JP2023039523A - 水系塗料組成物及びその製造方法、接着層付き基材、積層体、並びに組成物セット - Google Patents

水系塗料組成物及びその製造方法、接着層付き基材、積層体、並びに組成物セット Download PDF

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Takahiro Funatsu
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Abstract

【課題】透明性及び耐候性に優れた塗膜を形成でき、かつ、ポットライフに優れた塗料組成物と及びその製造方法、接着層付き基材、積層体、並びに組成物セット接着層付き基材及び積層体を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の水系塗料組成物は、エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、ブロックポリイソシアネート化合物と、有機系紫外線吸収剤と、光安定剤と、沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤と、を含み、前記無機酸化物が、球状、及び/又は連結構造のシリカを含む。【選択図】なし

Description

本発明は、水系塗料組成物及びその製造方法、接着層付き基材、積層体、並びに組成物セットに関する。
重合により得られる水分散体は、常温あるいは加熱下で乾燥形成した被膜が、バリア性、耐汚染性、耐薬品性、難燃性、耐熱性、耐候性、耐擦過性、及び耐摩耗性を発現する傾向にあることから、水系塗料として用いられている。このような水系塗料を透明性が要求される用途に用いると、屋外や紫外線に長期間曝露されることに起因し、透明性や曇りといった光学特性、変色、白化、及びクレーズの発生などが問題となり得る。更に、塗料をトップコートとして用いる場合には、トップコートには耐摩耗性が求められる。耐摩耗性の観点からは、溶剤系塗料が使用されこともある。かかる溶剤系塗料は、塗料や得られる塗膜の性状を維持しつつ有機系の紫外線吸収剤を含有させることが比較的容易である。
しかしながら、作業現場への衛生状態や地球環境への負荷への配慮から、溶剤系塗料ではなく、水系塗料の使用が望まれている。
また、溶剤系塗料を樹脂基材へ使用する場合、溶剤組成や樹脂種によっては、塗料により基材が侵食され、透明性や平滑性が損なわれる懸念がある。例えば、透明樹脂材料であるポリカーボネートは、溶剤系塗料に用いられる代表的な有機溶剤である、酢酸ブチルに容易に侵食される。この点からも、水系塗料の使用が望まれている。
水系塗料の光学特性を改善するための技術として、特許文献1には、耐候性付与の目的で、無機系紫外線吸収剤である酸化セリウムをエマルション粒子と複合化させる方法が記載されている。
また、特許文献2には、有機溶剤に溶解させたアクリル系ポリマーに有機系紫外線吸収剤であるヒドロキシフェニルトリアジン化合物を添加する方法が記載されている。
特表2015-527430号公報 WO2011/105382号公報
しかし、特許文献1の方法は、耐候性を付与することは可能であるが、塗膜中で紫外線吸収剤の含有できる量が少なく、高い耐候性及び透明性と、ポットライフとを両立することは困難であるとの問題を有する。
また、特許文献2の方法は、紫外線吸収剤を多量に含むことができ、優れた耐候性を示すが、溶剤系塗料への適用を前提としており、水系塗料へ適用した場合、塗料安定性を保持するのは困難である。即ち、水系塗料の使用にあたり、水系塗料の配合安定性が不足している場合、経時的に沈殿等が発生し、塗装機器での詰まりの発生や塗膜表面にブツや濁り等を発生させる要因となる。また、安定性が保持された時間内で塗料を使い切る必要があることから、少量ずつ配合を行うこととなり、塗装工程における生産性に大きく影響を与えるとの問題を有する。
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明性及び耐候性に優れた塗膜を形成でき、かつ、ポットライフに優れた水系塗料組成物及びその製造方法、接着層付き基材、積層体、並びに組成物セットを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定の水系塗料組成物及びその製造方法、接着層付き基材、積層体、並びに組成物セットとすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の態様を包含する。
[1]エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、ブロックポリイソシアネートと、有機系紫外線吸収剤と、光安定剤と、沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤と、を含み、前記無機酸化物が、球状、及び/又は連結構造のシリカを含む、水系塗料組成物。
[2]前記混合物、及び/又は、前記複合体の平均粒子径が2~2000nmである、[1]に記載の水系塗料組成物。
[3]界面活性剤を更に含む、[1]又は[2]に記載の水系塗料組成物。
[4]前記水溶性有機溶剤が、イソプロパノールを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
[5]前記水溶性有機溶剤の含有量が、前記水系塗料組成物100質量%に対して、40質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
[6]前記有機系紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる1種以上を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
[7]前記光安定剤が、ヒンダードアミン系化合物を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の水系塗料組成物。
[8]基材と、前記基材上に配された接着層とを有し、前記接着層が、[1]~[7]のいずれかに記載の水系塗料組成物の硬化物を含む、接着層付き基材。
[9][8]に記載の接着層付き基材と、前記基材における前記接着層上に配されたハードコート層と有し、前記ハードコート層が、重合体ナノ粒子と、マトリクス成分と、を含み、前記マトリクス成分が、無機酸化物を含み、前記重合体ナノ粒子のマルテンス硬度HMGと、前記マトリクス成分のマルテンス硬度HMHとが、HMH/HMG>1の関係を満たす、積層体。
[10]前記接着層付き基材のヘイズ値H1が、前記積層体のヘイズ値H2よりも大きい、[9]に記載の積層体。
[11]組成物Aと、組成物Bと、備え、前記組成物Aが、エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、ブロックポリイソシアネートと、水と、を含み、かつ、前記無機酸化物が、球状、及び/又は連結構造のシリカを含み、前記組成物Bが、有機系紫外線吸収剤と、光安定剤と、沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤と、を含む、組成物セット。
[12]前記組成物A及び/又は前記組成物Bに、界面活性剤を更に含む、[11]に記載の組成物セット。
[13][11]又は[12]に記載の組成物Aを攪拌した状態で、[11]又は[12]に記載の組成物Bを前記組成物Aに滴下する工程を含む、水系塗料組成物の製造方法。
本発明によれば、透明性及び耐候性に優れた塗膜を形成でき、かつ、ポットライフに優れた水系塗料組成物及びその製造方法、接着層付き基材、積層体、並びに組成物セットを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[水系塗料組成物]
本実施形態における水系塗料組成物は、エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、ブロックポリイソシアネートと、有機系紫外線吸収剤と、光安定剤と、沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤と、を含み、無機酸化物が、球状、及び/又は連結構造のシリカを含む。
[エマルション粒子]
本実施形態の水系塗料組成物は、エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体を含む。
本実施形態に係るエマルション粒子は、柔軟性付与と基材への密着性向上の役割を果たすものである。エマルション粒子は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、ポリスチレン-(メタ)アクリレート系共重合体、ロジン系誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂などのポリカルボニル化合物、シリコーン化合物などを1種又は2種以上から構成される粒子である。本実施形態において、エマルション粒子は、ポリ(メタ)アクリレート系であることが好ましい。
本実施形態におけるエマルション粒子の調製方法としては、特に限定されないが、水及び乳化剤の存在下に、ビニル単量体を重合して得られる構造であることが好ましい。このようにして得られるエマルション粒子が接着層に含まれる場合、基材への密着性の維持により優れる傾向にある。
ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物の他、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体のような官能基を含有する単量体等を挙げることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アルキル基の炭素数が1~50の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
上記(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、4-ビニルトルエン等が挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、又はイタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの2塩基酸のハーフエステル等が挙げられる。カルボキシル基含有のビニル単量体を用いる場合、本実施形態におけるエマルション粒子にカルボキシル基を導入することができ、粒子間の静電反発力をもたせることでエマルションとしての安定性を向上させ、例えば攪拌時の凝集といった外部からの分散破壊作用への抵抗力が向上する傾向にある。この際、静電反発力をさらに向上させる観点から、上記導入したカルボキシル基は、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。
上記水酸基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチルモノブチルフマレート等のフマル酸のヒドロキシアルキルエステル;アリルアルコールやエチレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート;プロピレンオキシド基の数が1~100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート;さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名)や、その他のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類などが挙げられる。
上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
上記エポキシ基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、グリシジル基含有ビニル単量体等が挙げられる。グリシジル基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
上記カルボニル基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
また、上記以外のビニル単量体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p-t-ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
上記2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、N-アルキル又はN-アルキレン置換(メタ)アクリルアミド等を例示することができる。具体的には、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド等を挙げることができる。
上記シリコーン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの加水分解縮合物が挙げられる。
前記エマルション粒子は乳化剤を含んでもよい。乳化剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸)、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸などの酸性乳化剤;酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K、など)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレートなどの四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンボロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルなどのノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤などが挙げられる。
前記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エレミノール(登録商標)JS-2(商品名、三洋化成株式会社製)、ラテムル(登録商標)S-120、S-180A又はS-180(商品名、花王株式会社製)、アクアロン(登録商標)HS-10、KH-1025、RN-10、RN-20、RN30、RN50(商品名、第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープ(登録商標)SE1025、SR-1025、NE-20、NE-30、NE-40(商品名、旭電化工業株式会社製)、p-スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、p-スチレンスルホン酸のナトリウム塩、p-スチレンスルホン酸のカリウム塩、2-スルホエチルアクリレートなどのアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸のアンモニウム塩、アリルスルホン酸のナトリウム塩、アリルスルホン酸のカリウム塩などが挙げられる。
前記エマルション粒子は、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムなどの水溶性重合開始剤が挙げられる。
塗料組成物において、前記エマルション粒子が、2級アミド基及び/又は3級アミド基を有する官能基(e)を有することが好ましい。2級アミド基及び/又は3級アミド基を有する官能基(e)としては、特に限定されないが、例えば、後述する塗料組成物(I)における2級アミド基及び/又は3級アミド基を有する官能基(e)として例示するものを適宜採用することができる。
塗料組成物において、前記エマルション粒子が、水酸基を有する官能基を有することが好ましい。水酸基を有する官能基としては、特に限定されないが、例えば、後述する塗料組成物(I)における水酸基を有する官能基として例示するものを適宜採用することができる。
[エマルション粒子の平均粒子径]
本実施形態におけるエマルション粒子の平均粒子径は、断面SEM又は動的光散乱法により観測される粒子の大きさから求められる。エマルション粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、300nm以下であることが好ましい。エマルション粒子の平均粒子径を上記範囲に調整することにより、基材との接触面積向上により密着性がより一層優れた接着層を形成できる傾向にある。また、得られる接着層の透明性が向上する観点から、平均粒子径は200nm以下であることがより好ましく、接着層の原料組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。エマルション粒子の平均粒子径の測定方法は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
[無機酸化物]
本実施形態に係る無機酸化物(エマルション粒子との混合物に含まれる無機酸化物、及びエマルション粒子との複合体に含まれる無機酸化物を「無機酸化物(I)とも称する」)は、ハードコート層との相互作用による密着性向上の観点から、球状、及び/又は連結構造のシリカを含む。球状のシリカとしては特に限定されず、市販品を採用することもできる。なお、本実施形態において、エマルション粒子との混合物に含まれる無機酸化物と、エマルション粒子との複合体に含まれる無機酸化物とは、同じであっても、異なっていてもよい。また、無機酸化物(I)は、後述の無機酸化物(D)と同じであっても、異なっていてよい。無機酸化物(I)としては、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックス(登録商標)Cやスノーテックス(登録商標)OSが好ましく用いられる。また、連結構造のシリカとしても特に限定されず、市販品を採用することもでき、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックス(登録商標)PS-SO(水分散性コロイダルシリカ)が好ましく用いられる。
また、本実施形態においては、球状及び/又は連結構造のシリカに加えて、本実施形態に係る球状又は連結構造のシリカと異なる他の無機酸化物を含んでいてもよい。他の無機酸化物は、特に限定されないが、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、セリウム、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデン、ニオブ、マグネシウム、ビスマス、コバルト、及び銅などの酸化物が挙げられる。これらは単体であっても混合物でもよい。光学特性を高める観点からは、他の無機酸化物は、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、及び酸化スズ及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本実施形態における無機酸化物の一次平均粒子径は、水系塗料組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上であることが好ましい。積層体全体としての透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下である。このため、一次平均粒子径は、好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは4nm以上50nm以下である。一次平均粒子径は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
無機酸化物としては、特に限定されないが、後述する加水分解性珪素化合物(b)との相互作用の観点及びハードコート層との密着性の観点から、乾式シリカやコロイダルシリカに代表される、シリカ粒子が好ましい。水分散体の形態でも使用できるため、コロイダルシリカが好ましい。
[無機酸化物として好適に用いられるコロイダルシリカ]
本実施形態で好適に用いられる水を分散溶媒とする酸性のコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、ゾル-ゲル法で調製して使用することもでき、市販品を利用することもできる。ゾル-ゲル法で調製する場合には、Werner Stober etal;J.Colloid and Interface Sci.,26,62-69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792-801(1990)、色材協会誌,61[9]488-493(1988)などを参照できる。
市販品を利用する場合、例えば、スノーテックス(登録商標)-O、スノーテックス-OS、スノーテックス-OXS、スノーテックス-O-40、スノーテックス-OL、スノーテックスOYL、スノーテックス-OUP、スノーテックス-PS-SO、スノーテックス-PS-MO、スノーテックス-AK-XS、スノーテックス-AK、スノーテックス-AK-L、スノーテックス-AK-YL、スノーテックス-AK-PS-S(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライト(登録商標)AT-20Q(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール20H12、クレボゾール30CAL25(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)などが挙げられる。
また、塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンの添加で安定化したシリカがあり、特に限定されないが、例えば、スノーテックス(登録商標)-20、スノーテックス-30、スノーテックス-XS、スノーテックス-50、スノーテックス-30L、スノーテックス-XL、スノーテックス-YL、スノーテックスZL、スノーテックス-UP、スノーテックス-ST-PS-S、スノーテックスST-PS-M、スノーテックス-C、スノーテックス-CXS、スノーテックス-CM、スノーテックス-N、スノーテックス-NXS、スノーテックス-NS、スノーテックス-N-40(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライト(登録商標)AT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-30N、アデライトAT-20A、アデライトAT-30A、アデライトAT-40、アデライトAT-50(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)、ルドックス(登録商標)HS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、ルドックスAS-30、ルドックスSM-AS、ルドックスAM、ルドックスHSA及びルドックスSM(商品名、デュポン社製)などが挙げられる。
