JP2009248323A - インクジェット記録装置および該装置用記録ヘッドの吐出回復処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】記録媒体に対し、画像の記録に関わらない予備吐出を記録ヘッドに行わせるにあたり、様々な使用条件およびそれらの組み合わせに対し、メモリ容量の増大を伴うことなく、必要十分な予備吐出処理を効率的に実施できるようにする。
【解決手段】記録媒体の有効画像記録領域外に対応した位置にある吐出口に、周期を変化させながら記録媒体の側縁部に沿って予備吐出を行わせ、インクの吐出状態の良否を検出する。そして、吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点から中間点を演算し、これに基いてすべての吐出口についての予備吐出の周期を設定する。
【選択図】図6
【解決手段】記録媒体の有効画像記録領域外に対応した位置にある吐出口に、周期を変化させながら記録媒体の側縁部に沿って予備吐出を行わせ、インクの吐出状態の良否を検出する。そして、吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点から中間点を演算し、これに基いてすべての吐出口についての予備吐出の周期を設定する。
【選択図】図6
Description
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置、および前記記録ヘッドの吐出回復処理方法に関する。なお、吐出回復処理とは、記録ヘッドのインク吐出性能を良好な状態に回復または維持するために行われる処理を言い、その中でも、本発明は、画像の記録には寄与しないインクの吐出(予備吐出)を行う技術に関するものである。
一般に、インクを吐出する記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置では、所望の記録品位を確保するために、印刷枚数や記録デューティなどに依存する印刷量や、記録ヘッドの大気中への曝露期間、使用環境などに起因し、インク吐出口内方のインクの増粘や固化が生じることがある。例えば、記録データによっては記録ヘッドに設けられる吐出口の全てが使用されるとは限らず、特定の吐出口が長時間全く使用されないという場合もある。そのような吐出口では、その内方のインク溶剤が蒸発してインク粘度が上昇する。このような状態では、インクを吐出するために利用されるエネルギを発生する素子に駆動信号が印加されてもインクが正常に吐出されず、吐出方向のよれ(偏向)や吐出量の不足、また甚だしい場合には不吐出などが生じ(以下、これらを吐出不良という)、この結果所望の画像が得られなくなることがある。
そのため、インクジェット記録装置には、記録ヘッドの吐出口形成面をキャッピングするキャップを含む吐出回復ユニットが設けられ、吐出回復処理が行われる。吐出回復処理には、吐出口からキャップ内にインクを強制排出させる動作や、画像の記録には寄与しないインクの吐出(予備吐出)を行う動作などが含まれる。また、キャップ内への予備吐出は印刷の中断ひいてはスループットの低下等をもたらすため、印刷の中断を生じずに、もしくは中断の回数を極力減らすために、画像データとは別に定期的に記録媒体上にインクを予備吐出する処理(以下、紙面予備吐出と称する)も知られている。
これらの予備吐出は、記録の実行中は必ずしも全てのノズルから画像データの記録のためのインクの吐出が行われるわけではないことを考慮し、全てのノズルについて所定の時間毎に一律に行われるものであった。つまり、予備吐出の吐出間隔は、一般的に、いかなる条件であっても吐出不良原因を除去できるように一律に設定されているものであった。
しかし実際に画像データの記録を行う際の使用条件によっては、予備吐出を必要としない場合もあるにも拘らず、一律な予備吐出間隔を設定してしまうと、予備吐出によるインクの消費量が本来必要な量より多くなり、無駄が生じてしまう。
このようなインク消費量の無駄をなくし、必要十分な予備吐出処理を行う上で、例えば特許文献1あるいは特許文献2に開示された技術を適用することが考えられる。これらの特許文献においては、装置の使用条件を検出する手段を有し、当該検出に応じて予備吐出間隔を変更することが開示されている。
上記特許文献に開示された技術は、一連の処理手順において検出された使用条件を逐一比較対象となるデータと比較し、これに応じて予備吐出間隔を変更するようにしている。つまり、使用条件に対して比較対象となるデータを、プログラムが利用する固定のテーブルとして持つことで、予備吐出間隔を変更設定するものである。
