JP2009257850A - 質量分析システム - Google Patents

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Abstract

【課題】
現在の質量分析システムでは、価数の高いイオンでは同位体ピークのピーク間隔(1/価数)が狭まり価数判定の実施が困難である。本願の目的は、価数の高いイオンを検出した場合にも、価数の判定が可能な質量分析システムを提供することにある。
【解決手段】
本発明の特徴は、質量分析スペクトルより、同一の質量かつ異なる価数を有する同じ化合物の複数のイオン種を特定し、前記複数のイオン種のM/Z値に対して予め定めた裕度の範囲内で最小公倍数を求め、前記複数の前記化合物の質量及び各イオン種の価数を推定する質量分析システムにある。その結果、分析終了後のデータ解析精度の向上及び実験者の負担低減が見込める。さらに、タンデム型質量分析法を使用することにより、複数の成分が混在した試料の測定や、異なる価数の同一成分に対する重複分析の回避も可能となる。
【選択図】図1

Description

本願は、質量分析システム及び質量分析方法に関する。
質量分析方法には、試料をイオン化してそのまま分析する方法(MS分析法)と、特定の試料イオン(プリカーサーイオン)を質量選択し、それを解離させて生成した解離イオンを質量分析するタンデム質量分析法がある。
タンデム質量分析法では、解離イオンの中から、特定の質量対電荷比を持つイオン(プリカーサーイオン)を選択し、プリカーサーイオンを解離して、その際生成した解離イオンの質量分析を行うことを繰り返す機能(解離・質量分析を多段に行う機能)がある(なお、n段目の計測を、以降MSnと記載する)。
特開2007−121134号公報(特許文献1)には、タンデム質量分析を行う際の方法として、複数のMSn+1測定の結果を用いてMSn測定結果の分析を行うことにより、解離・分析の効率化を図ることが記載されている。
特開2007−121134号公報
現在の質量分析システムでは、検出するイオンの価数が高くなると、同位体ピークのピーク間隔(1/価数)が狭まる。その結果、ピーク間が埋もれ、ピーク同士の分離がしにくいため、価数判定の実施が困難になる。また、多価イオンの価数の判定ができないと、複数の成分からなる混合試料の測定や、未知の試料の測定が困難である。さらに、既知の試料であっても、自動のデータ解析により価数の判定ができず、実験者が測定試料の情報に基づき価数を判定することになるため、実験者に多くの負担がかかる。
そこで本願発明の課題は、多価イオンの価数の判定が容易な質量分析システムを提供することにある。また、このような質量分析システムにより、多価イオンを精度よく検出し、重複分析や後処理の精度が向上させることにある。
上記課題を解決する本発明の特徴は、測定対象となる物質の質量分析スペクトルで、同一の質量を持つ成分の異なる価数の複数のイオン種を判定し、得られた同一の質量を持ち異なる価数の複数のイオン種に対して、一定の裕度の範囲内で最小公倍数を求め、各イオン種の価数と質量を推定することにある。
質量分析システムは、複数の物質を含む試料より質量分析の対象となる試料物質を分離する試料分離手段と、試料物質の質量分析スペクトルを取得する質量分析装置と、試料分離手段及び質量分析装置を制御する制御手段とを有する。
本発明では、同一の質量を持ち、かつ価数の異なる複数のイオン種のM/Z値の最小公倍数を求めることにより、各イオン種の質量及び価数を推定する。従って、タンデム型質量分析装置では、試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得し、イオン化された試料物質より、少なくとも一つのM/Z値を有するイオン種を選択し、選択されたイオン種を解離させ、解離されたイオン種の質量分析(MS2)を行い質量分析スペクトルを取得するとともに、MS1スペクトルより、同一の質量かつ異なる価数を有する同じ化合物の複数のイオン種を特定し、予め定めた裕度の範囲内で複数のイオン種のM/Z値の最小公倍数を求め、試料化合物の質量及び各イオン種の価数を推定することができる。
また、他の本発明の特徴は、試料の質量分析測定の際のMS1測定を行い、また、MS1の測定で得られたスペクトルのうち一つのイオン種を選択し、選択したイオン種についてMS2測定を行い、MS2測定データとMS1測定データを比較して一致するピークを特定し、MS1の測定で得られたスペクトルのうち同一の質量を有し、かつ異なる価数の複数のイオン種を特定する、同一の質量を持ちかつ価数の異なるイオン種の判定方法にある。さらには、特定されたイオン種に基づきMS1の選択されたイオン種の価数を推定する価数推定方法にある。