また、水溶性溶媒を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、日産化学工業株式会社製MA-ST-M(粒子径が20~25nmのメタノール分散タイプ)、IPA-ST(粒子径が10~15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EGST-ZL(粒子径が70~100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)、TOL-ST(粒子径が10~15nmのトルエン分散タイプ)(商品名)などが挙げられる。
乾式シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、日本アエロジル株式会社製 AEROSIL(登録商標)、株式会社トクヤマ製レオロシール(登録商標)などが挙げられる。
シリカ粒子は、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミンなど)を含んでいてもよい。
[無機酸化物の形状]
本実施形態における無機酸化物、及び他の無機酸化物の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、角状、多面体形状、楕円状、扁平状、線状、数珠状、及び鎖状などが挙げられる。本実施形態の水系塗料組成物では、これらの形状を有する無機酸化物又は他の無機酸化物を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。本実施形態において、積層体の硬度及び透明性の観点から、無機酸化物は、球状、及び/又は数珠状や鎖状等の連結構造を有するものであることが好ましい。さらに、積層体の密着性の観点から、無機酸化物は、数珠状や鎖状等の連結構造を有するものことがより好ましい。ここで、数珠状とは、球状の一次粒子が数珠状に連結した構造であり、鎖状とは、球状の一次粒子が鎖状に連結した構造である。本実施形態においては、無機酸化物が、球状及び/又は連結構造を有するシリカであることがとりわけ好ましい。
[エマルション粒子と無機酸化物の複合体]
無機酸化物(I)は予めエマルション粒子と複合化したものであってもよい。エマルション粒子と無機酸化物の複合体は、例えば、無機酸化物の存在下に、前述したエマルション粒子を構成するビニル単量体を重合することで得られる。当該ビニル単量体は、無機酸化物との相互作用の観点から、前述した2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体を含むことが好ましい。無機酸化物の水酸基と2級及び/又は3級アミド基の水素結合により、好ましく複合体を形成することができる。
本実施形態において、無機酸化物、エマルション粒子、及び無機酸化物とエマルション粒子との複合体からなる群より選択される少なくとも1つの平均粒子径が、透明性、及び密着性の観点から2nm以上4000nm以下であることが好ましい。上記平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。ここで、本実施形態における接着層は、水系塗料組成物を基材に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができ、したがって、水系塗料組成物における無機酸化物、エマルション粒子、及び無機酸化物とエマルション粒子との複合体の平均粒子径が既知であれば、それらは対応する接着層中の無機酸化物、エマルション粒子、及び無機酸化物とエマルション粒子との複合体の平均粒子径によく一致するものとして、接着層における各平均粒子径を決定することができる。
本実施形態における、エマルション粒子と無機酸化物との混合物及び/又はエマルション粒子と無機酸化物の複合体の平均粒子径は、接着層の原料組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上がより好ましく、透明性の観点から2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは1000nm以下であり、更に好ましくは500nm以下である。
上記平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができ、例えば、エマルション粒子と無機酸化物の質量比率や固形分濃度によって上述した範囲に調整することができる。
また、本明細書において、エマルション粒子と無機酸化物との混合物の平均粒子径は、エマルション粒子の平均粒子径と、無機酸化物の一次平均粒子径との双方が、2nm以上2000nm以下であるとき、当該混合物の平均粒子径が2nm以上2000nm以下であるというものとする。
エマルション粒子と無機酸化物の質量比は、密着性の観点から1:0.1~1:10が好ましく、1:0.3~1:5がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、本実施形態における接着層は、水系塗料組成物を基材に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができ、したがって、水系塗料組成物におけるエマルション粒子と無機酸化物の質量比が既知であれば、当該質量比は対応する接着層中のエマルション粒子と無機酸化物の質量比によく一致するものとして、接着層における質量比を決定することができる。
エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体の合計の含有量は、水系塗料組成物100質量%に対して、固形分換算で、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
[ブロックポリイソシアネート]
本実施形態の水系塗料組成物は、接着層と基材との密着性向上の観点から、イソシアネート系架橋剤として、イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基をブロック化剤と反応させたブロックポリイソシアネートを含む。
ブロックポリイソシアネートは、イソシアネート系架橋剤として、水酸基含有ビニル単量体を含む単量体から重合されたエマルション粒子と共に用いることより、塗膜形成時に、エマルション粒子の水酸基と、イソシアネート基とが、ウレタン結合を形成する。そのため、得られる塗膜は、塗膜密着性、及び塗膜強度が向上する傾向にある。
ブロックポリイソシアネートの原料であるイソシアネート化合物は、少なくともイソシアネート基を1分子中に1個以上有する化合物である。イソシアネート化合物は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する化合物であってもよい。
このようなイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6-ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,2,4-又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネ-ト;1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナートメチルオクタン、及び2-イソシアナートエチル(2,6-ジイソシアナート)ヘキサノエートなどの脂肪族トリイソシアネート;1,3-又は1,4-ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3-又は1,4-ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル(3-イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5-又は2,6-ジイソシアナートメチルノルボルナンなどの脂環族ジイソシアネ-ト;2,5-又は2,6-ジイソシアナートメチル-2-イソシネートプロピルノルボルナンなどの脂環族トリイソシアネート;m-キシリレンジイソシアネート、及びα,α,α’α’-テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネートなどのアラルキレンジイソシアネート;m-又はp-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-又は2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナート-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチル-ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、及びジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェートなどの芳香族トリイソシアネート、さらには上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基同士を環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するジイソシアネートあるいはポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基同士を環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを二酸化炭素と反応せしめて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを種々のアルコールと反応せしめて得られるアロファネート構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを、ポリヒドロキシ化合物、ポリカルボキシ化合物、ポリアミン化合物の如き活性水素を含有する化合物と反応させて得られるポリイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアネート化合物としては、分子内にアルコキシシラン部位及び/又はシロキサン部位を含んでもよく、このようなイソシアネート化合物としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及び3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の加水分解縮合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用できる。
ブロックポリイソシアネートの原料であるブロック化剤としては、特に限定されないが、例えば、オキシム系化合物、アルコール系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、フェノール系化合物、アミン系化合物、活性メチレン系化合物、イミダゾール系化合物、及びピラゾール系化合物が挙げられる。これらのブロック化剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
オキシム系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシムが挙げられる。アルコール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、及び2-ブトキシエタノールが挙げられる。酸アミド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、及びγ-ブチロラクタムが挙げられる。酸イミド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸イミド、及びマレイン酸イミドが挙げられる。フェノール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、スチレン化フェノール、及びヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。アミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、及びイソプロピルエチルアミンが挙げられる。活性メチレン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、及びアセチルアセトンが挙げられる。イミダゾール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、及び2-メチルイミダゾールが挙げられる。ピラゾール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、及び3,5-ジメチルピラゾールが挙げられる。
ブロックポリイソシアネートの原料であるイソシアネート化合物は、脂肪族系あるいは脂環族系のジイソシアネート又はトリイソシアネート、アラルキレンジイソシアネートあるいは、それらから誘導されるイソシアネートであることが、耐候性やポットライフの面でより好ましい。ブロックポリイソシアネートとしては、分子内にビュレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、及びアロファネート等の構造を有するものが更に好ましい。ビュレット構造を有するものは接着性に優れている場合が多い。イソシアヌレート構造を有するものは耐候性に優れている場合が多い。長い側鎖を有するアルコール化合物を用いたウレタン構造を有するものは弾性及び伸展性に優れている場合が多い。ウレトジオン構造あるいはアロファネート構造を有するものは低粘度である場合が多い。
ブロックポリイソシアネートとしては、水分散性の点からは、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物と、ノニオン性及び/又はイオン性の親水性基を有する水酸基含有親水性化合物とをイソシアネート基/水酸基の当量比が1.05~1000の範囲にて反応させ、更にブロック化剤と反応させて得られる水分散性ブロックポリイソシアネートであることが好ましい。より好ましくはイソシアネート基/水酸基の当量比が2~200の範囲であり、さらに好ましくは4~100の範囲である。イソシアネート基/水酸基の当量比が1.05以上であることで、親水性ブロックポリイソシアネート中のイソシアネート基含有率が所定のレベル以上になるため、水系塗料組成物中において架橋点が多くなり、硬化速度の増大あるいは塗膜等の接着層の強度の向上につながり好ましい。当量比が1000以下であることで、親水性が発現し、好ましい。かかる水分散性ブロックポリイソシアネートとしては特に限定されず、市販の水分散性ブロックポリイソシアネートを採用することもでき、例えば、旭化成(株)製のWS50-30W(商品名)や旭化成(株)製のWM44L-70G(商品名)が上述した特徴を備えるものとして好ましく用いられる。
水分散性ブロックポリイソシアネートとしては、従来公知の手法により親水性基を導入してなるものであれば特に限定されず使用できる。例えば、一般式R1O(R2O)n-H(ここでR1は炭素数1~30のアルキル基又は芳香環を2つ以上有する基を表し、R2は炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2~250の整数である)で示される化合物(m)とイソシアネート化合物とブロック化剤との反応生成物、親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体とイソシアネート化合物とブロック化剤との反応生成物、アルコキシポリアルキレングリコールとジアルカノールアミンとを反応させることにより得られる乳化剤とイソシアネート化合物とブロック化剤との反応生成物などを挙げることができる。これらの中で、化合物(m)とイソシアネート化合物とブロック化剤との反応生成物、親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体とイソシアネート化合物とブロック化剤との反応生成物は、水分散性に優れるため、特に好ましい。
化合物(m)としては、例えば、ポリメチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-オキシプロピレン(ランダム及び/又はブロック)グリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレン-オキシテトラメチレン(ランダム及び/又はブロック)グリコールポリブチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコキシポリアルキレングリコール類、(モノ~ペンタ)スチレン化フェニル基、モノ(又はジ,トリ)スチリル-メチル-フェニル基、トリベンジルフェニル基、及びβ-ナフチル基などの芳香環を2つ以上有する基を有するノニオン型界面活性剤を挙げることができる。これらの化合物(m)は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(モノ~ペンタ)スチレン化フェニル基を有するノニオン型界面活性剤が、自己乳化能、及びポットライフの点で好ましい。
これら化合物(m)は、好ましくは分子量が100~10000であり、より好ましくは300~5000の範囲である。
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体の親水性基としては、公知の各種アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基が挙げられ、ノニオン性基であることが好ましい。ノニオン性基であることで水系塗料組成物のポットライフが著しく延長し、またブロックポリイソシアネートの油滴の粒子径が小さくなるので、形成される塗膜の耐水性が更に向上する傾向にある。
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体の具体例としては、例えば、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、及びポリオレフィン系重合体等が挙げられる。これらの中でも、形成される塗膜の耐候性の観点からアクリル系重合体が好ましい。
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体として好適なアクリル系重合体を得るための重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、懸濁重合、乳化重合、又は溶液重合が挙げられる。好ましくは親水性基を有するエチレン性不飽和単量体(i)及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(ii)を溶液重合することによって得られるアクリル系重合体であり、必要に応じてこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(iii)を使用することもできる。
親水性基を有するエチレン性不飽和単量体(i)としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド系単量体;アニオン型ビニル単量体等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類のように、親水性基と水酸基とを分子内に併せ持つエチレン性不飽和単量体を使用することもできる。これらは1種又は2種以上混合して使用してもよい。
また、これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(iii)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類、カルボニル基含有ビニル単量体、オレフィン類、ジエン類、ハロオレフィン類、ビニルエーテル類、及びアリルエステル類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用してもよい。
親水性基及び水酸基を含有するビニル系重合体は、好ましくは質量平均分子量(ポリスチレン換算GPC法)が2000~100000の範囲であり、より好ましくは3000~50000の範囲である。
水系塗料組成物におけるブロックポリイソシアネートの、水酸基含有ビニル単量体を含む単量体から重合されたエマルション粒子に対する含有量は、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X=イソシアネート基モル数/水酸基モル数)が0.02以上であることが好ましい。Xは、形成される塗膜と基材との密着性の観点で0.1以上であることがより好ましく、塗膜の耐擦過性の観点から0.15以上であることがさらに好ましい。また、水系塗料組成物の安定性(ゲル化、高粘度化に対する耐性)の観点から、Xは10以下が好ましく、形成される塗膜の低い水接触角、高透明性(低HAZE)の観点から5以下がより好ましい。比(X)は、0.02以上10以下、0.02以上5以下、0.1以上10以下、0.1以上5以下、0.15以上10以下、0.15以上5以下であってよい。
一実施態様として、ブロックポリイソシアネートの、エマルション粒子と無機酸化物とに対する質量比(ブロックポリイソシアネートの質量/エマルション粒子と無機酸化物との合計質量)は、密着性の観点から0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。また、この質量比は、透明性の観点から、1.0以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。
市販の水分散性ブロックポリイソシアネートを採用することもでき、例えば、旭化成(株)製のWS50-30W(商品名)や旭化成(株)製のWM44L-70G(商品名)が上述した特徴を備えるものとして好ましく用いられる。
上述したブロックポリイソシアネートは、その一部又は全量がポリオールと反応する等して、ウレタン化合物の形態となっていてもよい。
[有機系紫外線吸収剤]
本実施形態の水系塗料組成物には、光学特性を確保する観点から、有機系紫外線吸収剤を含む。
