JP2009250874A - 物理量センサおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】二つの基板30,40と、二つの基板30,40の間に設けられ二つの基板30,40と接合された可動電極20と、を備え、可動電極20は、弾性変形可能なダイアフラム部23を有し、二つの基板30,40うち一枚は、ダイアフラム部23に対向する検出面30Aに検出電極31を有する電極基板であり、ダイアフラム部23と検出電極31との間の静電容量変化を検出する物理量センサであって、二つの基板30,40と可動電極20とを接合する際の接合温度と室温との間における、二つの基板30,40の熱膨張係数は、可動電極20より小さく、物理量センサを使用する温度範囲内において、可動電極20の熱膨張係数は、第一基板30と第二基板40との間の値である。
【選択図】図1
Description
静電容量型の圧力センサ10は、図1および2に示すように、導電性を有する可動電極20と、この可動電極20の周囲の厚肉部21に接合されたガラス基板である第一基板30および第二基板40と、第一基板30に設けられた一対の検出電極31と、を備える。
すると、可動電極20と第一基板30に設けられた一対の検出電極31との間の静電容量が変化し、この変化量が電気的に処理されることで圧力が計測される。
特許文献2においては、第一基板30と第二基板40とを、異なる熱膨張係数を有する材料で形成することで、周囲温度や静圧の変化による非線形な外乱歪みを軽減させている。
接合には陽極接合等の一般的な接合方法を用いることができるが、このような接合に際しては、可動電極20、第一基板30および第二基板40が高温(例えば、400℃程度)に加熱される。
ここで、接合により加熱された圧力センサ10を室温まで冷ます際に、可動電極20の熱膨張係数と第一基板30および第二基板40の熱膨張係数とが異なることから、可動電極20に撓みが発生するおそれがあった。
可動電極20が撓んでいると、特に、静電容量型の圧力センサ10では、可動電極20と検出電極31との間の距離、静電容量が変化して、温度特性が悪化する。
さらには、可動電極20と第一基板30または第二基板40が接合されてしまい、歩留まりが低下して製造コストが増加するおそれがある。
また、圧力センサ10の小型化を図る場合、必然的に可動電極20のサイズが小さくなるが、小さな可動電極20で圧力に対する変位を十分に得るためにも、可動電極20を薄くする必要がある。
しかし、可動電極20を薄くした場合、陽極接合時に可動電極20が静電引力により第一基板30または第二基板40に引き寄せられ易くなる。また、周囲温度変化によって生じる各部品の熱膨張による外乱歪みを受けやすくなり、温度特性が悪化する原因となる。
したがって、従来までの構造では、温度特性を維持しながら高感度化や小型化するのに限界があった。
本発明の物理量センサは、二つの基板と、前記二つの基板の間に設けられ前記二つの基板と接合された可動電極と、を備え、前記可動電極は、弾性変形可能なダイアフラム部を有し、前記二つの基板の少なくとも一枚は、前記ダイアフラム部に対向する面に少なくとも一つ以上の検出電極を有する電極基板であり、前記ダイアフラム部と前記検出電極との間の静電容量変化を検出する物理量センサであって、前記二つの基板と前記可動電極とを接合する際の接合温度と室温との間において、前記二つの基板の熱膨張係数は、前記可動電極の熱膨張係数より小さく、前記物理量センサを使用する温度範囲内において、前記二つの基板は、互いに異なる熱膨張係数を有する第一基板および第二基板であり、前記可動電極の熱膨張係数は、前記第一基板の熱膨張係数と前記第二基板の熱膨張係数との間の値であることを特徴とする。
よって、室温まで冷ました状態においては、可動電極が二つの基板により外側に引っ張られることとなる。
この引張り力(プリテンション)の存在により、ダイアフラム部の撓みが防止され、温度外乱歪みを軽減することができる。したがって、ダイアフラム部を薄くすることが可能となり、高感度かつ小型で安価な物理量センサを提供することができる。
これにより、物理量センサに温度変化があった場合、第一基板と第二基板とは、可動電極に対して互いに逆方向の力を作用させることになる。
