JP2009243971A - 車両用光スキャン装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】レンズホルダの回転を防止した高性能な車両用光スキャナ装置を提供することである。
【解決手段】車両用光スキャン装置は、発光素子と、光学素子と、ホルダと、該ホルダを光学素子の光軸に垂直なX軸方向及びY軸方向に移動可能に支持するワイヤバネ18a〜108tと、上記ホルダに固定されたアジマスコイルとを備えており、発光素子からの光を上記光学素子に通し、該光学素子を移動させて光を走査する。そして、アジマスコイルに電流を流すワイヤバネ108a、108j、108k、108t及び108e、108f、108o、108pが並列接続される。更に、ワイヤバネ108a、108j、108k、108tと、ワイヤバネ108e、108f、108o、108pが、それぞれX−Z平面及びY−Z平面に面対称に配置されている。
【選択図】 図13
【解決手段】車両用光スキャン装置は、発光素子と、光学素子と、ホルダと、該ホルダを光学素子の光軸に垂直なX軸方向及びY軸方向に移動可能に支持するワイヤバネ18a〜108tと、上記ホルダに固定されたアジマスコイルとを備えており、発光素子からの光を上記光学素子に通し、該光学素子を移動させて光を走査する。そして、アジマスコイルに電流を流すワイヤバネ108a、108j、108k、108t及び108e、108f、108o、108pが並列接続される。更に、ワイヤバネ108a、108j、108k、108tと、ワイヤバネ108e、108f、108o、108pが、それぞれX−Z平面及びY−Z平面に面対称に配置されている。
【選択図】 図13
Description
本発明は、レーザ光を照射し、反射光より障害物の検出等を行う車載用測距装置などに設けられる光を走査する車両用光スキャン装置に関するものである。
近年、走行中の車両の前方を走査して障害物の存在をドライバに警告する光線スキャン方式の車載レーダ装置が実用化されている。
近年、車両に於いて、先行車両や障害物を検知して物体の情報を運転者に告知し、先行車両との車間距離を所定の距離に保つように自動的に車両の速度を制御するシステムが開発されている。このようなシステムでは、レーザ光等の光ビームを車両の周囲の所定の角度範囲に走査して出射すると共に、その出射した光ビームの反射波を受光して、その光ビームの出射方向に存在する物体の位置や距離等が測距される。
また、例えば、下記特許文献1には、レンズを移動させることによってレーザ光を走査する装置が開示されている。同装置のアクチュエータでは、レンズを備えたレンズホルダは、4本の線状、或いは薄板状のばねによって、上下左右2方向に変位可能に支持されている。レンズホルダには、上下駆動用コイルと左右駆動用コイルが設けられ、これによって駆動されている。
尚、ここでは明記されていないが、通常、ばねによって支持したレンズホルダでは、レンズホルダに備えた上下駆動用コイル及び左右駆動用コイルヘの給電は、ばねを用いて行う。ばねによって給電することで、別途、フレキシブル基板等の給電部材を設ける必要がなくなり、低価格化を図ることができる。
更に、フレキシブル基板等の給電用の部材でレンズホルダの動きを阻害することもなくなり、高性能な装置とすることができる。
特開2002−162469号公報
レンズホルダは上下左右の2方向に移動すればよいが、4本のばねで支持した場合、ばねの長手方向を軸として回転する方向の自由度も有している。回転方向には駆動しないので、通常は、このような回転は生じない。
しかしながら、駆動のバランスや支持のバランスが崩れると回転が生じることがあり、且つ、回転は本来の動きではないので、制御機構がなく、場合によっては回転し続けてしまうことがある。
レーザ光の走査は上下左右の1方向、左右方向で行われ、上下方向への移動は走査する範囲を上下方向に変更するときに行うのが一般的である。したがって、レンズホルダは左右方向の動きが主となり、左右駆動用コイルには大きな電流が流される。
上述したように、上下駆動用コイル及び左右駆動用コイルヘの給電は、ばねを用いて行う。上下駆動用コイル及び左右駆動用コイルに流れる電流によってばねが発熱するので、左右駆動用コイルに流れる電流を通しているばねの方が発熱が大きくなる。すると、大電流を流すために、発熱は無視できず、ばねの温度が上昇し、ばね定数が小さくなる。これが、左右駆動用コイルに流れる電流を通しているばねで顕著に起き、上下駆動用コイルに流れる電流を通しているばねではあまり生じないため、ばね定数の差異により支持のバランスが崩れ、レンズホルダの回転が生じてしまう。レンズホルダの回転が生じると、光の位置が揺れる等、光を正しく走査することができなくなってしまう。
近年、このような装置では高性能化するために、高速化、精度の高い制御が要求されている。高速化をするためには、発生駆動力を大きくするために左右駆動用コイルにより大きな電流を流す必要があり、より不利な方向となる。
また、高い精度を要求すると、レンズホルダの回転による位置ずれを許容できなくなり、高性能化を図ると、上述した現象が問題となってくる。
更に、車両に用いる場合は、広い範囲に光を走査する必要がある。ところが、一般に、レンズホルダの移動量が大きいほど回転しやすいため、より問題となっている。
したがって本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、レンズホルダの回転を防止した高性能な車両用光スキャナ装置を提供することである。
すなわち請求項1に記載の発明は、光学素子と、該光学素子を備えたホルダと、該ホルダを上記光学素子の光軸に垂直な第1の軸の方向と上記光軸及び上記第1の軸の方向に垂直な第2の軸の方向に移動可能に支持する少なくとも6本の金属バネと、上記ホルダを上記第1及び第2の軸の方向に駆動するための、上記ホルダに固定されたコイルと、発光素子とを少なくとも備え、該発光素子からの光を上記光学素子に通し、該光学素子を移動させることによって上記光を走査し、照射する車両用光スキャン装置に於いて、上記コイルの少なくとも一部への電流を流すための配線は、2本以上の金属バネを並列接続し、コイル両端で少なくとも4本の金属バネを用い、該並列接続された少なくとも4本の金属バネは、上記光軸と上記第1の軸を含む第1の平面と、上記光軸と上記第2の軸を含む第2の平面と、に対してそれぞれ面対称に配置されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、レンズホルダの回転を防止し、高性能化を図ることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に於いて、上記発光素子は、連続或いは間欠点灯されて上記第1の軸の方向に光を走査し、上記並列接続された少なくとも4本の金属バネは、上記第1の軸方向に対して上記ホルダを駆動するためのコイルに電流を流すための配線であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、低価格化を図ることができる。
