JP2009275154A - ポリオレフィン樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フィッシュアイ等の外観上の欠陥を低減させた高品質のフィルムを製造するために有用なポリオレフィン樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリオレフィン樹脂をハロゲン系溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、該溶液からハロゲン系溶剤を蒸散させる工程からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂、並びに、ポリオレフィン樹脂をハロゲン系溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、該溶液を冷却してポリオレフィン樹脂を析出させる工程、さらに、ハロゲン系溶剤を蒸散させる工程からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明はポリオレフィン樹脂の製造方法に関するものである。
ポリオレフィン樹脂は経済性、機械強度、透明性、成形性、衛生性等に優れていることから広範な産業分野で使用されている。ポリオレフィンフィルムは単層又は多層フィルムに加工され、光学用のマスキングフィルムをはじめとして、電子材料分野等で広範に用いられている。これらの用途においては、フィルムの品質向上に対する要求が年々厳しくなってきており、フィルムの外観を低下させるフィッシュアイの低減が求められている。例えば、ドライフィルムレジスト用の保護フィルム層にはフィッシュアイが極めて少ないポリオレフィンフィルムが求められる。
フィッシュアイはポリオレフィン樹脂に混入した異物、ゲル等が原因となるため、高品質フィルムを製造するため、ポリオレフィン樹脂中の異物、ゲル量の低減が必要となる。
ここでいうフィッシュアイとは、フィルム中にゲル、異物が存在した場合、これらゲル又は異物が、その周囲とは異なる屈折率を示すことで光学的に不均一な状態を示している状態をいう。このような屈折率の不均一性はゲル、異物自体がフィルム自体の屈折率とは異なった屈折率を有する場合に生じるが、さらに、これらゲル、異物がフィルム形成時の樹脂の流動性に影響を与え、ゲル、異物自体のサイズよりも大きな領域で光学的な不均一性を生じることもある。この場合、光学的歪はゲル、異物自体のサイズではなく、その周囲の領域を含めた光学的歪を生じている領域と定義される。
本発明でいうゲルとは、ポリオレフィン樹脂が製造される過程で十分に可塑化されていない未架橋の成分、また、ポリオレフィン樹脂に加えられた熱履歴により架橋した成分を指す。ゲルが存在するとフィルムに上記の光学的歪を生じ、フィルム概観を著しく損なう。また、異物はポリオレフィン樹脂を製造する過程やポリオレフィンをフィルム化する過程で外部から混入するポリオレフィン樹脂以外の物質であり、例えば、繊維、無機物、金属などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂中のゲルには未溶融ゲルと架橋ゲルがあることが知られている。架橋ゲルはポリオレフィン樹脂が3次元的に架橋し、加熱溶融、及び溶剤への溶解が難しいゲルである。一方、未溶融ゲルは加熱により溶融又は溶解可能なゲルであるが、通常の1軸又は2軸押出機により溶融混練し、ダイス等から押出した場合には未溶融ゲルとしての状態を保持している比率が高く、製品外観の低下を招く。
特にベッセル型反応器又はチューブラー型反応器を用いて高圧ラジカル重合で得られるポリオレフィン樹脂、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、又は低密度ポリエチレン等では上記の未架橋ゲル、架橋ゲルが多いことが知られている。高温の反応器内では生成したポリマーからラジカル的に水素が引き抜かれ、分岐が生成する。この分岐ポリマーは反応器に接続された高圧分離器、及びペレット化の過程で高温に晒される過程で凝集体としての未架橋ゲル、又は架橋反応を起こして架橋ゲルを生成することが、この理由である。
この問題を解決する方法として、例えば、ゲル、および異物の含有量が少ない樹脂を製造する方法が検討されているが(例えば、特許文献1を参照)、製造した一部の樹脂のみを使用するため経済性の点で問題があった。
