JP2009269218A - ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチック基材(I)上に、コーティング膜層(II)を設けた構成のガスバリア性フィルムにおいて、コーティング膜層(II)が、少なくとも下記の成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有し、コーティング膜層(II)が成分(B)と成分(C)の複合体を主とするマトリックスに、成分(A)が分散した構造になっていることを特徴とするガスバリア性フィルム。
成分(A):非水溶性樹脂微粒子
成分(B):金属酸化物
成分(C):水溶性高分子および/または糖類
【選択図】なし
Description
(1)プラスチック基材(I)上に、コーティング膜層(II)を設けた構成のガスバリア性フィルムにおいて、コーティング膜層(II)が、少なくとも下記の成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有し、コーティング膜層(II)が、成分(B)と成分(C)の複合体を主とするマトリックスに、成分(A)が分散した構造になっていることを特徴とするガスバリア性フィルム。
成分(A):非水溶性樹脂微粒子
成分(B):金属酸化物
成分(C):水溶性高分子および/または糖類
(2)前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(B)と成分(C)の合計が10重量部以上2500重量部以下であり、前記成分(C)は、前記成分(B)と前記成分(C)の合計の1重量%以上70重量%以下である(1)に記載のガスバリア性フィルム。
(3)前記成分(A)において、非水溶性樹脂微粒子の平均粒径が0.01μmから1μmの範囲にある(1)に記載のガスバリア性フィルム。
(4)前記成分(A)が、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリブタジエン、からなる群から選ばれる1種以上の化合物からなる非水溶性樹脂微粒子である(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(5)前記成分(B)がシリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニアからなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物である(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(6)前記成分(B)が、水および触媒の存在下でゾルゲル反応により得られる金属酸化物である(1)〜(5)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(7)プラスチック基材(I)上に、コーティング膜層(II)を設けた構成のガスバリア性フィルムにおいて、コーティング膜層(II)を形成するコーティング用組成物が、少なくとも下記の成分(D)、成分(E)、成分(F)を含有し、コーティング膜層(II)が成分(E)の重縮合より形成される前記(B)成分と成分(F)よりなる前記(C)成分の複合体を主とするマトリックスに、前記(A)成分が分散した構造となっていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
成分(D):非水溶性樹脂微粒子分散液
成分(E):金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物
成分(F):水溶性高分子および/または糖類
(8)前記成分(D)100重量部に対し、前記成分(E)と前記成分(F)の合計が25重量部以上6300重量部以下、前記(F)は、前記(E)と前記(F)の合計の0.4重量%以上48重量%以下である(7)に記載のガスバリア性フィルム。
(9)前記成分(E)が、アルコキシシラン、アルコキシジルコニウム、アルコキシアルミニウム、およびアルコキシチタンからなる群から選ばれる1種以上である(7)に記載のガスバリア性フィルム。
(10)前記成分(E)が、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物およびアルコキシチタンの縮合物からなる群から選ばれる1種以上である(7)に記載のガスバリア性フィルム。
(11)前記成分(D)非水溶性樹脂微粒子水分散液と、前記成分(E)金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物との混合溶液を重縮合反応した後にプラスチック基材(I)に塗布後乾燥することにより製造されることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(12)前記プラスチック基材(I)と、前記コーティング膜層(II)との間に、物理的蒸着法(PVD法)および化学的蒸着法(CVD法)の内の少なくとも一つの蒸着法により得られる、Si,Ta,Nb,Al,In,W,Sn,Zn,Ti,Cu,Ce,Ca,Na,B,Pb,Mg,P,Ba,Ge,Li,K,Zr,Sbから選ばれる1種以上を含む酸化物または窒化物または酸化窒化物を主成分とする蒸着膜層(III)を有する(1)〜(11)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(13)前記蒸着膜層(III)が、1〜1000nmの範囲内の膜厚を有する蒸着膜である(12)に記載のガスバリア性フィルム。
成分(A):非水溶性樹脂微粒子
成分(B):金属酸化物
成分(C):水溶性高分子および/または糖類
成分(D):非水溶性樹脂微粒子分散液
成分(E):金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物
成分(F):水溶性高分子および/または糖類
本発明における非水溶性樹脂微粒子(A)(以下、単に「成分(A)」ということもある)は、水および/または水に親和性を有する有機溶媒の混合溶媒(水系媒体)に不溶であるが、それらの媒体中で分散可能な非水溶性樹脂からなる微粒子であり、乳化重合法、懸濁重合法、ミニエマルション重合法、分散重合法などのモノマーから樹脂微粒子を合成する手法、および乳化分散法などのように樹脂や樹脂溶液を乳化して合成する手法、さらにはシード重合と呼称される微粒子の存在下でモノマーの重合を行なって微粒子の改質を行なったものなどの非水溶性樹脂微粒子が含まれる。