しかしながら、特に産業用途のインクジェット記録装置は、オフィスユースあるいはパーソナルユースのインクジェット記録装置と異なり、様々な周囲環境下で使用されることが考えられる。後者のものは通常、最低でも10℃程度の環境で使用されると考えられるのに対し、工場等で使用されることが想定される前者のものは、0℃以下の環境で使用されることもあり、広い範囲の環境条件が考慮されるべきである。また、使用条件としては、そのような周囲環境だけでなく、記録媒体種類や記録速度など様々な条件も加味すべきであり、さらにそれらの組合せをも考慮すべきである。
従って、上記特許文献開示の技術を単に適用し、すべてのユーザおよび使用条件に対応可能な汎用的プログラムを提供するには、膨大なデータテーブルを要し、これに必要なメモリ容量も増大することになる。しかし個々のユーザにとっては、そのようなデータテーブルの内容のすべてが必ずしも必要でない場合がある。あるいは、記録装置ないし記録ヘッドの経時変化などによって、予めテーブル化されていたデータが実情に合わなくなってゆくことも考えられる。
本発明は、これらの点に鑑みてなされたもので、様々な使用条件およびそれらの組み合わせに対し、メモリ容量の増大を伴うことなく、必要十分な予備吐出処理を効率的に実施できるようにすることを目的とする。
そのために、本発明は、インクを吐出する吐出口を複数有する記録ヘッドを用いて記録媒体に画像の記録を行うとともに、前記記録媒体に対し、前記複数の吐出口から前記画像の記録に関わらない予備吐出を行わせることが可能なインクジェット記録装置において、
前記インクジェット記録装置の使用条件を検知する手段と、
当該検知された使用条件下で、前記複数の吐出口のうち、前記画像の記録に使用されない吐出口に前記予備吐出を行わせる手段と、
当該予備吐出の周期を変化させながらインクの吐出状態の良否を検出する手段と、
当該検出により検出された、前記吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点を用いた演算により、前記複数の吐出口についての予備吐出の周期を設定する手段と、
を具えたことを特徴とする。
前記インクジェット記録装置の使用条件を検知する手段と、
当該検知された使用条件下で、前記複数の吐出口のうち、前記画像の記録に使用されない吐出口に前記予備吐出を行わせる手段と、
当該予備吐出の周期を変化させながらインクの吐出状態の良否を検出する手段と、
当該検出により検出された、前記吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点を用いた演算により、前記複数の吐出口についての予備吐出の周期を設定する手段と、
を具えたことを特徴とする。
また、本発明は、インクを吐出する吐出口を複数有する記録ヘッドを用いて記録媒体に画像の記録を行うインクジェット記録装置に適用され、前記記録媒体に対し、前記複数の吐出口から前記画像の記録に関わらない予備吐出を行わせる吐出回復処理方法であって、
前記インクジェット記録装置の使用条件を検知する工程と、
当該検知された使用条件下で、前記複数の吐出口のうち、前記画像の記録に使用されない吐出口に前記予備吐出を行わせる工程と、
当該予備吐出の周期を変化させながらインクの吐出状態の良否を検出する工程と、
当該検出により検出された、前記吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点を用いた演算により、前記複数の吐出口についての予備吐出の周期を設定する工程と、
を具えたことを特徴とする。
前記インクジェット記録装置の使用条件を検知する工程と、
当該検知された使用条件下で、前記複数の吐出口のうち、前記画像の記録に使用されない吐出口に前記予備吐出を行わせる工程と、
当該予備吐出の周期を変化させながらインクの吐出状態の良否を検出する工程と、
当該検出により検出された、前記吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点を用いた演算により、前記複数の吐出口についての予備吐出の周期を設定する工程と、
を具えたことを特徴とする。
本発明では、画像の記録に関わらない吐出口、例えば記録媒体の有効画像記録領域外に対応した位置にある吐出口に、周期を変化させながら紙面予備吐出を行わせ、インクの吐出状態の良否を検出する。そして、吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点を用いて演算を行い、これに基いてすべての吐出口についての予備吐出の周期を設定する。これにより、様々な使用条件およびその組み合わせを考慮した膨大なデータテーブルを持たなくても、インク浪費等のない必要十分な予備吐出処理を効率的に実施できるようになる。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明を適用可能な印刷システムの一実施形態を示す模式図である。
