図1は封筒を自動封緘する封緘装置10の一例を示す斜視図である。封筒4は内容物を収納する封筒本体5の一端側にのりしろ部分であるフラップ5aを有し、このフラップ5aに粘着剤(いわゆる糊)を転写して封筒本体5の裏面(宛名書き面とは反対側)5bにフラップ5aを貼着して封緘する。
封緘装置10は、箱状をなす筐体1を有し、その主平面1aが封筒載置面として使用される。封筒載置面1aの端面側、図の例では右端面側には封筒位置合わせ片2が矢印a方向に摺動自在に取り付けられる。この封筒位置合わせ片2を使用して封筒4のサイズに応じて、フラップ5aの位置が指定された位置(フラップ折り曲げ位置)にセットできるように適宜調整される。その調整はノブ3によって行われる。封筒4としては、長3形などの封筒が使用されるが、サイズの大きさは任意である。
筐体1の後面側には、装置駆動機構などが収納された機構収納部7が位置する。
封筒載置面1aの上面であって、この例ではその左側には封緘機構の一部を構成する粘着剤転写手段20が設けられる。粘着剤転写手段20は、糊テープとその移送手段とで構成され、糊テープには粘着剤が塗布され、フラップ5aの面に粘着剤を転写するたびに、粘着剤転写位置に新たな粘着剤面が臨むように、テープが所定長だけ巻き取られる。
そのため粘着剤転写手段20は、糊テープ用の供給リール軸21とその巻き取りリール軸22および転写ローラ23で構成される。糊テープは転写ローラ23を経由して巻き取られる。
粘着剤転写手段20は機構収納部7の側壁7a側に回動自在に取り付けられ、その反対側の各リール軸21,22および転写ローラ23は何れも自由端となされている。自由端側には軸支手段30が配される。各リール軸21,22および転写ローラ23の一端側を自由端構成としたのは、この自由端側から糊テープを着脱できるようにするためである。
そのため、軸支手段30は側壁7a側に軸支された支持軸33に対して進退および回動自在に構成される。軸支手段30をリール軸方向に進退自在に構成して、リール軸21,22および転写ローラ23の自由端側の軸支状態を解除すると共に回動自在に構成して自由端側を開放することで、糊テープの着脱を容易にしたものである。
なお、図1には糊テープは図示されていない。糊テープは、後述するアタッチメント式収納ケース内に収容した状態で装着される。
粘着剤転写手段20には、これに近接して封筒のプレス機構40と排出機構50とで構成された排出手段が配される。プレス機構40は、折り曲げられたフラップ5aを封筒本体5の裏面5bに圧接して貼着するためのもので、図5に示すように互いに転接する一対のプレスローラ40a,40bを有する。排出機構50も同じく互いに転接する一対の排出ローラ50a,50bで構成され、封緘された封筒4を封筒トレイ(図示はしない)側に排出する。
粘着剤転写手段20,プレス機構40および排出機構50の全体は開閉自在なカバー9によって閉塞される。
続いて、封緘装置10を構成する各部を詳細に説明する。
図2は、粘着剤転写手段20を省いた状態の平面図であって、粘着剤転写手段20の真下には封筒4の送り出し手段として機能する送り出し板70が配される。この送り出し板70の先端部70aはフラップ5aの折り目5dに位置するように封筒4の載置位置が調整される。
そして、送り出し板70の先端部70aが折り目5dに位置しているとき、フラップローラ60が、丁度フラップ5aの下面中央部付近に位置する。フラップローラ60はフラップ5aを折り曲げながらこのフラップ5aを転写ローラ23に当接させるための当接ローラとして機能する。フラップローラ60は回動支点(後述する)を中心にして回動自在となされている。
送り出し板70は、粘着剤が転写された封筒4をプレス機構40側に送り出すための進退自在な摺動板で、その送り出し機構は機構収納部7側に収納されている。送り出し板70の初期位置は図2の位置であり、送り出し板70の先端部70aがプレス機構40のローラ転接する位置がその最大摺動位置となる。封筒載置面の所定位置、この例では送り出し板70の右端部側には、封筒載置状態を検知するためのセンサ(封筒有無センサ)Saが配置される。センサSaとしては、光センサなどを使用することができる。図2において、矢印bは封筒4の載置方向を示す。
