JP2009254011A - 回転電機の回転子 - Google Patents

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正 徳増
Masashi Fujita
真史 藤田
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Abstract

【課題】界磁導体の総断面積を増加させ、回転子スロット内の界磁導体の占積率を向上させることで界磁銅損を低減して高効率で大容量の回転電機を提供する。
【解決手段】回転子鉄心1に複数の回転子スロット2を設け、回転子スロット2内に複数の界磁導体5からなる界磁コイル3を収納し、界磁導体5の外径側に絶縁ブロック7を配置し、界磁導体5及び絶縁ブロック7と回転子鉄心1の間にスロット絶縁体6を施し、絶縁ブロック7の外径側から回転子楔4で界磁コイル5を固定してなる回転電機の回転子である。絶縁ブロック7を断面凹字形状とし、絶縁ブロック7を、その凹部が界磁コイルに対向するようにスロット内に配置するとともに、絶縁ブロック7の凹部内側に形成されるスペースに界磁導体5aを配設する。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転子鉄心に設けられた複数のスロットに界磁コイルを収納して構成した回転電機の回転子に関する。
従来の回転電機について、図面を用いて説明する(特許文献1参照)。図11は、従来の回転電機における回転子の横断面図であり、図に示すように、回転子鉄心1の外周側に複数の回転子スロット2が設けられ、この回転子スロット2の内部には界磁コイル3が収納され、界磁コイル3は回転子鉄心1の外径側から回転子楔4で固定されている。回転中に界磁コイル3に働く遠心力は回転子楔4を介して回転子ティース14に伝達される。
このため、遠心力に対する回転電機の健全性を確保するためには、回転子楔4および回転子ティース14に十分な強度が要求される。この意味から、回転子楔4はその形状、厚さ等が十分な強度を確保するように設定されている。回転子ティース14には、この界磁コイル3に働く遠心力に加えて自分自身に働く遠心力も作用する。この場合に、特に問題となるのは回転子ティース14の最狭部14aであり、この部分の強度が遠心力に対して十分であるようにする必要がある。
一方、回転子スロット2の深さを深くすることは、この回転子ティースの最狭部14aの幅を狭くし、かつ界磁コイル3および回転子ティース14自身に働く遠心力を増大させる。また、回転子スロット2の幅を広くすることもこの回転子ティースの最狭部14aの幅を狭くすることにつながる。当然、この場合に特に問題となるのは、回転子スロット2の内径側の幅である。
界磁コイル3は、界磁電流を通電することにより界磁磁束を発生するが、このために界磁コイル3に界磁銅損が発生する。このため、回転電機の健全性を確保するためには、界磁コイル3を冷媒で冷却して所定の温度以下に保つ必要がある。この場合の冷却方式としては、冷媒を回転電機の軸方向に流す方法と径方向に流す方法に大別できる。冷媒を軸方向に流して界磁コイル3を冷却する場合には、界磁コイル3内部に図示しない径方向の冷却孔を設け、回転子スロット2の内径側に冷媒流路15を設けて、この冷媒流路15内部に冷媒を軸方向に流して冷却孔まで導く構成としている。また、冷媒を軸方向に流す場合には、界磁コイル3内部に図示しない軸方向の冷媒流路を設ける構成とし、この場合には、回転子スロット2の内径側の冷媒流路15は通常は設けない。
また、図12は従来の回転電機の回転子スロット2の1スロット分の拡大断面図を示すもので、界磁コイル3は複数の界磁導体5を回転子スロット2内に径方向に積み上げて構成されており、界磁導体5と回転子鉄心2との間にはスロット絶縁体6が介挿され、界磁導体5と回転子楔4との間には絶縁ブロック7を設けて、界磁導体5とアース電位となる回転子鉄心2および回転子楔4との間の絶縁を確保している。
また、冷媒を径方向に流して界磁コイル3を形成する界磁導体5を冷却する方式では、界磁導体5に界磁導体冷却孔8aを、絶縁ブロック7に絶縁ブロック冷却孔8bを、回転子楔4に回転子楔冷却孔8cをそれぞれ径方向に連通するように設けて、回転子スロット2の内径側に設けた図示しない流路からギャップ9まで冷媒を導くことにより界磁導体5を冷却する。