インクジェット記録装置(以下、プリンタとも言う)10は、画像データの供給源をなす外部装置であるパーソナルコンピュータ形態のホスト装置12に接続されている。プリンタ10には、6つの記録ヘッドを記録媒体(本例ではロール紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並置が可能である。しかし図1では、記録媒体Pに対してフルカラー記録を行うべく、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを吐出するための記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yの4つが配置された状態を示している。例えば、記録ヘッド22Cおよび22M間と、記録ヘッド22Mおよび22Y間とにそれぞれ1つの記録ヘッドを追加することが可能である。
インクジェット記録装置(以下、プリンタとも言う)10は、画像データの供給源をなす外部装置であるパーソナルコンピュータ形態のホスト装置12に接続されている。プリンタ10には、6つの記録ヘッドを記録媒体(本例ではロール紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並置が可能である。しかし図1では、記録媒体Pに対してフルカラー記録を行うべく、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを吐出するための記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yの4つが配置された状態を示している。例えば、記録ヘッド22Cおよび22M間と、記録ヘッド22Mおよび22Y間とにそれぞれ1つの記録ヘッドを追加することが可能である。
追加される記録ヘッドとしては、K、C、MおよびY以外の特別な色のインクを吐出するものであってもよいし、それらのうちの所定色のインク(同系色であって濃度の異なるものも含む)を吐出するものであってもよい。また、例えば、Kのインクを吐出する記録ヘッドを追加し、モノクローム印刷時において3つのK用記録ヘッドに異なるラスタの記録を担当させることで、印刷速度を向上することも可能である。その他、記録媒体Pに付与されたインクの定着性や堅牢性を向上するための処理液を吐出する記録ヘッドや、装置内の湿度環境を整えるための液体を付与するための加湿用ヘッドが追加されてもよい。
なお、これらの記録ヘッドの個数や、色調(色、濃度)の種類および吐出する液体の種類などはあくまでも例示であることは言うまでもない。以下においては、色を特定しない場合には、記録ヘッドを符号22で総括的に参照する。
記録ヘッド22は、記録媒体Pの幅方向(媒体搬送方向Aに直交する方向)に所定密度で所定範囲にわたって配列されたインクの吐出口を有する。所定範囲とは、プリンタ10で印刷可能な記録媒体上の最大の有効記録幅(紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長いものとする。
記録ヘッド22は不図示の保持部により保持されるとともに、その保持部とともに鉛直方向(B方向)に昇降可能である。また、各記録ヘッド22に対応するキャップ50を有した回復ユニット40は水平方向(A方向)に移動可能に保持されている。
保管状態もしくは印刷待機中など非印刷時には、記録ヘッド22の吐出口形成面22Sにキャップ50を施した状態とする。非印刷時に記録ヘッドの吐出口形成面が大気に曝されていると、吐出口付近のインクの溶剤が蒸発してインクの増粘・固化が生じたり、塵埃が付着したりして吐出不良が生じる恐れがあるからである。また、インクを吐出する記録ヘッドはその特性上、安定したインク吐出状態が継続して得られるようにするために、吐出回復処理を行うことが望ましく、キャッピング状態は回復ユニット40によるそのような回復処理を可能とする状態でもある。吐出回復処理には、記録ヘッドへのインク供給系を加圧してインクを循環させたり、インクを吐出口からキャップ内に強制排出させたりする加圧回復動作や、印刷前にキャップに向けて記録ヘッドに予備的な吐出動作を行わせる予備吐出動作が含まれる。また、ゴム等の弾性部材でなるワイパーブレードで記録ヘッドの吐出口形成面をワイピングすることでクリーニングする動作も含まれる。回復ユニット40は、これらの動作が行われるようにするための部分を有している。
キャッピング状態から印刷動作に移行する場合には、保持部ないし記録ヘッド22を一旦上昇させてから回復ユニット40を左方に退避させ、さらに回復ユニット40のキャップ50間に設けた開口に各記録ヘッド22が対向するようにする。そして保持部ないし記録ヘッド22を下降させ、キャップ間の開口から記録ヘッド22を下方に突出させ、記録媒体Pと所定の間隙をもって対向する位置に設定する。そして、その位置で記録ヘッド22を固定する一方、記録媒体PをA方向に搬送し、その過程で記録ヘッド22にインク吐出動作を行わせることで、画像を記録する印刷動作が実行される。なお、印刷動作が終了し、非印刷時の状態に設定する場合は、逆の動作を行えばよい。