請求項3に記載の発明は、光学素子と、該光学素子を備えたホルダと、該ホルダを上記光学素子の光軸に垂直な第1の軸の方向と上記光軸及び上記第1の軸の方向に垂直な第2の軸の方向に移動可能に支持する少なくとも6本の金属バネと、上記ホルダを上記第1及び第2の軸の方向に駆動するための、上記ホルダに固定されたコイルと、発光素子とを少なくとも備え、該発光素子からの光を上記光学素子に通し、該光学素子を移動させることによって上記光を走査し、照射する車両用光スキャン装置に於いて、上記コイルの少なくとも一部への電流を流すための配線は、2本以上の金属バネを並列接続し、コイル両端で少なくとも4本の金属を用い、該並列接続された少なくとも4本の金属バネは、光軸に平行な軸に対して回転対称に配置されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、レンズホルダの回転を防止し、高性能化を図ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明に於いて、上記発光素子は、連続或いは間欠点灯されて上記第1の軸の方向に光を走査し、上記並列接続された少なくとも4本の金属バネは、上記第1の軸方向に上記ホルダを駆動するためのコイルに電流を流すための配線であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、低価格化を図ることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2若しくは4に記載の発明に於いて、上記第1の軸の方向は地面に水平方向として設置されることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、より効果を享受することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の発明に於いて、上記金属バネは、円形断面を有するワイヤバネであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、低価格化を図ることできる。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の発明に於いて、上記金属バネは、長方形断面を有する板バネであることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、特性を向上させることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れか1項に記載の発明に於いて、上記金属バネは、粘弾性部材によってダンピングが取られていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、レンズホルダの回転を防止し、高性能化を図ることができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れか1項に記載の発明に於いて、上記金属バネは、ゴムによってダンピングが取られていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、より効果を享受することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至8の何れか1項に記載の発明に於いて、上記金属バネは、シリコンゲルによってダンピングが取られていることを特徴とする。
請求項10に記載の発明によれば、低価格化を図ることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1乃至図13は本発明の第1の実施形態を示すもので、図1は本発明の第1の実施形態に係る車両用光スキャン装置の斜視図、図2は図1と反対側から見た車両用光スキャン装置の斜視図、図3はレーザダイオードのレーザ光の光軸上Y−Z平面で切った車両用光スキャン装置の断面斜視図、図4は位置検出用発光ダイオードのレーザ光の光軸上Y−Z平面で切った車両用光スキャン装置の断面斜視図、図5はレーザダイオードのレーザ光の光軸上Z−X平面で切った車両用光スキャン装置の断面斜視図、図6は車両用光スキャン装置全体の一部分解斜視図、図7はヨークに固定されたレンズ部分の分解斜視図、図8は車両用光スキャン装置を構成する2軸アクチュエータのヨークを外した分解斜視図、図9は図8で外したヨークを除いた2軸アクチュエータの分解斜視図、図10は図9の2軸アクチュエータより、更にレンズホルダ部組を外した分解斜視図、図11はレンズホルダ部組の分解斜視図、図12は本車両用光スキャン装置の使用例の説明図、図13は第1の実施形態に於ける車両用光スキャン装置の要部の説明図である。
図1乃至図13は本発明の第1の実施形態を示すもので、図1は本発明の第1の実施形態に係る車両用光スキャン装置の斜視図、図2は図1と反対側から見た車両用光スキャン装置の斜視図、図3はレーザダイオードのレーザ光の光軸上Y−Z平面で切った車両用光スキャン装置の断面斜視図、図4は位置検出用発光ダイオードのレーザ光の光軸上Y−Z平面で切った車両用光スキャン装置の断面斜視図、図5はレーザダイオードのレーザ光の光軸上Z−X平面で切った車両用光スキャン装置の断面斜視図、図6は車両用光スキャン装置全体の一部分解斜視図、図7はヨークに固定されたレンズ部分の分解斜視図、図8は車両用光スキャン装置を構成する2軸アクチュエータのヨークを外した分解斜視図、図9は図8で外したヨークを除いた2軸アクチュエータの分解斜視図、図10は図9の2軸アクチュエータより、更にレンズホルダ部組を外した分解斜視図、図11はレンズホルダ部組の分解斜視図、図12は本車両用光スキャン装置の使用例の説明図、図13は第1の実施形態に於ける車両用光スキャン装置の要部の説明図である。
図1に示されるように、本実施形態の車両用光スキャン装置25は、その本体となるベース30に、バネ受け31と、ヨーク32及び33とから成る2軸アクチュエータ125と、レンズ36を有したホルダ37等が搭載されて構成されている。
先ず、図5及び図11を参照して、レンズホルダ部組60の構成について説明する。
ガラス入りのポリフェニレンサルファイド樹脂で製作されたレンズホルダ61の中央部には、開口62が形成されており、この開口62に設けられた段状部に、レンズ36が接着固定されている。
図11に於いて、上記レンズホルダ61の開口62の上下(Y軸)方向及び左側の端部には、複数の凸部63a〜63cが形成されている。このうち、凸部63a、63bは、銅クラッドアルミ線で巻線された空芯コイルのエレベーションコイル81a、81bの内側の開口部が嵌挿されて接着固定されている。同様に、上記凸部63cには、銅クラッドアルミ線で巻線された空芯コイルのアジマスコイル80の内側の開口部が嵌挿されて、接着固定されている。
