JP2009253103A - 多接合型光電変換装置の製造方法およびこれを用いて製造された多接合型光電変換装置 - Google Patents

多接合型光電変換装置の製造方法およびこれを用いて製造された多接合型光電変換装置 Download PDF

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Abstract

【課題】下側層に影響せずに中間コンタクト層を分割し、中間コンタクト層からの電流漏れを抑制し、発電効率の低下を抑制できるとともに発電を行わない無効領域を小さくし、発電効率を向上させることができる多接合型光電変換装置の製造方法を提供する。
【解決手段】薄膜太陽電池モジュール1の製造方法は、中間コンタクト層11にメカニカルスクライブ法によって導電分離溝23を形成する中間コンタクト層分離溝形成工程を備えていることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、多接合型光電変換装置の製造方法およびこれを用いて製造された多接合型光電変換装置に関する。
薄膜多接合型太陽電池は、大別して透明な基板側から太陽光を入射させるスーパーストレート構造と、基板と反対の膜面側から太陽光を入射させるサブストレート構造がある。
薄膜シリコン系多接合型太陽電池のスーパーストレート構造としては、ガラスのような透明絶縁基板、その上に順に、第一の電極層としてSnO2、ZnOのような透明電極層、第一の光電変換セルとしてpin型アモルファスシリコンなどのシリコン系セル、ZnOやシリコン系の中間コンタクト層膜、第二の光電変換セルとしてpin型微結晶シリコンなどのシリコン系セル、およびAgやAlなどの金属膜またはZnO、ITOなどの透明酸化物と金属膜の積層膜からなる第二の電極層から構成される多接合セルが一般的である。
またサブストレート構造としては、ガラス、ポリイミドの絶縁基板またはステンレスなどの金属上に絶縁膜を形成した絶縁基板、その上に順に、モリブデンやアルミニウムなどの金属膜とZnO、ITOなどの透明酸化物との積層膜からなる第一の電極層、第一の光電変換セルとしてnip型微結晶シリコンなどのシリコン系セル、ZnOやシリコン系の中間コンタクト層膜、第二の光電変換セルとしてnip型アモルファスシリコンなどのシリコン系セル、およびZnO、ITOのような透明な第二の電極層から構成される多接合セルが一般的である。
このような薄膜シリコン系多接合型太陽電池は、複数のユニットセルが集積され、それぞれ直列接続された集積型のモジュールを構成している。すなわち、複数のシリコン系太陽電池の各々は、第二の電極層が隣り合うシリコン系太陽電池の第一の電極層と電気的に接続されている。その接続は、第一の光電変換セル、中間コンタクト層膜および第二の光電変換セルを貫通し底面が第一の電極層である接続溝において、第二の電極層が充填されることで行なわれる。
中間コンタクト層膜は、働きとして光入射側の第一の光電変換セル(サブストレート構造では第二の光電変換セル)で吸収されずに透過してきた短波長光を第一の光電変換セル側に反射させるために、光電変換セルであるシリコンより低い屈折率、および第一の光電変換セルと第二の光電変換セルとの電気的コンタクトのために高い導電性が求められ、ZnO、SiOxなどの透明導電酸化物やSiOxなどを含有した結晶質Siなどシリコン系薄膜が使用される。このように中間コンタクト層膜は導電性を有しているため、中間コンタクト層膜と接続溝とはともに電気的に接続されることとなるので、発生した電力が接続溝から中間コンタクト層を介して漏洩するという問題があった。
このように電流が漏れるとその分発電性能が低下するため、中間コンタクト層膜を介した電流漏れを抑制する方法の提供が望まれていた。この方法としては、中間コンタクト層膜を分離する分離溝を加工するものが広く用いられている。図14に従来の多接合型薄膜太陽電池モジュール(スーパーストレート構造)の断面構造を示す。
薄膜太陽電池モジュールには、透明電極層(第一の電極層)7の上に開口を有し、基板3の上に底面を有する透明電極層を分割する透明電極分離溝17と、裏面電極層(第二の電極層)15と第二の光電変換セル13との界面に開口を有し、透明電極膜と第一の光電変換セル9との界面に底面を有する接続溝19(第一の電極層と第二の電極層とを電気的に接続する溝)と、裏面電極層15の表面に開口を有し、透明電極層7と第一の光電変換セル9との界面に底面を有する裏面電極分離溝21と、中間コンタクト層11を分離する中間コンタクト層分離溝23と、が設けられている。これら透明電極分離溝17、接続溝19、裏面電極分離溝21および中間コンタクト層分離溝23は互いに平行に設けられ、図14の紙面に対して垂直な方向に延在している。
中間コンタクト層分離溝の加工は、たとえば、特許文献1および特許文献2に示されるように、中間コンタクト層に集光されたレーザ光を照射してそれを除去する方法(レーザスクライブ法)が一般に用いられている。
これらは、レーザ光によって、第二の光電変換セル13と中間コンタクト層11の界面に開口を有し、透明電極層7と第一の光電変換セル9との界面に底面をもつ分離溝を形成する(特許文献1)、あるいは、第二の光電変換セル13と中間コンタクト層11の界面に開口を有し、中間コンタクト層11と第一の光電変換セル9との界面に底面をもつ分離溝を形成する(特許文献2)ものである。
特許文献1のレーザスクライブ法では、レーザ光を透明基板側から照射することで分離溝の形成がなされる。レーザ光は、透明電極(第一の電極膜)を透過して第一の光電変換セルとの界面で熱に変換されることで、シリコンに結合していた水素の分解が生じて、第一の光電変換セルおよびその上に位置する中間コンタクト層がともに除去されることで分離溝の加工が進行する。
特許文献2のレーザスクライブ法では、レーザ光を中間コンタクト層の膜面側から照射することで分離溝形成がなされる。中間コンタクト層膜は透明であることから実質的にレーザ光を吸収するのはアモルファスシリコンからなる第一の光電変換セルの表面部分である。レーザ光が第一の光電変換セルのアモルファスシリコンに吸収されることにより熱に変換され、局部的に非常に高温となる。これによりアモルファスシリコンの表面近傍が溶融し結合していた水素などが分解することで発生する蒸発圧力によって、中間コンタクト層膜が飛散して分離溝が形成される。