また、冷媒を軸方向に流して界磁コイル3を形成する界磁導体5を冷却する方式では、界磁コイル3の内部に図示しない冷却流路を設けて冷媒を流すことにより界磁導体5を冷却する。このような構成とする場合には、一般に径方向の冷却孔8a、8b、8cは設けない。
このような構成の界磁コイル3では、一般に絶縁上で問題となるのは沿面放電であり、回転電機の健全性を確保するためには、界磁コイル3を形成する界磁導体5とアース電位との間の沿面距離を確保することが必要である。即ち、界磁導体5と回転子楔4との間の沿面距離La、冷却孔8a、8bが設けられる場合には、界磁導体5と回転子楔4との間の冷却孔8bの内面に沿った沿面距離Lbを確保する必要がある。この2種類の沿面距離はいずれも絶縁ブロック7の厚さTにほぼ等しくなるため、沿面距離を確保するためには絶縁ブロック7の厚さを十分に確保するようにしている。しかし、このことは回転子スロット2の内部での界磁導体5の占積率を低下させることになる。
実開平1−101143号公報
回転電機の効率向上を図るためには、回転電機に発生する損失の一部としての界磁銅損を低減する必要がある。また、回転電機の大容量化を図るためには、界磁磁束を増加する必要があり、必然的に界磁起磁力を増加する必要がある。
この界磁起磁力の増加に見合って界磁コイルの冷却を強化することが必要であり、この場合にも界磁銅損をできる限り低減することが必要である。
このように界磁銅損を低減するためには、できる限り界磁コイルを形成する界磁導体の総断面積を増加する必要がある。しかし回転子の強度上の制約から回転子スロットの寸法に制約があるため、回転子スロットの断面積の増加には限界があり、したがって、界磁起磁力の増加にも限界がある。
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、回転子スロット内の界磁導体の占積率を向上させるため、界磁コイルの外径側に設けられる絶縁ブロックの断面積を減少させて回転子スロット内の界磁導体の占積率を向上し、界磁導体の総断面積を増加させることで界磁銅損を低減して高効率で大容量の回転電機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る回転電機の回転子は、回転子鉄心にその外周面から軸心に向かう複数の回転子スロットを配設し、前記回転子スロット内に複数の界磁導体からなる界磁コイルを収納し、前記界磁コイルの回転子外径側に絶縁ブロックを配置すると共に、前記界磁コイルおよび前記絶縁ブロックと前記回転子スロット側面との間にスロット絶縁体を配置し、前記絶縁ブロックの回転子外径側に回転子楔を介挿して前記界磁コイルを前記回転子スロット内に固定してなる回転電機の回転子において、
前記絶縁ブロックは回転子の軸に垂直な断面が凹字形状をなし、前記絶縁ブロックの凹部が前記界磁導体と対向するように前記回転子スロット内に配置するとともに、前記絶縁ブロックの凹部と前記界磁導体との間に形成されるスペース内にも界磁導体を配置したことを特徴とする。
本発明においては、上記のように構成したので、絶縁ブロックの凹部にも界磁コイルを介在させたことで、界磁コイルのスロット内断面積を増加させ、コイルの占積率を向上することができ、高効率で大容量の回転電機を提供することが可能となる。
以下、本発明に係る回転電機の回転子の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本発明に係る回転電機の回転子の第1の実施形態について、図1を用いて説明する。
図1は本実施形態における回転電機の回転子外周側に配設された複数の回転子スロットのうち、一つの回転子スロット周りの構成を示す要部断面図である。
図において、回転子鉄心1に設けられた回転子スロット2内には、複数の界磁導体5を径方向に積み重ねて形成された界磁コイル3が配設されており、さらに、回転子鉄心1と界磁導体5の間にはスロット絶縁体6が設設されている。また、界磁導体5の外径側には断面が凹字形状の絶縁ブロック7がその凹部と界磁コイル3が対向するように界磁コイル3の外側に設置され、界磁コイル3は、絶縁ブロック7の外径側から回転子楔4により固定されている。
