JP2009256432A - ウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法 - Google Patents

ウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法 Download PDF

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拓史 野村
Shigeo Hamaguchi
滋生 濱口
Yoshinori Akamatsu
佳則 赤松
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Abstract

【課題】 ウレタン樹脂の合成において用いられるイソシアネート化合物およびポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を、特に透明性基材上に薄膜とし成膜し防曇性被膜とするのに好適なウレタン樹脂の合成において用いられるイソシアネート化合物およびポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を、長期において保存する方法を提供する。
【解決手段】 透明基材上にウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂前駆体薬液としてのイソシアネート化合物とポリオールを含有する液を、20℃以下の状態で保存することを特徴とするウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明基材上にウレタン樹脂製の防曇性被膜を形成する際のイソシアネート化合物およびポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法に関する。
該イソシアネート化合物とポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を反応させ合成したウレタン樹脂は、建築物用窓ガラスまたは車両用ガラス等の防曇性被膜として使用され、防曇ガラスを与える。例えば、自動車の車内側曇り止めの防曇ガラス、また、冷凍庫や冷蔵庫のドアを開けた際の、覗き窓の曇り止めに使用される。
ガラス等の透明基材は、建築物用窓ガラス、車両用窓ガラス等に使用されている。
ガラスを高湿の場所に置いた際、または温度差、湿度差のある場所に移動させた際、露点以上になると表面が結露し曇る。例えば、湿度の高い梅雨時、温度の低い冬季または複数の人が乗車した状態で車両を走行させた場合、窓が曇り易く、曇りを取り視界を確保するためエアーコンデショナーによる乾燥した風を窓に当てることが通常行われる。また、大型の冷凍庫のドアを開けた際、冷凍庫内外の温度差のためにドアに設けた除き窓のガラスの内側が結露して曇り、視界が確保されないことがある。
自動車においては、窓の視界確保のため、曇り除去に使用されるエアーコンデショナー作動の負荷は大きく、例えば、車の燃費向上の足枷になっていた。特に、室内外の温度差が激しくなる冬季、特に、寒冷地ではエアーコンデショナー作動の負荷は大きい。これら問題を低減できる窓ガラス等の防曇性物品を提供することは、燃費改善のためには不可欠である。モーターとエンジンを併用するハイブリッド自動車、燃料電池使用の電気自動車等には、今後ますます防曇ガラスの必要性が高まるものと予想される。
また、大型の冷凍庫のドアを開けた際、ドアに設けた除き窓のガラスが結露して視界が確保されないことに対し、ガラスに取り付けられたヒーターの熱により曇りの除去を行うと庫内温度の上昇や電気代コストの増加につながる。よって、優れた防曇ガラスの開発が待たれている。
尚、防曇ガラスとは、透明基材としてのガラスに親水性および吸水性の薄膜を形成して防曇性能を与えたものであり、該薄膜を防曇性被膜と呼ぶ。
車両用の防曇ガラスとして、特許文献1では、紫外線低透過ガラスに有機系防曇性材料を含む組成物が塗布されてなる車両用防曇ガラスが開示されている。また、特許文献2では、室内面にアルミナを含有する水との接触角が30°以下の親水層が設けられた車両用ウィンドウガラスが開示されている。
例えば、特許文献1には、吸水性による防曇性を発現させるものとして、シリカ微粒子系の多孔質膜、吸水性樹脂の使用が開示されているが、これら吸水性の膜の吸水能力は十分でなく、吸水性による防曇性の発現には、さらなる改良が必要であった。加えて、氷点下環境での防曇性発現の観点からの設計がなされていないので、吸水した水が凍結することによる透光性の低下、膜の破壊等の不具合が起こりうることも予想される。
こうした背景の下、本出願人は、本出願人に係る特許文献3および特許文献4において、氷点下の寒冷地でも窓の視界を確保する車両用窓用の防曇ガラスを提案している。