また、対象が中間コンタクト層ではないが、薄膜CIS系太陽電池の単接合の集積型モジュールの形成において、CIGS(Cu,In,Ga,Se)系p型半導体/CdSやZnS系のn型半導体からなるpn半導体光吸収層の分離溝を形成するのに、たとえば、特許文献3に示されるようにメカニカルスクライブ法が一般的に行われている。
これは加工工具を当てて、Mo電極(第一の電極膜)から半導体光吸収層(第一の光電変換セル)を剥離させる方法である。通常、CIS系半導体光吸収層の膜厚は2〜3μmあり、下地のMo電極との密着性があまり高くないことを利用して、機械的に剥離させるものである。しかし本方法は、単接合集積型モジュールのため中間コンタクト層膜を使用しておらず、下地の半導体光吸収層(第一の光電変換セル)を残して中間コンタクト層膜を除去する技術の記載はない。
特開2002−261308号公報 特開2006−313872号公報 特開2000−315809号公報
ところで、特許文献1に示されるような中間コンタクト層分離溝は、第二の光電変換セルである微結晶シリコンセルが充填されている。微結晶シリコンセルのP型微結晶膜が第一の電極層に接するが、P型微結晶膜は、その抵抗が低いため第一の電極層へ通じる電流漏れ経路になる場合がある。
また、図15は、従来の多接合型薄膜太陽電池モジュールを概略的に示す部分平面図であり、図14で示した各溝の位置関係を平面的に示している。ここで破線で示した中間コンタクト層分離溝23(溝幅たとえば50μm)、接続溝19(溝幅たとえば50μm)、裏面電極分離溝21(溝幅たとえば50μm)は、透明電極分離溝17を基準として、設定された加工予定位置を示す。中間コンタクト層分離溝23は、透明電極分離溝17の端部からたとえば100μm離れた場所に中間コンタクト層分離溝23の端部が位置するように加工位置が設定される。中間コンタクト層分離溝の形成の後、次の工程で、第二の光電変換セルを製膜する。次いで、レーザスクライブ法で接続溝を形成するが、接続溝19は、透明電極分離溝17の端部からたとえば250μm離れた場所に接続溝19の端部が位置するように加工位置が設定される。接続溝の形成の後、次の工程で、裏面電極膜(第二の電極層)が製膜される。次いで、レーザスクライブ法で裏面電極分離溝21を形成するが、裏面電極分離溝21は、透明電極分離溝17の端部からたとえば400μm離れた場所に裏面電極分離溝21の端部が位置するように加工位置が設定される。このように隣りあう溝どうしの間隔を100μm程度離すのは、溝どうしの交差や重畳は避ける必要があり、レーザスクライブ装置による位置合せを含めた加工精度を考慮して設定されている。そのため実際の加工では、実線で示したように、透明電極分離溝17に対して傾きをもつことがある。(裏面電極分離溝21は図示せず)
また、接続溝の形成は、レーザ光を透明基板側から第一の電極層(透明電極層)を通して照射することでなされるが、第一の電極膜上に第一の光電変換セルとして結合水素量が10−20at%と多いアモルファスシリコン層が存在するときは、第一の電極膜と第一の光電変換セルとの界面付近の第一の光電変換セルで熱吸収されることで、高いガス蒸気圧が発生して、膨張により第一光電変換セルと厚い第二の光電変換セルを容易に除去することができるが、特許文献1に示されるように中間コンタクト層の分離溝に第一の光電変換セルがなく、第二の光電変換セルで充填されている場合は、第二の光電変換セルである微結晶シリコン層の結合水素量が1−2at%と少ないことから、通常の接続溝の形成に要するレーザビームエネルギーでは、充分に第二の光電変換セルの除去ができない。すなわち図15のように中間コンタクト層分離溝と接続溝とは重畳させることはできないので、両者間の距離は、上記のように一定に保つ必要があり、発電に寄与しない無効領域の低減が難しい。
また、特許文献2に示すものは、たとえば、一般的な可視光固体レーザ(たとえば波長532nmのYAGレーザ)を用いた場合、光を吸収するのはアモルファスシリコン(a−Si)からなる第一の光電変換セルであり、発熱によりa−Siが膜質変化を起こし、低抵抗化して電流漏れ経路を形成することがある。
本発明は、上記課題に鑑み、下側層に熱影響を与えずに中間コンタクト層を分割し、中間コンタクト層からの面方向への電流漏れを抑制し、発電効率の低下を抑制できる多接合型光電変換装置の製造方法およびこれを用いて製造された多接合型光電変換装置を提供することを目的とする。
また、発電を行わない無効領域を小さくし、発電効率を向上させることができる多接合型光電変換装置の製造方法およびこれを用いて製造された多接合型光電変換装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明にかかる多接合型光電変換装置の製造方法は、中間コンタクト層にメカニカルスクライブ法によって導電を分離する溝である中間コンタクト層分離溝を形成する中間コンタクト層分離溝形成工程を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、中間コンタクト層分離溝は中間コンタクト層にメカニカルスクライブ法によって形成される。すなわち、中間コンタクト層は、硬い刃を押し付けられ、この硬い刃が中間コンタクト層の導電分離溝を形成する位置に沿って移動するように基板および/または硬い刃を移動させる。これにより、中間コンタクト層膜は機械的に削り取られ、中間コンタクト層分離溝が形成されることになる。
このように、中間コンタクト層は、硬い刃よって削り取られて導電分離溝が形成されるので、下側層に熱による影響を与えて、新たな電流漏れ経路を生じることなく、中間コンタクト層に導電分離溝を形成して、中間コンタクト層を分割することができる。これにより、中間コンタクト層からの面方向への電流漏れを抑制、あるいは防止できるので、多接合型光電変換装置の発電効率の低下を抑制できる。
