しかしながら、上記従来技術のように、室内機と吹出し口とを管状のダクトでつなぐ一般的なダクト構造を採用した場合、直管部分における直管抵抗や、曲がり部分における局部抵抗に起因して大きな圧力損失が発生する。このため、その圧力損失に伴って空調性能が低下してしまうという問題が生じる。
そこで、本発明は、良好な空調性能が得られ、しかも、様々な空調状態を作り出して空調の利便性を高めることができる建物の空調設備、及びそれを備えた建物を提供することを主たる目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
すなわち、手段1の空調設備は、扁平状に拡張され、かつその拡張方向に並んで設けられた複数の部屋裏空間部を有する建物に適用され、前記複数の部屋裏空間部の総体である裏空間の温度を調整する温度調整手段と、前記部屋裏空間部の熱を、同空間部と対応づけられた部屋に供給して当該部屋を空調する空調熱供給手段と、を備えている。
この手段1によれば、温度調整手段により、複数の部屋裏空間部の総体である裏空間の温度が調整される。そして、部屋裏空間部がそれぞれ有する熱は、空調熱供給手段によって空調対象となる部屋に供給され、それにより当該部屋が空調される。この場合、部屋裏空間部は扁平状に拡張されているため、温度調整の際に空調空気を送風する場合、その送風時の圧力損失が低減される。このため、従来技術のように空調用配管(管状ダクト)だけで送風を実施する場合に比べ、圧力損失を低減させて空調性能を向上させることができる。また、裏空間の温度調整により、例えば裏空間全域で温度を均一化させたり、一部の部屋裏空間部の温度を他と異ならせたりすることが可能となる。そして、かかる温度調整の結果は空調対象となる部屋の空調状態に反映される。このため、裏空間の温度調整を実施することで様々な空調状態を作り出し、空調の利便性を高めることができる。
手段2では、上記手段1において、前記複数の部屋裏空間部は、隣接して配置されたもの同士で空気流通可能となっているとともに、前記温度調整手段は、前記複数の部屋裏空間部の一部に空調空気を導入する空調装置と、前記導入された空調空気をそれが導入されていない他の部屋裏空間部へ搬送可能とする空気搬送設備と、を備えている。
この手段2によれば、空気搬送設備により、一部の部屋裏空間部に導入された空調空気をそれが導入されていない他の部屋裏空間部に搬送すれば、裏空間全域での温度均一化や、特定の部屋裏空間部を狙った温度調整を行える。この場合、すべての部屋裏空間部に空調空気を導入しなくても裏空間の温度調整が可能となる点で、温度調整を実施する設備構成を簡素化できる。
手段3では、上記手段2において、前記空気搬送設備は、すべての部屋裏空間部に通ずる循環経路で空気循環を生じさせるファン装置を備えている。
この手段3によれば、一部の部屋裏空間部に導入された空調空気は、ファン装置により、すべての部屋裏空間部に通ずる循環経路で空気循環されるため、その導入された空調空気の偏りを防ぎ、裏空間全域で温度を均一化させることができる。
手段4では、上記手段2又は3において、前記空気搬送設備は、前記空調装置の吹出し口と吸込み口とが異なる部屋裏空間部に設置された設備であるとした。
この手段4によれば、空調装置の吹出し口と吸込み口とが異なる部屋裏空間部に設置されているため、吸込み口に作用する吸引力により、複数の部屋裏空間部をまたいで吹出し口から吸込み口に至る自然気流が形成される。この自然気流により空調空気が搬送されるため、導入された空調空気の偏りを防ぎ、空気流が生じる領域内で温度を均一化させることができる。
手段5では、上記手段3又は4において、空調対象となる部屋ごとに設置され、その設置された部屋の温度を検出する温度検出手段を備え、前記温度調整手段は、前記温度検出手段の検出情報に基づき、部屋間の温度差が所定値以上の場合に前記空気搬送設備を駆動させている。
この手段5によれば、温度調整手段により、部屋間の温度差が所定値以上となるような温度均一化の必要性が高い場合には、空気搬送設備が自動的に駆動される。これにより、快適な空調状態を自動的に保つことができる。
手段6では、上記手段2において、前記空気搬送設備は、前記導入された空調空気を特定の部屋裏空間部に集中させる空気集中機能を有するものである。
この手段6によれば、空気搬送設備が有する空気集中機能により、一部の部屋裏空間部に導入された空調空気を、特定の部屋裏空間部に集中させることが可能となる。これにより、空調対象となる部屋の熱負荷や建物利用者の嗜好などの要求により、特定の部屋裏空間部に高い空調性能が求められる場合にも対処可能となって、空調性能を向上させることができる。
上記手段6において、空気搬送設備が有する空気集中機能の具体的構成としては、次の手段7の構成を有することが好ましい。すなわち、前記空気搬送設備は、前記隣接する部屋裏空間部同士の空気流通部にそれぞれ設けられて同空気流通部を開閉する開閉手段を備え、前記温度調整手段は、前記開閉手段を選択的に開閉させることにより前記特定の部屋裏空間部に空調空気を集中させる。これにより、空気集中機能を好適に実現できる。なお、開閉手段として具体的には、開閉弁等の弁装置の他、ファン装置等を採用してもよい。
手段8では、上記手段6又は7において、空調対象となる部屋ごとに設置され、その設置された部屋に人が存在するか否かを検出する人検出手段を備え、前記温度調整手段は、前記人検出手段により人が検知された部屋を空調対象とする部屋裏空間部に、空調空気を集中させるよう前記空気搬送設備を駆動させている。
