JP2018040802A - 分子種のモノアイソトピック質量の特定のための方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】モノアイソトピック質量または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを特定する。【解決手段】(i)質量分析計により試料の質量スペクトルを測定し、(ii)試料の質量スペクトルの測定されたm/z値の範囲を断片に分割し、(iii)m/z値の範囲の断片のいくつかをプロセッサの1つのプロセッサに割り当て、(iv)m/z値の範囲の断片における測定された質量スペクトルから、試料中に含有され/試料から生じる分子種に対して、比電荷zを有するそれらのイオンの同位体分布を推定し、(v)試料中に含有され/試料から生じる分子種のイオンの推定された同位体分布から、分子種のモノアイソトピック質量または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを推定する。【選択図】図1

Description

本発明は、少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法に関する。この方法は、試料の質量スペクトルを測定するために質量分析計を使用している。この方法を用いて、質量分析計により調査される試料中に含有される、または少なくともイオン化プロセスによって質量分析計により調査される試料から生じる分子種の、モノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが特定され得る。好ましくは、イオン化プロセスは、質量分析計により分析されるイオンを形成する。
1つの分子種の、ほとんどの場合様々な分子種の、少なくともモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを特定する方法は、一般的に利用可能である。好ましくは、これらの方法は、典型的には200u〜5,000,000uの間、好ましくは500u〜100,000uの間、特に好ましくは5,000u〜50,000uの間の質量を有する、ペプチド、タンパク質、核酸、脂質及び炭水化物等の巨大分子のモノアイソトピック質量を特定するために使用される。
これらの方法は、試料を調査するために使用される。これらの試料は、そのモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータにより特定され得る分子種を含有し得る。
分子種は、同じ分子式を有する分子のクラスとして定義される(例えば、水は分子式H2Oを有し、メタンは分子式CH4を有する)。
または、調査された試料は、少なくともイオン化プロセスにより試料から生成されるイオンによって、より良く理解され得る。イオンは、好ましくは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、プラズマイオン化、電子イオン化(EI)、化学イオン化(CI)、及び大気圧化学イオン化(APCI)により生成され得る。生成されたイオンは、ほとんどの場合分子構造及び対応する分子式を有する荷電粒子である。本特許出願に関連して、「少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種」という用語は、少なくともイオン化プロセスによって試料から生じるイオンの分子式を指すように理解されるものとする。したがって、少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータは、イオンの電荷がゼロに低減された後のイオンの分子式を探し、後述のようにイオン化プロセスに従って分子式を変更することにより、少なくともイオン化プロセスによって試料から生じるイオンから推定され得る。
分子種において、全ての分子は、分子式に従う原子の同じ組成を有する。しかしながら、分子のほとんどの原子は、異なる同位体として生じ得る。例えば、有機化学の基本元素である炭素原子は、98.9%の自然発生確率を有する12C同位体、及び1.1%の自然発生確率を有する13C同位体(その原子核内にさらに1つの中性子を有する)の2つの安定な同位体として生じる。同位体のこの発生確率に起因して、より高い原子数からなるより高い質量の特に複雑な分子は、分子の原子が異なる同位体として存在する多くのアイソトポマーを有する。特許出願の文脈全体において、分子種のこれらのアイソトポマーは、「分子種の同位体」として指定される。これらの同位体は、異なる質量を有し、本特許出願の内容において分子種の同位体分布(略語:ID)と呼ばれる、分子種の同位体の質量分布をもたらす。したがって、各分子種は、異なる質量を有し得るが、分子種のより良い理解及び特定のために、各分子にモノアイソトピック質量が割り当てられる。これは、分子の各原子が最も低い質量を有する同位体として存在する場合の分子の質量である。例えば、メタン分子は、分子式CH4を有し、水素は、その核内に陽子を有する1H、及びその核内にさらなる中性子を有する2H(重水素)の同位体を有する。したがって、炭素の最も低い質量の同位体は12Cであり、水素の最も低い質量の同位体は1Hである。したがって、メタンのモノアイソトピック質量は、16uである。しかしながら、17u、18u、19u、20u及び21uの質量を有する他のメタン同位体のわずかな可能性が存在する。これらの他の同位体は全て、メタンの同位体分布に属し、質量分析計の質量スペクトルにおいて視認され得る。
少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定は、質量分析計によって調査される試料の質量スペクトルを測定することによるものである。一般に、試料の質量スペクトルを測定するために、当業者に知られているあらゆる種類の質量分析計を使用することができる。特に、質量分析器としてOrbitrapを有する質量分析計、FT−質量分析計、ICR質量分析計またはMR−TOF質量分析計等の高分解能の質量分析計を使用することが好ましい。本発明の方法が適用され得る他の質量分析計は、特に、TOF質量分析計、及びHR四重極質量分析器を有する質量分析計である。しかしながら、分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを特定することは、質量スペクトルが低分解能を有する質量分析計で測定される場合、特に1uの質量差を有する同位体の隣接ピークを区別することができないため、既知の特定方法では困難である。
一方、試料中にすでに存在する分子は自由であり、イオン化プロセスによって、例えば電子の受け入れ及び/または放出によってのみ帯電する。本発明の方法は、試料中に含有されるこれらの分子種に、質量分析計の質量スペクトルにおいて検出されるそのイオンによってそのモノアイソトピック質量を割り当てることができる。
一方、イオン化プロセスは、より小さい荷電粒子に断片化させる、または試料中に含有される分子に原子もしくは分子を付加し、プロセスにより帯電されるより大きい分子をもたらすことにより、試料中に含有される分子を変化させることができる。また、イオン化プロセスによって、試料のマトリックスは帯電した分子に分割され得る。したがって、これらのイオンは全て、説明されたイオン化プロセスによって試料から生じる。したがって、これらのイオンに関して、試料から生じた対応する分子種は、少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法によって調査される必要がある。
現在まで、パターソン関数、フーリエ変換、またはそれらの組み合わせ(M.W.Senko et al.,J.Am.Soc.Mass Spectrom.1995,6,52;D.M.Horn et al.,J.Am.Soc.Mass Spectrom.2000,11,320;L.Chen & Y.L.Yap,J.Am.Soc.Mass Spectrom.2008,19,46)、m/z精度スコア(Z.Zhang & A.G.Marshall,J.Am.Soc.Mass Spectrom.1998,9,225)、実験的に観察されたピークパターンの理論モデルへのフィッティング(P.Kaur & P.B.O’Connor,J.Am.Soc.Mass Spectrom.2006,17,459;X.Liu et al.,Mol.Cell Proteomics 2010,9,2772)、及びエントロピーに基づくデコンボリューションアルゴリズム(B.B.Reinhold & V.N.Reinhold,J.Am.Soc.Mass Spectrom.1992,3,207)を含む、質量スペクトルにおける同位体ピークのモノアイソトピック質量を特定するための多くの方法が公開されている。これらの方法は、多くの場合、ペプチド及び/または無傷タンパク質等の特定用途に標的化されており、報告される実行時間は、2.2−GHz CPUにおいて秒の時間範囲内であるが(Liu et al.,2010)、これは、MSプロテオミクスの標準的方法の場合のような、オンライン検出及びその後のさらなるMS分析のための種の選択には不十分である。P.Yipらの未公開の方法は、以前に元のデータからバイナリ強度情報を有する対数m/z軸に変換された潜在的に関連したピークの多数の関連付けを使用して、無傷タンパク質の分析用に最適化されている。しかしながら、速度は、フーリエ変換質量分析計への使用には十分速くない。明らかに、ペプチド、小有機分子、及び無傷タンパク質を含むより広範な用途に好適であるだけでなく、(その後の走査の取得を遅延させることのない)データ取得直後の高速オンライン分析にも好適である総体的な手法が、取得速度、すなわち単位時間当たりの実験的に分析され得るデータの量が不可欠である用途の領域に必要とされている。
上述の目的は、請求項1に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための新たな方法により解決される。
この方法は、
(i)質量分析計により試料の質量スペクトルを測定するステップと、
(ii)試料の質量スペクトルの測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲を断片に分割するステップと、
(iii)測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくともいくつかを、いくつかの提供されたプロセッサの1つのプロセッサに割り当てるステップと、
(iv)測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくとも1つにおける測定された質量スペクトルから、試料中に含有される、及び/または試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、比電荷zを有するそれらのイオンの同位体分布を推定するステップと、
(v)試料中に含有される、及び/または試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれのイオンの少なくとも1つの推定された同位体分布から、分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを推定するステップと、を含む。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片のそれぞれにおいて、比電荷zを有する1つの分子種のイオンの少なくとも1つの同位体分布が検出される。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、少なくとも1つの分子種以外の少なくとも1つの分子種に対して、比電荷zを有するそのイオンの同位体分布が、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくとも1つにおいて推定される。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のいくつかに対して、モノアイソトピック質量または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、異なる比電荷zを有するそのイオンの2つ以上の推定された同位体分布から推定される。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のいくつかに対して、モノアイソトピック質量または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の異なる断片から推定される、異なる比電荷zを有するそのイオンの2つ以上の推定された同位体分布から推定される。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれのモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の異なる断片から推定された比電荷zを有するイオンの同位体分布を評価することにより、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくとも1つにおける分子種の比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの推論された同位体分布から推定される。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の好ましい実施形態において、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれのモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、プロセッサに割り当てられた全ての断片から推定された比電荷zを有するイオンの同位体分布を評価することにより、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくとも1つにおける分子種の比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの推定された同位体分布から推定される。
試料中に含有される少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの同位体分布が、4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の少なくとも3つの操作によって、質量スペクトルの測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)を推定することにより、測定された質量スペクトルから推定される。
試料中に含有される少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の好ましい実施形態において、質量スペクトルの測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)が、4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の操作によって推定される。
