JP2009257850A - 質量分析システム - Google Patents
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Abstract
現在の質量分析システムでは、価数の高いイオンでは同位体ピークのピーク間隔(1/価数)が狭まり価数判定の実施が困難である。本願の目的は、価数の高いイオンを検出した場合にも、価数の判定が可能な質量分析システムを提供することにある。
【解決手段】
本発明の特徴は、質量分析スペクトルより、同一の質量かつ異なる価数を有する同じ化合物の複数のイオン種を特定し、前記複数のイオン種のM/Z値に対して予め定めた裕度の範囲内で最小公倍数を求め、前記複数の前記化合物の質量及び各イオン種の価数を推定する質量分析システムにある。その結果、分析終了後のデータ解析精度の向上及び実験者の負担低減が見込める。さらに、タンデム型質量分析法を使用することにより、複数の成分が混在した試料の測定や、異なる価数の同一成分に対する重複分析の回避も可能となる。
【選択図】図1
Description
(1)まず、測定対象としてペプチドなどを用いて、MS1スペクトルを測定する。
(2)次に、MS1スペクトルから、一定値以下の強度の信号は除去するなど、ノイズ除去を実施する。
(3)次に、MS1スペクトルのうち、残った信号に対して、ピーク判定を実施し、イオン種リストを作成する。測定対象が、価数の高い(例えば、10価程度)イオンである場合一つのブロードなピークが検出され(図2下図参照、9価のイオンの例)、個々の同位体ピークを分離し、同位体ピークから価数を判定することは出来ない。従って、図3に示すように、同位体ピーク群からなるブロードなピークの各代表値をイオン種リストの値とする。同位体ピーク群のブロードピークの代表値としては、最大強度となる値や、ノイズを除去した後の最小m/z値(図9の場合のM/Z=580)を用いる。ここで、mはイオン質量、zはイオンの帯電価数である。ノイズを除去した後の最小m/z値は、検出されている同位体ピーク群において、同位体ピークの含有量が最小となる値である。全てのピークに対して、上記処理を繰り返し、イオン種リスト(X1〜X5)を取得する。
(4)次に、得られたイオン種リスト(X1〜X5)から、m/zが最小のイオン種、すなわち価数が最大となるイオン種(X1)に対して、価数を仮定する。ここで最初に仮定する価数は、解析中に考慮する上限の価数であり、ユーザが指定可能である。未知試料の場合には、上限を大きく設定(例えば、50価など)とすると、ほぼ全ての可能性について検討できる。
(5)次に、仮定された価数を有する価数が最大のイオン種(m/zが最小のイオン種)から、イオン種の質量Mを求める。今回は、単一の成分のみよりなる試料の測定を行っているため、他のイオン種も同一の質量を有する。他のイオン種は、質量Mと各イオン種のm/z値から価数zを導出する。
(6)ここで、作成したイオン種リストは、同位体ピーク群の代表値であるため、zは必ずしも整数とはならない。このため、各イオン種に対して得られた価数zを四捨五入し、整数Zとする。次に得られたZから、各イオン種の質量を再計算し、価数を仮定したイオン種の質量との差Δmを評価する。全てのイオン種のΔmが裕度以内であれば、仮定が正しいとして、仮定した価数を決定値とする。
(7)一方、Δmが裕度以上である場合には、最初に仮定した価数を変更(−1)して再度仮定し、同じ処理を繰り返す。
(8)各イオン種に対して、Δmが裕度以下となった場合に、各イオン種の価数が決定される。また、得られた価数からは、成分の質量が決定する。
(1)まず、MS1分析を行いMS1スペクトルを取得する。得られたスペクトルのうち、最大強度をもつイオン種をプリカーサーイオンとして選択する。この段階では、選択したイオン種の価数は不明である。
(2)選択したプリカーサーイオンに対してMS2分析を行う。得られたMS2スペクトルに対して、ノイズ除去を実施する。
(3)ノイズの除去された全検出ピークを直前のMS1スペクトルと照合する。照合の結果、一致ピークがある場合には、実施例1に従って価数を判定する。
(4)照合の結果、一致ピークが無い場合には価数判定が行えないため、二番目に強度の大きいイオン種(n番目に強度が大きいイオン種を分析している場合は、n+1番目に強度の大きいイオン種)に対してMS2分析を実施し、一致ピークがある場合には、実施例1に従って価数を判定する。
Claims (14)
- 複数の物質を含む試料より質量分析の対象となる試料物質を分離する試料分離手段と、
試料物質の質量分析スペクトルを取得する質量分析装置と、
試料分離手段及び質量分析装置を制御する制御手段とを有する質量分析システムであって、
前記質量分析装置は、試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得し、イオン化された試料物質より、少なくとも一つのM/Z値を有するイオン種を選択し、選択されたイオン種を解離させ、解離されたイオン種の質量分析(MS2)を行い質量分析スペクトルを取得するタンデム型質量分析装置であり、
