JP2009269104A - 化学機械研磨用水系分散体および該化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキット、ならびに化学機械研磨方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気光学表示装置用基板に設けられた銅または銅合金からなる配線層を化学機械研磨する工程において、研磨速度の面内均一性を確保でき、かつ被研磨面の面内平坦性のばらつきを抑制することができる化学機械研磨用水系分散体、および該化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキット、ならびに該化学機械研磨用水系分散体を用いた化学機械研磨方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種、(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤、(C)砥粒、(D)アミノ酸、(E)酸化剤、を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気光学表示装置用基板に設けられた配線層を形成する際に好適に用いられる化学機械研磨用水系分散体および該化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキット、ならびに該化学機械研磨用水系分散体を用いた化学機械研磨方法に関する。
近年、電気光学表示装置の技術の進歩により、種々の構造を有する表示装置が提案されている。かかる表示装置としては、例えば、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマ表示装置(PDP:Plasma Display Panel)、エレクトロルミック表示装置(ECD:Electrochromic Display)、エレクトロルミネッセント表示装置(ELD:Electro Luminescent Display)、電界放出表示材料装置(FED:Field Emission Display)等のフラットパネルディスプレイが挙げられる。フラットパネルディスプレイは、通常、液晶などの表示材料を一対の基板の間に挟持し、その表示材料に電圧を印加するという方法で構成される。この際、少なくとも一方の基板には、導電材料からなる電気配線を配列させる必要がある。このようなフラットパネルディスプレイにおいて、ディスプレイの大面積化およびディスプレイの高精細化を図ろうとすると、駆動周波数が高まるとともに、電気配線の抵抗および寄生容量が増大する。その影響により駆動信号の遅延が生じるため、大きな問題となる。
そこで、上記駆動信号の遅延を解決するために、様々な技術開発が行われている。例えば、特許文献1では、従来の配線材料であるアルミニウムや、α−タンタル、モリブデンの代わりに、それらの金属よりも電気抵抗が小さい銅を配線材料に用いて、駆動信号遅延の解決を試みている。
また、ディスプレイのさらなる高精細化を達成するためには、導電配線の超微細化かつ高集積化された配線構造が必須となる。ところが、基板に銅または銅合金などの配線材料を配設する場合、従来のスパッタ法、蒸着法、CVD法等の乾式成膜法や無電解めっき法、熱分解法等の湿式成膜法のみで、超微細化かつ高集積化された配線構造を形成するには限界がある。
かかる配線構造を形成し得る技術として、従来、半導体装置製造に主に用いられてきた化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)技術、いわゆるダマシン法と称される技術が注目されている。この方法は、基板に形成された溝等に配線材料を埋め込んだ後、化学機械研磨により余剰な配線材料を除去することによって所望の配線を形成するものである。
特開2002−353222号公報
しかしながら、従来の半導体装置の製造に用いられる基板(以下、「半導体装置用基板」という。)の大きさは最大寸法が約50〜300mmであるのに対し、電気光学表示装置の製造に用いられる基板(以下、「電気光学表示装置用基板」という。)は最大寸法が約1500〜3000mm程度と大型になる場合があるため、化学機械研磨技術を用いる際に、その基板の大きさの違いに起因した新たな問題が生じてきている。具体的には、たとえば、単位時間当たりの研磨量(以下、「研磨速度」ともいう。)の被研磨面における均一性を保てなくなる問題がある。この問題が生じると、被研磨面の面内で、除去される物質の量がばらつき、平坦性が得られなくなる。半導体装置用基板の場合、被研磨面の面積は面内の平坦性を損なうほどの大きさではなく、品質管理上の許容範囲内とされ、顕著な問題とはならなかった。しかし、被研磨面の面積が半導体装置用基板よりもはるかに大きな電気光学表示装置用基板を研磨するため、研磨速度の均一性を保てず、無視できない問題となっている。
化学機械研磨とは、研磨対象基板と研磨用パッドの間に化学機械用水系分散体を満たして、研磨対象基板を研磨する方法である。この方法では、研磨対象基板の大きさが大きくなるにつれて、基板面内における化学機械研磨用水系分散体の存在量が不均一となる。そのため、研磨速度の均一性を確保できなくなり上記の問題が生じると考えられる。基板面内の単位面積あたりに同一量の化学機械研磨用水系分散体を供給しようとすると、理論的には回転中心から外周に向かう距離に従い、化学機械研磨用水系分散体をその距離の2乗(面積相当)に比例し、増加して供給する必要があるとされる。しかし、現実的には研磨用パッド上に一定の圧力で押し付けられ、かつ、回転している研磨対象基板と研磨用パッドの間に、上記のように化学機械研磨用分散体を供給することは技術的に困難である。
また、電気光学表示装置用基板を化学機械研磨する場合、異なる材質をできるだけ等しい研磨速度で研磨することも要求される。たとえば、ガラス基板の凹部に銅配線を形成する場合などは、ガラスの研磨速度と、銅の研磨速度が異なる場合があり、銅配線の研磨面が凹状になるディッシングという現象や、ガラスが溶解することによるエロージョンと呼ばれる現象が生じることがある。このような現象は、半導体装置用基板において生じることがあったが、同様に電気光学表示装置用基板においても生じることがあり、これを抑制することができる化学機械研磨用水系分散体が求められている。
一方、電気光学表示装置用基板のような大面積の基板を研磨する場合においては、化学機械研磨によって除去すべき配線等の量が多い。そのため、このような基板に対して、高スループットな化学機械研磨加工を行うためには、研磨速度が十分に高い必要がある。
このように、電気光学表示装置用基板等を研磨するために用いる化学機械研磨用分散体の性能としては、被研磨面の平坦性を高めること、ディッシングを抑制すること、のみならず、研磨速度を高めることが同時に要求されている。
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、電気光学表示装置用基板に設けられた銅または銅合金からなる配線層を化学機械研磨する工程において、研磨速度が大きく、研磨速度の面内均一性および被研磨面の面内平坦性が確保でき、ディッシング等の不具合が生じにくい化学機械研磨用水系分散体、および該化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキット、ならびに該化学機械研磨用水系分散体を用いた化学機械研磨方法を提供することにある。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体は、
(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種、
(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤、
(C)砥粒、
(D)アミノ酸、
(E)酸化剤、
を含む。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体において、
前記(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種は、アミド硫酸、アミド硫酸アンモニウム、およびアミド硫酸カリウムから選択される少なくとも1種であることができる。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体において、