特許文献3において、該防曇ガラスでは、親水性および吸水性を有するウレタン樹脂による被膜が使用されている。そして、その防曇性は、被膜の吸水により先ず防曇性を発現せしめ、吸水飽和後には被膜の親水性によって防曇性を継続させるように設計されている。また、ウレタン樹脂固有の弾性により耐擦傷性も優れたものとなっている。
また、特許文献4には、透明基材上に形成される防曇性被膜であって、該被膜は吸水率が20〜40重量%のウレタン樹脂よりなり、該ウレタン樹脂は、平均分子量1000〜4000のアクリルポリオール、および平均分子量400〜5000のポリオキシアルキレン系ポリオールより誘導されてなるものであり、且つ該被膜は、被膜の吸水飽和後に強制的に被膜から脱水させる機構を有する室内環境で使用されるものであり、防曇性発現時に水膜を形成しないことを特徴とする防曇性被膜が開示される。
特開2000−239045号公報 特開2003−321251号公報 特開2005−187276号公報 特開2007−076999号公報
イソイアネート化合物と疎水性ポリオールとしての、例えば、アクリルポリオールまたはポリエステルポリオールと、親水性ポリオールとしてのポリオキシアルキレン系ポリオール、例えば、ポリエチレングリコールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を、透明基材上に塗布した後に加熱することで反応させたウレタン樹脂を防曇性被膜とする。この際、ウレタン樹脂前駆体薬液中で、イソシアネート化合物と疎水性ポリオールおよび親水性ポリオールが反応することで、ゲル化物が生成することがある。
また、イソシアネート化合物は水との反応性が高く、水と反応するとゲル化物となることから、ウレタン樹脂前駆体薬液には水が混入していないこと、即ち、吸湿していないことが望まれる。
尚、本発明において、ウレタン樹脂前駆体薬液とは、透明基材上にウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂を合成する前の薬液のことであり、透明基材であるガラス基板上に塗布した後、加熱することで、該ウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成する。
ウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成する前に、イソシアネート化合物と疎水性ポリオールおよびは親水性ポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液が吸湿するまたはポリオールが変質すると、防曇性被膜を形成した際、ゲル化物による斑点が生じる、または失透白濁する等のことがあった。イソシアネート化合物のイソシアネート基とポリオールの反応のみが行われることで、所望の防曇性能を有する防曇性被膜とするのに好適なウレタン樹脂が得られる。
このように、疎水性ポリオールと親水性ポリオールが反応する、空気中の水分を吸湿するため、イソシアネート化合物と疎水性ポリオールと親水性ポリオールからなるウレタン樹脂前駆体薬液の長期保存は困難であるという問題があった。
本発明は、透明基材上にウレタン樹脂製の防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂の合成において用いられるイソシアネート化合物およびポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を、長期において保存する方法を提供することを目的とする。
引いては、イソシアネート化合物とポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を長期保存することで、ウレタン樹脂前駆体薬液を透明基板上で加熱反応させて合成したウレタン樹脂からなる防曇性被膜を、ガラス等の透明基材の表面に形成する作業を効率よく行い、例えば自動車等の車両の防曇ガラス、また、冷凍庫や冷蔵庫のドアを開けた際に曇りにくい覗き窓を提供することを目的とする。
透明基材上にウレタン樹脂製の防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂の合成において用いられる、例えば、特許文献4に記載のイソシアネート化合物、疎水性ポリオールであるアクリルポリオール、および親水性ポリオールであるポリオキシアルキレン系ポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を、長期にわたって保存するには、上記前駆体薬液を20℃以下に冷却して凝固させることが好ましい。
イソシアネート化合物と疎水性ポリオールと親水性ポリオールを共存させた状態のウレタン樹脂前駆体薬液を、20℃を超えて保存すると、イソシアネート化合物と性状の異なるこれらポリオール同士の反応が徐々に進行するので、防曇性被膜を失透させ、透明な被膜を形成することが難しくなる等の不具合が生じる。