この手段8によれば、温度調整手段により、導入された空調空気は人が検知された部屋を空調対象とする部屋裏空間部に集中するため、人がいる部屋が優先的に空調される。これにより、人の存在又は不存在にかかわらず、空調対象となるすべての部屋が無駄に空調されてしまうことをなくし、空調効率を高めて省エネルギ効果を得ることができる。
手段9では、上記各手段のいずれかにおいて、前記複数の部屋裏空間部は、隣接して配置されたもの同士で空気流通可能となっているとともに、前記温度調整手段は、前記複数の部屋裏空間部の一部に空調空気を導入する空調装置と、前記複数の部屋裏空間部にそれぞれ設置され、その設置された部屋裏空間部に熱媒体の熱を伝導して放射する熱伝導部材と、を備えている。
この手段9によれば、熱伝導部材により、それが設置された部屋裏空間部に熱が放射されるため、その熱によって部屋裏空間部の空調を補助することができる。特に、手段9では、空調装置から一部の部屋裏空間部に空調空気が導入され、その空調空気が他の部屋裏空間部まで拡散しにくい。このため、熱伝導部材によって空調補助が得られる効果は大きい。そして、このような空調補助が得られることにより、部屋裏空間部の総体である裏空間全域で温度の均一化を実現できる。
なお、前記熱伝導部材は、銅やアルミニウムなどの熱伝導率が高い材料より形成されることが好ましい。また、各部屋裏空間部に設置された熱伝導部材は他の熱伝導部材と順次接続された構造を有することが好ましい。これにより、熱伝導部材の熱媒体に熱を供給する熱源装置が設置される場合に、その熱源装置を共通化してコストを節減できる。
手段10では、上記各手段のいずれかにおいて、前記建物は、冷媒を利用したヒートポンプ装置を備えており、前記ヒートポンプ装置からの排出熱を、前記複数の部屋裏空間部のうち少なくとも一の部屋裏空間部に供給する排熱供給手段が設けられている。
この手段8によれば、排熱供給手段により、ヒートポンプ装置からの排出熱が少なくとも一の部屋裏空間部に供給される。ここで、ヒートポンプ装置におけるヒートポンプサイクルでは、大気から熱を吸収した後の冷気が排気エアとして排出される。このため、空調装置によって部屋裏空間部を冷房する場合に、その排気エアが有する冷熱を利用して冷房を補助することができる。そして、このような補助が得られることにより、ヒートポンプ装置の排出熱を有効活用して冷房効率を高め、省エネルギ化を促進できる。
手段11では、上記各手段のいずれかにおいて、前記温度調整手段は、前記複数の部屋裏空間部にそれぞれ設置され、その設置された部屋裏空間部に蓄えた熱を放熱可能な蓄熱部材と、前記各蓄熱部材に蓄熱用の熱を供給する熱源装置と、を備えている。
この手段11によれば、熱源装置から蓄熱部材に供給された熱がその蓄熱部材で蓄えられるとともに、その蓄えられた熱は蓄熱部材が設置された部屋裏空間部に放熱される。この蓄熱部材は各部屋裏空間部に設置されているため、蓄熱部材の放熱により各部屋裏空間部は個々に空調される。これにより、複数の部屋裏空間部の総体である裏空間全域で温度を均一化させることができる。
手段12では、上記各手段のいずれかにおいて、前記空調熱供給手段は、前記部屋裏空間部が有する熱を伝導して空調対象となる部屋に放射する放熱部材である。
この手段12によれば、空調空気を部屋内に送風するのではなく、放熱部材によって部屋裏空間部の熱が部屋に放射され、それによりその部屋が空調(具体的には、冷暖房)される。この場合、風が人に直接当たらないため、それによる不快感を解消して、空調実施時の快適性を向上させることができる。
このような熱放射式の空調を実施する場合、部屋裏空間部から部屋への空気流が生じないため、送風式の空調と比べ、部屋裏空間部内に空気のよどみ(温度差)が生じ易いという懸念がある。この点、本手段では、熱放射式の空調であっても、温度調整手段による裏空間の温度調整を実施することにより、懸念されるような温度差の発生を抑制できる。このことから、熱放射式の放熱部材によって空調熱供給手段が構成された場合には、前記温度調整手段を設置したことの効果は特に顕著なものとなる。
手段13では、上記手段1乃至12のいずれかにおいて、前記部屋裏空間部は、床下空間、天井裏空間、壁内空間等の非居住空間が、部屋の仕切り材と横材又は縦材とによって複数に区画された場合の一区画であり、各区画の総体である前記非居住空間が前記裏空間である。
この手段13によれば、非居住空間が部屋の仕切り材と縦材又は横材とによって複数に区画された一区画が部屋裏空間部となっているため、当該空間部では空調用配管(管状ダクト)を設ける必要がない。これにより、空調設備における圧力損失をより一層低減させることができる。
手段14では、上記手段1乃至12のいずれかにおいて、床下空間、天井裏空間、壁内空間等の非居住空間に、同空間が広がる方向に拡張された扁平形状をなす複数の空調用チャンバが設置され、それら各空調用チャンバの内部空間が前記部屋裏空間部である。
この手段14によれば、非居住空間に設置された空調用チャンバの内部空間が部屋裏空間部となっているため、非居住空間それ自体を空調する場合と異なり、その非居住空間を閉鎖空間とするための作業が不要となる。これにより、施工の作業性に優れた空調設備を得ることができる。
手段15は、上記各手段のうちいずれかの空調設備を備え、前記温度調整手段の温度調整により前記部屋裏空間部に生じる熱で空調される部屋が設けられている建物である。これにより、空調能力の優れた建物を得ることができる。