さらに、上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明にかかる多接合型光電変換装置の製造方法は、前記中間コンタクト層分離溝形成工程において、前記中間コンタクト層分離溝は、前記中間コンタクト層の基板側に隣接する下側層が残存するように形成されることを特徴とする。
多接合型光電変換装置において中間コンタクト層の基板側に隣接する下側層としては、たとえば、アモルファスシリコン層である第一の光電変換セルがある。この第一の光電変換セルの基板側には第一の電極層がある。
中間コンタクト層分離溝の底部に、アモルファスシリコン層である第一の光電変換セルが残存するので、中間コンタクト層分離溝にも充填される第二の光電変換セルである微結晶シリコンセルのP型微結晶膜が第一の電極層に接することがなく、第一の電極層への電流漏れ経路は生じない。
なお、中間コンタクト層分離溝の形成において、硬い刃の接触圧(押付力)を調整することで、削り深さを調整することができる。本分離溝は、中間コンタクト層の導電性を断てればよいので、中間コンタクト層の基板側に隣接する下側層すなわち第一の光電変換セルまでを部分的に除去して、中間コンタクト層の全てを除去するようにしてもよいし、中間コンタクト層が部分的に島状に残存する(すなわち、溝の底部に幅方向に連続した中間コンタクト層が残存しない)ようにしてもよい。
また、刃の幅あるいは削り回数を選択することによって、中間コンタクト層分離溝の幅を調整することができる。
さらに、上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明にかかる多接合型光電変換装置の製造方法は、前記中間コンタクト層分離溝形成工程において、前記中間コンタクト層分離溝は、前記中間コンタクト層の基板側に位置する第一の電極層に形成される第一電極層分離溝と、前記中間コンタクト層の基板と反対側に位置する第二の電極層に形成される第二電極層分離溝との間に位置するように設けられ、前記中間コンタクト層分離溝の少なくとも一部が、前記第一電極層分離溝と、前記第一の電極層および前記第二の電極層が電気的に接合する接続溝と、の間に位置するように形成されることを特徴とする。
本発明によれば、中間コンタクト層分離溝は、第一電極層分離溝と第二電極層分離溝との間にあり、中間コンタクト層分離溝の少なくとも一部が、第一電極層分離溝と接続溝の間に位置するように形成される。中間コンタクト層分離溝は、中間コンタクト層の面方向の導電性を断つことができる溝幅(たとえば30μm)を有すれば、中間コンタクト層分離の役目を果たす。
中間コンタクト層分離溝形成において、この導電分離が実現する溝幅以上に幅広く加工しておくことにより、後の工程である接続溝形成において、加工精度の影響により、たとえ接続溝が中間コンタクト層分離溝と重畳したとしても、中間コンタクト層分離溝の下側層である第一の光電変換セルが残存しているので、接続溝の形成に支障をきたすことはない。
このように、接続溝形成工程において、第一電極層分離溝と接続溝の間に、導電分離に有効な溝幅(たとえば30μm)の中間コンタクト層分離溝を残すように、従来よりも第一電極層分離溝に近づけて接続溝を形成することができるので、発電に寄与しない無効領域幅を小さくでき、発電効率を向上させることができる。
また、上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明にかかる多接合型光電変換装置は、上述の多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造されていることを特徴とする。
本発明によれば、多接合型光電変換装置は、レーザスクライブ法のように下側層に熱による影響を与えて、新たな電流漏れ経路を生じることなく、中間コンタクト層を分割することができる製造方法を用いて製造されるので、中間コンタクト層からの面方向への電流漏れを抑制、あるいは防止でき、発電効率の低下を抑制できる。
本発明によれば、中間コンタクト層にメカニカルスクライブ法によって導電分離溝を形成するので、下側層に熱的影響を与えずに中間コンタクト層を分割することができる。
これにより、中間コンタクト層からの電流漏れを抑制、あるいは防止できるので、多接合型光電変換装置の発電効率の低下を抑制できる。
また、中間コンタクト層分離溝は、中間コンタクト層の基板側に隣接する下側層(第一の光電変換セル)が残存するように形成するので、第二の光電変換セルである微結晶シリコンセルのP型微結晶膜が第一の電極層に接することがなく、第一の電極層への電流漏れ経路は生じない。
さらに、中間コンタクト層分離溝に、第一の光電変換セルが残存するので、中間コンタクト層分離溝の少なくとも一部が、第一電極層分離溝と、接続溝の間に位置するように中間コンタクト層分離溝を形成すれば、中間コンタクト層分離溝(メカニカルスクライブ法)と接続溝(レーザスクライブ法)が重畳しても問題はない。第一電極層分離溝と接続溝の間に存在する中間コンタクト層分離溝の幅を、中間コンタクト層の面方向の導電性を断つことができる溝幅(たとえば30μm)以上に幅広く加工することにより、接続溝を第一電極層分離溝に近づけて加工することができるので、発電に寄与しない無効領域の長さを小さくでき、発電効率を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法について図1から図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造されたスーパースレート構造の薄膜太陽電池モジュール(多接合型光電変換装置)1の断面を概略的に示す部分断面図である。薄膜太陽電池モジュール1は基板3上で2層タンデム型のユニットセル5が直列接続された構造とされている。
薄膜太陽電池モジュール1には、透光性の基板3(少なくとも1辺1m以上、たとえば:1.4m×1.1m×3mm〜4mmのソーダガラス基板)上に、酸化錫膜(SnO)を主成分とする透明、かつ、導電性を有する層である透明電極層(第一の電極層)7が製膜されている。
透明電極層7の上には、pin構造を有するアモルファスシリコン(a−Si)から構成される光電変換層であるトップセル(下側層;第一の光電変換セル)9が製膜されている。トップセル9は、中間コンタクト層11より高抵抗であり、かつ、特定の波長域の光から光起電力効果により電力を発生させる。