特公昭63−41926号公報 一方、樹脂に含まれる架橋ゲル、及び、未架橋ゲルを成型時に除去することにより、製品外観を向上させる方法が用いられてきた。例えば、一軸又は2軸押出機に濾過装置を設置する方法が知られており、濾材としては、金属メッシュ、焼結金属フィルター等が用いられているが、このような濾過による方法は、架橋ゲルの除去には極めて有効であるが、未溶融ゲルは変形して濾材を通過しやすいため、効率的、かつ効果的に除去することが難しいという問題があった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィッシュアイ等の外観上の欠陥を低減させた高品質のフィルムを製造するために有用なポリオレフィン樹脂の製造方法を提供するものである。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の製造方法により得られたポリオレフィン樹脂を用いることで、高品質のポリオレフィンフィルムを製造することが可能であることを見出し本発明に至った。本発明は未架橋ゲルを低減するため、通常の溶融加工では凝集状態を解消することが困難であり、また、それ故、フィッシュアイの原因となっている未架橋ゲルの凝集状態をハロゲン系溶剤を用いることで解消するものである。つまり、未架橋ゲルを含むポリオレフィン樹脂を、該ポリオレフィン樹脂が溶解するハロゲン系溶剤中で溶媒和し、ポリマーの凝集体を非凝集状態とするものである。この操作によりポリマー鎖は溶媒中で安定化され再度個体化させるまで元々保持していた凝集構造には戻ることがなく、フィッシュアイの生成を起こすことがない。すなわち、本発明は、ポリオレフィン樹脂をハロゲン系溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、該溶液からハロゲン系溶剤を蒸散させる工程からなる高品質のポリオレフィンフィルムの製造に有用なポリオレフィン樹脂の製造方法等に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明であるポリオレフィン樹脂の製造方法としては、ポリオレフィン樹脂をハロゲン系溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、該溶液からハロゲン系溶剤を蒸散させる工程からなる方法である。
各工程について以下に説明する。
1)溶解工程
本発明の製造方法で用いるポリオレフィン樹脂としては、何ら制限はないが、例えば、ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(V−LDPE)等が挙げられる。線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)としては、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。その他のポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびその鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等のエチレン系コポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられ、さらに、これらのポリオレフィンの塩素化物も同様に用いることができる。また、これらポリオレフィンは単独で、又は複数選択して用いることができる。
これらのポリオレフィン樹脂を合成するための重合方法は通常知られている方法でよく、高圧ラジカル重合、中低圧重合、溶液重合、スラリー重合であり、使用触媒は過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられ、これらの触媒で重合されたポリオレフィンを何ら制限なく使用することができる。
本発明の製造方法で用いるポリオレフィン樹脂の分子量は、ポリオレフィン樹脂がハロゲン系溶剤に溶解する限り何ら制限がない。
本発明の製造方法で用いるポリオレフィン樹脂の形状は、ポリオレフィン樹脂がハロゲン系溶剤に溶解する限り何ら制限はないが、例えば、ストランドカット法等により得られる円柱状ペレット、水中ホットカット法(アンダーウォーターカット法)等により製造される卵型ペレット、無定形の粉体、粒状物、顆粒等が例示される。また、高密度ポリエチレンのようにスラリー法で製造される樹脂の場合には、粉体としてポリマーが反応器から取り出されることがあるが、本発明ではこのような粉末状のポリマーも同様に使用することができる。
また、本発明の製造方法では一度成形されたポリオレフィン樹脂のフィルム、繊維、成形体を原料とすることも可能であり、この場合、何ら、その成形体の形状に制限はない。本発明の製造方法により、ポリオレフィン樹脂(粉体、高品質のフィルム等の成形体)を製造することができる。この粉体を用いることにより後述する公知の成形方法によりフィルム等任意の成形体を製造できる。この方法により化石資源の節約に大きく貢献できる技術を提供することになる。