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態では、鉄骨ユニット工法にて構築された二階建てユニット式建物に具体化されている。
[ユニット式建物について]
まず、ユニット式建物の基本構成を、図1及び図2に基づいて説明する。なお、図1は、本実施形態のユニット式建物の概略縦断面図であり、図2は、建物本体11を構成する前記建物ユニット20を示す斜視図である。
図1に示されているように、ユニット式建物10は複数の建物ユニット20が結合されてなる建物本体11と、この建物本体11の上方に配設される屋根12とにより構成されている。建物本体11では、一階部分及び二階部分それぞれの屋内空間が内壁16によって複数に区画され、それにより各階に複数の部屋17,18(例えば、居室、廊下、洗面室、トイレ等)が設けられている。
建物ユニット20では、図2に示されているように、その四隅に柱21が配され、各柱21の上端部及び下端部がそれぞれ四本の天井大梁22及び床大梁23に連結されている。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。天井大梁22(詳細には、溝形鋼のウエブ)には、複数箇所に直径100mm程度の梁貫通孔22aが設けられている。
建物ユニット20の長辺部の相対向する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく建物ユニット20の長辺部の相対向する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25と床小梁26とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に水平に設けられている。図2では図示されていないが、天井小梁25によって天井材が支持され、床小梁26によって床材が支持されるようになっている。
以上のように構成された建物ユニット20は工場にて予め製造される。そして、工場からトラック等で建築現場に運搬された後、その現場で連結(据付)作業が実施され、前記建物本体11が形成される。この場合、横並びで隣接する建物ユニット20は、天井大梁22同士、及び床大梁23同士がそれぞれ向かい合わせとなるように連結される(図1参照)。また、上下に隣接する建物ユニット20では、天井大梁22と床大梁23とが向かい合わせとなるようにして連結される。
[全館空調用の空調設備について]
ところで、上記ユニット式建物10では、全館空調用の空調設備が採用されている。この空調設備では、一階部分と二階部分との間の階間空間が一次的な空調空間となっている。そして、放熱板によってその階間空間の熱が同空間と隣接する部屋に放射されて、最終的に部屋が空調されるようになっている。以下、その空調設備について詳しく説明する。
階間空間を一次空調するための構成を説明する前に、空調熱供給手段又は放熱部材としての放熱板の構成を上記図1に基づいて簡単に説明する。この放熱板31は、空調対象となる各部屋に設けられており、階間空間Kの設置箇所に合わせて一階部分では天井側に、二階部分では床側に設置されている。放熱板31は、銅、アルミニウムの金属材料等、熱伝導性が比較的高い材料からなる板材により形成されている。
図1において、放熱板31の設置構成についての詳細な図示は省略するが、概ね次のような構成を備えている。一階部分の部屋17に設置された天井側放熱板31aは、その部屋側の面(下面)が天井材27によって形成される天井面と面一となり、その面を室内に露出させている。一方、二階部分の部屋18に設置された床側放熱板31bは、その部屋側の面(上面)が床材28を構成する床仕上げ材と接した状態で同床仕上げ材の下に配置されている。そして、放熱板31は、前記部屋側の面の反対面である階間空間K側の面、すなわち天井側放熱板31aではその上面、床側放熱板31bではその下面が階間空間Kに接している。このため、階間空間Kの熱は放熱板31の階間空間側の面から部屋側の面に伝導され、その部屋側の面(放熱面)から部屋に向けて放射される。この場合、一階部分の部屋17では天井側で露出した放熱面から直接的に熱が放射され、二階部分の部屋18では床仕上げ材の下に配置された放熱面から床仕上げ材を介して間接的に熱が放射される。
次に、階間空間Kを一次的に空調するための構成を、上記図1と、図3乃至図6に基づいて説明する。
まず、図1に示されているように、階間空間Kの全体構成は次の通りである。階間空間Kには、一階側ユニットの天井大梁22及び天井小梁25(図1では省略)と、二階側ユニットの床大梁23及び床小梁26(図1では省略)とが設置されている。一階側ユニットの天井大梁22と二階側ユニットの床大梁23によって階間空間Kはユニットごと複数(図1ではK1〜K3の3つ)に区画されている。そのように区画されてなる各階間空間部K1〜K3は、天井大梁22と床大梁23との間の隙間41や天井大梁22に形成された梁貫通孔22aを介して連通している。このため、隣接する階間空間部間では、空気流通部としての隙間41、及び同じく空気流通部としての梁貫通孔22aを通じて空気流通可能となっている。
なお、各階間空間部K1〜K3は天井材27又は床材28を介して部屋17,18の裏側に配置され、天井材27、床材28及び梁22,23によって区画形成されている。このため、各階間空間部K1〜K3が、本実施形態での部屋裏空間部となっている。そして、一次的な空調空間である階間空間Kはこれら各階間空間部K1〜K3の総体である裏空間に相当する。
