図8は、基地局70と移動局72を含む第1の移動通信システムと、基地局80と移動局82とを含む第2の移動通信システムと、が同一の領域に混在する状況を示す図である。同図に示す状況の下では、基地局80から送信された電波が、基地局80に隣接する基地局70に到達する場合がある。
ここで、基地局70および基地局80がOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)方式により移動局72および移動局82とそれぞれ通信を行っているものとすると、この場合に基地局70で受信される信号のスペクトルはたとえば図9のようになる。すなわち、同図に示すように、基地局80から到来する電波(5)のサイドローブによって移動局72から到来する電波(希望波)のサブキャリア(4)の直交性が崩れ、基地局70がサブキャリア(4)で伝送される信号を正しく復調することが困難となり信号の受信品質が低下する。
なお、このように基地局70と基地局80がOFDMA方式を採用する場合に限らず、隣接基地局間で互いに同期が取られていない場合にも、基地局80から送信された電波が基地局70の通信を妨害するという事象は発生しうる。
ただし、上記アダプティブアレー制御を用いればこのような妨害波を抑制できる場合がある。つまり、アレーアンテナを用いた指向性制御によって妨害波の到来方向に指向性パターンのヌルを向けることができれば、このような妨害波を抑制することができる。
しかしながら、上記従来の基地局は、アレーアンテナの指向性制御によって妨害波を抑制できるか否かにかかわらず、キャリアセンスにおいて妨害波の検出されない(または妨害波レベルが所定値未満である)無線チャネルだけを移動局に割り当てるようにしている(図10参照)。このため、たとえその妨害波が抑制可能なものであっても、妨害波が検出されるというだけで通信に使用されない無線チャネルが生じることとなり、周波数利用効率の点で問題があった。
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、周波数の利用効率を向上させる基地局装置およびチャネル割り当て方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る基地局装置は、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナを備え、複数の無線チャネルの少なくとも一部を用いて移動局装置と通信を行う基地局装置であって、前記複数の無線チャネルのうち通信に使用されていない無線チャネルで検出される妨害波の到来方向を示す妨害波到来方向情報を取得する妨害波到来方向情報取得手段と、前記移動局装置から到来する希望波の到来方向を示す希望波到来方向情報を取得する希望波到来方向情報取得手段と、前記希望波到来方向情報と前記妨害波到来方向情報とに基づいて、前記希望波の到来方向に主ビームを向けるとともに前記妨害波の到来方向にヌルを向ける指向性パターンを形成できるか否かを判定する妨害波抑制判定手段と、前記妨害波抑制判定手段による判定結果に基づいて、前記妨害波が検出される無線チャネルを前記移動局装置に割り当てるか否かを決定するチャネル割当手段と、を含むことを特徴とする。
本発明では、ある無線チャネルにおいて妨害波が検出される場合であっても、ビームフォーミングにより移動局装置から到来する希望波の到来方向(移動局装置が所在する方向)に主ビームを向け、ヌルステアリングによりその妨害波の到来方向にヌルを向ける指向性パターンを形成できる場合であれば、基地局装置はその無線チャネルを移動局装置に割り当てる。本発明によれば、従来利用されていなかった無線チャネルが通信に使用されるようになり、周波数の利用効率を向上させることができる。なお、ここでいう到来方向情報は、たとえば、到来方向を示す角度情報であってもよいし、到来方向を示す1または複数のベクトル情報であってもよい。
また、本発明の一態様では、前記妨害波抑制判定手段は、前記希望波到来方向情報により示される前記希望波の到来方向と前記妨害波到来方向情報により示される前記妨害波の到来方向とのなす角度に基づいて、前記判定を行う。