本発明の製造方法で用いられるハロゲン系溶剤は、ポリオレフィン樹脂が溶解する限り何ら制限はないが、例えば、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロフォルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等の塩素系溶剤、臭化エタン等の臭素系溶剤、モノフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、ジクロロペンタフルオロプロパン等のフッ素系溶剤、ブロモクロロメタン、1,2−ジブロモ−1,1−ジフルオロエタン等の臭素とフッ素を含有する溶剤等が例示される。これらのハロゲン系溶剤は2種以上を混合して使用することもできる。
これらのハロゲン系溶剤の中では、ポリオレフィン樹脂を例えば、80〜110℃で溶解できるハロゲン系溶剤が適しており、また、溶剤の蒸散の観点からは沸点の低いハロゲン系溶剤が適している。このような観点から、好ましくは1,1,2−トリクロロエタンである。
本発明の製造方法におけるポリオレフィン樹脂の溶解温度は用いるハロゲン系溶剤とポリオレフィンに樹脂より適宜決定されるが、溶解温度は60℃から200℃が用いられる。好ましくは溶剤の沸点以下、常圧で溶解させるのが経済的側面から好適である。必要に応じて、ポリオレフィン樹脂が溶解しない場合には、耐圧容器を用いて溶剤の沸点以上の温度で溶解することも可能である。溶解時間はポリオレフィン樹脂の形状、及び、溶解温度に依存するが、20分から8時間である。ポリオレフィン樹脂の溶解は完全に行う必要があり、一定の溶液粘度に到達するまで溶解を行うことが好ましい。しかしながら、溶解時の撹拌は必須ではない。また、溶解に用いる反応器はベッセル、チューブ、横型反応器、押出機等、その形状等を問わない。
ポリオレフィン樹脂のハロゲン系溶剤への溶解により調製されたポリオレフィン溶液はポリオレフィン樹脂中の異物をさらに除くために、ポリオレフィンが溶解した状態で濾過することが好ましい。濾過方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、金属織布(メッシュ)、ポリマーフィルターの通称で知られている金属製の焼結フィルター、金属性不織布、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の高分子材料を用いた不織布等が例示される。これらの濾過材は単独、又は複数組み合わせて使用することができ、また、濾過は順次、濾過精度を上げるため、多段階に分けて行うこともできる。
ポリマーフィルターを用いた濾過方法では、プリーツ型、又はキャンドル型と呼ばれる円筒型のフィルターを用いたポリマーフィルター、シリンダー型、又は、多数のディスク状フィルターを組み合わせたリーフディスク型のポリマーフィルターを用いることができる。また、プリーツ型、又はキャンドル型とリーフディスク型のフィルターを同一フィルター容器内に設置した複合型のポリマーフィルターを用いることも可能である。フィルター濾材は特に制限されず、焼結金網、焼結金属不織布、焼結金属粉末濾材を用いることができる。濃縮器に導入するため低粘度のポリマー溶液を濾過する際の精度はできる限り高い方が好ましく、0.5μm〜200μmの範囲のフィルターが好適に用いられる。濾過温度は使用する溶剤の沸点以下であれば、特に制限されない。濾過条件は濾過効率が少なくとも95%以上、更に好ましくは99%以上となるよう、ポリマー溶液の流量、及び圧力、濾材の選定を行うことが好ましい。また、ポリマーフィルター以外にも焼結金属メッシュを濾材として用いたプレートチューブ型、又はプレートプリーツ型のラインフィルターを用いることができる。
ポリオレフィン溶液の濾過は1回で不十分な場合には、更に2度に分けて行うことができる。例えば、ポリオレフィン溶液をプリーツ型の濾過器で濾過した後、該ポリオレフィン溶液を前述の濃縮方法により濃縮した高粘度のポリオレフィン溶液を濾過精度の高いリーフ型フィルターで再度濾過する方法を用いることができる。
ポリオレフィン溶液の濃度は特に制限がなく、選択した溶剤により適宜、設定することが必要であるが、0.1〜50重量%の濃度が用いられる。
上記のポリオレフィン樹脂の溶解に際しては、各種添加剤をフィルムのフィッシュアイ、外観、及び物性に影響しない範囲で添加することができる。例えば、フェノール系、リン系、イオウ系等から選ばれた単独、又は複数の酸化防止剤を始め、ワックス等種々の添加剤を添加できる。
2)溶剤の蒸散工程