ロール紙形態の記録媒体Pは供給ユニット24から供給され、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、記録媒体Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。なお、記録媒体Pとしては、ロール紙の形態に限られることなく、適宜のものであってもよいことは勿論である。
図1の構成において、記録媒体Pに画像を形成する際には、搬送中の記録媒体Pの記録開始位置がK用の記録ヘッド22Kの下に到達した後に、印刷データ(画像データ)に基づいて記録ヘッド22Kの吐出口からKインクを選択的に吐出する。同様に、記録ヘッド22C、記録ヘッド22M、記録ヘッド22Y4の順に、各色のインクを吐出してカラー画像を記録媒体Pに形成する。
プリンタ10には、以上の各部の他、記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yにそれぞれ供給されるK、C、MおよびYのインクを貯留するメインタンク28K、28C、28Mおよび28Yが設けられる。また、記録ヘッドと対応するメインタンクとの間のインク供給系を加圧してインクを循環させたり、インクを吐出口からキャップ内に強制排出させたりするためのポンプ機構なども配置される。
図2は、図1の印刷システムの制御系の構成例を示すブロック図である。
ホスト装置12から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、記録媒体Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、印刷データの成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開し、さらにラスタ分割して各記録ヘッドで記録するデータを割り当てる。
印刷前の処理動作としては、出力ポート114およびモータ駆動部116を介して、キャッピングモータ122(回復ユニット40を水平方向に移動させるための駆動源をなす)とヘッドアップダウンモータ118(記録ヘッド22を昇降させるための駆動源をなす)とを駆動し、記録ヘッド22を回復処理ユニット50から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる動作がある。続いて、出力ポート114およびモータ駆動部116を介して記録媒体Pを供給するための駆動源をなすロールモータ(不図示)を駆動するとともに、記録ヘッド22による記録位置に対して記録媒体Pを搬送するための駆動源をなす搬送モータ120等を駆動する。
一定速度で搬送される記録媒体Pにインクを吐出し始めるタイミングを決定するため、先端検知センサで記録媒体Pの先端位置を検出する。その後、記録媒体Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する記録ヘッド22に送出するデータを順次に読み出し、記録ヘッド制御回路112介して、当該読み出したデータを各記録ヘッド22に転送する。
プリンタ10には、所要の動作を行う前提となる状態検出を行うためにセンサ群130が設けられる。センサ群130には、上述した先端検知センサや、温度センサ、湿度センサのほか、後述する吐出不良検知センサなどが含まれる。これらのセンサによる検知信号は、入力ポート132を介してCPU100に送信される。
CPU100は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて各部を制御する。プログラムROM104には、図5について後述する処理手順等に対応した処理プログラムや、所要の固定データを格納するテーブルなどが記憶されている。また、ワークRAM108は、CPU100による処理の過程で作業用のメモリとして使用される。
記録ヘッド22の吐出回復処理には、記録ヘッド22を回復ユニット40のキャップ50によってキャッピングした状態で行うものがある。この場合、出力ポート114およびモータ駆動部116を介し、記録ヘッドとメインタンクとの間のインク供給系を加圧してインクを循環させたり、インクを吐出口からキャップ内に強制排出させたりするための駆動源をなすポンプモータ124が駆動される。