更に、上記凸部63a及び63bの左右両側には、それぞれ後述するワイヤバネ108a〜108e、108f〜108j、108k〜108o、108p〜108tを通すための開口64a、64b、64c、64dが、それぞれ設けられている。また、開口62の周囲には、基板70を介してホルダ85を装着するための、円形断面を有する複数の柱部65a〜65dが設けられている。そして、図11に於いて、レンズホルダ61の右側、すなわち凸部63a〜63cが設けられていない側には、図5に示されるように溝140が設けられており、そこに真鍮製のバランサ67が接着固定されている。これは、X軸方向の一方側に配されたアジマスコイル80により、X軸方向の重心がずれるので、このバランサ67によりバランスを取っている。したがって、レンズホルダ部組60の重心は、X軸方向に於いてエレベーションコイル81a、81bの中心位置となるようにされている。
上記レンズホルダ61には、基板70も接着固定されている。レンズホルダ61に設けられている複数の柱部65a〜65dに、上記基板70に形成された穴72a〜72dが挿入されることにより、位置決めされている。但し、柱部65a〜65dと穴72a〜72dの全て大きさ、間隔を一致させるのは公差があり困難である。そこで、穴72cは柱部65cより僅かに大きな直径を有し、穴72bは穴72c、72bを結ぶ方向に平行な直線部を有する長穴とし、直線部の距離は柱部65bより僅かに大きくされ、この2箇所でX軸、Y軸方向に、基板70がレンズホルダ61に対して位置決めされている。基板70の中央部には、レンズ36を避けるために、開口71が設けられている。
上記基板70には、また、後述するワイヤバネ108a〜108e、108f〜108j、108k〜108o、108p〜108tを通すための複数の穴73a〜73e、73f〜73j、73k〜73o、73p〜73tが、それぞれ設けられている。更に、基板70には、発光ダイオード(LED)76a、76b及びサーミスタ77が半田付けによって固定されている。発光ダイオード76a、76bは、基板70に形成された開口74a、74bに発光部分が露出する状態で、基板70のレンズホルダ61側に固定されている。これら発光ダイオード76a、76bから照射された光は、図11に於いてホルダ85側に射出される。
また、サーミスタ77は、基板70のレンズホルダ61側に固定されている。図9に示されるように、レンズホルダ61の対応する部分に開口110が設けられており、サーミスタ77はレンズホルダ61周辺の温度を検出するようになっている。尚、図示されていないが、アジマスコイル80、エレベーションコイル81a、81の端末は、基板70に半田付けされている。
図11に於いて、基板70のレンズホルダ61と反対側には、カーボン繊維入りの液晶ポリマで製作されているホルダ85が接着固定されている。これらのレンズホルダ61及びホルダ85、基板70等から成る部組をレンズホルダ部組60と称する。ホルダ85の中央部には開口86が形成されており、更にこの開口86の周囲には複数の穴87a〜87dが設けられている。これらの穴87a〜87dは、レンズホルダ61に形成された柱部65a〜65dに通されている。穴87a〜87dと柱部65a〜65dの関係は、基板70の穴72a〜72dとの関係と同様で、この部分で、ホルダ85はレンズホルダ61に位置決めされている。レンズ36及び基板70は、レンズホルダ61に接着固定されるだけでなく、レンズホルダ61とホルダ85に挟まれる形態となり、より強固に固定される。
また、レンズホルダ61、ホルダ85、基板70とZ軸方向に距離をおいてX−Y平面に広がる面状の構造物が重なることで、レンズホルダ部組60の剛性を軽量ながら高めることができる。
ホルダ85には、基板70の発光ダイオード76a、76bに対応する位置に、スリット90a、90bが設けられており、それぞれの光を通すようになっている。スリット90a、90bの長手方向は、スリット90aはY軸方向に、スリット90bはX軸方向となっている。
ホルダ85の外縁部には、X軸方向にアジマス用凸部88a〜88dと、Y軸方向にエレベーション用凸部89a〜89dが形成されている。これらは、後述するヨークと共同して、レンズホルダ部組60の移動量ストッパを形成している。
次に、図2乃至図5及び図10を参照して、バネ受け部組41について説明する。
図4に示されるように、ガラス入りのポリフェニレンサルファイド樹脂で製作されたバネ受け31の穴部150aに、レンズ155、156が、そして穴部150bにレンズ157、158が、それぞれ接着固定されている。
図5、図10に示されるように、磁石92a、93a、93bが接着固定されたヨーク32も、バネ受け31に固定されている。ヨーク32は、図2に示されるネジ170a〜170dにより、間にバネ受け31を挟みこむ状態でネジ止めされている。ネジ170a〜170dは、ヨーク32のネジ穴95a〜95dにねじ込まれる形態となっている。ヨーク32は、ヨーク32に設けられた切り欠き99と穴100と、バネ受け31の凸部142a、142bによって位置決めされている。ヨーク32を固定するときに、ヨーク32とバネ受け31に挟まれる形態で、ポリフェニレンサルファイド樹脂で製作されたフード101a、101bも固定されている。
バネ受け31には、図2に示されるように、基板171、175も、ネジ181a、181bによってネジ止めされている。ネジ181a、181bは、ヨーク32のネジ穴96a、96bにねじ込まれる形態となっている。雌ネジ部をバネ受け31に設けても良いが、バネ受け31は樹脂製のため、雌ネジ部の耐久性等、長期にわたる信頼性が金属に比べ劣ってしまう。金属性の雌ネジ部材をインサート成型等によって埋め込むという方法もあるが、バネ受けが高価になってしまう。
そこで、本実施形態のように、磁気回路を形成するために金属でなくてはならないヨークを利用することにより、安価に信頼性の高い構造とすることができる。基板171、175は、各々に設けられた穴172a、172b及び176a、176bと、バネ受け31の凸部173a、173b及び177a、177bで位置決めされている。
以上、バネ受け31及びヨーク32、基板171、175等から成る部組をバネ受け部組41と称される。
図10、図11に示されるように、基板70には、複数の穴73a〜73tが設けられている。これらの穴73a〜73tには、20本の円形断面を有するベリリウム銅製のワイヤバネ108a〜108tが挿入され、端部が半田付けされている(但し、半田は図示されていない)。半田付け作業は、レンズホルダ61に形成された穴64a〜64dより行われる。これにより、レンズホルダ部組60が完成してから、ワイヤバネ108a〜108tの半田付けを行うことができる。
ワイヤバネ108a〜108tは、基板70を介して、アジマスコイル80、エレベーションコイル81a、81b、発光ダイオード76a、76b、サーミスタ77と接続されている。
ここで、図13を参照して、ワイヤバネ108a〜108tの接続状態の詳細について説明する。
アジマスコイル80は、その一端が基板70に形成されたパターン(図示せず)を経て4本のワイヤバネ108a、108j、108k、108t(図13ではA1 として示される)と接続され、他端が基板70に形成されたパターン(図示せず)を経て4本のワイヤバネ108e、108f、108o、108p(図13ではA2 として示される)と接続されている。すなわち、それぞれ4本のワイヤバネが並列接続される形として、ワイヤバネの抵抗値が低くされている。