非水溶性樹脂微粒子分散液(D)(以下、単に「分散液(D)」あるいは「成分(D)」ということがある)は、非水溶性樹脂微粒子(A)を、水および/または水と親和性を有する有機溶媒に分散化させて得られる、所謂エマルション、あるいはラテックスと呼称されるものであり、「超微粒子ポリマーの最先端技術」(室井宗一監修、シーエムシー出版、第1章)等に記載されている、公知の方法で作製することができる。
非水溶性樹脂微粒子(A)の含有割合が上記範囲にあると、分散液の実用性が良好であり、かつ粘度を適正に保つことができ、取り扱いが容易になるため好ましい。
また、上記方法における水と親和性を有する有機溶媒は、該他の分散質が可溶なものであれば特に限定されないが、例えばイソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。分散液中への有機溶媒の混入が好ましくない場合には、該他の分散質を含有した分散系を調製した後、蒸留等により、前記有機溶媒を除去することが可能である。
[ポリウレタン樹脂(i)]
本発明において好ましく用いられるポリウレタン系の非水溶性樹脂(i)は、アニオン性自己乳化型ポリウレタン樹脂を構成しており、ウレタン基およびウレア基の合計濃度が高く、かつ酸基を有する。前記ポリウレタン樹脂は、少なくとも、芳香族、芳香脂肪族および脂環族ポリイソシアネートの群から選択された少なくとも一種を含むポリイソシアネート化合物(ii)と、ポリヒドロキシ酸(iii)との反応により得ることができ、通常、中和剤で中和されている。前記ポリウレタン樹脂は、さらに他の成分との反応により得られた共重合体であってもよく、例えば、芳香族、芳香脂肪族および脂環族ポリイソシアネートの群から選択された少なくとも一種を30重量%以上含むポリイソシアネート化合物(ii)と、ポリヒドロキシ酸(iii)と、ポリオール成分(iv)及び鎖伸長剤成分(v)から選択された少なくとも一方の成分との反応により得ることもできる。前記(ii)ポリイソシアネート化合物は、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートから選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。また、ポリオール成分(iv)は、炭素数2〜8のポリオールを90重量%以上含むポリオール化合物であってもよく、前記鎖伸長剤成分(v)は、例えば、ジアミン、ヒドラジン及びヒドラジン誘導体から選択された少なくとも一種である。
ポリイソシアネート化合物(ii)には、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが含まれる。ポリイソシアネート化合物としては、通常、ジイソシアネート化合物が使用される。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)、4,4'−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが例示できる。
芳香族、芳香脂肪族および脂環族ポリイソシアネートから選択された少なくとも一種のポリイソシアネート化合物の含有量は、ポリイソシアネート化合物(ii)全体に対して、30重量%以上(30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%)である。
これらのジイソシアネート成分は単独でまたは2種以上組み合わせて使用でき、さらに必要に応じて3官能以上のポリイソシアネートを併用することもできる。
ポリヒドロキシ酸(iii)には、カルボン酸やスルホン酸、特に、ポリヒドロキシカルボン酸及びポリヒドロキシスルホン酸から選択された少なくとも一種の有機酸が使用できる。
ポリヒドロキシカルボン酸(特にジヒドロキシカルボン酸)としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸などのジヒドロキシC2-10アルカン−カルボン酸、ジオキシマレイン酸などのジヒドロキシC4-10アルカン−ポリカルボン酸又はジヒドロキシC4-10アルケン−ポリカルボン酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸などのジヒドロキシC6-10アレーン−カルボン酸などが例示できる。これらのポリヒドロキシ酸は単独または2種以上組み合わせて使用できる。好ましいポリヒドロキシ酸は、ポリヒドロキシアルカンカルボン酸、特にジヒドロキシアルカン酸、例えば、ジヒドロキシC2-8アルカン−カルボン酸である。
ポリオール成分(特にジオール成分)(iv)としては、ガスバリア性の観点から、通常、低分子量グリコール、例えば、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2-10アルキレングリコール)、(ポリ)オキシC2-4アルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど)などが使用される。好ましいグリコール成分は、C2-8ポリオール成分[例えば、C2-8アルキレングリコール(特に、エチレングリコール、1,2−または1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール)など]、ジ又はトリオキシC2-3アルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど)であり、特に好ましいジオール成分はC2-8アルキレングリコール(特にC2-6アルキレングリコール)である。
鎖伸長剤には、活性水素原子を有する窒素含有化合物、特に、ジアミン、ヒドラジン及びヒドラジン誘導体から選択された少なくとも一種が使用される。