この階間空間Kでは、その外縁となる天井大梁22及び床大梁23、すなわち建物10の外壁に沿って設けられる天井大梁22及び床大梁23について、両者間の隙間41や梁貫通孔22aが閉塞部材42,43によって閉塞されている。これにより、階間空間Kはその全体が閉鎖空間とされ、同空間Kから他の空間へ空調空気の流出が抑制されている。なお、同一階に設けられた全ての部屋のうち、一の又は複数の特定された部屋が空調対象となっている場合、その空調対象となる部屋に合わせた領域が閉鎖領域とされ、その領域内が一次的な空調空間とされる。この場合も、設定された閉鎖領域の外縁で隙間41や梁貫通孔22aを閉塞するなどして空気流出が抑制される。
そして、階間空間Kを一次的に空調してその温度を調整すべく、各階間空間部K1〜K3のうち一の階間空間部には、所定温度に調整された空調空気が空調室内機51より導入される。ただこの場合、空調空気が導入される階間空間部K3と、その他の階間空間部K1,K2とが隙間41や梁貫通孔22aを介して空気流通可能となっていても、空調空気は水平方向に広がる階間空間全域へ拡散しにくい。そのため、階間空間Kで温度に偏りが生じやすいという点が懸念される。
そこで、本実施の形態では、そのような温度の偏りを防ぐべく、階間空間Kの全域で温度を均一化させるため、一の階間空間部に導入された空調空気を他の階間空間部に搬送する空気搬送設備を備えている。図1には、空気搬送設備による空気流通の様子が矢印(AIR)で模式的に示されている。その空気搬送設備の具体的構成を、図3乃至図6に基づいて説明する。なお、図3乃至図6はいずれも空気搬送設備の一形態を示す階間空間Kの概略平面図(図1のA−A線断面図)であり、それぞれ異なる形態が示されている。
先に、図3乃至図6において共通する構成を簡単に説明する。階間空間Kが天井材27及び床材28並びに天井大梁22及び床大梁23によって区画され、各階間空間部(図3乃至図6ではK1〜K6の6つ)が形成されており、それらは梁貫通孔22a等を介して連通されている。各階間空間部K1〜K6にはそれぞれ放熱板31が設けられており(図4乃至図6では省略)、前述したように、この放熱板31により各階間空間K1〜K6の熱が部屋に放射される。
次に、個々の構成例を説明する。
(a)図3では、一の階間空間部K3に空調室内機51が設置されている。その階間空間部K3には室内機51の吹出し口52及び吸込み口53も設置されており、同階間空間部K3において空調空気の導入と吸気が実施されるようになっている。また、各階間空間部K1〜K6には一方向に向けた空気の流れを形成するファン装置54が設置されている。そして、このファン装置54により、室内機51から空調空気が導入される階間空間部K3を起点とし、すべての階間空間部K1〜K6に通ずる反時計回りの循環経路が形成されている。そのため、一の階間空間部K3に導入された空調空気は前記循環経路に沿って他の階間空間部K1,K2,K4〜K6に搬送され、それにより階間空間全域で温度が均一化される。
(b)図4では、同じく一の階間空間部K3に空調室内機51が設置されており、この階間空間部K3において空調空気の導入と吸気が実施されるようになっている。また、各梁貫通孔22aには、開閉手段としてのファン装置55が設置されており、そのファン装置55の駆動により隣接する階間空間部間で双方向に空気搬送が可能となっている。すなわち、梁貫通孔22aを通じて他の階間空間部へ空気が送り出されるとともに、他の階間空間部から空気を受け取ることが可能となっている。
この場合、上記(a)と同様、すべての階間空間部K1〜K6に通ずる循環経路が形成される。それに加え、ファン装置55を選択的に駆動させれば、複数の循環経路を形成できる。そして、室内機51から一の階間空間部K3に空調空気が導入されると、前記循環経路に沿って他の階間空間部部K1,K2,K4〜K6へ送風される。これにより、階間空間全域で温度が均一化される。
また、ファン装置55を選択的に駆動させることにより、特定の階間空間部に向けた空気流を強制的に形成することも可能となる。そのため、このような特定の階間空間に向けた気流に沿って導入された空調空気を特定の階間空間部へ集中させれば、その特定の階間空間部を狙った温度調整がなされる。
このように、(b)の構成では、階間空間全域で温度が均一化されるだけでなく、特定の階間空間部に空調空気を集中させることが可能となっている。このため、(b)の構成を有する空気搬送設備は、空気集中機能も兼ね備えている。
(c)図5では、同じく一の階間空間部K3に空調室内機51が設置されている。室内機51の吹出し口52は別の階間空間部K6に設置されており、この吹出し口52と室内機51の本体とは梁貫通孔22aを貫通させて設置されるダクト56により接続されている。一方、室内機51の吸込み口53は、その室内機51が設置された階間空間部K3に設置されており、その階間空間部K3の空気が吸い込まれるようになっている。この空気吸込力により、他の階間空間部K1,K2,K4〜K6から、室内機51の吸込み口53に向けた自然気流が形成される。そして、かかる吹出し口52及び吸込み口53の設置構成によれば、室内機51を駆動すると、吹出し口52の設置された階間空間部K6に導入された空調空気は、自然気流に乗って、室内機51の本体が設置された階間空間部K3に向けて搬送される。それにより、階間空間全域で温度が均一化される。