試料中に含有される少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの同位体分布が、電荷1と最大電荷状態zmaxとの間の各電荷状態zに対して、質量スペクトルの測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)を推定することにより、測定された質量スペクトルから推定される。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、ステップ(iv)における同位体分布の推定後に、推定された同位体分布の少なくとも一部が、そのピークの1つ以上が低分解能電荷状態zhiの同位体分布に属し得るかどうか調査される。好ましくは、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のモノアイソトピック質量またはこれらの同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、調査によりステップ(iv)において推定された同位体分布のピークに割り当てられる低分解能電荷状態zhiの同位体分布から推定される。
上述の目的は、さらに、請求項11に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための新たな方法により解決される。
この方法は、
(i)質量分析計により試料の質量スペクトルを測定するステップと、
(ii)測定された質量スペクトルから、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の少なくとも3つの操作によって、質量スペクトルの測定されたピークの電荷スコアcsPX(z)を推定することにより、比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの同位体分布を推定するステップと、
(iii)試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれの比電荷zを有するイオンの少なくとも1つの推定された同位体分布から、分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを推定するステップと、を含む。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の好ましい実施形態において、質量スペクトルの測定されたピークの電荷スコアcsPX(z)が、4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の操作によって推定される。
試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための本発明の方法の一実施形態において、ステップ(ii)における同位体分布の推定後に、推定された同位体分布の少なくとも一部が、そのピークの1つ以上が低分解能電荷状態zhiの同位体分布に属し得るかどうか調査される。好ましくは、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のモノアイソトピック質量またはこれらの同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、調査によりステップ(ii)において推定された同位体分布のピークに割り当てられる低分解能電荷状態zhiの同位体分布から推定される。
上述の目的は、さらに、請求項13に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための新たな方法により解決される。
この方法は、
(i)質量分析計により試料の質量スペクトルを測定するステップと、
(ii)測定された質量スペクトルから、試料中に含有される、及び/または試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、比電荷zを有するそのイオンの少なくとも2つの同位体分布を推定するステップと、
(iii)試料中に含有される、及び/または試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれのイオンの少なくとも2つの推定された同位体分布から、分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを推定するステップと、を含む。
本発明の方法は、分子種の関連した同位体分布からの情報を利用し、これは、分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定の精度を大幅に増加させる。これは、イオン化によってより高い電荷状態を有する分子種のイオンの同位体分布の広範なセットを形成する傾向を有する無傷タンパク質に対して、特に有利である。低分解の、または全く分解されないID(すなわち、その同位体ピークが分解されない、または部分的にのみ分解されるID)は、最大限に分解可能な同位体分布を決定することにより動的に扱われる。フレキシブルなm/zウィンドウに起因して、単一IDの分離が防止される。実践される電荷スコアは、ペプチド、小有機分子(一般的ではない同位体ピークパターンを有するものを含む)、及び無傷タンパク質を含む、広範な用途に最適化されている。一般に、検出及び注釈は、ペプチド/タンパク質のアベラジン(averagine)モデルに限定されない。先行技術の方法とは対照的に、本発明の方法は、複数の同位体分布の各分子種への割り当てを可能にする。新たな方法の性能を高めるために、フーリエ変換等の時間を要する手順が回避され、複数処理及び速度が最適化されたプロセスが、可能な限り使用される。本発明の方法は、隣接及び重複するIDの間をより良好に区別するために、ピークの元の強度を使用するが、これは、ペプチドデータ、ならびにペプチド及びタンパク質の混合物に特に重要である。新たな方法は、複雑なタンパク質試料の質量スペクトルの処理(モノアイソトピック質量の決定を含む)に20ミリ秒未満を要し、信号対雑音の閾値は10である(すなわち、この閾値を超えるピークのみが、第2のアルゴリズムにおける電荷状態分析に集中される)。任意選択の動的S/N閾値は、実行時間を制限するために、複数の隣接/重複するIDを含有する密集ピーク領域における閾値の増加を可能にする。
本発明は、広範な用途/化学種に好適であるが、無傷タンパク質及び高電荷状態を有する多重荷電種を焦点とする、質量スペクトルにおける少なくとも1つの分子種のピークのモノアイソトピック質量、またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの決定の総体的な手法を提示する。本質的な要素は、方法の速度最適化であり、これは、複雑なタンパク質試料の質量スペクトルに含有される種の大部分の約20〜30ミリ秒以内でのオンライン検出への利用可能性を確実にする。
この方法は、複雑なタンパク質試料の低分解能スペクトルでも本発明の方法において使用され得るように、分解されない同位体分布を取り扱うことができる。
本発明の方法により調査された質量スペクトル及びm/z値の範囲を示す。
本発明の方法は、1つの分子種、ほとんどの場合様々な分子種の、少なくともモノアイソトピック質量を特定するために使用される。好ましくは、この方法は、典型的には200u〜5,000,000uの間、好ましくは500u〜100,000uの間、特に好ましくは5,000u〜50,000uの間の質量を有する、ペプチド、タンパク質、核酸、脂質及び炭水化物等の巨大分子のモノアイソトピック質量を特定するために使用される。
本発明の方法は、試料を調査するために使用される。これらの試料は、そのモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータにより特定され得る分子種を含有し得る。
以下において、本発明の方法の実施形態は、分子種のモノアイソトピック質量を特定するためのものとしてのみ説明される。それにもかかわらず、説明される方法は全て、分子種の同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを特定するためにも使用され得る。特に、このパラメータは、分子種の同位体分布の同位体の平均質量、分子種の同位体分布において最も高い発生率を有する同位体の質量、及び分子種の同位体分布の中心の質量であってもよい。
分子種は、同じ分子式を有する分子のクラスとして定義される(例えば、水は分子式H2Oを有し、メタンは分子式CH4を有する)。
または、調査された試料は、少なくともイオン化プロセスにより試料から生成されるイオンによって、より良く理解され得る。イオンは、好ましくは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、プラズマイオン化、電子イオン化(EI)、化学イオン化(CI)、及び大気圧化学イオン化(APCI)により生成され得る。生成されたイオンは、ほとんどの場合分子構造及び対応する分子式を有する荷電粒子である。本特許出願に関連して、「少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種」という用語は、少なくともイオン化プロセスによって試料から生じるイオンの分子式を指すように理解されるものとする。
したがって、少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータは、イオンの電荷がゼロに低減された後のイオンの分子式を探し、後述のようにイオン化プロセスに従って分子式を変更することにより、少なくともイオン化プロセスによって試料から生じるイオンから推定され得る。
分子種において、全ての分子は、分子式に従う原子の同じ組成を有する。しかしながら、分子の各原子は、異なる同位体として生じ得る。したがって、有機化学の基本元素である炭素原子は、98.9%の自然発生確率を有する12C同位体、及び1.1%の自然発生確率を有する13C同位体(その原子核内にさらに1つの中性子を有する)の2つの安定な同位体として生じる。同位体のこの発生確率に起因して、より高い原子数からなるより高い質量の特に複雑な分子は、多くの同位体を有する。これらの同位体は、異なる質量を有し、本特許出願の内容において分子種の同位体分布(略語:ID)と呼ばれる、同位体の質量分布をもたらす。したがって、各分子種は、異なる質量を有し得るが、分子種のより良い理解及び特定のために、各分子にモノアイソトピック質量が割り当てられる。これは、分子の各原子が最も低い質量を有する同位体として存在する場合の分子の質量である。例えば、メタン分子は、分子式CH4を有し、水素は、その核内に陽子を有する1H、及びその核内にさらなる中性子を有する2H(重水素)の同位体を有する。したがって、炭素の最も低い質量の同位体は12Cであり、水素の最も低い質量の同位体は1Hである。したがって、メタンのモノアイソトピック質量は、16uである。しかしながら、17u、18u、19u、20u及び21uの質量を有する他のメタン同位体のわずかな可能性が存在する。これらの他の同位体は全て、メタンの同位体分布に属し、質量分析計の質量スペクトルにおいて視認され得る。
本発明の方法の第1のステップにおいて、試料の質量スペクトルが、質量分析計により測定される必要がある。一般に、試料の質量スペクトルを測定するために、当業者に知られているあらゆる種類の質量分析計を使用することができる。特に、質量分析器としてOrbitrapを有する質量分析計、FT−質量分析計、ICR質量分析計またはMR−TOF質量分析計等の高分解能の質量分析計を使用することが好ましい。本発明の方法が適用され得る他の質量分析計は、特に、TOF質量分析計、及びHR四重極質量分析器を有する質量分析計である。しかしながら、本発明の方法はまた、例えば1uの質量差を有する同位体の隣接ピークを区別することができないような低分解能を有する質量分析計で質量スペクトルが測定される場合に、分子種のモノアイソトピック質量を特定することができるという利点を有する。
一方、試料中にすでに存在する分子は自由であり、イオン化プロセスによって、例えば電子、プロトン(H+)及び荷電粒子の受け入れ及び/または放出によってのみ帯電する。本発明の方法は、試料中に含有されるこれらの分子種に、質量分析計の質量スペクトルにおいて検出されるそのイオンによってそのモノアイソトピック質量を割り当てることができる。
一方、イオン化プロセスは、より小さい荷電粒子に断片化させる、または試料中に含有される分子に原子もしくは分子を付加し、プロセスにより帯電されるより大きい分子をもたらすことにより、試料中に含有される分子を変化させることができる。また、イオン化プロセスによって、試料のマトリックスは帯電した分子に分割され得るか、または分子のクラスタが構築され得る。したがって、これらのイオンは全て、説明されたイオン化プロセスによって試料から生じる。したがって、これらのイオンに関して、試料から生じた対応する分子種は、本発明の方法により調査され得、方法は、そのモノアイソトピック質量を特定可能となり得る。
本発明の次の可能なステップにおいて、測定された質量スペクトルの少なくとも質量範囲が、断片に分割される。このステップは、例えば、質量分析計の制御等の追加的な他の機能を有してもよい質量分析計の一部であるプロセッサにより実行され得る。質量範囲の区分の目的は、各断片を、いくつかの中央処理装置(CPU)を有するマルチプロセッサにより提供されるいくつかのプロセッサの1つのプロセッサに割り当てることができ、次いでこれが、単一のスレッドで、質量範囲の割り当てられた断片において、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布を推定することができることである。典型的には、マルチプロセッサは、特定のCPUに割り当てられた断片において、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布を推定するために、2個または4個のCPUを有する。しかしながら、さらに多くのCPU、例えば6個、8個または12個のCPUが、同位体分布の推定に使用されてもよい。より多くの断片に対して相応により多くのCPUが使用される場合、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布は、並行して推定され得る。
質量分析計による試料の質量スペクトルの測定後、測定により検出されたm/z値のどの範囲が、試料中に含有される、及び/または質量分析計内でのそのイオン化の間に少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のモノアイソトピック質量を特定するために使用されるべきかが定義される必要がある。検出されたm/z値の使用される範囲は、使用者により定義され得る。使用者は、質量スペクトルの測定が開始される前、または、質量スペクトルがディスプレイ等のグラフィカル出力システム上に示された後に、範囲を定義することができる。範囲は、試料の調査の意図に基づいて、及び/または得られる質量スペクトルに基づいて定義され得る。したがって、m/z値の範囲内においてピークが観察されない場合、このm/z値の範囲は、さらなる評価から保留されてもよく、断片に分割されるM/Z値の範囲に属さない。