この態様によれば、希望波の到来方向と妨害波の到来方向とのなす角度に基づいて、その妨害波を抑制できるか否かを判定することができる。
また、本発明の一態様では、前記妨害波が検出される無線チャネルに関連づけて、該妨害波の到来方向を示す妨害波到来方向情報を記憶する妨害波到来方向情報記憶手段をさらに含み、前記妨害波抑制判定手段は、前記希望波到来方向情報により示される前記希望波の到来方向と前記妨害波到来方向情報記憶手段に記憶される前記妨害波到来方向情報により示される前記妨害波の到来方向とのなす角度の大きい無線チャネルから、前記判定を行う。
この態様によれば、希望波の到来方向と妨害波の到来方向とのなす角度の大きい無線チャネルが優先的に移動局装置に割り当てられる。このため、移動局装置の移動などによる通信品質の低下を防ぎつつ、周波数の利用効率を向上させることができる。
また、本発明の一態様では、前記複数の無線チャネルのうち通信に使用されていない無線チャネルにおける妨害波レベルを検出する妨害波レベル検出手段をさらに含み、前記妨害波抑制判定手段は、前記妨害波レベル検出手段により検出される妨害波レベルの小さい無線チャネルから、前記判定を行う。
この態様によれば、妨害波が検出される無線チャネルのうち妨害波レベルの小さい無線チャネルが優先的に移動局装置に割り当てられる。このため、通信品質の低下を防ぎつつ、周波数の利用効率を向上させることができる。
また、本発明の一態様では、前記妨害波到来方向情報は、前記各アンテナ素子で受信された無線信号を合成した合成信号のレベルが所定値以上となる前記各アンテナ素子のウェイト(重み係数)である。
また、本発明の一態様では、前記妨害波到来方向情報は、前記指向性パターンの主ビームが前記妨害波の到来方向に向くよう決定された前記各アンテナ素子のウェイトである。なお、ウェイトの制御には、公知のウェイト制御アルゴリズムのいずれを用いてもよい。
また、本発明の一態様では、前記妨害波の到来方向は、異なるタイミングで取得された複数の前記妨害波到来方向情報に基づいて算出される。これにより、妨害波の到来方向の推定誤差を低減することができる。
また、本発明の一態様では、前記希望波到来方向情報は、前記指向性パターンの主ビームが前記希望波の到来方向に向くよう決定された前記各アンテナ素子のウェイトである。なお、ウェイトの制御には、公知のウェイト制御アルゴリズムのいずれを用いてもよい。
また、本発明に係るチャネル割り当て方法は、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナを備え、複数の無線チャネルの少なくとも一部を用いて移動局装置と通信を行う基地局装置のチャネル割り当て方法であって、前記複数の無線チャネルのうち通信に使用されていない無線チャネルで検出される妨害波の到来方向を示す妨害波到来方向情報を取得するステップと、前記移動局装置から到来する希望波の到来方向を示す希望波到来方向情報を取得するステップと、前記希望波到来方向情報と前記妨害波到来方向情報とに基づいて、前記希望波の到来方向に主ビームを向けるとともに前記妨害波の到来方向にヌルを向ける指向性パターンを形成できるか否かを判定するステップと、前記判定の結果に基づいて、前記妨害波が検出される無線チャネルを前記移動局装置に割り当てるか否かを決定するステップと、を含むことを特徴とする。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る移動通信システム10の全体構成図である。同図に示すように、移動通信システム10は、基地局12と複数の移動局14(ここでは移動局14−1〜14−3の3つのみを表記する)を含んで構成されている。
基地局12は、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナを備え、TDMA/TDD(Time Division Multiple Access/Time Division Duplex:時分割多元接続/時分割双方向通信)方式およびOFDMA方式により、複数の無線チャネルの少なくとも一部を用いて複数の移動局14それぞれと通信を行う。移動局14は、たとえば可搬型の携帯電話機、携帯情報端末、または通信カードである。