一方、エレベーションコイル81a、81bは、基板70に形成されたパターン(図示せず)により直列接続されて、一端がワイヤバネ108c、108m(図13ではE1 として示される)と接続され、他端がワイヤバネ108h、108r(図13ではE2 として示される)と接続されている。エレベーションコイル81a、81bは2本のワイヤバネが並列接続される形となり、1本の場合よりもワイヤバネの抵抗値が小さくされている。
サーミスタ77は、一端がワイヤバネ108b、108dと、他端がワイヤバネ108l、108nと接続されている。これも、2本のワイヤバネが並列接続される形とされ、ワイヤバネの抵抗値が小さくされている。
また、発光ダイオード76aは、カソードがワイヤバネ108gに、アノードがワイヤバネ108iにそれぞれ接続され、発光ダイオード76bは、カソードがワイヤバネ108qに、アノードがワイヤバネ108sに、それぞれ接続されている。発光ダイオード76a、76bは電流値が大きくないので、ワイヤバネは並列接続されていない。サーミスタ77も電流は小さいが、抵抗値が用いられて温度測定されるので、ワイヤバネが並列接続されている。
ワイヤバネ108a〜108tのレンズホルダ部組60に半田付けした反対側は、ヨーク32の穴94a〜94dを通し、バネ受け31の穴105a〜105dに挿入されている。
ここで、バネ受け31の穴105a〜105dの内部を、穴105dで代表して、図4を参照して説明する。
穴105dは、基板54側に斜面152aが設けられて、細い形状152bとなる。図示されていないが、更に基板54側でワイヤバネ108p〜108tより僅かに大きい径を有する細い5つの穴となっている。穴152b、105dの部分は、5本のワイヤバネ108p〜108tが挿入されているが、穴152b、105dは5本で1つとなっている。穴152bには、紫外線硬化形のシリコンゲルが充填されている。この充填は、ホルダ31が切り欠かれ、ヨーク32との間に形成された隙間152cから行われる。
尚、穴105c、105dの充填は、これらの隙間から行われるが、穴105a、105b側にはホルダ31の切り欠き部がないので、穴105bでは、ホルダ31に設けられた穴152dから充填が行われる。穴105aについても、同様に穴が設けられている。
充填作業は、ホルダ37側を上にして行われ、シリコンゲルは斜面152aで、穴152bに誘導される。そして、穴152bがいっぱいになって、斜面152aにはみ出てきたところで作業は終わりとなる。このとき、正確には、図示されていない穴152bの基板54側の細い5つの穴にもシリコンゲルが流れていくが、シリコンゲルは硬化前でも粘度が高く、狭い隙間には流れにくい。
そこで、手早く作業を行い、紫外線により硬化させることで、穴152bの基板54側の細い5つの穴へのシリコンゲルの流れ込みを防ぐことができる。このシリコンゲルにより、ワイヤバネ108a〜108jの振動のダンピングが取られている。ワイヤバネ108p〜108tは、図2に示されるように、ホルダ37方向にバネ受け31より突出し、基板171、175の穴180p〜180tに挿入され、半田付けされている。基板171、175は、図2は示されない制御基板45に接続されている。
アジマスコイル80、エレベーションコイル81a、81b、発光ダイオード76a、76b、サーミスタ77は、ワイヤバネ108p〜108tを介して、制御キバン45に接続されていることになる。レンズホルダ部組60は、ワイヤバネ108p〜108tにより、X方向及びY方向に移動可能に支持されていることになる。
次に、図8に示されるように、磁石92b、93c、93dが接着された鉄製のヨーク33が、図7に示されるように、ホルダ37の方向からレンズホルダ部組60を覆うような形態で、バネ受け31に固定される。ヨーク33は、磁石92b、93c、93dの吸引力により、ヨーク32に吸い付くように付き、ヨーク33の面113a〜113dが、ヨーク32の凸部103a〜103dに当てつく形態となる。
また、図示されていないが、バネ受け31のベース30側の面には、X軸方向に離れた凸部が2つ設けられており、その間にヨーク33のベース30側の折り曲げ部114aが入る形態で位置決めされる。ヨーク33は、磁石92b、93c、93dの吸引力だけでもヨーク32に吸着されるが、振動等で外れることがないように、図8に示されるように、ネジ120a、120bによって、バネ受け31にネジ止めされている。ネジ120a、120bは、バネ受け31に設けられた穴に挿入され、ヨーク33に形成されたネジ穴117a、117bに締め付けられている。
ヨーク33には、また、折り曲げ部115a〜115dが設けられている。レンズホルダ部組60のX軸方向の動きをアジマス方向の動きと称する。アジマス方向に大きく移動したとき、ホルダ85に設けられたアジマス用凸部88a〜88dが、折り曲げ部115a〜115dと衝突する。それ以上はレンズホルダ部組60が移動できず、これらが、アジマス方向のストッパとなっている。
一方、レンズホルダ部組60のY軸方向の動きをエレベーション方向の動きと称する。エレベーション方向に大きく移動したとき、ホルダ85に設けられたエレベーション用凸部89a〜89dが折り曲げ部114a、114bと衝突する。それ以上はレンズホルダ部組60が移動できず、これらがエレベーション方向のストッパとなっている。
ヨーク33のアジマス方向のストッパ部分は、ストッパとしての役割のみを持つ折り曲げ部115a〜115であったが、エレベーション方向では、ヨーク32の折り曲げ部114a、114bは、ストッパとバネ受け部組41に固定するための構造部を兼ねている。
尚、ストッパまでの移動量は、アジマス方向の方がエレベーション方向より大きくなっている。これは、後述するように、レンズ34を移動させることで走査する光の主たる移動方向がアジマス方向であるためである。
以上のように構成されたレンズホルダ部組60を移動可能にバネ受け部組41に支持し、移動させるための駆動手段として、磁石92a、92b、93a〜93d等を備えた部組を、2軸アクチュエータ125と称する。
図4、図6に示されるように、バネ受け部組41には、基板56が、ネジ57a、57bによってネジ止めされている。ネジ57a、57bは、ヨーク32のネジ穴98a、98bにねじ込まれている。基板56には、光の重心位置により出力電流が変化するポジションセンサ153a、153bが半田付けされている。図示されていないが、基板56は電線を介して制御基板45に接続されており、ポジションセンサ153a、153bは制御基板45に接続されている。
図4で明らかなように、発光ダイオード76aからの光は、スリット90aを通り、レンズ156、155を経て、ポジションセンサ153aに入射する。ポジションセンサ153aは、1方向の位置を検出する1次元のセンサであり、X軸方向の動きを検出するため、内部の長方形状の検出素子は長手方向がX軸方向となるように取り付けられている。