検出されたm/z値の使用される範囲はまた、特定する方法を制御しているコントローラにより定義されてもよい。例えば、m/z値の範囲内の測定された質量スペクトルにおいて、閾値より高い強度を有するピーク(複数を含む)が観察されない場合、このm/z値の範囲は、モノアイソトピック質量を特定するために使用されるm/z値の範囲を制限しているコントローラにより、さらなる評価から保留されてもよい。
本発明の一実施形態において、質量分析計により検出された、したがって測定された質量スペクトルに示されるm/z値の全範囲が、同位体分布を推定するために使用される断片に分割される。
これは、質量分析計により測定された質量スペクトルを示す図1に示される。質量分析計は、最小値m/zminと最大値m/zmaxとの間のm/z値(イオン質量m及びイオン電荷zの比)を有するイオンを検出していた。次いで、この最小値m/zminと最大値m/zmaxとの間のm/z値の全範囲が断片に分割され得、次いで断片が、比電荷zを有する、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のイオンの同位体分布を推定するために、別個のプロセッサ(CPU)に割り当てられる。
本発明の別の実施形態において、質量分析計により検出された、したがって測定された質量スペクトルに示されるm/z値の一部の範囲が、同位体分布を推定するために使用される断片に分割される。この実施形態において、質量分析計により検出された質量スペクトルのm/z値の1つ以上の特定の範囲のみが、同位体分布を推定するために使用される断片に分割される。
これもまた、質量分析計により測定された質量スペクトルを示す図1に示される。質量分析計は、最小値m/zminと最大値m/zmaxとの間のm/z値(イオン質量m及びイオン電荷zの比)を有するイオンを検出していた。しかしながら、最小値m/zminと最大値m/zmaxとの間のm/z値の一部の範囲が断片に分割され、次いで断片が、比電荷zを有する、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のイオンの同位体分布を推定するために、別個のプロセッサ(CPU)に割り当てられることも可能である。また、測定されたm/z値の特定の範囲が断片に分割され、次いで断片が、同位体分布を推定するために別個のプロセッサ(CPU)に割り当てられることも可能である。図1において、m/z値の範囲A及び範囲Bが示されている。一実施形態において、測定されたm/z値の範囲Aのみが断片に分割され、次いで断片が、同位体分布を推定するために別個のプロセッサ(CPU)に割り当てられる。別の実施形態において、測定されたm/z値の範囲Bのみが断片に分割され、次いで断片が、同位体分布を推定するために別個のプロセッサ(CPU)に割り当てられる。さらなる実施形態において、測定されたm/z値の範囲A及び測定されたm/z値の範囲Bの両方の範囲が断片に分割され、次いで断片が、同位体分布を推定するために別個のプロセッサ(CPU)に割り当てられる。図1によれば、この実施形態において、それらの範囲、すなわち範囲A及びBのみが断片に分割されて同位体分布の推定に使用され、5%を超える相対存在度のピークが測定されている。
初めに、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲が、特定のウィンドウ幅Δm/zstartの断片に分割される。典型的には、ウィンドウ幅Δm/zstartは、1Th(トンプソン;1Th=1u/e;u:原子質量単位;e:素電荷;1u=1.660539*10-27Kg;1e=1,602176*10-19C)より若干広い。好ましい実施形態において、ウィンドウ幅Δm/zstartは、1.000Th〜1.100Thの間であり、より好ましい実施形態において、ウィンドウ幅Δm/zstartは、1.005Th〜1.050Thの間であり、特に好ましい実施形態において、ウィンドウ幅Δm/zstartは、1.010Th〜1.020Thの間である。ウィンドウ幅Δm/zstartは、1Thの範囲内で選択されるが、これは、イオンの最低電荷状態において、電荷はz=1であり、したがって、隣接同位体のm/z値の間の最小距離は1Thであるためである。これは確実に、いくつかの技術的な許容度を考慮しており、ウィンドウ幅Δm/zstartは1Thより若干大きく選択される必要がある。技術的な許容度は、例えば、化学元素、ピーク幅、m/zピークの中心化(centroidisation)に起因する偏差により生じる。
開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有するこれらの断片の全てが、有意なピークを有するかどうか調査される。そのようなピークを有する断片のみがプロセッサに割り当てられ、次いでプロセッサが、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の範囲における測定された質量スペクトルから同位体分布を推定する。ほとんどにおいて、開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有する断片が有意なピークを有するかどうかの調査が、分割されるべき測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の1つの境界、すなわち最高m/z値または最低m/z値において開始される。断片の最高強度のピークが、閾値Tより高い信号対雑音比S/Nを有する場合、断片は有意なピークを有する。
開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有する断片が有意なピークを有するかどうか調査された後、以前に調査されていない開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有する隣接する断片が、有意なピークを有するかどうか調査される。隣接する断片は、両方の断片が特定の電荷の分子種のイオンの同じ同位体分布の同位体、または連続した同位体分布もしくは重複する同位体分布の同位体を含む場合、より広いウィンドウ幅Δm/zを構築するように連結される。したがって、2つの隣接する断片は、それらの一方が有意なピークを有さない場合、連結されない。
開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有する断片が有意なピークを有するかどうかの調査が、分割されるべき測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の1つの境界で開始される場合、分割されるべき測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の第2の境界を含む、以前に調査されていないその隣接する断片で調査は終了する。測定されたm/z値の1つの範囲のみが断片に分割されるべきである場合、断片の調査全体が完了する。断片に分割されるべき測定されたm/z値の範囲が1つだけでない場合、まだ断片に分割されていない、分割されるべき測定されたm/z値の次の次の範囲が、同じ様式で、または異なるパラメータと共に断片に分割される。分割されることが定義されている測定されたm/z範囲の全ての範囲が断片に分割された後、断片への分割は完了する。
開始ウィンドウ幅Δm/zstartの断片の連結は、特定の数のそのような断片に制限され得る。このため、本発明の方法を実行するための全体の時間を増加させる、割り当てられた連結断片における同位体分布を推定するための単一プロセッサの長過ぎる動作時間が回避され得る。本発明の方法の好ましい実施形態において、開始ウィンドウ幅Δm/zstartの20個以下の断片が、本発明のより好ましい実施形態においては開始ウィンドウ幅Δm/zstartの12個以下の断片が、本発明の特に好ましい実施形態においては開始ウィンドウ幅Δm/zstartの8個以下の断片が、連結されるべきである。
本発明の方法の一実施形態において、断片が有意なピークを有するかどうかを定義する閾値Tは、調査される全ての断片に対して同じである。通常、2.0〜5.0の範囲内、好ましくは2.5〜4.0の範囲内、特に好ましくは2.8〜3.5の範囲内の閾値Tが使用される。
別の実施形態において、閾値Tは、動的に調節される。1つの好ましい実施形態において、閾値は、断片のピーク密度に依存して変更される。すると、断片が多数の有意なピークの数Nを有する場合、そこから同位体分布がプロセッサにより推定されるピークの数Nを制限するために、閾値Tは増加される。したがって、閾値Tより高い信号対雑音比S/Nを有するピークの数Nが、各断片において制限される。そのような断片は、開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有する断片で連結され得る。断片における有意なピークの数Nは、限度Nmaxにより制限される。これは、使用者、コントローラ、またはコントローラの製造者によって、ハードウェアまたはソフトウェアにより設定され得る。典型的には、Nmaxは、100〜500の範囲内、好ましくは180〜400の範囲内、特に好ましくは230〜300の範囲内である。初めに、初期閾値Tiが設定される。通常、初期閾値Tiは、2.0〜5.0の範囲内、好ましくは2.5〜4.0範囲内、特に好ましくは2.8〜3.5の範囲内に設定される。閾値Tより高い信号対雑音比S/Nを有する有意なピークの数Nが、断片内で限度Nmaxより高い場合、閾値Tはあるファクタ又は倍数だけ増加され、次いで、閾値Tより高い信号対雑音比S/Nを有する有意なピークの数Nに関して断片が再び調査される。閾値の増加は、閾値Tより高い信号対雑音比S/Nを有するピークの数が限度Nmaxを下回るまで繰り返される。典型的には、閾値Tは、1.10〜2.50の間の倍数で増加される。好ましくは、閾値Tは、1.25〜1.80の間の倍数で増加される。特に好ましくは、閾値Tは、1.35〜1.6の間の倍数で増加される。閾値Tの増加は、閾値の最大値Tmaxにより制限される。この限度により、試料の有意なピークが無視されるのが回避されるはずである。閾値の最大値Tmaxは、使用者、コントローラまたはコントローラの製造者によって、ハードウェアまたはソフトウェアにより設定され得る。典型的には、閾値の最大値Tmaxは、6〜40の間に設定される。好ましくは、閾値の最大値Tmaxは、10〜30の間に設定される。特に好ましくは、閾値の最大値Tmaxは、12〜20の間に設定される。
開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有する断片、または開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有する断片から連結されたより広いウィンドウ幅Δm/zを有する断片であってもよい複数の断片が、次々に調査され、閾値Tがこれらの断片に対して増加されておらず、断片の閾値が初期閾値Tiよりも高い場合、続く隣接する断片の閾値Tは、好ましくは連続して、初期閾値Tiまで減少される。閾値Tのこの減少は、特定値を差し引くことにより、またはある倍数だけ閾値Tを低減することにより行われてもよい。典型的には、差し引かれる特定値は、0.10〜0.70の間、好ましくは0.15〜0.40の間、特に好ましくは0.20〜0.30の間である。閾値Tを低減する倍数は、典型的には0.85〜0.99の間、好ましくは0.92〜0.97の間、特に好ましくは0.95〜0.96の間である。また、閾値Tを減少させるために両方の方法を同時に使用すること、及び、隣接する断片の後に閾値Tのより高い、またはより低い減少値を使用することも可能である。初期閾値Ti未満への閾値の減少は行うべきではない。これが生じた場合、続く隣接する断片は、初期閾値Tiを使用して調査されるべきである。
開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有する断片が、初期閾値Tiより高い閾値Tで調査され、この断片が有意なピークを有さない場合、本発明の方法の一実施形態において、再び初期閾値Tiで調査が実行される。次いで、その断片に対して有意なピークが観察された場合、この断片は、低い信号対雑音比S/Nを有する断片としてマークされる。
本発明の方法のさらなる可能なステップにおいて、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくともいくつかが、プロセッサに割り当てられる。プロセッサは、いくつかの中央処理装置(CPU)を有するマルチプロセッサにより提供されるいくつかのプロセッサの1つのプロセッサである。プロセッサは、単一のスレッドで、質量範囲の割り当てられた断片において、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布を推定することができる。典型的には、マルチプロセッサは、特定のCPUに割り当てられた断片において、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布を推定するために、2個または4個のCPUを有する。しかしながら、さらに多くのCPU、例えば6個、8個または12個のCPUが、同位体分布の推定に使用されてもよい。より多くの断片に対して相応により多くのCPUが使用される場合、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布は、並行して推定され得る。マルチプロセッサのプロセッサは、物理的に1つの場所に位置してもよい。次いで、マイクロプロセッサは、質量分析計の一部であってもよい。マルチプロセッサはまた、当業者に知られている質量分析計の制御機能等の質量分析計の他の機能に使用されてもよい。物理的に1つの場所に位置するマルチプロセッサは、質量分析計から分離されてもよく、例えば、質量分析計の測定された質量スペクトルのファイルを受信するだけであってもよい。また、様々なマイクロプロセッサが異なる場所に位置してもよく、質量分析計と、例えば質量分析計の制御ユニットと通信していてもよい。
測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくともいくつかをプロセッサに割り当てるこのステップは、例えば、質量分析計の制御等の追加的な他の機能を有してもよい質量分析計の一部であるプロセッサにより実行され得る。
本発明の方法の好ましい実施形態において、有意なピークを有する断片のみがプロセッサに割り当てられる。これらの断片は、一方では、開始ウィンドウ幅Δm/zstartを有してもよい。他方では、これらの断片は、より広いウィンドウ幅Δm/zを有してもよいが、これは、それらが連結された隣接する断片から構築されるためである。