TDMA/TDD方式による各タイムフレーム(TDMAフレーム)は、たとえば、ダウンリンク(基地局12から移動局14に向かう無線伝送路)用の4つのタイムスロットとアップリンク(移動局14から基地局12に向かう無線伝送路)用の4つのタイムスロットとから構成される。また、各タイムスロットには、OFDMA方式による複数のサブキャリア(たとえば24のサブキャリア)から構成されるサブチャネル(たとえば20サブチャネル)が複数規定されている。
移動通信システム10では、このように規定されたタイムスロットとサブチャネルとの組み合わせによって、各無線チャネルが特定される。基地局12は、移動局14からのリンクチャネル確立要求信号を受信した時または移動局14に無線チャネルの再割り当てを行う時に、上記複数の無線チャネルの中から1以上の無線チャネルを選出し、選出した無線チャネルを移動局14に割り当てる。
特に、本実施形態では、ある無線チャネルにおいて所定レベル以上の妨害波が検出される場合であっても、ビームフォーミングにより移動局14から到来する希望波の到来方向に主ビームを向け、ヌルステアリングによりその妨害波の到来方向にヌルを向ける指向性パターンを形成できる場合であれば、基地局12はその無線チャネルを移動局14に割り当てるようにしている。このため、従来利用されていなかった無線チャネルが通信に使用されるようになり、周波数の利用効率を向上させることができる。
以下では、上記処理を実現するために基地局12が備える構成および機能について詳細に説明する。
図2は、基地局12の機能ブロック図である。同図に示すように、基地局12は、互いに空間相関の低い複数のアンテナ素子(ここではアンテナ素子20−1〜20−4の4本とする)、無線通信部22、ベースバンド部24、信号処理部26(アダプティブ制御部28、妨害波レベル検出部30)、制御部32(妨害波抑制判定部34、チャネル割当部36)、および記憶部38を含んで構成される。
アンテナ素子20−1〜20−4は、アレーアンテナを構成する。各アンテナ素子20は、受信スロットごとに無線信号を受信し、受信した無線信号を無線通信部22に出力する。また、各アンテナ素子20は、送信スロットごとに無線通信部22から供給される無線信号を移動局14に対して放射する。なお、無線信号の受信と送信は、無線通信部22の指示に従って時分割で切り替えられる。
無線通信部22は、ローノイズアンプ、パワーアンプ、局部発振器、ミキサ、およびフィルタを含んで構成される。アンテナ素子20−1〜20−4から入力される無線信号は、ローノイズアンプで増幅され、さらに中間周波数信号にダウンコンバートされた後、ベースバンド部24に出力される。また、ベースバンド部24から入力されるベースバンドOFDM信号は、無線信号にアップコンバートされ、パワーアンプで送信出力レベルまで増幅された後、アンテナ素子20−1〜20−4に供給される。
ベースバンド部24は、図示しないOFDM復調部およびOFDM変調部を含み、たとえばDSPで構成される。
OFDM復調部は、A/Dコンバータ、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部、およびシンボルデマッパを含んで構成される。無線通信部22からOFDM復調部に入力される信号は、A/Dコンバータでディジタル信号に変換される。このディジタル信号は、直並列変換された後、FFT部で実行されるフーリエ変換により複素シンボル列の各サブキャリア成分に変換される。複素シンボル列の各サブキャリア成分は、並直列変換により連続する複素シンボル列に変換され、シンボルデマッパにおいてシンボルの変調方式に応じたデータビット列(受信データ)に復号された後、信号処理部26に出力される。