トップセル9の上には、基板3側から入射した光の一部を反射し一部を透過させる機能を有する中間コンタクト層11が製膜されている。中間コンタクト層11は、たとえば、ガリウムGaをドープした酸化亜鉛(ZnO)膜を主成分として構成されている。
中間コンタクト層11の上には、pin構造を有する微結晶シリコン(μc−Si)から構成される光電変換層であるボトムセル(上側層;第二の光電変換セル)13が製膜されている。ボトムセル13は、トップセル9が変換する光の波長域とは異なる波長域の光を吸収して電力を発生させる。
ボトムセル13の上には、銀(Ag)やチタン(Ti)またはアルミニウム(Al)などの金属材料、或いは、ITO、ZnOなどの導電性酸化膜と銀やチタンまたはアルミニウムなどの金属材料の積層構造からなる裏面電極層(第二の電極層)15が形成されている。
薄膜太陽電池モジュール1には、透明電極層7の上に開口を有し、基板3の上に底面を有する透明電極層7を分割する透明電極分離溝(第一電極層分離溝)17と、裏面電極層15とボトムセル13との界面に開口を有し、透明電極膜7とトップセル9との界面に底面を有する接続溝19と、裏面電極層15の表面に開口を有し、透明電極層7とトップセル9との界面に底面を有する裏面電極分離溝(第二電極層分離溝)21と、中間コンタクト層11を分離する中間コンタクト層分離溝23と、が設けられている。
これら透明電極分離溝17、接続溝19、裏面電極分離溝21および中間コンタクト層分離溝23は互いに平行に設けられ、図1の紙面に対して垂直な方向に延在している。
透明電極分離溝17には、トップセル9を構成する材料が埋め込まれており、分割された透明電極層7同士を電気的に絶縁している。
裏面電極分離溝21は隣り合うユニットセル5間で、トップセル9、中間コンタクト層11、ボトムセル13および裏面電極層15を分割しており、裏面電極層15同士および中間コンタクト層11同士を電気的に絶縁している。
接続溝19は、透明電極分離溝17と裏面電極分離溝21との間に設けられている。接続溝19は裏面電極層15を構成する材料で埋められており、裏面電極層15と隣のユニットセル5の透明電極層7とを電気的に接続している。すなわち、隣り合うユニットセル5同士を電気的に直列に接続している。
中間コンタクト層分離溝23は、透明電極分離溝17と接続溝19との間に設けられている。中間コンタクト層分離溝23は中間コンタクト層11とボトムセル13との界面に開口を有し、中間コンタクト層11とトップセル9との界面に底面を有している。中間コンタクト層分離溝23には、ボトムセル13を構成する材料が埋め込まれており、分割された中間コンタクト層11同士を電気的に絶縁している。
透明電極分離溝17から裏面電極分離溝21までの部分は、発電に寄与しない無効領域25となる。
以下、この薄膜太陽電池モジュール1の製造工程について中間コンタクト層分離溝23の形成方法を主体に説明する。
まず、基板3上に透明電極層7として酸化錫(SnO)を主成分とする膜を膜厚約500nm〜800nm、熱CVD装置にて約500℃で製膜処理する。このとき、透明電極層7の表面は適当な凹凸のあるテクスチャーが形成される。
また、基板3と透明電極層7との間にアルカリバリア膜(図示省略)を形成しても良い。アルカリバリア膜は、酸化シリコン膜(SiO)を50nm〜150nm、熱CVD装置にて約500℃で製膜処理する。
その後、基板3をX−Yテーブルに設置して、YAGレーザの基本波(1064nm)を、透明電極層7の膜面側または基板側から照射する。
加工速度に適切となるようにレーザパワーを調整して、透明電極層7をユニットセル5の直列接続方向に対して略垂直な方向へ、基板3とレーザ光とを相対移動して、透明電極分離溝17を形成する。透明電極分離溝17は、所定幅、たとえば、50μmで、約6mm〜15mmピッチで短冊状にレーザスクライブされる。
次いで、プラズマCVD装置により、減圧雰囲気:30〜1000Pa、基板温度:約200℃にてトップセル9を構成するp層膜/i層膜/n層膜を順次製膜する。
トップセル9は、SiHガスとHガスとを主原料に、透明電極層7の上に製膜される。このとき、透明電極分離溝17は、pin型アモルファスSiで埋められる。
トップセル9は、太陽光の入射する側からp層、i層、n層がこの順で積層される。これらの層の構成および厚さは、たとえば、p層:ホウ素(B)をドープしたアモルファスSiCを主成分とし膜厚10nm〜30nm、i層:アモルファスSiを主成分とし膜厚200nm〜350nm、n層:リン(P)をドープした微結晶Siを主成分とし膜厚30nm〜50nmである。
またp層膜とi層膜との間には界面特性の向上のためにバッファー層を設けても良い。
次に、トップセル9の上に、Ga(ガリウム)をドープしたZnO(GZO)膜を膜厚:20nm〜100nm、たとえば、スパッタリング装置により製膜し、中間コンタクト層11を形成する。
その後、図2に示すように中間コンタクト層11を分割し中間コンタクト層分離溝23を形成する中間コンタクト層分離溝形成工程に入る。基板3を中間コンタクト層11が上面に位置するようにテーブル27に設置し、テーブル27の上方に設置されたメカニカルスクライブ装置29によってメカニカルスクライブ法を用いて、透明電極分離溝17の端部から横側約100μmの位置に溝幅約30μmの中間コンタクト層分離溝23を形成する。
図3は、メカニカルスクライブ装置29の概略構成を示している。
メカニカルスクライブ装置29には、テーブル27の対向する両辺に沿って延在するように設置された第一レール31と、第一レール31に直交するように配置され、両方の第一レール31に沿って移動可能に支持された第二レール33と、第二レール33に沿って移動可能に設けられた工具台35と、が備えられている。
工具台35の下部には、溝形成工具(硬い刃)37が下方に突出し、軸線中心回りに回転可能に取り付けられている。溝形成工具37は、工具台35に、たとえば、エアバネによって下方への押付力を調整できるようにされている。