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、有意なピークを有する断片、及び低い信号対雑音比S/Nを有する断片としてマークされた断片のみが、プロセッサに割り当てられる。
本発明の好ましい実施形態において、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の割り当てられた断片における測定された質量スペクトルから、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布を推定するために使用されるマルチプロセッサの各プロセッサPiに対して、ピークカウンタCi、及び割り当てられた断片に関する情報が保存されるリストの割り当てが割り当てられる。ピークカウンタCiにより、プロセッサPiに割り当てられた各断片の有意なピークNの数が、全ての割り当てられた断片の有意なピークNの数の追加によりカウントされる。有意なピークの数Nは、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲を断片に分割する際に、有意なピークの数Nが有意なピークの制限される数Nmaxを超えるかどうかを評価するために各断片に対して調査される。
有意なピークを有する断片、または有意なピークを有する断片及び低い信号対雑音比S/Nを有する断片としてマークされた断片が、次々にプロセッサPiに割り当てられる。プロセッサに割り当てられる次の断片は、常に、その瞬間まで割り当てられた断片が全体として最も低い有意なピークの数を有するプロセッサに割り当てられる。これは、プロセッサに割り当てられる次の断片が、常に、ピークカウンタCiが最も低いプロセッサPiに割り当てられることを意味する。その割り当てられた断片の有意なピークの数は、ピークカウンタCiに追加される。したがって、常に、最も低い数の有意なピークが割り当てられたそのプロセッサに、有意なピークを有する次の断片が割り当てられる。この割り当てにより、割り当てられた断片における有意なピークの数が、プロセッサにわたり均一に分配されることが確実となる。これにより、プロセッサに割り当てられた断片からの同位体分布の推定が、どのプロセッサに対してもほぼ同じ時間を要することが確実となる。この割り当てにより、いくつかの提供されたプロセッサによる同位体分布の速やかな推定が達成される。
試料の質量スペクトルの測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲を断片に分割するステップ、及び測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくともいくつかを、いくつかの提供されたプロセッサの1つのプロセッサに割り当てるステップは、逐次的に、または並行して行われてもよい。ステップが並行して実行される場合、試料の質量スペクトルの測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲を断片に分割するステップにおいて定義された各断片は、その定義の直後にプロセッサに割り当てられ、プロセッサはこの断片に対する同位体分布を推定する。
本発明の方法の次のステップにおいて、m/z値の少なくとも1つの範囲の断片の少なくとも1つにおける測定された質量スペクトルから、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布が推定される。比電荷zを有するイオンの推定された同位体分布は、試料中に含有される分子種のイオンに対して、または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じるイオンに対して推定される。好ましくは、試料中に含有される、または/及び少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のいくつかのイオンに対して、比電荷zを有するイオンの同位体分布が推定され得る。
本発明の方法の一実施形態において、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片のそれぞれで、比電荷zを有する1つの分子種のイオンの少なくとも1つの同位体分布が検出される。
比電荷zを有するそのイオンの同位体分布が推定される全ての分子種に対して、本発明の方法によりモノアイソトピック質量が推定されるわけではないことが可能である。
以下において、1つのプロセッサに割り当てられた測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の1つの断片において、比電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布が、本発明の方法の好ましい実施形態に従い、測定された質量スペクトルからどのようにして推定されるかが説明される。好ましくは、上述のように、以前に有意なピークとして特定されたピークのみが使用される。
まず、測定されたm/z値の調査された断片における最高強度のピークが定義される。次いで、この最高強度のピークに割り当てられ得る最大電荷状態zmaxが定義される必要がある。したがって、最高強度のピークに隣接する最も近いピークが特定される必要がある。それらは、最高強度のピークと比較した相対強度値以上の強度を有するべきである(典型的には、最高強度のピークの強度の2%〜6%、好ましくは3%〜5%、特に好ましくは4%)。また好ましくは、これらのピークの距離は、開始ウィンドウ幅Δm/zstartより広くなるべきではない。最高強度のピークと最高強度のピークに隣接する最も近いピークとの間の距離dから、可能な最大電荷状態zmaxが、アベルジン(avergine)分布による平均同位体質量差距離Δmaveを考慮して仮定され得る(例えば、Senko et al.J.J.Am.Mass Spectrom.1995,6,229−233及びValkenborg et al.J.Am.Mass Spectrom.2008,19,703−712により説明されている)。
典型的には、平均同位体質量差距離Δmaveの値は、1.0020u〜1.0030の範囲内、好ましくは1.0023〜1.0025uの間である。特に好ましくは、1.00235の値が、平均同位体質量差距離Δmaveとして使用される。
好ましくは、そのようにして評価された最大電荷状態zmaxは、1より大きい倍数だけさらに増加されてもよい。これにより、少なくとも1つのより高い電荷状態が調査されることが確実となるはずである。典型的には、評価される最大電荷状態が乗じられる倍数は、1.10〜1.30の範囲内、好ましくは1.125〜1.20の範囲内である。好ましくは、そのようにして達成されたものは、次の次の自然数、すなわち正の整数に切り上げられる。
好ましくは、最大電荷状態zmaxは、最大値zlimitに制限され得る。これは、本発明の方法により調査される試料の種類に依存し得る。したがって、無傷タンパク質が調査される場合、最大電荷状態zmaxは、好ましくは、50〜60の間の値に制限され、またペプチドが調査される場合、最大電荷状態zmaxは、好ましくは20未満の値に制限される。最大電荷状態zmaxの限度zlimitの妥当な選択により、非現実的な電荷状態の調査が回避され、したがって、同位体分布を推定するための時間が短縮される。一般に、調査される電荷状態の最大電荷状態zmaxを制限する最大値zlimitは、典型的には、10〜100の間、好ましくは30〜80の間、特に好ましくは40〜70の間である。最大電荷状態zmaxの限度zlimitは、使用者、コントローラまたはコントローラの製造者によって、ハードウェアまたはソフトウェアにより設定され得る。好ましくは、最大電荷状態zmaxの限度zlimitは、コントローラまたはコントローラの製造者によってハードウェアまたはソフトウェアにより設定される場合、使用者の情報、どの種類の試料が調査されるべきかに従って設定される。
電荷1と最大電荷状態zmaxとの間の各電荷状態zに対する測定されたm/z値の調査された断片において、最大電荷状態zmaxの値が最高強度の調査されたピークP1に対して定義された後、スコア値、すなわち電荷スコアcsP1(z)が、測定されたm/z値の調査された断片における質量スペクトルから評価される。測定されたピークPX(X=1,...,N)の電荷スコアcsPX(z)は、一般に、測定されたピークPXが電荷zを有する同位体分布に属する確率を反映する。
本発明の方法の好ましい実施形態において、最高強度の同位体分布のピークとして仮定された測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)は、以下の様式で決定される。
アベルジン(avergine)モデルに基づいて、まず、同位体分布のどれほど多くのピークNleft_PX(z)が、より小さいm/z値を有するピークPXに対して予測され得るか、及び、同位体分布のどれほど多くのピークNright_PX(z)が、より高いm/z値を有するピークPXに対して予測され得るかが定義される。好ましくは、調査された同位体分布の最高ピークPXの強度、すなわちカットオフ強度のパーセンテージ以上の強度を有する同位体分布のピークのみが考慮される。典型的には、このカットオフ強度は、最高ピークPXの強度の0.5〜6%の範囲内、好ましくは最高ピークPXの強度の0.8〜4%の範囲内である。具体的なカットオフ強度は、最高ピークPXの強度の1%である。
例えば、より小さいm/z値を有するピークの数Nleft_PX(z)及びより大きいm/z値を有するピークの数Nright_PX(z)は、以下の式により計算され得る。
値m/z(PX)は、測定されたピークPXのm/z値である。定数A、B、C及びDは、使用されたアベルジン(avergine)モデルにより与えられる。典型的な値は、0.075<A<0.080、2.35<B<2.40、0.075<C<0.080、0.80<D<0.85である。
ここで、Nleft_PX(z)は、値Vleft_PX(z)より小さい第1の正の整数、または別様には0であり、Nright_PX(z)は、値Vright_PX(z)に最も近い整数である。
次いで、ピークPX及び電荷zに割り当てられた同位体分布の全てのピークに対して、対応する理論m/z値が定義される。
同位体分布に平均同位体質量差Δmが仮定された場合、同位体分布のピークは、以下の理論m/z値を有する。
ここで、
である。
したがって、例えば、Nleft_PX(z)=1である場合、これは、ピークPXの左側の電荷zの同位体分布において1つのピークが存在することを意味し、Nright_PX(z)=6である場合、これは、ピークPXの左側の電荷zの同位体分布に6つのピークが存在するkとを意味し、すると同位体分布のピークは、以下の理論m/z値を有する。
ここで、
である。
詳細には、以下の通りである。
次いで、ピークPX及び電荷zに割り当てられた同位体分布の全てのピークが、測定されたm/z値の調査された断片に割り当てられた測定された質量スペクトルにおいて特定される。
したがって、各ピークに対して、以前に定義された理論m/z値の周囲で、検索ウィンドウが定義される。
本発明の方法の好ましい実施形態において、理論m/z値m/z(z)kを有する同位体分布のピークの検索ウィンドウは、以下によって正のk値に対して定義される。
値δΔmlow及びδΔmhighは、より低い質量及びより高い質量への同位体分布のピークの平均同位体質量差Δmの可能な偏差に関連する。
δΔmlowの典型的な値は、0.004〜0.007の間、好ましくは0.005〜0.006の間である。δΔmhighの典型的な値は、0.003〜0.006の間、好ましくは0.0035〜0.0045の間である。
理論m/z値m/zkの周囲のm/z値の検索ウィンドウにおける同位体分布の各定義されたピークに対して、最高強度のピークが特定され、このピークに割り当てられる。このピークに対して、強度Ik(z)及び実際に観察されるm/z値m/z(z)k_obsが決定される。
調査された同位体分布の最高ピークPXの強度のパーセンテージ以上の強度を有するピークのみが、電荷スコアcsPX(z)のさらなる評価に考慮される。典型的には、考慮されるピークが有するべき最高ピークPXの強度のパーセンテージは、2%〜10%の間、特に3%〜6%の間である。
本発明の一実施形態において、m/z値の検索ウィンドウの境界に位置し、その周囲と比較して最大値を有する実際のピークとして特定され得ないピークもまた考慮される。この場合、境界にあるピークは、同位体分布の検索されるピークに割り当てられない。次いで、m/z値の検索ウィンドウの境界の外の次のピークが、同位体分布の検索されるピークに特定されるが、これは、この場合、このピークの側部がm/z値の検索ウィンドウの境界に位置するためである。このピークに対しても、強度Ik(z)及び実際に観察されるm/z値m/z(z)k_obsが決定される。
本発明の方法の好ましい実施形態において、測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)は、少なくとも3つの下位電荷スコアcsi_PX(z)から推定され得る。
一実施形態において、測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)は、少なくとも3つの下位電荷スコアcsi_PX(z)の乗算により推定され得る。
好ましい実施形態において、測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)は、4つの下位電荷スコアcsi_PX(z)(i=1、2、3、4である)の乗算により推定され得る。
本発明の方法において使用され得る下位電荷スコアcsP_PX(z)を評価する1つの可能性は、パターソン関数の使用である。この方法は、M.W.Senko et al.,J.Am.Soc.Mass Spectrom.1995,6,52−56において説明されている。
一般に、この下位電荷スコアは、以下により計算される。
好ましい実施形態において、下位電荷スコアcsP_PX(z)の計算において、同位体分布の各ピークに対する理論m/z値m/z(z)kからの観察されるm/z値m/z(z)k-obsの偏差は、同位体分布の各ピークに対する以下の補正された強度Icorr_k(z)を定義することにより考慮される。
kは、理論m/z値m/z(z)kを有する同位体分布のピークの半値全幅(FWHM)である。
観察されたm/z値m/z(z)k-obsのm/z範囲内の雑音レベルを超えるそれらの補正された強度Icorr_k(z)のみが使用される。それ以外では、補正された強度Icorr_k(z)は、観察されたm/z値m/z(z)k-obsのm/z範囲内の雑音レベルに設定される。
次いで、下位電荷スコアが、以下により計算される。
本発明の方法において使用され得る下位電荷スコアcsP_PX(z)を評価する1つの第2の可能性は、精度スコアの使用である。この方法は、Z.Zhang and A.G.Marshall,J.Am.Soc.Mass Spectrom.1998,9,225−233において説明されている。