また、ウレタン樹脂前駆体薬液を、20℃を超えて保存すると、蒸発または対流時に水分を取り込む。水分を取り込んだウレタン樹脂前駆体薬液は、例えば、ガラス上に塗布し加熱してウレタン樹脂を反応する際に、前述のように水分がイソシアネートと反応し、ゲル化物を生成する、防曇性被膜を失透させる、および被膜を形成することが難しくなる等の不具合が生じ易い。
しかしながら、ウレタン樹脂前駆体薬液を20℃以下に保存すると、前記疎水性ポリオールと親水性ポリオールの反応が起き難くなるとともに、水分の取り込みが少なくなり、防曇性被膜を得るためのウレタン樹脂前駆体薬液として有効に使える期間、言い換えれば、寿命が長くなる。
即ち、本発明は、透明基材上にウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂前駆体薬液としてのイソシアネート化合物とポリオールを含有する液を、20℃以下の状態で保存することを特徴とするウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法である。
本発明のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法は、特許文献4等に開示される透明基材上に塗布加熱して、ウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成するための、イソシアネート化合物、アクリルポリオールおよびポリオキシアルキレン系ポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を保存するのに好適である。
優れた防曇性能を有する防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂の前駆体薬液は、イソシアネート化合物と疎水性ポリオールおよび親水性ポリオールを共存させたものであることが好ましい。
その際、疎水性ポリオールとしては、数平均分子量が500以上、5000以下のアクリルポリオール、または数平均分子量が500以上、5000以下且つ水酸基価が10mgKOH/g以上、200mgKOH/g以下のポリエステルポリオールを用い、親水性のポリオキシアルキレン系ポリオールとして、数平均分子量が400以上、5000以下のポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
また、本発明は、ポリオールが親水性ポリオールと疎水性ポリオールを共存させたものであることを特徴とする上記のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法である。
さらに、本発明は、疎水性ポリオールが数平均分子量500以上、5000以下のアクリルポリオールまたは数平均分子量500以上、5000以下且つ水酸基価が10mgKOH/g以上、200mgKOH/g以下のポリエステルポリオールから選ばれ、親水性ポリオールがポリオキシアルキレン系ポリオールであることを特徴とする上記のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法である。
さらに、本発明は、ポリオキシアルキレン系ポリオール数が平均分子量400以上、2000以下のポリエチレングリコールであることを特徴とする上記のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法である。
本発明のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法において、透明基材上に塗布加熱し、ウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成するための、イソシアネート化合物とポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液を、20℃以下に冷却した状態で保存するので、ウレタン樹脂前駆体薬液が含有するイソシアネート化合物とポリオールが変質する、およびウレタン樹脂前駆体薬液が吸湿することなく保存することができる。
特に、本発明のウレタン樹脂前駆体溶液の保存方法は、イソシアネート化合物、疎水性ポリオールおよび親水性ポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体溶液の保存に対して有効である。
本発明のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法により、イソシアネート化合物とポリオールを含有するウレタン樹脂前駆体薬液をガラス等の透明基材上に、塗布後加熱して反応させたウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成する作業が効率よく行え、自動車等の車両の防曇ガラス、また、冷凍庫や冷蔵庫のドアを開けた際の、防曇覗き窓が好適に提供された。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明は、透明基材上にウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂前駆体薬液としてのイソシアネート化合物とポリオールを含有する液を、20℃以下の状態で保存することを特徴とするウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法である。
