ところで、上述した従来の装置では、EEPROMに記録する不具合データの保存項目やサンプリング間隔等の記録条件は、設定用のコンピュータ等により予め設定される。通常、このような記録条件の設定段階では、対象装置にどのような不具合が発生するかを予測することは困難である。一方、対象装置に発生し得る全ての不具合について、有効に利用可能な不具合データを詳細に記録しようとすると、EEPROM等の記録媒体に大きな記録容量が必要となり、装置の価格が高くなる要因となる。そのため、これまでは、対象装置に発生し得る様々な不具合のいずれに対しても有効に利用可能な不具合データを記録できるように、対象装置の全体についての主要な項目等だけを選択し、広く浅くデータを記録するような記録条件の設定となっていた。しかし、このような記録条件の設定では、不具合の発生原因や発生状況を詳細に解析するためには不具合データの内容が十分でない場合があり、発生した不具合に関連する不具合データをより詳細に取得し、記録したいという要望がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、不具合データの記録容量を大幅に拡大することなく、発生した不具合の解析に有効に利用可能な不具合データを詳細に記録することが可能な不具合データ記録装置及び不具合データ記録プログラムを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る、対象装置に不具合が発生した際に、当該対象装置の状態を表すデータを不具合データとして記録する不具合データ記録装置の特徴構成は、予め設定された不具合記録条件に従って前記不具合データを記録する不具合データ記録手段と、前記対象装置の動作履歴を表す動作履歴データを記録する履歴データ記録手段と、前記動作履歴データに基づいて前記不具合記録条件とする記録条件を設定する記録条件設定手段と、を備えた点にある。
この特徴構成によれば、対象装置の動作履歴を表す動作履歴データに基づいて、不具合データを記録する条件である不具合記録条件を適宜設定変更することができる。これにより、例えば、対象装置の動作履歴に基づき、次に発生する可能性が最も高い不具合に注目して、当該不具合の解析に有効に利用可能な不具合データを記録できるように、不具合記録条件を適宜設定変更することができる。したがって、次に不具合が発生した場合に、当該不具合の発生原因や発生状況等を解析するために有効に利用可能な不具合データを詳細に記録することが可能となる。またこの際、動作履歴データに基づいて、例えば、次に発生する可能性が低い不具合に関連する不具合データを記録しないようにすることにより空いた分の記録容量を、次に発生する可能性が最も高い不具合に関連する不具合データの記録に用いるように不具合記録条件を設定することができる。これにより、不具合データの記録容量を大幅に拡大することなく、発生した不具合の解析に有効に利用可能な不具合データを詳細に記録することが可能となるので、安価で有用性の高い不具合データ記録装置を実現できる。
ここで、前記記録条件設定手段は、前記動作履歴データに基づいて、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を注目属性として特定し、当該注目属性に応じた前記不具合データを記録するための記録条件を前記不具合記録条件として設定する構成とすると好適である。
この構成によれば、対象装置の動作履歴を表す動作履歴データに基づいて、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を注目属性とし、当該注目属性に応じて適切な不具合記録条件を適宜設定変更することができる。したがって、次に不具合が発生した場合に、当該不具合の解析に有効に利用可能な不具合データを、高い確率で適切に記録することができる。
また、複数の前記不具合属性のそれぞれに対応した複数の記録条件が格納された記録条件テーブルを備え、前記記録条件設定手段は、前記記録条件テーブルに格納された複数の記録条件の中から、前記注目属性に対応する記録条件を選択し、前記不具合記録条件として設定する構成とすると好適である。
この構成によれば、動作履歴データに基づいて、特定された注目属性に対応する記録条件を記録条件テーブルから選択するだけで、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性に応じた記録条件を、不具合記録条件として適切に設定することができる。
また、前記動作履歴データは、前記対象装置に発生し得る不具合について規定した複数の不具合項目のそれぞれについての発生回数のデータである不具合発生履歴データを含み、前記録条件設定手段は、前記不具合発生履歴データに基づいて、発生回数が最も多い不具合項目に関連する前記不具合属性を、前記注目属性として特定する構成とすると好適である。
この構成によれば、動作履歴データとしての不具合発生履歴データに基づいて、過去の発生回数が多い不具合項目に関連する不具合属性を注目属性として特定するので、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を注目属性として適切に特定することができる。
また、上記の構成において、前記録条件設定手段は、前記発生回数が最も多い不具合項目が複数存在する場合には、各不具合項目について予め規定された優先順位に基づいて、当該優先順位が高い不具合項目に関連する前記不具合属性を、前記注目属性として特定する構成とすると好適である。
この構成によれば、不具合項目の発生回数に基づいて注目属性を特定する際において、発生回数が同数の不具合項目が複数存在するために注目属性を1つに特定できない場合に、予め規定された優先順位に基づいて1つの注目属性を適切に特定することができる。したがって、例えば、対象装置にとって重要度の高い順に不具合項目の優先順位を規定しておくことにより、重要度の高い不具合項目に関連する不具合属性を注目属性とすることができるので、より重要度の高い不具合の解析に適した不具合データを記録できるように、不具合記録条件を適切に設定することができる。
また、前記複数の不具合項目のそれぞれが関連する前記不具合属性を規定した不具合項目テーブルを備え、前記録条件設定手段は、前記不具合項目テーブルに基づいて、前記不具合項目に関連する前記不具合属性を決定する構成とすると好適である。
この構成によれば、対象装置に発生し得る複数の不具合項目のそれぞれが関連する不具合属性を、不具合項目テーブルを参照して適切に決定することができる。
また、前記動作履歴データは、前記対象装置の動作状態についての所定の注目値を規定した複数の動作状態項目のデータである動作状態履歴データを含み、前記録条件設定手段は、前記動作状態履歴データに基づいて、前記注目値が所定のしきい値を超えている動作状態項目に関連する前記不具合属性を、前記注目属性として特定する構成とすると好適である。
なお、対象装置の動作状態についての所定の注目値としては、例えば、各動作状態についての最大値や最小値等が含まれる。
この構成によれば、動作履歴データとしての動作状態履歴データに基づいて、過去の注目値が所定のしきい値を超えている動作状態項目に関連する不具合属性を注目属性として特定するので、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を注目属性として適切に特定することができる。