まず、同位体分布の各ピークに対して、Zスコアが定義される。この値は、同位体分布のピークに対する可能な最大偏差と、実際に観察されたm/z値m/z(z)k_obsの理論値m/z(z)kからの実際の偏差との間の比を説明している。ZスコアZk(z)は、以下により与えられる。
δm/zmaxは、試料の質量スペクトルを測定するために使用された質量分析計のm/zの最大相対偏差である。
好ましくは、Z Zscore Zk(z)は、特定の値の範囲に制限される。これは、例えば、1〜5の間の値の範囲であってもよい。
次いで、下位電荷スコアcsAS_PX(z)が、調査された同位体分布の全てのピークのZscore値を加算することにより評価される。
本発明の方法において使用され得る下位電荷スコアcsAC_PX(z)を評価する1つの第3の可能性は、同位体分布のピークにおける変動を格付けする自己相関関数の使用である。
この下位スコアの計算のために、同じく同位体分布の各ピークの上述の補正された強度Icorr_k(z)が使用される。
下位電荷スコアcsAC_PX(z)は、以下により計算される。
この電荷スコアは、好ましくは、少なくとも3つのピーク、好ましくは4つのピークを有する同位体分布にのみ使用される。それ以外は、電荷スコアは値1に設定される。
本発明の方法において使用され得る下位電荷スコアcsIS_PX(z)を評価する1つの第4の可能性は、同位体スコアの使用である。このスコアは、同位体分布の観察されるピークNobs_PX(z)の数を、理論的に予測されるピークNtheo_PX(z)=Nleft_PX(z)+Nleft_PX(z)+1に関連付ける。
下位電荷スコアcsIS_PX(z)は、以下により計算され得る。
本発明の方法の好ましい実施形態において、測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)は、4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の少なくとも3つの操作によって推定される。
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)は、4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の操作によって推定される。
電荷1と最大電荷状態zmaxとの間の各電荷状態zに対して、スコア値、すなわち最高強度のピークであるピークP1に対する電荷スコアcsP1(z)が、測定されたm/z値の調査された断片における質量スペクトルから評価された後、ピークP1に対する電荷スコアcsP1(z)がランク付けされる。次いで、電荷状態z1の最高値csP1(z1)の電荷スコアが、電荷状態z2の第2の最高値csP1(z2)の電荷スコアと比較される。これらの値の比が閾値Tcsより高い場合、電荷状態z1がピークP1及びその関連した同位体分布の正確な電荷状態として受け入れられる。
したがって、電荷状態z1が受け入れられた場合、測定された質量スペクトル及びその周囲の質量スペクトルのピークP1から、強度Ik(z1)のピーク及び実際に観察されたm/z値m/z(z1k_obs(k=(−Nleft_PX(z1)、…、Nright_PX(z1)))及び比電荷z1を有するその関連した同位体分布が推定される。この同位体分布は、分子種のイオンの同位体分布である。分子種は、その質量を変化させることなくイオン化プロセスによって帯電した調査された試料に含有されるか、または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のイオンである。
閾値Tcsの値により、電荷状態z1に関連した同位体分布がピークP1を含む同位体分布として明確に推定され得るように、最も高い値を有する2つの最善の評価された電荷スコアcsP1(z1)及びcsP1(z2)がどれほど明確に異なる必要があるかが定義され得る。典型的には、閾値Tcsの値は、1.10〜3の範囲内、好ましくは1.15〜2の範囲内、好ましくは1.20〜1.50の範囲内である。閾値Tcsの値は、使用者、コントローラまたはコントローラの製造者によって、ハードウェアまたはソフトウェアにより設定され得る。
比電荷z1の分子種のイオンの推定された同位体分布から、分子種のモノアイソトピック質量及び/または分子種のモノアイソトピックピークが、当業者により知られている方法により、例えば、同位体分布のピークのパターンへのアベルジン(avergine)フィッティング、または、同位体分布の同位体パターンにおいてモノアイソトピックピークを直接探すことにより推定され得る。
ピークP1を含む同位体分布が推定され得た後、この同位体分布のピークは、断片における有意なピークから取り除かれる。次いで、断片の残りの有意なピークのうち最高強度のピークが定義される。次いで、ピーク1と同様の様式で、このピークP2に対して最大電荷状態zmaxが定義される必要があり、電荷1と最大電荷状態zmaxとの間の各電荷状態zに対して、測定されたm/z値の調査された断片における質量スペクトルから電荷スコアcsP2(z)が評価される必要があり、最高値csP2(z1)の電荷スコアがピークP2の正確な電荷状態として受け入れられるかがチェックされる必要がある。この手順を可能な限り繰り返すことにより、比電荷Zを有する分子種のイオンの同位体分布、さらには分子種のモノアイソトピック質量が、単一のプロセッサにより、質量スペクトルの測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片から推定され得る。
好ましくは、これは、有意なピークを有する質量スペクトルの測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の全ての断片に対して、それらの割り当てられたプロセッサにより行われる。
したがって、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の全m/z範囲から、比電荷を有する分子種のイオンの同位体分布が、マルチプロセッサのいくつかのプロセッサを用いた並行した推定により、断片ごとに推定され得る。調査されるべき測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲を断片に分割し、これらの断片をいくつかのプロセッサに割り当てることにより、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の全m/z範囲の同位体分布の推定を、また推定された同位体分布からのモノアイソトピック質量の推定も、はるかにより速く行うことができる。特に、推定されたモノアイソトピック質量を使用して、第2の質量分析器を用いてさらに調査されるべき特定の分子種を定義することができる。特にこの実験において、本発明の方法は、特定の分子のモノアイソトピック質量の情報がこれでより短い時間で利用可能であるため、非常に有用である。第2の質量分析器を用いてさらに調査されるべき特定の分子種が質量分析器に提供される前に、これは、例えば衝突セルまたは反応セルにおける断片化、解離等のMS2またはMSN質量分析法において使用される典型的なプロセスにより、別の分子に変換されてもよい。
本発明の方法の別の可能なステップにおいて、試料中に含有される、及び/または試料から生じる少なくとも1つの分子種のそれぞれの少なくとも1つの同位体分布から、分子種のモノアイソトピック質量が推定される。本発明の方法の一実施形態において、試料中に含有される、及び/または調査された試料から生じる分子種のモノアイソトピック質量は、同位体分布の推定直後に分子種の同位体分布から推定される。この実施形態において、1つの分子種のモノアイソトピック質量が、別の分子種の同位体分布が推定される前に推定されることが提供され得る。本発明の方法の一実施形態において、いくつかの分子種のモノアイソトピック質量の推定は、他の分子種の同位体分布の推定前に行われることが提供される。
一般に、本発明の方法の同位体分布を推論するステップ(iv)、及びモノアイソトピック質量を推定するステップ(v)は、本発明の方法のいくつかの実施形態において、並行して行われてもよい。
本発明の方法の好ましい実施形態において、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のいくつかに対して、異なる比電荷zを有するそのイオンの2つ以上の推定された同位体分布から、モノアイソトピック質量が推定される。
本発明の方法の好ましい実施形態において、本発明の方法のステップ(iv)において推定された同位体分布の少なくともいくつか、好ましくは同位体分布の一部、特に好ましくは同位体分布の全てが、そのピークの1つ以上が、低分解能電荷状態zhiと呼ばれる隣接する同位体のピークが分離されていないより高い電荷状態zhiの同位体分布に属し得るかどうか調査される。特に、そのような低分解能電荷状態zhiに対して、同位体分布はステップ(iv)において推定され得ない。そのような低分解能電荷状態zhiは、単一ピークまたはピーク構造として、特に、機器の所与の分解能に対して理論的に予測されるものより広いFWHM(半値全幅)値を有するより広い幅を有するピークとしてのみ検出可能である。これらのピークは、ピーク構造においてさらなる下位ピークを有し得るが、隣接する同位体の明確な構造を示さない。低分解能電荷状態zhiのピークは、特に、低分解能の質量分析器により検出された質量スペクトルにおいて観察されるが、これは、50,000未満、好ましくは35,000未満、特に好ましくは25,000未満であってもよい。低分解能電荷状態zhiのピークは、検出されるイオンが多重荷電イオンを生成するソフトイオン化技術、例えばエレクトロスプレーイオン化(ESI)により生成される場合、特に質量スペクトルにおいて観察される。電荷状態zの同位体分布において同位体構造が検出された質量スペクトルにおいて分解されるかどうかはまた、電荷状態zにも依存するが、これは、2つの隣接する同位体のm/z値の差が、ほぼ1/zであるためであり(観察された分子の1つの元素に対して異なる同位体が存在すると仮定)、これは、質量分析器が、質量スペクトルにおける別個のピークとして隣接する同位体のピークを検出する必要があるとする最小分解能Δ(m/z)である。したがって、電荷状態の電荷zが増加するにつれて、2つの隣接する同位体を分解することがますます困難となる。好ましくは、本発明の方法のこの好ましい実施形態において、ピークが低分解能電荷状態zhiであるかどうかの調査のために、最大電荷状態zmaxの限度zlimitが増加されてもよい。一般に、調査される電荷状態の最大電荷状態zmaxを制限する増加された最大値zlimitは、50〜150の間、好ましくは75〜130の間、特に好ましくは85〜120の間であってもよい。
特に、最大電荷状態zmaxの限度zlimitは、Orbitrap(登録商標)質量分析器等のいくつかの質量分析器において、巨大タンパク質等の重い分子から生じる非常に高い電荷のイオンに対する感度を増加させるために、それらが低減された分解能で操作され得る場合、増加され得る。この操作モードの間、本発明の方法のこの好ましい実施形態により、そのような重い分子をより多く特定することが可能であるが、それらは、質量分析器により低解像度電荷状態zhiとしてのみ検出される。
この好ましい実施形態に加えて、さらに質量スペクトルの他のピークが、低分解能電荷状態zhiと呼ばれる隣接する同位体のピークが分離されていないより高い電荷状態zhiの同位体分布に属し得るかどうか調査されてもよい。
ステップ(iv)において推定された同位体分布が調査されるときに、測定された質量スペクトルにおけるそのピークが低分解能電荷状態zhiに属し得る場合、まず同位体分布の1つのピークに対して、ピーク幅に関連するパラメータが決定される。好ましくは、パラメータは、同位体分布の最高強度のピークと比較して高い相対強度のピークに対して決定される。ピークは、同位体分布の最高強度のピークの強度の40%超、好ましくは60%超、特に75%超の相対強度を有し得る。特に好ましくは、ピーク幅に関連するパラメータが、同位体分布の最高強度のピークまたは動態分布の中心ピークに対して決定される。同位体分布の1つのピークに対して決定されたピーク幅に関連するパラメータは、好ましくは、その最大値の半分の値でのピークの幅に関連する。特に好ましくは、同位体分布の1つのピークに対して決定されたピーク幅に関連するパラメータは、その最大値の半分の値でのピークの全幅である(FHWM値)。
すでに上で説明されたように、ピーク測定時の質量分析器の最小分解能Δ(m/z)は、そのピークが質量スペクトルにおいて分離している場合、2つの隣接する同位体のm/z値の予測される差Δiso(z)と同様またはそれ未満である必要がある。
2つの隣接する同位体のm/z値の差Δiso(z)は、以下により同位体分布の予測電荷zに関連付けられる。
Δiso(1)は、単一電荷の調査された分子の同位体の質量差である。この値は、検出される分子の種類にある程度関連する。典型的には、Δiso(1)の値は、1.00〜1.005の間、好ましくは1.002〜1.003の間、特に好ましくは1.0022〜1.0025の間である。
したがって、質量分析器の分解能Δ(m/z)で測定されたピークに関して、その同位体分布の同位体の要件を満たす電荷zを有する電荷状態のみが分解され得る。
したがって、この要件が与えられている最大検出可能電荷状態zmdが定義され、その同位体分布の同位体が分解される。電荷状態zmd+1で始まる最大検出可能電荷状態zmdを超える電荷状態に対しては、同位体は、制限された分解能Δ(m/z)により分解され得ない。ここで、最大電荷状態zmaxの限度zlimitが、最大検出可能電荷状態zmdより高い場合、zmd+1からzlimitの間の電荷を有する電荷状態に対して、ピーク幅に関連するパラメータが決定された同位体分布の1つのピークが、低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることが可能であり、したがってピークは、同位体が分離及び分解されていない同位体分布を示している。
質量スペクトルにおけるピークのピーク幅はまた、電荷状態zに関して、同位体分布の同位体が分離されているか、ひいてはピークが分解された同位体に割り当てられる必要があるかを決定するのに役立ち得る。ここで、電荷状態zの同位体分布の同位体が分離されていない場合、同位体分布全体がピークにより示され、するとこれは単一の同位体の予測ピーク幅より広いピーク幅を有する。一般に、本発明の方法のこの好ましい実施形態により、同位体分布の隣接する同位体ピークは、同じ分解能のために同じピーク幅を有すると仮定される。質量スペクトルにおける2つのピークが分離されていると仮定すると、それらが最大値の少なくとも半分の値で分離されている場合、2つの同位体ピーク間の距離は、同位体のFHWM(半値全幅)値以上となる必要がある。
したがって、そのピーク幅のFWHM値で測定されたピークは、そのFWHM値が、電荷zを有する電荷状態の同位体分布の同位体が分解されるこの要件を満たしている場合、電荷zを有する電荷状態の分解された同位体にのみ割り当てられることができる。