さらに、本発明は、ポリオールが疎水性ポリオールと親水性ポリオールを共存させたものであることを特徴とする上記のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法である。
このように、本発明のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法において、ポリオールは疎水性ポリオールと親水性ポリオールを共存させる。疎水性ポリオールと親水性ポリオールを共存させることは、ウレタン樹脂とした際に適度な大きさの網目構造を作り、水を吸着し網目構造内に取り込み排出するという防曇性被膜の防曇性能を発現するのに必要である。
本発明において、疎水性ポリオールとしてアクリルポリオールを使用する場合、その数平均分子量は500以上、5000以下であることが好ましい。数平均分子量が500未満の場合は、イソシアネート化合物と反応させ合成したウレタン樹脂の網目構造が小さくなり水を放出するときの水の経路が狭くなり、脱水する能力が低下し防曇性能が劣化する傾向がある。また、5000を超える場合は、イソシアネート化合物と反応させて防曇性被膜とした際に、被膜の強度が低下する傾向がある。
また、本発明において、親水性ポリオールとしてポリエステルポリオールを使用する場合、その数平均分子量は500以上、5000以下、水酸基価は10mgKOH/g以上、200mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリエステルポリオールの場合、これら数値範囲外とすると、イソシアネート化合物と反応させ合成したウレタン樹脂の網目構造が小さくなること、防曇性被膜の剛直性低下等の理由により、防曇性能の低下、膜強度の不足等の不具合が生じる傾向がある。
また、本発明において、親水性ポリオールとしてポリオキシアルキレン系ポリオールを用いる場合、ポリエチレングルコールが好適に使用され、その数平均分子量は400以上、2000以下であることが好ましい。数平均分子量が400未満の場合は、イソシアネート化合物と反応して合成したウレタン樹脂が、水を吸収する能力が低く、数平均分子量が2000を超える場合は、被膜の強度が低下する傾向がある。
詳しくは、ポリエチレングリコールのオキシエチレン鎖は、イソシアネート化合物と反応させてなるウレタン樹脂を防曇性被膜とした際に、水を吸収する機能および被膜中に吸水された水の放出する機能を有する。水の吸収は、オキシエチレン鎖の酸素部位が水を結合水として取り込むことで発現する。オキシエチレン鎖に吸収された水は結合水として存在するため氷点下環境においても凍らず、過冷却水として被膜中に存在するため、低温時でも水が放出される。氷点下であっても湿度が低い状態であれば、被膜に吸収した水が効率的に脱水される。氷点下における防曇性能を考慮するとオキシエチレン鎖を有するポリエチレングリコールを使用することが好ましい。
また、防曇性被膜が吸水した後に、防曇性被膜から水を放出する場合、防曇性被膜を形成するウレタン樹脂の骨格が硬いと、ウレタン樹脂内の網目構造により、水を吸収したオキシエチレン鎖から水を放出するときの水の経路が確保され、被膜への吸水と脱水がスムーズになる。
アクリルポリオールまたはポリエステルポリオールに対するポリエチレングリコールの添加量は、アクリルポリオールとポリエチレングリコールの質量比がアクリルポリオール:ポリエチレングリコール=50:50〜30:70、またはポリエステルポリオールとポリエチレングリコールの質量比が、ポリエステルポリオール:ポリエチレングリコール=50:50〜30:70とすることが好ましい。
ポリエチレングリコールを添加した後、凝固点以下に冷却して凝固させる。凝固した状態を保つには、アクリルポリオール:ポリエチレングリコール=50:50〜30:70またはポリエステルポリオール:ポリエチレングリコール=50:50〜30:70の範囲において、20℃以下とすることが必要であり、例えば、20℃以下の断熱容器内、冷蔵庫または冷蔵室内で保存する。イソシアネート化合物に添加して、ウレタン樹脂を合成する際は、加熱装置等による加温、または20℃超の環境下に保持すること等の手段で昇温し、融解させて液状とする。
ポリエチレングリコールが添加されたアクリルポリオールまたはポリエステルポリオールを昇温し、融解させる際にポリオールが重合反応を起こす可能性が考えられるので、該重合反応を抑制するには、融解し液状とした後は凝固点+10度以内に液温を制御することが好ましい。