なお、室内機51の空気吸込力を利用して空調空気を全ての階間空間部K1〜K6に行き渡らせるべく、吹出し口52は、室内機51の本体(吸込み口53)が設置された階間空間部からできるだけ離れた階間空間部に設置されることが好ましい。また、前述の構成で、吹出し口52を吸込み口とし、吸込み口53を吹出し口として、逆の空気流を形成してもよい。
(d)図6では、上記構成(c)と同じく、吹出し口が一の階間空間部K6に設置され、吸込み口は別の階間空間部K3に設置されているが、空調室内機(図示略)が二階部分の天井裏空間に設置されている点で構成(c)と異なる。この場合、上記(c)の構成と同様、吸込み口に作用する空気吸込力により形成される空気流により空調空気が搬送され、それにより階間空間全域で温度が均一化される。なお、室内機が一階部分の床下空間に設けられた構成としてもよい。
ここで、上記ユニット式建物10に採用された空調設備の電気的構成を、前述した図1に基づいて簡単に説明する。
空調設備は、その制御を司る空調コントローラ61を備えている。空調コントローラ61には空調室内機51が接続されている。また、空気搬送設備が上記(a)及び(b)の構成を有している場合、空調コントローラ61には各ファン装置54,55がそれぞれ接続されている(図示略)。そして、空調コントローラ61からの指令により、室内機51やファン装置54,55に対する各種制御(空調空気の温度調整、装置の駆動又は停止、送風量制御等)が実施される。
また、空調コントローラ61は各階間空間部K1〜K3の空調対象となる部屋17,18に設置された室内センサ62と接続されている。なお、図示では一つのセンサ62を除き、空調コントローラ61との接続が省略されている。室内センサ62は温度センサであり、本実施の形態における温度検出手段である。このため、空調コントローラ61にはこの室内センサ62から部屋ごとの室内温度情報が逐次入力される。空調コントローラ61はその温度情報に基づいた制御の実施が可能となっている。
この空調コントローラ61による制御内容は、例えば次の通りである。
建物利用者による手動制御の内容として、空調コントローラ61に接続された操作装置の操作が契機となって、空調コントローラ61は室内機51やファン装置54,55の駆動制御を実施する。これにより、それら室内機51等が駆動されている間は空気搬送設備により階間空間全域で温度が均一化される。
自動制御の内容としては、各室内センサ62から入力される室内温度情報に基づき、部屋間の温度を比較し、その温度差が基準値以上となっている場合、空調コントローラ61は室内機51やファン装置54,55を自動的に駆動させる。それら室内機51等の駆動により、階間空間全域の温度が均一化される。一方、温度差が基準値より小さい場合、室内機51等の非駆動状態を維持したり、すでに駆動状態にある室内機51等を停止させたりする。
ここで、前述したように、上記(b)の構成を有する空気搬送設備では、導入された空調空気を特定の階間空間部に集中させることが可能となっている。この場合、各部屋17,18に設置された操作装置の中で一の操作装置から要求信号を受信したこと、又は室内センサ62として温度センサとともに設置された人検出手段としての人感センサにより人が検知されたことで、空調要求のある部屋が特定される。そして、その部屋を空調対象とする階間空間部が空調空気の集中先となり、空調コントローラ61はその集中先に空調空気が集中するように各ファン装置55を駆動する。詳しくは、空調空気が導入された階間空間部K3から集中先となった階間空間部に向かう空気流を生じさせるファン装置55を選択的に駆動させるとともに、その他のファン装置55の駆動を停止させる。これにより、導入された空調空気はファン装置55によって形成された空気流に乗って集中先の階間空間部に至る。また、空調空気が導入される階間空間部K3が集中先である場合は、他の階間空間部への空気流を生じさせるファン装置55の駆動を停止させる。これにより、導入された空調空気はその導入された階間空間部K3に留まる。
以上の如く、ユニット式建物10に採用された全館空調用の空調設備では、空調室内機51から一の階間空間部に空調空気を導入させるとともに、空気搬送設備によってその空調空気が他の階間空間部に搬送される。そしてこれにより、階間空間全域の温度が均一化されたり、特定の階間空間部をねらって空調空気を集中させたりして、階間空間Kの温度が調整される。こうして一次的に空調された階間空間Kの熱が、部屋ごとに設置された放熱板31から当該部屋17,18に放射され、各部屋17,18が空調されるようになっている。
なお、上述した通り本実施の形態では、空調装置としての室内機51、及び空気搬送設備により、一次的な空調空間である階間空間Kの温度調整(詳しくは、温度の均一化と空調空気の集中化)がなされている。このため、室内機51及び空気搬送設備、並びにそれらを制御する空調コントローラ61等によって温度調整手段が構成されている。
[本実施形態の効果]
以上により、本実施の形態では、以下に示す有利な効果が得られる。
(ア)各階間空間部K1〜K6は扁平状に拡張された空間部であり、階間空間Kの空調時にはその拡張された空間部を利用して空調空気の送風が実施される。この場合、空調用配管と違って扁平状に拡張されている分、送風時の圧力損失が低減される。このため、空調用配管だけを利用して送風を実施する場合と比べ、空調空気を送風する際の圧力損失を低減させて、空調性能を向上させることができる。