さらに、絶縁ブロック7の凹部と対向する界磁導体5との間に生じたスペースには、他の界磁導体5より絶縁ブロック7の厚さ分だけ幅の狭い界磁導体5aが設けられている。界磁コイル3を形成する界磁導体5は界磁コイル3中に設けた図示しない冷却流路に軸方向に冷媒を流すことにより冷却されている。
このように構成された本実施形態においては、絶縁ブロック7の厚さTは、界磁導体5と回転子楔4との間の必要な沿面距離Laを満足するようにしているため、絶縁信頼性は従来構成と同等であり、絶縁ブロック7中の界磁導体5aの分だけ界磁導体5の総断面積を増加させることができる。
ここで、本実施形態の変形例について図2を用いて説明する。
図2は、第1の実施形態の第1の変形例を示す回転子スロット部の断面図であり、図2においては、絶縁ブロック7を断面凹字形状とし、絶縁ブロック7の内側スペースに界磁導体5aを設ける点は上記した第1の実施形態と同様であるが、図2においては、絶縁ブロック7の幅を大きくして、絶縁ブロック7の幅を増加した分だけ、絶縁ブロック7を配置する部分の回転子スロット2の幅を広くしている。このため、絶縁ブロック7の内側スペースに配置する界磁導体5aの断面積を、実施形態1の場合より大きくすることができ、その分だけ第1の実施形態の構成に比べて、さらに界磁導体5の総断面積を増加できる。
この場合も、絶縁ブロック7の厚さTは界磁導体5と回転子楔4との間の必要な沿面距離Laを満足するようにしているため、絶縁信頼性は従来構成と同等である。
なお、回転子スロット2の回転子内径側の幅は従来構成と変わらないため、遠心力に対する強度は従来構成と同様である。
次に、第1の実施形態の第2の変形例について、図3を用いて説明する。
図3においては、スロット絶縁体6を断面凹字形状とし、絶縁ブロック7の内側に界磁導体5aを設け、絶縁ブロック7を配置する範囲の回転子スロット2の幅を広くしている点は、第1の変形例と同様であるが、絶縁ブロック7を配置する範囲のスロット絶縁体6は、絶縁ブロック7と絶縁ブロック7の内側に生じるスペース内に配置される界磁導体5aとの間に介挿されている。
この構成においては、絶縁上で問題となるのは、絶縁ブロック7の内側のスペース内に配置する界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離はLcとなるが、絶縁ブロック7をこの沿面距離を満足するような厚さTに構成すれば、絶縁信頼性は従来構成と同等である。
また、この構成においては、スロット絶縁体6の形状を従来構成と同様にできるため、形状が複雑になることによるスロット絶縁体6の製造上、組立上の煩雑さが改善できる。界磁導体5の総断面積を増加できる効果等については第1の変形例と同様である。
次に、第1の実施形態における第3の変形例について、図4を用いて説明する。
図4においては、絶縁ブロック7の断面形状を凹字形状とし、絶縁ブロック7の内側に生じるスペース内に界磁導体5aを設け、絶縁ブロック7を配置する範囲の回転子スロット2の幅を広くし、その範囲のスロット絶縁体6を絶縁ブロック7と絶縁ブロック7の内側スペースに配置した界磁導体5aの間に配置している点は第2の変形例と同様であるが、本変形例では、絶縁ブロック7の厚さTを第2の変形例の場合よりも大きくし、絶縁ブロック7の内側スペースに界磁導体5aに加えて界磁導体5bを配置して、界磁導体5bがスロット幅と同等の幅を確保できるようにしている。
すなわち、界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lcより絶縁ブロック7の厚さを大きくとり、かつ絶縁ブロック7と絶縁ブロック7の内側スペースに配置する界磁導体5aの間のスロット絶縁体6を絶縁ブロック7の内側スペースに配置する界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lcを満足する範囲に留めている。これにより、スロット絶縁体6より外径側に位置する絶縁ブロック7の内側スペースに配置する界磁導体5bの幅を大きくすることができ、その分だけ界磁導体5の総断面積を増加できる。その他の作用効果については前述した各変形例と同様である。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る回転電機の回転子の第2の実施形態について、図5を用いて説明する。
