JP2009257062A - コンクリート床構造体及びその施工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】建築物のコンクリート床上面31に、セルフレベリング材モルタル用プライマー層34を設ける工程と、アルミナセメントと樹脂粉末とを含むセルフレベリング材と水とを混練して調製したスラリー35を打設して硬化させる工程と、セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材用プライマー層37を設ける工程と、塗り床材用ベースコート38を施工して硬化させる工程とを含むコンクリート床構造体の施工方法である。
【選択図】図4
Description
これらの塗り床材を施工する場合の下地層施工法としては、コンクリート直押え工法とモルタル類やセルフレベリング材等を用いる打ち継ぎ工法がある。
塗り床材の種類を選定することにより、耐荷重性、耐磨耗性、耐衝撃性、耐水性、耐薬品性、耐候性、美観性、防音性等の機能を有するコンクリート床構造体を形成できる。
塗り床材を施工して得られるこれらの多様な機能は、特に塗り床材ベースコートの硬化層の性状、すなわち、塗り床材ベースコートの硬化層の厚さ、均一さなどに大きく依存する。また、この塗り床材ベースコート硬化層の性状は、下地を形成しているコンクリート表面の性状によっても大きく影響される。
また、既設の建築物のコンクリート床を改修するような場合、当初施工されていた塗り床材や貼り床材を除去し、コンクリート床面を研磨処理して粗い凹凸を均す作業を行った上で新たに塗り床材が施工されるが、この場合もコンクリート床全体の表面には多種多様な小さな凹凸や微妙な傾斜が入り組んだ状態になっている。
さらにコンクリート床にこのセルフレベリング材を施工し、その上面に塗り床材を施工することにより、セルフレベリング材の硬化体層の含水率がコンクリート・モルタル水分計で5%未満(D値が690未満)に低下するまで塗り床材の施工を待つ必要がなく、施工効率と水平レベル精度に優れ、供用時にも良好な耐久性を有する塗り床仕上げコンクリート構造体が得られることを見出して本発明を完成させた。
本発明の第2は、前記本発明の第1の施工方法により得られるコンクリート床構造体である。
1)セルフレベリング材は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を含むこと。
2)セルフレベリング材は、水硬性成分と樹脂粉末とを含み、さらに無機粉末、細骨材、凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤から選ばれる成分を少なくとも1種以上含むこと。
3)セルフレベリング材と水とを混練して調製したスラリーを打設してから1.75時間〜12時間の間に、セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材用プライマーを塗布して乾燥させて塗り床材用プライマー層を設け、塗り床材用プライマー層の上面に塗り床材用ベースコートを施工すること。
4)セルフレベリング材スラリー硬化体表面のショア硬度は、スラリーを打設(施工)したのち2時間後に10以上であること。
5)セルフレベリング材スラリー硬化体表面のショア硬度は、スラリーを打設(施工)したのち6時間後に50以上であること。
6)セルフレベリング材スラリー硬化体表面の水分量は、スラリー打設(施工)したのち24時間後に5%未満(D値=690未満)であること。
7)セルフレベリング材スラリー硬化体は、長さ変化率の膨張が0〜0.08%であり、長さ変化率の収縮が−0.08〜0%であること。
8)塗り床材は、エポキシ樹脂系塗り床材、ウレタン樹脂系塗り床材、メタクリル樹脂系塗り床材、アクリル樹脂系塗り床材、ポリエステル樹脂系塗り床材、ビニルエステル系塗り床材及びポリマーセメント系塗り床材から選ばれるいずれか1種の塗り床材であること。
9)塗り床材のベースコート硬化層の上面に、さらに塗り床材用トップコート層を設けること。
また、本発明ではアルミナセメントを含み、速硬性・速乾性に優れ、優れた水平レベル性を有する床面を形成できるセルフレベリング材を用いることによって、セルフレベリング材スラリーを打設・施工したのち1.75時間後〜12時間後には塗り床材を施工できることから、極めて効率的に水平レベル精度に優れた塗り床下地の形成が可能で、速やかに塗り床材の施工を行うことが可能となる。
また、従来課題となることがあったコンクリート床から離脱しようとする水分による塗り床材硬化層の膨れについても、本発明では、寸法変化率及び通気性が極めて小さいセルフレベリング材を選択して用い、緻密で高強度なセルフレベリング材の硬化体層を下地コンクリートと塗り床材硬化体層の中間層に設けることによって解消することができ、床構造体として優れた耐久特性が得られるものである。