スリット90aからの光は、レンズホルダ部組60がアジマス方向に移動するとX軸方向に移動するが、レンズ156、155は、このX軸方向の移動量が小さくなるように縮小する役割を有している。Y軸方向については、レンズ作用は有していない。レンズホルダ部組60のアジマス方向の移動量は大きく、スリット90aからの光を直接ポジションセンサ153aに入射させると、検出範囲の長いポジションセンサが必要となる。ポジションセンサの価格は検出範囲の長さが長いほど高く、一般に長さに比例でなく、それ以上の割合で価格が上昇する。
レンズ156、155によって、移動量を小さくすることで、安価な検出範囲の短いポジションセンサを使用することが可能となる。
上述したように、検出範囲が長くなると価格は大きく上昇するので、レンズ156、155や固定部分を作成する費用が追加となっても、移動量を縮小する光学系を使ったほうが、低価格となる。発光ダイオード76bからの光は、スリット90bを通り、レンズ158及び157を経てポジションセンサ153bに入射する。ポジションセンサ153bは、Y軸方向の動きを検出するため、内部の長方形状の検出素子は長手方向がY軸方向となるように取り付けられている。スリット90bからの光は、レンズホルダ部組60がエレベーション方向に移動するとY軸方向に移動し、ポジションセンサ153bで位置が検出される。
一方、レンズホルダ部組60がアジマス方向に移動すると、スリット90bからの光は、ポジションセンサ153bでX方向に移動する。ポジションセンサ153b内の検出素子は、X軸方向の長さは短い長方形状で、X軸方向に大きく動くと光が検出素子から外れ、位置が検出できなくなってしまう。
これを防ぐには、スリット90bのX方向の長さを長くすれば良いが、発光ダイオード76bからの光はある角度で広がるので、スリット90bのX軸方向の長さを長くすると、発光ダイオード76bとスリット90bの距離を大きくしなくてはならず、レンズホルダ部組60が大型化してしまう。
そこで、レンズ158はスリット90bのX軸方向の位置にかかわらず、X軸方向にポジションセンサ153bの中心付近に集光する役割を有している。これによって、レンズホルダ部組60がアジマス方向に大きく移動しても、ポジションセンサ153bに光が当たるようになっている。Y軸方向については、レンズ作用は有していない。
レンズ156、158とスリット90a、90bの間にフード101a、101bが取り付けられているが、これらは、発光ダイオード76a、76bの光を、なるべく外に漏らさないようにするためと、逆にレーザダイオード55からの光等、発光ダイオード76a、76b以外の光をポジションセンサ153a、153bに入射させないためである。そのため、光路はバネ受け31に設けられた穴150a、150b、151を通し、外部の遮断も行っている。
また、スリット90a、90bの光が干渉しないように、途中、穴150aと150b、フード101aと101bと2つの光路も別空間としている。レンズホルダ部組60に搭載されるレンズ34を移動させることにより、レーザダイオード55からの光の照射位置を移動させるが、照射位置がレーザダイオード55の光軸に対して傾きが0度の位置になる等の所望の位置となったときに、ポジションセンサ153a、153bの出力が0位置を示す出力となるように、基板56はX−Y平面内での位置調整がなされ、固定されている。このため、基板56に於いてネジ57a、57bが通る部分は、調整代分を見て大きめとなっている。
図1、図3、図5及び図7に示されるように、ヨーク33には、レンズ35が接着されたガラス入りのポリフェニレンサルファイド樹脂で製作されたホルダ135が、ネジ136a、136bによって固定されている。ネジ136a、136bは、ホルダ135に形成された穴を通され、ヨーク33のネジ穴131a、131dにねじ込まれている。ホルダ135には、図5に示されるように、凸部141a、141bが設けられており、ヨーク33の穴132a、132bに嵌挿する形態で位置決めされている。
ヨーク33には、更に、レンズ36が接着されたガラス入りのポリフェニレンサルファイド樹脂で製作されたホルダ37が、ネジ138a、138bによって固定されている。ネジ138a、138bは、ホルダ37及びホルダ135に設けられた穴を通され、ヨーク33のネジ穴131b、131cにねじ込まれている。ホルダ37は、ホルダ135を挟んで、ヨーク33に固定する形態となっている。更に、ホルダ37には、図示されないが凸部が設けられており、ヨーク33の穴133a、133bに嵌挿される形態で位置決めされている。
図2、図3及び図6に示されるように、バネ受け部組41には、レーザ部組50がネジ53a、53bで固定されている。ネジ53a、53bは、ガラス入りのポリフェニレンサルファイド樹脂で製作されたホルダ52に形成された穴を通され、ヨーク32のネジ穴97a、97bにねじ込まれている。
次に、レーザ部組50について詳細に説明する。
レーザダイオード55は、アルミ製のホルダ51に軽圧入されて固定されている。ホルダ51には基板54も固定されており、レーザダイオード55が接続されている。尚、基板54は、ここでは模式化して外形が示されているだけであるが、実際は基板とその上に装着される部品から成っている。ホルダ51は、更にホルダ52に挿入されている。ホルダ51のネジ穴160には、ホルダ52の穴を介してネジ161がねじ込まれ、ホルダ51は、いわゆる引きビスでホルダ52に固定されている。
このホルダ52に形成された穴はZ軸方向に長穴形状となっていて、ホルダ51はホルダ52に対しZ軸方向にスライドし、レーザダイオード55はZ軸方向に位置調整可能となっている。また、レーザ部組50をバネ受け部組41に固定する際には、ホルダ52の穴が大きめとなっており、X−Y平面内で位置調整可能となっている。すなわち、レーザダイオード55は、XYZ軸に位置調整可能となっている。
レーザダイオード55のZ軸方向の位置を変えると、本装置より照射される光のスポットの大きさが変化する。そこで、ホルダ51をZ軸方向に移動させ、スポットの大きさが所定の大きさとなるように調整される。レーザダイオード55のX−Y平面内での位置調整は、レーザダイオード55とレンズ35、36の光軸が一致するようにして行われる。このとき、レンズ34は、調整機によって基準位置に機械的に移動される。レーザダイオード55の位置調整を行うのは、レーザダイオード55のパッケージの外形と内部の発光点の製造上のばらつきを吸収するためである。
図3及び図5に示されるように、レーザダイオード55から発射されたレーザ光は、レンズ34、35、36を通り、外部へ照射される。尚、レーザダイオード55の波長は870nmと赤外線であり、実際にはその光を目視することはできない。図6に於いてヨーク33の下側方向には、アルミダイカスト製のベース30が固定されている。ヨーク33とベース30は、該ベース30に形成された凸部30a、30bが、図8に示されるヨーク33の切り欠き122と穴123に嵌挿される形態で位置決めされる。