一方、第二基板は可動電極よりも小さく熱膨張する。すると、相対的に、第二基板は、可動電極を内側に圧縮する力を作用させることとなる。
ここで、第一基板からの引っ張り力と第二基板からの圧縮力が相殺されるので、周囲温度変化によるダイアフラム部の外乱歪みが防止できる。
よって、ダイアフラム部をより薄くすることが可能となり、高感度かつ小型で安価な物理量センサを提供することができる。
本発明によれば、接合工程において、検出電極と可動電極とを同電位とするので、検出電極と可動電極との間に静電引力が生じなくなり、ダイアフラム部が電極基板側に引き寄せられることを防止できる。
したがって、ダイアフラム部に撓みが生じることを防止し、安定した陽極接合を実施することができる。また、温度外乱歪みが軽減されるので、ダイアフラム部を薄くすることが可能となり、高感度かつ小型で安価な物理量センサを提供することができる。
したがって、本発明によれば、基板ウェーハに設ける接合用電極の数を減らして、効率的に陽極接合を実施することができる。
また、物理量センサを使用する温度範囲において、可動電極の熱膨張係数が、第一基板の熱膨張係数と第二基板の熱膨張係数との間の値なので、物理量センサに温度変化があった場合に、第一基板および第二基板から可動電極に作用する力が相殺され、周囲温度変化によるダイアフラム部の外乱歪みが防止できる。
本発明の物理量センサは、圧力センサであり、部品の熱膨張係数を除けば、従来の圧力センサと同様であるから、上述の図1および図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る圧力センサ10の分解斜視図であり、図2は、圧力センサ10のII−II線断面図である。
圧力センサ10は、図1および図2に示すように、第一基板30と、第二基板40と、二つの基板30,40の間に設けられ二つの基板30,40と接合された可動電極20と、を備える。
すなわち、可動電極20は、第一基板30と対向する面20Aと、この面20Aとは反対側の面つまり第二基板40と対向する面20Bとを有する。図1に示すように、面20Aのうちダイアフラム部23の上面23Aは、厚肉部21の上面21Aよりも一段低く凹んでおり、面20Bのうちダイアフラム部23の下面23Bは、厚肉部21の下面21Bよりも凹んで(図1において高くなって)いる。
したがって、図2に示すように、ダイアフラム部23と第一基板30および第二基板40との間には、空隙が形成されており、ダイアフラム部23は、第一基板30に対して弾性変形可能とされている。
このような可動電極20は、導電性が付与されたシリコン、例えば、単結晶シリコンから形成されている。
電極基板である第一基板30は、検出面30Aに設けられた検出電極31と、上面30Bに設けられた第一信号取出部22および第二信号取出部34,35と、を備える。
第二信号取出部34,35は、図1および図2に示すように、スルーホール36,37を介して検出電極31に導通されている。
このような第一基板30は、例えば、アルミノ珪酸系ガラス等で形成される。
アルミノ珪酸系ガラスとしては、例えば、特開平4−83733号公報や特開2001−072433号公報に記載のガラスを利用することができる。
例えば、SiO250質量%以上70質量%以下、Al2O314質量%以上28質量%以下、Na2O1質量%以上5質量%以下、MgO1質量%以上13質量%以下を含み、前記成分の合量が少なくとも80質量%以上であるガラスや、実質的にNa2Oを含有せず、かつモル%表示でLi2Oが4〜8%含まれているガラス等が挙げられる。
具体的には、例えば、HOYA CANDEO OPTRONICS社製「SD2(商品名)」や、AGCテクノガラス社製「SW−Y(商品名)」等が挙げられる。
第二信号取出部34,35は、検出電極31と同様にチタン等の導電性を有する金属で形成されている。中央電極32と導通された第二信号取出部34および、周辺電極33と導通された第二信号取出部35は、第一基板30の対向する両端縁部分まで引き出された引出部38を備えている。
可動電極20のダイアフラム部23と第一基板30との間の空隙は、各スルーホール36,37を通じて大気に開放されている。
また、第二基板40の一側面側は、可動電極20および第一基板30の側面よりも延出されて、延出部42とされている。