図3および図4は、粘着剤転写手段20と糊テープ80の関係の詳細を示すもので、糊テープ80は供給リール軸用装着筒91と巻き取りリール軸用装着筒92との間に巻き付けられている。
図4に示すように供給リール軸21には供給リール軸用装着筒91が装着され、巻き取りリール軸22には巻き取りリール軸用装着筒92が装着される。糊テープ80は供給側から巻き取り側へと送り出される。
転写ローラ23側には、テープ進入側と退出側をカバーできるようなテープガイド片24が設けられている。テープガイド片24によって転写ローラ23への糊テープ80の巻き付き角度および退出角度が規制される(図12参照)。
テープガイド片24のうち上面側の適当な位置にはセンサ用透孔24aが設けられ、糊テープ80に貼着された始端および終端を示すリーダテープ(図示はしない)が検知される。粘着剤はこの始端から終端までの間だけ塗布されている。
供給リール軸21,巻き取りリール軸22および転写ローラ23の三者はそれぞれ同期して回動するように、それぞれにはギア27a、27bが連結され、これらが中間ギア27d(転写ローラ23側の中間ギアは図示しない)を介して噛合されている。
フラップ5aの送り出しによって糊テープ80が巻き取りリール軸22側に送り出されるが、これに同期して供給リール軸21、巻き取りリール軸22および転写ローラ23もそれぞれ回動する。糊テープ80を弛ませることなく、巻き取りリール軸22側に巻き取るため、巻き取り側の巻き取り量を増やすよう供給リール軸21にはトルクリミッタ25を設け、テンションをかけながら送る。
図5は、転写ローラ23とフラップローラ60との関係を示す斜視図である。フラップローラ60はフラップ5aの面を転写ローラ23側に押し当てるための押圧ローラ(当接ローラ)として機能する。
回転軸としても機能する支軸61にはその両端部に支持板62(一端部のみ図示)が回動自在に取り付けられ、一対の支持板62の各軸受け部62aにフラップローラ60の両端が回動自在に軸支される。
図5は、フラップ5aを介してフラップローラ60が転写ローラ23に転接した状態を示す。転写ローラ23には粘着剤が塗布された糊テープ80がその周面に巻き付けられているので、この回動転接状態がフラップ5aへの粘着剤の転写状態となる。
図4に示すように、軸支手段30は軸支部31と、その一端側に設けられた軸係合部32とで構成され、側壁7aに取り付けられた支持軸33の先端部33aに、軸係合部32の係合孔32aが進退自在および回動自在に取り付けられる。軸支部31の先端上面側には供給リール軸21および巻き取りリール軸22に対する係止片35が設けられる。
係止片35は図6に示すようなL字状の板体であって、図4に示す供給リール軸21の自由端21a側に設けられたリング状係合凹部28aおよび巻き取りリール軸22の自由端22a側に設けられたリング状係合凹部28b内に舌片部35a,35bを挿入することで、軸支手段30への供給リール軸21と巻き取りリール軸22の軸支状態がロックされる。
軸支状態を図7〜図9を参照して説明する。図8は、説明の都合上軸支手段30をその内側から図示している。図9は同じく供給リール軸21と係止片35との嵌合関係のみを示す。図8のように供給リール軸21と巻き取りリール軸22とは若干段差をもって取り付けられていることから、舌片部35aと35bとにも段差を持たせている。
図7に示すように軸支部31にはそれぞれ軸受け部31a、31bが形成され、ここに供給リール軸21と巻き取りリール軸22の各自由端21a、22aがそれぞれ嵌入されて軸支される。この軸支状態のとき係合凹部28a、28bのみに、係止片35の舌片部35a、35bがそれぞれ対峙するようになっている。その状態で、図8および図9に示すように係止片35を軸支部31側に倒せば、係合凹部28a、28bのそれぞれに係止片35の舌片部35a、35bが嵌る。