また、ヨーク33は、Z軸方向に、ベース30に設けられた3点の台座42a〜42cで接するようにされ、ベース30の精度を、これらの台座42a〜42c部分のみ出せばよいようにされている。更に、ヨーク33は、そのネジ穴118a〜118cにベース30の穴を介して、ネジ43a〜43cをねじ込むことによって、ベース30に固定されている。
ベース30の内部には、制御基板45がネジ46a〜46dによって固定されている。このとき、制御基板45の発熱の大きい電気素子は、熱伝導性の良いゲル状シートを介してベース30に接するようにされ、ベース30に放熱するようにされている。尚、ベース30には、本装置を取り付けるための穴44a〜44dが設けられている。
次に、以上のように構成された第1の実施形態の車両用光スキャン装置の動作について説明する。
図12は、本発明の第1の実施形態の車両用光スキャン装置が適用された車載用測距装置を簡略に示した図である。
同図に於いて、レーザダイオード55より出射されたレーザ光は、ワイヤバネ(ここでは代表的に108として記す)108に支持されたレンズホルダ61のレンズ34を、図示矢印200のように左右方向に移動されることにより、図示矢印201のように左右方向に振られる。更に、光はレンズ35、36によって振れ幅が図示矢印202のように拡大されて、照射される。照射された光203が障害物(対象物)205に当たって反射した光206は、受光レンズ207を介してフォトデイテクタ208に至り、図示されない電気回路により障害物205までの距離が計算される。尚、実際には、レンズ34は左右方向だけでなく、上下方向にも振られ、光も上下方向にも振られる。
本装置を車両に搭載する際には、X軸方向が地面に対して水平方向、Y軸方向が地面に対して垂直方向になるように搭載する。このとき、主たる光の走査は、地面に対して水平なX軸方向となる。すなわち、X軸方向に光を走査するのを基本とし、1回X軸方向に光を走査して障害物の検出を行った後にY軸方向の位置を変え、そこで再びX軸方向に光を走査して障害物の検出を行う。Y軸方向の動作は、X軸方向の走査位置をずらすためであり、Y軸方向に光を走査して障害物を検出するような動作は行わない。X軸方向には広い範囲を検出する必要があるため、レンズ34もX軸方向に大きく移動できるようになっている。
ここで、レンズ34を上下左右方向に移動させる仕組みについて、更に詳細に説明する。
図5に示されるように、アジマスコイル80は、ヨーク32に固定された磁石92aとヨーク33に固定された磁石92bに挟まれている。磁石92a、92bの極性は、図5に示される通りである。尚、磁極の境は分かりやすいように破線で示している。実際の磁石で境の部分は、幅0.2〜0.4mmの磁極の無いニュートラル領域となる。
アジマスコイル80の辺143a、143bには、図示矢印144a、144bの向きの磁界が及ぶ。図示矢印144aのように磁石92aから出た磁束は、磁石92bに入り、ヨーク33内を図示矢印145bのように進む。そして、再び磁石92bに入り、図示矢印144bのように磁石92bから出て、磁石92aに至る。更に、ヨーク32内を図示矢印145aのように進んで、磁石92aの元の部分に戻る。
アジマスコイル80の辺143a、143bに流れる電流の向きは逆であり、及ぶ磁界の向き144a、144bも逆であるので、発生する力の向きは同じである。力の向きは、電流の向きと磁界の向きに垂直なX軸方向となる。アジマスコイル80の残りの辺には、Y軸方向の力が発生するが、図示矢印144aと矢印144bの磁界から受ける力の向きが逆向きとなりキャンセルするので、Y軸方向に動くことはない。
以上のように、アジマスコイル80に電流を流すことで、レンズホルダ部組60及びそれに取り付けられたレンズ34をアジマス方向(X方向)に移動させることができる。
図3に示されるように、エレベーションコイル81aは、ヨーク32に固定された磁石93aとヨーク33に固定された磁石93cに挟まれている。同じく、エレベーションコイル81bは、ヨーク32に固定された磁石93bとヨーク33に固定された磁石92dに挟まれている。磁石93a、93cの極性は、図3に示される通りである。また、エレベーションコイル81a、81bの動作の仕組みは、X軸方向とY軸方向が異なるだけで、アジマスコイル80と同様である。尚、2つのエレベーションコイル81a、81bは、発生する力の向きが同じになるように直列接続されている。
レンズホルダ部組60は、上述したように、該レンズホルダ部組60のスリット90a、90bを通った光がポジションセンサ153a、153bで受光され、その位置情報を基にして移動されるようになっている。
ところで、上述したように、本実施形態の車両用光スキャン装置を用いた車載用測距装置では、X軸方向に光を走査するため、レンズホルダ部組60は、X軸方向に素早く、且つ、正確に移動できることが求められている。X軸方向に素早く移動させるために、アジマスコイル80には大電流が流される。電流値は、磁気回路や移動パターンにより異なるが、例えば500mAを超えるような電流が流されることもある。これにより、アジマスコイル80への電流を通すワイヤバネ108a、108j、108k、108t及び108e、108f、108o、108pは、流れる電流によって発熱する。本実施形態では、上述したようにワイヤバネを4本並列としているので、1本あたりの電流値が減って発熱を抑えることができる。
更に、ワイヤバネ108a、108j、108k、108tは、X−Z平面及びY−Z平面に面対称な配置となっている。すなわち、X軸方向に移動するときも、Y軸方向に移動するときも対称な位置にあり、バランスが取れている。ワイヤバネ108e、108f、108o、108pについても、X−Z平面及びY−Z平面に面対称な配置となっている。
ワイヤバネ108a、108j、108k、108t及び108e、108f、108o、108pの発熱によりばね定数が変化するが、これらのワイヤバネの発熱量は同じであり、ばね定数の変化量は同じである。したがって、全体としてばね定数は変化するものの、X軸方向に移動するときも、Y軸方向に移動するときも対称に配置されているので、ばね定数の変化により支持のバランスが崩れることはない。よって、支持のバランスが崩れることによるレンズホルダ部組60が回転するという不具合を防止することができる。これにより、レンズホルダ部組60が回転して起きることによる、走査する光の曲がりも防止することができ、高性能な装置とすることができる。
エレベーションコイル81a、81bに電流を流すワイヤバネ108c、108m及び108h、108rも、これら4本でX−Z平面及びY−Z平面に面対称な配置となっている。エレベーションコイル81a、81bに流れる電流は、アジマスコイル80ほどではないが、装置に振動が加わる等、不利な条件が重なった場合には、例えば200mAを超えるような電流が流されることもある。
本実施形態では、エレベーションコイル81a、81bに電流を流すワイヤバネ108c、108m及び108h、108r共、X軸方向に移動するときもY軸方向に移動するときも対称に配置されているので、アジマスコイル80と同様にレンズホルダ部組60が回転するという不具合を防止することができる。