すると、ピークのFWM値は、電荷zを有する電荷状態の隣接する同位体の距離より小さい。
したがって、この要件が満たされている最大電荷状態zmdが決定され、測定されたピークは、分解された同位体分布の同位体ピークとなり得る。zmdを超える電荷を有する電荷状態に対しては、測定されたピークは、その制限的なFWHM値により、分解された同位体ピークとはなり得ない。ここで、最大電荷状態zmaxの限度zlimitが、最大検出可能電荷状態zmdより高い場合、zmd+1からzlimitの間の電荷を有する電荷状態に対して、ピーク幅に関連するパラメータが決定された質量スペクトルの同位体分布の調査されたピークが、低分解能電荷状態zhiのピークとなる得ることが可能であり、したがってピークは、同位体が分離及び分解されていない同位体分布を示している。調査されたピークのFHWM値は、ピーク幅に関連するその決定されたパラメータから推定され得る。これは、当業者に周知であり、測定されたピークのピーク形状の予測モデルに基づき得る。当然ながら、調査されたピークのピーク幅に関連する決定されたパラメータは、調査されたピークのFHWM値であることが好ましい。
本発明の方法の好ましい実施形態のさらに説明される例において、値Δiso(1)=1.00235が使用され、調査された同位体分布の中心ピークのFHWM値が決定される。
次いで、そのピーク幅のFWHM値で測定されたピークは、そのFWHM値が、その同位体分布の同位体が分解され得る要件を満たしている場合、電荷zを有する電荷状態に対する唯一の分解された同位体ピークとなり得る。
したがって、この要件が満たされている最大電荷状態zmdが決定され、測定されたピークは、分解された同位体分布の同位体ピークとなり得る。zmdより高い電荷を有する電荷状態に対しては、測定されたピークは、その制限的なFWHM値により、分解された同位体ピークとはなり得ない。ここで、限度zlimitが例えば100となるように選択され、これが最大検出可能電荷状態zmdより高い場合、zmd+1〜100の間の電荷を有する電荷状態に対して、そのFHWM値が決定された調査された同位体分布の中心ピークが、低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることが可能であり、したがってピークは、同位体が分離及び分解されていない同位体分布を示している。
本発明の方法のこの好ましい実施形態において、ピーク幅に関連するパラメータが決定された調査された同位体分布のピークに関して、ピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることが決定された場合、本発明の方法の好ましい実施形態の次のステップにおいて、調査された同位体分布の少なくともいくつか、好ましくは全てのピークが、本当に低分解能電荷状態zhiのピークであり得るかどうかさらに調査され得る。
異なる基準がチェックされてもよく、1つの適用された基準が、調査された同位体分布の調査されたピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることを示す場合に限り、調査されたピークに対する本発明の方法の好ましい実施形態の次のステップが実行される。特に好ましい実施形態において、調査されたピークに対する本発明の方法の好ましい実施形態の次のステップは、2つ以上の適用される基準が、調査された同位体分布の調査されたピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることを示す場合にのみ実行される。
調査されたピークに関してチェックされ得る異なる基準は、以下の基準の1つ以上である。
●調査されたピーク構造が、以下のような低分解能電荷状態の特定の特徴を示すかどうかをチェックする。
−融合されたピークの特徴、例えば
○ピーク構造における下位ピーク
○少なくともほぼ2倍のピーク幅を有する広がったピーク
−断片化されたピークの特徴、例えば
○広がったピーク、ならびにより低い、及び/またはより高いm/z値の近い衛星ピーク
●ピーク幅、特にFWHM値が、低分解能の予測電荷状態(z=zmd+1、・・・、zlimit)の分解されていない同位体分布の予測ピーク幅に適合するかどうかをチェックする(典型的には、予測ピーク幅からの10%、好ましくは3%、特に1%の偏差が許容される)
●調査されたピークの低分解能の予測電荷状態(z=zmd+1、・・・、zlimit)の隣接する同位体ピークが、有意な強度を有するかどうかをチェックする(典型的には、調査されたピークの強度の5%〜500%の間、好ましくは調査されたピークの強度の10%〜300%の間、特に好ましくは調査されたピークの強度の30%〜200%の間)
基準の1つ以上が特定の調査されたピークにのみ適用されてもよい。基準がチェックされるかどうかは、調査されたピークの異なるパラメータ、例えばそのm/z値、ピーク強度、信号/雑音比、ピーク幅、ピーク形状及びそれ以上に依存し得る。
また、調査された同位体分布の少なくともいくつか、好ましくは全てのピークが、本当に低分解能電荷状態zhiのピークであり得るかどうか調査され得る、本発明の方法の好ましい実施形態の別のステップにおいて適用されてもよい別のチェックは、例えば許容されるm/z値差のウィンドウを使用した少なくともm/z値の比較により、調査されたピークが、調査された試料に属していない(例えば、試料のイオン化プロセスに起因して)データベースバックグラウンドイオンにリストされているかどうかのチェックである。すると、バックグラウンドイオンに割り当てられる全てのピークは、本発明の方法のこの好ましい実施形態において、低分解能電荷状態zhiのピークであるかどうかそれ以上調査されない。
本発明の方法の好ましい実施形態の説明された例に関して、全てのリストされた基準は、調査された同位体分布の全てのピークに対して、そのFWHM値が決定される調査された同位体分布の中心ピークが、低分解能電荷状態zhiのピークであり得るかどうかチェックされる。さらに、ピークがデータベースバックグラウンドイオンにリストされているかどうかがチェックされた。少なくとも1つの基準を満たし、バックグラウンドイオンのデータベース内に調査された同位体分布のピークのみが、低分解能電荷状態zhiのピークであるかどうかさらに調査される。
本発明の方法のこの好ましい実施形態において、ピーク幅に関連するパラメータが決定された調査された同位体分布のピークに関して、上述のステップの1つ以上の実行後、ピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることが判明した場合、本発明の方法の好ましい実施形態の次のステップにおいて、調査された同位体分布の少なくともいくつか、好ましくは全てのピークが、各ピークに対する事前スコアを決定することによりさらに調査され得る。前述のチェックステップが、調査された同位体分布のピークに適用された場合、ピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることをチェックステップが確認した場合のピークのみがさらに調査される。
各ピークの事前スコアは、1、2、3、・・・zlimit−1、zlimitの範囲内の電荷zを有する全ての電荷状態に対して決定される。
limitの値は、以前に説明されたように、低分解能電荷状態zhiの調査のために増加されてもよい。
最大検出可能電荷状態zmd以下の電荷zを有する電荷状態に対しては、本発明の方法のステップ(iv)においてそのピークに対して電荷zの同位体分布が特定されていない場合、事前スコアは0に設定される。
最大検出可能電荷状態zmd以下の電荷zを有する電荷状態に対して、本発明の方法のステップ(iv)において電荷zの同位体分布が特定されている場合、電荷状態z−1及びz+1を有する隣接する同位体分布の最高ピークの強度が決定される。電荷状態zの隣接する電荷状態は、異なる電荷状態が生成された様式を考慮することにより定義されるが、これは以下で詳細に説明される。
事前スコアが計算されるべきピークに上述のチェック基準が適用された場合に、チェック基準が、電荷zに対して、ピークが低分解能電荷状態zhi(=z)のピークであり得ることを示した場合、事前スコアは、最大検出可能電荷状態zmdより高い電荷zを有する電荷状態に対してのみ決定される。
最大検出可能電荷状態zmdより高い電荷状態zに対しては、電荷zに対するピークの事前スコアの計算は、隣接する電荷状態z−1及びz+1を考慮する。ピークのm/z値に関して、電荷状態z−1及びz+1の対応するm/z値が決定され、次いでこれらのm/z値の周囲のm/zウィンドウ内で、最高ピーク強度がこれらの電荷状態z−1及びz+1に対して決定される。電荷状態zの隣接する電荷状態は、異なる電荷状態が生成された様式を考慮することにより定義されるが、これは以下で詳細に説明される。m/zウィンドウは、典型的には、隣接する予測同位体のni倍のm/z距離のウィンドウサイズを有する(niは、典型的には、4〜20の間、好ましくは8〜16の間である)。
次いで、電荷状態zの事前スコアが、電荷状態z−1及びz+1の最高ピークの強度により与えられる(強度が、事前スコアが決定されるピークの強度を下回る場合)。隣接する電荷状態の強度が、調査されたピークの強度以上である場合、調査される電荷状態の事前スコアは、事前スコアが決定される調査されたピークの強度に制限される。
この事前スコアの決定のために、並行して動作し、単一のスレッドで異なる電荷状態及びピークに対する事前スコアを推定する、マルチプロセッサの異なるプロセッサが使用され得る。
本発明の方法の好ましい実施形態の説明された例において、ピーク幅に関連するパラメータが決定された調査された同位体分布のピークに関して、ピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることが判明した場合、上述のステップの実行後、次のステップにおいて、調査された同位体分布の全てのピークが、各ピークに対する事前スコアを決定することによりさらに調査される。前述のチェックステップが、調査された同位体分布のピークに適用されたため、ピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることをチェックステップが確認したピークのみがさらに調査される。
最大検出可能電荷状態zmdより高い電荷zを有する電荷状態に対して、電荷zに対するピークの事前スコアの計算のために、隣接する電荷状態z−1及びz+1が考慮される場合、ピークのm/z値に関して、電荷状態z−1及びz+1の対応するm/z値が決定され、次いで、これらのm/z値の周囲の隣接する予測同位体の12倍のm/z距離のm/zウィンドウ内で、最高ピーク強度がこれらの電荷状態z−1及びz+1に対して決定される。本発明の方法のこの好ましい実施形態において、ピーク幅に関連するパラメータが決定された調査された同位体分布のピークに関して、上述のステップの1つ以上の実行後、ピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることが判明した場合、本発明の方法の好ましい実施形態の次のステップにおいて、調査された同位体分布の少なくともいくつか、好ましくは全てのピークが、可能な電荷状態zの各ピークPLに対するスコアslr_PL(z)を決定することによりさらに調査される。前述のチェックステップが調査された同位体分布のピークに適用された場合、ピークが低分解能電荷状態zhiのピークであり得ることをチェックステップが確認した場合のピークのみがさらに調査される。
低分解能電荷状態zhiのピークであり得るピークに対して事前スコアが決定された場合、事前スコアの最高Npre-score値を有するピークのその電荷状態のスコアのみが計算される。典型的には、Npre-scoreは、3〜15の間の値、好ましくは5〜12の間の値、特に好ましくは7〜10の間の値を有する。したがって、最も有利な電荷状態zの特定に起因して、決定されるスコアの数は顕著に低減され得、これにより、本発明の方法のこの好ましい実施形態における特定がまた低分解能電荷状態zhiに基づく場合、分子のモノアイソトピック質量、またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを特定するための時間が大幅に低減される。
電荷状態zに対する、低分解能電荷状態zhiのピークであり得る検出されたピークPLのスコアslr_PL(z)の決定は、K個の隣接電荷状態を考慮することにより決定される。電荷状態zの隣接する電荷状態は、異なる電荷状態が生成された様式を考慮することにより定義されるが、これは以下で詳細に説明される。
したがって、電荷状態zに対するスコアslr_PL(z)の決定のために、電荷状態zslr
z−K/2、z−K/2+1、・・・z−1、z+1、z+K/2−1、z+K/2
もまた使用される。典型的には、Kは、4〜16の間、好ましくは4〜12の間、具体的には8または10の値を有する。
スコアslr_PL(z)は、考慮される各電荷状態zslrの最高S/N(信号対雑音)値に関連する値v(S/Nzslr)の合計により与えられる。
好ましくは、値は、S/N値の対数の関数である。
特に好ましくは、各電荷状態zslrの各S/N値の対数が、電荷状態zのS/N値の対数と比較され、各電荷状態zslrの値vが、電荷状態zslrのS/N値の対数及び電荷状態zのS/N値の対数の最小値により与えられ、したがってv(S/Nzslr)は、以下により与えられる。
電荷状態zのS/N値は、検出されたピークPLから直接決定される。
最大検出可能電荷状態zmd以下の電荷zを有する電荷状態zslrに対して、電荷zslrの同位体分布が本発明の方法のステップ(iv)において特定された場合、同位体分布の最高ピークのS/N値が、電荷状態zslrの最高S/N値である。さらに、同位体分布の最高ピークの強度Izslrが決定される。
最大検出可能電荷状態zmdより高い電荷zslrを有する電荷状態に対して、電荷状態zslrのm/z値に対応するピークのm/z値が決定され、このm/z値の周囲のm/zウィンドウ内で、最高ピーク強度Izslrが決定される。電荷状態zの隣接する電荷状態は、異なる電荷状態が生成された様式を考慮することにより定義されるが、これは以下で詳細に説明される。m/zウィンドウは、典型的には、隣接する予測同位体のni倍のm/z距離のウィンドウサイズを有する(niは、典型的には、4〜20の間、好ましくは8〜16の間である)。次いで、電荷状態zslrの最高S/N値が、m/zウィンドウ内の最高ピークにより与えられる。ピークは、すでに上で説明されたように閾値Tよりも高い信号対雑音比S/Nを有する有意なピークである場合にのみ与えられる。ピークが見られない場合、値v(S/Nzslr)、及びその強度Izslrも0に設定される。
本発明の方法の好ましい実施形態の説明された例において、低分解能電荷状態zhiのピークであり得るピークに対して事前スコアが決定された後、事前スコアの最大の8つの値を有するピークのその電荷状態に対してのみスコアslr_PL(z)が計算される。