前記(B)界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、およびドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウムから選択される少なくとも1種であることができる。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体において、
前記(D)アミノ酸は、グリシンであることができる。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体において、
前記(E)酸化剤は、過酸化水素であることができる。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体において、
前記(C)砥粒は、シリカおよび有機無機複合粒子から選択される少なくとも1種であることができる。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体において、
該化学機械研磨用水系分散体は、電気光学表示装置用基板に設けられた銅または銅合金からなる配線層を研磨するために用いられることができる。
本発明にかかる化学機械研磨方法は、
電気光学表示装置用基板に設けられた銅または銅合金からなる配線層を研磨するために、上述の化学機械研磨用水系分散体を用いる。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体調製用キットは、
第1の組成物および第2の組成物から構成され、銅または銅合金からなる配線層を研磨するための化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットであって、
前記第1の組成物は、
(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、
(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤と、
(C)砥粒と、
(D)アミノ酸と、を含み、
前記第2の組成物は、
(E)酸化剤、を含む。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体調製用キットは、
第3の組成物および第4の組成物から構成され、銅または銅合金からなる配線層を研磨するための化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットであって、
前記第3の組成物は、(C)砥粒を含み、
前記第4の組成物は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、(D)アミノ酸と、を含み、
前記第3の組成物および前記第4の組成物の少なくとも一方は、(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤を含み、
前記第3の組成物および前記第4の組成物の少なくとも一方は、(E)酸化剤を含む。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体調製用キットは、
第5の組成物、第6の組成物および第7の組成物から構成され、電気光学表示装置用基板に設けられた第5の組成物、第6の組成物および第7の組成物から構成され、銅または銅合金からなる配線層を研磨するための化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットであって、
前記第5の組成物は、(E)酸化剤を含み、
前記第6の組成物は、(C)砥粒を含み、
前記第7の組成物は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、(D)アミノ酸と、を含み、
前記第5の組成物、前記第6の組成物および前記第7の組成物から選択される少なくとも1種は、(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤を含む。
本発明にかかる化学機械研磨用水系分散体の調製方法は、上述の化学機械研磨用水系分散体調製用キットの各組成物を混合する工程を含む。
上記化学機械研磨用水系分散体によれば、被研磨面の最大寸法を約1500〜3000mmとする電気光学表示装置用基板に設けられた銅または銅合金からなる配線層を、基板全体にわたって均一かつ平坦に研磨可能である。また、上記化学機械研磨用水系分散体によれば、被研磨面のディッシングを抑制することができる。その上、上記化学機械研磨用水系分散体によれば、該配線層を高速に研磨可能である。その結果、たとえば、電気光学表示装置用基板に超微細化され、かつ高集積化された配線構造を容易に設けることができる。また、上記化学機械研磨方法によれば、上記化学機械研磨用水系分散体を用いるため、たとえばフラットパネルディスプレイの大面積化および高精細化を図ることができる。
上記化学機械研磨用水系分散体調製用キットによれば、長期間の保存を行っても、良好な化学機械研磨用水系分散体を得ることができる。すなわち、上記化学機械研磨用水系分散体調製用キットによれば、化学機械研磨用水系分散体の保存安定性を高めることができる。
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含む。
1.化学機械研磨用水系分散体
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種、(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤、(C)砥粒、(D)アミノ酸、および(E)酸化剤、を含む。
以下、本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に含まれる各成分について、詳細に説明する。なお、以下、上記(A)ないし(E)の各化合物を、それぞれ(A)成分ないし(E)成分と省略して記載することがある。
1.1.(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種を含有する。(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種が有する機能の1つとしては、化学機械研磨用水系分散体を用いた化学機械研磨における研磨速度を向上させることが挙げられる。(A)成分は、特に銅または銅合金からなる配線材料に対して、研磨速度を促進させることができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に用いるアミド硫酸の塩としては、たとえば、アミド硫酸アンモニウム、アミド硫酸カリウム、アミド硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これらのアミド硫酸の塩のなかでも、研磨速度を高める効果が大きいことから、アミド硫酸アンモニウム、アミド硫酸カリウムが特に好ましい。また、本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、たとえば、アミド硫酸、アミド硫酸アンモニウム、アミド硫酸カリウムがそれぞれ単独で添加されていてもよいし、これらの2種以上が添加されていてもよい。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体への(A)成分の添加量は、使用時における化学機械研磨用水系分散体の質量に対して、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%であり、特に好ましくは0.2〜2質量%である。(A)成分の添加量が上記範囲未満であると、所期の研磨速度が得られない場合がある。一方、(A)成分の添加量が上記範囲を超えると、被研磨面の平坦性を損なう場合がある。
1.2.(B)界面活性剤