本発明では、まず図4bに示すように、凹凸(小さな凹凸)32や微妙な傾斜33を有するコンクリート床31上面に、セルフレベリング材用プライマー34を施工する。
次に、セルフレベリング材用プライマー34が乾燥して造膜したのち、その上面に図4cに示すようにセルフレベリング材スラリー35を打設する。
塗り床材の施工は、セルフレベリング材スラリーを打設・施工したのち、好ましくは1.75時間から12時間の間、さらに好ましくは1.8時間〜11時間の間、より好ましくは1.85時間〜10時間の間、特に好ましくは1.9時間〜6時間の間に、図4dに示すようにセルフレベリング材スラリー硬化体層36の上面に塗り床材用プライマー層37を設け、その上面に塗り床材ベースコート層38を打設して硬化させることが好ましい。
目荒らし処理を行う場合には、例えば業務用電動床ポリッシャー等が好適に使用でき、ポリッシャーに#50〜#200の研磨紙を取り付けて使用することが好ましい。
さらに本発明で好適に用いられるセルフレベリング材は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を含むものである。
石膏は、自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるスラリーが硬化した後の寸法安定性を保持する成分として機能するものである。
水硬性成分(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は100質量%である。)は、好ましくはアルミナセメント20〜80質量%、ポルトランドセメント5〜70質量%及び石膏5〜45質量%からなる組成、さらに好ましくはアルミナセメント25〜70質量%、ポルトランドセメント10〜60質量%及び石膏10〜40質量%からなる組成、より好ましくはアルミナセメント30〜60質量%、ポルトランドセメント20〜50質量%及び石膏15〜35質量%からなる組成、特に好ましくはアルミナセメント40〜50質量%、ポルトランドセメント30〜40質量%及び石膏20〜30質量%からなる組成を用いることにより、急硬性を有し、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化が少ない硬化体を得られやすいために好ましい。
本発明で用いるセルフレベリング材では、構成成分の配合比率を厳格に品質管理できることから構成成分をプレミックス化して供給することが好ましい。このため使用する樹脂粉末についても粉末状の再乳化形樹脂粉末であることが好ましい。
樹脂粉末は、乾燥によって発生する収縮応力がひび割れ発生に繋がる過程で、ひび割れの発生に対する抵抗性を向上させる効果、硬化体組織を緻密化する効果及び下地との接着性を向上させる効果がある。
樹脂粉末は、水性ポリマーディスパーションを噴霧やフリーズドライなどの方法で、溶媒を除去し乾燥した再乳化形の樹脂粉末を用いることが好ましい。
樹脂粉末の割合が、上記範囲より大きい場合、水を加えて得られるスラリーの粘度が高くなり施工性が低下するとともに、硬化体の圧縮強度が低下する傾向がある。また、上記範囲より小さい場合には、硬化体の引張り強度の向上効果、通気性の低減効果及び下地との接着性が小さくなる傾向がある。
高炉スラグ微粉末の添加量が、これらの範囲の下限値以上であれば、硬化体の乾燥収縮が大きくなく適当な値となり、これらの範囲の上限値以下であると初期強度の低下を招くことがない。
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積3000cm2/g以上のものを用いることができる。
細骨材は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは30〜500質量部、より好ましくは40〜400質量部、さらに好ましくは60〜300質量部、特に好ましくは80〜150質量部の範囲が好ましい。
特に細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、廃FCC触媒、石英粉末、アルミナセメントクリンカーなどが好ましく用いることが出来る。
細骨材の粒径は、JIS Z 8801に規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
水硬性成分であるアルミナセメントの発現強度は、水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水効果を有する流動化剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが特に好ましい。
オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸などの脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等の芳香族オキシ酸等を挙げることができる。