第二基板40は、可動電極20と接合される際の接合温度と室温との間における熱膨張係数が、可動電極20の熱膨張係数より小さい。また、第二基板40は、圧力センサ10の使用温度範囲内における熱膨張係数が、可動電極20より大きい。
このような第二基板40は、例えば、硼珪酸系ガラス(コーニング社パイレックス(登録商標)、ショット社TEMPAX Float(登録商標)等)等で形成される。
これらワイヤボンドパッド51,52,53を介して、第一信号取出部22、第二信号取出部34,35と信号処理用回路(図示省略)等の所定箇所とが導通される。
図1および図2を参照して圧力センサ10の動作を説明する。
圧力センサ10では、圧力導入孔41に測定圧力が導入されると、ダイアフラム部23が湾曲するように弾性変形して、ダイアフラム部23と検出電極31との間の距離が変化し、その距離に反比例して静電容量が変化する。
この時、第一信号取出部22、第二信号取出部34,35およびワイヤボンドパッド51,52,53を介して、ダイアフラム部23および検出電極31と導通されている信号処理用回路等が、ダイアフラム部23と検出電極31との間の静電容量を検出・処理し、圧力が計測される。
この双方の静電容量変化の差を求めることにより、圧力に対する電気信号を取り出すことができるようになる。また、この双方の静電容量変化を用いて演算(例えば、静電容量変化の差/静電容量変化の和)を実施すれば、温度・湿度の変化や電気的ノイズによる誤差影響を低減することができ、より正確な圧力検出が可能となる。
次に、圧力センサ10の製造方法を説明する。
本実施形態の圧力センサの製造方法は、電極基板(第一基板30)に形成された検出電極31(図3では図示省略。図1および図2参照。)と可動電極20とを同電位にした状態において、電極基板と可動電極20とを互いに陽極接合する接合工程を備える。
接合工程は、積層工程と、電圧印加工程と、回路形成工程と、切断工程と、を有する。
接合工程では、図3(A)および(B)にしめすような、複数の第一基板30が一体に形成された第一基板ウェーハ80と、複数の可動電極20が一体に形成されたダイアフラムウェーハ70と、複数の第二基板40が一体に形成された第二基板ウェーハ90と、を積層し、陽極接合した後、切断する。
以下、ウェーハの構成および各工程について詳細に説明する。
ダイアフラムウェーハ70は、シリコンウェーハをエッチング等で加工し、複数のダイアフラム部23が所定間隔で並んだ形状としたものである(図3(B)参照)。
また、接合用電極83は、引出部38と交わらないように格子状に形成されている。
接合用電極83は、引出部38に沿って延びる幹線電極部83Aと、この幹線電極部83Aと直交して延びる支線電極部83Bとで構成されている。
切断線87は、後述する切断工程において、積層ウェーハ60を切断する位置として設定された線である。切断線87は、幹線電極部83A上を通る切断線87Aと、この切断線87Aと直交しかつ支線電極部83B上を通る切断線87Bとで構成されている。
なお、接合用電極83は、図3に示すように、切断線87(87A,87B)に沿って設けられている。
図4は、積層工程および電圧印加工程における各ウェーハ70,80,90の概略図である。
積層工程は、第一基板ウェーハ80と、ダイアフラムウェーハ70と、第二基板ウェーハ90と、を積層する工程である。具体的には、図4に示すように、各ウェーハ70,80,90を、導電性を有する陽極接合用の載置台100上に順に積層する。
電圧印加工程は、第一基板ウェーハ80の接合用電極83に電圧を印加して各ウェーハ70,80,90を互いに陽極接合する工程である。
具体的には、ダイアフラムウェーハ70と引出部38がプラス、接合用電極83と載置台100とがマイナスとなるように、高温下で高電圧を印加し(例えば300〜450℃、300〜1000V)、各ウェーハ70,80,90を陽極接合する。これにより、積層ウェーハ60が形成される。
このとき、引出部38が第二信号取出部34,35に接続されているため、可動電極20と検出電極31とが同電位となる(図1および図2参照。)。よって、可動電極20と検出電極31との間に静電引力が生じなくなり、ダイアフラム部23が電極基板(第一基板30)側に引き寄せられることを防止し、適切に陽極接合を実施することができる。