こうすることで、供給リール軸21と巻き取りリール軸22とを確実に軸支手段30で軸支すると共に、この軸支状態で供給リール軸21と巻き取りリール軸22の双方を軸支手段30にロックできる。
供給リール軸21又は巻き取りリール軸22に対する軸支状態が不完全であると、糊テープ80に弛みが生じたり、糊テープ80が捻れて巻き取られたりするおそれがある。供給リール軸21と巻き取りリール軸22との双方を係止片35によって同時に軸支手段30にロックすることで確実な転写処理を実現できる。
図10は、送り出し板70の駆動機構100の一例を示す。この駆動機構100は図1の機構収納部7内に収納されているものであるから、図1の左側面側Xから図示した状態を図10に示す。
図10において、封筒載置面1a側に臨む送り出し板70は、その先端部70a側が多少封筒載置面1a側に曲がった状態となっており、その先端部70aはテーパー面となされ、封筒4の折り目5dからフラップ5aを折り曲げやすい形状となされている。
送り出し板70はL字状板体101の主板101aと連結され、側壁7aと並行な側板101bには、一対のガイド棒102,103をガイドとして摺動自在となるような取り付け部101c、101dが設けられる。側板101bに近接して駆動モータ(直動モータ)105が位置する。直動モータ105からの回転力は、リンク機構104を介して側板101b側に伝達される。
そのため、直動モータ105の回転軸105aにはリンク機構104を構成するカム106の一端が取り付けられ、カム106の他端106aと側板101bに設けられた支軸107との間には伝達バー108が連結される。
側板101bの下端側には所定の幅をもった突片101eが位置する。この突片101eと対向とするように所定の幅をもって一対のセンサ120a、120bが配される。一方のセンサ120aは送り出し板70のホームポジションの位置を検知するためのものであり、他方のセンサ120bは送り出し板70の送り出し速度を制御するときに使用される制御期間を計るためのセンサ(直動イニシャライズセンサ)である。これらセンサ120a,120bは何れも光センサが使用される。
このように構成された駆動機構100についてその動作を説明する。図10は粘着剤を転写するときで、送り出し板70の始動開始前の状態を示し、図11は転写後封筒4をプレス機構40側に送り出したときの状態を示す。
転写時の状態では、一対のセンサ120a、120bはそれぞれ突片101eと対峙した状態にある。直動モータ105を駆動して、その回転軸105aが半回転すると、図11の位置まで送り出し板70が送り出される。回転軸105aがさらに半回転すると原位置(図10)に復帰する。この駆動機構100よる送り出し板70の往復動によって、転写された封筒4をプレス機構40まで送り出すことができる。プレス機構40は封筒4がプレス機構40に送り出される直前より回転駆動されるので、封筒4のフラップ5aをプレスしながら(貼着しながら)、排出機構50側まで封筒4を送り出すことができる。
排出機構50における封筒4の通過はセンサ(排出センサ)Scによって検知され、その検知出力に基づいて排出モータ147が制御される。排出センサScは検知片を有する機械式のセンサであり、駆動モータ(排出モータ)147は、図12に示すように、プレス機構40と排出機構50のそれぞれを駆動するためのモータである。
ここで、プレス機構40および排出機構50はそれぞれ、封筒4の厚みを吸収できるようにするため、一方この例では上方のローラ40b、50bはその軸方向に対して上下動できる構成となされている。そのため、図1およびその詳細を図24に示すように、これらローラ40b、50bにはスプリング148,149が取り付けられ、封筒4の厚みを吸収しつつも、ある程度の圧力が封筒4に加わるようになされている。