上記によれば、同位体ピークの間隔を用いた価数判定方法では判定困難な多価イオンピークに対して、ユーザの必要とする測定対象の価数を推定することが可能な質量分析システムを提供できる。
以下、本願の発明について、更に詳細を説明する。
まず、タンデム質量分析法の具体例を示す。タンデム質量分析法で、解離・質量分析を多段に行う機能とは以下のような工程を有する。(1)試料中の所定の物質の質量分析分布をマススペクトルデータ(MS1)として計測する。(2)MS1の中から、あるm/z値を持つプリカーサーイオンを選択する。(3)選択されたプリカーサーイオンを解離する。(4)プリカーサーイオンより解離された解離イオンの質量分析データ(MS2)を計測する。(5)計測されたMS2マススペクトルデータのうち、あるm/z値を持つイオンを選択する。(6)選択されたプリカーサーイオンを更に解離し、得られた解離イオンの質量分析データ(MS3)を計測する。(7)これらの操作を目的とするMSnまで継続する。
このように解離・質量分析を多段に行うことにより、解離段階毎に、解離前のイオンの分子構造の情報が得られ、イオンの構造を推定できる。イオンの構造の情報が詳細になるほど、プリカーサーイオン構造の推定精度が向上する。
イオンを解離させる方法として、種々のものが報告されているが、下記に代表的な例を示す。現在、イオンの解離方法として、CID(衝突励起解離)が広く用いられている。CIDは、質量分析装置内でHeガスなどの不活性ガスと試料イオンとを衝突させ、イオンを断片化する手法である。たんぱく質の場合の断片化の程度は、アミノ酸残基間の結合エネルギーによって左右される。従って、断片化の程度・解離の傾向は、アミノ酸残基の配列によって異なる。また、CIDでは、翻訳後修飾など、アミノ酸残基に結合した修飾基も解離する。CIDでは、配列に応じた一部の解離のみが生じるため、得られる情報量が少ない。従って、質量の大きなペプチド,たんぱく質の分析には、測定前にタンパク質を消化酵素して断片化した十数個のアミノ酸残基からなるペプチド(分子量:〜3000程度、価数:〜5価)とし、その測定を行うことが主流である。
他のイオンの解離方法として、電子の授受によってイオンの断片化を起こさせるECD(電子捕獲解離)やETD(電子移動解離)といった解離手法があり、近年実用化されつつある。CIDと異なり、ECDはアミノ酸配列に依存せず、プロリンのN末端側を除いたアミノ酸残基間の主鎖で均等に解離が生じる。従って、CIDと比べて質量の大きな(分子量:数千〜1万)イオンに対しても分析が可能である。ただし、m/zの検出範囲には制限があるため(〜2000など)、分子量1万程度のイオンを測定するには、より多価にイオン化させ、検出範囲内で検出する必要がある。この場合、少なくとも6価以上の価数を持つイオンを分析する必要がある。このため、ETDやECDでは、これまで主流のCIDを用いた測定と比べて、より多価のイオンの測定が必須となっている。また、ECDでは、解離はアミノ酸の主鎖のみで起こるため、翻訳後修飾基はアミノ酸残基に残したまま解析が可能である。
質量分析法により取得したデータを解析することにより、測定物の構造を推定することが可能である。ここで、データ解析に必要な情報は、プリカーサーイオンの価数,質量である。質量分析スペクトルでは、横軸はm/z(質量/価数)、縦軸はイオンの強度が表示される。各成分のイオンピークの近傍には13Cや18O,15Nといったアミノ酸を構成する元素の同位体が含まれた同位体ピークが検出される。各成分のイオンピークとその同位体ピークとの質量差は1であるため、同位体ピーク間隔は1/価数で検出される。従ってこの同位体ピークの間隔から価数を判定できる。例えば、測定物がタンパク質消化物のようなペプチドである場合には、得られた質量分析スペクトルをデータベース検索やdenovo sequencing解析を用いてデータ解析し、元の配列を同定する。
同位体ピークの間隔は1/価数で検出されるため、この間隔からイオンの価数を判定できる。ECDやETDでも、ピーク間隔からイオンの価数判定が可能であるが、イオンの価数があがるにつれ、同位体ピーク間隔が狭くなり、ピークの分離や、正しい価数を判定することが困難となる。ピーク分離の精度が低い場合には、価数判定精度が低くなり、成分を判別(区別)することが出来ないため、複数の成分からなる混合試料の測定は困難である。また、単成分の試料であっても、何価のイオン種が現われているのかが判定できないため、予め質量の分かっている既知の試料しか測定できない。また、分析終了後のデータ解析においても、自動で価数を判定することが出来ないため、実験者が測定試料の情報(例えば、質量)からマニュアルで価数を判定,指定することになり、実験者に多くの負担がかかる。