オキシカルボン酸の塩としては、例えばオキシカルボン酸のアルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩など)などを挙げることができる。
特に重炭酸ナトリウムやL−酒石酸ナトリウムは、凝結遅延効果、入手容易性、価格の面から好ましく、さらに、これらを併用して用いることがより好ましい。
リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウムなどの無機リチウム塩や、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、特に0.05〜0.8質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、スラリー粘度が増加して流動性の低下を招く恐れがあるために上記の好ましい範囲で用いることが好ましい。
施工面積が大きい現場では、例えば特開2007−326352号(図1)に示されるようなセルフレベリング材を貯蔵するタンクを備えたセルフレベリング材スラリー調製・施工用トラックを使用することが好ましく、セルフレベリング材のスラリーを連続的に調製して、施工箇所へ連続的に供給して施工できることから、施工効率および施工品質の観点からさらに優れたセルフレベリング材硬化体を得ることが出来る。
本発明で用いるセルフレベリング材スラリーは、セルフレベリング材(C)と水(W)とを質量比(W/C)が、好ましくは0.16〜0.28の範囲、さらに好ましくは0.18〜0.26の範囲、より好ましくは、0.19〜0.25の範囲、特に好ましくは0.20〜0.24の範囲になるように配合して混練することが好ましい。
セルフレベリング材スラリーを床スラブ面の最も凸部分上面を基準にして5mm〜70mmの高さまで厚く施工する場合には、前記スラリーを流し込み施工しながら、とんぼなどを用いてスラリーが均等に広がるように補助的な操作を行い、床スラブ全体に厚層で高い水平レベルの前記スラリーを形成することが好ましい。
セルフレベリング材スラリーの可使時間は、スラリー調製から好ましくは40分間であり、さらに好ましくは50分間であり、特に好ましくは60分間である。
本発明で用いる速硬性・速乾性に優れたセルフレベリング材を用いることによって、速やかに良好な硬化状態と表面乾燥状態を得ることができる。
長さ変化率の収縮が好ましくは−0.08〜0%、さらに好ましくは−0.06〜0%、特に好ましくは−0.05〜0%の範囲であり、前記の膨張または収縮の特性を有するセルフレベリング材が、硬化体自体のクラック発生を防止でき、さらに下地となるコンクリート床及び上層に施工される塗り床材との間で高い接着力を保持できることから好ましい。
また、上記の長さ変化率の範囲を外れた場合には、セルフレベリング性スラリーの硬化体の硬化収縮によってクラックが生じることがあり、そのクラックを介して下地のコンクリート床の離脱水分が拡散して、上層の塗り床材硬化層に膨れが生じることがあるため好ましくない。
本発明で用いる塗り床材の種類としては、要求される特性に応じて有機質系塗り床材又は無機質系塗り床材から適宜選択して用いることができる。
本発明で用いる有機質系塗り床材用プライマーは、溶剤形エポキシ樹脂系、無溶剤形エポキシ樹脂系、水性形エポキシ樹脂系、水性形エポキシ樹脂系とセメントの混合物、溶剤形ウレタン樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系とセメントの混合、無溶剤形ウレタン樹脂系、湿気硬化形ウレタン樹脂系、湿気硬化形ウレタン樹脂系とセメントの混合、メタクリル樹脂系、溶剤形アクリル樹脂系、水性形アクリル樹脂系等を用いることができる。また、用途により有機系顔料、無機系顔料あるいはタルク、炭酸カルシウム、粉末状シリカ等の充填材を含有した塗り床材用プライマーを用いることができる。
本発明で用いる無機質系塗り床材用プライマーは水形エチレン酢酸ビニル樹脂系、水形アクリル樹脂系、溶剤形エポキシ樹脂系、溶剤形アクリル樹脂系等を用いることができる。
本発明で用いる塗り床材用プライマーの施工は、各塗り床材メーカーの施工要領書に準拠し、はけやローラーを適宜選択して使用することが出来る。
本発明で用いる有機質系塗り床材用ベースコートは、溶剤形エポキシ樹脂系、無溶剤形エポキシ樹脂系、水性形エポキシ樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系、湿気硬化形ウレタン樹脂系、メタクリル樹脂系、溶剤形アクリル樹脂系、水性形アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ビニルエステル樹脂系等を用いることができる。また用途により有機系顔料、無機系顔料あるいはタルク、炭酸カルシウム、粉末状シリカ等の充填材さらには細骨材を含有した有機質系塗り床材用ベースコートから選ばれる1種又は2種以上のベースコートを適宜選択し、1層又は2層以上施工して用いることができる。