本実施形態の吐出回復処理には、そのような回復ユニット40と関連して行われるもののほかに、印刷の中断を極力削減してスループットを向上するため、紙面予備吐出が含まれる。かかる紙面予備吐出では、記録ヘッドを大気中に曝露しつづけることによる吐出口内方のインクの増粘等を抑えるため、一定期間が経過する前に必ず全吐出口よりインクを吐出させる。このような一定期間を許容曝露時間と称するが、これはインクの特性やヘッドの構造、周囲環境の温度、湿度によって変化し得る。また、特許文献2に記載されているように、記録速度(記録媒体の搬送速度)に比例して記録ヘッド22の吐出口形成面22Sに対する空気の移動状態が変わり得るため、記録速度によっても許容曝露時間は変化し得る。さらにそのような空気の移動状態は、記録媒体の種類によっても変わり得る。記録媒体の種類とは、材質だけでなく、吐出口形成面22Sとの間隙に関与する記録媒体の厚み、寸法(搬送方向の長さ)をも言う。また、本例では連続紙であるロール紙を記録媒体として用いているが、これが台紙の上に複数のラベル紙などを担持してなるものである場合や、カット紙を記録媒体として用いる場合などには、ラベル紙やカット紙間の間隙(用紙間ギャップ)も空気の移動状態ないしは許容曝露時間を変化させ得る。さらに、印刷データ長など印刷データの内容も許容曝露時間を変化させ得る要因である。例えば、記録ヘッド22が、インクを吐出するために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する発熱素子を有するものである場合には、印刷データの内容によって記録ヘッド内の温度が変化するからである。
本明細書および特許請求の範囲では、許容曝露時間を変化させ得るこれらの要因を「使用条件」と称しているが、紙面予備吐出の間隔(ないしは単位時間当たりの吐出回数)を一律に設定し、いかなる使用条件であっても対応できるようにするためには、当該間隔を極力短くしなければならない。すると、インクの浪費が生じ得ることは前述したとおりである。
また、これを解決すべく特許文献1,2に開示の技術を単に適用し、すべてのユーザおよび使用条件に対応可能な汎用的プログラムを提供するには、膨大なデータテーブルを要し、これに必要なメモリ容量も増大することになる。
そこで本発明者は、必要十分な予備吐出処理を効率的に実施できるようにするべく、まず単位時間あたりの予備吐出回数と画像信頼性との関係を検討した。
図3は単位時間あたりの予備吐出回数と、画像信頼性との関係を検討した結果を模式的に表した図である。ここで斜線を付した部分が画像不良が生じた領域であり、これには不吐出発生による領域と、濡れ不吐出発生による領域とがある。なお、「濡れ不吐出」とは、インク吐出時に吐出口外方に突出したメニスカスがインク吐出後に吐出口内方に円滑に復帰せず、吐出口周囲にインクの一部が残留し、この残留インクが、次に吐出されるインク滴を引っ張ることで、インク吐出方向の偏向や不吐出を生じさせしまう現象である。
許容曝露時間を相対的に短く想定し、予備吐出間隔を短く設定した場合、単位時間あたりの予備吐出回数は多くなり、濡れ不吐出が発生し易くなる(図のC点より右側)。逆に、許容曝露時間を相対的に長く想定し、予備吐出間隔を長く設定した場合、単位時間あたりの予備吐出回数は少なくなり、インクの増粘による吐出不良が発生しやすくなる(図のB点より左側)。
よって、理論的にはB点とC点の中間となるA点((B+C)/2)が最適の予備吐出回数となる。従来は、種々の使用条件に応じて変わり得る許容曝露時間の最短のものを採用していたため、A点とC点の間に単位時間あたりの予備吐出回数が設定されていた。その結果、本来必要な予備吐出回数より多くの予備吐出を行うこととなり、インク浪費が生じていたのである。
そして本実施形態では、メモリ容量の増大を伴うことなく必要十分な予備吐出処理を効率的に実施できるようにするために、次のような構成を採用する。
図4は本実施形態に係る記録装置で使用する記録ヘッド22を記録媒体搬送方向から見た模式図である。この場合、記録媒体の全幅にわたって記録ヘッド22に配列される吐出口の総数が例えば2480個であり、そのうち中央部の2400個の吐出口が記録媒体上の実際の画像の記録に用いられるもの、すなわち当該2400個の吐出口が記録媒体上の最大の有効画像記録領域に対応するものとする。するとこの場合、配列の両端には、画像の記録には用いられない吐出口が存在することになる。恒常的に記録に用いられないそれらの吐出口(非記録領域の吐出口)の使用条件は有効画像記録領域の吐出口と同じである。従って、非記録領域の吐出口を用い、記録媒体の側縁部に対して後述するような紙面予備吐出および吐出状態の判定を行い、最適な予備吐出周期を定めることで、これを全吐出口についての予備吐出周期とすることができる。
図5は非記録領域の吐出口について吐出状態の判定を行うのに利用される構成の一例を示す模式図である。この構成では、発光部135および受光部137が設けられ、これらが吐出不良検知センサとなっている。発光部135は、吐出口形成面22Sの下方において投光し、受光部137がこの光を受けることができるように配置される。吐出不良の検知動作に際しては、発光部135から受光部137に向かう光路を形成する一方、非記録領域の吐出口からインク吐出動作を行わせる。そして、受光部137での受光内容に応じて、吐出状態の良否や、吐出不良の原因を判定することができる。例えば、予備吐出動作を指示してもインク滴Eの検知がない(遮光が何ら生じない)場合は、増粘等によって不吐出が生じたものと判定することができる。また、所定期間以上インクを検知しつづけたような場合には、吐出口形成面22Sの残留インクRによる遮光が生じていると考えられるので、この場合は濡れ不吐出が生じたものと判定することができる。
