JP2009242920A - 異物環境下での疲労特性に優れた軸受部品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:1.1〜1.5mass%、Si:0.1〜1.0mass%、Mn:0.1〜1.5mass%および、Al:0.1mass%以下、Cr:0.05〜2.0mass%、N:0.01mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼を素材とし、焼入れ後の表面硬化層部における残留オーステナイトの量が9.5%以上20.0%以下でかつ、旧オーステナイト粒径が20μm以下とする。
【選択図】なし
Description
C:1.1〜1.5mass%
Cは、本発明において重要な元素であり、焼入れ部において部品の転動疲労寿命を得るために必要となる残留オーステナイト量の確保と硬度確保のために必要な元素であり、1.1mass%未満では焼入れ部で十分な硬度および疲労強度が得られない。一方、1.5mass%を超えて添加すると、残留オーステナイト量の増加により硬度低下が激しくなり、転動寿命が低下する。また、加えてC量の増加は焼入れ前の加工性(剪断性,鍛造性)を劣化させる。よって、C含有量範囲は1.1mass%〜1.5mass%である。
Siは、転動疲労寿命を向上するため0.1mass%以上含有されていることが好ましい。しかし、1.0mass%を越えて添加すると、Cと同様、焼入れ前の加工性(剪断性、鍛造性)を劣化させる。よって、Siの含有量範囲は0.1〜1.0mass%以下とする。
Mnは、焼入性を向上させるため、0.1mass%以上含有されている必要がある。しかし,過剰に添加すると焼入れ前の加工性(剪断性、鍛造性)を劣化させる。このため、その含有量の上限は1.0mass%とする。
Alは、強力な脱酸作用を持ち、鋼の清浄化を向上させる効果を有する成分であるため添加したほうが良いが、0.1mass%を超えて添加した場合には鋼の清浄化がむしろ劣化し、転動疲労特性が低下することから、その含有量を0.1mass%以下とすることが好ましい。
Crは、焼入性向上および炭化物球状化を促進による焼入れ前の硬度低下・加工性向上の効果があるため、0.05mass%以上含有されていることが好ましい。しかし、2.0mass%を超えて添加しても効果が飽和してしまうため、0.05〜2.0mass%の範囲で添加する。
Nは、窒化物や炭窒化物を形成し、オーステナイト粒微細化に効果がある。しかし、過剰添加は鋼の加工性を劣化させるため、0.01mass%以下とする。
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上するため添加しても良いが、0.03mass%を超えて添加すると、MnSが転動疲労試験中の割れ起点となり転動疲労特性を著しく低下するため、その含有量の上限は0.03mass%とする。
Cuは、焼入れ性向上により焼入れ部の硬度向上効果があるため添加しても良いが、この効果を得るためには、1.0mass%以下で十分である。
Niは、焼入性増大や焼入れ部の靭性を向上させるために、1.0mass%を上限に添加しても良い。また、Cu添加時には熱間脆性抑制のために、NiをCu添加量の1/2添加することが好ましい。
Moは、焼入性向上効果や焼戻し軟化抵抗の効果があるため添加してもよいが、過剰な添加はコスト上昇に繋がるため、コストの面から1.0mass%以下とする。
Wは、焼入性向上効果があるため添加してもよいが、過剰な添加はコスト上昇に繋がるため、コスト面より1.0mass%以下とする。
Tiは、窒化物形成によるオーステナイト粒成長抑制効果があるため添加してもよいが、0.01mass%を超えると転動疲労特性が劣化するため0.01mass%以下とする。
Nbは、窒化物もしくは炭窒化物形成によるオーステナイト粒成長抑制効果があるため添加しても良いが、その含有量が0.5mass%を超えるとその効果は飽和するので、0.5mass%以下とする。
Bは、焼入性向上効果があるため0.01mass%を上限に添加しても良いが、その含有量0.01mass%を超えるとその効果は飽和するため、0.01mass%以下とする。
Sbは、転動疲労試験中のミクロ組織変化(白色層生成)の遅延に対して効果があり、転動疲労特性の劣化を防止する作用を有するので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.01mass%を超えると、靭性が劣化するので、0.01mass%以下とする。
軸受部品は焼入れ前に鋼素材から切削,研削,鍛造等の加工によって成型される。鋼素材の組織は、通常軸受部品に用いられる軸受鋼と同様に、球状化炭化物と母相組織であればよい。炭化物の球状化は、素材もしくは焼入れ前の加工工程の間で球状化処理が行なわれればよい。球状化炭化物以外の母相組織は、特に限定しないが、加工性の観点からフェライトであることが好ましい。