図12は、フラップローラ60に対する駆動機構140の一例である。上述したようにフラップローラ60は支持板62を介して支軸61に回動自在に取り付けられているが、このフラップローラ60に対する駆動機構140が設けられる。駆動機構140は駆動モータ(フラップモータ)65を有し、その回転軸65aにリンク機構を構成するカム66の一端が取り付けられ、カム66の他端66aには伝達バー67の一端が回動自在に軸支される。伝達バー67の他端側に設けられたスライド孔68には支持板62に設けられた係合軸69が連結される。
フラップモータ65にはさらに円盤状をなすエンコーダ142が連結される。エンコーダ142は所定位置に1つの切り欠き142が設けられており、この切り欠き142と対向する位置に、フラップホームポジションセンサとして機能するセンサ144aと、これと180°離間した位置に、フラップ5aの停止位置をセンスするフラップ停止センサ(光センサ)144bがそれぞれ配置されている。エンコーダ142と、一対のセンサ144a、144bとでフラップローラ60の回動位置(初期位置と回動終了位置)が検知される。
続いて、封緘動作を図13以下を参照して説明する。
図13は封筒載置面1aに封筒4が載置されたときの位置関係を示す。まず、図1に示すように、封筒位置合わせ片2の側面に封筒本体5の底5c(図1参照)を沿わせて封筒4を載置する。そうすると、図2に示すように封筒4の折り目5dと送り出し板70の先端部70aとほぼ一致するように載置できる。この位置が図13に示す初期位置である。
封筒4が載置され、封筒有無センサSaによって載置状態が検知されると、フラップモータ65が駆動されてフラップローラ60が支軸61を中心に時計方向に回動される。これによって図14に示すようにフラップ5aの裏面にフラップローラ60が当たる。フラップ5aはフラップローラ60によって上方に押し上げられるが、送り出し板70の先端部70aに折り目5dが当たるため、フラップ5aが右側に折り曲げられる。
折り曲げられたフラップ5aはそのままフラップローラ60と共に、転写ローラ23側まで押し上げられるので、図15に示すように最終的には転写ローラ23にフラップローラ60がフラップ5aを介して転接する。この転接によってフラップ5aは糊テープ80の粘着剤面に当接する。
フラップ5aはフラップローラ60によって糊テープ80の粘着剤面に押圧されるので、押圧された状態で送り出し板70をプレス機構40側に移動すると、粘着剤がフラップ5aにくっついたままフラップ5aも押し出されることになる。その結果、フラップ5aに粘着剤が転写される。フラップ5aが転写ローラ23から離れると転写が終了する。粘着剤の転写幅は最初に当接したフラップ5aの位置からフラップ5aが転写ローラ23から離れるまでである。
送り出し板70はさらにプレス機構40まで送り出される。こうすると、図16に示すように、封筒4の折り目5dはプレス機構40を構成する一対のローラ40aと40bの転接位置に進入し、封筒4が一対のローラ40aと40bに挟まれる。プレス機構40は回転駆動されているので、封筒4の封筒本体5が一対のプレスローラ40a,40bによって排出側に繰り出される。その結果、フラップ5aが封筒本体5側に押し当てられるためフラップ5aがプレスされて封筒本体5に貼着される。
その後、封筒4は排出機構50によって排出トレイ(図示はしない)側に排出される(図17参照)。封筒4の通過は排出センサScによって検知され、検知出力に基づいてプレス機構40と排出機構50の駆動が停止する。
以上のような封緘処理は、図18に示すような封緘制御回路150によって達成される。封緘制御回路150では、装置の全体を制御する制御部(CPUとうからなる)152を有する。この制御部152には上述した複数のセンサからのセンサ出力(検知出力)が供給される。説明の便宜上センサを示す符号と、検知出力の入力端子を同じ符号で示す。
封筒4の載置状態を検知する封筒有無センサSaからの検知出力を始めとして、フラップローラ60の初期位置および回動位置を検知するフラップホームポジションセンサ144aおよびフラップ停止センサ144bからの検知出力、送り出し板70の原位置(原点)および途中まで移動したことを検知する直動ホームポジションおよびイニシャライズ用センサ120a、120bからの各検知出力さらには封筒4の排出センサScからの検知出力がそれぞれ制御部152に供給される。そして、この制御部152からの出力でフラップモータ65,直動モータ105および排出モータ147の駆動状態が適宜制御される。