OFDM変調部は、D/Aコンバータ、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部、およびシンボルマッパを含んで構成される。信号処理部26からOFDM変調部に入力されるデータビット列(送信データ)は、シンボルマッパで複素シンボル列に変換された後、直並列変換によって各サブキャリア成分に分割される。この複素シンボル列の各サブキャリア成分は、IFFT部で実行される逆フーリエ変換によってOFDMシンボルの標本値に変換され、さらに並直列変換により連続信号に変換される。この連続信号は、D/Aコンバータでアナログ信号に変換された後、ベースバンドOFDM信号(変調信号)として無線通信部22に出力される。
なお、上記のシンボルマッピング処理やシンボルデマッピング処理は、信号処理部26で行うようにしてもよい。
信号処理部26は、アダプティブ制御部28および妨害波レベル検出部30を含み、たとえばDSP(Digital Signal Processor)で構成される。
アダプティブ制御部28は、アンテナ素子20−1〜20−4のウェイトを調整することにより、アレーアンテナの指向性パターンを制御する。すなわち、アダプティブ制御部28は、図3に示すように、到来波x1(t)〜x4(t)を受信する4つのアンテナ素子20−1〜20−4の出力(アンテナ素子20−1〜20−4から無線通信部22およびベースバンド部24を介して出力される信号)にそれぞれウェイト(重み係数)w1〜w4を乗じ、それら重み付けされた信号を合成したアレー出力信号y(t)と所定の事前情報とに基づいて、所望の指向性パターンを形成するようウェイトw1〜w4を制御する。
本実施形態では、移動局14との通信に使用されている無線チャネルだけでなく、移動局14との通信に使用されていない無線チャネル(空きチャネル)においても、ウェイト制御を行う。以下、通信に使用されている無線チャネルにおけるウェイト決定方法(以下「ウェイト決定方法1」という)と空きチャネルにおけるウェイト決定方法(以下「ウェイト決定方法2」という)をそれぞれ説明する。
まず、ウェイト決定方法1について説明する。移動局14との通信に使用されている無線チャネルでは、アダプティブ制御部28は、指向性パターンの主ビームが移動局14から到来する希望波の到来方向に向き(ビームフォーミング)、指向性パターンのヌルが当該無線チャネルで検出される妨害波の到来方向に向くよう(ヌルステアリング)、公知のウェイト制御アルゴリズムを用いてアンテナ素子20−1〜20−4のウェイトw1〜w4を制御する。たとえば、アダプティブ制御部28は、MMSE(Minimum Mean Square Error:最小二乗誤差法)により、アレー出力信号y(t)と希望波の所定位置に含まれる既知信号(参照信号)との誤差が最小となるようウェイトw1〜w4を制御する。なお、移動局14から到来する希望波には、移動局14から送信されるリンクチャネル確立要求信号や通信信号などが含まれる。
こうして決定されるウェイトw1〜w4が適用されたアレー出力信号y(t)は、上位装置(図示せず)や制御部32などに出力される。また、決定されたウェイトは、当該移動局14に対する無線信号の送信にも適用される。すなわち、アダプティブ制御部28は、上位装置(図示せず)や制御部32などから入力される信号に直前の受信スロットで決定されたウェイトw1〜w4をそれぞれ乗じ、重み付けされた信号をベースバンド部24および無線通信部22を介してアンテナ素子20−1〜20−4に供給する。
次に、ウェイト決定方法2について説明する。以下では、ウェイト決定方法2により決定されるアンテナ素子20−1〜20−4のウェイトをw1’〜w4’と表記する。移動局14との通信に使用されていない空きチャネルでは、アダプティブ制御部28は、アレー出力信号y(t)のレベルが所定値以上となる1または複数組のウェイトw1’〜w4’を取得する。これにより、指向性パターンの主ビームを当該空きチャネルで検出される妨害波の到来方向に向けるウェイトw1’〜w4’が得られる。このように決定されたウェイトw1’〜w4’は、妨害波の到来方向を示す情報として、空きチャネルを示す無線チャネル識別情報に関連づけて記憶部38に記憶される(図4参照)。
なお、アダプティブ制御部28は、ウェイト決定方法2として、指向性パターンの主ビームが空きチャネルで検出される妨害波の到来方向に向くようウェイトw1’〜w4’を制御してもよい。たとえば、アダプティブ制御部28は、アレー出力信号y(t)が最大となるようウェイトw1’〜w4’を制御してもよい。