ポリウレタン樹脂(i)の製造法は特に限定されないが、通常の自己乳化法を利用して調製できる。また、ウレタン化反応では必要に応じてアミン系触媒、錫系触媒、鉛系触媒などウレタン化触媒を使用してもよい。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性又は水溶性有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物(ii)とポリヒドロキシ酸(iii)と必要によりポリオール成分(iv)とを反応させ、末端イソシアネート基を有するプレポリマーを生成させ、中和剤で中和して水性媒体に分散した後、必要により鎖伸長剤成分(v)を添加して反応させ、有機溶媒を除去することによりポリウレタン樹脂分散液を調製できる。ポリウレタン樹脂分散体の体積平均粒径は、造膜性、ガスバリア性及び耐水性の面から、0.01〜1μmであり、コート膜の透明性を考慮すると0.01〜0.5μmが好ましい。
ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル樹脂微粒子分散液は、スチレン、アクリル酸エステルとビニル単量体を乳化重合して得られ、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル微粒子分散体の体積平均粒径は、0.01〜1μmであり、造膜性、ガスバリア性及び耐水性の面から、0.01〜0.5μmが好ましい。なお、体積平均粒子径はマイクロトラックUPA(ハネウェル社製)を用いて測定された値である。
また、重量平均分子量は、連鎖移動剤の量により制御され、連鎖移動剤の量を増加させれば重量平均分子量は小さくなる。
本発明で使用されるポリ塩化ビニリデン樹脂微粒子分散液は、塩化ビニリデン、メタクリロニトリル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルおよびこれらと共重合可能な1種以上のビニル単量体から特開平11−35763に記載されている方法に従って製造することができる。好ましい塩化ビニリデンの使用範囲は89〜93重量%、望ましくは90〜92重量%であり、メタクリロニトリルは2〜8重量%、望ましくは4〜6重量%であり、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルは0.5〜3重量%、望ましくは1〜2重量%および0〜3重量%のこれらと共重合可能な1種以上のビニル単量体から、乳化重合によって得られる。
本発明における金属酸化物(B)(以下、単に「成分(B)」ということもある)を構成する金属としては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられる。金属酸化物を構成する金属は、それぞれ単独でも2種以上から構成されても良い。本発明のフィルムで使用可能な金属酸化物の種類は、特に制限されず、各種の金属の酸化物を用いることができる。好ましくは、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなど無色の金属の酸化物を用いることがコーティング膜として利用する観点から好ましい。中でも、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアを用いることが好ましい。本発明における金属酸化物は、組成物中で微粒子状に分散あるいは凝集した構造体として含まれるか、または組成物のマトリックスとして連続した構造体となる。金属酸化物は、上記のとおり特に制限されるものではないが、コーティング膜として、ガスバリア性を向上させるという観点からは、金属酸化物は連続したマトリックス構造体となる方が良く、そのような金属酸化物の構造体は、後述する金属アルコキシドを加水分解及び/又は加水分解及び重縮合させる、すなわちゾルゲル反応により得られる。
本発明における金属アルコキシドは、下記式(1)で表されるものを指す。
(R1)xM(OR2)y (1)
式中、R1は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。R2は、炭素数1以上6以下、好ましくは炭素数1以上4以下の低級アルキル基を表す。xおよびyは、x+y=4かつ、xは2以下となる整数を表す。Mは、前記金属酸化物を構成する金属であり、それらの中でも珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウムなどが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。なかでも珪素化合物は、比較的安価で入手しやすく、反応が緩やかに進行するため、工業的な利用価値が高い。また、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(D)(以下、単に「成分(D)」ということもある)は、水および触媒の添加により、ゾルゲル反応することで、金属酸化物となる化合物であってもよい。
2)3−グリシドキシプロピルプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基とアルコキシシリル基とを有する化合物
3)3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基とアルコキシシリル基とを有する化合物
4)3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基とアルコキシシリル基とを有する化合物
本発明において用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコールやポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を有する高分子、ポリアクリル酸やカルボキシメチルセルロース等のカルボキシル基を有する高分子、ポリアリルアミンやポリエチレンイミン等のアミノ基を有する高分子、ポリアクリルアミド、ポリN,N−ジメチルアクリルアミドやポリN−イソプロピルアクリルアミド等のアミド基を有する高分子、ポリスチレンスルホン酸やポリビニルスルホン酸等のスルホン酸を有する高分子、ポリエチレンオキシドやポリエチレングリコール等のポリエーテル基を有する高分子、およびポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン等が例示される、1種以上の化合物である。前記した水溶性高分子群の中でも、水素結合基を持つ高分子が無機酸化物と均一に複合化できるため好ましく、特に水酸基を有する水溶性高分子、ポリアミド類、ポリエーテル類、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン等が好ましく用いられる。さらに、ガスバリアフィルムのコーティング層として成膜製に優れかつ強靭なコート膜をつくるには、水酸基を有する高分子が好ましい。本発明で用いられる水酸基を有する水溶性高分子とは、水酸基をその高分子鎖中に少なくとも2個含む水溶性を示す高分子である。好ましくは、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール単位を含む共重合体からなる群から選ばれる1種以上の化合物である。これらは単独または2種以上用いてもよい。