本発明の製造方法においてハロゲン系溶剤を蒸散させる方法としては、例えば、ポリオレフィン溶液を減圧下で液滴化し噴霧することにより粉体化するスプレイドライ法を用いることができる。ポリオレフィン溶液の液滴化法は、小口径のノズルからポリオレフィン溶液を必要に応じて加熱した減圧容器中に吐出することにより液滴化したポリオレフィン溶液からハロゲン系溶剤を蒸散させるものである。この場合の減圧度は選択したハロゲン系溶剤、及び減圧容器の温度により適宜選択させるものであり、ポリオレフィン溶液が液滴化し、その液滴からハロゲン系溶剤が蒸散する限り、減圧度、温度に何らの制限もないが、減圧度は0.1〜200Torrの範囲が用いられ、温度は20〜180℃が用いられる。得られたポリオレフィン樹脂は例えば、インフレーション成型、Tダイを備えた1軸、2軸押出機等を用いることにより高品質のフィルムに成型することができるが、成型法には何ら制限はない。
また、本発明の製造方法においてハロゲン系溶剤を蒸散させる他の方法としては、例えば、ポリオレフィン溶液を基材上に連続的に流延し薄膜化した後、加熱により乾燥する方法を用いることができる。基材としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル製のフィルムに代表される各種ポリマーフィルム、及びこれらポリエステルフィルムの表面にシリコン処理、アクリル樹脂等のハードコートによる表面処理を施した各種フィルム、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属箔、金属フィルム、金属シート等の各種金属素材、金属蒸着処理を行ったPET等の各種ポリマーフィルムが例示される。さらに、必要に応じてこれら金属素材上にポリマーコーティングを施したもの、無機コーティングを施したものを用いることができる。また、必要に応じて加熱した回転金属ドラム上に流延することも可能であり、エンドレスのポリマーベルト、金属ベルト上に塗工することができる。
ポリオレフィン溶液を基材に流延する方法としては公知の方法であるグラビアコーター、コンマコーター、ダイコーター、ダブルメイヤーバーコーター等が例示される。ポリオレフィン樹脂を溶解させるために加熱が必要な場合であり、かつ溶剤の沸点が低い場合には、流延過程におけるハロゲン系溶剤の急速な揮発によるポリオレフィン溶液の粘度上昇を抑制するため、ダイコーター、ダブルメイヤーバーコーターを用いるのが好ましい。流延により形成された直後の基材上のポリオレフィン溶液の厚みは3〜500ミクロンであり、流延速度は基材上に形成された直後のポリオレフィン樹脂層の厚みとは独立に0.5〜50m/分である。
基材上に形成されたポリオレフィン溶液層の乾燥は1段階から多段階に分けて行うことができ、その温度範囲は50〜200℃であり、多段階で乾燥する場合には50〜100℃で1次乾燥し、100〜200℃の範囲で2次乾燥する等の方法をとることができる。また、必要に応じて乾燥を3段階以上に分けて行うことも可能である。この乾燥は工業的にはダイコーターに隣接した乾燥炉を用いて効率的に行うことができる。ポリオレフィン樹脂層は十分な乾燥の後に基材から剥離して巻取る、又は乾燥途中の段階で基材から剥離して、ポリオレフィン樹脂層のみを乾燥し、巻取る等の方法によりフィルム化することができる。
本発明であるポリオレフィン樹脂の製造方法の他の方法としては、ポリオレフィン樹脂をハロゲン系溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、該溶液を冷却してポリオレフィン樹脂を析出させる工程、さらに、ハロゲン系溶剤を蒸散させる工程からなる方法である。
溶解工程については、先に説明したものと同じであり、その他の各工程について以下に説明する。
2)冷却工程
溶解工程の後、ポリオレフィン溶液を冷却してポリオレフィン樹脂を析出させる。ポリマーを溶解させて得られた溶液の冷却速度は特に制限がないが、0.5℃/分から30℃/分である。該溶液を冷却することにより、ポリオレフィンが析出してくるが、この固体の形状は実質的に塊状、粒状を問わない。
3)溶剤の蒸散工程
この固体化したポリオレフィンを公知の手法、例えば、デカンテーション等の手法により溶剤と分離した後、固体中の溶剤をできるだけ低温で除去し、乾燥したポリマーを得る。この際の乾燥温度は室温から150℃であり、圧力は0.1〜300torrである。乾燥時間は得られる固体形状により異なり、1〜40時間である。このようにして得られた固体は必要に応じて低温で粉砕、賦形し、公知の成形方法、例えば、溶融押し出し法、インフレ成形法等により成形することができる。
本発明の製造方法で得られるポリオレフィン樹脂は、例えば、50ミクロン以上のゲル及び異物が10個以下/mのものである。好ましくは50ミクロン以上のゲル及び異物は5個以下/mであり、さらに好ましくは3個以下/mである。