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤を含有する。(B)成分の機能の1つとしては、化学機械研磨用水系分散体に粘性を付与することが挙げられる。すなわち、化学機械研磨用水系分散体の粘性は、(B)成分の添加量によって制御することができる。そして、該化学機械研磨用水系分散体の粘性を制御すれば、該化学機械研磨用水系分散体の研磨性能を制御することができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に用いる(B)界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸等のスルホン酸、およびその塩が好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸としては、ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、これらスルホン酸の塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩が好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸塩の好ましい具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、およびドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが挙げられる。
本実施形態の化学機械研磨用水系分散体に対する(B)界面活性剤の添加量は、使用時における化学機械研磨用水系分散体の質量に対し、好ましくは0.005〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.02〜0.15質量%である。界面活性剤の添加量が上記範囲未満であると、化学機械研磨用水系分散体の粘性が低すぎるために、研磨パッドへの押し付け圧を効率的かつ均一に被研磨面へ伝達することができず、被研磨面内における該化学機械研磨用水系分散体の研磨性能がばらつく場合がある。さらに、化学機械研磨用水系分散体が有効に作用する前に研磨対象となる基板と研磨パッドとの間から流出してしまい、特に被研磨面内の外周部における化学機械研磨用水系分散体の存在量ばらつきの原因となる場合がある。一方、界面活性剤の添加量が上記範囲を超えると、添加量に対する平坦性改良効果が鈍化し、平坦性改善効果が得られなくなることがあり、研磨速度が低下したり、該化学機械研磨用水系分散体の粘性が高くなりすぎて研磨摩擦熱が上昇し面内均一性が悪化してしまうことがある。
1.3.(C)砥粒
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、(C)砥粒を含む。(C)砥粒としては、無機粒子、有機粒子および有機無機複合粒子から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア等が挙げられる。有機粒子としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびスチレン系共重合体、ポリアセタール、飽和ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィンおよびオレフィン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂およびアクリル系共重合体などが挙げられる。有機無機複合粒子としては、上記の有機粒子と上記の無機粒子とからなることができる。
これらのうち、本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に用いられる砥粒としては、シリカおよび有機無機複合粒子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に用いうるシリカとしては、気相中で塩化ケイ素、塩化アルミニウム、塩化チタン等を酸素および水素と反応させるヒュームド法により合成されたシリカ、金属アルコキシドから加水分解縮合して合成するゾルゲル法により合成されたシリカ、精製により不純物を除去した無機コロイド法等により合成されたコロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、精製により不純物を除去した無機コロイド法などにより合成されたコロイダルシリカが特に好ましい。コロイダルシリカは、被研磨面の平坦性を確保する観点から、平均粒子径100nm以下のものを好適に用いることができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に用いうる有機無機複合粒子は、上記の有機粒子および無機粒子が、化学機械研磨工程の際に容易に分離しない程度に一体に形成されていればよく、その種類、構成等は特に限定されない。この有機無機複合粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の重合体粒子の存在下、アルコキシシラン、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド等を重縮合させ、重合体粒子の少なくとも表面に、ポリシロキサン等が結合されてなるものを使用することができる。なお、生成する重縮合体は、重合体粒子が有する官能基に直接結合されていてもよいし、シランカップリング剤等を介して結合されていてもよい。また、アルコキシシラン等に代えてシリカ粒子、アルミナ粒子等を用いることもできる。これらはポリシロキサン等と絡み合って保持されていてもよいし、それらが有するヒドロキシル基等の官能基により重合体粒子に化学的に結合されていてもよい。
また、本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に用いうる有機無機複合粒子としては、符号の異なるゼータ電位を有する有機粒子と無機粒子とを含む水分散体において、これら粒子が静電力により結合されてなるものも挙げられる。有機粒子のゼータ電位は、全pH域、または低pH域を除く広範なpH域にわたって負であることが多いが、カルボキシル基、スルホン酸基等を有する有機粒子とすることによって、より確実に負のゼータ電位を有する有機粒子とすることができる。また、アミノ基等を有する有機粒子とすることにより、特定のpH域において正のゼータ電位を有する有機粒子とすることもできる。一方、無機粒子のゼータ電位はpH依存性が高く、この電位が0となる等電点を有し、その前後でゼータ電位の符号が逆転する。したがって、特定の有機粒子と無機粒子とを組み合わせ、それらのゼータ電位が逆符号となるpH域で混合することによって、静電力により有機粒子と無機粒子とを一体に複合化することができる。また、混合時、ゼータ電位が同符号であっても、その後、pHを変化させ、ゼータ電位を逆符号とすることによって、有機粒子と無機粒子とを一体とすることもできる。
さらに、上記の有機無機複合粒子としては、静電力により一体に複合化された粒子の存在下、前記のようにアルコキシシラン、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド等を重縮合させ、この粒子の少なくとも表面に、さらにポリシロキサン等が結合されて複合化されてなるものを使用することもできる。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に用いる有機無機複合粒子の平均粒子径としては、50〜500nmが好ましい。平均粒子径が50nm未満であると、十分な研磨速度が発現しないことがある。また、500nmを超える場合は、粒子の凝集や沈降が生じやすくなる。なお、砥粒の平均粒子径は、レーザー散乱回折型測定機により測定することができ、透過型電子顕微鏡によって個々の粒子を観察し累積粒子径と個数とから算出することもできる。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に使用される砥粒の添加量は、使用時における化学機械研磨用水系分散体の質量に対し、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.02〜5質量%である。砥粒の添加量が上記範囲未満であると、十分な研磨速度が得られない場合があり、研磨工程を終了するのに多大な時間を要することがある。一方、砥粒の添加量が上記範囲を超えると、コストが高くなるとともに安定した化学機械研磨用水系分散体を得られない場合がある。
1.4.(D)アミノ酸