電荷状態zに対する、低分解能電荷状態zhiのピークであり得る検出されたピークPLのスコアslr_PL(z)の決定は、8つの隣接電荷状態を考慮することにより決定される。
したがって、電荷状態zに対するスコアslr_PL(z)の決定のために、電荷状態zslr
z−4、z−3、z−2、z−1、z+1、z+2、z+3、z+4
もまた使用される。
スコアslr_PL(z)は、考慮される各電荷状態zslrの最高S/N(信号対雑音)値に関連する値v(S/Nzslr)の合計により与えられる。
好ましくは、S/N値の対数の値v(S/Nzslr)は、以下により与えられる。
検出されたピークPLのスコアslr_PL(z)の決定後、使用された電荷状態のパターンが、予測強度分布、好ましくはガウス状強度分布を有するかどうかさらに調査される。この意図のために、検出されたピークPLのスコアslr_PL(z)を計算するために使用された各電荷状態のS/Nzslrの決定の間に決定された最高強度Izslrを用いた単純な方法を使用することができることが判明した。検出されたピークPLのスコアslr_PL(z)を計算するために使用された各電荷状態の最高強度Izslrから、自己相関値RPL(z)が決定され得る。
ここで、以下のように、スコアslr_PL(z)を計算するために使用された各電荷状態の最高強度Izslrにより、値tzslrが与えられる。
関数argmax(a,b,c)は、値a、b及びcの最高値として定義される。
本発明の方法の好ましい実施形態の説明された例において、検出されたピークPLのスコアslr_PL(z)を計算するために使用された各電荷状態の最高強度Izslrから、次いで以下により自己相関値RPL(z)が決定され得る。
ここで、以下のように、スコアslr_PL(z)を計算するために使用された各電荷状態の最高強度Izslrにより、値tzslrが与えられる。
次いで、電荷状態zに対して決定された低分解能電荷状態zhiのピークであり得る検出されたピークPLの各自己相関値RPL(z)に対して、自己相関値RPL(z)が閾値Rthより高いかどうか決定される。この閾値Rthは、少なくとも0.2、典型的には0.25〜0.7の間、好ましくは0.3〜0.55の間、特に好ましくは0.35〜0.4の間である。次いで、低分解能電荷状態zhiのピークであり得る検出されたピークPLに対して、閾値より高い自己相関値RPL(z)を有する電荷状態zの最高スコアslr_PL(z)が決定される。好ましくは、電荷状態zのそのようなスコアslr_PL(z)のみを使用して、検出されたピークPLの最高スコアslr_PL(z)が決定されるが、このスコアは、ピークがその質量ウィンドウ内で見られた電荷状態zslrの少なくとも特定数Nvの値v(S/Nzslr)の合計により与えられる。特定数Nvは、3〜6の間、好ましくは4または5である。特定数Nvは、検出されたピークPLの電荷状態zの特定された隣接する電荷状態zslrの数である。
本発明の方法の好ましい実施形態の説明された例において、電荷状態zに対して決定された低分解能電荷状態zhiのピークであり得る検出されたピークPLの各自己相関値RPL(z)に対して、自己相関値RPL(z)が閾値Rth=0.36より高いかどうか決定される。電荷状態zのそのようなスコアslr_PL(z)のみを使用して、検出されたピークPLの最高スコアslr_PL(z)が決定されるが、このスコアは、ピークがその質量ウィンドウ内で見られた電荷状態zslrの少なくとも特定数4の値v(S/Nzslr)の合計により与えられる。
次いで、低分解能電荷状態zhiのピークであり得る各検出されたピークに対して、電荷状態z1の決定された最高スコアslr_PL(z1)が、電荷状態z2の第2の最高スコアslr_PL(z2)と比較される。次いで、検出されたピークPLは、以下の2つの条件のうちの一方が満たされた場合にのみ、電荷z1を有する低分解能電荷状態として特定される。
値s−比は、最高スコアslr_PL(z1)と2番目に高いスコアslr_PL(z2)との間の相対的な差を定義する閾値である。s−比の値は、典型的には、1.1〜1.5の間、好ましくは1.2〜1.3の間、特に好ましくは1.22〜1.27の間である。
本発明の方法の好ましい実施形態の説明された例において、s−比の値は、1.25である。
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、次いで、検出されたピークPLは、ピークがそのm/zウィンドウ内で見られた電荷状態zslrが受け入れられる限り、検出されたピークPLに割り当てられた全ての電荷1、2、・・・、zlimit−1、zlimitの全電荷エンベロープの観察された電荷状態が(ピークが電荷z1のイオンにより生じた場合)以下のさらなる条件の1つ以上を満たす場合にのみ、電荷z1を有する低分解能電荷状態として特定される。(i)全電荷エンベロープにおいて、特定数Nconnの続く受け入れられる電荷状態zslrが存在する(Nconnは、典型的には3〜10の間、好ましくは5〜7の間であり、第2の後続の電荷状態の電荷z+1が第1の電荷状態の電荷zと比較して1だけ増加している場合、2つの電荷状態は続いている、例えば、電荷z、z+1及びz+2の3つの続く電荷状態)。
(ii)全電荷エンベロープが、2対の2つの続く電荷状態zslrを含有する。
(iii)特定数Ngapの電荷状態の2つの受け入れられる電荷状態zslrの間にギャップが存在する場合、2つの電荷状態のうち、電荷状態z1に対するより小さい差を有する電荷状態のみ、及びこの電荷状態と電荷状態z1との間の全ての電荷状態が、改善されたスコアslr_PL(z1)及び自己相関値RPL(z1)を決定するために考慮され、次いで、上述の規則に従って、検出されたピークPLが、この改善されたスコアslr_PL(z1)を有する電荷z1を有する低分解能電荷状態として特定され得るかどうか再調査される。典型的には、ギャップ内で許容されない電荷状態の数Ngapは、2〜5の間である。
本発明の方法の好ましい実施形態の説明された例において、次いで、検出されたピークPLは、ピークがそのm/zウィンドウ内で見られた荷状態zslrが受け入れられる限り、検出されたピークPLに割り当てられた対応する質量の全ての電荷1、2、…、zlimit−1、zlimitの全電荷エンベロープの観察された電荷状態が(ピークが電荷z1のイオンにより生じた場合)以下のさらなる条件を満たす場合にのみ、電荷z1を有する低分解能電荷状態として特定される。
(i)全電荷エンベロープ内に、5つの続く受け入れられる電荷状態zslrが存在する。
(ii)全電荷エンベロープが、2×2の続く受け入れられる電荷状態zslrを含有する。
(iii)2つの電荷状態の2つの受け入れられる電荷状態zslrの間にギャップが存在する場合、2つの電荷状態のうち、電荷状態z1に対するより小さい差を有する電荷状態のみ、及びこの電荷状態の間の全ての電荷状態が、改善されたスコアslr_PL(z1)及び自己相関値RPL(z1)を決定するために考慮され、次いで、上述の規則に従って、検出されたピークPLが、この改善されたスコアslr_PL(z1)を有する電荷z1を有する低分解能電荷状態として特定され得るかどうか調査される。
本発明の方法のこの好ましい実施形態において、検出されたピークPLが電荷zhiを有する低分解能電荷状態として特定される場合、検出されたピークPLの電荷エンベロープの全ての特定されたピークに対してステップ(iv)において推定された同位体分布は、本発明の方法のその後のステップにおいてもはや考慮されない。次いで、モノアイソトピック質量、または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、ピークの分解されていない同位体分布に対するモデル、例えばアベラジン(averagine)モデル等を使用して、電荷zhiを有する低分解能電荷状態としての検出されたピークPLから推定される。
したがって本発明の方法のこの好ましい実施形態において、モノアイソトピック質量、または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータは、同位体分布における同位体が分解されていない分子種に対してのみ特定され得ない。また、本発明の方法のこの好ましい実施形態により特定された、低分解能電荷状態の分解されていない同位体分布から、モノアイソトピック質量、または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、分子種に対して特定され得る。したがって、本発明の方法のこの好ましい実施形態により、試料中に含有される、またはそれから生じるより多くの分子が特定され得る。
同位体分布の検出されたピークPLを、電荷zhiを有する低分解能電荷状態として特定するための、本発明の方法のこの好ましい実施形態の方法は、任意の説明された本発明の方法により推定された任意の同位体分布に対して一般的に適用され得る。
マルチプロセッサのいくつかのプロセッサを用いた並行した推定により、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片から特定の電荷zを有する分子種のイオンの同位体分布が推定された後、2つ以上の推定された同位体分布が、異なる比電荷zを有する1つの分子種のイオンの同位体分布であることが可能である。ほとんどの場合、これらの同位体分布は、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の異なる断片において推定されている。しかしながら、これらの同位体分布はまた、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の1つの断片において推定されている。また、同位体分布が測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片から推定される場合、比電荷zを有する1つの分子種のイオンの1つの同位体分布が特定され、別の比電荷z’を有する同じ分子種のイオンの別の同位体分布は、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片から推定されていないことも可能である。
一般に、質量分析器により検出可能な1つの分子種の異なるイオンは、以下のように変動し得る。
(i)異なるイオンの電荷のみが逸脱し、質量が同じである。この種のイオンは、イオン化プロセスによって電子が付加または除去されることにより生じ得る。
例:電子の付加(電荷z=−1)
第1のイオン: 質量m 電荷z
第2のイオン: 質量m 電荷z−1
(ii)質量ma及び電荷zaを有するイオンの付加
例:質量ma及び電荷zaを有するイオンの付加
第1のイオン: 質量m 電荷z
第2のイオン: 質量m+ma 電荷z+za
イオンとして付加される典型的な付加体は、H+、Na+、K+ならびに酢酸及びギ酸のイオンである。
エレクトロスプレーイオン化の間、質量m=1及び電荷z=1を有するプロトン(H+)が付加される。付加されたプロトンを有する、または有さない2つの得られるイオンは、
第1のイオン: 質量m 電荷z
第2のイオン: 質量m+1 電荷z+1
異なる比電荷を有する同じ分子のイオンの同位体分布の可能な発生を、本発明の方法の別のステップにおいて使用して、分子種のモノアイソトピック質量の決定を改善することができる。
まず、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片から推定された比電荷zを有する分子種のイオンの全ての同位体分布から、その同位体分布が測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片から推論された際に、電荷スコアcsM1(z)の最高値が見られた分子種M1の同位体分布が定義される。この分子M1に対して、S個の最高値を有するS個の電荷スコアcsM1(z1)・・・csM1(zs)を有するイオンの同位体分布が調査される。典型的には、調査される電荷スコアの数は、2〜8の間、好ましくは4〜6の間である。比電荷zを有する特定の分子のイオンのこの同位体分布のそれぞれに対して、z−Δzからz+Δzの間の電荷を有する特定の分子種のイオンの隣接する同位体分布が考慮される。Δzの典型的な値は、1〜5の間、好ましくは2または3である。したがって、Δz=2に対して、電荷z−2、z−1、z、z+1、z+2を有するイオンが考慮される。また、分子種のイオンのイオン化プロセスに依存して、イオンの質量もまた上述のように変化し得ることも考慮する必要がある。
S個の電荷スコアcsM1(z1)・・・csM1(zs)を有するイオンの同位体分布の新たな電荷スコアcsM1_A(zX)が、その電荷スコアから、例えば、電荷スコアに考慮される隣接する同位体分布の電荷スコアを加えることにより計算される。
例えば、
特定の分子種のイオンの隣接する同位体分布が、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片からすでに推定されている場合、推定された同位体分布の評価された電荷スコアを使用することができる。それ以外では、調査された同位体分布の最高ピークのm/z値mh/zhから、考慮される隣接する同位体分布の最高ピークのm/z値に関して、1つの分子種の異なるイオンが上述のようなそのイオン化に依存してどのように変動し得るかを結論付けることが可能である。例えば、エレクトロスプレーイオン化の場合、電荷z+Δzの隣接するピークは、m/z値(mh+Δz)/(zh+Δz)を有する。
理論m/z値m/znを有する隣接する同位体分布の最高ピークの検索ウィンドウは、以下により定義される。
ウィンドウ幅2*δm/zisoは、隣接する同位体分布の電荷、ならびに/または隣接する同位体分布の観察及び予測最高ピークの質量の最大偏差に依存して選択され得る。
測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片における同位体分布を推定するためには、検索ウィンドウ内で観察される隣接する同位体分布のこの最高ピークPNに対して、同位体分布の他のピークが特定される必要があり、その電荷znに従う電荷スコアcsPN(zn)が上述の方法に従って評価される必要がある。次いで、これらの電荷スコアcsPN(zn)が、新たな電荷スコアcsM1_A(zX)の計算において使用される。プロセスを加速させるために、欠落した隣接する同位体分布の特定、及び電荷スコアcsPN(zn)の評価を、マルチプロセッサの異なるプロセッサと並行して行うことができる。
S個の電荷スコアcsM1(z1)・・・csM1(zs)を有するイオンの同位体分布の新たな電荷スコアcsM1_A(zX)が計算された場合、新たな電荷スコアcsM1_A(zX)がランク付けされる。次いで、電荷状態zH1の最高値の電荷スコアcsM1_A(zH1)が、電荷状態zH2の2番目に高い値の電荷スコアcsM1_A(zH2)と比較される。これらの値の比が閾値Tcs2を超える場合、電荷状態zH1は、分子種M1の関連した同位体分布の正確なセットを定義するために、分子種M1の正確な開始電荷状態として受け入れられる。