MS1スペクトルより、同一の質量かつ異なる価数を有する同じ化合物の複数のイオン種を特定し、前記複数のイオン種のM/Z値に対して予め定めた裕度の範囲内で最小公倍数を求め、前記複数の前記化合物の質量及び各イオン種の価数を推定することを特徴とする質量分析システム。 - 請求項1に記載された質量分析システムにおいて、前記解離されたイオン種よりさらに測定対象となるイオン種の選択,イオン種の解離及び質量分析測定(MSn(n≧1))を行い質量分析スペクトルの取得をn−1回繰り返すことを特徴とする質量分析システム。
- 請求項1に記載の質量分析システムにおいて、
前記同一の質量かつ異なる価数を有する成分の複数のイオン種の特定は、MS1スペクトルとMSn+1(n≧1)スペクトルを照合し、スペクトル間で一致する複数のピークを決定し、一致する各ピークを同一の質量かつ異なる価数を有する成分の複数のイオン種と判定することを特徴とする質量分析システム。 - 請求項1において、前記裕度は、同一の質量を持つ成分に対して推定された質量から得られる理論同位体分布より、モノアイソトピックピークと、最大強度をもつ同位体ピークとを特定し、前記特定されたモノアイソトピックピークと同位体ピークとの質量差とすることを特徴とする質量分析システム。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載された質量分析システムにおいて、
前記MS2スペクトルのイオン種情報より価数減少イオンを排除し、前記イオン種情報に残留するイオン種に基づきMS2スペクトルを解析することを特徴とする質量分析システム。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載された質量分析システムにおいて、前記推定されたMS1の各イオン種の価数より、理論同位体分布を用いて各イオン種のモノアイソトピック質量を推定することを特徴とする質量分析システム。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載された質量分析システムにおいて、
前記MSn(n≧1)スペクトルのうち、前記特定された同一の質量かつ異なる価数を有する同じ化合物の複数のイオン種を同色で表示することを特徴とする質量分析システム。 - 請求項1ないし7のいずれかに記載された質量分析システムにおいて、
前記推定されたイオン種の価数をMSn(n≧1)スペクトルに表示することを特徴とする質量分析システム。 - 試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得し、
イオン化された試料物質より、少なくとも一つのM/Z値を有するイオン種を選択し、選択されたイオン種を解離させ、解離されたイオン種の質量分析(MS2)を行い質量分析スペクトルを取得し、解離されたイオン種よりイオン種の選択,解離,M/Z値の測定を繰り返すタンデム型質量分析方法であって、
同一の質量を持ち価数の異なる、同じ化合物の複数のイオン種を判定し、
前記複数のイオン種のM/Z値に対して予め定めた裕度の範囲内で最小公倍数を求め、
前記複数の前記化合物の質量及び各イオン種の価数を推定することを特徴とする質量分析方法。 - 請求項9に記載された質量分析方法であって、
前記同一の質量を持ち価数の異なる、同じ化合物の複数のイオン種は、MS1スペクトルとMSn+1(n≧1)スペクトルを照合し、スペクトル間で一致する複数のピークを決定し、一致する各ピークを同一の質量かつ異なる価数を有する成分の複数のイオン種として特定し、その特定されたイオン種の中から、次のMS2質量分析を行うイオン種を決定する、あるいは特定されたイオン種以外の中から、次のMS2質量分析を行うイオン種を決定することを特徴とする質量分析方法。 - 請求項9に記載された質量分析方法において、
前記同一の質量を持ち価数の異なる、同じ化合物の複数のイオン種を判定する工程は、MS1質量分析およびMS2質量分析の間の時間に行うことを特徴とする質量分析方法。 - 請求項11に記載された質量分析方法において、
前記MS1質量分析およびMS2質量分析の間の時間は、10ミリ秒以下であることを特徴とする質量分析方法。 - 試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得し、
イオン化された試料物質より、少なくとも一つのM/Z値を有するイオン種を選択し、選択されたイオン種を解離させ、解離されたイオン種の質量分析(MS2)を行い質量分析スペクトルを取得し、再度試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得する質量分析方法において、
MS2質量分析と、二度目のMS1質量分析の間の時間に、MS1スペクトルとMS2スペクトルを照合し、スペクトル間で一致する複数のピークを決定し、一致する各ピークを同一の質量かつ異なる価数を有する成分の複数のイオン種として特定し、
前記複数のイオン種のM/Z値に対して予め定めた裕度の範囲内で最小公倍数を求め、
前記複数の前記化合物の質量及び各イオン種の価数を推定することを特徴とする質量分析方法。 - 請求項13に記載された質量分析方法において、
前記再度のMS1質量分析では、測定者がMS2質量分析の測定前あるいは測定中に、MS2分析したイオン種とは別の価数の同一成分よりなるイオン種、或いは他の成分よりなるイオン種、を指定して測定可能なことを特徴とする質量分析方法。
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