有機系紫外線吸収剤の具体例としては、特に限定されないが、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL(登録商標)3049」)、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL(登録商標)3050」)、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-ベンゾイルー2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン、及び4,6-ジベンゾイルレゾルチノールなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル-3-〔3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(BASF社製の商品名「TINUVIN(登録商標)1130」)、イソオクチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(BASF社製の商品名「TINUVIN384」)、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製の商品名「TINUVIN571」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製の商品名「TINUVIN900」)、ベンゼンプロパン酸、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9-側鎖及び直鎖アルキルエステルの混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN384-2」)、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN109、TINUVIN970、TINUVIN328、TINUVIN171、TINUVIN970、TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN99-2、及びTINVIN928(商品名、BASF社製)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシー4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN460」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN479」)、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンとの混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN400」)、TINUVIN405、TINUVIN477、及びTINUVIN1600(商品名、BASF社製)などのトリアジン系紫外線吸収剤;HOSTAVIN(登録商標) PR25、HOSTAVIN B-CAP、及びHOSTAVIN VSU(商品名、クラリアント社製)などのマロン酸エステル系紫外線吸収剤;HOSTAVIN3206 LIQ、HOSTAVINVSU P、及びHOSTAVIN3212 LIQ(商品名、クラリアント社製)、などのアニリド系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、及びp-イソプロパノールフェニルサリシレートなどのサリシレート系紫外線吸収剤;エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3035」)、(2-エチルヘキシル)-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3039」、及び1,3-ビス((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)-2,2-ビス-(((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン(BASF社製の商品名「UVINUL3030)などのシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-ジエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-トリエトキシ)ベンゾフェノン、及び2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製の商品名「RUVA-93」)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチル-3-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシプロピル-3-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-〔3’-(2’’-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー株式会社製の商品名「CGL-104」)などの分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤;UV-G101、UV-G301、UV-G137、UV-G12、及びUV-G13(日本触媒株式会社製の商品名)などの紫外線吸収性を有する重合体;シラノール基、イソシアネート基、エポキシ基、セミカルバジド基、及びヒドラジド基との反応性を有する紫外線吸収剤等が挙げられる。これらは1種もしくは2種以上を併用しても構わない。この中でも、紫外線吸収能の観点から、有機系紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、アニリド系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことである。有機系紫外線吸収剤は、ヒドロキシフェニル基を有することが、更に好ましい。
有機系紫外線吸収剤の含有量は、光学特性の観点から、水系塗料組成物中において、エマルション粒子の固形分と無機酸化物との合計100質量部、又は複合体の固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、4質量部以上が更に好ましい。また、溶解性の観点から、エマルション粒子の固形分と無機酸化物との合計100質量部、又は複合体の固形分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
[光安定剤]
本実施形態の水系塗料組成物には、光学特性を確保する観点から、光安定剤を含む。
光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系化合物を含むことが好ましい。ヒンダードアミン系化合物として、具体的には、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-セバケートの混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN(登録商標)292」)、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(BASF社製の商品名「TINUVIN123」)、TINUVIN144、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN152」)、TINUVIN249、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)とセバシン酸メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)との混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN292」)、及びTINUVIN5100(商品名、BASF社製)などのヒンダードアミン系化合物;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,-テトラメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、及び4-シアノ-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートなどのラジカル重合性のヒンダードアミン系化合物;ユーダブル(登録商標)E-133、ユーダブルE-135、ユーダブルS-2000、ユーダブルS-2834、ユーダブルS-2840、ユーダブルS-2818、及びユーダブルS-2860(商品名、日本触媒株式会社製)などの光安定性を有するヒンダードアミン系の重合体等が挙げられる。なお、本実施形態において、ヒンダードアミン系化合物には、ヒンダードアミン系の重合体も含む。
光安定剤の含有量は、光学特性の観点から、水系塗料組成物中において、エマルション粒子の固形分と無機酸化物との合計100質量部、又は複合体の固形分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上がより更に好ましい。また、塗料安定性の観点から、エマルション粒子の固形分と無機酸化物との合計100質量部、又は複合体の固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下が更に好ましい。
[溶媒]
本実施形態の水系塗料組成物には、溶媒として、水と共に、沸点が80℃以上140℃以下の水溶性有機溶剤を含む。水系塗料組成物とは、塗料組成物中の溶媒の構成成分のうち、水の割合が最も多い状態を指す。また、水系塗料組成物において、水は、溶媒100質量%中、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらにより好ましい。また、水は、溶媒100質量%中、95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらにより好ましい。
溶媒中の水の質量割合を上記下限値以上とすることで、水系塗料組成物中におけるエマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体、並びにブロックポリイソシアネートの安定化に寄与するとともに、環境負荷を低減できる傾向にある。また、溶媒中の水の質量割合を上記上限値以下とすることで、水系塗料組成物中における有機系紫外線吸収剤及び光安定剤の安定化に寄与できる傾向にある。
本実施形態の水系塗料組成物には、本発明の効果を奏する限り、その目的及び用途に応じて、沸点が80℃以上140℃以下の水溶性有機溶剤と異なる、有機溶剤を含んでもよい。このような有機溶剤としては、水酸基及びイソシアネート基と反応する官能基を有していないことが好ましく、ポリイソシアネート組成物と十分に相溶することが好ましい。このような有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、一般に塗料の溶剤として用いられている溶剤であればよく、エステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、及び炭化水素系溶剤等が挙げられる。
<水溶性有機溶剤>
本実施形態の塗料組成物には、溶媒として、水と共に、沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤を含む。水溶性有機溶剤の沸点が上記の範囲であることにより、親水性物質であるエマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体、並びにブロックポリイソシアネートと、疎水性物質である有機系紫外線吸収剤及び光安定剤が共存する水系塗料組成物の安定性を適切に保つことができる。さらに、ポリカーボネートに代表される樹脂基材へ塗工した場合、水系塗料組成物中の溶剤による侵食を防ぐことができる。
水溶性有機溶剤としては、上記範囲の沸点を有し、水へ10%以上溶解する有機溶剤であれば、特に限定されない。このような水溶性有機溶剤としては、たとえば、アルコール化合物、グリコールエーテル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、及びニトリル化合物等であって、沸点が80℃以上140℃の範囲にあり、水へ10%以上溶解する化合物が挙げられる。
アルコール化合物の具体例として、特に限定されないが、イソプロパノール、1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、及び2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例として、特に限定されないが、2-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、及びジメチルセロソルブ等が挙げられる。
エーテル化合物の具体例として、特に限定されないが、2-メチルテトラヒドロフラン、及びジオキサン等が挙げられる。
ケトン化合物の具体例として、特に限定されないが、メチルプロピルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。
ニトリル化合物の具体例として、特に限定されないが、アセトニトリル等が挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
親水性物質であるエマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体、並びにブロックポリイソシアネートと、疎水性物質である有機系紫外線吸収剤及び光安定剤それぞれの水系塗料組成物中での安定性を適切に保つ観点から、水と水溶性有機溶剤の混合系においては、適切な極性を保つ必要がある。このような点から、水溶性有機溶剤の水への溶解度は15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、50%以上がさらにより好ましい。
溶媒除去時の環境負荷低減の観点から、水溶性有機溶剤としては、アルコール化合物を含むことが好ましく、水と水溶性有機溶剤の混合系において、適切な極性をより好適に保つことができ、安定性をより保持できる点から、イソプロパノールを含むことがより好ましい。
水と水溶性有機溶剤の混合系において、適切な極性を更に好適に保つことができ、安定性を更に保持できる点から、水溶性有機溶剤の含有量は、水系塗料組成物100質量%に対して、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。下限は、特に限定されないが、例えば、5質量%以上であり、10質量%以上であってもよい。
[界面活性剤]
本実施形態の水系塗料組成物には、塗料安定性を更に高めるために、界面活性剤を更に含んでもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、及びデオキシコール酸ナトリウムが挙げられる。これらの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、エマルション粒子の固形分と無機酸化物との合計100質量部、又は複合体の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である。
[その他の添加剤]
本実施形態の水系塗料組成物には、目的及び用途に応じて、これまでに挙げられていない化合物及び重合体である、硬化促進触媒、酸化防止剤、レベリング剤、可塑剤、架橋剤、粘着付与剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、剥離調整剤、軟化剤、難燃剤、及び酸化防止剤等の各種添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
硬化促進触媒としては、特に限定されないが、例えば、スズ系化合物、亜鉛化合物、チタン化合物、コバルト化合物、ビスマス化合物、ジルコニウム化合物、及びアミン化合物等が挙げられる。スズ系化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジネオデカノエート、及びビス(2-エチルヘキサン酸)スズ等が挙げられる。亜鉛化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等が挙げられる。チタン化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸チタン、及びチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトナート)等が挙げられる。コバルト化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、及びナフテン酸コバルト等が挙げられる。ビスマス化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス、及びナフテン酸ビスマス等が挙げられる。ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸ジルコニル、及びナフテン酸ジルコニル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、リン系化合物、及び硫黄系化合物等が挙げられる。
顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インディゴ、パールマイカ、アルミニウム等が挙げられる。
レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル類、リン酸系化合物、及びポリエステル系化合物等が挙げられる。
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤過酸化物系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、及び金属塩系架橋剤などが挙げられる。
これらの添加剤の含有量は、光学特性の観点から、エマルション粒子の固形分と無機酸化物との合計100質量部、又は複合体の固形分100質量部に対して、それぞれ0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上がより更に好ましい。また、水系塗料組成物の安定性の観点から、エマルション粒子の固形分と無機酸化物との合計100質量部、又は複合体の固形分100質量部に対して、それぞれ100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
また、本実施形態の水系塗料組成物においては、これまでに挙げられていない化合物、重合体、及び添加剤である、その他の成分を含んでいてもよい。これらのその他の成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。このようなその他の成分としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びゴム・エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びシリコーン系樹脂などが好ましい。
[水系塗料組成物の性状]
塗装性の観点から、水系塗料組成物中に含まれる固形分の濃度は、0.01~60質量%であることが好ましく、より好ましくは1~40質量%である。また、塗装性の観点から、水系塗料組成物の20℃における粘度は、好ましくは0.1~100000mPa・sであり、好ましくは1~10000mPa・sである。なお、本明細書において、粘度は、一般的なE型粘度計で測定可能である。一実施形態において、粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製RE-80U)を用いて、回転数2.5rpm、25℃で測定される。
[組成物セット]
本実施形態の組成物セットは、組成物Aと、組成物Bと、備え、組成物Aが、エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、ブロックポリイソシアネートと、水と、を含み、かつ、無機酸化物が、球状、及び/又は連結構造のシリカを含み、組成物Bが、有機系紫外線吸収剤と、光安定剤と、沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤と、を含む。
組成物セットにおいては、塗料安定性を更に高めるために、組成物A及び/又は組成物Bに、界面活性剤を更に含むことが好ましい。
組成物セットにおける各成分の詳細については、水系塗料組成物に含まれる各成分について上述したとおりである。
組成物Aは、混合物、及び/又は複合体と、ブロックポリイソシアネートと、水と、を含めば、その調製方法は、特に限定されない。また、組成物Bについても、有機系紫外線吸収剤と、光安定剤と、水溶性有機溶剤と、を含めば、その調製方法は、特に限定されない。
本実施形態では、予め、組成物Aと、組成物Bとを調製し、その後、組成物AとBとを混合して、水系塗料組成物を調製することが好ましい。
混合方法に関しては、特に限定されないが、水系塗料組成物のポットライフの観点から、親水性である、エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、ブロックポリイソシアネートと、水と、を含む組成物Aと、疎水性である、有機系紫外線吸収剤及び光安定剤を、水溶性有機溶剤へ予め溶解混合させた組成物Bとを調製し、組成物AとBとを混合することが好ましい。混合方法としては、組成物Bを組成物Aに添加して混合することが、より好ましい。即ち、有機系紫外線吸収剤及び光安定剤を予め水溶性有機溶剤に溶解混合させた組成物Bを組成物Aに添加することにより、添加時の液中への析出沈殿を抑制することができる傾向にある。また、エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体、並びにブロックポリイソシアネートを、水に混合させて組成物Aを予め調製しておくことにより、組成物B中の水溶性有機溶剤による析出沈殿を抑制することができる。
さらに、組成物Aを構成する親水性物質の析出沈殿をより抑制する観点から、組成物Aを撹拌した状態で、組成物Bを組成物Aに滴下して混合することが、更に好ましい。
水系塗料組成物の安定性向上のために、界面活性剤を使用する場合、その添加方法は特に限定されないが、組成物A及び/又は組成物Bに予め添加することが好ましい。
[水系塗料組成物の製造方法]
本実施形態の水系塗料組成物は、例えば、エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、ブロックポリイソシアネートと、有機系紫外線吸収剤と、光安定剤と、水と、沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤とを、手攪拌、又はミキサー、及びスターラー等の攪拌機器を用いて、撹拌混合することで製造される。
また、水系塗料組成物は、上述のとおり、予め、組成物Aと、組成物Bとを調製し、その後、組成物Aと組成物Bとを混合して調製してもよい。この製造方法では、上述のとおり、組成物Aを攪拌した状態で、組成物Bを組成物Aに滴下する工程を含むことが、好ましい。
[接着層]
本実施形態における接着層は、例えば、本実施形態の水系塗料組成物を基材へ塗装し、熱処理、紫外線照射、及び赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができる。
塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、スプレー吹付法、フローコート法、刷毛塗法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、及びフレキソ印刷法などが挙げられる。塗装後、水系塗料組成物は、好ましくは80~250℃、より好ましくは90℃~150℃での熱処理や赤外線照射などにより、塗膜化される。熱処理や赤外線照射を行うことにより、水系塗料組成物に含まれるブロックポリイソシアネートの脱ブロック化が進行し、エマルション粒子に含まれる水酸基と、イソシアネート基とが反応することで、ウレタン結合を形成し、塗膜密着性、及び塗膜強度が向上する傾向にある。さらに、この塗装は、すでに成型した基材だけでなく、防錆鋼板を含むプレコートメタルのように、成型加工する前にあらかじめ平板に塗装することも可能である。
接着層の厚みは、密着性の観点から、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上あり、透明性の観点から、好ましくは100.0μm以下であり、より好ましくは50.0μm以下である。
[接着層付き基材]
本実施形態の接着層付き基材は、基材と、基材上に配された接着層とを有し、接着層が、本実施形態の水系塗料組成物の硬化物を含む。接着層は、基材上に、水系塗料組成物を被覆し、硬化させることで得られる。本実施形態において、接着層は、基材の片面及び/又は両面に配される。
[基材]
本実施形態における基材としては、特に限定されないが、樹脂、金属、及びガラス等が挙げられる。基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状、凹凸を含む形状、曲面を含む形状、中空の形状、多孔体の形状、及びそれらの組み合わせが挙げられる。また、基材の種類は問わず、例えば、シート、フィルム、及び繊維が挙げられる。それらの中でも、ハードコート性の付与や成形性の観点から、樹脂であることが好ましい。樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、ナイロン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、及びポリエステル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、SBゴム、天然ゴム、及び熱硬化性エラストマーなどが挙げられる。
[積層体]
本実施形態の積層体は、本実施形態の接着層付き基材と、基材における接着層上に配されたハードコート層と有し、ハードコート層が、重合体ナノ粒子と、マトリクス成分と、を含み、マトリクス成分が、無機酸化物を含み、重合体ナノ粒子のマルテンス硬度HMGと、前記マトリクス成分のマルテンス硬度HMHとが、HMH/HMG>1の関係を満たす。
積層体は、接着層付き基材のヘイズ値H1が、積層体のヘイズ値H2よりも大きいことが好ましい。本実施形態の積層体は、このように構成されているため、高い耐摩耗性、密着性及び光学特性を有する。また、このような関係を満たすことで、本実施形態の積層体は、接着層付き基材とハードコート層との界面に散乱層が形成される結果、干渉縞の生成がより抑制され、光学特性がより向上する。
本実施形態において、密着性の観点から、積層体のヘイズ値H2に対する、接着層付き基材のヘイズ値H1の比(H1/H2)が、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましい。
本実施形態において、透明性の観点から、接着層付き基材のヘイズ値H1は60%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。同様の観点から、積層体のヘイズ値H2は、5%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。各ヘイズ値を上記範囲内に調整するための方法としては、特に限定されないが、例えば、H1は、エマルション粒子の粒径、無機酸化物の粒子径や形状、エマルション粒子と無機酸化物の質量比率、ブロックポリイソシアネートの含有量、及びその他添加剤の含有量を制御することが挙げられる。H2は、重合体ナノ粒子(A)の粒径、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の成分比、マトリクス成分(B)中の無機酸化物(D)の含有率、及びハードコート層に含まれる遮光剤の含有量を制御することが挙げられる。特に、無機酸化物あるいは無機酸化物(D)の量を増やすと各ヘイズ値は上がる傾向にあり、減らすと下がる傾向にある。
各ヘイズ値は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。なお、ヘイズ値H1については、接着層付き基材を対象として測定し、ヘイズ値H2については、積層体(接着層付き基材及びハードコート層)を対象として測定することができる。ヘイズ値H1及びH2は、接着層付き基材及び積層体を形成させた後にそれぞれ測定してもよい。
本実施形態の積層体は、このように構成されているため、高い耐摩耗性、密着性、及び光学特性を有する。本実施形態の積層体は、高いレベルでの耐摩耗性、密着性、及び光学特性を発現するため、特に限定されないが、例えば、建材、自動車部材、電子機器、及び電機製品等のハードコートとして有用であり、とりわけ自動車部材用とすることが好ましい。
[ハードコート層]
本実施形態におけるハードコート層(以下、「層(C)」ともいう。)は、接着層付き基材における接着層上に配され、重合体ナノ粒子(A)と、無機酸化物を含むマトリクス成分(B)とを、含む。ハードコート層は、積層体の耐久性に寄与する。なお、本明細書において、マルテンス硬度HMが100N/mm2以上である層を特に「ハードコート層」と称する。なお、本実施形態において、マトリクス成分(B)又はマトリクス原料成分(B’)に含まれる無機酸化物を「無機酸化物(D)」とも称する。無機酸化物(D)は、上述の無機酸化物(I)と同じであっても、異なっていてよい。
本実施形態において、耐摩耗性の観点から、ハードコート層は、マトリクス成分(B)に分散した重合体ナノ粒子(A)を含み、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGと、マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMHとが、HMH/HMG>1の関係を満たす。ハードコート層のマルテンス硬度HMは、100N/mm2以上であることが好ましい。
なお、マルテンス硬度HMG及びマルテンス硬度HMHの大小関係を確認し難い場合でも、重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)の凝着力を比較することで、前述したマルテンス硬度の大小関係を推定することができる。凝着力は、低いほど弾性が高いため、凝着力が低いほど塗膜は変形しにくく、硬度が高いことを表す。具体的には、好ましい層(C)は、次のように特定することもできる。すなわち、好ましい層(C)は、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス成分(B)と、を含み、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の凝着力モードで測定される、重合体ナノ粒子(A)の凝着力FAと、マトリクス成分(B)の凝着力FBとが、FA/FB>1の関係を満たし、ハードコート層のマルテンス硬度HMが、100N/mm2以上である。
本実施形態の層(C)において、重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス成分(B)に分散していることが好ましい。本実施形態における「分散」とは、重合体ナノ粒子(A)を分散相とし、マトリクス成分(B)を連続相とし、重合体ナノ粒子(A)がマトリクス成分(B)中へ均一または構造を形成しながら分布することである。分散は、ハードコート層の断面SEM観察によって確認することができる。本実施形態におけるハードコート層においては、重合体ナノ粒子(A)が、マトリクス成分(B)に分散していることにより、高い耐摩耗性を有する傾向にある。
[マルテンス硬度]
本実施形態におけるマルテンス硬度は、ISO14577-1に準拠した硬度であり、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において2mNでの押し込み深さから算出される値である。本実施形態におけるマルテンス硬度は、例えば、微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)を用いて測定でき、押し込み深さが浅い程マルテンス硬度は高く、深い程マルテンス硬度は低い。
[凝着力]
本実施形態における凝着力は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定することができ、凝着力が低いほど弾性が高いため、凝着力が低いほど塗膜は変形しにくく、硬度が高い。凝着力の測定方法は、特に限定されないが、例えば、島津製作所製SPM-970、SPM-9700HT、Bruker AXS社製Dimension ICON、及び日立ハイテクサイエンス社製AFM5000II等を用いて測定することができる。
[他の硬度]
本実施形態におけるマルテンス硬度や凝着力の大小関係は、他の硬度を指標として測定値の大小関係を確認することによっても推定することができる。他の硬度としては、材料に力が加えられた際の、材料の変形のしにくさを示す指標であれば特に限定されない。このような他の硬度としては、微小硬度計やナノインデンテーション測定機器に代表される押し込み硬度計で測定されるビッカース硬度、又はインデンテーション硬度や、剛体振り子型物性試験器に代表される振り子型粘弾性で測定される対数減衰率で表現される指標を挙げることができる。その他、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定される、位相、摩擦力、粘弾性、吸着力、硬さ、及び弾性率で表現される指標を挙げることもできる。これらの指標において、マトリクス成分(B)の硬度が重合体ナノ粒子(A)の硬度よりも高いことが確認されれば、マルテンス硬度や凝着力についても、マトリクス成分(B)の方が重合体ナノ粒子(A)よりも硬質であることが推定される。
[重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGとマトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMH
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGと、マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMHとは、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
HMH/HMG>1 式(1)
式(1)は、柔軟な重合体ナノ粒子(A)が硬質なマトリクス成分(B)中に存在することを表しており、このように硬度が3次元的に傾斜をもつことで、層(C)は、従来の塗膜では発現しなかったような耐摩耗性を付与できる傾向にある。この要因としては、特に限定する趣旨ではないが、柔軟なナノ粒子が衝撃を吸収し、硬質なマトリクス成分が変形を抑制しているためと推察される。HMGの範囲としては、衝撃吸収性の観点から、50N/mm2以上が好ましく、100N/mm2以上がより好ましく、成膜性の観点から2000N/mm2以下が好ましく、800N/mm2以下がより好ましく、350N/mm2以下が更に好ましい。HMHの範囲としては衝撃吸収性の観点から100N/mm2以上が好ましく、150N/mm2以上がより好ましく、成膜性の観点から4000N/mm2以下が好ましく、2000N/mm2以下がより好ましい。
なお、層(C)は、後述するハードコート層組成物を加水分解縮合等により硬化させた硬化物として得ることができる。重合体ナノ粒子(A)は、かかる硬化の過程においてその組成は変化しないことが通常である。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定されるハードコート層組成物中の重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGの値は、層(C)中の重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGによく一致するものとして、層(C)におけるマルテンス硬度HMGの値を決定することができる。
また、マトリクス成分(B)は、後述するマトリクス原料成分(B’)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物に該当する。したがって、後述する実施例に記載された方法により測定されるマトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMH'の値は、対応するマトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMHによく一致するものとして、マルテンス硬度HMHの値を決定することができる。
上記HMG及びHMHの値は、それぞれ、重合体ナノ粒子(A)及び後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
[重合体ナノ粒子(A)の凝着力FAとマトリクス成分(B)の凝着力FB
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の凝着力FAと、マトリクス成分(B)の凝着力FBとは、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
A/FB>1 式(2)
上記式(1)と同様に、式(2)も柔軟な重合体ナノ粒子(A)が硬質なマトリクス成分(B)中に存在することを表しており、このように硬度が3次元的に傾斜をもつことで、層(C)は、従来の塗膜では発現しなかったような耐摩耗性を付与できる傾向にある。この要因としては、特に限定する趣旨ではないが、柔軟なナノ粒子が衝撃を吸収し、硬質なマトリクス成分が変形を抑制しているためと推察される。
上述のとおり、重合体ナノ粒子(A)の凝着力FA及びマトリクス成分(B)の凝着力FBとは各成分の硬度と相関があり、重合体ナノ粒子(A)及び後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
[層(C)のマルテンス硬度HM]
層(C)のマルテンス硬度HMは、耐摩耗性の観点から100N/mm2以上であり、高いほど衝撃に対し変形が少なく、破壊を伴う傷付きが少ない点で有利である。層(C)のマルテンス硬度HMは、好ましくは100N/mm2以上であり、より好ましくは150N/mm2以上であり、更に好ましくは200N/mm2以上であり、耐屈曲性の観点から、好ましくは4000N/mm2以下、より好ましくは2000N/mm2以下、更に好ましくは1500N/mm2以下である。層(C)のマルテンス硬度HMを上記範囲内に調整するための方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。特に、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)の合計量に対するマトリクス成分(B)の含有量を増やすと、層(C)のマルテンス硬度HMは上がる傾向にあり、マトリクス成分(B)の含有量を減らすと層(C)のマルテンス硬度HMは下がる傾向にある。
[テーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量]
本実施形態におけるテーバー摩耗試験とは、ASTM D1044に記載の方法で測定される方法に準じており、摩耗輪CS-10F、荷重500gの条件下で測定を実施する。ヘイズ変化量が小さいほど耐摩耗性に優れた材料となり、試験前におけるヘイズに対する500回転におけるヘイズ変化量、すなわち回転数500回におけるヘイズと前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が10以下であれば、ECE R43のリアクオーターガラスの規格に適合し、4以下であれば、ANSI/SAE Z.26.1の規格に適合し、自動車用窓材として好適に使用可能である。また、1000回転におけるヘイズ変化量、すなわち、回転数1000回におけるヘイズと前記テーバー摩耗試験前のヘイズとの差が10以下であれば、自動車窓の規格に適合し、自動車用窓材として好適に使用でき、2以下であればANSI/SAE Z.26.1、ECE R43、JIS R3211/R3212の規格に適合し、全ての自動車用窓材に好適に使用可能である。1000回転におけるヘイズ変化量が10以下であれば好ましく、6以下であればより好ましく、2以下であれば、更に好ましい。ヘイズ変化量を上記範囲内に調整するための方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。
[層(C)の弾性回復率ηIT
層(C)の弾性回復率ηITは、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比であり、ISO14577-1で「Welast/Wtotalの比ηIT」として記載されているパラメータである。弾性回復率ηITが高いほど、塗膜が変形した際、元の状態に戻ることが可能であり、変形に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、弾性回復率ηITは、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.50以上であることが好ましく、この範囲であれば値が大きいほど好ましい。より具体的には、弾性回復率ηITが0.55以上であるとより好ましく、更に好ましくは0.60以上であり、より更に好ましくは0.65以上である。本実施形態における塗膜の弾性回復率の測定は、特に制限されないが、例えば、ハードコート層の表面を、微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)、などを用いて押し込み試験を行うことで測定することができる。弾性回復率ηITを上記範囲内に調整するための方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する式(3)で表される所定の関係を満たす、重合体ナノ粒子(A)と後述するマトリクス原料成分(B’)を混合した組成物を溶媒中で分散、溶解させた塗料組成物を、基材上に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することが挙げられる。
[層(C)の膜厚]
本実施形態において、ハードコート層の耐摩耗性を一層発現させる観点と、基材の変形への追従性を十分に確保する観点から、膜厚を適宜調整することが好ましい。具体的には、層(C)の膜厚は、耐摩耗性の観点から1.0μm以上であることが好ましく、より好ましくは3.0μm以上である。更に、層(C)の膜厚は、基材追従性の観点から100.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは50.0μm以下、さらに好ましくは20.0μm以下である。
[重合体ナノ粒子(A)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)を用いることにより、ハードコート層に衝撃吸収性を付与でき、ハードコート層のテーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量を小さくできる傾向にある。重合体ナノ粒子(A)は、その粒子サイズがnmオーダー(1μm未満)であれば形状は特に限定されない。なお、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGについては、重合体ナノ粒子(A)の構成成分の構造及び組成比により、前述した範囲に制御できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
[重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径は、nmオーダー(1μm未満)であれば特に限定されず、断面SEM又は動的光散乱法により観測される粒子の大きさから求められる。重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径は、光学特性の観点から10nm以上であることが好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上がより好ましく、透明性の観点から400nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径の測定方法は、特に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)水分散体を用いて大塚電子株式会社製動的光散乱式粒度分布測定装置(品番:ELSZ-1000)によりキュムラント粒子径を測定することで可能である。
[層(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率]
本実施形態において、層(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率は成膜性の観点から、好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上であり、更に好ましくは5%以上であり、透明性の観点から、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下であり、更に好ましくは45%以下である。層(C)中の重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、例えば、層(C)の断面SEM画像における塗膜全体の中での重合体ナノ粒子(A)の割合や、層(C)を構成させる成分中の重合体ナノ粒子(A)の成分比から算出することができる。
[重合体ナノ粒子(A)の構成成分]
[加水分解性珪素化合物(a)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、加水分解性珪素化合物(a)を含むことが好ましい。加水分解性珪素化合物(a)は、加水分解性を有する珪素化合物、その加水分解生成物、及び縮合物であれば、特に限定されない。
加水分解性珪素化合物(a)は、耐摩耗性や耐候性が向上する観点から、下記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物、及び縮合物であることが好ましい。