以下に本発明の実施例を示す。
実施例1では、単一の成分のみを含む未知の試料に対して質量分析を行った際に、MS1スペクトルから同一の質量、異なる価数を有する複数のイオン種を用い、多価イオンの価数の判定を行う例を説明する。図1に、単一成分のMS1スペクトルのみを用いた多価イオン判定フローを示す。
(1)まず、測定対象としてペプチドなどを用いて、MS1スペクトルを測定する。
(2)次に、MS1スペクトルから、一定値以下の強度の信号は除去するなど、ノイズ除去を実施する。
(3)次に、MS1スペクトルのうち、残った信号に対して、ピーク判定を実施し、イオン種リストを作成する。測定対象が、価数の高い(例えば、10価程度)イオンである場合一つのブロードなピークが検出され(図2下図参照、9価のイオンの例)、個々の同位体ピークを分離し、同位体ピークから価数を判定することは出来ない。従って、図3に示すように、同位体ピーク群からなるブロードなピークの各代表値をイオン種リストの値とする。同位体ピーク群のブロードピークの代表値としては、最大強度となる値や、ノイズを除去した後の最小m/z値(図9の場合のM/Z=580)を用いる。ここで、mはイオン質量、zはイオンの帯電価数である。ノイズを除去した後の最小m/z値は、検出されている同位体ピーク群において、同位体ピークの含有量が最小となる値である。全てのピークに対して、上記処理を繰り返し、イオン種リスト(X1〜X5)を取得する。
(4)次に、得られたイオン種リスト(X1〜X5)から、m/zが最小のイオン種、すなわち価数が最大となるイオン種(X1)に対して、価数を仮定する。ここで最初に仮定する価数は、解析中に考慮する上限の価数であり、ユーザが指定可能である。未知試料の場合には、上限を大きく設定(例えば、50価など)とすると、ほぼ全ての可能性について検討できる。
(5)次に、仮定された価数を有する価数が最大のイオン種(m/zが最小のイオン種)から、イオン種の質量Mを求める。今回は、単一の成分のみよりなる試料の測定を行っているため、他のイオン種も同一の質量を有する。他のイオン種は、質量Mと各イオン種のm/z値から価数zを導出する。
(6)ここで、作成したイオン種リストは、同位体ピーク群の代表値であるため、zは必ずしも整数とはならない。このため、各イオン種に対して得られた価数zを四捨五入し、整数Zとする。次に得られたZから、各イオン種の質量を再計算し、価数を仮定したイオン種の質量との差Δmを評価する。全てのイオン種のΔmが裕度以内であれば、仮定が正しいとして、仮定した価数を決定値とする。
(7)一方、Δmが裕度以上である場合には、最初に仮定した価数を変更(−1)して再度仮定し、同じ処理を繰り返す。
(8)各イオン種に対して、Δmが裕度以下となった場合に、各イオン種の価数が決定される。また、得られた価数からは、成分の質量が決定する。
ここで、裕度はユーザが指定するか、或いは質量Mから得られる理論同位体分布においてのモノアイソトピック質量と最大強度を持つ同位体ピークの質量差とする。測定対象がタンパク質やペプチドである場合、平均アミノ酸(averagine)の質量(112.59)および構成元素比(C:4.9384 H:7.7583 N:1.3577 O:1.5994 S:0.0417)から、成分の理論同位体分布を求めることが可能である。理論同位体分布からは、最大強度となる同位体ピークおよびモノアイソトピック質量がわかる。本実施例では、理論同位体分布から得られたモノアイソトピック質量と最大強度を持つ同位体ピークの質量差を用いた。
得られた質量は、最大強度となる同位体ピークである可能性が高いため、モノアイソトピック質量を推定することが可能である。ただし、本処理によりモノアイソトピック質量を推定する場合には、スペクトルの信号ばらつきを減らすため、複数のスペクトルを平均化或いは積算することが望ましい。
実施例2では、複数の成分が混合した試料を測定した場合に、MS1スペクトルとMSn+1(n≧1)スペクトルとを用いて価数を判定する例について説明する。図4は、MS1スペクトルとMS2スペクトルを用いて価数を判定するフローを示している。MS2スペクトルは、MS1スペクトルで検出されたイオンの一つを選択し、ECD或いはETDで解離後、質量分析したものである。