イソシアネート化合物に、疎水性ポリオール、例えば、アクリルポリオールまたはポリエステルポリオール、および親水性ポリオール、例えば、ポリエチレングリコールを添加しウレタン樹脂前駆体薬液とする。その際、希釈する際は、希釈溶媒としては、イソシアネート化合物のイソシアネート基に対して活性のない溶媒を添加する必要があり、例えば、酢酸エステル系溶媒、ケトン類、ジアセトンアルコールを使用する。
ウレタン樹脂は、イソシアネート化合物のイソシアネート基とポリオールの水酸基とが反応してウレタン結合となることで合成され、ポリオールを適宜選択することで被膜の強度、防曇性能等の性能を設定でき、イソシアネート化合物、ポリオール(疎水性ポリオール、親水性ポリオール)を含有するウレタン樹脂前駆体薬液をガラス板表面にスピンコート法、ディップコート法、フローコート法、カーテンコート法等の公知の塗布手段により、例えば、透明性基材であるガラス板に塗布し、加熱硬化させることでガラス板上に防曇性被膜が得られる。このとき、防曇性被膜の密着性および耐久性を向上させるために、透明性基材としてガラス板にプライマー層を形成させ、その上に塗布液を塗布してもよい。
ウレタン樹脂前駆体薬液が含有するイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートを前駆体としたビウレットおよび/またはイソシアヌレート構造を有する3官能のポリイソシアネート化合物が使用される。当該物質は、耐候性、耐薬品性、耐熱性があり、特に耐候性に対して有効である。又、当該物質以外にも、ジイソフォロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス(メチルシクロヘキシル)ジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネート等も使用される。
前記イソシアネート成分に存在するイソシアネート基の数は、ポリオール成分に存在する水酸基の数に対して、1.0倍量以上、3.0倍量以下、より好ましくは1.2倍量以上、2.5倍量以下となるように調整することが好ましい。1.0倍量未満の場合は、塗布剤の硬化性が悪化するとともに、形成された膜は軟らかく、耐候性、耐溶剤性、耐薬品性等の耐久性が低下する。一方、3.0倍量を超える場合は、過剰硬化により、被膜の製造が困難になる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
(防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂前駆体薬液の調製)
イソシアネート基を有するイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットタイプポリイソシアネート(商品名「N3200」住友バイエルウレタン株式会社製)を塗布剤Aとした。
平均分子量3000で水酸基価33mgKOH/gのアクリルポリオールを50重量%有する溶液(商品名「デスモフェンA450BA」住化バイエルウレタン株式会社製)および平均分子量1000のポリエチレングリコールを準備し、アクリルポリオールとポリエチレングリコールの重量比が「アクリルポリオール:ポリエチレングリコール=40:60」となるように混合した後、これを塗布剤Bとした。
尚、前記イソシアネート化合物、アクリルポリオールおよびポリエチレングリコールは、水分の混入なきよう密閉されたものを入手し使用した。
塗布剤A中のイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の数を、塗布剤B中のポリオール成分に存在する水酸基の数に対して、1.6倍量となるように、100gの塗布剤Bに対し、33gの塗布剤Aを添加混合し、ウレタン成分総量が35重量%となるように塗布剤Aおよび塗布剤Bの混合物に希釈溶媒として酢酸イソブチルを添加混合し、被膜を形成するためのウレタン樹脂前駆体薬液を調製した。
この様にして調製したウレタン樹脂前駆体薬液を10日間、室温10℃の冷凍室に保管した後、該ウレタン樹脂前駆体薬液をガラス板表面へ塗布し、加熱して、防曇性被膜の形成を行った。
(ガラス板表面への防曇性被膜の形成)
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「LS−3150」信越シリコーン株式会社製)を、90重量%のエタノールと10重量%のイソプロピルアルコールからなる変性アルコール(商品名「エキネンF−1」キシダ化学株式会社製)で1重量%となるように溶液を調製した。次に該溶液を吸収したセルロース繊維からなるワイパー(商品名「ベンコット」、型式M−1、50mm×50mm、小津産業株式会社製)で、フロート法によって得られた100mm×100mm(3.5mm厚)のガラス基板の表面を払拭することで該溶液を塗布し、室温状態にて乾燥後、水道水を用いてワイパーで膜表面を水洗することで、ガラス基板を準備した。