本発明で用いる塗り床材用ベースコートの施工は各塗り床材メーカーの施工要領書に準拠し、コテ、ローラーあるいははけを適宜選択して使用することが出来る。
本発明で用いる有機質系または無機系の塗り床材用トップコートとしては、溶剤形エポキシ樹脂系、無溶剤形エポキシ樹脂系、水性形エポキシ樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系、湿気硬化形ウレタン樹脂系、メタクリル樹脂系、溶剤形アクリル樹脂系、水性形アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ビニルエステル樹脂系等から選ばれる1種又は2種以上のトップコートを適宜選択し、1層又は2層以上施工して用いることができる。
本発明で用いる塗り床材用トップコートの施工は、各塗り床材メーカーの施工要領書に準拠し、コテ、ローラーあるいははけ等を適宜選択して使用することが出来る。
(1)セルフレベリング材スラリーの流動性評価:
・フロー値の測定法:
JASS・15M−103に準拠して測定する。厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ51mmの樹脂製パイプ(内容積100ml)を設置し、練り混ぜたセルフレベリング材スラリーを樹脂製パイプの上端まで充填した後、パイプを鉛直方向に引き上げる。スラリーの広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とし、スラリーの流動性を評価する。
・SL値の測定方法:
SL値は、図5に示すSL測定器を使用し、幅30mm×高さ30mm×長さ750mmのレールに、先端より長さ150mmのところに堰板を設け、混練直後のスラリーを所定量満たして成形する。成形直後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL0とし、堰板より200mm流れる時間を測定し、その測定時間をSL流動速度(L0)(秒/200mm)とする。
同様に成形後20分又は30分後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL20又はL30とし、堰板より200mm流れる時間を測定してその測定時間をそれぞれSL流動速度(L20、L30)(秒/200mm)とする。
・評価条件は、温度20℃、湿度65%の環境下で行う。
・長さ変化率の測定は、図6に示す装置を用いる。長さ変化率の測定は、混練直後のスラリーを型枠内部の型枠の高さまで打設し、打設直後より長さ変化の測定を開始する。長さ変化率の測定間隔は5分毎で行い、材齢28日まで測定する。測定条件は、20℃、RH65%の気中で行う。
セルフレベリング材スラリーの硬化時の長さ変化率は、図6(a)に示すSUS製円盤45bと変位センサー44のSUS製円盤45b側の端部との間隔の変化量(mm)を、スラリーを充填した時点でのSUS製円盤45aとSUS製円盤45cとの間隔bで除した値とする。
図7、図8及び図9は、セルフレベリング材スラリーが硬化する過程の試料の長さ変化の一例を模式的に表した図である。
図7では、測定試料の材齢0日(a点)を基長として、硬化と共に膨張し、b点で最も膨張し、その後次第に収縮し、材齢28日(c点)の長さとなる。数式(1)〜数式(3)において、Bはa点の試料の長さであり、Cはb点の試料の長さであり、Aはc点の試料の長さである。
図8では、測定試料の材齢0日(a点)を基長として、硬化と共に膨張することなく、次第に収縮し、材齢28日(c点)の長さとなる。数式(1)〜(3)において、BとCはa点の試料の長さであり、Aはc点の試料の長さである。
図9では、測定試料の材齢0日(a点)を基長として、硬化と共に収縮することなく、次第に膨張し、材齢28日(c点)の長さとなる。数式(1)〜(3)において、Bはa点の試料の長さであり、AとCはc点の試料の長さである。
測定試料は、セルフレベリング材スラリーを型詰めし、打設直後を材齢0日とする。測定条件は、20℃、RH65%の気中で行う。
長さ変化率の(−)は収縮を意味し、(+)は膨張を意味する。
・ショア硬度の測定法:セルフレベリング材スラリー流し込み後から所定の経過時間において、硬化した表面にスプリング式硬度計タイプD型(上島製作所製)を用いて任意の3〜5カ所に垂直に押し付ける。その時のスプリング式硬度計タイプD型のゲージの読み取り値の平均値をその時間のショア硬度とし表面硬度を評価する。
・引っかき強さの測定法:セルフレベリング材スラリー流し込み後から所定の経過時間において、硬化した表面を引っかき試験器(日本建築仕上学会式日本塗り床工業会認定品)を用いて任意の3〜5カ所に、定規に沿って2cm/秒の速さで約10cmの長さの引っかき傷をつける。荷重1.0kgでの引っかき傷幅をクラックスケールおよびルーペを用いて測定し、その時間の引っかき強さとし表面硬度を評価する。