-R1 n1SiX1 3-n1 (a-1)
式(a-1)中、R1は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、R1は、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、X1は、加水分解性基を表し、n1は、0~2の整数を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、このような基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
式(a-1)で表される原子団を含有する化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシラン、ヘキシルトリエトキシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,3-ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,7-ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、2-[(トリエトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2-[(トリメトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノンなどが挙げられる。
加水分解性珪素化合物(a)は、ハードコート層に高い硬度を付与でき、より耐摩耗性が向上する観点から、下記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物、及び縮合物を含むことが好ましい。
SiX2 4 (a-2)
式(a-2)中、X2は、加水分解性基を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
式(a-2)で表される化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(i-ブトキシ)シラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラ(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業社製の商品名「Mシリケート51」、「シリケート35」、「シリケート45」、「シリケート40」、「FR-3」;三菱化学社製の商品名「MS51」、「MS56」、「MS57」、「MS56S」;コルコート社製の商品名「メチルシリケート51」、「メチルシリケート53A」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」、「EMS-485」、「N-103X」、「PX」、「PS-169」、「PS-162R」、「PC-291」、「PC-301」、「PC-302R」、「PC-309」、「EMSi48」)などが挙げられる。
以上のとおり、本実施形態において、加水分解性珪素化合物(a)が、上記式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
[重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量]
本実施形態における加水分解性珪素化合物(a)の含有量とは、重合体ナノ粒子(A)中に含まれる加水分解性珪素化合物(a)の固形分質量割合を示し、含有量が高いほど耐摩耗性や耐候性、耐熱性が向上する観点から、含有量が高いほど好ましく、含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、特に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)のIR解析、NMR解析、元素分析等で測定することができる。
[マトリクス成分(B)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)を用いることにより、ハードコート層に衝撃吸収性を付与でき、ハードコート層のテーバー摩耗試験におけるヘイズ変化量を小さくできる。マトリクス成分(B)の硬度HMHについては、後述するマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比により、前述した範囲に制御できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
[マトリクス成分(B)の構成成分]
[加水分解性珪素化合物(b)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)は、重合体ナノ粒子(A)が分散できるような成分であれば特に限定されない。本実施形態において、高靭性の観点から、マトリクス成分(B)は、加水分解性珪素化合物(b)を含むことが好ましい。本明細書において、「マトリクス成分(B)が加水分解性珪素化合物(b)を含む」とは、マトリクス成分(B)が、加水分解性珪素化合物(b)に由来する構成単位を有する高分子を含むことを意味する。加水分解性珪素化合物(b)は、加水分解性を有する珪素化合物、その加水分解生成物、及び縮合物であれば、特に限定されない。
マトリクス成分(B)としては、重合体ナノ粒子(A)を除く様々な成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、高分子が挙げられる。高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の水溶性樹脂;PMMA、PAN、ポリアクリルアミド等のアクリル樹脂;ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、PTFE、PVDF、EVA等のポリマー;及びこれらのコポリマー等が挙げられる。
加水分解性珪素化合物(b)は、耐摩耗性及び耐候性が一層向上する観点から、下記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物、及び縮合物、並びに下記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物、及び縮合物からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
-R2 n2SiX3 3-n2 (b-1)
式(b-1)中、R2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表し、R2は、ハロゲン、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、又はエポキシ基を含有する置換基を有していてもよく、X3は、加水分解性基を表し、n2は、0~2の整数を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、そのような基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
SiX4 4 (b-2)
式(b-2)中、X4は、加水分解性基を表す。加水分解性基は、加水分解により水酸基が生じる基であれば特に限定されず、そのような基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基などが挙げられる。
一般式(b-1)で表される原子団を含む化合物の具体例としては、特に限定されないが、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシラン、ヘキシルトリエトキシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,3-ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,7-ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、2-[(トリエトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2-[(トリメトキシシリル)プロピル]ジベンジルレゾルシノール、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ピペリジン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]ベンゾフェノンなどが挙げられる。
式(b-2)で表される化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(i-ブトキシ)シラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラ(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業社製の商品名「Mシリケート51」、「シリケート35」、「シリケート45」、「シリケート40」、「FR-3」;三菱化学社製の商品名「MS51」、「MS56」、「MS57」、「MS56S」;コルコート社製の商品名「メチルシリケート51」、「メチルシリケート53A」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」、「EMS-485」、「N-103X」、「PX」、「PS-169」、「PS-162R」、「PC-291」、「PC-301」、「PC-302R」、「PC-309」、「EMSi48」)などが挙げられる。
以上のとおり、本実施形態において、加水分解性珪素化合物(b)が、上記式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに上記式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
本実施形態において、「重合体ナノ粒子(A)に含まれる加水分解性珪素化合物(a)」は、「マトリクス成分(B)に含まれる加水分解性珪素化合物(b)」と同一種のものであってもよく、別種のものであってもよい。両者が同一種である場合であっても、重合体ナノ粒子(A)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(a)とし、マトリクス成分(B)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(b)とすることで区別するものとする。
[無機酸化物(D)]
本実施形態におけるマトリクス成分(B)は、無機酸化物(D)を含む。無機酸化物(D)を含むことにより、マトリクス成分(B)の硬度を向上させ耐摩耗性が向上する。また、無機酸化物(D)の粒子表面の水酸基の親水性によって塗膜の耐汚染性が向上する傾向にある。
本実施形態における無機酸化物(D)の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、セリウム、スズ、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、モリブデン、ニオブ、マグネシウム、ビスマス、コバルト、及び銅などの酸化物が挙げられる。これらは形状を問わず、単独で用いてもよく、混合物として用いてもよい。無機酸化物(D)としては、加水分解性珪素化合物(b)との相互作用の観点から、乾式シリカやコロイダルシリカに代表されるシリカ粒子を更に含むことが好ましく、分散性の観点から、シリカ粒子の形態としてコロイダルシリカを更に含むことが好ましい。無機酸化物(D)がコロイダルシリカを含む場合、水分散体の形態であることが好ましく、酸性、及び塩基性のいずれであっても用いることができる。
また、本実施形態において、無機酸化物(D)は、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co、及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分(以下、単に「無機成分」ともいう。)を含有することが好ましい。無機酸化物(D)が当該無機成分を含むことにより、耐摩耗性と耐久性を損ねることなく耐候性が向上する傾向にある。特に限定されないが、市販品を利用する場合、例えば、CIKナノテック株式会社製の酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、酸化錫、及び酸化チタンの超微粒子マテリアル製品;多木化学社製の酸化チタン「タイノック」(登録商標)、酸化セリウム「ニードラール」(登録商標)、酸化錫「セラメース」(登録商標)、酸化ニオブゾル、及び酸化ジルコニウムゾルが挙げられる。耐候性向上性能の観点から、無機酸化物(D)が、Ce、Nb、Zn、Ti、及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含むことが好ましく、Ceを含むことがより好ましい。
本実施形態における無機酸化物(D)は、耐摩耗性、耐久性、及び耐候性のバランスの観点から、Ce、Nb、Zn、Ti、及びZrからなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物(D’)を含有することが好ましい。ハードコート塗膜中における無機酸化物(D’)の含有量は、特に限定されないが、耐摩耗性、耐久性、及び耐候性のバランスの観点から、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上である。また、透明性の観点から、上記含有量は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下である。ここで、上記含有量は、ハードコート塗膜を100質量%としたときのCe、Nb、Zn、Ti、及びZrの総量として特定することができる。
[無機酸化物(D)の平均粒子径]
本実施形態における無機酸化物(D)の平均粒子径は、ハードコート層組成物の貯蔵安定性がより良好となる観点から、2nm以上であることが好ましい。積層体全体としての透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下である。このため、平均粒子径は、好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下である。無機酸化物の平均粒子径(D)の測定方法は、特に限定されないが、例えば、水分散性コロイダルシリカに対し、透過型顕微鏡写真を用いて50,000~100,000倍に拡大して観察し、粒子として100~200個の無機酸化物が写るように撮影して、その無機酸化物粒子の長径及び短径の平均値から測定することができる。
[無機酸化物(D)に含まれうるコロイダルシリカ]
本実施形態で好適に用いられる水を分散溶媒とする酸性のコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、ゾル-ゲル法で調製して使用することもでき、市販品を利用することもできる。ゾル-ゲル法で調製する場合には、Werner Stober etal;J.Colloid and Interface Sci.,26,62-69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792-801(1990)、色材協会誌,61[9]488-493(1988)などを参照できる。市販品を利用する場合、例えば、スノーテックス(登録商標)-O、スノーテックス-OS、スノーテックス-OXS(水分散性コロイダルシリカ)、スノーテックス-O-40、スノーテックス-OL、スノーテックスOYL、スノーテックス-OUP、スノーテックス-PS-SO、スノーテックス-PS-MO、スノーテックス-AK-XS、スノーテックス-AK、スノーテックス-AK-L、スノーテックス-AK-YL、スノーテックス-AK-PS-S(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライト(登録商標)AT-20Q(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール20H12、クレボゾール30CAL25(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)などが挙げられる。
また、塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンの添加で安定化したシリカがあり、特に限定されないが、例えば、スノーテックス(登録商標)-20、スノーテックス-30、スノーテックス-XS、スノーテックス-50、スノーテックス-30L、スノーテックス-XL、スノーテックス-YL、スノーテックスZL、スノーテックス-UP、スノーテックス-ST-PS-S、スノーテックスST-PS-M、スノーテックス-C、スノーテックス-CXS、スノーテックス-CM、スノーテックス-N、スノーテックス-NXS、スノーテックス-NS、スノーテックス-N-40(商品名、日産化学工業株式会社製)、アデライト(登録商標)AT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-30N、アデライトAT-20A、アデライトAT-30A、アデライトAT-40、アデライトAT-50(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50(商品名、クラリアントジャパン株式会社製)、ルドックス(登録商標)HS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、ルドックスAS-30、ルドックスSM-AS、ルドックスAM、ルドックスHSA及びルドックスSM(商品名、デュポン社製)などが挙げられる。
また、水溶性溶媒を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、特に限定されないが、例えば、日産化学工業株式会社製MA-ST-M(粒子径が20~25nmのメタノール分散タイプ)、IPA-ST(粒子径が10~15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EGST-ZL(粒子径が70~100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC-ST(粒子径が10~15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)、及びTOL-ST(粒子径が10~15nmのトルエン分散タイプ)(以上、商品名)などが挙げられる。
乾式シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、日本アエロジル株式会社製 AEROSIL(登録商標)、株式会社トクヤマ製レオロシール(登録商標)などが挙げられる。
また、これらシリカ粒子は、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミンなど)を含んでいてもよい。
[無機酸化物(D)の形状]
さらに、本実施形態における無機酸化物(D)の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、角状、多面体形状、楕円状、扁平状、線状、数珠状、及び鎖状などが挙げられる。形状としては、ハードコート層の硬度及び透明性の観点から、球状であることが特に好ましい。
[官能基(e)]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス成分(B)中への重合体ナノ粒子(A)の分散性が向上し、耐摩耗性を向上させることができる観点から、マトリクス成分(B)と相互作用する官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有することは、例えば、IR、GC-MS、熱分解GC-MS、LC-MS、GPC、MALDI-MS、TOF-SIMS、TG-DTA、NMRによる組成解析、及びこれらの組み合わせによる解析等により確認することができる。
本実施形態における官能基(e)の具体例としては、特に限定されないが、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エーテル結合からなる官能基が挙げられ、相互作用の観点から水素結合を有する官能基であることが好ましく、高い水素結合性の観点から、アミド基であることがより好ましく、2級アミド基及び/又は3級アミド基であることが更に好ましい。
官能基(e)を含有している化合物及びその反応物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、PME-100、PME-200、PME-400、AE-350(商品名、日本油脂社製)、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(商品名、日本乳化剤社製)などが挙げられる。なお、本明細書中で、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタアクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタアクリル酸を簡便に表記したものである。
[重合体ナノ粒子(A)のコア/シェル構造]
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)は、コア層と、コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)は、コア/シェル構造の最外層におけるマトリクス成分(B)との相互作用の観点から、官能基(e)を有することが好ましい。
[重合体ナノ粒子(A)に含んでもよいその他の化合物]
本実施形態による重合体ナノ粒子(A)は、粒子間の静電反発力をもたせることで粒子の安定性を向上させる観点から、以下に示す重合体を含んでもよい。例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアセテート系、ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系の重合体、又はポリ(メタ)アクリレート-シリコーン系、ポリスチレン-(メタ)アクリレート系、スチレン無水マレイン酸系の共重合体が挙げられる。
上述の重合体ナノ粒子(A)に含んでもよい重合体の中でも、静電反発に特に優れる化合物として、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートの重合体又は共重合体が挙げられる。具体例としては、特に限定されないが、メチルアクリレート、(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体が挙げられる。この際、(メタ)アルクリ酸は、静電反発力をさらに向上させるために、一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンなどのアミン類や、NaOH、KOHなどの塩基で中和してもよい。