なお、紙面予備吐出を行わせる非記録領域の吐出口の数および位置については適宜定めることができ、またこれに応じて吐出不良検知センサの構成および配置を定めることができるのは勿論である。
図6は本実施形態に係る予備吐出周期設定手順を示すフローチャートである。ホスト装置12から印刷データを受信すると(ステップS1)、CPU100はその内容に基いて印刷動作を指示する一方、紙面予備吐出周期を定めるために、使用条件の情報を収集する。すなわち、温度および湿度の検出、印刷データに付加される印刷速度、用紙長、印刷データ長および用紙間ギャップ等の情報の検出を行う(ステップS3−1〜S3−5)。次に、非記録領域の吐出口について所定の周期で紙面予備吐出を行わせる。この所定の間隔とはデフォルト値であってもよく、あるいは前回までの印刷動作において同等の使用条件下で設定されていた値であってもよい。
次に、不吐出の発生有無を検知しつつ、紙面予備吐出間隔を徐々に長く(単位時間あたりの吐出回数を徐々に短く)して行き、吐出不良(インク増粘による不吐出)が発生した時点(図3のB点に対応)での紙面予備吐出周期を下限NG値として記憶する(ステップS5)。次に、同様に吐出不良の発生の有無を検知しつつ、紙面予備吐出間隔を徐々に短く(単位時間あたりの吐出回数を徐々に長く)して行き、吐出不良(濡れ不吐出)が発生した時点(図3のC点に対応)での紙面予備吐出周期を上限NG値として記憶する(ステップS7)。
次に、これら上限NG値および下限NG値の中間点を演算し、この値を全吐出口についての紙面予備吐出周期として設定する(ステップS9)。この後も非記録領域の吐出口についての吐出状態を監視し(ステップS11)を行い、吐出不良の発生の有無を判定する(ステップS13)。そして吐出不良が発生した場合は、その値を新たに上限NG値また下限NG値と置き換え、中間点を再演算し、新たに紙面予備吐出周期として設定する。
上述のように演算または再演算されて得られた紙面予備吐出周期は、同等または近似の使用条件で行われる次回の印刷動作に際し初期の予備吐出周期として利用することができる。
以上述べた本実施形態によれば、インクの浪費が生じることなく、かつ様々な使用条件およびその組合せを考慮した膨大なデータを要することなく、必要十分な予備吐出処理を効率的に実施できるようになる。
また、印刷動作中の使用条件の変化(温度,湿度など)にも直ちに対応できるだけでなく、記録ヘッドや記録装置の経時変化に対応できる。すなわち、本実施形態は、予め膨大なデータをもたなくても使用条件の変化に動的に対応できるものである。
なお、記録媒体の幅が異なる場合は、その記録媒体の有効画像記録領域範囲外にある吐出口について上述と同様な処理を行えばよい。また、そのように幅の異なる記録媒体が用いられることを想定して、吐出不良検知センサを複数位置に設けておくことができる。
さらに、印刷データの内容を判定し、記録媒体搬送方向に連続して画像データのない領域があれば、その領域に対応する吐出口に関して上記処理を実行し、予備吐出周期を定めることもできる。この場合には、吐出口配列と平行に延在する吐出不良検知センサを配置することができる。また、そのような長尺の吐出不良検知センサとしなくても、吐出口配列方向に移動可能に吐出不良検知センサを保持し、有効画像データのない領域に対応する位置に移動設定するようにしてもよい。
加えて、上述した様々な使用条件のすべてを考慮する必要がなければ、それらの一部のみを考慮するものでもよい。また、その他に考慮すべき使用条件があればそれを加味してもよい。すなわち、上述した使用条件はあくまでも例示である。
さらに加えて、上例では増粘による不吐出が生じ始める境界点と、濡れ不吐出が生じ始める境界点との中間点に対応したものを最適な予備吐出周期とした。これは図3について説明したように理論上の考察に基くものであるが、記録ヘッドの構成などに応じ、完全な中間点から若干いずれかの境界点側に偏倚した点でもよく、その点に対応した予備吐出周期が得られるよう、演算結果を補正または演算式を変更してもよい。
10 インクジェット記録装置(プリンタ)
12 ホスト装置
22、22K、22C、22M、22Y 記録ヘッド
22S 吐出口形成面
135 発光部
137 受光部
A 単位時間あたりの最適な予備吐出回数
B 不吐出発生点での単位時間あたりの予備吐出回数
C 濡れ不吐出発生点での単位時間あたりの予備吐出回数
E 吐出インク滴
R 残留インク
P 記録媒体
12 ホスト装置