本発明におけるコーティング用組成物は、少なくとも前記非水溶性樹脂微粒子の水および/または水と親和性を有する有機溶媒に分散した成分(D)と、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物からなる成分(E)、水溶性高分子および/または糖類である成分(F)を含む組成物である。以下、これらの成分の配合を説明する。
本発明のコーティング用組成物は、さらに以下の1)〜4)に挙げる他の成分を含んでもよい。
コーティング用組成物は、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応における反応を促進させる目的で、以下に示すような加水分解・重縮合反応の触媒となりうるものを含んでいてもよい。
金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応の触媒として使用されるものは、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」(平島碩著、株式会社総合技術センター、29頁)や「ゾル−ゲル法の科学」(作花済夫著、アグネ承風社、154頁)等に記載されている一般的なゾル−ゲル反応で用いられる触媒である。
金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(E)における金属アルコキシドを加水分解させる目的で、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(E)に水を添加してもよい。添加する水の量は、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解重縮合物に含まれる総アルコキシ基に対して、10モル当量以下であり、好ましくは4モル当量以下であり、より好ましくは3モル当量以下である。
コーティング用組成物は、さらに金属酸化物微粒子を含んでいてもよい。金属酸化物を添加することで、ハードコートの耐擦傷性が向上する。金属酸化物微粒子とは、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、亜鉛、アンチモンから選ばれる少なくとも一つ以上の元素からなる酸化物微粒子を指し、BET法における平均粒子径が、耐擦傷性をさらに向上させる観点で1nm以上、透明性をさらに向上させる観点で100nm以下が望ましい。金属酸化物微粒子の具体例として下記がある。
アルミナ、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛の粉末および溶材料分散品としては、シーアイ化成(株)製 商品名:ナノテックを挙げることができる。
コーティング用組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒を含むことにより、コーティング用組成物からなるコート材料を樹脂表面に塗布する工程を容易にするので好ましい。用いることのできる溶媒は、水系溶媒または有機溶媒のどちらでもよく、本発明のコーティング用組成物を溶解または分散させるものであれば特に限定はない。
本発明のコーティング用組成物は、たとえば、前記成分(D)非水溶性樹脂微粒子分散液と前記成分(E)金属アルコキシドおよび/または金属アルコキシドの加水分解縮合物と前記成分(F)水溶性高分子および/または糖類を所定時間混合して調製される。混合は概ね以下の(1)〜(4)の組合せで行なわれるが、(D)、(E)、(F)はそれぞれ全量を一度に混合することなく、連続的に添加するあるいは分割して添加しても良い。分割添加する場合には、下記(1)〜(4)の組合せで分割したものを組合せて混合して調製することも可能である。
(2) (D)+((E)+(F)) 逐次添加
(3) ((D)+(E))+(F) 逐次添加
(4) ((D)+(F))+(E) 逐次添加
本発明のガスバリア性フィルムは、フィルム基材などのプラスチック基材(I)にコーティング膜層(II)を形成する、非水溶性樹脂微粒子(A)、金属酸化物(B)および水溶性高分子および/または糖類(C)を少なくとも含有するコーティング用組成物をコーティングした積層体であり、以下2つの構成に分けられる。
(2)プラスチック基材(I)、無機化合物からなる蒸着膜層(III)、およびコーティング膜層(II)とからなり、(I)/(III)/(II)の順の積層構造を有する。
積層構造の構成は、(I)/(III)/(II)/(III)/(II)のように蒸着膜層(III)とコーティング膜層(II)を二層ずつ交互に積層することも可能であるし、後述する接着層(IV)を用いて(I)/(II)/(IV)/(I)/(II)あるいは(I)/(III)/(II)/(IV)/(I)/(III)/(II)、もしくは粘着剤層(V)を用いて(I)/(II)/(V)/(I)/(II)あるいは(I)/(III)/(II)/(V)/(I)/(III)/(II)となるように二枚以上のプラスチック積層体を貼り合せてもよい。ただし、層数が増加することによる製造コストの増加のため、実用的には各層の層数の上限は、10層以下、好ましくは7層以下である。
プラスチック基材に用いられる樹脂の種類として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンコポリマーなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、AB樹脂、ABS樹脂、PEEK樹脂、PEK樹脂、PES樹脂、ポリ乳酸樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂の混合物、またはこれらの樹脂の積層体であってもよい。これらの樹脂がフィルムの場合には未延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよい。更に、プラスチック基材(I)の表面をコロナ処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、アルカリ処理等の表面改質を行い、コーティング膜層(II)および/または蒸着膜層(III)の密着性を向上させることも可能である。