制御部152にはさらにリーダテープ用のセンサSbおよびモード切り替えスイッチSWからの制御出力が供給される。センサSbからの検知出力によって糊テープ80の交換時期報知用表示灯(LEDなど)Pの点灯が制御される。この表示灯Pは例えば図1に示す側壁7a側に配置することができる。
モード切り替えスイッチSWについて以下、説明する。モードの切り替えは、常温時と、常温以下の温度(低温)時とで送り出し板の送り出し処理(送り出し開始タイミングや送り出し速度)を切り換えるときに使用する。
糊テープ80に塗布された粘着剤は、15〜25℃程度の常温下で使用するときの転写性(タック力および粘着力)が最も良好であるので、常温よりも低い温度例えば、10℃程度の低温下で使用すると、その転写性が劣化するため、粘着剤が正常にフラップ5aに転写できなくなる。そこで、送り出し板70の送り出し開始タイミングなどを常温時(常温モード)と、低温時(低温モード)とで切り替える。
常温モードではフラップローラ60が転写ローラ23に転接すると同時に送り出し板70を送り出す。これに対して、低温モードでは、送り出し開始タイミングtyを多少遅らせる。この遅れtyによって、フラップ5aへの転写時間はtaだけ延びる。このように粘着剤の転写時間を延ばすことで、低温下での粘着剤の転写性の劣化を改善できる。
この送り出し開始タイミングの調整の他に、送り出し板70の送り出し速度を調整するとさらに好適である。低温モードでの封緘処理の場合には、この送り出し速度を、常温モードでの送り出し速度よりも遅くする。
こうすることで、低温時にはフラップ5aが転写ローラ23からゆっくり離間することになる。つまりゆっくり転写されるので、低温時でも粘着剤の転写性が改善される。
図19は常温モードでの封緘処理例を示し、図20は低温モードでの封緘処理例を示す。
常温モードから説明すると、封筒4が載置されたことを封筒有無センサSaが検知すると(図19A)、これより所定時間t1遅れたタイミング(時点t1)にフラップモータ65が駆動される(図19B)。フラップモータ65が回転駆動されると、エンコーダも同期回転するので、このときフラップローラ60のホームポジションを示すセンサ144aの検知出力はローレベルに変化する(図19C)。
フラップモータ65の駆動時間taはフラップローラ60が転写ローラ23に転接するまでの時間に設定される。フラップローラ60が転写ローラ23に転接するタイミング(時点t2)になると、フラップ停止センサ144bがこの転接状態を検知し、フラップモータ65の回転が停止する(図19C,D)。
フラップモータ65の回転停止に同期して今度は、送り出し板70に対する直動モータ105が所定時間tbだけ駆動される(図19E)。直動モータ105の1回転で送り出し板70は往復動して原点に戻るので、所定時間tbの前半は送り出し板70の往動時間となり、その後半が復動時間となる。
送り出し板70の送り出しが開始すると、そのホームポジションセンサ120aから突片101eが外れるので(図11参照)、その検知出力はハイレベルとなる(図19F)。
この検知出力が得られる時点t2から直動モータ105が駆動されるので、送り出し板70の送り出し動作がスタートする。送り出し板70が送り出されて所定時間tcとなった時点t4になると、今度は排出モータ147が駆動される(図19G)。この時点t4は、送り出し板70の先端部70aがプレス機構40に到達する直前のタイミングである。
送り出し板70のさらなる送り出しによって、送り出し板70の先端部70aがプレス機構40に到達する時点t5になると、封筒4の先端(折り目5dの部分)はプレス機構40に到達する。プレス機構40は既に回転駆動されているので、この回転駆動によってフラップ5aが封筒本体5に圧着されながら排出機構50側に送り出される。