妨害波レベル検出部30は、後述するチャネル割当部36の指示に従ってキャリアセンスを行い、各空きチャネルで受信される無線信号の受信レベルを妨害波レベルとして検出する。
制御部32は、たとえばCPUおよびメモリなどで構成され、メモリに格納されるプログラムをCPUが実行することにより基地局12の各部を制御する。特に、制御部32は、妨害波抑制判定部34およびチャネル割当部36を含む。
妨害波抑制判定部34は、チャネル割当部36の指示に従い、移動局14から到来する希望波の到来方向に主ビームを向けるとともにチャネル割当部36に指定される空きチャネルで検出された妨害波の到来方向にヌルを向ける指向性パターンを形成できるか否かを判定する。
この判定は、上記ウェイト決定方法1により決定されたウェイトw1〜w4と、上記ウェイト決定方法2により決定されたウェイトw1’〜w4’と、に基づいて行われる。上記のとおり、ウェイト決定方法1により決定されたウェイトw1〜w4は、指向性パターンの主ビームが希望波の到来方向に向くよう決定されたものであり、希望波の到来方向を示している。また、ウェイト決定方法2により決定されたウェイトw1’〜w4’は、アレー出力信号y(t)のレベルが所定値以上となるよう決定されたものであり、妨害波の到来方向を示している。
すなわち、妨害波抑制判定部34は、チャネル割当部36に指定される空きチャネルに関連づけて記憶されたウェイトw1’〜w4’を記憶部38から読み出し、ウェイトw1〜w4により示される希望波の到来方向と読み出されたウェイトw1’〜w4’により示される妨害波の到来方向とのなす角度を算出する。そして、妨害波抑制判定部34は、算出された角度が所定角度以上であるか否かを評価することにより、移動局14から到来する希望波の到来方向に主ビームを向けるとともにチャネル割当部36に指定される空きチャネルで検出された妨害波の到来方向にヌルを向ける指向性パターンを形成できるか否かを判定する。なお、ウェイトから妨害波および希望波の到来方向もしくはそれら到来方向のなす角度を得るためには、MUSIC(Multiple Signal Classification)法その他の公知の算出方法を用いることができる。
チャネル割当部36は、移動局14からのリンクチャネル確立要求信号が受信された時または移動局14に無線チャネルの再割り当てを行う時に、移動局14に割り当てる無線チャネルを決定し、決定した無線チャネルを移動局14に通知する。
チャネル割当部36は、まず、移動局14に割り当てる無線チャネルを決定する前に、妨害波レベル検出部30にキャリアセンスを行わせ、妨害波レベルが所定値未満である空きチャネルが存在するか否かを判定する。ここで、妨害波レベルが所定値未満である空きチャネルが存在すれば、チャネル割当部36は当該空きチャネルを移動局14に割り当てる。
一方、空きチャネルにおける妨害波レベルがすべて所定値以上である場合、チャネル割当部36は、空きチャネルの中から1または複数の割当候補チャネルを選択し、その割当候補チャネルについて妨害波抑制判定部34に上記の判定を行わせる。ここで、妨害波抑制判定部34が移動局14から到来する希望波の到来方向に主ビームを向けるとともに空きチャネルで検出された妨害波の到来方向にヌルを向ける指向性パターンを形成できると判定すると、チャネル割当部36はその割当候補チャネルを移動局14に割り当てる。割当候補チャネルの選択基準については後述する。
次に、基地局12の動作について説明する。
図5は、基地局12によって実行される妨害波到来方向情報(アンテナ素子20−1〜20−4のウェイトw1’〜w4’)の取得処理の一例を示すフロー図である。本処理は、定期的にまたは空きチャネルが発生した時などに実行される。
同図に示すように、基地局12は、空きチャネルにおいて受信された無線信号(妨害波)に係るアレー出力信号が最大となるよう各アンテナ素子20のウェイトw1’〜w4’を決定し(S100)、当該空きチャネルを識別するチャネル識別情報に関連づけて決定されたウェイトw1’〜w4’を記憶部38に保存する(S102)。