次いで、25℃に調整されたクリーンルーム内で、該ガラス板に被膜を形成するための上記ウレタン樹脂前駆体薬液をスピンコートにより塗布した後、加熱炉に入れて、約100℃に約30分間保持することにより、膜厚56μmの被膜が形成されたガラス基板を得た。
実施例2
実施例1での塗布剤Bの調製で、アクリルポリオールの代わりに疎水性を呈するポリオールとして平均分子量1400で水酸基価124mgKOH/gのポリカーボネートポリオールを80重量%有する溶液(商品名「PC−61」日本ポリウレタン株式会社製)を使用し、各成分の混合比を「ポリカーボネートポリオール:ポリエチレングリコール=40:60」となるように混合し塗布剤Bとした。尚、前記イソシアネート化合物、アクリルポリオールおよびポリエチレングリコールは、水分の混入なきよう密閉されたものを入手し使用した。
塗布剤Aのイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の数を、塗布剤B中のポリオール成分に存在する水酸基の数に対して、1.7倍量となるように、100gの塗布剤Bに対し、73gの塗布剤Aを添加混合量した以外は実施例1と同様の操作で行い、防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂前駆体溶液を調整した。
この様にして調製したウレタン樹脂前駆体薬液を10日間、室温10℃の冷凍室に保管した後、該ウレタン樹脂前駆体薬液をガラス板表面へ塗布し、加熱して、防曇性被膜の形成を行った。
次いで、実施例1と同様にγ−アミノプロピルトリエトキシシランの薄膜をガラス基板上に成膜した後、25℃に調整されたクリーンルーム内で、該ガラス板に被膜を形成するための上記ウレタン樹脂前駆体薬液をスピンコートにより塗布し、加熱炉に入れて、約100℃に約30分間保持することにより、膜厚40μmの被膜が形成されたガラス板を得た。
実施例3
実施例1での塗布剤Bの調製で、アクリルポリオールの代わりに疎水性を呈するポリオールとして平均分子量550で水酸基価198mgKOH/gのポリカプロラクトントリオール(商品名「プラクセル308」ダイセル化学工業製)を使用し、各成分の混合比を「ポリカプロラクトントリオール:ポリエチレングリコール=40:60」となるように混合し塗布剤Bとした。尚、前記イソシアネート化合物、アクリルポリオールおよびポリエチレングリコールは、水分の混入なきよう密閉されたものを入手し使用した。
塗布剤Aのイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の数を、塗布剤B中のポリオール成分に存在する水酸基の数に対して、1.6倍量となるように、100gの塗布剤Bに対し、64gの塗布剤Aを添加混合量した以外は実施例1と同様の操作で行い、防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂前駆体溶液を調整した。
この様にして調製したウレタン樹脂前駆体薬液を10日間、室温10℃の冷凍室に保管した後、該ウレタン樹脂前駆体薬液をガラス板表面へ塗布し、加熱して、防曇性被膜の形成を行った。
次いで、実施例1と同様にγ−アミノプロピルトリエトキシシランの薄膜をガラス基板上に成膜した後、25℃に調整されたクリーンルーム内で、該ガラス板に被膜を形成するための上記ウレタン樹脂前駆体薬液をスピンコートにより塗布し、加熱炉に入れて、約100℃に約30分間保持することにより、膜厚30μmの被膜が形成されたガラス基板得た。
比較例
実施例1〜3において調製したウレタン樹脂前駆体薬液を30℃の恒温室内において10日間保管した以外は、実施例1〜3と同様の操作でガラス基板上に防曇性被膜を形成したが、ゲル化物が生成され、防曇性被膜に斑紋および白濁が生じた。
実施例1〜3で得られた被膜に対して各種性能のテストを行ったが、表1に示すように、各種性能は優れたものであった。
Figure 2009256432
〔被膜の吸水率〕:湿度50%、温度55℃の環境で12時間保持後、同湿度にて温度25℃の環境で12時間保持したときの防曇性物品の重量(a)を測定し、被膜に43℃飽和水蒸気を5分間接触させ、その後、すぐに被膜表面の水膜を払拭後に物品の重量(b)を測定し、[b−a]/[a−(ガラス板の重量)]×100(%)の計算式で得られた値を吸水飽和時の吸水率とした。即ち、吸水率は防曇性被膜の重量に対する吸水可能な水分量を重量百分率で表したものである。尚、ここでの(a)値は、被膜が吸水していない状態のものに相当する。
〔被膜に吸水された水の脱水速度〕:上記ようにして得られた吸水飽和状態の防曇性被膜に関し、湿度50%、温度25℃の環境においたときに上記重量(b)から上記重量(a)までに到達する時間が3分以内のものを水の脱水性に優れる防曇性被膜として合格(○)、これを満たさないものを不合格(×)とした。