・硬化体表面の水分量
セルフレベリング材スラリー流し込み後から所定の経過時間において、コンクリート・モルタル水分計(ケット科学研究所社製)を用いて、硬化した表面の水分量(D値)を測定する。日本床施工技術研究協議会の「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」に基づき、測定値D値(HI−500)が690未満となった場合に、5%未満の水分量であると判定する。
・硬化体表面の性状:
スラリー硬化体表面の性状は、セルフレベリング材スラリーを、13cm×19cmの樹脂製の型枠へ厚さ10mmで流し込んで硬化させ、材齢24時間時点で、粉化及び微細な凹凸の有無を目視で観察することで評価した。評価は以下の通りとする。
評価条件は、温度20℃、湿度65%の環境下で行う。
○:無し、×:有り。
・JIS・R−5201に示される4×4×16cmの型枠に生成スラリーを型詰めして、温度20℃、湿度65%で24時間気中養生した後、脱型し、さらに気中で所定期間(7日、28日)追加養生して成型体を得る。成型体は、JIS・R−5201記載の方法に従い測定する。
・接着強さの測定法:
NNK−005:2000(日本塗り床工業会)の塗り床材の付着強さ試験方法に準拠して測定する。セルフレベリング材スラリー流し込み後から材齢1日後および材齢14日後のセルフレベリング材スラリー硬化体層の上に、塗り床材用プライマー層を設け、その上に塗り床材を塗布し硬化体層を設ける。材齢7日後の塗り床材硬化体層に付着面が40mm×40mmの正方形の鋼製ジグを接着剤にて5ヶ所に接着させる。接着剤が硬化した後、鋼製ジグの周囲に沿ってセルフレベリング材スラリー硬化体層に達するまでダイヤモンドカッターなどで切り込みを入れ、鋼製ジグを建研式接着試験機に取り付て徐々に引張り荷重を加え、破断するまで加圧を行なう。破断するまでの最大荷重を最大引張り荷重とし、5ヶ所の平均値を塗り床材との接着強さとして接着強さを評価する。
塗り床材との接着強さは数式(4)に従い算出する。
・キャスター性試験の測定法:
(実施例2〜7)
実施例1に示すセルフレベリング材を用いて調製したセルフレベリング材スラリーを流し込み施工してから、材齢2時間後、1日後、3日後、14日後のセルフレベリング材スラリー硬化体層の上に、塗り床材用プライマー層を設け、その上に塗り床材を塗布して硬化体層を設け、それぞれ材齢28日、27日、25日、14日まで養生期間をおき、スラリー流し込み後からの材齢がいずれの場合も合計28日となるように養生し、EN13892−5(2003)の試験方法に準拠してへこみ量(耐動荷重性)を測定した。試験装置は、試験体を載せる載台を直角方向及び平行方向に作動させる運転装置をもち、載台とキャスターの回転軸とは互いに直角に位置し、水平に動くようになっている。試験条件は、2000±10Nの荷重がかかった1輪のスチール製キャスターを用い、試験体の載った載台のストロークが、一方向は390±2mmストローク幅で7±0.4rpmとし、もう一方向は260±2mmストローク幅で1.72±0.1rpmとする。供試体上の所定面積を縦横に往復する過程を1回として、1万回繰返し運転を行うこととする。測定は、運転終了後に試験体表面の直角方向及び平行方向にそれぞれ等間隔に4本の線を引き各線の交点(16点)のへこみ量を測り、その平均へこみ量を測定した。
(参考例2)
参考例1に示すセルフレベリング材を用いて調製したセルフレベリング材スラリーを流し込み施工してから、材齢14日後のセルフレベリング材スラリー硬化体層の上に、塗り床材用プライマー層を設け、その上に塗り床材を塗布し硬化体層を設け、7日間養生した後、実施例2〜7の場合と同様に、EN13892−5(2003)の試験方法に準拠してへこみ量(耐動荷重性)を測定した。
1)セルフレベリング材用プライマー : 宇部興産社製、UプライマーG。
2)セルフレベリング材 : 下記の原材料を表1に示す配合割合で混合したセルフレベリング材を使用した。
・アルミナセメント : フォンジュ、ケルネオス社製、ブレーン比表面積3100cm2/g。
・ポルトランドセメント : 早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm2/g。
・石膏 : II型無水石膏、セントラル硝子社製、ブレーン比表面積3460cm2/g。
・細骨材 : 珪砂:6号珪砂。
・無機成分 : 高炉スラグ微粉末、リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm2/g。
・樹脂粉末 : 酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステルの共重合体、ニチゴー・モビニール社製、DM2071P。
・凝結調整剤a : 重炭酸ナトリウム、東ソー社製。
・凝結調整剤b : L−酒石酸ナトリウム、扶桑化学工業社製。