また、本発明の製造方法で得られるポリオレフィン樹脂からなるフィルムは、例えば、未延伸のフィルムにおいて50ミクロン以上のフィッシュアイが10個以下/mであるため、高品質のフィルムであり、例えば、高い品質が求められるドライフィルムフォトレジスト用の保護フィルムに用いられるフィルムとして使用することができる。好ましくは50ミクロン以上のフィッシュアイが5個以下/mであり、さらに好ましくは3個/m以下である。また、ドライフィルムレジスト用途のフィルムには、高い平坦性が求められるが、この場合には、厚みは、10〜50ミクロンが好ましく、また、厚み精度としては、2ミクロン以下が好ましい。
本発明により産業上極めて応用範囲の広い、フィッシュアイを低減させた高品質のフィルムの製造に適するポリオレフィン樹脂の製造方法を提供することができる。また、本発明の製造方法で得られるポリオレフィン樹脂は高い品質が求められるドライフィルムフォトレジスト用の保護フィルムに用いられるポリオレフィンフィルムに有用である。
以下に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。
<ポリオレフィン樹脂>
(1)EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)
ウルトラセン(登録商標)05A57C(MFR=15g/10分、密度=929kg/m),東ソー株式会社製
(2)L−LDPE(線状低密度ポリエチレン,エチレン・ヘキセン共重合体)
ニポロン−Z(登録商標)TZ420(MFR=10g/10分、密度=913kg/m),東ソー株式会社製
L−LDPE1(MFR=4g/10分、密度=900kg/m
L−LDPE2(MFR=4g/10分、密度=923kg/m
(3)LDPE(低密度ポリエチレン)
ペトロセン(登録商標)225(MFR=3.7g/10分、密度=923kg/m),東ソー株式会社製
ペトロセン(登録商標)204(MFR=7.0g/10分、密度=922kg/m),東ソー株式会社製
LDPE1(MFR=2.0g/10分、密度=924kg/m
LDPE2(MFR=3.0g/10分、密度=924kg/m
LDPE3(MFR=3.0g/10分、密度=924kg/m
(4)HDPE(高密度ポリエチレン)
ニポロンハード(登録商標)4010,東ソー株式会社製
<フィッシュアイの測定>
50ミクロン以上のフィッシュアイは目視により確認できるので、得られた未延伸のフィルムを蛍光灯を用いて裏面から照射し目視により5m長のフィルム中のフィッシュアイを測定し、1m当たりの個数として算出した。
<膜厚の測定>
アンリツ株式会社製 膜厚測定器K−402Bを用いた。
<流延>
加熱可能な巾300mm、及び600mmのダイを設置した塗工機を用いて行った。オートクレーブで溶解したポリマー溶液はユニコントロールズ(株)製の5Lスケールの窒素導入バルブを備えた加圧可能なタンクに加熱ジャケットを装着したものに移液した。タンク内のポリマー溶液は、タンクを加圧することによりダイスへ移液した。タンクとダイスは、タンク下部の抜出しバルブに(株)マイセック製のホースヒーターを施工したテフロン(登録商標)チューブで連結し、一定温度に保持した状態とした。
ダイスの温調は日本金型産業(株)製の金型温調機TSW−75Sを用いて行い、ホースヒーター、及び、加熱タンクは(株)マイセック製のHST−120CTを用いて温度調節した。また、塗工ダイに近接するフィルムを保持するロールは背面から岩崎電気株式会社製のハロゲンヒータ(型式IRE182−N)を用いて加熱し、温度はハロゲンヒーターに加える電圧により調節した。
<成膜機>
(株)東洋精機製作所製の100C100型ラボプラストミルに(株)東洋精機製作所製のD25−20型のフルフライト型スクリュー、(株)東洋精機製作所製の250mm幅のT−ダイを連結しフィルムを成膜した。
実施例1
EVAのペレット3.2kg、及び1,1,2−トリクロロエタン20L(28.8kg)を30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で1時間、攪拌下、溶解させてポリオレフィン溶液(EVA溶液)を得た。この溶液の内3Lを90℃に加温した5Lのタンクに移液し、80℃に保持した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)ホースを通して加温した300mm幅のコーティングダイへ移液した。タンクを加圧し、90℃に保持したダイから溶液を基材であるPENフィルム上に流延した。PENフィルムの速度は3m/分に設定した。基材上のフィルムを100℃で乾燥し、得られたフィルムをPENから剥離して未延伸のフィルムのフィッシュアイを測定した。その結果、50ミクロン以上のフィッシュアイは1個/mであり、優れた品質のフィルムが得られていることを確認した。また、この結果から、EVAは50ミクロン以上のゲル及び異物が1個/mであった。