本発明において用いられるコーティング膜層(II)は、少なくとも非水溶性樹脂微粒子(A)と金属酸化物(B)と水溶性高分子および/または糖類(C)とを含む。本発明において用いられるコーティング膜層(II)は、非水溶性樹脂微粒子の水および/または水と親和性を有する有機溶剤に分散した分散液(D)と、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(E)と水溶性高分子および/または糖類(F)を含むコーティング用組成物を塗布後、加熱乾燥することでゾルゲル反応を行うことにより形成される。
(A)および(B)、(C)の含有比率および膜厚が上記範囲にあると、耐水性や耐薬品性や成膜性や強度、耐熱性などの物性が良好であり、且つガスバリア性に優れる。
本発明はコーティング膜層(II)中で金属酸化物(B)と水溶性高分子および/または糖類(C)の複合体がマトリックスとして連続した構造を形成されることで高いガスバリア性が発現する点に特徴がある。本発明のコーティング膜層(II)は、少なくとも非水溶性樹脂微粒子(A)と金属酸化物(B)と水溶性高分子および/または糖類(C)とを含む組成物から形成され、膜中では金属酸化物(B)と水溶性高分子および/または糖類(C)との複合体が連続した構造体となり、かつ非水溶性樹脂微粒子(A)がその中に分散した構造を形成することで、ガスバリア性、加工性、柔軟性に優れるコーティング膜となる。そのような非水溶性樹脂微粒子(A)、金属酸化物(B)および水溶性高分子および/または糖類(C)から形成される構造体は、前記成分(D)非水溶性樹脂微粒子水分散液と、前記成分(E)金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物との混合溶液を重縮合させる、すなわちゾルゲル反応を行い、プラスチック基材に塗布・乾燥する過程で形成される。非水溶性樹脂微粒子は平均粒子径が0.01μm〜1μmの範囲にあり、水および/または水に親和性を有する有機溶媒の混合溶媒(水系媒体)に不溶であるが、それらの媒体中で凝集することなく分散しているものが、前記のようなマトリックスとして連続した金属酸化物と水溶性高分子および/または糖類の複合体構造体を形成させるために好ましく用いられる。本発明のコーティング膜層(II)は、前記コーティング用組成物(必要に応じて触媒を添加した水性組成物)に含まれる金属アルコキシドの加水分解物やその重縮合生成物である金属酸化物および/またはその前駆体は親水性物質であり水溶性高分子および/または糖類とも相溶する一方、前記非水溶性樹脂微粒子とは非相溶であるため、コーティング液中では分散媒(水)相に存在する。それらは乾燥に伴ってエマルション粒子間の隙間に濃縮され、さらにゾルゲル反応が進行しながら複合化が進行することによって、最終的に分散媒が蒸発すると非水溶性樹脂微粒子間を埋めるように金属酸化物と水溶性高分子および/または糖類の複合体が連続構造としてマトリックスを形成する。
コーティング膜層(II)は、本発明のコーティング用組成物の膜状物を形成しこれを熱処理することにより製造される。
本発明において用いられる蒸着膜層(III)は、無機化合物からなる。具体的には、Si,Ta,Nb,Al,In,W,Sn,Zn,Ti,Cu,Ce,Ca,Na,B,Pb,Mg,P,Ba,Ge,Li,K,Zr,Sbから選ばれる1種以上を含む酸化物または窒化物または酸化窒化物を主成分とすることが望ましい。特に、コーティング膜層(III)との密着性及び親和性、製造の安定性、安全性やコストの観点から、SiO、AlO、SiN、ダイヤモンドライクカーボンがより好ましい。
本発明における接着層(IV)は、透明であれば公知の物を用いることができる。具体的にはエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シアノアクリレート系の瞬間接着剤、変性アクリレート系接着剤などを例としてあげることができる。
本発明における粘着材層(V)は、プラスチック基材(I)に蒸着膜層(III)、コーティング膜層(II)を積層した積層体を貼り合せるのに用いられるほか、該ガスバリアフィルムの最外層に後述する機能性透明層(VI)を積層する場合に必要に応じて用いられる。また複数の機能性透明層を貼り合せる時にも用いることができる。本発明の粘着材層(V)は、透明であれば、公知の粘着材を制限無く用いることが出来る。具体的には、特開平10−217380号公報や特開2002−323861号公報等に記載されているものを採用することが出来る。
機能性透明層(VI)としては、防眩層やハードコート層、防汚層、帯電防止層、調色層、反射防止層、光取り出し効率向上層等が採用できる。これらの層は上記の透明ガスバリアフィルムの一方の面もしくは両面、もしくは内部に用いることができる。これらの機能性透明層(VI)については、より詳細には特開平10−217380号公報や特開2002−323861号公報等に記載されているものを採用することが出来る。
本発明のガスバリアフィルムは、酸素、水蒸気、その他コーティング材料の品質劣化を促すガスを遮断することができるため、特に食品、医療等の包装材料や電子材料において有用である。プラスチック基材(I)、無機化合物からなる蒸着膜層(III)、およびコーティング膜層(II)を、(I)/(III)/(II)の順に積層構造にしたものは、高いガスバリア性を得ることができる。本発明においては、コーティング膜の酸素透過性を測定することにより、コーティング膜のガスバリア性を評価した。
(コーティング用組成物の調製)
(E)成分であるテトラメトキシシラン(TMOS)100重量部にメタノール150重量部を添加し室温で攪拌した。(F)成分である東京化成工業(株)製トレハロースを5重量%に溶解した水溶液216重量部を添加し、さらに(D)成分として、三井化学ポリウレタン(株)製ポリウレタンエマルション(製品名 WPB−6601、固形分25重量%)を蒸留水で5重量%に希釈したエマルション370重量部を添加し、室温で3分間攪拌した。その後、0.1N−塩酸100重量部を徐々に滴下した後、室温で1.5時間攪拌してコーティング用組成物を得た。
厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基板(東洋紡(株)製、コスモシャインA4100)に、上記の方法で調製した組成物を、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で1.5時間加熱し、コーティング膜を得た。
実施例1と同様の方法で調製した組成物を、厚さ12μmのAl2O3蒸着PETフィルム(東セロ(株)製、TL−PET)に、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で1.5時間加熱し、コーティング膜を得た。
(E)成分であるテトラメトキシシラン(TMOS)100重量部にメタノール150重量部を添加し室温で攪拌した。(F)成分である5重量%トレハロース水溶液216重量部を添加し、さらに(A)成分である5重量%ポリウレタンエマルション370重量部を添加し、室温で3分間攪拌した。その後、0.1N−塩酸100重量部を徐々に滴下した後、室温で1.5時間攪拌した。これを溶液e31とする。一方、(E)成分であるテトラメトキシシラン(TMOS)100重量部にメタノール150重量部を添加し室温で攪拌した。その後、0.1N−塩酸を100重量部滴下し、室温で1.5時間攪拌した。これを溶液e32とする。
溶液e31と溶液e32を重量比で8/2で混合し、さらに室温で5分間攪拌を行い、コーティング用組成物を得た。
厚さ12μmのAl2O3蒸着PETフィルム(東セロ(株)製、TL−PET)に、上記の方法で調製した組成物を、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で1.5時間加熱し、コーティング膜を得た。
(コーティング用組成物の調製)
(F)成分として、東京化成工業(株)製ショ糖5重量部に対して蒸留水95重量部を加え、ショ糖を溶解することでショ糖5重量%水溶液を得た。
(E)成分であるテトラメトキシシラン(TMOS)100重量部にメタノール150重量部を添加し室温で攪拌した。(F)成分である5重量%ショ糖水溶液192重量部を添加し、さらに(D)成分である5重量%ポリウレタンエマルション440重量部を添加し、室温で3分間攪拌した。その後、0.1N−塩酸100重量部を徐々に滴下した後、室温で1.5時間攪拌した。
厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基板(東洋紡(株)製、コスモシャインA4100)に、上記の方法で調製したコーティング用組成物を、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で1.5時間加熱し、コーティング膜を得た。
(コーティング用組成物の調製)
(F)成分として、東京化成工業(株)製グルコース5重量部に対して蒸留水95重量部を加え、グルコースを溶解することでグルコース5重量%水溶液を得た。
(E)成分であるテトラメトキシシラン(TMOS)100重量部にメタノール150重量部を添加し室温で攪拌した。(F)成分である5重量%グルコース水溶液161重量部を添加し、さらに(D)成分である5重量%ポリウレタンエマルション440重量部を添加し、室温で3分間攪拌した。その後、0.1N−塩酸100重量部を徐々に滴下した後、室温で1.5時間攪拌した。
厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基板(東洋紡(株)製、コスモシャインA4100)に、上記の方法で調製したコーティング用組成物を、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で1.5時間加熱し、コーティング膜を得た。
(コーティング用組成物の調製)
(F)成分として、和光純薬工業社製ポリビニルアルコール(PVA)500、完全ケン化型(平均重合度:約400〜600)5重量部に対して蒸留水95重量部を加えPVAを加熱下溶解することでPVA5重量%水溶液を得た。
(E)成分であるテトラメトキシシラン(TMOS)100重量部にメタノール150重量部を添加し室温で攪拌した。(F)成分である5重量%PVA水溶液196重量部を添加し、さらに(D)成分である5重量%ポリウレタンエマルション440重量部を添加し、室温で3分間攪拌した。その後、0.1N−塩酸160重量部を徐々に滴下した後、室温で1.5時間攪拌した。
厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基板(東洋紡(株)製、コスモシャインA4100)に、上記の方法で調製したコーティング用組成物を、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で1.5時間加熱し、コーティング膜を得た。
実施例6と同様の方法で調製したコーティング用組成物を、厚さ12μmのAl2O3蒸着PETフィルム(東セロ(株)製、TL−PET)に、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で1.5時間加熱し、コーティング膜を得た。
(ポリスチレン樹脂分散液の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管、冷却管、2本の滴下漏斗を備えたフラスコを用いて合成を行った。2本の滴下漏斗のうち1本に、スチレン80部、ブチルアクリレート11部、メタクリル酸6部、アクリルアミド2.5部、ポリエチレングリコールジメタクリレート8部、ラウリル硫酸ナトリウム0.3部及び水120部を混合し、ホモミキサーにて乳化した乳化液を入れ、もう一方の滴下漏斗には、触媒としての過硫酸カリウム0.8部を水15部に溶解した溶液を入れた。フラスコ中にはラウリル硫酸ナトリウム0.1部を水145部に溶解し、フラスコ中を窒素雰囲気にし、フラスコを湯浴により70℃に加温し、250rpmで攪拌しながら、2本の滴下漏斗中の溶液を4時間かけてフラスコ内に滴下して反応を行った。滴下終了後、更に4時間攪拌を行い、冷却後25%アンモニア水1部を添加し、不揮発分27.6%、pH=8.0のエマルションを得た。得られたエマルションの体積平均粒径は0.05μmであった。得られたポリスチレンエマルション30部に対して蒸留水135部を加えることで5重量%ポリスチレンエマルションに希釈した。