(イ)室内機51から一の階間空間部K3に空調空気が導入されるものの、空気搬送設備により、導入された空調空気はそれが導入されていない他の階間空間部K1,K2,K4〜K6に搬送可能となっている。これにより、階間空間全域で温度を均一化させて、空調の偏りを防止できる。また、空気搬送設備として上記(b)の構成を採用した場合には、導入された空調空気を特定の階間空間部に集中させることも可能となる。この場合、空調対象となる部屋の熱負荷や建物利用者の嗜好などの要求により、特定の階間空間部に高い空調性能が求められる場合にも対処することが可能となり、空調性能をさらに向上させることができる。
このように、本実施の形態では、空気搬送設備により、一の階間空間部K3に導入された空調空気を利用して階間空間全域で温度を均一化させたり、一部の階間空間部の温度を他と異ならせたりして、階間空間Kの温度を様々な状態に調整することが可能となる。そして、かかる温度調整の結果は空調対象となる部屋17,18の空調状態に反映される。このため、様々な空調状態を作り出し、空調の利便性を高めることができる。また、すべての階間空間部K1〜K6に空調空気を導入する必要がない点で、空調設備を簡素化できる。
(ウ)前述した温度均一化の実施に際し、部屋間の温度差が基準値以上となっている場合に、空調コントローラ61が自動的に空気搬送設備を駆動させることが可能となっている。これにより、快適な空調状態を自動的に保つことができる。また、空調空気の集中化の実施に際し、空調コントローラ61は人が存在する部屋を優先している。これにより、空調対象となるすべての部屋17,18が無駄に空調されてしまうことをなくし、空調効率を高めて省エネルギ効果を得ることができる。
(エ)本実施の形態では、空調された各階間空間部K1〜K6の空気を部屋内に送風するのではなく、放熱板31によって各階間空間部K1〜K6の熱が部屋17,18に放射され、それによりその部屋17,19が空調(具体的には、冷暖房)される。この場合、風が人に直接当たらないため、それによる不快感を解消して、空調実施時の快適性を向上させることができる。
また、このような熱放射式の空調を実施する場合、階間空間部K1〜K6から部屋17,18への空気流が生じないため、送風式の空調と比べ、階間空間部内に空気のよどみ(温度差)が生じ易いという懸念がある。この点、本実施の形態では、空気搬送設備や空気集中設備により、階間空間Kの積極的に空気流を生じさせて温度調整を実施している。このため、懸念されるような温度差の発生を抑制できる。
[別の実施形態]
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
(イ)上記実施の形態では、空気搬送設備により階間空間全域で温度を均一化させているが、そのような温度均一化のための設備としては、例えば、各階間空間部に熱伝導部材が設置された構成を採用してもよい。その構成例を、図7に示す階間空間の概略平面図に基づいて説明する。
この図7では、一の階間空間部K3に空調室内機51が設置されており、この階間空間部K3において空調空気の導入と吸気が実施されるようになっている。また、階間空間Kには梁貫通孔22aを貫通してすべての階間空間部K1〜K6を概ね一周するように、熱伝導部材としてのヒートパイプ71が設置されている。ヒートパイプ71には比較的熱伝導率が高い材料(例えば、銅、アルミニウム等)が用いられ、その全域にわたって熱媒体(例えば、水、冷媒等)が内部に充填されている。そして、その熱媒体に熱を供給するヒートポンプ等の熱源装置72が一の階間空間部K5に設置されている。
かかる構成によれば、ヒートパイプ71のパイプ通路を流通する熱媒体の熱がパイプ外側から放射されることにより、空調空気が導入されない各階間空間部K1,K2,K4〜K5も空調されることになり、階間空間全域で温度が均一化される。つまり、この構成では、室内機51及びヒートパイプ71により、階間空間Kの温度が調整される。
なお、ヒートパイプ71は特定の階間空間部にのみ設置されるようにしてもよい。例えば、空調空気が導入される階間空間部K3と隣接するため、強制搬送がなくても比較的空調空気が得られやすい階間空間部K2,K4については、ヒートパイプ71の設置を省略してもよい。また、空調対象となる部屋ごとのニーズに応じて、空調能力が特に要求される階間空間部にのみヒートパイプ71が設置されるようにしてもよい。
(ロ)上記実施の形態において、冷媒を利用したヒートポンプ装置がユニット式建物10に設置されている場合には、その排出熱(冷熱)を階間空間Kに導入して空調室内機51による空調(冷房)を補助するようにしてもよい。その構成例を、図8に示すユニット式建物10の概略縦断面図に基づいて説明する。
図8では、ユニット式建物10の屋外に、ヒートポンプ式給湯装置76が設置されている。このヒートポンプ式給湯装置76は、冷媒の膨張、大気から吸熱、冷媒の圧縮、高圧高温冷媒と水との熱交換という各過程が繰り返して実施されるヒートポンプサイクルを備えている。冷媒としては、自然冷媒(例えば、二酸化炭素(CO2)等)が用いられている。そして、このヒートポンプサイクルにおける熱交換によって得られた湯が貯湯槽に貯められた後、それが台所、洗面所、風呂等の各給湯設備で使用される。この場合、ヒータ等が用いられないこと、ヒートポンプサイクルの駆動は主として深夜電力が利用されること等により電気代が抑えられるというメリットや、自然冷媒が用いられることでオゾン層破壊の防止につながるというメリットが得られる。