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、(D)アミノ酸を含有する。(D)アミノ酸の機能の1つとしては、電気光学表示装置用基板の研磨に対して化学機械研磨用水系分散体を適用したときの研磨速度を向上させることが挙げられる。(D)アミノ酸は、特に銅または銅合金からなる配線材料に対して、研磨速度を促進させることができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体に用いうる(D)アミノ酸としては、配線材料元素からなるイオンまたは配線材料の表面に対し配位能力を有するアミノ酸が好ましい。より好ましくは、配線材料元素からなるイオンまたは配線材料の表面に対しキレート配位能力を有するアミノ酸であり、具体的には、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、芳香族アミノ酸、複素環アミノ酸などが挙げられる。研磨速度を向上させる効果が高いことから、グリシンが特に好ましい。
本実施形態の化学機械研磨用水系分散体に対する(D)アミノ酸の添加量は、使用時における化学機械研磨用水系分散体の質量に対し、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜4質量%であり、特に好ましくは0.2〜3質量%である。(D)アミノ酸の添加量が上記範囲未満であると、十分な研磨速度が得られない場合があり、研磨工程を終了するのに多大な時間を要することがある。一方、(D)アミノ酸の添加量が上記範囲を超えると、化学的エッチング効果が大きくなり、被研磨面の平坦性を損なう場合がある。
1.5.(E)酸化剤
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、(E)酸化剤を含有する。(E)酸化剤の機能の1つとしては、化学機械研磨に対して化学機械研磨用水系分散体を適用したときの研磨速度を向上させることが挙げられる。その理由としては、(E)酸化剤が、銅膜の表面を酸化し、化学機械研磨用水系分散体の成分との錯化反応を促すことにより、脆弱な改質層を銅膜の表面に形成し、銅膜を研磨しやすくするためと考えられる。
本実施形態の化学機械研磨用水系分散体に用いる(E)酸化剤としては、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸化合物、重クロム酸カリウム等の重クロム酸化合物、ヨウ素酸カリウムなどのハロゲン酸化合物、硝酸、硝酸鉄等の硝酸化合物、過塩素酸などの過ハロゲン酸化合物、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、およびヘテロポリ酸などが挙げられる。これらの酸化剤のうち、分解生成物が無害である過酸化水素等の有機過酸化物または過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩がより好ましく、過酸化水素が特に好ましい。
本実施形態の化学機械研磨用水系分散体に対する(E)酸化剤の添加量は、使用時における化学機械研磨用水系分散体の質量に対し、好ましくは0.005〜5質量%であり、より好ましくは0.01〜3質量%であり、特に好ましくは0.05〜1質量%である。(E)酸化剤の添加量が上記範囲未満であると、化学的エッチングの効果が十分に得られないことがあるため、十分な研磨速度を得ることができず、研磨工程を終了するのに多大な時間を要する場合がある。一方、(E)酸化剤の添加量が上位範囲を超えると、被研磨面が腐食してしまうことがある。
1.6.その他の添加剤
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、上記の成分のほか、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、有機酸または無機酸を添加することにより、砥粒の分散安定性を高めることができる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、およびキナルジン酸、キノリン酸等の複素環を有する化合物などが挙げられる。無機酸としては、硝酸、硫酸およびリン酸などが挙げられる。これらのうち、有機酸が特に好ましい。
本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、上記の酸またはアルカリを添加することにより、所望のpHに調整することができる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、またはアンモニアなどが挙げられる。化学機械研磨用水系分散体のpHを調整することにより、研磨速度を制御することができる。被研磨面の電気化学的性質や砥粒の分散安定性等の要素を勘案しながら、適宜酸またはアルカリを添加しpHを設定することができる。これらのうち、研磨速度を向上させる観点からは、アンモニアが特に好ましい。
2.化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキット
上記化学機械研磨用水系分散体は、調製後にそのまま研磨用組成物として使用できる状態で供給することができる。あるいは、上記化学機械研磨用水系分散体の各成分を高濃度で含有する研磨用組成物(すなわち濃縮された研磨用組成物)を準備しておき、使用時にこの濃縮された研磨用組成物を希釈して所望の化学機械研磨用水系分散体を得てもよい。
また、以下のように、上記成分のいずれかを含む複数の組成物(例えば、2つまたは3つの組成物)を調製し、これらを使用時に混合して使用することもできる。この場合、複数の液を混合して化学機械研磨用水系分散体を調製した後、これを化学機械研磨装置に供給してもよいし、複数の液を個別に化学機械研磨装置に供給して定盤上で化学機械研磨用水系分散体を調製してもよい。上記化学機械研磨用水系分散体は、例えば、以下に示す第1〜第3のキットを用いて、複数の液を混合することにより調製することができる。
2.1.第1のキット
第1のキットは、第1の組成物および第2の組成物を混合して、上記化学機械研磨用水系分散体を得るためのキットである。第1のキットにおいて、第1の組成物は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、(B)界面活性剤と、(C)砥粒と、(D)アミノ酸と、を含む水系分散体であり、前記第2の組成物は、(E)酸化剤を含む水溶液である。なお、(A)成分ないし(E)成分は、「1.化学機械研磨用水系分散体」の項で述べたものと同様である。
第1のキットを構成する第1の組成物および第2の組成物を調製する場合、第1の組成物および第2の組成物を混合して得られた水系分散体中に、上述した各成分が上述した濃度範囲内に含まれるように、第1の組成物および第2の組成物に含有される各成分の濃度を決定する必要がある。また、第1の組成物および第2の組成物は、各成分を高濃度で含有していてもよく(すなわち濃縮されたものでもよく)、この場合、使用時に希釈して第1の組成物および第2の組成物を得ることが可能である。第1のキットによれば、第1の組成物と第2の組成物とを分けておくことで、特に第2の組成物に含まれる(E)酸化剤の保存安定性を向上させることができる。
第1のキットを用いて上記化学機械研磨用水系分散体を調製する場合、第1の組成物および第2の組成物が別個に用意・供給され、かつ研磨時に一体となっていればよく、その混合方法およびタイミングは特に限定されない。例えば、各成分を高濃度で含有する第1の組成物および第2の組成物を調製し、使用時に第1の組成物および第2の組成物を希釈して、これらを混合し、各成分の濃度が上記範囲内にある化学機械研磨用水系分散体を調製する。具体的には、第1の組成物と第2の組成物とを1:1の重量比で混合する場合には、実際に使用する化学機械研磨用水系分散体の各成分の濃度よりも2倍に濃縮された第1の組成物および第2の組成物を調製すればよい。また、2倍以上の濃度の第1の組成物および第2の組成物を調製し、これらを1:1の重量比で混合した後、各成分が上記範囲となるように水で希釈してもよい。
第1のキットを使用する場合、研磨時に上記化学機械研磨用水系分散体が調製されていればよい。例えば、第1の組成物と第2の組成物とを混合して上記化学機械研磨用水系分散体を調製した後、これを化学機械研磨装置に供給してもよいし、第1の組成物と第2の組成物とを別個に化学機械研磨装置に供給し、定盤上で混合してもよい。あるいは、第1の組成物と第2の組成物とを別個に化学機械研磨装置に供給し、装置内でライン混合してもよいし、化学機械研磨装置に混合タンクを設けて、混合タンク内で混合してもよい。また、ライン混合の際には、より均一な水系分散体を得るために、ラインミキサーなどを用いてもよい。