22、22K、22C、22M、22Y 記録ヘッド
22S 吐出口形成面
135 発光部
137 受光部
A 単位時間あたりの最適な予備吐出回数
B 不吐出発生点での単位時間あたりの予備吐出回数
C 濡れ不吐出発生点での単位時間あたりの予備吐出回数
E 吐出インク滴
R 残留インク
P 記録媒体
Claims (7)
- インクを吐出する吐出口を複数有する記録ヘッドを用いて記録媒体に画像の記録を行うとともに、前記記録媒体に対し、前記複数の吐出口から前記画像の記録に関わらない予備吐出を行わせることが可能なインクジェット記録装置において、
前記インクジェット記録装置の使用条件を検知する手段と、
当該検知された使用条件下で、前記複数の吐出口のうち、前記画像の記録に使用されない吐出口に前記予備吐出を行わせる手段と、
当該予備吐出の周期を変化させながらインクの吐出状態の良否を検出する手段と、
当該検出により検出された、前記吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点を用いた演算により、前記複数の吐出口についての前記予備吐出の周期を設定する設定手段と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記設定手段は、前記2つの境界点の中間点を演算することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記2つの境界点の一方は、前記周期が相対的に短い場合に生じる前記吐出口の周辺のインクの濡れに起因した吐出不良が発生し始める点であり、他方は、前記周期が相対的に長い場合に生じる前記吐出口内方のインクの増粘による吐出不良が発生し始める点であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
- 前記設定された周期で行われる前記画像の記録に使用されない吐出口についての予備吐出時のインク吐出状態の良否を監視し、当該インク吐出状態が不良となった場合には、これに基いて前記演算を再度行い、前記複数の吐出口についての予備吐出の周期を再設定する手段を具えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記複数の吐出口は、前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に、前記記録媒体上の前記画像の有効記録領域よりも大きい範囲にわたって配列され、前記画像の記録に使用されない吐出口は前記有効記録領域外に対応した位置にある吐出口であって、前記記録媒体の側縁部に対して前記予備吐出を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記使用条件は、前記インクの特性、前記記録ヘッドの構造、環境温度、環境湿度、前記記録媒体の種類および前記画像のデータの内容の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- インクを吐出する吐出口を複数有する記録ヘッドを用いて記録媒体に画像の記録を行うインクジェット記録装置に適用され、前記記録媒体に対し、前記複数の吐出口から前記画像の記録に関わらない予備吐出を行わせる吐出回復処理方法であって、
前記インクジェット記録装置の使用条件を検知する工程と、
当該検知された使用条件下で、前記複数の吐出口のうち、前記画像の記録に使用されない吐出口に前記予備吐出を行わせる工程と、
当該予備吐出の周期を変化させながらインクの吐出状態の良否を検出する工程と、
当該検出により検出された、前記吐出状態が良好である範囲の両端にある2つの境界点を用いた演算により、前記複数の吐出口についての前記予備吐出の周期を設定する設定工程と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置の吐出回復処理方法。
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JP2008094814A JP2009248323A (ja) | 2008-04-01 | 2008-04-01 | インクジェット記録装置および該装置用記録ヘッドの吐出回復処理方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017128113A (ja) * | 2016-01-14 | 2017-07-27 | 株式会社リコー | 液体吐出装置、インクジェットシステム、フラッシング方法 |
-
2008
- 2008-04-01 JP JP2008094814A patent/JP2009248323A/ja not_active Withdrawn
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