また、重合体ナノ粒子(A)は乳化剤を含んでもよい。乳化剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸)、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸などの酸性乳化剤;酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K、など)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレートなどの四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンボロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルなどのノニオン型界面活性剤やラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤などが挙げられる。
前記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エレミノール(登録商標)JS-2(商品名、三洋化成株式会社製)、ラテムル(登録商標)S-120、S-180A又はS-180(商品名、花王株式会社製)、アクアロン(登録商標)HS-10、KH-1025、RN-10、RN-20、RN30、RN50(商品名、第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープ(登録商標)SE1025、SR-1025、NE-20、NE-30、NE-40(商品名、旭電化工業株式会社製)、p-スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、p-スチレンスルホン酸のナトリウム塩、p-スチレンスルホン酸のカリウム塩、2-スルホエチルアクリレートなどのアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸のアンモニウム塩、アリルスルホン酸のナトリウム塩、アリルスルホン酸のカリウム塩などが挙げられる。
重合体ナノ粒子(A)は、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムなどの水溶性重合開始剤が挙げられる。
[層(C)に含んでもよいその他の成分]
本実施形態の層(C)は、用途に応じて、マトリクス成分(B)として、溶媒、乳化剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、触媒を含んでもよい。特に屋外用途では高い耐候性が求められることから、紫外線吸収剤、及び光安定剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤及び光安定剤の具体例としては、特に限定されないが、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL(登録商標)3049」)、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(BASF社製の商品名「UVINUL3050」)、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-ベンゾイルー2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン、及び4,6-ジベンゾイルレゾルチノールなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル-3-〔3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(BASF社製の商品名「TINUVIN(登録商標)1130」)、イソオクチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(BASF社製の商品名「TINUVIN384」)、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製の商品名「TINUVIN571」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製の商品名「TINUVIN900」)、TINUVIN384-2、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN109、TINUVIN970、TINUVIN328、TINUVIN171、TINUVIN970、TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN99-2、及びTINVIN928(商品名、BASF社製)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシー4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN460」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「TINUVIN479」)、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN477、及びTINUVIN1600(商品名、BASF社製)などのトリアジン系紫外線吸収剤;HOSTAVIN(登録商標) PR25、HOSTAVIN B-CAP、及びHOSTAVIN VSU(商品名、クラリアント社製)などのマロン酸エステル系紫外線吸収剤;HOSTAVIN3206 LIQ、HOSTAVINVSU P、及びHOSTAVIN3212 LIQ(商品名、クラリアント社製)などのアニリド系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、及びp-イソプロパノールフェニルサリシレートなどのサリシレート系紫外線吸収剤;エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3035」)、(2-エチルヘキシル)-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(BASF社製の商品名「UVINUL3039」、及び1,3-ビス((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)-2,2-ビス-(((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン(BASF社製の商品名「UVINUL3030)などのシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-ジエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-トリエトキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製の商品名「RUVA-93」)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチル-3-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリリルオキシプロピル-3-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-〔3’-(2’’-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー株式会社製の商品名「CGL-104」)などの分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤;UV-G101、UV-G301、UV-G137、UV-G12、及びUV-G13(日本触媒株式会社製の商品名)などの紫外線吸収性を有する重合体;ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-セバケートの混合物(BASF社製の商品名「TINUVIN292」)、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN152、TINUVIN249、TINUVIN292、及びTINUVIN5100(商品名、BASF社製)などのヒンダードアミン系光安定剤;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,-テトラメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、及び4-シアノ-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートなどのラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤;ユーダブル(登録商標)E-133、ユーダブルE-135、ユーダブルS-2000、ユーダブルS-2834、ユーダブルS-2840、ユーダブルS-2818、及びユーダブルS-2860(商品名、日本触媒株式会社製)などの光安定性を有する重合体;シラノール基、イソシアネート基、エポキシ基、セミカルバジド基、ヒドラジド基との反応性を有する紫外線吸収剤;酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、酸化スズ、及び酸化チタンなどの無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらは1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
[ハードコート層の透明性]
本実施形態において、ハードコート層の透明性は、外観変化の観点から、下記式で得られる全光線透過率維持率で評価することができる。本実施形態において、ハードコート層の全光線透過率維持率は、90%以上が好ましく、採光確保の観点から95%以上がより好ましく、材料越しにおける視認性確保の観点から98%以上がとりわけ好ましい。ハードコート層の全光線透過率維持率は、例えば、重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)として前述した好ましい態様を採用することで、上記した範囲に調整することができる。
ハードコート層の全光線透過率維持率(%)=(積層体の全光線透過率(%)/基材の全光線透過率(%)) × 100
<ハードコート層組成物>
本実施形態において、層(C)は、例えば、ハードコート層組成物を用いることで好ましく得られる。ハードコート層組成物は、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス原料成分(B’)と、を含む組成物である。ハードコート層組成物は、ISO14577-1に準拠し、インデンテーション試験法に基づいて測定される、重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAが、0.30以上0.90以下であり、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGと、マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMH'とが、HMH'/HMG>1の関係を満たし、マトリクス原料成分(B’)が、無機酸化物(D)を含むことが好ましい。
ハードコート層組成物における無機酸化物(D)は、Ce、Nb、Al、Zn、Ti、Zr、Sb、Mg、Sn、Bi、Co、及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の無機成分を含有することが好ましい。
ハードコート層組成物に含まれる各成分については、以下で言及のない点についての詳細は、層(C)に含まれる各成分について前述したとおりである。
[重合体ナノ粒子(A)の硬度HMGとマトリクス原料成分(B’)の硬度HMH'
ハードコート層組成物において、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGと、マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMH'とは、下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
HMH'/HMG>1 式(3)
上記のとおり、ハードコート層組成物において、上記関係が満たされるため、ハードコート層組成物を用いることで得られる層(C)において、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGと、マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMH'も上記式(3)関係を満たすこととなる。ハードコート層組成物における各マルテンス硬度は、例えば、遠心分離、限外濾過等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離された各成分に対し、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。測定方法は、上述を参照してもよい。
上記HMG及びHMH'の値は、それぞれ、重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比等により、前述した大小関係となるように調整できるが、特にこの方法に限定されるものではない。
[重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITA
本実施形態における重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは、ISO14577-1でWelast/Wtotalの比ηITとして記載されているパラメータを、成膜した重合体ナノ粒子(A)の塗膜で測定したものであり、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比で示される。弾性回復率ηITAが高いほど、塗膜が衝撃を受けた際、元の状態に戻ることが可能であり、衝撃に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.30以上であることが好ましく、塗膜にする際の基材やマトリクス原料成分(B’)の変形に追従できる観点からηITAは0.90以下であることが好ましい。重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAは0.50以上であるとより好ましく、0.60以上であれば更に好ましい。重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率の測定は、特に限定されないが、例えば、遠心分離、限外濾過等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離された重合体ナノ粒子(A)を溶媒中に分散させて得られる組成物を塗装し、乾燥させて成膜した塗膜を微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)等を用いて測定することができる。弾性回復率ηITAを上記範囲内に調整するための方法としては、特に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)の構成成分の構造及び組成比を調整すること等が挙げられる。
なお、層(C)は、ハードコート層組成物を加水分解縮合等により硬化させた硬化物として得ることができる。重合体ナノ粒子(A)は、かかる硬化の過程においてその組成は変化しないことが通常である。したがって、ハードコート層組成物中の重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAの値は、層(C)中の重合体ナノ粒子(A)の弾性回復率ηITAによく一致するものとして、層(C)における弾性回復率ηITAの値を決定することができる。
[溶媒(H)]
本実施形態におけるハードコート層組成物は、溶媒(H)を含有することが好ましい。使用可能な溶媒(H)は、特に限定されず、一般的な溶媒を用いることができる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;エチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、エタノール、メタノール、変性エタノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコールグリセリン、モノアルキルモノグリセリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノフェニルエーテルテトラエチレングリコールモノフェニルエーテルなどのアルコール類;トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、及び酢酸n-ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、及びジオキサンなどのエーテル類;ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミドなどのアミド類;クロロホルム、塩化メチレン、及び四塩化炭素などのハロゲン化合物類;ジメチルスルホキシド、及びニトロベンゼン;などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用しても構わない。その中で、溶媒除去時の環境負荷低減の観点から、水、アルコール類を含む方がより好ましい。
以下、ハードコート層組成物に含まれる重合体ナノ粒子(A)の構成成分、サイズ、組成比等について説明するが、以下で言及のない点についての詳細は層(C)に含まれる重合体ナノ粒子(A)について前述したとおりである。
また、ハードコート層組成物に含まれるマトリクス原料成分(B’)は、層(C)を得る過程において、加水分解縮合等により硬化される。すなわち、ハードコート層組成物に含まれるマトリクス原料成分(B’)は、得られる層(C)中において、対応するマトリクス成分(B)となる関係にある。以下では、マトリクス原料成分(B’)の構成成分、サイズ、組成比等についても説明するが、以下で言及のない点についての詳細は、層(C)に含まれるマトリクス成分(B)について前述したとおりである。
ハードコート層組成物において、重合体ナノ粒子(A)が、加水分解性珪素化合物(a)を含み、マトリクス原料成分(B’)が、加水分解性珪素化合物(b)を含むことが好ましい。また、ハードコート層組成物における加水分解性珪素化合物(a)としても、式(a-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに式(a-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。同様に、ハードコート層組成物における加水分解性珪素化合物(b)としても、式(b-1)で表される原子団を含有する化合物、その加水分解生成物及び縮合物、並びに式(b-2)で表される化合物、その加水分解生成物及び縮合物より選択される1種以上を含むことが好ましい。
ハードコート層組成物における加水分解性珪素化合物(a)及び(b)の詳細については、層(C)に含まれる重合体ナノ粒子(A)及びマトリクス成分(B)について上述したとおりである。
[重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量]
ハードコート層組成物において、加水分解性珪素化合物(a)の含有量とは、重合体ナノ粒子(A)中に含まれる加水分解性珪素化合物(a)の固形分質量割合を示し、含有量が高いほど耐摩耗性や耐候性、耐熱性が向上する観点から、含有量が高いほど好ましい。含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。重合体ナノ粒子(A)中の加水分解性珪素化合物(a)の含有量は、特に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)のIR解析、NMR解析、元素分析、などで測定することができる。
[官能基(e)]
ハードコート層組成物において、重合体ナノ粒子(A)は、マトリクス原料成分(B’)と相互作用する官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有する場合、重合体ナノ粒子(A)の表面にマトリクス原料成分(B’)が吸着しやすくなり、保護コロイドとなって安定化する傾向にある。その結果として、ハードコート層組成物の貯蔵安定性が向上する傾向にある。さらに、重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有する場合、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)との間の相互作用が強くなることで、ハードコート層組成物の固形分濃度に対する増粘性が高まり、複雑な形状への塗装時におけるタレが抑制される傾向にあり、結果として層(C)の膜厚が均一となる傾向にある。重合体ナノ粒子(A)が官能基(e)を有することは、例えば、IR、GC-MS、熱分解GC-MS、LC-MS、GPC、MALDI-MS、TOF-SIMS、TG-DTA、NMRによる組成解析、及びこれらの組み合わせによる解析等により確認することができる。
本実施形態における官能基(e)の具体例としては、特に限定されないが、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、及びエーテル結合からなる官能基が挙げられ、相互作用の観点から水素結合を有する官能基であることが好ましく、高い水素結合性の観点から、アミド基であることがより好ましく、2級アミド基及び/又は3級アミド基であることが更に好ましい。
官能基(e)を含有している化合物及びその反応物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、PME-100、PME-200、PME-400、AE-350(商品名、日本油脂社製)、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(商品名、日本乳化剤社製)などが挙げられる。なお、本明細書中で、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタアクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタアクリル酸を簡便に表記したものである。
[マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB'及びマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITB
ハードコート層組成物において、マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB'は、ISO14577-1で「Welast/Wtotalの比ηIT」として記載されているパラメータで、成膜したマトリクス原料成分(B’)の塗膜を測定したものであり、くぼみの全機械的仕事量Wtotalとくぼみの弾性戻り変形仕事量Welastとの比で示される。弾性回復率ηITB'が高いほど、塗膜が衝撃を受けた際、元の状態に戻ることが可能であり、衝撃に対する自己修復能が高い。自己修復能を効果的に発揮する観点から、マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB'は、測定条件(ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件2mN/20sec、荷重の減少条件2mN/20sec)において0.60以上が好ましく、より好ましくは0.65以上である。また、塗膜にする際の基材や重合体ナノ粒子(A)の変形に追従できる観点から、ηITB'は0.95以下であることが好ましい。マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率の測定は、特に限定されないが、例えば、遠心分離等の操作により重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)とを分離し、分離されたマトリクス原料成分(B’)を溶媒中に溶解させた組成物を塗装し、乾燥させて成膜した塗膜を微小硬度計フィッシャースコープ(フィッシャー・インストルメンツ社製HM2000S)、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス社製ENT-NEXUS)、ナノインデンター(東陽テクニカ社製iNano、G200)、ナノインデンテーションシステム(ブルカー社製TI980)等を用いて測定することができる。
なお、前述したとおり、マトリクス原料成分(B’)を加水分解縮合等により硬化させた硬化物がマトリクス成分(B)に該当する。したがって、マトリクス原料成分(B’)の弾性回復率ηITB'の値は、対応するマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITBによく一致するものとして、弾性回復率ηITBの値を決定することができる。すなわち、本実施形態におけるマトリクス成分(B)の弾性回復率ηITBは、0.60以上が好ましく、より好ましくは0.65以上である。また、塗膜にする際の基材や重合体ナノ粒子の変形に追従できる観点から、ηITBは0.95以下であることが好ましい。
弾性回復率ηITB'及び弾性回復率ηITBを上記範囲内に調整するための方法としては、特に限定されないが、例えば、マトリクス原料成分(B’)の構成成分の構造及び組成比を調整すること等が挙げられる。
ハードコート層組成物において、「重合体ナノ粒子(A)に含まれる加水分解性珪素化合物(a)」は、「マトリクス原料成分(B’)に含まれる加水分解性珪素化合物(b)」と同一種のものであってもよく、別種のものであってもよい。両者が同一種である場合であっても、重合体ナノ粒子(A)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(a)とし、マトリクス原料成分(B’)に含まれる方を加水分解性珪素化合物(b)とすることで区別するものとする。
[無機酸化物(D)]
ハードコート層組成物において、マトリクス原料成分(B’)は、無機酸化物(D)を含む。無機酸化物(D)を含むことにより、マトリクス原料成分(B’)の硬度を向上させ耐摩耗性が向上するだけでなく、粒子表面の水酸基の親水性により、塗膜の耐汚染性が向上する傾向にある。
ハードコート層組成物における無機酸化物(D)としては、形状を問わず、単体であっても混合物でもよい。加水分解性珪素化合物(b)との相互作用の観点から、シリカ粒子を更に含むことが好ましく、分散性の観点から、シリカ粒子の形態としてコロイダルシリカを更に含むことが好ましい。無機酸化物(D)がコロイダルシリカを含む場合、水分散体の形態であることが好ましく、酸性、塩基性のいずれであっても用いることができる。
ハードコート層組成物における無機酸化物(D)の平均粒子径は、ハードコート層組成物の貯蔵安定性が良好となる観点から、2nm以上であることが好ましい。積層体全体としての透明性が良好となる観点から、150nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下である。このため、平均粒子径は、好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下である。ハードコート層組成物における無機酸化物(D)の平均粒子径の測定方法としては、層(C)に含まれる無機酸化物(D)について上述したとおりである。
ハードコート層組成物における無機酸化物(D)のその余の特徴としては、層(C)に含まれる無機酸化物(D)について上述したとおりである。
[重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率]
ハードコート層組成物において、重合体ナノ粒子(A)とマトリクス原料成分(B’)の合計に対する重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、成膜性の観点から、好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上であり、更に好ましくは5%以上であり、透明性の観点から、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下であり、更に好ましくは45%以下である。ハードコート層組成物における重合体ナノ粒子(A)の体積分率は、例えば、層(C)とした後の断面SEM画像における塗膜全体の中での重合体ナノ粒子(A)の割合や、ハードコート層組成物を構成させる成分中の重合体ナノ粒子(A)の成分比から算出することができる。
[重合体ナノ粒子(A)のコア/シェル構造]
ハードコート層組成物において、重合体ナノ粒子(A)は、コア層と、コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)は、コア/シェル構造の最外層におけるマトリクス原料成分(B’)との相互作用の観点からも、前述した官能基(e)を有することが好ましい。重合体ナノ粒子(A)が、コア/シェル構造を有することは、例えば、塗膜断面の透過型電子顕微鏡画像等により確認することができる。
[ハードコート層組成物に含まれてもよいその他の成分]
ハードコート層組成物の塗装性をより向上させる観点から、ハードコート層組成物は、マトリクス原料成分(B’)として、上述した成分に加え、必要に応じて、湿潤剤、成膜助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、レべリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、分散剤、湿潤剤、レオロジーコントロール剤、防錆剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、静電防止剤、及び帯電防止剤などを配合することができる。
成膜性向上の観点から、湿潤剤及び成膜助剤を用いることが好ましい。湿潤剤及び成膜助剤としては、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ブタンジオールイソブチレート、グルタル酸ジイソプロピル、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、メガファック(登録商標)F-443、F-444、F-445、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-489、F-172D、及びF-178K(以上、商品名、DIC株式会社製)、SNウェット366、SNウェット980、SNウェットL、SNウェットS、SNウェット125、SNウェット126、及びSNウェット970(以上、商品名、サンノプコ株式会社製)などが挙げられる。これらの化合物は、1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
[紫外線吸収剤]
ハードコート層の耐候性をより向上させる観点から、ハードコート層組成物には、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含んでいてもよい。このような紫外線吸収剤及び光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、層(C)に含んでもよいその他の成分として、例示した紫外線吸収剤、及び光安定剤を適宜採用することができる。
[触媒]
ハードコート層組成物は、マトリクス原料成分(B’)として、触媒を含んでいてもよい。ハードコート層組成物が反応性基同士の反応を促進する触媒を含む場合、塗膜中に未反応性基が残存しにくく、硬度が高くなり耐摩耗性が向上するだけでなく、耐候性も向上する点で好ましい。触媒は、特に限定されないが、ハードコート層の塗膜を得る際に、溶解もしくは分散するものが好ましい。そのような触媒としては、特に限定されないが、例えば、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、金属アルコキシド、及び金属キレートなどが挙げられる。これら触媒は、1種単独で、もしくは2種以上を併用しても構わない。
[ハードコート層組成物の性状]
ハードコート層組成物は、塗装性の観点から、好ましい固形分濃度は0.01~60質量%であり、より好ましくは1~40質量%である。また、塗装性の観点から、ハードコート層組成物の20℃における粘度としては、好ましくは0.1~100000mPa・sであり、好ましくは1~10000mPa・sである。
<ハードコート層の製法>
本実施形態におけるハードコート層の製法は、特に限定されないが、例えば、重合体ナノ粒子(A)と、マトリクス原料成分(B’)と、無機酸化物(D)と、適宜その他の成分とを溶媒に分散、及び溶解させたハードコート層組成物を、前記基材に塗装し、熱処理、紫外線照射、赤外線照射などによって塗膜化することにより得ることができる。さらに、前記塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、スプレー吹付法、フローコート法、刷毛塗法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。なお、塗装後、ハードコート層組成物は、好ましくは室温~250℃、より好ましくは40℃~150℃での熱処理や紫外線、赤外線照射などにより、塗膜化される。さらに、この塗装は、すでに成型した基材だけでなく、防錆鋼板を含むプレコートメタルのように、成型加工する前にあらかじめ平板に塗装することも可能である。
[ハードコート層の表面加工]
本実施形態におけるハードコート層は、耐候性の観点から、表面をシリカ加工することでシリカ層を形成してもよい。シリカ層の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン又はシラザンを蒸着/硬化させるPECVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)によるシリカ加工、及び155nm紫外線照射によって表面をシリカに改質させるシリカ加工技術が挙げられる。特に、表面を劣化させることなく酸素や水蒸気を通しにくい層を作製できることから、PECVDによる表面加工が好ましい。PECVDに用いることのできるシリコーン又はシラザンは、特に限定されないが、具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルメトリキシラン、ビニルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、TEOS(テトラエトキシシラン)、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、及びヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。これらを1種もしくは2種以上を併用しても構わない。
本実施形態において、ハードコート層の少なくとも1つの表面上に機能層をさらに有してもよい。機能層としては、特に限定されないが、例えば、反射防止層、防汚層、偏光層、及び衝撃吸収層などが挙げられる。
<積層体の用途>
本実施形態の積層体は、優れた耐摩耗性と耐久性を有する。したがって、ハードコート塗膜及びハードコート塗膜付き基材の用途としては、例えば、建材、車両用部材や電子機器、及び電機製品などが挙げられる。
建材用途としては、特に限定されないが、例えば、建設機械の窓ガラス、ビルや家屋、温室などの窓ガラス、ガレージ及びアーケードなどの屋根、照明や信号機等の照灯類、壁紙表皮材、看板、浴槽や洗面台のようなサニタリー製品、台所用建材外壁材、フローリング材、コルク材、タイル、クッションフロア、リノリウムのような内装用床材が挙げられる。
車両用部材としては、特に限定されないが、例えば、自動車、航空機、列車の各用途で使用される部品が挙げられる。具体的な例としては、フロント、リア、フロントドア、リアドア、リアクォーター、サンルーフ等の各ガラス、フロントバンパーやリアバンパー、スポイラー、ドアミラー、フロントグリル、エンブレムカバー、ボディー等の外装部材、センターパネル、ドアパネル、インストルメンタルパネル、センターコンソールなどの内装部材、ヘッドランプやリアランプ等のランプ類の部材、車載カメラ用レンズ部材、照明用カバー、加飾フィルム、さらには種々のガラス代替部材が挙げられる。
電子機器や電機製品としては、特に限定されないが、例えば、携帯電話、携帯情報端末、パソコン、携帯ゲーム機、OA機器、太陽電池、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、DVDやブルーレイディスク等の光ディスク、偏光板や光学フィルター、レンズ、プリズム、光ファイバー等の光学部品、反射防止フィルムや配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム等が好ましく挙げられる。
本実施形態の積層体は、上記の他、機械部品や農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具及び雑貨など、様々な領域への適用が可能である。
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
後述する実施例及び比較例における、各種の物性は下記の方法で測定した。
(1)厚みの測定
各層の厚みは、大塚電子株式会社製反射分光膜厚計(品番:FE-3000)を用いて測定した。
(2)エマルション粒子の平均粒子径、エマルション粒子と無機酸化物との複合体、及び重合体ナノ粒子(A)の平均粒子径、並びに無機酸化物の一次平均粒子径
後述する方法により得られた各種粒子及び複合体の水分散体を用いて動的光散乱式粒度分布測定装置(大塚電子株式会社製、品番:ELSZ-1000)によりキュムラント粒子径を測定し、各種粒子及び複合体の平均粒子径とした。
また、無機酸化物の一次平均粒子径は、透過型顕微鏡写真を用いて50,000~100,000倍に拡大して観察し、粒子として100~200個の無機酸化物が写るように撮影して、その無機酸化物粒子の長径及び短径の平均値を測定し、その値を無機酸化物の一次平均粒子径とした。
(3)ヘイズの測定
ヘイズは、日本電色工業株式会社製濁度計(品番:NDH5000SP)を用いて、JIS K7136に規定される方法により測定した。ヘイズ値H1については、接着層付き基材を対象として上記方法にて測定した。ヘイズ値H2については、積層体(接着層付き基材及びハードコート層)を対象として上記方法にて測定した。
(4)ハードコート層のマルテンス硬度HMの測定
フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、ハードコート層のマルテンス硬度HMを測定した。
(5)重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGの測定
重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGは、重合体ナノ粒子(A)の水分散体を、バーコーターを用いて膜厚が3μmになるようにガラス基材(材質:白板ガラス、厚み:2mm)上に塗布し、130℃2時間かけて乾燥することにより、得られた塗膜を用いて測定した。測定は、フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGを測定した。
(6)マトリクス原料成分(B’)のマルテンス硬度HMH'の測定
成分(B’)のマルテンス硬度HMH'は、成分(B’)を固形分濃度8質量%として水/エタノール/酢酸(組成比77質量%/20質量%/3質量%)へ溶解又は分散させ、得られた溶液はバーコーターを用いて膜厚が3μmになるようにガラス基材(材質:白板ガラス、厚み:2mm)上に塗布し、130℃で2時間かけて乾燥することにより、得られた塗膜を用いて測定した。測定は、フィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープ(品番:HM2000S)を用いた押し込み試験(試験条件;圧子:ビッカース四角錘ダイヤモンド圧子、荷重の増加条件:2mN/20sec、荷重の減少条件:2mN/20sec)により微小硬度を測定し、ISO14577-1準拠のインデンテーション試験法に基づき、HMH'を計測した。後述するとおり、マトリクス成分(B)は、対応する成分(B’)の加水分解縮合物に該当する。このことから、上記のようにして測定された成分(B’)のマルテンス硬度HMH'の値は、マトリクス成分(B)のマルテンス硬度HMHによく一致するものとして、マルテンス硬度HMH'の値をマルテンス硬度HMHの値とした。
(7)積層体におけるハードコート層の耐摩耗性の評価
積層体におけるハードコート層の耐摩耗性の評価は、安田精機株式会社製テーバー式アブレーションテスター(No.101)を用い、ASTM D1044の規格に準拠して行った。すなわち、摩耗輪CS-10F、及び荷重500gの条件でテーバー摩耗試験を実施し、当該試験前のヘイズ、回転数1000回におけるヘイズを各々、日本電色工業株式会社製濁度計(品番:NDH5000SP)を用いて、JIS R3212に規定される方法により測定し、試験前のヘイズとの差をとることによって、積層体におけるハードコート層の耐摩耗性を下記のように評価した。
(評価基準)
○:試験前後のヘイズ差が2以下である。
×:試験前後のヘイズ差が2を超える。
(8)耐候性の評価
積層体の耐候性は、キセノンウェザーメーター(スガ試験機社製、製品名SX-75)による紫外線照射をANSI/SAE Z26.1の規格の条件に従って行い、2000MJ/m2照射前後のΔbで下記のように評価し、△以上を合格とした。
(評価基準)
○:Δb≦2
△:2<Δb≦4
×:Δb>4
(9)水系塗料組成物のポリカーボネート耐食性
後述する方法で得られた水系塗料組成物をポリカーボネート基材へバーコーターを用いて塗布して、室温条件下1時間静置した。その後、基材表面を水で洗い流し、表面を目視観察することで以下のように評価した。
(評価基準)
○:表面に白化・膨れ・侵食等が見られない。
×:表面に白化・膨れ・侵食等が見られる。
(10)ポットライフ
後述する方法で得られた水系塗料組成物を室温条件下で6時間静置した。その後、水系塗料組成物について目視で沈降の有無を評価するとともに、400メッシュのステンレス金網でろ過した際の残渣について目視で以下のように評価した。
(評価基準)
◎:目視にて沈降がなく、塗料組成物を400メッシュのステンレス金網でろ過した際の残渣も見られない。
○:目視にて沈降がなく、塗工液を400メッシュのステンレス金網でろ過した際の残渣がわずかにみられる。
△:目視にてわずかな沈降が確認され、塗工液を400メッシュのステンレス金網でろ過した際に残渣が見られるが、使用には耐えうる。
×:目視にて明らかな沈降が確認され、使用に耐えられない。
[エマルション粒子水分散体の調製]
後述する実施例において用いたエマルション粒子水分散体を以下のとおりに合成した。
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水960g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル45g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、及び反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープ(登録商標)SR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを加えた、その後、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整してエマルション粒子の水分散体を得た。得られたエマルション粒子の固形分は10質量%であった。エマルション粒子の平均粒子径は、50nmであった。
〔エマルション粒子と無機酸化物との複合体の調製〕
<複合体粒子水分散体の調製>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水960g、無機酸化物として水分散性コロイダルシリカ「スノーテックス(登録商標)PS-SO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%、一次平均粒子径:15nm)778g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液22g、2%過硫酸アンモニウム水溶液25g、アクリル酸ブチル45g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル45g、N,N-ジエチルアクリルアミド23g、アクリル酸1g、及び反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープ(登録商標)SR-1025」、(株)ADEKA製、固形分25%水溶液)3gを加えた。その後、80℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、25%アンモニア水溶液でpH9に調整し、100メッシュの金網で濾過し、複合体粒子水分散体を得た。得られた複合体粒子水分散体に含まれる、エマルション粒子と無機酸化物との質量比(エマルション粒子/無機酸化物)は1/1であり、エマルション粒子と無機酸化物との複合体の平均粒子径は80nmであり、その複合体の固形分は12質量%であった。