尚、アジマスコイル80は電流値が大きいので4本を並列接続とし、コイルの両端で計8本のワイヤバネを使用していたが、エレベーションコイル81a、81bは電流値が小さいので、2本を並列として、コイルの両端で計4本のワイヤバネとした。電流値によっては、アジマスコイル80についても、計4本としても良いことは言うまでもない。
また、電流値の高いアジマスコイル80のワイヤバネのみを、X−Z平面及びY−Z平面に面対称な配置としても良い。この場合、アジマスコイル80にのみ適用することで、ワイヤバネの本数を減らすことができ、低価格化を図ることができる。
コイルに電流を流すワイヤバネの配置をX−Z平面及びY−Z平面に面対称とすると、コイルからワイヤバネまでの配線を行う基板のパターンが複雑になり、いろいろな配線が交錯して、両面或いは多層基板とする必要が生じたり、ジャンパ線を用いる必要が生じたりする。するとも、結果として、基板の価格が高くなってしまう。これを防ぐために、エレベーションコイルについては、抵抗値を下げるためにワイヤバネは複数本を並列接続するものの、ワイヤバネはX−Z平面及びY−Z平面に面対称な配置とせず、アジマスコイルのみをX−Z平面及びY−Z平面に面対称な配置としても良い。これにより、基板上の配線を、コイル両方を対称配置とするより単純にすることができる。
ところで、上述した実施形態では発熱によるばね定数の変化について述べたが、発熱はワイヤバネのダンピングをとるシリコンゲルにも影響する。発熱が大きい場合、シリコンゲルが長い間高い温度に晒され、種類にもよるが、例えば、収縮してしまうことがある。シリコンゲルは、バネ受けの壁側に縮んで、ワイヤバネの周辺のシリコンゲルが少なくなる。これによって、各ワイヤバネの基本共振に於けるQ値が15dBから20dBに大きくなる。ここで、Q値が20dB程度に大きくなっても、全体としては、X−Z平面及びY−Z平面に面対称でバランスよく大きくなっていれば問題ない。
しかしながら、X−Z平面及びY−Z平面に面対称でないと、レンズホルダの片側、例えばX+側のみダンピングが悪い形となり、支持系のバランスが取れていないことになり、レンズホルダが回転してしまう。本実施形態では、コイルに電流を流すワイヤバネの配置をX−Z平面及びY−Z平面に面対称としているので、シリコンゲルに対する発熱の影響による回転も防止することができる。
ワイヤバネのばね定数への影響は、温度による特性変化で可逆変化であるが、シリコンゲルヘの上記のような影響は、シリコンゲルの劣化であり、不可逆変化である。したがって、劣化しても性能を確保でき、信頼性の高い装置とすることができる。特に、車両用光スキャン装置では、信頼性が重視され、このように変化したとしても機能を損なわない構成が望ましい。
ワイヤバネのダンピングを取る部材がシリコンゲルでなくても、同様のことが言える。ワイヤバネをゴムに通し、ゴムをバネ受けに固定するような形でダンピングを取ることができる。この場合も、ゴムが劣化して特性が変化しても性能を確保でき、信頼性を高めることができる。また、ゴムの場合、シリコンゲルに比べ温度特性が劣ることが多く、長い間高い温度に晒されなくとも、高温になると可逆変化の範囲内でも特性が変わる。これについてもバランスが取れているので、レンズホルダの回転を防ぐことができる。
ダンピングを取るための部材は、シリコンゲルやゴム以外の粘弾性部材であっても良く、その場合もコイルに電流を流すワイヤバネの配置をX−Z平面及びY−Z平面に面対称としているので、粘弾性部材への発熱の影響による回転を防止することができる。
尚、バネ定数変化への影響で述べたのと同様に、大電流が流れるアジマスコイルのワイヤバネのみに適応しても良い。
ワイヤバネは、大きくは108a〜108e、108f〜108j、108k〜108o、108p〜108tの4ブロックに分かれているが、本実施形態で、アジマスコイル80に電流を流すワイヤバネは、各ブロックで108aと108e、108fと108j、108kと108o、108pと108tとX軸方向の両端を用い、位置を離している。これは、大きく発熱するワイヤバネを隣り合わせると、そのワイヤバネの間の温度は1本だけのときより高くなるからである。したがって、ワイヤバネを離すことによって、各々のワイヤバネの放熱性を良くし、温度上昇を抑えることができる。
特に、本実施形態のように、各ブロックでまとめてシリコンゲルを充填している場合、シリコンゲルに熱が伝わり、隣り合わせた場合に、その部分のシリコンゲルが高温になってしまうので、離すことが特に効果的である。
本実施形態では、X軸方向を地面に対し水平方向としている。本実施形態のような車両用光スキャン装置では、垂直方向に比べて水平方向を広く見る必要があり、広く見る地面に水平方向を走査方向とするのが、より効果的である。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本第2の実施形態は、ワイヤバネ108a〜108tと、アジマスコイル80、エレベーションコイル81a、81b、発光ダイオード76a、76b、サーミスタ77の接続が、上述した第1の実施形態と異なっている。それ以外の車両用光スキャン装置の基本的な構成については、上述した第1の実施形態と同じであるので、説明の重複を避けるため、同一の部分には同一の参照番号を付して、その図示及び説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図14は、本発明の第2の実施形態を示すもので、図13に相当する第2の実施形態に於ける車両用光スキャン装置の要部の説明図である。
アジマスコイル80は、その一端が基板70に形成されたパターン(図示せず)を経てワイヤバネ108a、108e、108k(図14ではA1 として示される)と接続され、他端が基板70に形成されたパターン(図示せず)を経てワイヤバネ108j、108p、108t(図14ではA2 として示される)と接続されている。上述した第1の実施形態では4本のワイヤバネを並列接続する形であったが、本第2の実施形態ではそれぞれ3本のワイヤバネを並列接続する形となっている。また、アジマスコイル80に電流を流すワイヤバネの配置も、X−Z平面及びY−Z平面に面対称ではなく、Z軸方向の軸Oを中心に回転対称な配置となっている。
エレベーションコイル81a、81bは基板70で直列接続されて、一端はワイヤバネ108c、108m(図14ではE1 として示される)と、他端はワイヤバネ108h、108r(図14ではE2 として示される)と接続されている。これは、上述した第1の実施形態と同じである。
サーミスタ77も、上述した第1の実施形態と同様に、一端はワイヤバネ108b、108dと、他端はワイヤバネ108l、108nと接続されている。発光ダイオード76aは、カソードがワイヤバネ108f、108oに接続され、アノードがワイヤバネ108g、108iに接続されている。また、発光ダイオード76bは、カソードがワイヤバネ108f、108oに接続され、アノードがワイヤバネ108q、108sに接続されている。