図5は、図3の構成において、界磁コイル5、絶縁ブロック7、および回転子楔4にそれぞれ、回転子スロット1の径方向に貫通する冷却孔8a、8b、8cを形成して、界磁コイル3を形成する界磁導体5を、回転子スロット2の内径側に設けた図示しない冷却流路から、界磁導体に設けられた冷却孔8a、絶縁ブロックに設けられた冷却孔8b、回転子楔に設けられた冷却孔8cを通して冷媒をギャップ9へ流して冷却するよう構成したものである。本実施形態においては、絶縁ブロック7に設けた冷却孔8bの内面に凹凸が設けられている。
このような構造において、絶縁上で問題となるのは、絶縁ブロック7の内側スペースに配置する界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lcおよび冷却孔8bの内面に沿った沿面距離Lbであるが、絶縁ブロック7の内側スペースに配置した界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lcについては絶縁ブロック7の厚さTを十分にとることにより確保され、また冷却孔8bの内面に沿った沿面距離Lbについては、絶縁ブロック7に設ける冷却孔8bの内面に凹凸を形成することにより十分な距離を確保しているため、絶縁健全性は従来の構成と変わらない。また絶縁ブロック7の内側スペースに界磁導体5aを配置していることにより界磁導体の総断面積を増加できる。
本実施形態の構成は冷却孔8a、8b、8cを有すること以外は第1の実施形態の第2の変形例と同一の構成となっているため、他の作用効果は第1の実施形態の第2の変形例と同様である。
なお、本実施形態は図示した構成に限らず、冷却孔8a、8b、8cを有すること以外の構成を第1の実施形態と同一としたもの、第1の実施形態の第1の変形例と同一としたもの、第1の実施形態の第3の変形例と同一としても同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る回転電機の回転子の第3の実施形態について、図6を用いて説明する。
図6は、図5の構成において、絶縁ブロック7の凹部と対向する界磁導体5aの冷却孔の幅を他の界磁導体5より大きくし、絶縁ブロック7の冷却孔8b側を界磁導体5aの冷却孔内の一部に延長させ、絶縁ブロック7の冷却孔8bの部分が図5の構成に比べて長くなるよう構成している。
界磁コイル3を形成する界磁導体5は、回転子スロット2の内径側に設けた図示しない冷却流路から、界磁導体3の冷却孔8a、絶縁ブロック7の冷却孔8b、回転子楔4の冷却孔8cを通して冷媒をギャップ9へ流すことにより冷却している。また絶縁ブロック7の内径側の冷却孔8bの側面には図5の構成と同様に凹凸部が設けられており、凹凸部の最外径側の界磁導体5aの冷却孔8aと嵌合させている。
このような構造において、絶縁上で問題となるのは、絶縁ブロック7の内側スペースに設けた界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lc、および冷却孔の内面に沿った沿面距離Lbであるが、絶縁ブロック7の内側スペースに設けた界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lcについては絶縁ブロック7の厚さTを十分にとることにより確保され、また冷却孔の内面に沿った沿面距離Lbについては、絶縁ブロック7の内径側の冷却孔8bの側面に凹凸部を設けることにより十分な距離を確保している。
このように、本実施形態の構成においては、沿面距離が十分に確保されるため、絶縁健全性は従来の構成と変わらない。
また、絶縁ブロック7の内径側の中空上突起を最外径側の界磁導体の冷却孔8aに嵌合するようにしているため、界磁導体5と絶縁ブロック7の熱伸び差によって界磁導体5の冷却孔8aと絶縁ブロック7の冷却孔8bの位置がずれて冷媒の流れを阻害することが防止できる。
本実施形態の構成は、冷却孔8a、8b、8cを有すること以外は第1の実施形態の第2の変形例と同一の構成となっているため、他の作用効果は第1の実施形態における第2の変形例と同様である。