〔重合体ナノ粒子(A)水分散体の調製〕
後述する実施例において用いた重合体ナノ粒子(A)水分散体を以下のとおりに合成した。
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水1500g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液45g、メチルトリメトキシシラン105g、フェニルトリメトキシシラン23g、及びテトラエトキシシラン27gを加えた。その後、50℃の環境下で一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、温度を80℃とした後、更に2%過硫酸アンモニウム水溶液43g、アクリル酸ブチル11g、N,N-ジエチルアクリルアミド12g、アクリル酸1g、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1gを用いて、一般的な乳化重合の方法で重合を行った。重合後、100メッシュの金網で濾過し、重合体ナノ粒子水分散体を得た。得られた重合体ナノ粒子(A)はコアシェル構造を有するものであり、その平均粒子径は60nmであり、固形分は5.9質量%であった。また、上述の測定方法に従い測定した重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGは150N/mm2であった。
[マトリクス原料成分(B’)の調製]
後述する実施例において用いたマトリクス原料成分(B’)を以下のとおりに調製した。
加水分解性珪素化合物(b)として、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン35g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート81g、無機酸化物(D)として水分散性コロイダルシリカ「スノーテックス(登録商標)OXS」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分10質量%、一次平均粒子径:5nm)333gを室温条件下で混合し、マトリクス原料成分(B’)を得た。
なお、ハードコート層組成物中のマトリクス原料成分(B’)に由来するハードコート層中のマトリクス成分を成分(B)と称する。ハードコート層中のマトリクス成分(B)は、マトリクス原料成分(B′)の加水分解縮合物であるといえる。また、上述の測定方法に従い測定したマトリクス原料成分(B′)のマルテンス硬度HMH'は420N/mm2であった。前記記載の重合体ナノ粒子(A)のマルテンス硬度HMGの測定結果より、実施例及び比較例において、HMH'/HMG>1であることを確認した。また、この結果より、HMH/HMG>1であることを確認した。
[ハードコート層組成物の調製]
重合体ナノ粒子(A)とマトリクス成分(B)が固形分質量比で(A):(B)=100:200となるように、上記で調製した重合体ナノ粒子(A)水分散体と、上記で調製したマトリクス原料成分(B’)とを混合して混合物を得た。エタノール濃度20質量%の水溶液を溶媒とし、固形分濃度が10質量%となるように混合物を添加し、ハードコート層組成物を得た。なお、上述の方法に従い測定したハードコート層のマルテンス硬度HMは380N/mm2であった。
[水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体の調製]
[実施例1]
エマルション粒子と無機酸化物との複合体として、複合体粒子水分散体56.0g、硬化剤として水分散性ブロックポリイソシアネート(旭化成株式会社製WS50-30W(商品名))5.0g、界面活性剤として10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を1.0g、及び水19.1gを室温条件下で混合することで、A液を得た。
次に、有機系紫外線吸収剤としてTinuvin(登録商標)400(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.54g、光安定剤としてTinuvin(登録商標)123(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.10g、及び水溶性有機溶剤としてイソプロパノール18.3gを室温条件下で混合することで、B液を得た。
前記A液を攪拌した状態でB液を室温条件下で5分間かけて滴下し、混合することで、水系塗料組成物を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X=イソシアネート基モル数/水酸基モル数)は0.6であった。
次いで、実施例1の水系塗料組成物を、バーコーターを用いてポリカーボネート基材上に塗布し、130℃で2時間乾燥することで、膜厚5.0μmの接着層をポリカーボネート基材上に形成した。このようにして実施例1の接着層付き基材を得た。
さらに、バーコーターを用いてハードコート層組成物を実施例1の接着層付き基材における接着層へ塗布した後、130℃で2時間乾燥し、膜厚3.0μmのハードコート層を有する、積層体を得た。
実施例1の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例2]
エマルション粒子水分散体34.0g、無機酸化物として水分散性コロイダルシリカ「スノーテックス(登録商標)PS-SO」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分15質量%、一次平均粒子径:15nm)22.7g、硬化剤として水分散性ブロックポリイソシアネート(旭化成株式会社製WS50-30W(商品名))5.0g、界面活性剤として10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を0.62g、及び水8.7gを室温条件下で混合することで、A液を得た。
次に、有機系紫外線吸収剤としてTinuvin(登録商標)400(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.54g、光安定剤としてTinuvin(登録商標)123(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.10g、及び水溶性有機溶剤としてイソプロパノール18.3gを室温条件下で混合することで、B液を得た。
前記A液を攪拌した状態でB液を室温条件下で5分間かけて滴下し、混合することで、水系塗料組成物を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、エマルション粒子/スノーテックスPS-SO/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/100/26.8/16/3.0であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例2の水系塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、接着層付き基材、及び積層体を得た。
実施例2の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例3]
水系塗料組成物に界面活性剤を用いなかった点以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例3の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1と同様にして、水系塗料組成物のA液とB液をそれぞれ得た。その後、前記B液を攪拌した状態でA液を室温条件下で5分間かけて滴下し、混合することで、水系塗料組成物を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例4の水系塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、接着層付き基材、及び積層体を得た。
実施例4の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例5]
有機系紫外線吸収剤として、Tinuvin(登録商標)400(商品名)の代わりにTinuvin(登録商標)384-2(商品名、BASFジャパン株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin384-2/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例5の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例6]
有機系紫外線吸収剤として、Tinuvin(登録商標)400(商品名)の代わりにUvinul(登録商標)3050(商品名、BASF社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Uvinul3050/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例6の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例7]
水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)を、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/4/1.5とした以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例7の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例8]
光安定剤として、Tinuvin(登録商標)123(商品名)の代わりに、Tinuvin(登録商標)152(商品名、BASFジャパン株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin152=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例8の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例9]
光安定剤として、Tinuvin(登録商標)123(商品名)の代わりに、Tinuvin(登録商標)292(商品名、BASFジャパン株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin292=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例9の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
[実施例10]
水系塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)を水/イソプロパノール=80/10の代わりに60/40とした以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例10の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
[実施例11]
水系塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)を水/イソプロパノール=80/10の代わりに90/10とした以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例11の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
[実施例12]
エマルション粒子と無機酸化物との複合体として、複合体粒子水分散体56.0g、硬化剤として水分散性ブロックポリイソシアネート(旭化成株式会社製、WS50-30W(商品名))5.0g、及び水20.0gを室温条件下で混合することで、A液を得た。
次に、有機系紫外線吸収剤としてTinuvin(登録商標)400(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.54g、光安定剤としてTinuvin(登録商標)123(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.10g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.10g、及び水溶性有機溶剤としてイソプロパノール18.3gを室温条件下で混合することで、B液を得た。
前記A液を攪拌した状態でB液を室温条件下で5分間かけて滴下し、混合することで、水系塗料組成物を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
次いで、実施例12の水系塗料組成物を、バーコーターを用いてポリカーボネート基材上に塗布し、130℃で2時間乾燥することで、膜厚5.0μmの接着層をポリカーボネート基材上に形成した。このようにして実施例12の接着層付き基材を得た。
さらに、バーコーターを用いてハードコート層組成物を実施例12の接着層付き基材へ塗布した後、130℃で2時間乾燥し、膜厚3.0μmのハードコート層を有する、積層体を得た。
実施例12の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
[実施例13]
エマルション粒子と無機酸化物との複合体として、複合体粒子水分散体56.0g、硬化剤として水分散性ブロックポリイソシアネート(旭化成株式会社製、WS50-30W(商品名))5.0g、界面活性剤として10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を0.5g、及び水19.6gを室温条件下で混合することで、A液を得た。
次に、有機系紫外線吸収剤としてTinuvin(登録商標)400(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.54g、光安定剤としてTinuvin(登録商標)123(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.10g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.05g、及び水溶性有機溶剤としてイソプロパノール18.3gを室温条件下で混合することで、B液を得た。
前記A液を攪拌した状態でB液を室温条件下で5分間かけて滴下し、混合することで、水系塗料組成物を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/Tinuvin400/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
実施例13の水系塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、接着層付き基材、及び積層体を得た。
実施例13の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
[比較例1]
水系塗料組成物に含まれる水溶性有機溶剤として、イソプロパノールの代わりにエタノール(沸点:78℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、水系塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/エタノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
比較例1の水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
[比較例2]
水系塗料組成物に含まれる水溶性有機溶剤として、イソプロパノールの代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:146.4℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、水系塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
比較例2の水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
[比較例3]
水溶性有機溶剤であるイソプロパノールの代わりとして、非水溶性有機溶剤である酢酸ブチルを用いた以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、複合体粒子/ブロックポリイソシアネート/Tinuvin400/Tinuvin123=100/26.8/8/1.5であった。また、塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/酢酸ブチル=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
比較例3の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
[比較例4]
有機系紫外線吸収剤及び光安定剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は9質量%であった。また、水系塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/イソプロパノール=80/20であり、エマルション粒子中に含まれる水酸基のモル数とブロックポリイソシアネート中に含まれるイソシアネート基のモル数との比(X)は0.6であった。
比較例4の塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
[比較例5]
エマルション粒子水分散体としてE2050S水分散液(商品名、旭化成株式会社製、固形分濃度46%)15g、無機酸化物として球状の水分散性コロイダルシリカ「スノーテックス(登録商標)C」(商品名、日産化学工業株式会社製、固形分20質量%、一次平均粒子径15nm)14g、有機系紫外線吸収剤としてTinuvin(登録商標)400(商品名、BASFジャパン株式会社製)2.1g、光安定剤としてTinuvin(登録商標)123(商品名、BASFジャパン株式会社製)0.1g、水33g、及び水溶性有機溶剤としてエタノール(沸点:78℃)35gを室温条件下で混合し、水系塗料組成物を得た。水系塗料組成物の固形分濃度は12質量%であった。また、水系塗料組成物中の各成分の固形分比率(質量部)は、E2050S/スノーテックスC/Tinuvin400/Tinuvin123=100/40/30/2であった。また、水系塗料組成物に含まれる溶剤の組成(質量部)は、水/エタノール=80/20であった。
比較例5の水系塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして、接着層付き基材、及び積層体を得た。
比較例5の水系塗料組成物、接着層付き基材、及び積層体について各種評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2023039523000001
Figure 2023039523000002
本発明によって提供される、水性塗料組成物、接着層付き基材、積層体、及び組成物セットは、例えば、建材、並びに自動車部材、電子機器、及び電機製品などのハードコートとして有用である。

Claims (13)

  1. エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、
    ブロックポリイソシアネートと、
    有機系紫外線吸収剤と、
    光安定剤と、
    沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤と、を含み、
    前記無機酸化物が、球状、及び/又は連結構造のシリカを含む、
    水系塗料組成物。
  2. 前記混合物、及び/又は、前記複合体の平均粒子径が2~2000nmである、請求項1に記載の水系塗料組成物。
  3. 界面活性剤を更に含む、請求項1又は2に記載の水系塗料組成物。
  4. 前記水溶性有機溶剤が、イソプロパノールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系塗料組成物。
  5. 前記水溶性有機溶剤の含有量が、前記水系塗料組成物100質量%に対して、40質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水系塗料組成物。
  6. 前記有機系紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水系塗料組成物。
  7. 前記光安定剤が、ヒンダードアミン系化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水系塗料組成物。
  8. 基材と、前記基材上に配された接着層とを有し、
    前記接着層が、請求項1~7のいずれか一項に記載の水系塗料組成物の硬化物を含む、接着層付き基材。
  9. 請求項8に記載の接着層付き基材と、前記基材における前記接着層上に配されたハードコート層と有し、
    前記ハードコート層が、重合体ナノ粒子と、マトリクス成分と、を含み、
    前記マトリクス成分が、無機酸化物を含み、
    前記重合体ナノ粒子のマルテンス硬度HMGと、前記マトリクス成分のマルテンス硬度HMHとが、HMH/HMG>1の関係を満たす、積層体。
  10. 前記接着層付き基材のヘイズ値H1が、前記積層体のヘイズ値H2よりも大きい、請求項9に記載の積層体。
  11. 組成物Aと、組成物Bと、備え、
    前記組成物Aが、
    エマルション粒子と無機酸化物との混合物、及び/又は、当該エマルション粒子と無機酸化物との複合体と、
    ブロックポリイソシアネートと、
    水と、を含み、かつ、
    前記無機酸化物が、球状、及び/又は連結構造のシリカを含み、
    前記組成物Bが、
    有機系紫外線吸収剤と、
    光安定剤と、
    沸点が80℃以上140℃以下である水溶性有機溶剤と、を含む、
    組成物セット。
  12. 前記組成物A及び/又は前記組成物Bに、界面活性剤を更に含む、請求項11に記載の組成物セット。
  13. 請求項11又は12に記載の組成物Aを攪拌した状態で、請求項11又は12に記載の組成物Bを前記組成物Aに滴下する工程を含む、水系塗料組成物の製造方法。
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