ヒートポンプ式給湯装置76の排気口には排気ダクト77の一端が接続され、排気ダクト77の他端は三方切替弁等の流路切替装置78に接続されている。この流路切替装置78は、排気ダクト77と階間空間Kにつながる導入ダクト79とを連通させるエア導入状態と、排気ダクト77を大気開放とするエア開放状態とに切替可能となっている。この切替は室内機51の冷暖房切替と連動しており、冷房時にはエア導入状態に、暖房時にはエア開放状態に切り替えられる。そして、流路切替装置78がエア導入状態に切り替えられると、給湯装置76からの排気エアは階間空間Kに導入される。この場合、給湯装置76と階間空間Kとの間には最短でも3m程度の距離があるため、階間空間Kへの排気エアの導入を促進すべく、導入経路にファン装置(図示略)を設置してもよい。一方、エア開放状態に切り替えられると、給湯装置76の排気エアは大気中に放出される。なお、この別の実施形態では、排気ダクト77、流路切替装置78及び導入ダクト79等により排熱供給手段が構成されている。
ここで、この給湯装置76のヒートポンプサイクルでは、大気からの吸熱が実施される。このため、給湯装置76から吸熱後の冷気が排気エアとして排出される。室内機51によって階間空間Kを暖房する場合に、この排気エアを階間空間Kに導入すれば暖房効率を低下させてしまう。そこで、暖房時には排気エアを大気中に放出する。これに対し、室内機51によって階間空間Kを冷房する場合に、給湯装置76の排気エアを階間空間Kへ導入すれば冷房を補助することができる。そして、このような補助が得られることにより、給湯装置76の排気エアを有効活用して冷房効率を高め、省エネルギ化を促進できる。
なお、ヒートポンプ式給湯装置76の排出熱を空調補助として利用する構成としては、上記構成の他に、ヒートポンプサイクルの一部(吸熱後の大気を排出する部分)が階間空間Kに設置された構成を採用してもよい。この場合も、暖房時には排気エアを大気中に放出する構成が必要となる。また、室内機51による冷房時に給湯装置76の排気エアを階間空間Kに導入するのではなく、排気エアが空調装置の室外機に導入される構成を採用してもよい。冷房時における室外機では、圧縮されて高温高圧の気体となった冷媒と大気との熱交換により冷媒を凝縮させて大気中に熱を捨てているため、取り込まれる大気の温度が低いほど熱を捨てやすく機器効率が向上する。そこで、この例のように、冷気である排気エアを室外機に導入して大気の温度を低下させることにより、室外機の機器効率を向上させることができる。
(ハ)上記実施の形態では、階間空間Kが空調されるようになっているが、例えば、各階間空間部K1〜K6に空調用チャンバ81を設置して、そのチャンバ内を空調するようにしてもよい。その構成例を、図9に示すユニット式建物10の概略縦断面図に基づいて説明する。
図9では、各階間空間K1〜K3に空調用チャンバ81が設置されている。各空調用チャンバ81はいずれも基本構造が同じであり、高断熱性・高気密性材料からなる複数の板材を扁平な直方体状に結合させて構成されている。各空調用チャンバ81のうち隣接するもの同士は梁貫通孔22aを貫通して設置される接続ダクト82により接続され、この接続ダクト82を通じてチャンバ間の空調空気の流通が可能となっている。そして、階間空間K等の適宜の空間に設置された空調室内機51から一の空調用チャンバ81に空調空気が導入される。各空調用チャンバ81の温度均一化や空調空気の集中化については、上記実施形態の空気搬送設備や空気集中設備と同じ構成を採用できる。例えば、図9ではファン装置83が設置されている。なお、ここでは、空調用チャンバ81の内部空間が部屋裏空間部となり、全ての空調用チャンバ81の内部空間全体が裏空間となっている。
各空調用チャンバ81には、その上下の平面に、チャンバを構成する材料と同じ材料(高断熱性・高気密性材料)によって形成された放熱突部84が設けられている。各放熱突部84はチャンバ内と連通して空調空気が導入される内部空間を備えており、その内部空間と接する放熱板31が放熱突部の突出端に設けられている。
かかる構成では、チャンバ内の熱が放熱板31に伝わり、その放熱面から直接又は間接的に室内に熱が放射される。このため、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。それに加え、階間空間Kを一次的な空調空間とする場合、前述したように同階間空間Kを閉鎖空間とするための作業が必要となるが、この空調用チャンバ81が設置される構成ではそのような作業が不要となる。これにより、施工の作業性に優れた空調設備を得ることができる。
(ニ)上記実施の形態では、空調室内機51から階間空間Kに空調空気を導入して階間空間Kが一次空調されるように構成されているが、例えば、蓄熱装置等により、空調空気を導入することなく階間空間Kを一次空調するようにしてもよい。蓄熱装置を用いた構成例を図10及び図11に基づいて説明する。なお、図10は蓄熱装置が設置されたユニット式建物の概略縦断面図であり、図11は蓄熱装置が設置された階間空間Kを示す平面図(図10のB−B線断面図)である。