発光ダイオード76a、76bは、カソードが基板70で共通にされ、上述した第1の実施形態と異なって、ワイヤバネが並列接続されている。並列接続とすることで、万が一ワイヤバネが断線したときに発光ダイオードが消えることで、突然制御が利かなくなってレーザ光があらぬ方向に照射されることを防止することができる。並列接続であれば、ワイヤバネが断線して故障しても、発光ダイオードが消えることはなく、断線して動きが悪くなったことを検知して、安全に装置を止めることができ、レーザ光があらぬ方向に照射されることもない。
本実施形態では、アジマスコイル80の配線(ワイヤバネ)は、X軸方向に移動するときZ−X平面に関し両側に3本ずつ、Y軸方向に移動するときもY−Z平面に関し両側に3本ずつ配置されている。これにより、支持系のバランスがとれ、バネの発熱によるバネ定数や、シリコンゲルのダンピングの変化があっても、レンズホルダの回転を防ぐことができる。
上述した第1の実施形態や第2の実施形態のように、4つのブロックに分けてワイヤバネを配置する場合、第1の実施形態のように配置するとコイルに配線するワイヤバネの総数が4の倍数でなければならないが、第2の実施形態では2の倍数でよく、配線の自由度を上げることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能であるのは勿論である。
例えば、磁石とコイルの配置は、上述した実施形態では、アジマスコイル、エレベーションコイルが磁石に挟まれる構成となっているが、片側のみに磁石を配し、反対側はヨークのみの構成としても良い。また、アジマスコイルとそれに対向する磁石は1組となっているが、エレベーションコイル側のように2組にしても良い。更に、それぞれの組で、磁石は表面にN極とS極が現れる、いわゆる異極着磁された磁石となっていたが、1個の磁石とせず、通常の着磁(片側N極、反対側S極)をされた磁石を2個横に並べ、N極とS極が並ぶような配置を実現しても良い。
また、レンズホルダ部組は円形断面のワイヤバネで支持していたが、長方形状(矩形状)断面を有する板バネであっても良い。この場合は、板バネといっても幅広のものではなく、2方向に屈曲可能なように、例えば0.1×0.2mmの断面部を有するものとする。円形断面のワイヤバネであれば、安価であり、装置の低価格化を図ることができる。一方、板バネの場合、断面形状を変えることで、屈曲する2方向のばね定数を変えられ、各々最適化することで、より特性の良い装置とすることができる。
光学系についても、上述した構成に限ったことではなく、種々の光学系に適用が可能である。レンズから出射したレーザ光は、出射したレンズと異なる別のレンズで受光されるとしたが、再び同じレンズで受光し、受光した光を、例えば、光路分割素子で分離して検出するような光学系の光スキャン装置と受光装置を兼ねた装置にも適用可能である。
更に、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
25…光スキャン装置、30…ベース、31…バネ受け、32、33…ヨーク、34、35、36、155、156、157、158…レンズ、37、51、52、85、135…ホルダ、41…バネ受け部組、50…レーザ部組、54、56、70…基板、55…レーザダイオード、60…レンズホルダ部組、61…レンズホルダ、76a、76b…発光ダイオード(LED)、77…サーミスタ、80…アジマスコイル、81a、81b…エレベーションコイル、108、108a〜108t…ワイヤバネ、125…2軸アクチュエータ、153a、153b…ポジションセンサ。
Claims (10)
- 光学素子と、該光学素子を備えたホルダと、該ホルダを上記光学素子の光軸に垂直な第1の軸の方向と上記光軸及び上記第1の軸の方向に垂直な第2の軸の方向に移動可能に支持する少なくとも6本の金属バネと、上記ホルダを上記第1及び第2の軸の方向に駆動するための、上記ホルダに固定されたコイルと、発光素子とを少なくとも備え、該発光素子からの光を上記光学素子に通し、該光学素子を移動させることによって上記光を走査し、照射する車両用光スキャン装置に於いて、
上記コイルの少なくとも一部への電流を流すための配線は、2本以上の金属バネを並列接続し、コイル両端で少なくとも4本の金属バネを用い、
該並列接続された少なくとも4本の金属バネは、上記光軸と上記第1の軸を含む第1の平面と、上記光軸と上記第2の軸を含む第2の平面と、に対してそれぞれ面対称に配置されていることを特徴とする車両用光スキャン装置。 - 上記発光素子は、連続或いは間欠点灯されて上記第1の軸の方向に光を走査し、
上記並列接続された少なくとも4本の金属バネは、上記第1の軸方向に対して上記ホルダを駆動するためのコイルに電流を流すための配線であることを特徴とする請求項1に記載の車両用光スキャン装置。 - 光学素子と、該光学素子を備えたホルダと、該ホルダを上記光学素子の光軸に垂直な第1の軸の方向と上記光軸及び上記第1の軸の方向に垂直な第2の軸の方向に移動可能に支持する少なくとも6本の金属バネと、上記ホルダを上記第1及び第2の軸の方向に駆動するための、上記ホルダに固定されたコイルと、発光素子とを少なくとも備え、該発光素子からの光を上記光学素子に通し、該光学素子を移動させることによって上記光を走査し、照射する車両用光スキャン装置に於いて、
上記コイルの少なくとも一部への電流を流すための配線は、2本以上の金属バネを並列接続し、コイル両端で少なくとも4本の金属バネを用い、
該並列接続された少なくとも4本の金属バネは、光軸に平行な軸に対して回転対称に配置されていることを特徴とする車両用光スキャン装置。 - 上記発光素子は、連続或いは間欠点灯されて上記第1の軸の方向に光を走査し、
上記並列接続された少なくとも4本の金属バネは、上記第1の軸方向に上記ホルダを駆動するためのコイルに電流を流すための配線であることを特徴とする請求項3に記載の車両用光スキャン装置。 - 上記第1の軸の方向は地面に水平方向として設置されることを特徴とする請求項2若しくは4に記載の車両用光スキャン装置。
- 上記金属バネは、円形断面を有するワイヤバネであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用光スキャン装置。
- 上記金属バネは、長方形断面を有する板バネであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用光スキャン装置。
- 上記金属バネは、粘弾性部材によってダンピングが取られていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用光スキャン装置。
- 上記金属バネは、ゴムによってダンピングが取られていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の車両用光スキャン装置。
- 上記金属バネは、シリコンゲルによってダンピングが取られていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の車両用光スキャン装置。
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