(B)成分であるテトラメトキシシラン(TMOS)100重量部にメタノール150重量部を添加し室温で攪拌した。(C)成分である5重量%トレハロース水溶液216重量部を添加し、さらに(A)成分である5重量%ポリスチレンエマルション370重量部を添加し、室温で3分間攪拌した。その後、0.1N−塩酸100重量部を徐々に滴下した後、室温で1.5時間攪拌した。これを溶液e81とする。一方、(B)成分であるテトラメトキシシラン(TMOS)10重量部にメタノール15重量部を添加し室温で攪拌した。その後、0.1N−塩酸を10重量部滴下し、室温で1.5時間攪拌した。これを溶液e82とする。
溶液e81と溶液e82を重量比で8/2で混合し、さらに室温で5分間攪拌を行い、コーティング用組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様に、厚さ12μmのAl2O3蒸着PETフィルム(東セロ(株)製、TL−PET)に厚みが約0.5μmとなるように塗布、110℃で1.5時間加熱してコーティング膜を得た。
実施例1〜7で用いた三井化学ポリウレタン(株)製ポリウレタンエマルション(製品名 WPB−6601、固形分25重量%)を、実施例1と同様に、厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基板(東洋紡(株)製、コスモシャインA4100)にバーコーターを用いて、硬化後の厚みが約2μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で1.5時間加熱し、コーティング膜を得た。
実施例1〜7で用いた三井化学ポリウレタン(株)製ポリウレタンエマルション(製品名 WPB−6601、固形分25重量%)80重量部に対して蒸留水96重量部、メタノール24重量部を加えることで10重量%ポリウレタンエマルションを調製した。これを用いて、実施例2と同様に、厚さ12μmのAl2O3蒸着PETフィルム(東セロ(株)製、TL−PET)に厚みが約0.5μmとなるように塗布、110℃で2分間加熱してコーティング膜を得た。
(ポリビニルアルコール水溶液の調製)
和光純薬工業社製ポリビニルアルコール(PVA)500、完全ケン化型(平均重合度:約400〜600)5重量部に対して蒸留水95重量部を加えPVAを加熱下溶解することでPVA5重量%水溶液を得た。
和光純薬工業社製ポリアクリル酸(PAA)水溶液(25%)(粘度:8000〜12000cP(30℃))20重量部に対して蒸留水80重量部を加えPAA5重量%水溶液を得た。
PAA5重量%水溶液1400重量部を攪拌しながら、3−アミノプロピルトリメトキシシランとエタノールを重量比1:9で混合した溶液を52重量部滴下し、その後室温で30分攪拌した。続いて、PVA5重量%水溶液を600重量部、ジシアノジアミドを22.8重量部加えてさらに10分間攪拌した。続いて、テトラメトキシシラン377重量部を添加し、室温で1.5時間攪拌し、コーティング用組成物を得た。
実施例1と同様に、厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基板(東洋紡(株)製、コスモシャインA4100)に、上記の方法で調製したコーティング用組成物を、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で2時間加熱し、コーティング膜を得た。
さらに、厚さ12μmのAl2O3蒸着PETフィルム(東セロ(株)製、TL−PET)に、上記の方法で調製したコーティング用組成物を、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが約0.5μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、110℃で2時間加熱し、コーティング膜を得た。
シリカ含有率は、以上の実施例および比較例における(E)成分であるTMOSが100%反応し、SiO2になったと仮定して算出した。たとえば、(E)成分がTMOSの場合100%反応し、SiO2になったと仮定して算出した。すなわち
TMOS:Mw=152
SiO2:Mw=60
より、
SiO2/TMOS=60/152=0.395
である。つまり、TMOSの添加量に0.395を掛けた値が、膜中のSiO2含量となる。これより、シリカ(SiO2)含有率は、以下の式を用いて計算した。
シリカ(SiO2)含有率=[TMOS]*0.395/([A]+([TMOS]*0.395))
ただし、上記式において、[A]、[TMOS]はそれぞれの成分の重量部を示す。
以上の実施例および比較例におけるコーティング膜について、以下の方法で物性評価を行った。評価結果を表1〜表4に示す。
Al2O3蒸着PETフィルム(東セロ(株)製、TL−PET)に、0.5μmのコーティング膜を積層したサンプルを目視で評価した。ここで、透明とは、光を散乱して白濁しない状態を示す。なお、すべてのサンプルにおいて、コーティング膜の着色および変形は認められなかった。
酸素透過性を、JIS K7126−2:ガス透過度試験方法(等圧法)に準拠して、23℃、90%RH雰囲気下で、酸素透過率測定装置(MOCON社製 OXTRAN 2/21MH)を用いて測定した。測定にはAl2O3蒸着PETフィルム(東セロ(株)製、TL−PET)にコートしたサンプルを使用した。表1に結果を示す。
Al2O3蒸着PET基板(東セロ(株)製、TL−PET)もしくはPET基板(東洋紡(株)製、コスモシャインA4100)にコートしたサンプルを収束イオンビーム(FIB)加工によって切片を切り出した。続いて、この膜断面の形状を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−2200FS)を用いて観察した。
前記膜断面の形状観察と同様に、このコーティング膜断面の形状を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−2200FS)を用いて観察し、観察される非水溶性樹脂微粒子の粒径を測定した。
直径80mmの円柱に、作製したコーティング膜を20回巻きつけた後、酸素透過率を測定した。表2に結果を示す。
表2の結果より、実施例3の本発明のガスバリア性ハイブリッドフィルムは、高いシリカ含有率であるにも関わらず、十分な柔軟性を有しており、折り曲げによって、酸素バリア性が低下しないことが分かった。