〔被膜の結露抑制効果〕:"JIS S 4030眼鏡用くもり止め剤試験法"に準拠して43℃に設定した温水からの飽和水蒸気中に1分間保持した時の曇り具合と、保持後に常温(23℃、湿度63%)中に取り出したときの呼気による曇り具合を観察する。この操作を1サイクルとして30サイクル行い、膜の外観に異常がなく曇りが発生しないものを合格(〇)、曇りが発生したものを不合格(×)とした。
〔被膜の霜抑制効果〕:−25℃に設定した冷凍庫内に30分保持した後、常温(23℃、湿度63%)中に取り出したときの外観、曇り具合、呼気による曇りを観察する。この操作を1サイクルとして10サイクル行い、膜の外観に異常がなく曇りが発生しないものを合格(○)、曇りが発生したものを不合格(×)とした。
〔耐トラバース磨耗性〕:膜表面に荷重4.9N/4cm2でネル(綿300番)を5000往復させた時の外観と呼気防曇性を測定し、異常なきものを合格(○)、異常があったものを不合格(×)とした。
〔鉛筆硬度〕:"JIS K 5600 塗料一般試験方法"に準拠して、鉛筆で膜表面を5回引っ掻き、膜の破れが2回未満であった鉛筆を鉛筆硬度とした。該鉛筆硬度は耐擦傷性の指標とすることができる。
〔耐水性〕:40±2℃の水中に24時間浸漬させ、浸漬後に外観に異常がないもの、および呼気によって曇りが発生しなかったもの、並びに鉛筆硬度の低下が1ランク以内であるものを(〇)、2ランク以上低下するものを不合格(×)とした。
〔スリップ性〕:"JIS K 7125 プラスチック−フィルムおよびシート−摩擦係数試験方法"に準拠して、接触面積40cm2(一辺の長さ6.3cm)の正方形の滑り片を200g荷重で防曇性膜上に乗せ、スリップ性を測定した。尚、滑り片の底面(供試体との接地面)は、実使用での布払拭を想定してネル(綿300番)で覆った。
ここで、測定値より導かれた静摩擦係数において、被膜が吸水していない状態で0.8以下、被膜が吸水飽和状態で0.9以下のものを合格(○)、これを満たさないものを不合格(×)とした。
尚、試験される被膜が樹脂単独でなる場合、耐トラバース磨耗性、鉛筆硬度、耐水性、およびスリップ性の評価結果は、樹脂の剛直性を評価するものとして代用してもよい。
〔被膜への水滴の接触角〕:被膜への水滴の接触角については、“JISR 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」”に準拠して測定した。100mm角に切断した試験片を、湿度50%、温度55℃の環境で12時間保持後、同湿度にて温度25℃の環境で12時間保持することで、被膜が吸水されていない状態の試験片とした。該試験片を協和界面化学製接触角計(CA−2型)に設置し、被膜上に2μlの水を滴下させて、水滴の接触角を測定した。又、同試験片の被膜に43℃飽和水蒸気を5分間接触させ、被膜を吸水飽和状態し、該試験片を前記接触角計に設置し、被膜上に2μlの水を滴下させて、水滴の接触角を測定した。
〔被膜の膜厚測定〕:試料作製の際に基材の一部にマスキングフィルム(商品名「SPV−400X」日東電工株式会社製)を貼付しておき、防曇性物品を作製した後、マスキングフィルムを剥がす。そして、被膜と基材とで形成される段差部分を高精度微細形状測定器(SUREFCORDER ET 4000A 小坂研究所製)で測定することにより、被膜の膜厚を測定した。

Claims (4)

  1. 透明基材上にウレタン樹脂からなる防曇性被膜を形成するためのウレタン樹脂前駆体薬液としてのイソシアネート化合物とポリオールを含有する液を、20℃以下の状態で保存することを特徴とするウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法。
  2. ポリオールが疎水性ポリオールと親水性ポリオールを共存させたものであることを特徴とする請求項1に記載のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法。
  3. 疎水性ポリオールが数平均分子量500以上、5000以下のアクリルポリオールまたは数平均分子量500以上、5000以下且つ水酸基価が10mgKOH/g以上、200mgKOH/g以下のポリエステルポリオールから選ばれ、親水性ポリオールがポリオキシアルキレン系ポリオールであることを特徴とする請求項2に記載のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法。
  4. ポリオキシアルキレン系ポリオールが数平均分子量400以上、2000以下のポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項3に記載のウレタン樹脂前駆体薬液の保存方法。
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