また、前記録条件設定手段は、前記注目値が所定のしきい値を超えている動作状態項目が複数存在する場合には、各動作状態項目について予め規定された優先順位に基づいて、当該優先順位が高い動作状態項目に関連する前記不具合属性を、前記注目属性として特定する構成とすると好適である。
この構成によれば、動作状態項目として規定された注目値が所定のしきい値を超えているか否かに基づいて注目属性を特定する際において、注目値が所定のしきい値を超えている動作状態項目が複数存在するために注目属性を1つに特定できない場合に、予め規定された優先順位に基づいて1つの注目属性を適切に特定することができる。したがって、例えば、対象装置にとって重要度の高い順に動作状態項目の優先順位を規定しておくことにより、重要度の高い動作状態項目に関連する不具合属性を注目属性とすることができるので、より重要度の高い不具合の解析に適した不具合データを記録できるように、不具合記録条件を適切に設定することができる。
また、前記複数の動作状態項目のそれぞれが関連する前記不具合属性を規定した動作状態項目テーブルを備え、前記録条件設定手段は、前記動作状態項目テーブルに基づいて、前記動作状態項目に関連する前記不具合属性を決定する構成とすると好適である。
この構成によれば、対象装置についての複数の動作状態項目のそれぞれが関連する不具合属性を、動作状態項目テーブルを参照して適切に決定することができる。
また、前記動作履歴データは、前記対象装置の運転履歴に関するデータである運転履歴データを含み、前記録条件設定手段は、前記運転履歴データに基づいて、前記対象装置の運転履歴が所定の注目属性特定条件を満たさない場合には、前記注目属性の特定を行わず、初期設定の記録条件が前記不具合記録条件として設定される構成とすると好適である。
この構成によれば、動作履歴データとしての運転履歴データに基づいて、対象装置の運転履歴が所定の注目属性特定条件を満たさず、注目属性を特定するのに十分でない場合には、注目属性の特定を行わず、初期設定の記録条件を前記不具合記録条件として設定する。したがって、そのような場合には、例えば、対象装置の全体についての主要な項目等だけを選択して不具合データを記録するような不具合記録条件の設定とすることにより、対象装置に発生し得る様々な不具合のいずれに対してもある程度有効に利用可能な不具合データを記録することが可能となる。
また、前記不具合属性は、前記対象装置の各部位に対応して規定されていると好適である。
この構成によれば、次に不具合が発生する可能性が最も高い対象装置の部位を注目属性(注目部位)とし、当該注目属性に応じた不具合データを記録するために適切な記録条件を不具合記録条件として設定することが可能となる。したがって、対象装置のいずれかの部位に不具合が発生した場合に、当該部位の不具合の解析に有効に利用可能な不具合データを、高い確率で適切に記録することができる。
また、前記記録条件は、前記不具合データとして記録する項目である記録項目を含むと好適である。
この構成によれば、不具合データとして記録する項目である記録項目を、動作履歴データに基づいて適宜設定変更することができる。これにより、例えば、対象装置の動作履歴に基づき、次に発生する可能性が最も高い不具合に注目して、当該不具合の解析に有効に利用可能な不具合データの項目を記録できるように、記録項目を設定することができる。したがって、次に不具合が発生した場合に、当該不具合の発生原因や発生状況等を解析するために有効に利用可能な不具合データの項目を適切に記録することが可能となる。
また、前記記録条件は、前記不具合データ記録手段により不具合データの記録を行うトリガ条件である記録トリガを含むと好適である。
この構成によれば、不具合データの記録を行うトリガ条件である記録トリガを、動作履歴データに基づいて適宜設定変更することができる。これにより、例えば、対象装置の動作履歴に基づき、次に発生する可能性が最も高い不具合に注目して、当該不具合が発生したことを適切に捉えることができるように記録条件の記録トリガを設定することができる。したがって、次に不具合が発生した場合に、当該不具合の発生を適切に捉えて不具合データを記録することが可能となる。
また、前記記録トリガは、前記対象装置に発生し得る不具合について規定した複数の不具合項目の中から選択された一又は二以上の不具合項目で構成されると好適である。
この構成によれば、対象装置に発生し得る不具合について規定した一又は二以上の不具合項目の条件が記録トリガとして用いられる。これにより、記録トリガの条件が成立するか否かの判定を、不具合項目に係る不具合が発生したか否かの判定と同時に行うことができるので、別途規定された記録トリガの条件を用いる場合と比べて、不具合データ記録装置による演算処理の負荷を軽減することができる。
また、前記記録条件は、前記不具合データのサンプリングを行う間隔であるサンプリング間隔と、当該サンプリングを継続する時間であるサンプリング時間との一方又は双方を含むと好適である。
この構成によれば、不具合データを記録する際におけるデータのサンプリング間隔及びサンプリング時間の一方又は双方を、記録する不具合データの内容に応じて適切に設定することができる。したがって、不具合が発生した場合に、当該不具合の解析に有効に利用可能な不具合データを適切に記録することが可能となる。
また、前記不具合データは、前記対象装置の運転に伴って変化する当該対象装置の状態を表す一又は二以上の変量のデータであると好適である。
このようなデータを不具合データとして記録することにより、不具合が発生した際における対象装置の状態を表すデータを適切に記録することができる。
また、前記不具合データは、不具合が発生した瞬間の前記対象装置の状態を表す瞬間データと、不具合が発生した直前及び直後の一方又は双方の前記対象装置の状態の経時的変化を表す経時データとを含むと好適である。
この構成によれば、不具合が発生した際における対象装置の状態について、当該状態を静的に表す瞬間データと当該状態を動的に表す経時データとの双方により詳細に表すデータを、不具合データとして記録することができる。したがって、不具合の発生原因や発生状況等を解析するために有効に利用可能な不具合データを詳細に記録することが可能となる。
また、前記不具合データ記録手段は、最初に前記不具合記録条件が成立した際の不具合データが記録されて上書きが禁止される第一不具合データ記録領域と、2回目以降に前記不具合記録条件が成立した際の不具合データが、先に記録されている不具合データに上書きされて記録される第二不具合データ記録領域とを有する構成とすると好適である。
この構成によれば、最初に不具合記録条件が成立した際の不具合データと、最後に不具合記録条件が成立した際の不具合データとの双方を記録して保存することができる。したがって、これらの双方の不具合データに基づいて、不具合の発生原因や発生状況等をより詳細に解析することが可能となる。
また、上記の各構成を備えた不具合データ記録装置は、車両用駆動装置を対象装置とするものに好適に利用することができる。