本発明では、焼入れ時の加熱温度は900℃〜1100℃とする。900℃未満では、十分な残留オーステナイト量が得られず、1100℃超えでは残留オーステナイト量が増えすぎるもしくは旧オーステナイト粒径が大きくなりすぎるためである。焼入れは、高周波焼入れを行うこととする。短時間の加熱により、旧オーステナイト粒径の粗大化を抑止するためである。焼入時間は特に規定しないが、先に述べた理由から、1回の加熱時間はせいぜい30秒以下とする。加熱回数は、本発明規定の旧オーステナイト粒径と残留オーステナイト量が得られれば、特に1回でも良いが、実施例の条件にも示すとおり、2回以上行えば、比較的簡単に本発明の残留オーステナイト量条件、および、旧オーステナイト粒径の条件を満たすことから、好ましくは2回以上とする。
本発明においては、焼入れ処理の後に焼戻し処理を行うこととする。焼戻し温度は100〜250℃以下、時間は2.5時間以下とする。焼戻し温度が100℃未満では、軸受の重要特性の一つである圧碎(圧壊)強度に必要な延性が得られない。一方、250℃超では強度が低下しすぎ転動寿命が劣化する。また、焼戻し時間は、2.5時間超となると、コスト、生産性が悪くなることから2.5時間以下とする。
表1に示す化学組成の鋼を転炉−連続鋳造プロセスにより溶製し、断面が300×400mmの鋳片を得た。この鋳片をブレークダウン工程を経て175mm丸ビレットに圧延したのち65mmφの棒鋼に圧延した。得られた棒鋼を、既に述べた方法と同様に球状化焼鈍、円盤状試験片の切り出し、高周波焼入および焼戻しを行い、転動疲労試験に供した。但し、高周波焼入条件は表2に示すとおりとした。転動疲労試験は既に述べている通り、日産アルティア製のスラスト転動疲労試験機を用い、5.26GPaのヘルツ最大接触応力がかかるようにして、潤滑油中に硬さ約Hv800、粒径74〜150μmの鉄粉を300ppm混入して試験を行った。転動疲労寿命の評価は、試験片に剥離が発生するまでの応力負荷回数を15枚の試験片を用いて調べ、ワイブル紙を用いて累積破損確率と応力負荷回数の関係で整理した後、累積破損確率10%(B10寿命)を求めた。求めたB10寿命は、比較鋼であるSUJ2(表1中の鋼5)の通常焼入れ材(850℃×30分加熱、焼入れ。170℃×80分戻しを実施)のB10寿命で割り、寿命比として算出した。
Claims (4)
- C:1.1〜1.5mass%、Si:0.1〜1.0mass%、Mn:0.1〜1.5mass%、Al:0.1mass%以下、Cr:0.05〜2.0mass%およびN:0.01mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼を素材とし、焼入れ後の表面硬化層部における残留オーステナイトの量が9.5%以上20.0%以下でかつ、旧オーステナイト粒径が20μm以下であることを特徴とする異物環境下での疲労特性に優れた軸受部品。
- 前記成分組成が、さらに、S:0.03mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:1.0mass%以下、W:1.0mass%以下、Nb:0.5mass%以下、Mo:1.0mass%以下、Ti:0.01mass%以下、B:0.01mass%以下およびSb:0.0050mass%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の異物環境下での疲労特性に優れた軸受部品。
- C:1.1〜1.5mass%、Si:0.1〜1.0mass%、Mn:0.1〜1.5mass%、Al:0.1mass%以下、Cr:0.05〜2.0mass%およびN:0.01mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼を素材として、該素材に焼入時の加熱温度を900℃以上1100℃以下とした高周波焼入を2回以上繰り返すことを特徴とする異物環境下での疲労特性に優れた軸受部品の製造方法。
- 前記成分組成が、さらに、S:0.03mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:1.0mass%以下、W:1.0mass%以下、Nb:0.5mass%以下、Mo:1.0mass%以下、Ti:0.01mass%以下、B:0.01mass%以下およびSb:0.0050mass%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の異物環境下での疲労特性に優れた軸受部品の製造方法。
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