図10及び図11に示されているように、ユニット式建物10には蓄熱装置91が設置されている。蓄熱装置91は蓄熱部材としての蓄熱チャンバ92と、熱源装置93とを備えている。蓄熱チャンバ92は蓄熱及び放熱可能な装置であり、天井大梁22及び床大梁23によって区画された各階間空間部K1〜K6にそれぞれ独立して設置されている。蓄熱チャンバ92の内部には蓄熱材(例えば、パラフィン等の相変化物質、水等)が充填され、その蓄熱材に蓄えられた熱を当該チャンバが設置された階間空間部に放出する放熱部(図示略)を有している。一方、熱源装置93はヒートポンプ、電熱線等の熱供給源であり、ユニット式建物10の屋外に設置されている。熱源装置93には、熱媒体(例えば、水、冷媒等)が流通する熱媒搬送管94が接続されている。この熱媒搬送管94は各蓄熱チャンバ92内に設置された熱交換装置95と順次接続され、熱源装置93から各熱交換装置95を経て再び熱源装置93に戻る熱媒体の循環経路が熱媒搬送管94によって形成されている。熱源装置93における熱交換によって熱が付与された熱媒体は、かかる循環経路を通じて各熱交換装置95に順次供給される。熱交換装置95ではこの供給された熱媒体と蓄熱材との間で熱交換が行われ、それにより蓄熱材に熱が蓄えられる。
このような蓄熱装置91が設置されることにより、蓄熱チャンバ92の放熱部から熱が放出されることにより各階間空間部K1〜K6が個々に空調される。このため、一の階間空間部に室内機51から空調空気を導入する構成と異なり、ファン装置54,55等を設置したり吹出し口と吸込み口の設置構成を工夫したりすることなく、階間空間全域で温度を均一化させることができる。そして、蓄熱装置91により階間空間Kの温度が調整されるため、これが温度調整手段となっている。
なお、蓄熱装置91が設置された上記構成は、空調室内機51の設置を排除するものではなく、一の又は複数の階間空間部K1〜K6に空調空気が導入されるようにしてもよい。この場合、導入される空調空気と蓄熱チャンバ92からの放熱が相まって、より一層の温度均一化を実現できる。また、各階間空間部K1〜K6で蓄熱チャンバ92からの放熱により冷暖房が補助されるため、室内機51を有する空調装置の負荷を低減させることができる。この場合、蓄熱チャンバ92からの放熱を常時実施するのではなく、空調装置の最大冷暖房負荷となる時間帯に実施するようにすれば、空調効率を高めることができる。
その他、ヒートポンプからなる熱源装置93を用いた場合には、電力単価が安く設定されている深夜の時間帯に蓄熱を行うとともに、日中の時間帯に放熱を行うようにすれば、省エネルギ化を実現できる。
(ホ)上記実施の形態において、階間空間Kを上部空間と下部空間とに仕切り、暖房時には上部空間に空調空気が導入され、冷房時には下部空間に空調空気が導入されるようにしてもよい。なお、この構成は前述した空調用チャンバ81を設置する構成でも採用することができる。この場合、床側放熱板31bは二階部分の部屋18の暖房用として利用され、天井側放熱板31aは一階部分の部屋17の冷房用として利用される。
(ヘ)上記実施の形態では、非居住空間である階間空間Kが一次的に空調され、前述した別例(ハ)でもその階間空間Kに空調用チャンバ81が設置されているが、例えば、最下階(一階)の床下空間、最上階(二階)の天井裏空間、壁内空間等、他の非居住空間を一次的に空調したり、空調用チャンバ81が設置された構成としてもよい。
このように、床下空間や天井裏空間が横材である梁(天井大梁22及び床大梁23)と仕切り材である天井材27及び床材28とによって区画されてなる一区画、壁内空間が縦材である柱21と仕切り材である壁材とによって区画されてなる一区画が部屋裏空間部となっている。
(ト)上記実施の形態では、空調熱供給手段として放熱板31が設置され、その熱放射によって各階間空間部K1〜K6の熱を各部屋17,18に供給するようにしたが、空調熱供給手段としては、例えば送風式のものであってもよい。この場合、各部屋17,18には、各階間空間部K1〜K6の空気を吹き出す吹出し口が設置される。そして、その吹出し口からの給気により各階間空間部K1〜K6の熱が各部屋17,18に供給され、それにより当該部屋17,18が空調される。
(チ)上記実施の形態では、空調室内機51から一の階間空間部K3にのみ空調空気が導入されているが、複数の階間空間部に空調空気が導入されるようにしてもよい。要するに、すべての階間空間部K1〜K6の中で一部の階間空間部に空調空気が導入される場合であればよい。
(リ)上記実施の形態では、梁貫通孔22aに設置されたファン装置55が開閉手段となっているが、開閉手段としては、例えば開閉弁等の弁装置であってもよい。この場合も、各弁装置が選択的に開閉されることにより、空調空気が流通する様々な循環経路を形成して、温度均一化や集中化を実現できる。
(ヌ)上記実施の形態では、ユニット式建物10への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物など、他の構造の建物にも適用することができる。
10…ユニット式建物、22a…梁貫通孔(空気流通部)、31…放熱板(空調熱供給手段、放熱部材)、51…空調室内機(空調装置)、54…ファン装置(空気搬送設備)、55…ファン装置(空気搬送設備)、62…室内センサ(温度検出手段、人検出手段)、71…ヒートパイプ(熱伝導部材)、76…ヒートポンプ式給湯装置(ヒートポンプ装置)、77…排気ダクト(排熱供給手段)、79…導入ダクト(排熱供給手段)、81…空調用チャンバ、92…蓄熱チャンバ(蓄熱部材)、93…熱源装置、K…階間空間(裏空間)、K1〜K6…階間空間部(部屋裏空間部)。