以上の各構成を備えた本発明に係る不具合データ記録装置の技術的特徴は、不具合データ記録方法や不具合データ記録プログラムにも適用可能であり、そのため、本発明は、そのような方法やプログラムも権利の対象とすることができる。例えば、対象装置に不具合が発生した際に、当該対象装置の状態を表すデータを不具合データとして記録するための不具合データ記録プログラムは、予め設定された不具合記録条件に従って前記不具合データを記録部に記録する不具合データ記録機能と、前記対象装置の動作履歴を表す動作履歴データを記録部に記録する履歴データ記録機能と、前記動作履歴データに基づいて前記不具合記録条件とする記録条件を設定する記録条件設定機能と、をコンピュータに実現させる。当然ながら、このような不具合データ記録プログラムも上述した不具合データ記録装置に係る作用効果を得ることができ、更に、その好適な構成の例として挙げたいくつかの付加的技術を組み込むことも可能である。
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る不具合データ記録装置1を、車両用駆動装置20の不具合データ60を記録する装置に適用した場合を例として説明する。すなわち、本実施形態では、不具合データ記録装置1による不具合データ60を記録する対象となる対象装置は、車両用駆動装置20である。図1は、本実施形態に係る不具合データ記録装置1の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、この不具合データ記録装置1は、その中心的な構成として各種演算処理を行う制御ユニット10を備えている。更に、本実施形態においては、この制御ユニット10は、車両用駆動装置20の制御も行う構成となっている。この不具合データ記録装置1は、対象装置としての車両用駆動装置20に不具合が発生した際に、当該車両用駆動装置20の状態を表すデータを不具合データ60として記録する装置である。そして、この不具合データ記録装置1は、車両用駆動装置20の動作履歴を表す動作履歴データ50を記録しておき、当該動作履歴データ50に基づいて不具合データ60を記録する条件である不具合記録条件70を適宜設定変更することにより、不具合データ60の記録領域61、62の容量を大きくすることなく、発生した不具合の解析に有効に利用可能な不具合データ60を詳細に記録することが可能となっている。以下、本実施形態に係る不具合データ記録装置1の各部の構成について、詳細に説明する。
1.車両用駆動装置(対象装置)
まず、この不具合データ記録装置1における対象装置としての車両用駆動装置20について説明する。図1に示すように、この車両用駆動装置20は、不具合データ記録装置1の制御ユニット10との間で制御信号の送受信を行い、制御ユニット10からの制御信号に基づいて動作する。図2は、この車両用駆動装置20の具体的構成の一例を示す模式図である。この車両用駆動装置20は、駆動力源としてエンジンE及び2個のモータ・ジェネレータMG1、MG2を備えるとともに、エンジンEの出力を、第一モータ・ジェネレータMG1側と、車輪W及び第二モータ・ジェネレータMG2側とに分配する動力分配用の遊星歯車装置PGを備えた、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド駆動装置として構成されている。すなわち、この車両用駆動装置20は、機械的な構成として、エンジンEに接続された入力軸Iと、第一モータ・ジェネレータMG1と、第二モータ・ジェネレータMG2と、動力分配用の遊星歯車装置PGと、カウンタギヤ機構Cと、複数の車輪Wに駆動力を分配するディファレンシャル装置Dと、を備えている。ここで、遊星歯車装置PGは、エンジンEの出力(駆動力)を第一モータ・ジェネレータMG1とカウンタドライブギヤOとに分配する。カウンタドライブギヤOは、カウンタギヤ機構C及びディファレンシャル装置Dを介して車輪Wに接続されている。第二モータ・ジェネレータMG2は、カウンタギヤ機構Cに接続されており、このカウンタギヤ機構Cを介してカウンタドライブギヤO及びディファレンシャル装置Dに接続されている。
ここで、第一モータ・ジェネレータMG1は、主に遊星歯車装置PGを介して伝達されるエンジンEの駆動力により発電を行い、バッテリBを充電し、或いは第二モータ・ジェネレータMG2を駆動するための電力を供給するジェネレータとして機能する。ただし、車両の高速走行時やエンジンEの始動時等には第一モータ・ジェネレータMG1は力行して駆動力を出力するモータとして機能する場合もある。一方、第二モータ・ジェネレータMG2は、主に車両の走行用の駆動力を補助するモータとして機能する。ただし、車両の減速時等には第二モータ・ジェネレータMG2はジェネレータとして機能し、車両の慣性力を電気エネルギーとして回生するジェネレータとして機能する場合もある。本実施形態においては、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2は交流モータである。
また、この車両用駆動装置20では、第一モータ・ジェネレータMG1を駆動制御するためのMG1インバータI1が、第一モータ・ジェネレータMG1のステータコイルに電気的に接続されている。また、第二モータ・ジェネレータMG2を駆動制御するためのMG2インバータI2が、第二モータ・ジェネレータMG2のステータコイルに電気的に接続されている。MG1インバータI1とMG2インバータI2とは、互いに電気的に接続されるとともに、バッテリBに電気的に接続されている。MG1インバータI1及びMG2インバータI2は、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2のそれぞれに供給する電流値、交流波形の周波数や位相等を制御する。これにより、MG1インバータI1及びMG2インバータI2は、車両の走行に必要な出力トルク及び回転数となるように、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2を駆動制御する。また、図示は省略するが、車両用駆動装置20は、各部の状態を検出するためのセンサ等の検出手段を多数備えている。このような検出手段により検出される状態としては、例えば、第一モータ・ジェネレータMG1及び第二モータ・ジェネレータMG2の回転数、MG1インバータI1及びMG2インバータI2の温度、MG1インバータI1及びMG2インバータI2に供給される電圧、駆動系の各回転要素の回転数、車速、走行距離等が含まれる。このように検出された車両用駆動装置20の状態を表す情報は、図1に示すように、検出情報として制御ユニット10により取得される。
2.不具合データ記録装置の概要
次に、不具合データ記録装置1の全体構成の概要について説明する。図1に示すように、不具合データ記録装置1は、後述するような各種の演算処理を実行する制御ユニット10を中心的構成とし、ワークメモリ26、後述する各テーブル31〜33が格納されているテーブル格納部30、及び不具合データ60の記録領域61、62が設けられた不具合記録部40を備えている。