排出機構50側には排出センサScが配されているので、封筒4の通過状態が検知される(図19H)。封筒4の先端部が通過してから封筒4の後端が排出機構50を通過するまでの間(te−td)、排出センサScの検知出力はハイレベルを保持する。
排出センサScの検知出力がローレベルに反転する時点t6になると、フラップモータ65が駆動されるから、フラップローラ60は転写ローラ23から離間すると共に、時点t7でフラップローラ60のホームポジションの位置がホームポジションセンサ120aによって検知されるため、時点t7でフラップローラ60は原位置に復帰し、フラップモータ65の駆動も停止する(図19B、C、D)。これら一連のサイクルTnで1枚の封筒4に対する封緘処理が終了する。
次に、低温モードでの封緘処理動作を図20を参照して説明する。図19と対応する処理の部分についてはその説明は割愛する。
低温モードで処理するか否かはユーザが選択する。そのため、図1のように筐体1、この例では機構収納部7側には常温モードと低温モードとの切り替えスイッチSWが設けられている。低温モードに切り換えられることで始めて図20の封緘処理がスタートする。もちろん、封緘装置10が設置された場所の外気温を検知し、これが所定温度以下(例えば、10℃以下)になったとき自動的に低温モードに遷移するようにすることも可能である。
何れにしろ、低温モードが選択されると、封筒4の検知によってフラップモータ65が駆動され、フラップローラ60が転写ローラ23に転接するまでは常温モードと同じタイミングで処理される(図20A、B)。そして、ホームポジションセンサ144aとフラップ停止センサ144bによってフラップローラ60の始動から転接状態までが検知される(図20C、D)。
フラップローラ60の転写ローラ23への転接が検知された時点t2から所定時間ty経過してから、直動モータ105の駆動が開始され、送り出し板70の送り出しが開始される(図20D、E)。
したがって、転写ローラ23に転接した時点t2から所定時間tyが経過する時点t8までは、フラップ5aは転写ローラ23から離間しないので、その間は転接した状態を保持する。つまり、粘着剤のフラップ5aに対する転写時間が常温モードのときよりも所定時間tyだけ増えるから、それだけ粘着剤の転写性が改善される。
所定時間tyが経過した時点t8になると、直動モータ105に対する駆動が開始され、このとき始めて送り出し板70の送り出し動作が行われる。フラップローラ60は転写ローラ23に転接した状態にあるので、送り出し板70の送り出しに伴ってフラップ5aも糊テープ80を引出しながら転写ローラ23から離間する。この転写ローラ23からフラップ5aが離間するまでの間、フラップ5aに対する転写処理が行なわれることになる。
このように、時点t8から送り出し板70の送り出し動作が開始されるが、この送り出し板70の往復動を行う速度(送り出し速度)は、往復動の期間一定ではなく、以下のように制御される。
まず、時点t8から始まる送り出し板70の送り出し速度は、常温モードよりも低速である。低速送り出し期間tzは、時点t8から時点t9までの期間である(図20E)。その後の往復動期間は常温モードのときの送り出し速度と同じである。つまり、封筒4の送り出しの開始時から所定時間tzだけ低速駆動となる。この所定時間tzは、フラップ5aが転写ローラ23から離間するまでの時間に相当する。離間するまでの時間を常温モードよりも長目に設定することで、粘着剤の転写性の劣化を補うものである。
この低速送り出し期間tzはホームポジションセンサ120aとイニシャライズセンサ120bとによって検知される(図20F、G)。つまり、送り出し板70の突片101eがこれらセンサ120a、120bを通過するまでの間が低速送り出し期間tzとして設定されている。
直動モータ105が1回転によって、送り出し板70が往復動を行い、1回転すると送り出し板70は元の位置に戻るので、1回転の後半の適当な戻りタイミング(この例では時点t10)になると、イニシャライズセンサ120bが再び突片101eを検知するので、イニシャライズセンサ120bの検知出力はこの検知時点t10でローレベルに反転する(図20G)。