溝形成工具37は、一例として、鋼製の四角柱形状をし、先端部が四角錐台形状、すなわち、先細とされている。溝形成工具37の先端には、図4に示されるように四角錐台の加工部39が取り付けられている。
加工部39は、耐磨耗性を求め、ダイヤモンド(モース硬度:10)、炭化珪素(モース硬度:9)アルミナ(サファイア(モース硬度:9))、タングステンカーバイド(モース硬度:8.5)等の硬い材料で構成されている。加工部39の加工に用いられる幅は、たとえば、30μmの長さとされている。
なお、トップセル9を構成するa−Siのモース硬度は7、中間コンタクト層11を構成するZnOのモース硬度は4〜5であるので、加工部39は、たとえば鋼(モース硬度:5〜8.5)製としてもよい。
テーブル27へ設置された基板3に中間コンタクト層11に加工部39を押し付けるようにし、第二レール33を第一レール31に沿って移動させることにより、中間コンタクト層分離溝23が形成される。
中間コンタクト層分離溝23が1本形成されると、工具台35を第二レール33に沿ってセルピッチだけ移動させて、場合によっては溝形成工具37を半周回転し、上述の手順によって隣の中間コンタクト層分離溝23を形成する。これを繰り返して、中間コンタクト層11に所定数、たとえば、90本の中間コンタクト層分離溝23を形成する(図5参照)。
なお、基板3と加工部39との相対位置を移動させればよいので、加工部39を固定し、基板3を載置したテーブル27を移動するようにしてもよい。
このとき、中間コンタクト層11に加工部39を押し付けて研削すると、図1に示すようにトップセル9の表面が一部削り取られる。
透明電極層7の表面は図7に示されるように結晶粒の凹凸構造を有する。この上に形成されるトップセル9のpin型a−Si膜や中間コンタクト層11は、下地形状を反映して凹凸構造をもつ。
この凹凸構造における山谷の高低差は50〜300nm程度である。山の部分は、加工部39によって、一定深さのa−Si膜が除去されるが、谷の部分は、一部に加工部39が当たらないところがあるために、中間コンタクト層11が残る場合がある。
この中間コンタクト層11を完全になくす必要はない。すなわち、このように中間コンタクト層11が図6に示されるように島状に残ったとしても、中間コンタクト層11が除去されてトップセル9が露出した部分が、途切れなく繋がっていれば、中間コンタクト層分離溝23を横断する電流漏れを抑制することができる。
中間コンタクト層11に中間コンタクト層分離溝23を形成するとき、トップセル9の膜全部を除去せず、トップセル9の表面部分を研削することは、加工部39にかかる負荷、すなわち、接触圧や走査速度を調整することで可能である。
加工部39にかかる負荷については、加工部39が膜に接触する面積によって異なるが、溝幅が10〜400μm程度の中間コンタクト層分離溝を形成する場合、走査速度が20mm/s以上のとき、接触圧は、50〜5000N/mmが適当である。それ以上の接触圧では、トップセル9の膜全部が剥離しやすくなる。
工具台35による溝形成工具37の下方への押付力や加工部の接触面積によって加工部39の中間コンタクト層11への接触圧が変化する。また走査速度が遅くなると同じ接触圧でもトップセル9の膜全部が剥離しやすくなる。したがって、工具台35による溝形成工具37の下方への押付力および走査速度を調整することによって、トップセル9の膜全部を除去しない中間コンタクト層分離溝23の形成が可能となる。
このように、中間コンタクト層11を構成するZnOは、加工部39よって削り取られて中間コンタクト層分離溝23が形成されるので、トップセル9に熱による影響を与えて、新たな電流漏れ経路を生じることなく中間コンタクト層11を分割することができる。これにより、中間コンタクト層11からの面方向への電流漏れを抑制、あるいは防止できるので、多接合型光電変換装置1の発電効率の低下を抑制できる。
なお、第二レール33にセルピッチの倍数の距離を開けて、複数の工具台35を設けてもよい。また、1つの工具台35にセルピッチCPの距離だけ隔てて、複数の溝形成工具37を設けてもよい。このようにすると、各工具台35によって同時並行して中間コンタクト層分離溝23の加工が行えるので、作業時間を短縮することができる。
次に、中間コンタクト層11の上に、プラズマCVD装置により、減圧雰囲気:3000Pa以下、基板温度:約200℃、プラズマ発生周波数:40MHz〜100MHzにて、ボトムセル13としての微結晶シリコン薄膜からなる微結晶p層膜/微結晶i層膜/微結晶n層膜を順次製膜する。
ボトムセル13を構成する各層は、微結晶p層:ホウ素(B)をドープした微結晶SiCを主成分とし膜厚10nm〜50nm、微結晶i層:微結晶Siを主成分とし膜厚1.2μm〜3.0μm、微結晶n層:リン(P)をドープした微結晶Siを主成分とし膜厚20nm〜50nmである。
その後、基板3をX−Yテーブルに設置して、レーザダイオード励起YAGレーザの第2高調波(532nm)を用いてパルス発振周波数を10〜20kHzとして加工速度に適切となるようにレーザパワーを調整して、透明電極層(第一電極)分離溝17の端部から横側約230μmの位置に溝幅約50μmの接続溝19を形成するようにレーザスクライブする。
ボトムセル13の上に、裏面電極層15としてAg膜/Ti膜をスパッタリング装置により製膜する。裏面電極層15は、Ag膜:200〜500nm、これを保護するものとして防食効果の高いTi膜:10〜20nmをこの順に積層する。ボトムセル13のn層と裏面電極層15との接触抵抗低減と光反射向上を目的に、ボトムセル13と裏面電極層15との間にGZO膜を膜厚:50〜100nm、スパッタリング装置により製膜して設けても良い。また、Ti膜に変えてAl膜:250nm以上350nm以下としてもよい。TiをAlとすることで、防食効果を保持しつつ、材料コストを低減することが可能となる。
その後、基板3をX−Yテーブルに設置して、レーザダイオード励起YAGレーザの第2高調波(532nm)を、用いて基板3側から入射する。レーザ光がトップセル9で吸収され、このとき発生する高いガス蒸気圧を利用して裏面電極層15が爆裂して除去される。パルス発振10〜20kHzとして加工速度に適切となるようにレーザパワーを調整して、透明電極分離溝17の端部から横側約380μmの位置に溝幅約50μmの裏面電極層分離溝21を形成するようにレーザスクライブする。