制御ユニット10は、上記車両用駆動装置20の制御を行うとともに、不具合データ記録装置1の動作制御も行う。本実施形態においては、制御ユニット10は、不具合データ記録装置1を構成する機能部として、不具合記録処理部11、動作履歴記録処理部12、初期状態判定部13、注目属性特定部14、及び記録条件更新部15を備えている。この制御ユニット10は、1又は2以上の演算処理装置、及び当該演算処理装置を動作させるためのソフトウェア(プログラム)やデータ等が格納されたROM等の記録媒体等を備えて構成されている。制御ユニット10の上記各機能部11〜15は、前記演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うためのハードウェア又はソフトウェア或いはその両方により構成されている。この制御ユニット10には、演算処理装置による演算処理に用いられるデータが一時的に記憶されるワークメモリ26が接続されている。更に、制御ユニット10には、テーブル格納部30、及び不具合記録部40が、情報を送受信可能に接続されている。ここで、ワークメモリは、例えばDRAM(Dynamic RAM)やSRAM(Static RAM)等の揮発性メモリにより構成されている。一方、テーブル格納部30、及び不具合記録部40は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリにより構成されている。
また、上記のとおり、制御ユニット10は、車両用駆動装置20との間で制御信号の送受信を行うとともに、車両用駆動装置20から検出情報を受信することができるように車両用駆動装置20と接続されている。更に、制御ユニット10は、車両用駆動装置20のメインスイッチ25にも接続されており、メインスイッチ25のオン又はオフを検出することができる構成となっている。ここで、メインスイッチ25は、車両用駆動装置20の主電源をオン又はオフするスイッチである。すなわち、車両用駆動装置20は、メインスイッチ25がオンされると電源に接続されて動作可能な状態となり、メインスイッチ25がオフされると電源が遮断されて完全に停止される。
ワークメモリ26には、制御ユニット10を構成する演算処理装置による演算処理に用いられるデータが一時的に記憶される処理用領域の他に、不具合が発生した際に不具合データ60として記録されるデータが一時的に記憶されるバッファ27を構成するバッファ領域が設けられている。このバッファ27としては、例えばリングバッファが用いられる。このバッファ27には、車両用駆動装置20の運転に伴って変化する当該車両用駆動装置20の状態を表す各種の変量のデータの内、後述する不具合記録条件70に規定された記録項目に係るデータが一定量記憶される。この際、バッファ27には、記録項目毎に、不具合記録条件70に規定されたサンプリング間隔でサンプリングされたデータが、不具合記録条件70に規定されたサンプリング時間以上の時間分記憶される。このバッファ27内に記憶されるデータは、先頭アドレスから末尾アドレスまで順に、繰り返し上書きされ、順次新しいデータに更新される。これにより、バッファ27内には、車両用駆動装置20の運転に伴って変化する各種の変量についての、現在及び所定のサンプリング時間以上前(過去)のデータが順次記憶される。
3.テーブル格納部
次に、不具合データ記録装置1のテーブル格納部30の構成について説明する。本実施形態においては、図1に示すように、テーブル格納部30には、不具合項目テーブル31、動作状態項目テーブル32、及び記録条件テーブル33が格納されている。図3は、不具合項目テーブル31の具体例を示す図である。図4は、動作状態項目テーブル32の具体例を示す図である。図5は、記録条件テーブル33の具体例を示す図である。なお、図示はしないが、テーブル格納部30には、これらの各テーブル31〜33の他に、車両用駆動装置20の診断用の診断コード(ダイアグコード)のテーブル等も記録されている。
図3に示すように、不具合項目テーブル31は、車両用駆動装置20に発生し得る不具合についての複数の「不具合項目」を規定したテーブルである。また、本実施形態においては、この不具合項目テーブル31には、各不具合項目の項目番号である「不具合番号」、各不具合項目の「優先順位」、及び各不具合項目に関連する「不具合属性」が規定されている。すなわち、この不具合項目テーブル31には、複数の不具合項目のそれぞれが関連する不具合属性及び複数の不具合項目のそれぞれについての優先順位が規定されている。ここで、不具合項目は、車両用駆動装置20の各部の状態について、所定の条件に基づいて不具合と判定する項目である。図示の例では、不具合項目として、例えば、「MG1インバータ過熱」、「MG2過回転」、「遊星歯車機構ロック」等が規定されている。不具合項目テーブル31には、このような不具合項目が、複数(図示の例では100個)列挙されて規定されている。各不具合項目については、不具合と判定する条件が別途規定されている。
優先順位は、各不具合項目に係る不具合の重要度に対応しており、優先順位が高い(優先順位の数字が小さい)程、不具合項目の重要度が高いことを表している。各不具合項目の優先順位は、後述する注目属性特定部14において、不具合記録条件を決定するための注目属性を特定する際に用いられる。不具合属性は、各不具合項目に係る不具合が属する属性である。本実施形態においては、不具合属性は、車両用駆動装置20の各部位に対応して規定されている。言い換えると、不具合属性は、例えば「インバータ」、「回転電機」、「ギヤ機構」等のように、車両用駆動装置20の部位毎に分けた属性として規定されている。すなわち、不具合項目テーブル31には、各不具合項目が関連する車両用駆動装置20の部位を、当該不具合項目の不具合属性として規定している。例えば、「MG1インバータ過熱」という不具合項目は、MG1インバータI1に関連する不具合であるので不具合属性を「インバータ」として規定している。
図4に示すように、動作状態項目テーブル32は、車両用駆動装置20の動作状態についての所定の注目値について規定した複数の「動作状態項目」を規定したテーブルである。また、本実施形態においては、この動作状態項目テーブル32には、各動作状態項目について規定された「しきい値」、各動作状態項目の「優先順位」、及び各動作状態項目に関連する「不具合属性」が規定されている。すなわち、この動作状態項目テーブル32には、複数の動作状態項目のそれぞれについて規定されたしきい値、複数の動作状態項目のそれぞれが関連する不具合属性、及び複数の動作状態項目のそれぞれについての優先順位が規定されている。ここで、動作状態項目として規定された注目値は、車両用駆動装置20の動作状態についての特徴的な値であり、例えば、各種の動作状態についてのこれまでの最大値や最小値、或いは軽微な異常の発生回数等が含まれる。図示の例では、動作状態項目として、例えば、「MG1最高回転数」、「MG1インバータ最高温度」等が規定されている。動作状態項目テーブル32には、このような動作状態項目が、複数列挙されて規定されている。
各動作状態項目について規定されたしきい値は、後述する注目属性特定部14において、不具合記録条件を決定するための注目属性を特定する際に用いられる値である。このしきい値としては、例えば、各動作状態項目に係る車両用駆動装置20の動作状態が、不具合が発生する要因となる可能性がある状態を規定した値とされる。そこで、このしきい値は、当該しきい値をいずれの方向に超えた場合に不具合が発生する要因となる可能性があるかを示す情報、図示の例では不等号の情報を備えている。優先順位は、各動作状態項目として規定された注目値の重要度に対応しており、優先順位が高い(優先順位の数字が小さい)程、動作状態項目の重要度が高いことを表している。各動作状態項目の優先順位は、後述する注目属性特定部14において、不具合記録条件を決定するための注目属性を特定する際に用いられる。不具合属性は、各動作状態項目に係る動作状態の注目値が属する属性である。上記のとおり、本実施形態においては、不具合属性は、車両用駆動装置20の各部位に対応して規定されている。すなわち、動作状態項目テーブル32には、各動作状態項目が関連する車両用駆動装置20の部位を、当該動作状態項目の不具合属性として規定している。例えば、「MG1最高回転数」という動作状態項目は、第一モータ・ジェネレータMG1の動作状態についての注目値であるので不具合属性を「回転電機」として規定している。
