JP2009238704A - 固体電解質膜およびリチウム電池 - Google Patents

固体電解質膜およびリチウム電池 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン伝導性に優れる固体電解質膜を提供する。
【解決手段】リチウムイオン伝導性を有する固体電解質膜であって、LaLiTi(0.4≦X≦0.6、0.4≦Y≦0.6、0.8≦Z≦1.2、Y<X)の組成を有し、かつ、非晶質構造である。固体電解質膜の組成および組成比を限定することにより、非晶質構成であっても高いリチウムイオン伝導度を確保することができる。また、固体電解質膜を非晶質とすることで、成膜温度を室温から結晶化温度未満とすることができる。そのため、例えば、リチウム電池の正極層の上に固体電解質膜を形成する場合、正極層と固体電解質膜との界面にリチウムの伝導を阻害する抵抗層が形成され難い。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質膜およびこの固体電解質膜を利用したリチウム電池に関する。
携帯機器といった比較的小型の電気機器の電源に、リチウム電池(一次電池および二次電池を含む)が利用されている。リチウム電池は、正極層と負極層と、これらの層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する電解質層とを備える。
近年、このリチウム電池として、正・負極間のリチウムの伝導に有機電解液を用いない全固体型リチウム電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。全固体型リチウム電池は、正・負極間のリチウムイオンの伝導に固体電解質膜を使用しており、有機溶媒系の電解液を用いることに伴う耐熱性の問題などを解消することができる。この固体電解質膜の原料として、リチウムイオン伝導性の酸化物が利用されている。
特開平6−333577号公報
しかし、リチウムイオン伝導性の酸化物で固体電解質膜を形成する場合、代表的には、酸化物の粒子を加圧成形する方法と、酸化物を蒸発源とする気相蒸着法とが挙げられるが、これらの方法による成膜には以下に示すような問題があった。
まず、加圧成形の場合、殆どの酸化物粒子の硬度が非常に高いため、固体電解質膜の成形性が悪く、非常に脆い膜となる。しかも、この硬度のために、固体電解質膜における粒子同士の接触が不十分で粒界抵抗が高くなるので、粒子のリチウムイオン伝導度に比べて固体電解質膜のリチウムイオン伝導度が大幅に低下する。
これに対して、成形の際に1000℃以上の熱を加える、いわゆる焼結により、高密度の固体電解質膜を得ることも行われている(より高密度な膜を得るためには1300℃以上で焼結)。しかし、焼結を行っても、粒子に比べて固体電解質膜のリチウム伝導度が低下することに変わりない。しかも、固体電解質膜が形成される下地層(例えば、リチウム電池の場合、正極層や負極層)の材質によっては、この焼結時の熱により下地層と固体電解質膜とが化学反応し、リチウムイオンの伝導を妨げる抵抗層が形成されることがある。固体電解質膜と正極層あるいは負極層との界面に抵抗層が形成されると、電池の放電特性が大幅に低下する。
一方、気相蒸着法では、固体電解質膜と下地層との界面に抵抗層が形成されないように、成膜時の温度を抑えて固体電解質層を形成することもできる。低温で成膜することにより、固体電解質膜と下地層との界面に抵抗層が形成されることを抑制できるし、非晶質状態で固体電解質膜が形成されるため、粒界抵抗の問題も解決される。しかし、結晶化することで本来のリチウムイオン伝導性が発現していた酸化物を非晶質化しているので、十分なリチウムイオン伝導性を確保できない虞がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、リチウムイオン伝導性に優れる固体電解質膜およびこの固体電解質膜を利用したリチウム電池を提供することにある。
本発明は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質膜に関する。本発明固体電解質膜は、LaLiTi(0.4≦X≦0.6、0.4≦Y≦0.6、0.8≦Z≦1.2、Y<X)の組成を有し、かつ、非晶質構造であることを特徴とする。
本発明の構成によれば、固体電解質膜の組成および組成比を限定することにより、非晶質であっても高いリチウムイオン伝導度を確保することができる。また、固体電解質膜が非晶質構造でも構わないので、成膜温度を室温から500℃程度とすることができる。その結果、固体電解質膜の成膜時において、固体電解質膜とこの膜が形成される下地層との界面に、リチウムイオンの伝導を阻害する抵抗層が形成され難くすることができる。例えば、リチウム電池の正極層の上に本発明の固体電解質膜を形成する際に、正極層の活物質と電解質膜の酸化物とが化学反応を起こし難く、抵抗層の形成が抑制される。
非晶質構造を有する本発明固体電解質膜は、気相蒸着法により形成することができる。特に、パルスレーザ蒸着法(PLD法)が好適に利用可能である。PLD法で固体電解質膜を形成する場合、膜が形成される下地層の温度を室温から膜を構成する酸化物の結晶化温度未満とすると良い。
さらに、LaLiTiのX,Y,Zは、以下の範囲とすることが好ましい。
0.54≦X≦0.58
0.45≦Y≦0.58
0.8≦Z≦1.0
組成のX,Y,Zを上記好ましい範囲とすると、固体電解質膜のリチウム伝導性をより向上させることができる。