実施例3及び比較例2及び3のガスバリア性被膜層側に、接着剤(三井化学ポリウレタン(株)製、タケラックA50/A525S=1/9)を介してヒートシール層として無延伸ポリプロピレンフィルムを接着し、40℃で三日間養生した。このラミネート処理を施した積層フィルムにおいて、実施例3及び比較例2及び3のガスバリア性フィルムと、無延伸ポリプロピレンからなるヒートシール性樹脂との層間の密着強度を、JIS Z−1707に準拠し測定を行った。測定条件は、試験幅15mm、剥離速度300mm/min、剥離角度を90°、180°として、初期強度の測定を実施した。また、湿潤ラミネート強度試験では、剥離界面を水で湿潤させながら行った。表3に結果を示す。
上記積層体についてレトルト適性評価を行うために、それぞれの4方シールパウチを作製して内容物として水を充填し、121℃−30分間のレトルト殺菌を実施した。
レトルト適性評価として、レトルト前後の酸素透過率(cc/m2/day,atm)及びラミネート強度(N/15mm)、更に目視観察によるレトルト後シール部のデラミ発生状況を観察した。表4に結果を示す。
Claims (13)
- プラスチック基材(I)上に、コーティング膜層(II)を設けた構成のガスバリア性フィルムにおいて、コーティング膜層(II)が、少なくとも下記の成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有し、コーティング膜層(II)が、成分(B)と成分(C)の複合体を主とするマトリックスに、成分(A)が分散した構造になっていることを特徴とするガスバリア性フィルム。
成分(A):非水溶性樹脂微粒子
成分(B):金属酸化物
成分(C):水溶性高分子および/または糖類 - 前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(B)と成分(C)の合計が10重量部以上2500重量部以下であり、前記成分(C)は、前記成分(B)と前記成分(C)の合計の1重量%以上70重量%以下である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記成分(A)において、非水溶性樹脂微粒子の平均粒径が0.01μmから1μmの範囲にある請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記成分(A)が、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリブタジエン、からなる群から選ばれる1種以上の化合物からなる非水溶性樹脂微粒子である請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 前記成分(B)がシリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニアからなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物である請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 前記成分(B)が、水および触媒の存在下でゾルゲル反応により得られる金属酸化物である請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- プラスチック基材(I)上に、コーティング膜層(II)を設けた構成のガスバリア性フィルムにおいて、コーティング膜層(II)を形成するコーティング用組成物が、少なくとも下記の成分(D)、成分(E)、成分(F)を含有し、コーティング膜層(II)が成分(E)の重縮合より形成される前記(B)成分と成分(F)よりなる前記(C)成分の複合体を主とするマトリックスに、前記(A)成分が分散した構造となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
成分(D):非水溶性樹脂微粒子分散液
成分(E):金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物
成分(F):水溶性高分子および/または糖類 - 前記成分(D)100重量部に対し、前記成分(E)と前記成分(F)の合計が25重量部以上6300重量部以下、前記(F)は、前記(E)と前記(F)の合計の0.4重量%以上48重量%以下である請求項7に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記成分(E)が、アルコキシシラン、アルコキシジルコニウム、アルコキシアルミニウム、およびアルコキシチタンからなる群から選ばれる1種以上である請求項7に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記成分(E)が、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物およびアルコキシチタンの縮合物からなる群から選ばれる1種以上である請求項7に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記成分(D)非水溶性樹脂微粒子水分散液と、前記成分(E)金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物との混合溶液を重縮合反応した後にプラスチック基材(I)に塗布後乾燥することにより製造されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 前記プラスチック基材(I)と、前記コーティング膜層(II)との間に、物理的蒸着法(PVD法)および化学的蒸着法(CVD法)の内の少なくとも一つの蒸着法により得られる、Si,Ta,Nb,Al,In,W,Sn,Zn,Ti,Cu,Ce,Ca,Na,B,Pb,Mg,P,Ba,Ge,Li,K,Zr,Sbから選ばれる1種以上を含む酸化物または窒化物または酸化窒化物を主成分とする蒸着膜層(III)を有する請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 前記蒸着膜層(III)が、1〜1000nmの範囲内の膜厚を有する蒸着膜である請求項12に記載のガスバリア性フィルム。
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