まず、MS1スペクトルとMS2スペクトルのそれぞれに対して、実施例1と同様にノイズ除去を実施し、同位体ピーク群のイオン種リストを作成する。MS1スペクトルには、複数の成分が混在して検出されているため、同一の質量となる成分のみを分離する必要がある。また、MS1,MS2それぞれのスペクトルのみでは、質量が同じで価数が異なるイオンを判別することは困難である。
図5に示すように、ECDやETDで解離させ、測定されたMS2スペクトルには、プリカーサーイオンが解離した解離イオンとともに、プリカーサーイオンの価数のみが減少したイオン種が検出される。これらのイオン種を以降、価数減少イオン種と呼ぶ。MS1スペクトルとMS2スペクトルを照合することで、スペクトルから同一の質量となる成分のみを分離し、価数減少イオン種を判定する。このとき、判定結果に応じて、MS1およびMS2スペクトル上に判定した価数を表示し、同一成分を同色表示させる。これにより、現在何種類の成分が混在しているかといった情報を実験者が得られる。この情報を指標として、多数の成分が同時に検出されている場合には、液体クロマトグラフィーなど前処理段階の分離条件を変更することが望ましい。
各イオン種の照合の際の裕度はユーザが指定可能である。照合の結果、一致したイオン種はMS1スペクトルとMS2スペクトルより得られる同一成分リストに格納され、第一の実施例で示した価数判定が実施される。
本実施例のように、複数成分が混在した試料であっても、解析したいピークに対してMS2分析を行い、MS1スペクトルと比較することにより、目的とする試料成分情報の分離や、価数判定を行うことができる。従って、本実施例による価数判定を測定中に実施することにより、複数の成分が混在した試料の測定が可能となる。また、同一成分の判別により、異なる成分に対してMS2質量分析を行えるようになり、同じ成分に対する重複分析回避から、より多くの成分を一回の測定で分析できる。或いは、同じ成分で価数の異なるイオンに対してMS2分析を行うことで、一つの成分辺りの情報量が多くなり、測定結果の信頼性が向上する。これらの優先順位は、測定前にユーザが指定することが可能である。また、ECDあるいはETDで解離を行った場合には、MS2スペクトルに価数減少イオン種が生成される。この価数減少イオン種は、プリカーサーイオンから断片化されていないため、プリカーサーイオンの構造に関する情報を全く含まないだけでなく、価数減少イオン種の存在により、誤った構造情報を導出する可能性を高めてしまう。このため、価数減少イオン種の情報は、解析前に排除することが望ましい。試料が既知物質である場合、実験者がMS2スペクトルから価数減少イオン種の情報を排除することは容易であるが、未知試料に対して同様の作業を行うことは、多価イオンの価数判定の難しさから負担がかかる。本実施例では、MS1スペクトルとMS2スペクトルの照合により、測定中に価数減少イオン種の判定ができ、これらの情報は解析前に排除が可能である。これにより、分析終了後のデータ解析精度の向上及び実験者の負担低減が見込める。
実施例3では、実施例1,2の価数判定方法を利用した質量分析システムについて説明する。図6は、本実施例の質量分析システムのフロー図である。
質量分析システムの構成例を図7に示す。本実施例の質量分析システムは、試料の断片化や分離を行う前処理系と、試料をイオン化するイオン化部,イオン化された試料を質量・価数により分散させる質量分析部,分散された試料イオンを検出するイオン検出部,試料を質量分析した結果を処理するデータ分析部,データ分析された質量分析結果を表示する表示部と、ユーザ入力部に入力された条件に応じてこれらを制御する制御部を有する。
分析対象の試料は、液体クロマトグラフィーなどの前処理系で前処理される。例えば分析対象の試料がたんぱく質である場合には、前処理系にて、消化酵素により断片化されたペプチドとされた後、ガスクロマトグラフィー(GC)または液体クロマトグラフィー(LC)により分離される。
次に、イオン化部にて試料がイオン化され、試料イオンは質量分析部に輸送・入射され、質量分析部にてイオンの質量対電荷比m/zに応じて分離される。分離されたイオンは、イオン検出部で検出され、検出結果がデータ処理部でデータ整理・処理され、その分析結果である質量分析データが表示部にて表示される。この一連の質量分析過程(試料の前処理,試料のイオン化,試料イオンビームの質量分析部への輸送及び入射,質量分離過程、及び、イオン検出,データ処理)の全体は、制御部で制御される。
質量分析測定中に、多価イオンの価数判定をリアルタイムで実施することにより、価数判定結果に応じて分析を行うことが可能である。以下、図6を用い、MS1分析を1回実施した後、MS2分析を2回行う設定で測定し、測定中に実施例1,2で示した多価イオンの価数判定をリアルタイムに実施し、次の分析内容を制御する例について説明する。