なお、本実施形態は図示した構成に限らず、冷却孔8a、8b、8cを有すること以外の構成を第1の実施形態と同一としたもの、第1の実施形態における第1の変形例と同一としたもの、第1の実施形態の第3の変形例と同一としても成り立つことはもちろんである。
次に、本発明に係る回転電機の第3の実施形態における第1の変形例について、図7を用いて説明する。
図7において本変形例は、図6に示した実施形態における絶縁ブロック7を絶縁ブロック7の冷却孔8bの位置に貫通孔を有する凹字断面形状の第1の絶縁ブロック7aと、第1の絶縁ブロック片7aの貫通孔8bに嵌合した、中空パイプ状の第2の絶縁ブロック7bで構成したことを特徴とする。
本変形例では、絶縁ブロック7が、第1の絶縁ブロック片7aと第2の絶縁ブロック片7bとの2つの部材から構成されるため、絶縁ブロック7を製作する際に内径側の冷却孔8bの位置に設ける中空上の突起の加工が不要となる。また、絶縁ブロック7の冷却孔8bの内径に凹凸を形成する場合にも、形状が単純な第2の絶縁ブロック片7bを加工すれば良いため、凹凸の加工が容易となる利点がある。他の作用効果については第3の実施形態と同様である。
次に、本発明に係る回転電機の第3の実施形態における第2の変形例について、図8を用いて説明する。本変形例においては、図6に示した実施形態における絶縁ブロック7を絶縁ブロック7の冷却孔8bの位置に貫通孔を有する凹字断面形状の第1の絶縁ブロック片7aと、第1の絶縁ブロック片7aの貫通孔8bに嵌合し、外径側につばを設けた中空パイプ状の第2の絶縁ブロック片7bで構成したことを特徴とする。
本変形例では、絶縁ブロック7が、第1の絶縁ブロック片7aと第2の絶縁ブロック片7bとの2つの部材から構成されるため、絶縁ブロック7を製作する際に内径側の冷却孔8bの位置に設ける中空上の突起の加工が不要となる。また、絶縁ブロックの冷却孔8bの内径に凹凸を形成する場合にも、第2の絶縁ブロック片7bは第3の実施形態の第1の変形例に比べれば複雑な形状ではあるが、第3の実施形態の絶縁ブロック7よりは単純な形状であり、加工が容易となる。
また、絶縁ブロック7が、第1の絶縁ブロック片7aと第2の絶縁ブロック片7bとの2つの部材から構成する場合には、両者の接合が不完全であると、第1の絶縁ブロック片と第2の絶縁ブロック片の接合面に沿った沿面距離Ldが絶縁上問題となる。本変形例では、第2の絶縁ブロック片7bの外径側につばを設けているため、第1の絶縁ブロック片7aと第2の絶縁ブロック片7bの接合が不完全であっても、第1の絶縁ブロック片7aと第2の絶縁ブロック片7bの接合面に沿った沿面距離Ldが確保されているため、絶縁健全性を従来構成と同等にできる。他の作用効果については第3の実施形態と同様である。
(第4の実施形態)
次に、本発明に係る回転電機の回転子の第4の実施形態について、図9を用いて説明する。
図9は、図5に示した第2の実施形態において、絶縁ブロック7と対向する回転子楔4の冷却孔8cの内面を他の冷却孔より大きくなるよう加工して、絶縁ブロック7と回転子楔4との間に間隙部分を形成するようにしている。
このような構造において、絶縁上で問題となるのは、絶縁ブロック7中の界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lcおよび冷却孔の内面に沿った沿面距離Lbであるが、絶縁ブロック7の内側スペースに設けた界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lcについては、絶縁ブロック7の厚さTを十分にとることにより確保され、また冷却孔8bの内面に沿った沿面距離Lbについては、絶縁ブロック7の外径側の冷却孔8bの近傍と回転子楔4の内径側の冷却孔8c近傍の間に空隙を設けることにより十分な距離を確保している。なお、本実施形態では、図9のように絶縁ブロック7の冷却孔8bに凹凸を設けた場合を示したが、凹凸を設けない構成としても良い。
本実施形態においては、沿面距離が十分に確保されるため、絶縁健全性は従来の構成と変わらない。また絶縁ブロック7の内側スペースに界磁導体5aを配置したことにより界磁導体5の総断面積を増加できることは前述した実施形態と同様である。