図5に示すように、記録条件テーブル33は、複数の不具合属性のそれぞれに対応した複数の記録条件が格納されたテーブルである。上記のとおり、不具合属性は、車両用駆動装置20の各部位に対応して規定されている。したがって、この記録条件テーブル33には、例えば「インバータ」、「回転電機」、「ギヤ機構」等のような車両用駆動装置20の各部位に対応した記録条件が複数格納されている。また、図示の例では、記録条件として、「記録トリガ」、「記録項目」、及び「サンプリング間隔」が規定されている。後述する記録条件更新部15は、注目属性特定部14により特定された注目属性に対応する記録条件を、この記録条件テーブル33に格納された複数の記録条件の中から選択し、不具合記録処理部11が用いる不具合記録条件70として設定する。設定された不具合記録条件70は、不具合記録部40に記録される。
記録条件としての記録トリガは、後述する不具合記録処理部11により不具合データ60の記録を行う際のトリガとなるトリガ条件である。本実施形態では、記録トリガは、不具合項目テーブル31に規定された複数の不具合項目の中から選択された一又は二以上の不具合項目で構成している。すなわち、図示のように、記録条件テーブル33には、各記録条件の記録トリガとして、不具合項目テーブル31に規定された不具合項目の項目番号である不具合番号を規定している。したがって、後述する不具合記録処理部11は、記録トリガに規定された不具合番号に係る不具合項目が発生した際に不具合データ60の記録を実行する。具体的には、不具合属性「インバータ」に対応した記録条件が不具合記録条件として設定されている場合、記録トリガとして規定された不具合番号「5、12、21、・・・」の不具合項目が発生した際に、不具合記録処理部11は不具合データ60の記録を実行する。
記録条件としての記録項目は、記録トリガが発生した際に不具合記録処理部11が不具合データ60として記録する項目である。ここで、記録項目は、車両用駆動装置20の運転に伴って変化する当該車両用駆動装置20の状態を表す各種の変量のデータの中から、不具合データ60として記録するデータの項目として規定されたものである。ここでは、記録条件テーブル33には、各記録条件について複数の記録項目が規定されている。具体的には、図示のように、例えば、不具合属性「インバータ」に対応する記録条件の記録項目として、「MG1インバータ温度」、「MG2インバータ温度」、「バッテリ電圧」等が規定されている。
記録条件としてのサンプリング間隔は、不具合データ60として記録するデータのサンプリングを行う間隔である。本実施形態においては、記録条件テーブル33には、サンプリング間隔を、記録条件毎に規定している。具体的には、図示のように、例えば、不具合属性「インバータ」に対応する記録条件のサンプリング間隔として「t1」が規定され、不具合属性「回転電機」に対応する記録条件のサンプリング間隔として「t2」が規定されている。ここで、不具合データ60として記録されるのは、不具合記録条件70として設定された記録条件に含まれる複数の記録項目のデータである。そして、これらの記録項目のデータは、車両用駆動装置20が動作している間、この不具合記録条件70として設定されたサンプリング間隔でサンプリングされ、バッファ27に記憶される。上記のとおり、このバッファ27内に記憶される各記録項目のデータは、繰り返し上書きされ、順次新しいデータに更新される。そして、この不具合記録条件70として設定された記録トリガが発生した際には、不具合記録処理部11により、バッファ27内に記憶されている各記録項目のデータが、不具合データ60として、不具合記録部40の第一不具合データ記録領域61又は第二不具合データ記録領域62に記録される。この際、後述するように、不具合データ60には、不具合が発生した瞬間の車両用駆動装置20の状態を表す瞬間データ63と、不具合が発生した直前及び直後の一方又は双方の車両用駆動装置20の状態の経時的変化を表す経時データ64とが含まれる。記録条件としてのサンプリング間隔は、この経時データ64がサンプリングされる間隔を規定している。
4.不具合記録部
次に、不具合データ記録装置1の不具合記録部40の構成について説明する。本実施形態においては、図1に示すように、不具合記録部40には、動作履歴データ50及び不具合記録条件70が記録されるとともに、第一不具合データ記録領域61及び第二不具合データ記録領域62が設けられ、これらの記録領域61、62に不具合データ60が記録される。図6は、この不具合記録部40に記録される内容を更に詳細に示す図である。
動作履歴データ50は、車両用駆動装置20の動作履歴を表すデータである。本実施形態においては、図6に示すように、動作履歴データ50は、運転履歴データ51、不具合発生履歴データ52、及び動作状態履歴データ53を含んで構成されている。図7は、運転履歴データ51として記録されているデータの具体例を示す図である。図8は、不具合発生履歴データ52として記録されているデータの具体例を示す図である。図9は、動作状態履歴データ53として記録されているデータの具体例を示す図である。
運転履歴データ51は、車両用駆動装置20の運転履歴に関するデータである。本実施形態においては、図7に示すように、運転履歴データ51の各「項目」に関連付けられて、具体的内容を表す「データ」が記録されている。図示の例では、運転履歴データ51の項目として、例えば、「メインスイッチオン−オフ回数」、「運転距離」、「運転時間」等が設定されており、各項目に関連付けられたデータが記録されている。これらのデータは、いずれも車両用駆動装置20の出荷時、又は不具合データ記録装置1が初期状態にリセットされた時からの通算のデータである。ここで、メインスイッチオン−オフ回数とは、メインスイッチ25がオンされた後オフされるまでを1サイクルとして数えた回数である。運転距離は、車両用駆動装置20の運転距離、より具体的には車両用駆動装置20が駆動する車輪Wによる車両の走行距離である。運転時間は、車両用駆動装置20の運転時間、すなわちメインスイッチ25がオン状態で車両用駆動装置20が動作した時間である。
不具合発生履歴データ52は、車両用駆動装置20に発生し得る不具合について規定した複数の不具合項目のそれぞれについての発生回数のデータである。本実施形態においては、図8に示すように、不具合発生履歴データ52は、不具合項目テーブル31に規定された「不具合項目」及び「不具合番号」に関連付けられて「発生回数」のデータが記録されている。ここでは、不具合発生履歴データ52として、不具合項目テーブル31に規定された全ての不具合項目のそれぞれについての発生回数のデータが記録されている。図示の例では、例えば、不具合番号「1」の不具合項目「MG1インバータ過熱」の発生回数は「4」回、不具合番号「3」の不具合項目「MG1インバータ電圧検出回路異常」の発生回数は「1」回等のデータが記録されている。また、図示は省略するが、これらの各不具合項目の発生回数のデータには、当該不具合項目に係る各回の不具合が発生した時期(不具合発生時期)を示すデータが関連付けられている。この不具合発生時期のデータは、本実施形態においては、当該不具合が発生した際のメインスイッチオン−オフ回数のデータとされている。すなわち、不具合発生時期のデータは、不具合項目に係る各回の不具合が、メインスイッチの何回目のオン−オフサイクルで発生したかを示すデータとなっている。具体的には、例えば、不具合項目「MG1インバータ過熱」の発生回数のデータには、1回目の発生時期がメインスイッチオン−オフ回数「22」回目、2回目の発生時期がメインスイッチオン−オフ回数「35」回目といったデータが関連付けられて記録されている。なお、このような不具合発生時期のデータとしては、この他にも、例えば、不具合項目の発生時期を、車両用駆動装置20の運転時間や運転距離等で示すデータとしても好適である。