本実施形態では、電圧印加工程の後、切断工程に先立ち、第一信号取出部22とワイヤボンドパッド51,52,53を形成する回路形成工程が実施される。
図5に回路形成工程および切断工程における積層ウェーハ60の平面図を、図6に断面図を示す。
次に、接合用電極83の幹線電極部83Aの幅寸法よりも大きい所定の刃幅寸法を有する切断刃等を用いて、隣接する第二信号取出部34同士の間の切断線87Aに沿って溝加工する。これにより、幹線電極部83A(図5における破線)を削り取るとともに溝89を形成する。
この溝89の内面には、図6に示すように、ダイアフラムウェーハ70および第一基板ウェーハ80の切断面70A,80Aがそれぞれ露出している。
このとき、図5に二点鎖線で示すように、第一基板ウェーハ80の各切断線87A,87Bが交差する部分、つまりセンサチップ61の角部30Dに相当する部分が露出するように、略長方形のマスク開口92を有するメタルマスク91を配置する(図6参照)。
そして、マスク開口92に対して、例えば、上方斜め45°方向から、チタン等の導電性の蒸着材料を供給する(図6における破線矢印参照)。
これにより、溝89の底面および溝89の両側面、すなわちダイアフラムウェーハ70の各切断面70Aおよび第一基板ウェーハ80の各切断面80A、およびセンサチップ61の角部30Dに蒸着膜22Aが形成される。
なお、蒸着に際しては、積層ウェーハ60を鉛直軸回りに回転させて行うことが好ましい。
切断工程は、積層ウェーハ60を、格子状の切断線87(87A,87B)に沿って切断し複数のセンサチップ61を得る工程である。
具体的には、溝89を加工した切断刃よりも刃幅寸法が小さくかつ接合用電極83の幅よりも広い切断刃(例えば、図6において一点鎖線で示す切りしろ93に対応した刃幅の切断刃)を用い、切断線87Aに沿って、蒸着膜22Aおよび第二基板ウェーハ90を切断する(本切断)。
さらに、同じ切断刃を用いて他の全ての切断線87A,87Bに沿って積層ウェーハ60を切断する。
この切断により、接合用電極83の支線電極部83Bは完全に取り除かれる。また、支線電極部83Bの延長上に形成された、引出部38の一部も取り除かれるため、引出部38に接続された信号取出部34,35が電気的に絶縁され、圧力センサ10として完成する。
本実施形態の圧力センサ10の断面図である図7を参照して、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態の圧力センサ10では、接合温度と室温との間における、二つの基板30,40の熱膨張係数を、可動電極20の熱膨張係数よりも小さくしている。
これにより、圧力センサ10の製造時、可動電極20と二つの基板30,40との接合により加熱された圧力センサ10を室温まで冷ます際に、可動電極20の収縮は、二つの基板30,40の収縮よりも大きくなる。
よって、室温まで冷ました状態においては、図7(A)に示すように、可動電極20が二つの基板により外側に引っ張られることとなる。
この引張り力(プリテンション)の存在により、ダイアフラム部23の撓みが防止され、温度外乱歪みを軽減することができる。したがって、ダイアフラム部23を薄くすることが可能となり、高感度かつ小型で安価な圧力センサ10を提供することができる。
これにより、圧力センサ10に温度変化があった場合、第一基板30と第二基板40とは、可動電極20に対して互いに逆方向の力を作用させることになる。
図7(B)において、可動電極20より熱膨張係数の小さい第一基板30は、可動電極20よりも小さく熱膨張する。すると、相対的に、第一基板30は、可動電極20を内側に圧縮する力を作用させることとなる。
一方、可動電極20より熱膨張係数の大きい第二基板40は、可動電極よりも大きく熱膨張する。すると、相対的に、第二基板40は、可動電極20を外側に引っ張る力を作用させることとなる。
第一基板30からの圧縮力と第二基板40からの引っ張り力が相殺されるので、図7(C)に示すように、可動電極20に対するプリテンションが維持され、周囲温度変化によるダイアフラム部23の外乱歪みが防止できる。
この点について、図8を参照して説明する。
ここで、第一基板30および第二基板40は、本実施形態と同様の特性を備える。すなわち、物理量センサ10を使用する温度範囲内における、可動電極20の熱膨張係数に対し、第一基板30の熱膨張係数が小さく、また、第二基板の熱膨張係数が大きい。