図6は、基地局12によって実行されるチャネル割り当て処理の一例を示すフロー図である。本処理は、基地局12が移動局14からのリンクチャネル確立要求信号を受信した時または移動局14に無線チャネルの再割り当てを行う時に実行される。
同図に示すように、基地局12は、移動局14から到来する希望波に係るアレー出力信号と既知信号との誤差が最小となるよう各アンテナ素子20のウェイトw1〜w4を決定する(S200)。次に、基地局12は、キャリアセンスによって各空きチャネルにおける妨害波レベルを検出し(S202)、妨害波レベルが所定値未満である空きチャネルが存在するか否かを判定する(S204)。ここで、妨害波レベルが所定値未満である空きチャネルが存在すれば、基地局12は、その空きチャネルを移動局14に割り当てる(S206)。
これに対し、S202で検出された妨害波レベルが所定値未満である空きチャネルが存在しなければ、基地局12は、空きチャネルの中から割当候補チャネルを選択する(S208)。たとえば、基地局12は、空きチャネルのうちS202で検出された妨害波レベルが小さいものから割当候補チャネルとして選択する。
次に、基地局12は、割当候補チャネルに関連づけて記憶されたウェイトw1’〜w4’を記憶部38から読み出し、S102で決定されたウェイトw1〜w4により示される希望波の到来方向と読み出されたウェイトw1’〜w4’により示される妨害波の到来方向とのなす角度が所定角度以上であるか否かを判定する(S210)。ここで、当該なす角度が所定角度以上であれば、基地局12は、その割当候補チャネルを移動局14に割り当てる(S206)。一方、当該なす角度が所定角度未満であれば、基地局12は、他の割当候補チャネルが存在するか否かを判定し(S212)、他の割当候補チャネルが存在すればS208移行の処理を行い、他の割当候補チャネルが存在しなければ移動局14に無線チャネルを割り当てることなく本処理を終了する。
なお、上述したS208〜S210の処理に代えて、基地局12は、各空きチャネルに関連づけて記憶されたウェイトw1’〜w4’を記憶部38から読み出し、S102で決定されたウェイトw1〜w4により示される希望波の到来方向と読み出されたウェイトw1’〜w4’により示される妨害波の到来方向とのなす角度が大きいものから、当該なす角度が所定角度以上であるか否かを判定するようにしてもよい。もちろん、希望波の到来方向と妨害波の到来方向とのなす角度の最大値が所定角度未満である場合には、S212の判定をすることなく本処理を終了してもよい。
以上説明した移動通信システム10によれば、ある無線チャネルにおいて所定レベル以上の妨害波が検出される場合であっても、ビームフォーミングにより移動局14から到来する希望波の到来方向に主ビームを向け、ヌルステアリングによりその妨害波の到来方向にヌルを向ける指向性パターンを形成できる場合であれば、基地局12はその無線チャネルを移動局14に割り当てる。このため、図7に示すように、従来利用されていなかった無線チャネル(妨害波レベルは高いがアダプティブアレー制御により抑制可能な無線チャネル)が通信に使用されるようになり、周波数の利用効率を向上させることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
たとえば、本発明は、アレイアンテナを備え、キャリアセンス結果に基づいて移動局に割り当てる無線チャネルを決定する基地局に広く適用可能である。また、本発明が対象とする妨害波には、隣接基地局または近接基地局から到来する妨害波に限らず、基地局と移動局との通信を妨害する電波全般が含まれるものとする。
また、上記実施形態において、妨害波の到来方向の推定誤差を低減するために、異なるタイミングで取得されたウェイトw1’〜w4’に基づいて妨害波の到来方向を算出してもよい。
10 移動通信システム、12,70,80 基地局、14,72,82 移動局、20 アンテナ素子(アレーアンテナ)、22 無線通信部、24 ベースバンド部、26 信号処理部、28 アダプティブ制御部、30 妨害波レベル検出部、32 制御部、34 妨害波抑制判定部、36 チャネル割当部、38 記憶部。