近接センサ。
  6. 上記制御部は、上記デジタルコードを出力するタイミングを指示する信号を所定周波数で出力するタイミング回路を有し、上記所定周波数は、LC共振回路部の発振周波数より低いことを特徴とする請求項3〜5のうちいずれか1項記載の近接センサ。
  7. 上記信号処理部は、上記制御部が出力した上記デジタルコードの値にオフセットとゲインの少なくとも一方を加える出力調整部を有していることを特徴とする請求項3〜6のうちいずれか1項記載の近接センサ。
  8. 上記出力調整部における上記オフセットと上記ゲインは変更可能であることを特徴とする請求項7記載の近接センサ。
  9. 周囲の温度を検知する温度検知部を備え、
    上記信号処理部は、上記制御部が出力した上記デジタルコードの値に温度検知部で検知した温度に対応する補正温度係数を乗じることで温度補償を行う温度補償部を有していることを特徴とする請求項3〜8のうちいずれか1項記載の近接センサ。
  10. 上記温度補償部における上記補正温度係数は変更可能であることを特徴とする請求項9記載の近接センサ。
  11. 上記発振回路部と、上記モニタ部と、上記制御部と、上記信号処理部とはモノリシックICとして一体化されていることを特徴とする請求項1〜10のうちいずれか1項記載の近接センサ。
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