2.2.第2のキット
第2のキットは、第3の組成物および第4の組成物を混合して、上記化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットである。第2のキットにおいて、第3の組成物は、前記第3の組成物は、(C)砥粒を含む水分散体であり、前記第4の組成物は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、(D)アミノ酸と、を含む水溶液である。そして、前記第3の組成物および前記第4の組成物の少なくとも一方は、(B)界面活性剤を含み、前記第3の組成物および前記第4の組成物の少なくとも一方は、(E)酸化剤を含む。なお、(A)成分ないし(E)成分は、「1.化学機械研磨用水系分散体」の項で述べたものと同様である。
第2のキットを構成する第3の組成物および第4の組成物を調製する場合、第3の組成物および第4の組成物を混合して得られた水系分散体中に、上述した各成分が上述した濃度範囲内に含まれるように、第3の組成物および第4の組成物に含有される各成分の濃度を決定する必要がある。また、第3の組成物および第4の組成物は、各成分を高濃度で含有していてもよく(すなわち濃縮されたものでもよく)、この場合、使用時に希釈して第3の組成物および第4の組成物を得ることが可能である。第2のキットによれば、第3の組成物と第4の組成物とを分けておくことで、特に第3の組成物に含まれる(C)砥粒の保存安定性を向上させることができる。
第2のキットを用いて上記化学機械研磨用水系分散体を調製する場合、第3の組成物および第4の組成物が別個に用意・供給され、かつ研磨時に一体となっていればよく、その混合方法およびタイミングは特に限定されない。例えば、各成分を高濃度で含有する第3の組成物および第4の組成物を調製し、使用時に第3の組成物および第4の組成物を希釈して、これらを混合し、各成分の濃度が上記範囲内にある化学機械研磨用水系分散体を調製する。具体的には、第3の組成物と第4の組成物とを1:1の重量比で混合する場合には、実際に使用する化学機械研磨用水系分散体の各成分の濃度よりも2倍に濃縮された第3の組成物および第4の組成物を調製すればよい。また、2倍以上の濃度の第3の組成物および第4の組成物を調製し、これらを1:1の重量比で混合した後、各成分が上記範囲となるように水で希釈してもよい。
第2のキットを使用する場合、研磨時に上記化学機械研磨用水系分散体が調製されていればよい。例えば、第3の組成物と第4の組成物とを混合して上記化学機械研磨用水系分散体を調製した後、これを化学機械研磨装置に供給してもよいし、第3の組成物と第4の組成物とを別個に化学機械研磨装置に供給し、定盤上で混合してもよい。あるいは、第3の組成物と第4の組成物とを別個に化学機械研磨装置に供給し、装置内でライン混合してもよいし、化学機械研磨装置に混合タンクを設けて、混合タンク内で混合してもよい。また、ライン混合の際には、より均一な水系分散体を得るために、ラインミキサーなどを用いてもよい。
2.3.第3のキット
第3のキットは、第5の組成物、第6の組成物および第7の組成物を混合して、上記化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットである。第3のキットにおいて、前記第5の組成物は、(E)酸化剤を含む水溶液であり、前記第6の組成物は、(C)砥粒を含む水分散体であり、前記第7の組成物は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、(D)アミノ酸と、を含む水溶液である。そして、前記第5の組成物、前記第6の組成物および前記第7の組成物から選ばれる少なくとも1種は、(B)界面活性剤を含む。なお、(A)成分ないし(E)成分は、「1.化学機械研磨用水系分散体」の項で述べたものと同様である。
第3のキットを構成する第5ないし第7の組成物を調製する場合、第5ないし第7の組成物を混合して得られた水系分散体中に、上述した各成分が上述した濃度範囲内に含まれるように、第5ないし第7の組成物に含有される各成分の濃度を決定する必要がある。また、第5ないし第7の組成物は、各成分を高濃度で含有していてもよく(すなわち濃縮されたものでもよく)、この場合、使用時に希釈して第5ないし第7の組成物を得ることが可能である。第3のキットによれば、第5ないし第7の組成物を分けておくことで、第5の組成物に含まれる(E)酸化剤および第6の組成物に含まれる(C)砥粒の保存安定性を向上させることができる。
本実施形態の第3のキットを用いて上記化学機械研磨用水系分散体を調製する場合、第5ないし第7の組成物が別個に用意・供給され、かつ研磨時に一体となっていればよく、その混合方法およびタイミングは特に限定されない。例えば、各成分を高濃度で含有する第5ないし第7の組成物を調製し、使用時に第5ないし第7の組成物を希釈して、これらを混合し、各成分の濃度が上記範囲内にある化学機械研磨用水系分散体を調製する。具体的には、第5ないし第7の組成物を1:1:1の重量比で混合する場合には、実際に使用する化学機械研磨用水系分散体の各成分の濃度よりも3倍に濃縮された第5ないし第7の組成物を調製すればよい。また、3倍以上の濃度の第5ないし第7の組成物を調製し、これらを1:1:1の重量比で混合した後、各成分が上記範囲となるように水で希釈してもよい。
第3のキットを使用する場合、研磨時に上記化学機械研磨用水系分散体が調製されていればよい。例えば、第5ないし第7の組成物を混合して上記化学機械研磨用水系分散体を調製した後、これを化学機械研磨装置に供給してもよいし、第5ないし第7の組成物を別個に化学機械研磨装置に供給し、定盤上で混合してもよい。あるいは、第5ないし第7の組成物を別個に化学機械研磨装置に供給し、装置内でライン混合してもよいし、化学機械研磨装置に混合タンクを設けて、混合タンク内で混合してもよい。また、ライン混合の際には、より均一な水系分散体を得るために、ラインミキサーなどを用いてもよい。
3.化学機械研磨方法および電気光学表示装置用基板の製造方法
化学機械研磨工程では、研磨対象の違いによって、その目的に応じた適切な化学機械研磨用水系分散体を選択することができる。本実施形態に係る電気光学表示装置用基板の製造方法における化学機械研磨工程は、主として配線層を研磨する一段階目の工程と、主としてバリアメタル膜を研磨する二段階目の工程とに分けることができる。本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体は、特に銅または銅合金からなる配線層を研磨するための一段階目の工程に適用することができる。
本実施形態に係る化学機械研磨方法および電気光学表示装置用基板の製造方法を、図面を用いて具体的に説明する。図1ないし図5は、本実施形態に係る化学機械研磨の工程を示す電気光学表示装置用基板の断面図である。
本実施形態に係る電気光学表示装置用基板の製造方法に用いる基板として、例えば、ガラス基板、フィルム基板、またはプラスチック基板を用いることができる。基板の大きさは、例えば、対角線寸法が1500mmないし3000mmのものを用いることができる。該基板は、単層体であってもよいし、基板の上に酸化シリコンなどの絶縁膜が形成された積層体であってもよい。
まず、図1に示すように、例えば、ガラス基板10を用意する。ガラス基板10は、配線を形成するための配線用凹部12を有している。ガラス基板10上に配線用凹部12を形成する方法として、ドライエッチングが用いられる。ドライエッチングとは、加速させたイオンをガラス基板に照射し物理的に加工する方法であり、照射ビームを精密にコントロールすることで微細なパターン加工ができる。ガラス基板10は、ソーダ石灰ガラス、ほう珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラスなどの材質からなることができる。
次に図2に示すように、ガラス基板10の表面ならびに配線用凹部12の底部および内壁面を覆うように、バリアメタル膜20を形成する。バリアメタル膜20は、例えば、タンタルや窒化タンタルなどの材質からなることができる。バリアメタル膜20の成膜方法としては、化学的気相成長法(CVD)を適用する。
次に図3に示すように、バリアメタル膜20の表面を覆うように配線用金属を堆積させて、金属膜30を形成する。金属膜30は、銅または銅合金からなることができる。金属膜30の成膜方法として、スパッタリング、真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD)を適用することができる。