なお、本実施形態では、中間コンタクト層11のZnOを用いているが、これは中間コンタクト層11にSiOx膜などの透明導電酸化物やSiOx膜などを含有した結晶質Si膜のようなシリコン系膜を用いた場合でも、同様な効果を得ることができる。
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について図8〜図12を参照して説明する。
本実施形態の基本構成は、第一実施形態と同様であるが、第一実施形態とは、中間コンタクト層分離溝23の形態が異なっている。よって、本実施形態においては、相違点を主体として説明し、その他の重複するものについては説明を省略する。
なお、第一実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
中間コンタクト層分離溝23は、少なくとも一部が、第一電極層分離溝17と接続溝19の間に位置するように形成する必要がある。
図8は、本実施形態による製造方法を用いて製造された薄膜太陽電池モジュールを概略的に示す部分平面図である。図8(a)において、中間コンタクト層分離溝23は、透明電極分離溝17の端部からたとえば100μm離れた場所に、破線で示す中間コンタクト層分離溝23の端部が位置するように加工位置が設定されており、中間コンタクト層分離溝23をメカニカルスクライブ法によって、幅広く(たとえば150μm)形成したとする。後の工程である接続溝19(溝幅たとえば50μm)をレーザスクライブ法によって形成するときに、接続溝19は、透明電極分離溝17の端部からたとえば250μm離れた場所に接続溝19の端部が位置するように加工位置が設定される。
実際の加工の場合、接続溝19が中間コンタクト層分離溝23と一部で重畳することが起こりやすい。本実施形態によれば、中間コンタクト層分離溝23は中間コンタクト層の基板3側に隣接する下側層、すなわち第一の光電変換セル(アモルファスシリコン層)が残存するように形成される。そのため接続溝19が中間コンタクト層分離溝23と重畳したとしても、接続溝19の加工に支障は生じない。
しかも中間コンタクト層分離溝23は、最小幅でたとえば100μm程度残されているが、有効な溝幅が30μm程度あれば、中間コンタクト層の面方向の導電性を断つことが可能である。したがって図8(b)に示すように、接続溝19を中間コンタクト層分離溝23の方へ70μm近づける、すなわち、接続溝19を、透明電極分離溝17の端部からたとえば180μm離れた場所に接続溝19の端部が位置するように加工位置を設定したとしても、有効な溝幅が30μm程度確保できるため中間コンタクト層からの面方向への電流漏れを抑制できる。
このように、中間コンタクト層分離溝を、中間コンタクト層の面方向の導電性を断つことができる溝幅(たとえば30μm)以上に広く形成することにより、接続溝19の形成位置を透明電極分離溝17に近づけられる。それにより発電に寄与しない無効領域の長さをより小さくでき、発電効率を一層向上させることができる。
溝幅を広く加工する手段としては、幅広の加工部39を用いる方法があるが、大きい荷重が必要になることや、加工部39の膜への当たり方が局所でバラツキ、分離溝に途切れが生じる可能性がある。本実施形態では、図9に示されるように、たとえば、複数の加工部39を並べてスクライブする。これにより、中間コンタクト層11の分離の確実性を増すことができる。なお、この場合、複数の加工部39は必ずしも近接させる必要はなく、中間コンタクト層分離溝23は離隔した複数本の溝によって形成してもよい。
前述した図8においては、破線で示した溝加工予定位置に対して、実際の加工で位置ずれを起こしたときの加工位置を実線で表している(勿論、予定位置に位置ずれなく加工できることもある)が、中間コンタクト層分離溝の存在する範囲は、図10のように、第一電極層分離溝(透明電極分離溝)17と第二電極層分離溝(裏面電極分離溝)21との間に位置する。
メカニカルスクライブ装置の位置精度が向上した場合には、中間コンタクト層分離溝23は、透明電極分離溝17に対して平行に近づく。たとえば、図11に示されるように、中間コンタクト層分離溝23を溝幅150μm程度と第一実施形態のもの(30μm)に比べて大幅に広くし、透明電極分離溝17の端部から近接したところに形成されている。次の工程で、第二の光電変換セルを製膜した後、透明電極分離溝17の端部からたとえば100μm離れた場所に、従来の加工精度のレーザスクライブ法で溝幅50μmの接続溝を形成すると、実質的な中間コンタクト層分離溝の幅は、たとえば50〜150μmになる(裏面電極分離溝は図示せず)。これは、実質的に中間コンタクト層分離溝がない加工、すなわち中間コンタクト層がない単接合薄膜太陽電池モジュールの加工と同様の無効領域幅を得ることができる。これにより、発電効率を向上させることができる。
なお、中間コンタクト層分離溝形成において、加工精度がよくない場合、中間コンタクト層分離溝23は、図12に示されるように、透明電極分離溝17と裏面電極分離溝21を含む範囲(すなわち、たとえば、約0.5mmの無効領域25)を越えて、発電領域にまで形成されたとしても差し支えない。ただし、越える範囲が広いほど発電量は減少する。
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について図13を参照して説明する。
本実施形態は、第一実施形態と薄膜太陽電池モジュールの構造が異なるものである。よって、本実施形態においては、この相違点を主体として説明し、その他の重複するものについては説明を省略する。
なお、第一実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態は、サブストレート構造の薄膜シリコン系の薄膜太陽電池モジュール51に本発明を適用したものである。
図13は、本実施形態にかかる多接合太陽電池の製造方法を用いて製造されたサブストレート構造のシリコン系の薄膜太陽電池モジュール51の断面を概略的に示す部分断面図である。