実施例2
L−LDPE ニポロン−Z(登録商標)TZ420のペレット2.5kg、及び1,1,2−トリクロロエタン20L(28.8kg)を30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で1時間、攪拌下、溶解させてL−LDPEの溶液を得た。この溶液の内3Lを100℃に加温した5Lのタンクに移液し、100℃に保持した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)ホースを通して加温した300mm幅のコーティングダイへ移液した。タンクを加圧し、100℃に保持したダイから溶液を基材であるPENフィルム上に流延した。PENフィルムの速度は3m/分に設定した。基材上のフィルムを100℃で乾燥し、得られたフィルムをPENから剥離して未延伸のフィルムのフィッシュアイを測定した。その結果、50ミクロン以上のフィッシュアイは0.4個/mであり、優れた品質のフィルムが得られていることを確認した。また、また、この結果から、L−LDPEは50ミクロン以上のゲル及び異物が1個以下/mであった。
実施例3〜10
表1に示すポリオレフィン樹脂とその仕込量と溶解温度以外は実施例1と同様の手法により、フィルムを得た。これら未延伸のフィルムの50ミクロン以上のフィッシュアイの評価結果を表1に示す。これらの結果、50ミクロン以上のフィッシュアイは0.2〜1個/mであり、優れた品質のフィルムが得られていることを確認した。また、これらの結果から、ポリオレフィン樹脂は50ミクロン以上のゲル及び異物が1個以下/mであった。
Figure 2009275154
実施例11
L−LDPE ニポロン−Z(登録商標)TZ420のペレット2.5kg、及び1,1,2−トリクロロエタン20L(28.8kg)を30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で1時間、攪拌下、溶解させてL−LDPEの溶液を得た。この溶液を600メッシュの金属網でろ過しながら、100℃に加温した容量5Lのタンクに3L移液し、100℃に保持した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)ホースを通して加温した300mm幅のコーティングダイへ移液した。タンクを加圧し、100℃に保持したダイから溶液を基材であるPENフィルム上に流延した。PENフィルムの速度は3m/分に設定した。基材上のフィルムを100℃で乾燥し、得られたフィルムをPENから剥離して未延伸のフィルムのフィッシュアイを測定した。その結果、50ミクロン以上のフィッシュアイは0.1個/mであり、優れた品質のフィルムが得られていることを確認した。また、この結果から、L−LDPEは50ミクロン以上のゲル及び異物が1個以下/mであった。
実施例12
LDPE1のペレット2.5kg、及び1,1,2−トリクロロエタン20L(28.8kg)を30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で2時間、攪拌下、溶解させてLDPEの溶液を得た。この溶液を200メッシュの金属網でろ過した後、100℃に加温した容量5Lのタンクに3L移液し、100℃に保持した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)ホースを通して加温した600mm幅のコーティングダイへ移液した。タンクを加圧し、110℃に保持したダイから溶液を基材である188μmの厚みのPETフィルム上に流延した。この際、基材フィルムを巻き付けているバックロールの温度を75℃とし、PETフィルムの速度を1.5m/分に設定した。基材上のフィルムを100〜160℃で乾燥し、得られたフィルムをPETフィルムから剥離して未延伸のフィルムのフィッシュアイを測定した。その結果、50ミクロン以上のフィッシュアイは0.02個/mであり、優れた品質のフィルムが得られていることを確認した。また、この結果から、LDPEは50ミクロン以上のゲル及び異物が1個以下/mであった。
実施例13
実施例1で得られたEVA溶液をスプレイドライ法により粉体化した。この粉体を180℃で15cm幅のTダイと一軸押出機を備えたラボプラストミルを用いて厚み50ミクロン、巾250mmのフィルムを得た。得られた未延伸のフィルムのフィッシュアイを測定した結果、50ミクロン以上のフィッシュアイは0.5個/mと優れていることを確認した。また、この結果から、EVAは50ミクロン以上のゲル及び異物が1個以下/mであった。