なお、本実施形態では絶縁ブロック7の外径側に設けた冷却孔8bの近傍と回転子楔4の内径側に設けた冷却孔8c近傍との間に空隙を設けるために回転子楔4の内径側を加工しているが、絶縁ブロック7の外径側を加工しても同様であり、また、両側を加工しても良い。
本実施形態の構成は、絶縁ブロック7の外径側に設けた冷却孔8bの近傍と回転子楔4の内径側に設けた冷却孔8c近傍との間に空隙を設けること以外は、図5に示した構成と同様になっているため、他の作用効果については図5に示した実施形態における作用効果と同様である。
(第5の実施形態)
次に、本発明に係る回転電機の回転子の第5の実施形態について、図10を用いて説明する。
図10は、図5に示した構成において、絶縁ブロック7の冷却孔8bの内面にネジ加工を施し、回転子楔4の外径側から回転子楔4の冷却孔8aと絶縁ブロック7の冷却孔8bを貫通する絶縁パイプ12を挿入し、絶縁ブロック7に設けた冷却孔8bの内面のネジ加工部分にネジ結合している。また、絶縁パイプ12の外径側には、回り止め用の飛散防止部材13が設けられている。
このような構造において、絶縁上で問題となるのは、絶縁ブロック7の内側スペースに設ける界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lc、および冷却孔8bの内面に沿った沿面距離Lbであるが、絶縁ブロック7の内側スペースに設けた界磁導体5aと回転子鉄心1との間の沿面距離Lcについては、絶縁ブロックの厚さTを十分にとることにより確保され、また、冷却孔8bの内面に沿った沿面距離Lbについては、絶縁ブロック7の外径側に設けた冷却孔8bの近傍と回転子楔4の内径側の冷却孔8bの近傍との間に間隙を設けることにより十分な距離を確保している。
本実施形態においては、上記の構成により、沿面距離が十分に確保されるため、絶縁健全性は従来の構成と変わらない。
また、本実施形態では回転子楔4の冷却孔8cと絶縁ブロック7の冷却孔8bの両者に嵌合する絶縁パイプ12を設けているため、回転子楔4と絶縁ブロック7の熱伸び差によって回転子楔4の冷却孔8cと絶縁ブロック7の冷却孔8bの位置がずれて冷媒の流れが阻害されることを防止できる。
なお、本発明の構成は、その要旨を逸脱しない範囲で上記した実施形態に限らず種々に変形して構成することが可能である。
本発明に係る回転電機の回転子の第1の実施形態における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第1の実施形態における第1の変形例である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第1の実施形態における第2の変形例である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第1の実施形態における第3の変形例である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第2の実施形態である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第3の実施形態である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第3の実施形態における第1の変形例である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第3の実施形態における第2の変形例である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第4の実施形態である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 本発明に係る第5の実施形態である回転電機の回転子における回転子スロット外径部付近の断面を示す基本構成図。 従来の回転電機の回転子の基本構成を示す横断面図。 従来の回転子における界磁スロット外径部の基本構成を示す部分横断面図。
符号の説明