薄膜太陽電池モジュール51は基板53上で2層タンデム型のユニットセル55が直列接続された構造とされている。
薄膜太陽電池モジュール51には、ステンレスなどの金属上に絶縁膜として酸化珪素膜または窒化珪素膜を形成した基板53を用いる。また、基板53としてポリイミドなどの絶縁性のポリマーフィルムやガラスをもちいてもよい。
基板53の上に裏面電極層(第一の電極層)57として、モリブデン(Mo)膜、および酸化亜鉛膜(ZnO)やITOなどの導電性酸化膜からなる積層膜が製膜されている。
裏面電極層57として、モリブデン(Mo)の代わりにチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)膜を用いてもよい。
裏面電極層57の上には、nip構造を有する微結晶シリコン(μc−Si)から構成される光電変換層であるボトムセル(下側層;第一の光電変換セル)59が製膜されている。ボトムセル59は、導電性の中間コンタクト層61より高抵抗であり、かつ、特定の波長域の光から光起電力効果により電力を発生させる。
ボトムセル59の上には、第一実施形態と同様の機能を有する中間コンタクト層61が製膜されている。
中間コンタクト層61は、たとえば、ガリウムをドープした酸化亜鉛(ZnO)膜を主成分として構成されている。
中間コンタクト層61の上には、nip構造を有するアモルファスシリコン(a−Si)から構成される光電変換層であるトップセル(上側層;第二の光電変換セル)63が製膜されている。
トップセル63は、ボトムセル59が変換する光の波長域とは異なる波長域の光を吸収して電力を発生させる。
トップセル63の上には、ZnOやITOなど導電性酸化膜のからなる透明電極層(第二の電極層)65が形成されている。
薄膜太陽電池モジュール51には、裏面電極層57の上に開口を有し基板53の上に底面を有する裏面電極層57を分割する裏面電極分離溝(第一電極分離溝)67と、透明電極層65とトップセル63との界面に開口を有し、裏面電極膜57とボトムセル59との界面に底面を有する接続溝69と、透明電極層65の表面に開口を有し、裏面電極層57とボトムセル59との界面に底面を有する透明電極分離溝(第二電極分離溝)71と、中間コンタクト層61を分離する中間コンタクト層分離溝73とが設けられている。
これら裏面電極分離溝67、接続溝69、透明電極分離溝71および中間コンタクト分離溝73は互いに平行に設けられ、図13の紙面に対して垂直な方向に延在している。
裏面電極分離溝67には、ボトムセル59を構成する材料が埋め込まれており、分割された裏面電極層57同士を電気的に絶縁している。透明電極分離溝71は隣り合うユニットセル55間で、ボトムセル59、中間コンタクト層61、トップセル63および透明電極層65を分割している。透明電極分離溝71は隣り合うユニットセル55間で、透明電極層65同士を電気的に絶縁している。
接続溝69は、裏面電極分離溝67と透明電極分離溝71との間に設けられている。接続溝69は透明電極層65を構成する材料で埋められており、透明電極層65と隣のユニットセル55の裏面電極層57とを電気的に接続している。すなわち、隣り合うユニットセル55同士を電気的に直列に接続している。
中間コンタクト層分離溝73は、裏面電極分離溝(第一電極分離溝)67と接続溝69との間に設けられている。中間コンタクト層分離溝73は中間コンタクト層61とトップセル63との界面に開口を有し、中間コンタクト層61とボトムセル59との界面に底面を有している。
中間コンタクト層分離溝73には、トップセル63を構成する材料が埋め込まれており、分割された中間コンタクト層61同士を電気的に絶縁している。裏面電極分離溝67から透明電極分離溝71までの部分は、発電に寄与しない無効領域75となる。
以下、この薄膜太陽電池モジュール1の製造工程について中間コンタクト層分離溝23の形成方法を主体に説明する。
まず、ステンレス板に酸化珪素絶縁膜をスパッタ法で形成した基板53を用い、その上に裏面電極層57としてモリブデン膜を膜厚300nm〜2μm、続いて膜厚50〜100nmのZnO膜をスパッタ法で製膜する。
このとき、裏面電極層57の表面は適当な凹凸のあるテクスチャーが形成される。
その後、基板53をX−Yテーブルに設置して、YAGレーザの基本波(1064nm)を用いて、裏面電極層57の基板側または膜面側から入射して、裏面電極分離溝67を形成する。
裏面電極分離溝67は、所定幅50μmで、約6mm〜15mmピッチで短冊状にレーザスクライブされる。
次いで、プラズマCVD装置により、基板温度が約200℃にてボトムセル59を構成する微結晶シリコンからなるn層膜/i層膜/p層膜を順次製膜する。
このとき、裏面電極分離溝67は、ボトムセル59で埋められる。これらの層の構成および厚さは、第一実施形態とほぼ同様である。
次に、ボトムセル59の上に、Ga(ガリウム)をドープしたZnO(GZO)膜を膜厚:20nm〜100nm、たとえば、スパッタ法により製膜し、中間コンタクト層61を形成する。
続いて、第一実施形態と同様に、基板53をテーブル27に設置して、裏面電極分離溝67の横側約100μmの位置に、テーブル27の上方に設置されたメカニカルスクライブ装置29によってメカニカルスクライブ法を用いて幅30μmの中間コンタクト層分離溝73を形成する。この場合、中間コンタクト層の基板側に隣接する下側層(第一の光電変換セル)が残存するように中間コンタクト層分離溝を形成するので、第二の光電変換セルであるアモルファスシリコンセルの低抵抗のn型微結晶膜が裏面電極層(第一の電極層)に接することがなく、第一の電極層への電流漏れ経路は生じない。
次に、中間コンタクト層61の上に、プラズマCVD装置により、基板温度:約200℃にて、トップセル63として、微結晶シリコン薄膜からなるn層膜/アモルファスシリコンi層膜/アモルファスシリコンp層膜を順次製膜する。これらの層の構成および厚さは、第一の実施例とほぼ同様である。
その後、基板53をX−Yテーブルに設置して、膜面側からトップセル63、中間コンタクト層61およびボトムセル59をメカニカルスクライブすることで、裏面電極分離溝67の横側約230μmの位置に溝幅約50μmの接続溝69を形成する。