また、イニシャライズセンサ120bが突片101eを検知した時点t9より所定時間tc'経過した時点(送り出し板70がプレス機構40に到達する直前の時点)t11になると、排出モータ147が駆動される(図20H)。駆動される期間teは排出センサが封筒4を検知している期間である(図20H、I)。
送り出し板70の往復動に要する時間tb'は、常温モードのときよりも若干長くなる。これは上述したように低速送り出し期間tzを設定したからであるが、この低速送り出し期間tz以外は常温モードと同じ速度に設定されているため、常温モード時とは大きく違わない。
封筒4の排出が終了するとフラップローラ60が原位置に復帰する復帰動作が時点t13から時点t14の期間に亘って行われる(図20B)。この一連のサイクルTmで1枚の封筒4に対する封緘処理が終了する。
図20の例のように、所定時間tyだけ遅らせて送り出し板70を送り出しても、この送り出し遅延処理に加えて、送り出し板70の送り出し速度を所定期間tzだけ低速制御を行うことでも、共に低温による粘着剤の転写性の劣化を改善できることが確認された。もちろん、後者の方が転写性をより改善できることはいうまでもない。
所定時間tyの遅延処理を行うことなく、フラップローラ60の転写ローラ23への転接と同時に、封筒4の送り出し動作を行うも、そのときの送り出し速度を図20のように、所定期間だけ低速に制御するだけでも粘着剤の転写性を改善できる。
図21以降は糊テープ80に関連する構成の説明であって、図21はこの糊テープ80を収容したアタッチメント式収納ケース170の構成例を示す。
図21に示すアタッチメント式収納ケース170は、糊テープ80を巻回した供給リール軸用装着筒91と、糊テープ80の始端が係止され、糊テープ80を巻き取るための巻き取りリール軸用装着筒92と、転写ローラ23に仮に装着する転写ローラ用装着筒93を備える。各装着筒91,92,93は、安価な紙管などを用いることができる。
供給リール軸用装着筒91および巻き取りリール軸用装着筒92は、それぞれ供給リール軸21および巻き取りリール軸22に装着し固定した状態で使用するものであるため、供給リール軸21および巻き取りリール軸22の外径にフィットする内径に選定されている。
さらに、供給リール軸用装着筒91と巻き取りリール軸用装着筒92は、それぞれ供給リール軸21および巻き取りリール軸22と同期して回動させるため、図21に示す供給リール軸用装着筒91の端面側には、この例では係合凹部91aが形成され、同様に巻き取りリール軸用装着筒92にもその端面側に係合凹部92aが形成されている。
これに対向するように供給リール軸21と巻き取りリール軸22側には係合突起29a,29b(図4参照)がそれぞれ設けられ、供給リール軸用装着筒91と巻き取りリール軸用装着筒92を装着したとき、それぞれの係合突起に係合凹部91a、92aが係合するように装着される。
これに対して転写ローラ用装着筒93は転写ローラ23に仮に装着し、その後取り外すものであるが、転写ローラ23の一部をカバーするように設けられたテープガイド片24を覆う程度の大きさとなされた中空直方体の筒体が使用されている。
糊テープ80は、例えば、フィルム基材上に粘着剤層を設けた糊部の全長が10mであり、巻き取りリール軸用装着筒92側に係止されるテープの始端側には例えば緑色に着色したフィルム状のリーダテープ(ブルーリーダー)が貼着されている。リーダテープは粘着剤の塗布領域を識別するための識別テープである。
供給リール軸用装着筒91に係止されるテープの後端側には、例えばオレンジ色に着色したフィルム状のリーダテープ(オレンジリーダー)が貼着されている。テープ終端を識別し糊テープ80の交換を促すために使用される。
図22は、アタッチメント式収納ケース170のケース本体171の展開図を示す。このケース本体171は、展開図に示すような形状の、例えば1枚の紙製のシートを用いる。