1:回転子鉄心 2:回転子スロット 3:界磁コイル 4:回転子楔 5、5a、5b:界磁導体 6:スロット絶縁体 7:絶縁ブロック 7a:第1の絶縁ブロック片 7b:第2の絶縁ブロック片 8a:界磁導体の冷却孔 8b:絶縁ブロックの冷却孔 8c:回転子楔の冷却孔 9:ギャップ 12:絶縁パイプ 13:飛散防止部材 14:回転子ティース 14a:回転子ティース最狭部 15:冷媒流路 La:回転子楔と界磁導体間の沿面距離 Lb:冷却孔内面に沿った沿面距離 Lc:界磁導体と回転子鉄心間の沿面距離 Ld:第1の絶縁ブロック片と第2の絶縁ブロック片の接合面に沿う沿面距離 T:絶縁ブロックの厚さ

Claims (10)

  1. 回転子鉄心にその外周面から軸心に向かう複数の回転子スロットを配設し、前記回転子スロット内に複数の界磁導体からなる界磁コイルを収納し、前記界磁コイルの回転子外径側に絶縁ブロックを配置すると共に、前記界磁コイルおよび前記絶縁ブロックと前記回転子スロット側面との間にスロット絶縁体を配置し、前記絶縁ブロックの回転子外径側に回転子楔を介挿して前記界磁コイルを前記回転子スロット内に固定してなる回転電機の回転子において、
    前記絶縁ブロックは回転子の軸に垂直な断面が凹字形状をなし、前記絶縁ブロックの凹部が前記界磁導体と対向するように前記回転子スロット内に配置するとともに、前記絶縁ブロックの凹部と前記界磁導体との間に形成されるスペース内にも界磁導体を配置したことを特徴とする回転電機の回転子。
  2. 前記絶縁ブロックの幅を前記界磁コイルの幅より大きく形成するとともに、前記絶縁ブロックを配置する範囲の前記回転子スロット幅を広くしたことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
  3. 前記絶縁ブロックを配置する範囲の前記スロット絶縁体を前記界磁導体と絶縁ブロックの間に配置したことを特徴とする請求項2に記載の回転電機の回転子。
  4. 前記絶縁ブロックを配置する範囲の前記スロット絶縁体を前記界磁導体と絶縁ブロックとの間の一部にのみ配置し、他部は前記スロット絶縁体の厚さ分だけ幅の広い界磁導体を配置したことを特徴とする請求項3に記載の回転電機の回転子。
  5. 前記界磁導体、絶縁ブロック、および回転子楔に、それぞれ径方向に連通する冷却孔を設けるとともに、前記絶縁ブロックに設けた冷却孔の内側面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の回転電機の回転子。
  6. 前記絶縁ブロックと対向する界磁導体の冷却孔を、前記絶縁ブロックおよび他の界磁導体に設ける冷却孔より大きく形成し、前記絶縁ブロックと対向する界磁導体の冷却孔内面の一部を覆うように前記絶縁ブロックを突出させたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の回転電機の回転子。
  7. 前記絶縁ブロックの回転子外径側の冷却孔近傍と前記回転子楔の回転子内径側の冷却孔近傍との間に空隙を設けたことを特徴とする請求項5に記載の回転電機の回転子。
  8. 前記絶縁ブロックに設けた冷却孔の内面にネジ加工を施し、前記回転子楔の冷却孔を貫通する絶縁パイプを前記絶縁ブロックの冷却孔にネジ込み固定したことを特徴とする請求項5に記載の回転電機の回転子。
  9. 前記絶縁ブロックは、前記冷却孔の内面位置から絶縁ブロックと対向する界磁導体に設けた冷却孔の内面位置までの範囲を回転子径方向に分割して構成し、前記回転子楔に最も近い絶縁ブロックと対向する界磁導体に設けた冷却孔と同じ内径の冷却孔を有する第1の絶縁ブロック片と、前記第1の絶縁ブロック片の冷却孔に嵌合するように形成され中空パイプ状の第2の絶縁ブロック片からなることを特徴とする請求項6に記載の回転電機の回転子。
  10. 前記絶縁ブロックは、前記回転子スロットの深さ方向に分割して構成し、前記回転子楔に隣接する界磁導体に設けた冷却孔と同じ内径の冷却孔を有する第1の絶縁ブロック片と、前記第1の絶縁ブロック片の冷却孔および前記回転子楔に隣接する界磁導体の冷却孔内面の一部を覆うように形成した第2の絶縁ブロック片からなることを特徴とする請求項6に記載の回転電機の回転子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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