・凝結調整剤c : 炭酸リチウム、本荘ケミカル社製。
・流動化剤 : ポリカルボン酸系流動化剤、花王社製。
・増粘剤 : ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤、マーポローズMX−30000、松本油脂製薬社製。
・消泡剤a : ポリエーテル系消泡剤、サンノプコ社製。
・消泡剤b : ポリエーテル系消泡剤、ADEKA社製。
3)塗り床材用プライマー
・プライマー : エポキシ系、インフィックスEF、富士丸化学工業社製。
4)塗り床材用ベースコート
・ベースコート : エポキシ系、オンクリート73R、富士丸化学工業社製。
5)塗り床材用トップコート
・トップコート : エポキシ系、オンクリート#58、富士丸化学工業社製。
室温20℃、相対湿度65%の条件下で、表1に示す配合割合で調製したセルフレベリング材と水とを、実施例1についてはセルフレベリング材100質量部に対して水22質量部の割合でそれぞれ配合し、参考例1についてはセルフレベリング材100質量部に対して水26質量部の割合で配合し、回転数650rpmのケミスターラーを用いて3分間混練して、セルフレベリング材スラリーを調製した。
(塗り床材用プライマーの調製)
室温20℃、相対湿度65%の条件下で、塗り床材用エポキシ系プライマーのA剤100質量部に対してB剤50質量部の割合で配合し、回転数650rpmのケミスターラーを用いて3分間混練して、塗り床材用エポキシ系プライマーを調製した。
(塗り床材用ベースコートの調製)
室温20℃、相対湿度65%の条件下で、塗り床材用エポキシ系ベースコートの基剤A100質量部に対して硬化剤B25質量部および7号珪砂125質量部の割合で配合し、回転数650rpmのケミスターラーを用いて3分間混練して、塗り床材用エポキシ系ベースコートを調製した。
(塗り床材用トップコートの調製)
室温20℃、相対湿度65%の条件下で、塗り床材用エポキシ系トップコートの基剤A100質量部に対して硬化剤B12.5質量部の割合で配合し、回転数650rpmのケミスターラーを用いて3分間混練して、塗り床材用エポキシ系トップコートを調製した。
表1に示す成分を配合したセルフレベリング材を用いてセルフレベリング材スラリーを調製した。スラリーの流動性(フロー値、SL値)の測定結果を表2に示す。
JIS・A5304舗装用コンクリート平板にセルフレベリング材用プライマーを塗布・乾燥してプライマー層が造膜した後、セルフレベリング材スラリーを施工厚さが、実施例2〜5および参考例2については10mmになるように、実施例6および7については5mmになるように流し込んで硬化させ、JASS 15 M−13(セルフレベリング材の品質基準)に記載の表面接着試験用供試体の規定にしたがって、表4に示す材齢期間養生してセルフレベリング材スラリー硬化体層を得た。次に、セルフレベリング材スラリー硬化体層の上に塗り床材を施工し、塗り床材が硬化した後、表4に示す期間養生して塗り床仕上げコンクリート構造体の供試体を得た。
塗り床材用エポキシ系プライマーを150g/m2になるようローラーを用いて塗布・乾燥してプライマー層を造膜後、塗り床材用エポキシ系ベースコートを1kg/m2になるようコテを用いて塗り付け施工してベースコート層を設けた。塗り床材用ベースコートが硬化した後、塗り床材用エポキシ系トップコートを1.5kg/m2になるようコテを用いて塗り付け施工してトップコート層を設けた。
また、スラリー硬化体の収縮率についても小さい値を示し、硬化体表面の仕上りについても良好な性状が得られている。
さらに、スラリー硬化体の圧縮強度および曲げ強度についても優れた強度特性が得られている。
(2)セルフレベリング材スラリー硬化体の上面に塗り床材を施工した供試体に関するキャスター性試験(耐動荷重性の評価)の結果では、参考例2と比較して実施例2〜7では、いずれも良好な耐動荷重性が得られている。特に、セルフレベリング材スラリーを施工後、2時間経過した時点で塗り床材を施工した実施例2(施工厚さ=10mm)及び実施例6(施工厚さ=5mm)の場合、さらに優れた耐動荷重性が得られている。セルフレベリング材スラリーを施工後、2時間経過した時点で塗り床材を施工した実施例2及び実施例6の場合、塗り床材層がセルフレベリング材スラリー硬化体中の水分の乾燥を防止して、セルフレベリング材の水和反応に必要な水分を、モルタル硬化体中に封じ込めることができ、高い強度特性を有するセルフレベリング材スラリー硬化体を得ることができたことによるものと推考される。
また、本発明ではアルミナセメントを適正量含むことで速硬性・速乾性に優れ、良好な水平レベル性を有する床面を形成できるセルフレベリング材を用いることによって、極めて効率的に且つ安定的に塗り床下地を施工することが可能である。
さらに、本発明のセルフレベリング材と塗り床材とを組合せた高い水平レベル性を有するコンクリート構造体は、高強度で高耐磨耗な特性を有することから床構造体として優れた耐久特性が得られるものである。