次に図4に示すように、配線用凹部12に埋没された部分以外の余分な金属膜30を、本実施形態に係る化学機械研磨用水系分散体を用いて化学機械研磨して除去する。さらに、上記の方法をバリアメタル膜20が露出するまで繰り返す。化学機械研磨後、被研磨面に残留する砥粒は除去することが好ましい。この砥粒の除去は通常の洗浄方法によって行うことができる。
最後に、図5に示すように、配線用凹部12以外に形成されたバリアメタル膜20およびガラス基板10の表面を、バリアメタル膜用の化学機械研磨用水系分散体を用いて化学機械研磨して除去する。
上記の化学機械研磨方法は、本実施形態の化学機械研磨用水系分散体を用いて金属膜30を除去するため、その研磨速度が大きく、研磨の面内平坦性が良好で、ディッシング等の研磨欠陥を生じにくい。そのため、本方法によれば、配線金属を有し、高度に微細化され、かつ面内平坦性に優れた電気光学表示装置用基板を、高スループットで製造することができる。
4.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
4.1.評価用基板の作成
4.1.1.平坦性(ディッシング)の評価に用いる基板の作製
深さ3μmの凹部により形成された幅300μmの配線パターンを備えた対角線寸法2000mmのガラス基板表面に、30nmの厚さの窒化タンタルからなるバリアメタル膜を成膜した。その後、銅を該バリアメタル膜の上および凹部内にスパッタリングにより6μmの厚さに堆積した。以下、このようにして得られた基板を「基板a」と呼ぶ。
4.1.2.面内均一性の評価に用いる基板の作製
対角線寸法2000mmのガラス基板表面に、30nmの厚さの窒化タンタルからなるバリアメタル膜を成膜した。その後、銅を該バリアメタル膜の上にスパッタリングにより6μmの厚さに堆積した。以下、このようにして得られた基板を「基板b」と呼ぶ。
4.2.無機砥粒または複合粒子からなる砥粒を含む水分散体の調製
4.2.1.無機砥粒を含む水分散体の調製
(a)ヒュームド法シリカ粒子を含む水分散体の調製
ヒュームド法シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名「アエロジル#90」)2kgを、イオン交換水6.7kgに超音波分散機を用いて分散させ、孔径5μmのフィルタによって濾過し、ヒュームド法シリカを含む水分散体を調製した。
(b)コロイダルシリカを含む水分散体の調製
容量2000cmのフラスコに、25質量%濃度のアンモニア水70g、イオン交換水40g、エタノール175gおよびテトラエトキシシラン21gを投入し、180rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。60℃のまま2時間撹拌した後冷却し、平均粒子径70nmのコロイダルシリカ/アルコール分散体を得た。次いで、エバポレータにより、80℃でこの分散体にイオン交換水を添加しながらアルコール分を除去する操作を数回繰り返すことにより分散体中のアルコールを除き、固形分濃度が8質量%の水分散体を調製した。
4.2.2.複合粒子からなる砥粒を含む水分散体の調製
(c)重合体粒子を含む水分散体の調製
メチルメタクリレ−ト90質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「NKエステルM−90G」、#400)5質量部、4−ビニルピリジン5質量部、アゾ系重合開始剤(和光純薬株式会社製、商品名「V50」)2質量部、およびイオン交換水400質量部を、容量2000cmのフラスコに投入し、窒素ガス雰囲気下、撹拌しながら70℃に昇温し、6時間重合させた。これによりアミノ基の陽イオンおよびポリエチレングリコール鎖を有する官能基を備えた平均粒子径150nmのポリメチルメタクリレート系粒子を含む水分散体を得た。なお、重合収率は95%であった。
(d)複合粒子を含む水分散体の調製
上記「(c)重合体粒子を含む水分散体の調製」において得られたポリメチルメタクリレート系粒子を10質量%含む水分散体100質量部を、容量2000cmのフラスコに投入し、メチルトリメトキシシラン1質量部を添加し、40℃で2時間撹拌した。その後、硝酸によりpHを2に調整して水分散体(e)を得た。また、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名「スノーテックスO」)を10質量%含む水分散体のpHを水酸化カリウムにより8に調整し、水分散体(f)を得た。水分散体(e)に含まれるポリメチルメタクリレート系粒子のゼータ電位は+17mV、水分散体(f)に含まれるシリカ粒子のゼータ電位は−40mVであった。その後、水分散体(e)100質量部に水分散体(f)50質量部を2時間かけて徐々に添加、混合し、2時間撹拌して、ポリメチルメタクリレート系粒子にシリカ粒子が付着した粒子を含む水分散体を得た。次いで、この水分散体に、ビニルトリエトキシシラン2部を添加し、1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン1質量部を添加し、60℃に昇温し、3時間撹拌を継続した後、冷却することにより、複合粒子を含む水分散体(d)を得た。この複合粒子の平均粒子径は180nmでありポリメチルメタクリレート系粒子の表面の80%にシリカ粒子が付着していた。
4.3.化学機械研磨用水系分散体の調製
上記「4.2.無機砥粒または複合粒子からなる砥粒を含む水分散体の調製」において調製された水分散体の所定量を各実施例ごとに容量1000cmのポリエチレン製の瓶に投入し、これに、それぞれ(A)アミド硫酸およびその塩から選択される1種、および(D)アミノ酸、を最終的に表1に記載の含有量となるようにそれぞれ添加し、十分に撹拌した。(D)アミノ酸としては、実施例1ないし実施例3、実施例7ないし実施例10、および比較例1、比較例2、比較例4および比較例5において、グリシンを用いた。実施例4、および実施例5においては(D)アミノ酸として、アラニンを用いた。実施例6においては、(D)アミノ酸として、アスパラギン酸を用いた。なお、比較例5に関しては、(A)成分の代わりに比較成分として硫酸アンモニウムを用いた。また、比較例6に関しては、(D)アミノ酸の代わりにマレイン酸を使用した。
その後、撹拌をしながら表1に記載の(B)界面活性剤および(E)酸化剤の水溶液を、(B)界面活性剤および(E)酸化剤が、最終的に表1に記載の含有量となるようにそれぞれ添加した。ここで用いた(B)界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウムであり、(E)酸化剤は、過酸化水素である。さらに、十分に撹拌した後、水酸化カリウム水溶液またはアンモニアによりpHを調整した後、イオン交換水を加え、孔径5μmのフィルターで濾過し、実施例1ないし10および比較例1ないし6の化学機械研磨用水系分散体を得た。
4.4.第1のキットを用いた化学機械研磨用水系分散体の調製
4.4.1.第1の組成物の調製
上記「4.2.1.(b)コロイダルシリカを含む水分散体の調製」で調製したコロイダルシリカを含む水分散体を、シリカに換算して6.0質量%に相当する量をポリエチレン製の瓶に入れ、ドデシルベンゼンスルホン酸(商品名「ネオペレックスGS」、花王社製)をアンモニアでpH7に中和したドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム0.24質量%、これにグリシン2.4質量%、アミド硫酸アンモニウム3.0質量%を順次添加し、15分間撹拌した。次いで、アンモニアおよび水酸化カリウムを適量加えてpHを調整し、全構成成分の合計量が100質量%となるようにイオン交換水を加えた後、孔径5μmのフィルターで濾過することにより、水系分散体である第1の組成物A1を得た。
4.4.2.第2の組成物の調製
過酸化水素濃度が5質量%となるようにイオン交換水で濃度調節を行ない、第2の組成物B1を得た。以上の工程により、第1の組成物A1および第2の組成物B1からなる化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットを作製した。
4.4.3.化学機械研磨用水系分散体X1の調製