(1)まず、MS1分析を行いMS1スペクトルを取得する。得られたスペクトルのうち、最大強度をもつイオン種をプリカーサーイオンとして選択する。この段階では、選択したイオン種の価数は不明である。
(2)選択したプリカーサーイオンに対してMS2分析を行う。得られたMS2スペクトルに対して、ノイズ除去を実施する。
(3)ノイズの除去された全検出ピークを直前のMS1スペクトルと照合する。照合の結果、一致ピークがある場合には、実施例1に従って価数を判定する。
(4)照合の結果、一致ピークが無い場合には価数判定が行えないため、二番目に強度の大きいイオン種(n番目に強度が大きいイオン種を分析している場合は、n+1番目に強度の大きいイオン種)に対してMS2分析を実施し、一致ピークがある場合には、実施例1に従って価数を判定する。
このような価数判定を、測定中にリアルタイムに行うシステムとすることができる。リアルタイムにすることで、価数判定の結果に基づき、次のMS2分析内容を選択できる。MS1スペクトルに含まれる複数のイオン種のうち、価数が異なるが同じ成分を分析したり、回避したりすることができる。回避する場合は、同じ成分に対する分析回数を減らすことで、別の成分を分析する回数が多くなり、より多くの成分を一回の測定で分析できる。また、価数が異なる同じ成分のイオン種を分析する場合には、同じ成分ではあるが、価数の異なるイオンに対してもMS2分析を行うことで、1つの成分に対する情報量が多くなり、結果の信頼性が向上する。どちらを優先するかはユーザが測定前あるいは測定中に指定可能である。上記の処理を分析終了時間に達するまで繰り返す。
なお、測定全体のスループットに悪影響を与えることの無いよう、MS1とMS2を比較する工程から次の分析内容を決定する工程までの処理の合計時間が10ミリ秒以内となることが望ましい。処理時間の短縮には、ピーク判定の効率化,データ量の低減等の手段が有効である。
本発明の第1の実施例である同一の質量であり、価通の異なる複数のイオン種を用いた価数判定処理の流れの概略図である。 2価および9価イオンの同位体ピーク分布である。 本発明の第1の実施例における同位体ピーク群から作成したイオン種リストの概略図である。 本発明の第2の実施例による、MS1スペクトルとMS2スペクトルを用いた価数判定処理の流れの概略図である。 本発明の第2の実施例による、MS1スペクトルと照合するMS2スペクトルの概略図である。 本発明の第3の実施例における、実施例1および実施例2の価数判定方法を用いた質量分析システムの流れの概略図である。 本発明の第3の実施例による質量分析データを計測する質量分析システム全体の概略図である。

Claims (14)

  1. 複数の物質を含む試料より質量分析の対象となる試料物質を分離する試料分離手段と、
    試料物質の質量分析スペクトルを取得する質量分析装置と、
    試料分離手段及び質量分析装置を制御する制御手段とを有する質量分析システムであって、
    前記質量分析装置は、試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得し、イオン化された試料物質より、少なくとも一つのM/Z値を有するイオン種を選択し、選択されたイオン種を解離させ、解離されたイオン種の質量分析(MS2)を行い質量分析スペクトルを取得するタンデム型質量分析装置であり、
    MS1スペクトルより、同一の質量かつ異なる価数を有する同じ化合物の複数のイオン種を特定し、前記複数のイオン種のM/Z値に対して予め定めた裕度の範囲内で最小公倍数を求め、前記複数の前記化合物の質量及び各イオン種の価数を推定することを特徴とする質量分析システム。
  2. 請求項1に記載された質量分析システムにおいて、前記解離されたイオン種よりさらに測定対象となるイオン種の選択,イオン種の解離及び質量分析測定(MSn(n≧1))を行い質量分析スペクトルの取得をn−1回繰り返すことを特徴とする質量分析システム。
  3. 請求項1に記載の質量分析システムにおいて、
    前記同一の質量かつ異なる価数を有する成分の複数のイオン種の特定は、MS1スペクトルとMSn+1(n≧1)スペクトルを照合し、スペクトル間で一致する複数のピークを決定し、一致する各ピークを同一の質量かつ異なる価数を有する成分の複数のイオン種と判定することを特徴とする質量分析システム。