図8(A)において、点線は、+ΔT℃だけ温度変化した場合のダイアフラム部23の変形を示す。
このモーメントによる影響がダイアフラム部23に伝わり、ダイアフラム部23が図8(A)の点線に示す様に第二基板40側に変形する。そして、このような変形が、圧力センサ10の出力誤差の原因となる。
ここで、第一基板30および第二基板40は、本実施形態と同様の特性を備える。
このような圧力センサ10でも、+ΔT℃の温度変化が起きると、第一基板30は小さく、第二基板40は大きく熱膨張し、モーメントが発生する。
このモーメントによる影響がダイアフラム部23に伝わり、ダイアフラム部23が図8(B)の点線に示す様に第二基板40側に変形する。そして、このような変形が、圧力センサ10の出力誤差の原因となる。
本実施形態の圧力センサ10においても、可動電極20の厚肉部21にモーメントが発生すると考えられる。
しかし、本実施形態の圧力センサ10では、深い凹部25の底面は面積が大きく、浅い凹部24の底面は小さく形成されているので、厚肉部21のモーメントによる影響がダイアフラム部23に伝わりにくい。このため、ダイアフラム部23の変形が発生しにくく、圧力センサ10の出力誤差を防止することができる。
なお、本実施形態とは逆に、第一基板30の熱膨張係数が可動電極20の熱膨張係数に対して大きく、第二基板40の熱膨張係数が可動電極20の熱膨張係数に対して小さい場合でも、厚肉部21のモーメントによる影響はダイアフラム部23に伝わりにくく、圧力センサ10の出力誤差を防止することができる。
したがって、ダイアフラム部23に撓みが生じることを防止し、安定した陽極接合を実施することができる。また、温度外乱歪みが軽減されるので、ダイアフラム部23を薄くすることが可能となり、高感度かつ小型で安価な圧力センサ10を提供することができる。
本実施形態では、第一基板ウェーハ80の接合用電極83が切断線87に沿って設けられ、一つの接合用電極83が隣接する二つのセンサチップ61に共有されている。これにより、少ない接合用電極83で、効率的に接合工程を実施することができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
また、第一基板30の材質と第二基板40の材質とを、本実施形態と逆にしてもよい。
この場合でも、圧力センサ10を使用する温度範囲内において、可動電極20の熱膨張係数が第一基板30の熱膨張係数と第二基板40の熱膨張係数との間の値となるので、第一基板30および第二基板40から可動電極20に作用する力が相殺され、周囲温度変化によるダイアフラム部23の外乱歪みが防止される。
以下に、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、実施例で使用したアルミノ珪酸系ガラスおよび硼珪酸系ガラスの温度による伸び率を、単結晶シリコンの伸び率を基準に示したグラフを、図9に示す。
図9において、室温と、二つの基板と可動電極を接合する際の温度(例えば、300〜450℃)とを結んだ直線の傾きは、単結晶シリコンが0であるのに対し、アルミノ珪酸系ガラスおよび硼珪酸系ガラスはマイナス(右下がり)であることがわかる。
即ち、室温〜接合温度間では、単結晶シリコンに比べアルミノ珪酸系ガラス及び硼珪酸系ガラスの熱膨張係数は小さくなる。
第一基板30として、アルミノ珪酸系ガラス(HOYA CANDEO OPTRONICS社製「SD2(商品名)」)を、第二基板40として、硼珪酸系ガラス(コーニング社パイレックス(登録商標))を使用した。可動電極20としては単結晶シリコンを使用し、周辺温度変化による歪みを低減させるためダイアフラム部23の上面23Aを下面23Bよりも小さく形成した。そして、上述の実施形態の製造方法により、大きさ:約3.6mm×3.6mm、ダイアフラム部23の厚さ:約27ミクロンの圧力センサ10を製造した。
第一基板30および第二基板40として、硼珪酸系ガラス(コーニング社パイレックス(登録商標))を使用した以外は、実施例1と同様にして圧力センサ10を製造した。
なお、硼珪酸系ガラス(コーニング社パイレックス(登録商標))は、接合温度と室温との間における熱膨張係数が、可動電極20の熱膨張係数よりも小さく、圧力センサ10を使用する温度範囲内における熱膨張係数が、可動電極20の熱膨張係数よりも大きい。