第1の組成物A1、第2の組成物B1をそれぞれ別のポリエチレン製の容器に入れ栓をし、室温で6ヶ月保管した。この6ヶ月保管後のA1;50質量%およびB1;8質量%とを混合し、全構成成分の合計量が100質量%となるようにイオン交換水を加え、化学機械研磨用水系分散体X1を調製した。この化学機械研磨用水系分散体X1は、上記実施例5で調製した化学機械研磨用水系分散体と同一の組成およびpHを有する。この化学機械研磨用水系分散体X1を用いて、下記「4.7.研磨評価試験」にしたがい試験を行った。これを実施例11とし、その結果を表1に示す。
4.5.第2のキットを用いた化学機械研磨用水系分散体の調製
4.5.1.第3の組成物の調製
上記「4.2.1.(b)コロイダルシリカを含む水分散体の調製」で調製したコロイダルシリカを含む水分散体を、シリカに換算して6.0質量%に相当する量をポリエチレン製の瓶に入れ、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム0.24質量%および35質量%過酸化水素水の過酸化水素に換算して0.8質量%に相当する量を順次添加し、アンモニアでpHを調整した後、15分間撹拌した。次いで、全構成成分の合計量が100質量%となるようにイオン交換水を加えた後、孔径5μmのフィルターで濾過することにより、水系分散体である第3の組成物A2を得た。
4.5.2.第4の組成物の調製
ポリエチレン製の瓶に、グリシン2.4質量%、アミド硫酸アンモニウム3.0質量%に相当する量を順次に入れ、全構成成分の合計量が100質量%となるようにイオン交換水を加えた後、15分間撹拌し、孔径5μmのフィルターで濾過することにより、水系分散体である第4の組成物B2を得た。以上の工程により、第3の組成物A2および第4の組成物B2からなる化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットを作製した。
4.5.3.化学機械研磨用水系分散体X2の調製
第3の組成物A2、第4の組成物B2をそれぞれ別のポリエチレン製の容器に入れ栓をし、室温で6ヶ月保管した。この6ヶ月保管後のA2;50質量%およびB2;50質量%とを混合し、化学機械研磨用水系分散体X2を調製した。この化学機械研磨用水系分散体X2は、上記実施例5で調製した化学機械研磨用水系分散体と同一の組成であって、かつ同一のpHであった。この化学機械研磨用水系分散体X2を用いて、下記「4.7.研磨評価試験」にしたがい試験を行った。これを実施例12とし、その結果を表1に示す。
4.6.第3のキットを用いた化学機械研磨用水系分散体の調製
4.6.1.第5の組成物の調製
上記「4.2.1.(b)コロイダルシリカを含む水分散体の調製」で調製したコロイダルシリカを含む水分散体を、シリカに換算して6.0質量%に相当する量をポリエチレン製の瓶に入れ、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム0.24質量%、次いでアンモニアを添加した後、15分間撹拌した。次いで、全構成成分の合計量が100質量%となるようにイオン交換水を加えた後、孔径5μmのフィルターで濾過することにより、水系分散体である第5の組成物A3を得た。
4.6.2.第6の組成物の調製
ポリエチレン製の瓶に、グリシン4.8質量%、アミド硫酸アンモニウム6.0質量%に相当する量を順次に入れ、全構成成分の合計量が100質量%となるようにイオン交換水を加えた後、15分間撹拌し、孔径5μmのフィルターで濾過することにより、水系分散体である第6の組成物B3を得た。
4.6.3.第7の組成物の調製
過酸化水素濃度が5質量%となるようにイオン交換水で濃度調節を行ない、第7の組成物C3を得た。以上の工程により、第5の組成物A3、第6の組成物B3、および第7の組成物C3からなる化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットを作製した。
4.6.4.化学機械研磨用水系分散体X3の調製
第5の組成物A3、第6の組成物B3、第7の組成物C3をそれぞれ別のポリエチレン製の容器に入れ栓をし、室温で6ヶ月保管した。この6ヶ月保管後のA3;50質量%、B3;25質量%およびC3;8質量%とを混合し、全構成成分の合計量が100質量%となるようにイオン交換水を加え、化学機械研磨用水系分散体X3を調製した。この化学機械研磨用水系分散体X3は、上記実施例5で調製した化学機械研磨用水系分散体と同一の組成であって、かつ同一のpHであった。この化学機械研磨用水系分散体X3を用いて、下記「4.7.研磨評価試験」にしたがい試験を行った。これを実施例13とし、その結果を表1に示す。
4.7.研磨評価試験
4.7.1.銅膜付き基板の研磨
実施例1ないし実施例13および比較例1ないし比較例5の分散体を用いて銅膜付き基板を以下の条件で研磨した。この評価は上述した基板bを用いて行った。
・研磨装置 : 表示基板用化学機械研磨機
・研磨パッド : 溝付きウレタン発泡素材化学機械研磨用パッド
・キャリアーヘッド荷重 : 200g/cm
・ヘッド回転数 : 60rpm
・テーブル回転数 : 65pm
・研磨剤供給量 : 150cm/分
・研磨時間 : 30秒
表示基板用化学機械研磨機とは、対角寸法が2000mmの大きさの表示基板を化学機械研磨できるように、既存の化学機械研磨装置(株式会社荏原製作所製、型式「EPO−112」)を改造したものである。
研磨速度は下記式(1)により算出した。
研磨速度(nm/分)
=(研磨前の銅膜の厚さ−研磨後の銅膜の厚さ)/研磨時間 …(1)
なお、銅膜の厚さは、抵抗率測定器(NPS社製、型式「Z−5」)を使用して、直流4針法によりシート抵抗を測定し、この抵抗率と銅の抵抗率から下記式(2)にしたがって算出した。
銅膜の厚さ(nm)
=シート抵抗値(Ω/cm)×銅の抵抗率(Ω/cm)×10−7 …(2)
研磨速度の値が1500(nm/分)以上のとき、研磨速度が良好といえる。
4.7.2.ディッシングの評価
凹部等に配線材料を堆積させた厚さT(nm)の初期の余剰膜を研磨速度V(nm/分)で研磨すると、本来T/V(分)の時間だけ研磨すれば目的が達成できるはずである。しかし、実際の製造工程では、凹部以外の部分に残る配線材料を除去するため、T/V(分)を超える過剰研磨(オーバーポリッシュ)を実施している。このとき、配線部分が過剰に研磨されることにより、凹状の形状となることがある。このような凹状の配線形状は、「ディッシング」と呼ばれ、製造品の歩留まりを低下させてしまう観点から好ましくない。そのため、各実施例でディッシングを評価項目として採り上げた。
ディッシングの評価は、表面粗さ計(KLA−Tencor社製、型式「P−10」)を使用し、基板aの300μm配線を測定して行った。また、ディッシングの評価における研磨時間は、厚さT(nm)の初期の余剰銅膜を「4.7.1.銅膜付き基板の研磨」で得られた研磨速度V(nm/分)で除した値(T/V)(分)に1.5を乗じた時間(分)とした。
表1中の評価項目におけるディッシングの項は、上記表面粗さ計によって測定された銅配線の窪みの量をディッシング値(μm)として記載した。ディッシングの値が、1(μm)以下のとき、ディッシングが抑制されているといえる。
4.7.3.面内均一性の評価
上記の銅膜が成膜された基板bの長手方向に対し両端から5mmの範囲を除き、均等にとった33点について化学機械研磨前後の基板の膜厚を測定した。この測定結果から、下記式(3)ないし(5)により、研磨速度および面内均一性を計算した。
研磨量 = 研磨前の膜厚−研磨後の膜厚 …(3)
研磨速度 = Σ(研磨量)/研磨時間 …(4)
面内均一性 =(研磨量の標準偏差÷研磨量の平均値)×100(%) …(5)
面内均一性が10%以下のとき、面内均一性は良好であるといえる。
4.7.4.評価結果
実施例1ないし13、比較例1ないし6は、化学機械研磨用水系分散体の成分または濃度を一部変更したものであって、表1に記載した通りである。表1には、各例の評価結果を合わせて記載した。
Figure 2009269104
表1から明らかなように、実施例1ないし10の化学機械研磨用水系分散体では、研磨速度は1230nm/分以上と十分に高く、かつ300μm配線のディッシングは0.89μm以下と小さく、かつ面内均一性は8.7%以下であった。以上のことから、実施例1ないし10の化学機械研磨用水系分散体は、被研磨面の面積が大きな基板(電気光学表示装置用基板)に対する化学機械研磨において、研磨速度が大きく、面内均一性を確保でき、かつディッシングを抑制できることが判明した。