動作状態履歴データ53は、車両用駆動装置20の動作状態についての所定の注目値について規定した複数の動作状態項目のデータである。本実施形態においては、図9に示すように、動作状態履歴データ53は、動作状態項目テーブル32に規定された「動作状態項目」に関連付けられて、各動作状態項目の具体的内容を表す「データ」が記録されている。ここでは、動作状態履歴データ53として、動作状態項目テーブル32に規定された全ての動作状態項目のそれぞれのデータが記録されている。図示の例では、例えば、「MG1最高回転数」が「R3〔rpm〕」、「MG2最高回転数」が「R4〔rpm〕」、「MG1インバータ最高温度」が「T2〔℃〕」等のデータが記録されている。これらのデータは、いずれも車両用駆動装置20の出荷時、又は不具合データ記録装置1が初期状態にリセットされた時からの全期間での最大値(最高値)や最小値(最低値)のデータである。また、図示は省略するが、動作状態履歴データ53には、車両用駆動装置20の動作状態についての軽微な異常の発生回数のデータ等も含まれる。
不具合記録部40には、後述する注目属性特定部14により特定された注目属性についての記録条件が、記録条件テーブル33に格納された複数の記録条件の中から選択され、不具合記録条件70として記録される。後述する不具合記録処理部11は、不具合記録部40に記録された不具合記録条件70に従って不具合データ60の記録を行う。本実施形態においては、不具合記録条件70は、記録トリガ、記録項目、サンプリング間隔、及びサンプリング時間の4つの条件により構成されている。ここで、記録トリガ、記録項目、及びサンプリング間隔は、上述した記録条件テーブル33に格納された各記録条件の記録トリガ、記録項目、及びサンプリング間隔と同じである。一方、サンプリング時間は、記録条件テーブル33に格納された記録条件には含まれていない。そこで、このサンプリング時間は、後述する記録条件更新部15により導出されたものが不具合記録条件70に組み込まれて不具合記録部40に記録される。
第一不具合データ記録領域61及び第二不具合データ記録領域62は、車両用駆動装置20に不具合が発生した際に取得される不具合データ60が記録される記録領域である。ここで、不具合データ60を記録する記録領域が2つ設けられているのは、異なる時期に取得された2つの不具合データ60を不具合記録部40に記録して保存しておくためである。すなわち、第一不具合データ記録領域61には、最初に不具合記録条件70が成立した際の不具合データ60が記録されて上書きが禁止される。第二不具合データ記録領域62には、2回目以降に不具合記録条件70が成立した際の不具合データ60が、先に記録されている不具合データ60に上書きされて記録される。すなわち、第一不具合データ記録領域61には、最初に不具合記録条件70の記録トリガが発生した際に取得された不具合データ60が記録され、第二不具合データ記録領域62には、最後に不具合記録条件70の記録トリガが発生した際に取得された最新の不具合データ60が記録される。
上記のとおり、不具合データ60は、不具合記録条件70に規定された複数の記録項目のデータで構成される。各記録項目のデータは、車両用駆動装置20の運転に伴って変化する当該車両用駆動装置20の状態を表す各種の変量のデータである。更に、図6に示すように、各不具合データ記録領域61、62に記録される不具合データ60は、瞬間データ63と経時データ64とで構成されている。ここで、瞬間データ63は、不具合が発生した瞬間の車両用駆動装置20の状態を表すデータである。すなわち、瞬間データ63は、不具合記録条件70の記録トリガが発生した瞬間にバッファ27に記憶された、各記録項目の瞬間的なデータである。一方、経時データ64は、不具合が発生した直前及び直後の一方又は双方の車両用駆動装置20の状態の経時的変化を表すデータである。すなわち、経時データ64は、不具合記録条件70の記録トリガが発生した瞬間の前後にバッファ27に記憶された、各記録項目についての所定時間連続する経時的なデータである。ここでは、経時データ64は、不具合記録条件70に規定されたサンプリング間隔でサンプリングされてバッファ27に連続的に記憶された各記録項目のデータの中から、不具合記録条件70に規定されたサンプリング時間分のデータを抽出して記録される。ここでは、経時データ64を構成する全ての記録項目のデータについて、記録トリガが発生した瞬間の前のサンプリング時間と、後のサンプリング時間との割合は同じとしている。すなわち、例えば、サンプリング時間が1000〔ms〕であった場合、記録トリガが発生した瞬間の直前500〔ms〕と直後500〔ms〕の各記録項目のデータが、経時データ64として記録される。
5.制御ユニットの各機能部
次に、不具合データ記録装置1の制御ユニット10の各機能部の構成について説明する。本実施形態においては、図1に示すように、制御ユニット10は、不具合データ記録装置1を構成する機能部として、不具合記録処理部11、動作履歴記録処理部12、初期状態判定部13、注目属性特定部14、及び記録条件更新部15を備えている。以下、これらの各機能部の機能について説明する。
不具合記録処理部11は、不具合記録部40に記録されて設定された不具合記録条件70に従って不具合データ60を記録する処理を行う。そのため、不具合記録処理部11は、まず、不具合記録条件70に規定された記録項目に係るデータをバッファ27に記憶させるように、バッファ27の記憶項目を設定する。またこの際、不具合記録処理部11は、各記録項目のデータを、不具合記録条件70に規定されたサンプリング間隔でサンプリングするようにバッファ27の記憶条件を設定し、当該不具合記録条件70に規定されたサンプリング時間以上の時間分記憶するように、各記録項目についてのバッファ27の記憶容量を設定する。そして、不具合記録処理部11は、不具合記録条件70の記録トリガとして規定された不具合項目に係る不具合が発生した際に、不具合データ60の記録を行う。この際、不具合記録処理部11は、不具合記録条件70に規定された各記録項目のデータをバッファ27から読み出し、不具合データ60とする。