  4. 請求項1において、前記裕度は、同一の質量を持つ成分に対して推定された質量から得られる理論同位体分布より、モノアイソトピックピークと、最大強度をもつ同位体ピークとを特定し、前記特定されたモノアイソトピックピークと同位体ピークとの質量差とすることを特徴とする質量分析システム。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載された質量分析システムにおいて、
    前記MS2スペクトルのイオン種情報より価数減少イオンを排除し、前記イオン種情報に残留するイオン種に基づきMS2スペクトルを解析することを特徴とする質量分析システム。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載された質量分析システムにおいて、前記推定されたMS1の各イオン種の価数より、理論同位体分布を用いて各イオン種のモノアイソトピック質量を推定することを特徴とする質量分析システム。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載された質量分析システムにおいて、
    前記MSn(n≧1)スペクトルのうち、前記特定された同一の質量かつ異なる価数を有する同じ化合物の複数のイオン種を同色で表示することを特徴とする質量分析システム。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載された質量分析システムにおいて、
    前記推定されたイオン種の価数をMSn(n≧1)スペクトルに表示することを特徴とする質量分析システム。
  9. 試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得し、
    イオン化された試料物質より、少なくとも一つのM/Z値を有するイオン種を選択し、選択されたイオン種を解離させ、解離されたイオン種の質量分析(MS2)を行い質量分析スペクトルを取得し、解離されたイオン種よりイオン種の選択,解離,M/Z値の測定を繰り返すタンデム型質量分析方法であって、
    同一の質量を持ち価数の異なる、同じ化合物の複数のイオン種を判定し、
    前記複数のイオン種のM/Z値に対して予め定めた裕度の範囲内で最小公倍数を求め、
    前記複数の前記化合物の質量及び各イオン種の価数を推定することを特徴とする質量分析方法。
  10. 請求項9に記載された質量分析方法であって、
    前記同一の質量を持ち価数の異なる、同じ化合物の複数のイオン種は、MS1スペクトルとMSn+1(n≧1)スペクトルを照合し、スペクトル間で一致する複数のピークを決定し、一致する各ピークを同一の質量かつ異なる価数を有する成分の複数のイオン種として特定し、その特定されたイオン種の中から、次のMS2質量分析を行うイオン種を決定する、あるいは特定されたイオン種以外の中から、次のMS2質量分析を行うイオン種を決定することを特徴とする質量分析方法。
  11. 請求項9に記載された質量分析方法において、
    前記同一の質量を持ち価数の異なる、同じ化合物の複数のイオン種を判定する工程は、MS1質量分析およびMS2質量分析の間の時間に行うことを特徴とする質量分析方法。
  12. 請求項11に記載された質量分析方法において、
    前記MS1質量分析およびMS2質量分析の間の時間は、10ミリ秒以下であることを特徴とする質量分析方法。
  13. 試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得し、
    イオン化された試料物質より、少なくとも一つのM/Z値を有するイオン種を選択し、選択されたイオン種を解離させ、解離されたイオン種の質量分析(MS2)を行い質量分析スペクトルを取得し、再度試料物質をイオン化して質量分析(MS1)を行って質量分析スペクトルを取得する質量分析方法において、
    MS2質量分析と、二度目のMS1質量分析の間の時間に、MS1スペクトルとMS2スペクトルを照合し、スペクトル間で一致する複数のピークを決定し、一致する各ピークを同一の質量かつ異なる価数を有する成分の複数のイオン種として特定し、
    前記複数のイオン種のM/Z値に対して予め定めた裕度の範囲内で最小公倍数を求め、
    前記複数の前記化合物の質量及び各イオン種の価数を推定することを特徴とする質量分析方法。
  14. 請求項13に記載された質量分析方法において、
    前記再度のMS1質量分析では、測定者がMS2質量分析の測定前あるいは測定中に、MS2分析したイオン種とは別の価数の同一成分よりなるイオン種、或いは他の成分よりなるイオン種、を指定して測定可能なことを特徴とする質量分析方法。
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