なお、YAGレーザの基本波(1064nm)を用いて基板側から照射することでレーザスクライブによって接続溝69を形成してもよい。
続いて、トップセル63の上に、透明電極層65としてガリウムをドープしたZnO膜やITO膜などをスパッタ法で、膜厚200〜700nm程度製膜する。
その後、基板53をX−Yテーブルに設置して、膜面側から透明電極層65、トップセル63、中間コンタクト層61およびボトムセル59をメカニカルスクライブすることで、裏面電極分離溝67の横側380μmの位置に溝幅約50μmの透明電極分離溝71を形成する。
なお、YAGレーザの基本波(1064nm)を用いて基板側から照射することでレーザスクライブによって透明電極分離溝71を形成してもよい。
このようにして形成された薄膜太陽電池モジュール1は、ボトムセル59に熱影響を与えずに中間コンタクト層61を分割することができるので、中間コンタクト層61からの面方向への電流漏れを抑制、あるいは防止できる。これにより、薄膜太陽電池モジュール1の発電効率の低下を抑制することができる。
なお、第二実施形態のように中間コンタクト層分離溝73を幅広く形成することにより、発電に寄与しない無効領域75の長さをより小さくできるので、発電効率を一層向上させることができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
本発明の第一実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造された薄膜太陽電池モジュールの断面を概略的に示す部分断面図である。 本発明の第一実施形態にかかる多接合型光多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造された薄膜太陽電池モジュールの断面を概略的に示す電変換装置の製造方法の実施状況を示す部分断面図である。 本発明の第一実施形態にかかるメカニカルスクライブ装置を示す斜視図である。 本発明の第一実施形態にかかる溝形成工具の先端部分を示す部分斜視図である。 本発明の第一実施形態にかかるメカニカルスクライブ装置の作用を示す部分平面図である。 本発明の第一実施形態にかかる中間コンタクト層分離溝の状態を示す部分平面図である。 本発明の第一実施形態にかかる中間コンタクト層分離溝の状態を示す部分横断面図である。 本発明の第二実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造された薄膜太陽電池モジュールを概略的に示す部分平面図である。 本発明の第二実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造された薄膜太陽電池モジュールの断面を概略的に示す部分断面図である。 本発明の第二実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造された別の態様の薄膜太陽電池モジュールの断面を概略的に示す部分断面図である。 本発明の第二実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造されたさらに別の態様の薄膜太陽電池モジュールを概略的に示す部分平面図である。 本発明の第二実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造されたさらに別の態様の薄膜太陽電池モジュールの断面を概略的に示す部分断面図である。 本発明の第三実施形態にかかる多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造された薄膜太陽電池モジュール(サブストレート構造)の断面を概略的に示す部分断面図である。 従来の薄膜太陽電池モジュール(スーパーストレート構造)の断面を概略的に示す部分断面図である。 従来の多接合型薄膜太陽電池モジュールを概略的に示す部分平面図である。
符号の説明
1 薄膜太陽電池モジュール
3 基板
7 透明電極層(第一の電極層)
9 トップセル(第一の光電変換セル)
11 中間コンタクト層
13 ボトムセル(第二の光電変換セル)
15 裏面電極層(第二の電極層)
17 透明電極分離溝
19 接続溝
21 裏面電極分離溝
23 中間コンタクト層分離溝
25 無効領域
53 基板
57 裏面電極層(第一の電極層)
59 ボトムセル(第一の光電変換セル)
61 中間コンタクト層
63 トップセル(第二の光電変換セル)
65 透明電極層(第二の電極層)
67 裏面電極分離溝
69 接続溝
71 透明電極分離溝
73 中間コンタクト層分離溝
75 無効領域

Claims (4)

  1. 中間コンタクト層にメカニカルスクライブ法によって導電を分離する溝である中間コンタクト層分離溝を形成する中間コンタクト層分離溝形成工程を備えていることを特徴とする多接合型光電変換装置の製造方法。
  2. 前記中間コンタクト層分離溝形成工程において、前記中間コンタクト層分離溝は前記中間コンタクト層の基板側に隣接する下側層が残存するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の多接合型光電変換装置の製造方法。
  3. 前記中間コンタクト層分離溝形成工程において、前記中間コンタクト層分離溝は、前記中間コンタクト層の基板側に位置する第一の電極層に形成される第一電極層分離溝と、前記中間コンタクト層の基板と反対側に位置する第二の電極層に形成される第二電極層分離溝との間に位置するように設けられ、前記中間コンタクト層分離溝の少なくとも一部が、前記第一電極層分離溝と、前記第一の電極層および前記第二の電極層が電気的に接合する接続溝と、の間に位置するように形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多接合型光電変換装置の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された多接合型光電変換装置の製造方法を用いて製造されていることを特徴とする多接合型光電変換装置。
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