閾値Tcs2の値により、開始電荷状態zH1に関連した同位体分布のセットが分子種M1の同位体分布のセットとして明確に推定され得るように、最も高い値を有する2つの最善の評価された電荷スコアcsM1_A(zH1)及びcsM1_A(zH1)がどれほど明確に異なる必要があるかが定義され得る。典型的には、閾値Tcs2の値は、1.10〜3の範囲内、好ましくは1.15〜2の範囲内、好ましくは1.20〜1.50の範囲内である。閾値Tcs2の値は、使用者、コントローラまたはコントローラの製造者によって、ハードウェアまたはソフトウェアにより設定され得る。
分子種M1のイオンの推定された同位体分布のセットから、分子種M1のモノアイソトピック質量及び/または分子種M1のモノアイソトピックピークが、当業者により知られている方法により、例えば、同位体分布のピークのパターンへのアベルジン(avergine)フィッティング、または、同位体分布の同位体パターンにおいてモノアイソトピックピークを直接探すことにより推定され得る。
分子種M1の同位体分布のセットが推定され得た後、この同位体分布のセットのピークは、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の全m/z範囲内の全ての有意なピークから除去される。
次いで、有意なピークが除去されていない、測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片から推定された比電荷zを有する分子種のイオンの全ての残りの同位体分布から、その同位体分布が測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の断片から推論された際に、電荷スコアcsM2(z)の最高値が見られた分子種M2の同位体分布が定義される。この分子M2に対して、S個の最高値を有するS個の電荷スコアcsM2(z1)・・・csM2(zs)を有するイオンの同位体分布が調査される。
次いで、この分子種M2に対して、分子種ピークM1と同様に、同位体分布のセットが推定される必要がある。
分子種M2のイオンの推定された同位体分布のセットから、分子種M2のモノアイソトピック質量及び/または分子種M2のモノアイソトピックピークが、当業者により知られている方法により、例えば、同位体分布のピークのパターンへのアベルジン(avergine)フィッティング、または、同位体分布の同位体パターンにおいてモノアイソトピックピークを直接探すことにより推定され得る。
この手順を可能な限り頻繁に繰り返すことにより、分子種のイオンの同位体分布の可能な限り多くのセット、さらには分子種の可能な限り多くのモノアイソトピック質量が推定され得る。
本発明の前述の実施形態の組み合わせである全ての実施形態もまた、本発明のこの説明の内容に属する。したがって、以前に単一の実施形態に関してのみ説明された特徴の組み合わせを含む全ての実施形態が包含される。
全ての説明された実施形態において、アベルジン(Avergine)モデルは、予測同位体分布のモデルとして使用される。本発明の方法において、調査された分子による予測同位体分布の他のモデルも使用され得ることが、当業者に明らかである。したがって、本発明の方法が予測同位体分布のこれらのモデルを使用している場合も、本発明の方法は、本特許出願の範囲及び特許請求に包含される。

Claims (17)

  1. 試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法であって、
    (i)質量分析計により前記試料の質量スペクトルを測定するステップと、
    (ii)前記試料の前記質量スペクトルの測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲を断片に分割するステップと、
    (iii)測定されたm/z値の前記少なくとも1つの範囲の前記断片の少なくともいくつかを、いくつかの提供されたプロセッサの1つのプロセッサに割り当てるステップと、
    (iv)測定されたm/z値の前記少なくとも1つの範囲の前記断片の少なくとも1つにおける前記測定された質量スペクトルから、前記試料中に含有される、及び/または前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、比電荷zを有するそれらのイオンの同位体分布を推定するステップと、
    (v)前記試料中に含有される、及び/または前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれの前記イオンの少なくとも1つの推定された同位体分布から、前記分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを推定するステップと、を含む方法。
  2. 測定されたm/z値の少なくとも1つの範囲の前記断片のそれぞれにおいて、比電荷zを有する1つの分子種のイオンの少なくとも1つの同位体分布が検出される、
    請求項1に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  3. 前記少なくとも1つの分子種以外の少なくとも1つの分子種に対して、比電荷zを有するそのイオンの同位体分布が、測定されたm/z値の前記少なくとも1つの範囲の前記断片の少なくとも1つにおいて推定される、
    請求項1又は2に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  4. 前記試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって前記試料から生じる前記分子種のいくつかに対して、モノアイソトピック質量または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、異なる比電荷zを有するそのイオンの2つ以上の推定された同位体分布から推定される、
    請求項1に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  5. 前記試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって前記試料から生じる前記分子種のいくつかに対して、モノアイソトピック質量または同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、測定されたm/z値の前記少なくとも1つの範囲の異なる断片から推定される、異なる比電荷zを有するそのイオンの2つ以上の同位体分布から推定される、
    請求項4に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  6. 前記試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれのモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、測定されたm/z値の前記少なくとも1つの範囲の異なる断片から推定された比電荷zを有するイオンの同位体分布を評価することにより、測定されたm/z値の前記少なくとも1つの範囲の前記断片の少なくとも1つにおける分子種の比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの推論された同位体分布から推定される、
    請求項1又は5に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  7. 前記試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれのモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、プロセッサに割り当てられた全ての断片から推定された比電荷zを有するイオンの同位体分布を評価することにより、測定されたm/z値の前記少なくとも1つの範囲の前記断片の少なくとも1つにおける分子種の比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの推定された同位体分布から推定される、
    請求項6に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  8. 前記測定された質量スペクトルから、前記試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの同位体分布が、4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の少なくとも3つの操作によって、前記質量スペクトルの測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)を推定することにより推定される、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  9. 前記質量スペクトルの前記測定されたピークPXの前記電荷スコアcsPX(z)が、前記4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の操作によって推定される、
    請求項8に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  10. 前記測定された質量スペクトルから、前記試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの同位体分布が、電荷1と最大電荷状態zmaxとの間の各電荷状態zに対して、前記質量スペクトルの前記測定されたピークPXの前記電荷スコアcsPX(z)を推定することにより推定される、
    請求項8又は9に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  11. ステップ(iv)における同位体分布の前記推定の後に、前記推定された同位体分布の少なくとも一部が、そのピークの1つ以上が低分解能電荷状態zhiの同位体分布に属し得るかどうか調査される、
    請求項1〜9の少なくとも1項に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  12. ステップ(iv)における同位体分布の前記推定の後に、前記推定された同位体分布の少なくとも一部が、そのピークの1つ以上が低分解能電荷状態zhiの同位体分布に属し得るかどうか調査され、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のモノアイソトピック質量またはこれらの同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、前記調査によりステップ(iv)において推定された同位体分布のピークに割り当てられる低分解能電荷状態zhiの前記同位体分布から推定される、
    請求項1〜9の少なくとも1項に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  13. 試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法であって、
    (i)質量分析計により前記試料の質量スペクトルを測定するステップと、
    (ii)前記測定された質量スペクトルから、前記試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の少なくとも3つの操作によって、前記質量スペクトルの測定されたピークPXの電荷スコアcsPX(z)を推定することにより、比電荷zを有するそのイオンの少なくとも1つの同位体分布を推定するステップと、
    (iii)前記試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれの比電荷zを有するイオンの少なくとも1つの推定された同位体分布から、前記分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを推定するステップと、を含む方法。
  14. 前記質量スペクトルの測定されたピークの前記電荷スコアcsPX(z)が、前記4つの下位電荷スコアcsP_PX(z)、csAS_PX(z)、csAC_PX(z)及びcsIS_PX(z)の操作によって推定される、
    請求項13に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  15. ステップ(ii)における同位体分布の前記推定の後に、前記推定された同位体分布の少なくとも一部が、そのピークの1つ以上が低分解能電荷状態zhiの同位体分布に属し得るかどうか調査される、
    請求項13又は14に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  16. ステップ(ii)における同位体分布の前記推定の後に、前記推定された同位体分布の少なくとも一部が、そのピークの1つ以上が低分解能電荷状態zhiの同位体分布に属し得るかどうか調査され、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる分子種のモノアイソトピック質量またはこれらの同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータが、前記調査によりステップ(ii)において推定された同位体分布のピークに割り当てられる低分解能電荷状態zhiの前記同位体分布から推定される、
    請求項13又は14に記載の、試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法。
  17. 試料中に含有される、及び/または少なくともイオン化プロセスによって試料から生じる少なくとも1つの分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータの特定のための方法であって、
    (i)質量分析計により前記試料の質量スペクトルを測定するステップと、
    (ii)前記測定された質量スペクトルから、前記試料中に含有される、及び/または前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれに対して、比電荷zを有するそのイオンの少なくとも2つの同位体分布を推定するステップと、
    (iii)前記試料中に含有される、及び/または前記試料から生じる前記少なくとも1つの分子種のそれぞれのイオンの前記少なくとも2つの推定された同位体分布から、前記分子種のモノアイソトピック質量またはその同位体分布の同位体の質量に関連するパラメータを推定するステップと、を含む方法。
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