ここで、不具合データ60は、瞬間データ63と経時データ64とで構成されているため、不具合記録処理部11は、バッファ27から各記録項目についての瞬間データ63と経時データ64とを読み出して不具合データ60として不具合記録部40に記録する。この不具合記録部40には、第一不具合データ記録領域61と第二不具合データ記録領域62とが設けられている。上記のとおり、第一不具合データ記録領域61では上書きが禁止され、第二不具合データ記録領域62では上書きが許容されている。そこで、不具合記録処理部11は、不具合データ60を取得した際に、第一不具合データ記録領域61に既に不具合データ60が記録されているか否かを判定し、記録されていない場合には第一不具合データ記録領域61に、記録されている場合には第二不具合データ記録領域62に、取得した不具合データ60を記録する。以上のとおり、本実施形態においては、この不具合記録処理部11と、不具合データ60及び不具合記録条件70が記録される不具合記録部40とにより、本発明における不具合データ記録手段が構成されている。
動作履歴記録処理部12は、対象装置としての車両用駆動装置20の動作履歴を表す動作履歴データ50を記録する処理を行う。この際、動作履歴記録処理部12は、メインスイッチ25がオン状態とされた際に、不具合記録部40に記録された動作履歴データ50をワークメモリ26へ読み出し、車両用駆動装置20の動作状態の変化に応じてワークメモリ26内の動作履歴データ50を適宜更新して、更新後の最新の動作履歴データ50を不具合記録部40に記録する。これにより、不具合記録部40に記録された動作履歴データ50を更新する。本実施形態においては、この動作履歴記録処理部12と、動作履歴データ50が記録される不具合記録部40とにより、本発明における履歴データ記録手段が構成される。
上記のとおり、動作履歴データ50には、運転履歴データ51、不具合発生履歴データ52、及び動作状態履歴データ53が含まれている(図6参照)。そこで、動作履歴記録処理部12は、不具合記録部40に記録された運転履歴データ51をワークメモリ26へ読み出し、運転履歴データ51の各項目についてのデータを取得する。本実施形態においては、動作履歴記録処理部12は、メインスイッチ25がオフ状態とされた際に、運転履歴データ51の各項目のデータを取得してワークメモリ26内の運転履歴データ51を更新する。ここでは、運転履歴データ51の各項目として、図7に示すように、例えば、メインスイッチオン−オフ回数、運転距離、運転時間等が含まれており、動作履歴記録処理部12は、制御ユニット10に接続された車両用駆動装置20及びメインスイッチ25からこれらのデータを取得する。そして、動作履歴記録処理部12は、ワークメモリ26内の更新後の運転履歴データ51により、不具合記録部40に記録された運転履歴データ51を上書きして更新する。
また、動作履歴記録処理部12は、不具合記録部40に記録された不具合発生履歴データ52をワークメモリ26へ読み出し、不具合発生履歴データ52を構成する各不具合項目に係る不具合の発生回数のデータを取得する。本実施形態においては、動作履歴記録処理部12は、メインスイッチ25がオン状態とされている間は不具合項目テーブル31に規定された全ての不具合項目に係る不具合の発生を監視し、不具合が発生した場合には、不具合発生履歴データ52を構成する各不具合項目の発生回数に「1」を加算する。例えば、図8に示すような不具合発生履歴データ52がワークメモリ26に記憶されている場合、不具合項目「MG1インバータ過熱」に関しては、動作履歴記録処理部12は、車両用駆動装置20のMG1インバータI1に設けられた温度センサの検出情報等に基づいて温度を監視する。そして、MG1インバータI1の温度がMG1インバータ過熱の不具合と判定するために予め設定された温度しきい値を超えたときに「MG1インバータ過熱」の不具合が発生したと判定する。その場合、動作履歴記録処理部12は、不具合記録部40に記録された不具合発生履歴データ52に含まれる「MG1インバータ過熱」の発生回数に「1」を加算し、発生回数を「5」とする更新を行う。同様にして、動作履歴記録処理部12は、不具合項目テーブル31に規定された全ての不具合項目に係る不具合の発生を監視し、不具合が発生した際には発生回数の更新を行う。そして、動作履歴記録処理部12は、このような発生回数の更新が行われた際に、ワークメモリ26内の更新後の不具合発生履歴データ52により、不具合記録部40に記録された不具合発生履歴データ52を上書きして更新する。
また、動作履歴記録処理部12は、不具合記録部40に記録された動作状態履歴データ53をワークメモリ26へ読み出し、動作状態履歴データ53を構成する各動作状態項目についてのデータを取得する。本実施形態においては、動作履歴記録処理部12は、メインスイッチ25がオン状態とされている間は動作状態項目テーブル32に規定された全ての動作状態項目のデータを監視し、動作状態項目のデータの更新が必要な場合には、動作状態履歴データ53を構成する各動作状態項目のデータを更新する。ここで、動作状態項目のデータの更新が必要な場合としては、例えば、動作状態項目がこれまでの最大値又は最小値を規定したものであれば動作状態履歴データ53に記録されている最大値又は最小値を上回る値が得られた場合であり、動作状態項目が軽微な異常の発生回数を規定したものであれば当該異常が発生した場合である。具体的には、図9に示すような動作状態履歴データ53がワークメモリ26に記憶されている場合、動作状態項目「MG1最高回転数」に関しては、動作履歴記録処理部12は、車両用駆動装置20の第一モータ・ジェネレータMG1に設けられた回転センサの検出情報等に基づいて回転数を監視する。そして、第一モータ・ジェネレータMG1の回転数が、動作状態履歴データ53として記録されているこれまでの最高回転数「R3〔rpm〕」を超えた場合には、動作履歴記録処理部12は、そのときの最高回転数のデータを取得し、動作状態項目「MG1最高回転数」のデータを更新する。同様にして、動作履歴記録処理部12は、動作状態項目テーブル32に規定された全ての動作状態項目のデータを監視し、データの更新が必要な場合には更新を行う。そして、動作履歴記録処理部12は、このようなデータの更新が行われた際に、ワークメモリ26内の更新後の動作状態履歴データ53により、不具合記録部40に記録された動作状態履歴データ53を上書きして更新する。
初期状態判定部13は、動作履歴データ50に含まれる運転履歴データ51に基づいて、車両用駆動装置20の運転履歴が所定の注目属性特定条件を満たすか否かを判定する処理を行う。ここで、注目属性特定条件は、後述する注目属性特定部14による注目属性の特定のために十分な動作履歴データ50が取得されたと判定するための条件である。そして、初期状態判定部13は、注目属性特定条件を満たさないと判定した場合には、車両用駆動装置20について、注目属性特定部14による注目属性の特定のために十分な動作履歴データ50が取得されていない初期状態にあると判定し、注目属性の特定を行わない。本実施形態においては、初期状態判定部13は、注目属性特定条件として、運転履歴データ51(図7参照)に含まれるメインスイッチオン−オフ回数が所定回数(例えば30回等)以上であるか否かを判定する。この初期状態判定部13が注目属性特定条件を満たさないと判定した場合には、注目属性特定部14による注目属性の特定が行われず、従って当該注目属性に対応する記録条件を不具合記録条件70とする更新も行われない。この場合、初期設定の記録条件が不具合記録条件70として設定され、不具合記録処理部11は、当該不具合記録条件70に従って不具合データ60の記録を行う。ここで、初期設定の記録条件は、例えば、従来と同様に、車両用駆動装置20の全体についての主要な不具合項目を記録項目とし、広く浅くデータを記録するような記録条件とされる。