特に実施例10では、研磨速度が3265nm/分と極めて高いにも拘わらず、300μm配線のディッシングは0.89μmと小さく、しかも面内均一性は7.2%と低く、良好な結果が得られている。
また、表1に示すように実施例11ないし13は、実施例5とほぼ同等の結果が得られている。すなわち、室温で6ヶ月保管したキットを用いて化学機械研磨用水系分散体を調製しても、調製直後とほぼ同等の性能を有することがわかった。この結果より、少なくともキットとして保管すれば化学機械研磨用水系分散体に含まれる各成分の保存安定性を確保できることが判明した。一方、室温で6ヶ月保管した実施例5の化学機械研磨用水系分散体は、砥粒の肥大化が見られ、使用に際しては超音波処理などの再分散が必要な状態となっていた。
比較例1は、(A)アミド硫酸もしくはその塩が含まれていない例であり、研磨速度が十分でなく、電気光学表示装置用基板等の大面積の基板の製造に用いた場合、高スループットを実現することが困難である。
比較例2は、(B)界面活性剤が含まれていない例であり、研磨速度は不良とはいえないものの、ディッシングおよび面内均一性が大きすぎるため、電気光学表示装置用基板等の基板の製造に好適とはいえない。
比較例3は、(D)アミノ酸が含まれていない例であり、研磨速度が十分でなく、電気光学表示装置用基板等の大面積の基板の製造に用いた場合、高スループットを実現することが困難である。
比較例4は、(E)酸化剤が含まれていない例であり、研磨速度が十分でなく、電気光学表示装置用基板等の大面積の基板の製造に用いた場合、高スループットを実現することが困難である。なお、本例では、研磨速度が小さすぎたため、ディッシングおよび面内均一性の評価が不能であった。
比較例5は、(A)アミド硫酸またはその塩の代わりに硫酸アンモニウムを1質量%添加した例であり、研磨速度は不良とはいえないものの、ディッシングが大きすぎるため、電気光学表示装置用基板等の基板の製造に好適とはいえない。
比較例6は、(D)アミノ酸のかわりにマレイン酸を2質量%添加した例であり、研磨速度が十分でなく、電気光学表示装置用基板等の大面積の基板の製造に用いた場合、高スループットを実現することが困難である。
本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法の工程の一部を模式的に示す断面図である。 本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法の工程の一部を模式的に示す断面図である。 本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法の工程の一部を模式的に示す断面図である。 本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法の工程の一部を模式的に示す断面図である。 本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法によって製造される電気光学装置用基板の例を模式的に示す断面図である。
符号の説明
10…ガラス基板、12…配線用凹部、20…バリアメタル膜、30…金属膜

Claims (12)

  1. (A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種、
    (B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤、
    (C)砥粒、
    (D)アミノ酸、
    (E)酸化剤、
    を含む、化学機械研磨用水系分散体。
  2. 請求項1において、
    前記(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種は、アミド硫酸、アミド硫酸アンモニウム、およびアミド硫酸カリウムから選択される少なくとも1種である、化学機械研磨用水分散体。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記(B)界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、およびドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウムから選択される少なくとも1種である、化学機械研磨用水系分散体。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記(D)アミノ酸は、グリシンである、化学機械研磨用水系分散体。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記(E)酸化剤は、過酸化水素である、化学機械研磨用水系分散体。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記(C)砥粒は、シリカおよび有機無機複合粒子から選択される少なくとも1種である、化学機械研磨用水系分散体。
  7. 電気光学表示装置用基板に設けられた銅または銅合金からなる配線層を研磨するために用いられる、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の化学機械研磨用水系分散体。
  8. 電気光学表示装置用基板に設けられた銅または銅合金からなる配線層を研磨するために、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の化学機械研磨用水系分散体を用いる、化学機械研磨方法。
  9. 第1の組成物および第2の組成物から構成され、銅または銅合金からなる配線層を研磨するための化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットであって、
    前記第1の組成物は、
    (A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、
    (B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤と、
    (C)砥粒と、
    (D)アミノ酸と、を含み、
    前記第2の組成物は、
    (E)酸化剤を含む、化学機械研磨用水系分散体調製用キット。
  10. 第3の組成物および第4の組成物から構成され、銅または銅合金からなる配線層を研磨するための化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットであって、
    前記第3の組成物は、(C)砥粒を含み、
    前記第4の組成物は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、(D)アミノ酸と、を含み、
    前記第3の組成物および前記第4の組成物の少なくとも一方は、(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤を含み、
    前記第3の組成物および前記第4の組成物の少なくとも一方は、(E)酸化剤を含む、化学機械研磨用水系分散体調製用キット。
  11. 第5の組成物、第6の組成物および第7の組成物から構成され、電気光学表示装置用基板に設けられた第5の組成物、第6の組成物および第7の組成物から構成され、銅または銅合金からなる配線層を研磨するための化学機械研磨用水系分散体を調製するためのキットであって、
    前記第5の組成物は、(E)酸化剤を含み、
    前記第6の組成物は、(C)砥粒を含み、
    前記第7の組成物は、(A)アミド硫酸およびその塩から選択される少なくとも1種と、(D)アミノ酸と、を含み、
    前記第5の組成物、前記第6の組成物および前記第7の組成物から選ばれる少なくとも1種は、(B)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、およびそれらの塩、から選択される少なくとも1種である界面活性剤を含む、化学機械研磨用水系分散体調製用キット。
  12. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の化学機械研磨用水系分散体調製用キットの各組成物を混合する工程を含む、化学機械研磨用水系分散体の調製方法。
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