図23に、ケース本体171の組み立て途中の状態を示す。
ケース本体171には、一方の主面172aの両側に1対の半割円状の収容部173a、173bが対向して設けられ、他方の主面172bの両側にそれぞれ3枚の舌片からなるフラッパ状部174a、174bが対向して設けられる。
収容部173a、173bおよびフラッパ状部174a、174bは、供給リール軸用装着筒91および巻き取りリール軸用装着筒92を配置する固定部となる。ただし、転写ローラ用装着筒93のための固定部は設けていない。
このように構成することによって、まず、収容部173a、173bの矢印Aで示す部分に巻き取りリール軸用装着筒92を、矢印Bで示す部分に供給リール軸用装着筒91を、収容部173a、173bの設けられていない矢印Cで示す部分に転写ローラ用装着筒93をそれぞれ配置する。
その後、矢印D方向にケース本体171を折りたたんで、舌片部176をスリット177に差し込むことにより、ケース本体171が閉じられる。このとき、供給リール軸用装着筒91等の各部材が、主面172aの収容部173a、173bまたは主面172a自体と、他方の主面172bのフラッパ状部174aと174bとの間に挟持され、ケース本体171を搬送等する際にがたつかない程度に固定される。
続いて、アタッチメント式収納ケース170の装着例を図24以下を参照して説明する。まず軸支手段30を開放する。そうすると、粘着剤転写手段20を構成する供給リール軸21、巻き取りリール軸22および転写ローラ23の自由端のそれぞれが全て開放される。この状態でアタッチメント式収納ケース170のケース本体171を自由端側から装着する。ケース本体171を装着することによって、供給リール軸用装着筒91が供給リール軸21に装着され、巻き取りリール軸用装着筒92が巻き取りリール軸22に装着され、そして転写ローラ用装着筒93が転写ローラ23のテープガイド片24の外側に装着される。
ついで、図25に示すようにケース本体171の舌片部176をスリット177から外してケース本体171を分解する。分解したケース本体171を粘着剤転写手段20から外すと共に、図26に示すように転写ローラ用装着筒93をテープガイド片24側から引き抜く。
その後、軸支手段30を粘着剤転写手段20側に移動させて供給リール軸21,巻き取りリール軸22および転写ローラ23の各自由端を軸支部31で軸支する。この軸支処理は、まず軸支手段30を手前に引いて各自由端との隙間を空けてから、転写手段20側に回動させて軸支手段30を転写手段20と対向させる。その後軸支手段30を自由端側に押し込むことで、自由端を軸支手段30によって軸支できる。
このとき、係止片35を供給リール軸21と巻き取りリール軸22の各係合凹部28a、28bに係合させて、供給リール軸21および巻き取りリール軸22を確実に軸支手段30に軸支(係止)する。係止片35が係合凹部28aか28bの双方に係合していないときは、係止片35をロックできないので、この場合には、供給リール軸用装着筒91あるいは巻き取りリール軸用装着筒92を側壁7a側に再度押し込めばよい。
この係止作業によって、供給リール軸用装着筒91および巻き取りリール軸用装着筒92の何れも、確実にそれぞれのリール軸21および22に装着することができる。
糊テープ80は弛んだ状態にあるので、図27のように巻き取りリール軸22側に設けられたノブ190を反時計方向に回すことで、糊テープ80を架張できる。
糊テープ80を自動的に駆動するセッテングモードが用意されているときには、この弛みを自動的に吸収することができる。この場合には始端側のリーダテープが検知されたとき、自動停止するように制御されるので、カバー9を閉じることで、封緘作業をスタートできる。
上述した実施例では、封筒4を1枚づつ封筒載置面1aに載置して封緘処理を行うようにした例について述べたが、ソータなどを使用して自動的に封筒4を順次封筒載置面1a側に送り出して自動封緘する連続式封緘装置にもこの発明を適用できる。