実施例14
実施例12と同様の手法により得られたポリオレフィン溶液を1日かけて冷却して、ポリマーを析出させ、溶剤であるテトラクロロエタンと分離した。この溶剤をデカンテーションにより除いた後、個体化した塊状のポリマーを40℃で48時間乾燥させて白色固体2.490キログラムを得た。この固体をラボプラストミル、シリンダーの温度を190℃、ダイス温度190℃で押し出し、50μmの厚みのフィルムを得た。この未延伸のフィルムのフィッシュアイを測定した結果、50ミクロン以上のフィッシュアイは1個/mであり品質に優れたフィルムであることを確認した。また、この結果から、LDPEは50ミクロン以上のゲル及び異物が1個/mであった。
実施例15
30LのオートクレーブにL−LDPE ニポロン−Z(登録商標)TZ420のペレット2.5kg、パークロロエチレン20Lを仕込み、加熱下110℃で1時間、攪拌下、溶解させてL−LDPEの溶液を得た。この溶液の内4Lを100℃に加温した5Lのタンクに移液し、100℃に保持した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)ホースを通して加温した300mm幅のコーティングダイへ移液した。タンクを加圧し、105℃に保持したダイから溶液を基材であるPETフィルム上に流延した。PETフィルムの速度は3m/分に設定した。基材上のフィルムを100〜140℃で乾燥し、得られたフィルムをPETから剥離して未延伸のフィルムのフィッシュアイを測定した。その結果、50ミクロン以上のフィッシュアイは0.5個/mであり、優れた品質のフィルムが得られていることを確認した。また、この結果から、L−LDPEは50ミクロン以上のゲル及び異物が1個以下/mであった。
比較例1
EVAのペレットを、180℃で15cm幅のTダイと一軸押出機を備えたラボプラストミルを用いて、厚み50ミクロン、巾250mmのフィルムを得た。得られた未延伸のフィルムは、100ミクロン以上のフィッシュアイは90個/mであり、フィルム品質は低いものであった。また、この結果から、EVAは100ミクロン以上のゲル及び異物を多数含有していた。
比較例2〜10
表2に示すポリオレフィン樹脂と温度以外は比較例1と同様の手法により、フィルムを得た。これら未延伸のフィルムの50ミクロン以上のフィッシュアイの評価結果を表2に示す。これらの結果、70〜100ミクロンのフィッシュアイを多数含有しており、品質に劣るものであった。また、これらの結果から、ポリオレフィン樹脂は70〜100ミクロンのゲル及び異物を多数含有していた。
Figure 2009275154

Claims (6)

  1. ポリオレフィン樹脂をハロゲン系溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、該溶液からハロゲン系溶剤を蒸散させる工程からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂の製造方法。
  2. ハロゲン系溶剤を蒸散させる工程が、ポリオレフィン溶液を減圧下で液滴化し噴霧することにより粉体化するスプレイドライによる方法であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂の製造方法。
  3. ハロゲン系溶剤を蒸散させる工程が、ポリオレフィン溶液を基材上に連続的に流延し薄膜化した後、加熱により乾燥することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂の製造方法。
  4. ポリオレフィン樹脂をハロゲン系溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、該溶液を冷却してポリオレフィン樹脂を析出させる工程、さらに、ハロゲン系溶剤を蒸散させる工程からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂の製造方法。
  5. ハロゲン系溶剤を蒸散させる工程が、加熱乾燥及び/又は減圧乾燥であることを特徴とする請求項4に記載のポリオレフィン樹脂の製造方法。
  6. ハロゲン系溶剤が1,1,2−トリクロロエタンであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載のポリオレフィン樹脂の製造方法。
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