11 : コンクリート床
12 : 塗り床材
13 : プライマー層
14 : ベースコート層
15 : トップコート層
16 : 塗り床材を施工した床面
17 : 小さな凹凸
18 : (微妙な)傾斜
19 : 凹部
20 : 凸部
30 : コンクリートスラブ
31 : コンクリート床
32 : 小さな凹凸
33 : (微妙な)傾斜
34 : セルフレベリング材用プライマー
35 : セルフレベリング材スラリー
36 : セルフレベリング材スラリー硬化体
37 : 塗り床材用プライマー層
38 : 塗り床材用ベースコート層
39 : 塗り床材用トップコート層
40 : 塗り床表面
41 : 長さ変化測定装置
42 : 型枠
43 : 緩衝材
44 : 渦電流式変位センサー
45 : SUS製円盤(45a,45b,45c)
46 : SUS棒(46a,46b)
47 : フッ素樹脂シート
Claims (11)
- 建築物のコンクリート床上面に、セルフレベリング材スラリー硬化体層を設ける工程と、前記セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材硬化体層を設ける工程とを含むコンクリート床構造体の施工方法であって、セルフレベリング材スラリー硬化体層を設ける工程は、セルフレベリング材モルタル用プライマー層を設ける工程と、前記セルフレベリング材モルタル用プライマー層の上面に、アルミナセメントと樹脂粉末とを含むセルフレベリング材と、水とを混練して調製したスラリーを打設して硬化させてセルフレベリング材スラリー硬化体層を設ける工程とを含み、塗り床材硬化体層を設ける工程は、セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材用プライマーを塗布して乾燥させ、塗り床材用プライマー層を設ける工程と、前記塗り床材用プライマー層の上面に塗り床材用ベースコートを施工して硬化させて塗り床材用ベースコート層を設ける工程とを含むことを特徴とするコンクリート床構造体の施工方法。
- セルフレベリング材は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
- セルフレベリング材は、水硬性成分と樹脂粉末とを含み、さらに無機粉末、細骨材、凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤から選ばれる成分を少なくとも1種以上含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
- セルフレベリング材と水とを混練して調製したスラリーを打設してから1.75時間〜12時間の間に、セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材用プライマーを塗布して乾燥させて塗り床材用プライマー層を設け、塗り床材用プライマー層の上面に塗り床材用ベースコートを施工することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
- セルフレベリング材スラリー硬化体表面のショア硬度は、スラリーを打設(施工)したのち2時間後に10以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
- セルフレベリング材スラリー硬化体表面のショア硬度は、スラリーを打設(施工)したのち6時間後に50以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
- セルフレベリング材スラリー硬化体表面の水分量は、スラリー打設(施工)したのち24時間後に5%未満(D値=690未満)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
- セルフレベリング材スラリー硬化体は、長さ変化率の膨張が0〜0.08%であり、長さ変化率の収縮が−0.08〜0%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンクリート床構造体の施工方法
- 塗り床材は、エポキシ樹脂系塗り床材、ウレタン樹脂系塗り床材、メタクリル樹脂系塗り床材、アクリル樹脂系塗り床材、ポリエステル樹脂系塗り床材、ビニルエステル系塗り床材及びポリマーセメント系塗り床材から選ばれるいずれか1種の塗り床材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
- 塗り床材のベースコート硬化層の上面に、さらに塗り床材用トップコート層を設けることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の施工方法により得られるコンクリート床構造体。
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