第一基板30および第二基板40として、アルミノ珪酸系ガラス(HOYA CANDEO OPTRONICS社製「SD2(商品名)」)を使用した以外は、実施例1と同様にして圧力センサ10を製造した。
なお、アルミノ珪酸系ガラスは、接合温度と室温との間および圧力センサ10を使用する温度範囲内における熱膨張係数が、可動電極20の熱膨張係数よりも小さい。
実施例1、比較例1,2で製造した圧力センサ10について、使用温度範囲での圧力センサ10のゼロ点温度特性およびスパン温度特性を評価した。
ゼロ点(印加圧力ゼロの時のセンサ出力)温度特性は、20℃における圧力センサ10のゼロ点と温度変化させたときの圧力センサ10のゼロ点の差を、20℃における圧力センサ10のスパン(定格圧力(5kPa)印加時のセンサ出力と印加圧力ゼロの時のセンサ出力との差)に対する百分率(ゼロ点変化率、%)で評価した。
スパン(定格圧力印加時のセンサ出力と印加圧力ゼロの時のセンサ出力との差)温度特性は、20℃における圧力センサ10のスパンと温度変化させた時の圧力センサ10のスパンの差を、20℃における圧力センサ10のスパンに対する百分率(スパン変化率、%)で評価した。
図10から、実施例1、比較例1,2の圧力センサ10は、いずれもゼロ点変化率が低く、ダイアフラム部23の撓みが防止され、温度外乱歪みが軽減されていることがわかる。
図11から、実施例1の圧力センサ10では、周囲に温度変化があった場合でも、第一基板30および第二基板40から可動電極20に作用する力が相殺され、ダイアフラム部23の外乱歪みが防止できることがわかる。
20 可動電極
23 ダイアフラム部
30 第一基板
31 検出電極
40 第二基板
70 ダイアフラムウェーハ
80 第一基板ウェーハ
83 接合用電極
87 切断線
90 第二基板ウェーハ
Claims (4)
- 二つの基板と、前記二つの基板の間に設けられ前記二つの基板と接合された可動電極と、を備え、
前記可動電極は、弾性変形可能なダイアフラム部を有し、
前記二つの基板の少なくとも一枚は、前記ダイアフラム部に対向する面に少なくとも一つ以上の検出電極を有する電極基板であり、
前記ダイアフラム部と前記検出電極との間の静電容量変化を検出する物理量センサであって、
前記二つの基板と前記可動電極とを接合する際の接合温度と室温との間において、前記二つの基板の熱膨張係数は、前記可動電極の熱膨張係数より小さく、
前記物理量センサを使用する温度範囲内において、
前記二つの基板は、互いに異なる熱膨張係数を有する第一基板および第二基板であり、
前記可動電極の熱膨張係数は、前記第一基板の熱膨張係数と前記第二基板の熱膨張係数との間の値である
ことを特徴とする物理量センサ。 - 請求項1に記載の物理量センサであって、
前記可動電極は、前記二つの基板に対向する面それぞれに凹部を有し、
前記ダイアフラム部は、二つの前記凹部の底面の間に位置する薄肉部であり、
二つの前記凹部の内の一方は、他方の前記凹部よりも深く形成され、
前記一方の凹部の底面の面積は、前記他方の凹部の底面の面積よりも大きい
ことを特徴とする物理量センサ。 - 請求項1または請求項2に記載の物理量センサの製造方法であって、
前記電極基板に形成された前記検出電極と前記可動電極とを同電位にした状態において、前記電極基板と前記可動電極とを互いに陽極接合する接合工程を備える
ことを特徴とする物理量センサの製造方法。 - 請求項3に記載の物理量センサの製造方法において、
前記接合工程は、
複数の前記基板が一体に形成された基板ウェーハと、複数の前記可動電極が一体に形成されたダイアフラムウェーハと、を積層する積層工程と、
前記基板ウェーハに所定のパターンで形成された接合用電極に電圧を印加して前記基板ウェーハと前記ダイアフラムウェーハとを互いに陽極接合する電圧印加工程と、
前記電圧印加工程で陽極接合された前記基板ウェーハおよび前記ダイアフラムウェーハを切断線に沿って切断する切断工程と、を有し、
前記接合用電極の少なくとも一部は、前記切断線に沿って設けられている
ことを特徴とする物理量センサの製造方法。
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