本発明の固体電解質膜は、種々の用途に利用することができる。例えば、本発明固体電解質膜をリチウム電池に適用する場合、正極層と負極層との間でリチウムイオンの伝導を媒介する固体電解質層を本発明固体電解質膜により構成すると良い。その他、本発明固体電解質膜をガスセンサに適用する場合、基準極と、検知極と、両極の間に介在される固体電解質部材を本発明固体電解質膜により構成すると良い。
本発明固体電解質膜によれば、組成および組成比を限定することで、非晶質でありながら優れたリチウム伝導性を発揮することができる。また、本発明固体電解質膜は、非晶質であるため、結晶質の膜を形成する場合よりも低温で成膜が可能である。そのため、本発明固体電解質膜が形成される下地層との間に抵抗層が形成され難くすることができる。
以下、本発明の実施例を説明する。
<非晶質の固体電解質膜>
LaLiTiの組成を有する非晶質の固体電解質膜からなる複数の試料(試料1〜9、101〜105)を作製し、そのリチウムイオン伝導度を測定した。各試料は、組成比(即ち、上記化学式のX,Y,Zの数値)が異なる。
各試料は、石英基材上に形成した膜とSi基材上に形成した膜とを一組とし、石英基材上に形成した膜はリチウムイオン伝導度と結晶解析に供し、Si基材上に形成した膜は組成比の解析に供した。
試料の形成には、パルスレーザ蒸着法(PLD法)を利用した。まず、PLD法の実施にあたって、Li、LaおよびTiを含むターゲットを作製した。ターゲットの組成と、このターゲットを用いたPLD法の成膜条件を表1に示す。なお、基材上に形成される膜の組成は、概ねターゲットの組成により決定される。
Figure 2009238704
上記のように成膜条件を操作して組成比を変化させた各試料について、石英基材上に形成した膜には金櫛型の電極を形成し、交流インピーダンス法により、常温でのリチウムイオン伝導度(S/cm)を測定すると共に、X線回折により結晶状態を調べた。また、各試料のうち、Si基材上に形成した膜は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP分析法)に供し、組成を調べた。これらの結果を表2に示す。
Figure 2009238704
表2の結果から明らかなように、LaLiTiの組成を有し、0.4≦X≦0.6、0.4≦Y≦0.6、0.8≦Z≦1.2およびY<Xであるものは、リチウムイオン伝導度が高いことが明らかになった。また、試料1について、X線回折パターンを調べたところ、明確なピークを有さない、いわゆるハローパターンを示した(図1を参照)。なお、図示しないが、他の試料もハローパターンを有しており、膜が非晶質構造であることが明らかになった。これらのことから、非晶質構造であっても、組成比を操作することで、優れたリチウムイオン伝導度を有する固体電解質膜とすることができることが明らかになった。
<結晶質の固体電解質膜>
非晶質の固体電解質膜に対する比較として結晶質の固体電解質膜を作製した。具体的には、非晶質の膜の際に説明したPLD法において、基材温度が500℃を超えると結晶化が始まることを利用し、基材温度を500℃超として成膜を実施した。その結果、膜の組成比によっては、非晶質のものよりも結晶質のものの方がリチウムイオン伝導度が高くなる場合があった。しかし、結晶質の固体電解質膜をリチウム電池に利用する場合、下地層となる正極層(あるいは、負極層)が500℃を超える温度に保持されることになるので、固体電解質膜と正極活物質(負極活物質)とが化学反応して抵抗層が形成される。そのため、固体電解質膜のリチウムイオン伝導度がいくら高くても、抵抗層がリチウムイオンの伝導を阻害するため、リチウム電池の放電特性は著しく低下する。
<本発明固体電解質膜の利用>
上述した固体電解質膜は、リチウムイオン伝導性に優れるため、種々の分野、代表的にはリチウム電池の固体電解質層やガスセンサの固体電解質部材として好適に利用できる。特に、固体電解質膜を形成する際に500℃を超えない温度で成膜を実施できるので、例えば、リチウム電池において、正・負極間のリチウムイオンを媒介する固体電解質層に適用するのであれば、固体電解質層の形成の際に固体電解質膜が正極活物質あるいは負極活物質と化学反応することを抑制できる。その結果、電池性能に優れるリチウム電池を製造することができる。また、ガスセンサにおいても同様に、基準極・検知極間のリチウムイオンの伝導を媒介する電解質部材の形成の際に、無用な化学反応が生じ難く、検知感度に優れるガスセンサを製造することができる。
なお、本発明の実施形態は、上述した構成に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
本発明電解質粒子は、リチウム電池における正・負極間のリチウムイオンの伝導を媒介する固体電解質層や、ガスセンサにおける基準極・検知極間のリチウムイオンの伝導を媒介する固体電解質部材などの原料として好適に利用することができる。
試料1の回折パターンを示す概略図である。

Claims (3)

  1. リチウムイオン伝導性を有する固体電解質膜であって、
    LaLiTi(0.4≦X≦0.6、0.4≦Y≦0.6、0.8≦Z≦1.2、Y<X)の組成を有し、かつ、非晶質構造であることを特徴とする固体電解質膜。
  2. 前記X、YおよびZは、
    0.54≦X≦0.58
    0.45≦Y≦0.58
    0.8≦Z≦1.0
    であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質膜。
  3. 正極層と負極層との間でリチウムイオンの伝導を媒介する固体電解質層を備えたリチウム電池であって、
    前記固体電解質層に、請求項1または2に記載の固体電解質膜を用いたことを特徴とするリチウム電池。
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