注目属性特定部14は、動作履歴データ50に基づいて、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を注目属性として特定する処理を行う。本実施形態においては、注目属性特定部14は、動作履歴データ50に含まれる不具合発生履歴データ52及び動作状態履歴データ53の少なくとも一方に基づいて、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を推測し、当該不具合属性を注目属性として特定する。ここでは、不具合発生履歴データ52に基づいて注目属性を特定する処理を第一特定処理とし、動作状態履歴データ53に基づいて注目属性を特定する処理を第二特定処理としている。後に図12〜図14に示すフローチャートに基づいて説明するように、注目属性特定部14は、不具合発生履歴データ52に関する所定の第一特定処理選択条件を満たす場合に第一特定処理を行い、動作状態履歴データ53に関する所定の第二特定処理選択条件を満たす場合に第二特定処理を行い、いずれの条件も満たさない場合には、注目属性の特定処理を行わない。
ここで、第一特定処理選択条件は、注目属性特定部14による注目属性の特定のために十分な不具合発生履歴データ52が取得されているか否かを判定するための条件である。本実施形態においては、この第一特定処理選択条件は、不具合発生履歴データ52(図8参照)に含まれる全ての不具合項目の発生回数のデータの中で発生回数が最多のデータの回数が所定回数以上(例えば3回以上等)であることを条件としている。また、本実施形態においては、第一特定処理に際して、古い過去の不具合発生履歴データ52を考慮しないようにするため、メインスイッチオン−オフ回数について現在から過去に遡って所定回数以内(例えば最近30回以内等)に取得された不具合発生履歴データ52のみを用いることとしている。そこで、第一特定処理選択条件を判定する際にも、メインスイッチオン−オフ回数について現在から過去に遡って所定回数以内に取得された不具合発生履歴データ52のみを用いて判定を行う。一方、第二特定処理選択条件は、注目属性特定部14による注目属性の特定のために十分な動作状態履歴データ53が取得されているか否かを判定するための条件である。本実施形態においては、この第二特定処理選択条件は、動作状態履歴データ53(図9参照)に含まれる全ての動作状態項目のデータの中で、動作状態項目テーブル32に規定されたしきい値(図4参照)を超える動作状態項目があることを条件としている。すなわち、動作状態履歴データ53の中に動作状態項目テーブル32に規定されたしきい値(図4参照)を超える動作状態項目が一つでもあれば、第二特定処理選択条件は満たされる。
注目属性特定部14は、第一特定処理を行う場合には、不具合発生履歴データ52に基づいて、発生回数が最も多い不具合項目に関連する不具合属性を、注目属性として特定する。この際、注目属性特定部14は、不具合項目テーブル31に基づいて、各不具合項目に関連する不具合属性を決定する。例えば、図8に示すような不具合発生履歴データ52に基づけば、不具合番号「1」の不具合項目「MG1インバータ過熱」が発生回数の最も多い不具合項目であり、注目属性特定部14は、不具合項目テーブル31に基づいて、当該不具合項目「MG1インバータ過熱」に関連する不具合属性「インバータ」を注目属性として特定する。ところで、不具合発生履歴データ52に記録されている複数の不具合項目の内、発生回数が最も多い不具合項目が複数存在する場合もあり得る。この場合には、注目属性特定部14は、各不具合項目について不具合項目テーブル31に規定された優先順位に基づいて、当該優先順位が高い不具合項目に関連する不具合属性を、注目属性として特定する。なお、本実施形態においては、このような第一特定処理に際して、注目属性特定部14は、古い過去の不具合発生履歴データ52を考慮しないようにするため、メインスイッチオン−オフ回数について現在から過去に遡って所定回数以内(例えば最近30回以内等)に取得された不具合発生履歴データ52のみを用いて注目属性の特定を行うこととしている。
また、注目属性特定部14は、第二特定処理を行う場合には、動作状態履歴データ53に基づいて、動作状態項目に係る注目値が、動作状態項目テーブル32に規定されたしきい値(図4参照)を超えている動作状態項目に関連する不具合属性を、注目属性として特定する。この際、注目属性特定部14は、動作状態項目テーブル32に基づいて、各動作状態項目に関連する不具合属性を決定する。例えば、図9に示すような動作状態履歴データ53に基づいて、動作状態項目「MG1最高回転数」のデータ「R3〔rpm〕」が、図4に示す動作状態項目テーブル32に規定された「MG1最高回転数」のしきい値「≧R1」を満たす場合には、注目属性特定部14は、動作状態項目テーブル32に基づいて、当該動作状態項目「MG1最高回転数」に関連する不具合属性「回転電機」を注目属性として特定する。ところで、動作状態履歴データ53に記録されている複数の動作状態項目の内、各動作状態項目について動作状態項目テーブル32に規定されたしきい値を超える動作状態項目が複数存在する場合もあり得る。この場合には、注目属性特定部14は、各動作状態項目について動作状態項目テーブル32に規定された優先順位に基づいて、当該優先順位が高い動作状態項目に関連する不具合属性を、注目属性として特定する。
記録条件更新部15は、動作履歴データ50に基づいて注目属性特定部14により特定された注目属性に応じた記録条件を新たな不具合記録条件70として更新する処理を行う。すなわち、記録条件更新部15は、注目属性特定部14により注目属性が特定された場合には、記録条件テーブル33に格納された複数の記録条件の中から、当該注目属性として特定された不具合属性に対応する記録条件を選択し、不具合記録部40に記録された不具合記録条件70を上書きして更新する。例えば、注目属性として不具合属性「回転電機」が特定された場合には、記録条件更新部15は、図5に示される記録条件テーブル33から当該不具合属性「回転電機」について規定された記録条件を読み出し、新たな不具合記録条件70として設定する。またこの際、記録条件更新部15は、記録条件テーブル33に格納された当該注目属性に対応する記録条件のサンプリング間隔に基づいて、不具合記録条件70を構成するサンプリング時間を導出する処理も行う。ここで、サンプリング時間は、第一不具合データ記録領域61又は第二不具合データ記録領域62の記録容量を有効活用し、各記録項目に係る車両用駆動装置20の状態を表す各種の変量のデータを最大限長く記録するように設定されるのが好適である。そこで、記録条件更新部15は、不具合記録条件70としてのサンプリング時間を、サンプリング間隔と、一回のサンプリングで取得されるデータ量と、第一不具合データ記録領域61又は第二不具合データ記録領域62に確保される各記録項目について記録可能なデータ容量とに基づいて算出する。なお、サンプリング時間を予め定められた固定値としてもよい。記録条件更新部15は、このように導出したサンプリング時間を組み込んで不具合記録条件70を生成する。
以上のとおり、本実施形態においては、この初期状態判定部13、注目属性特定部14、及び記録条件更新部15により、本発明における記録条件設定手段が構成されている。
6.不具合データ記録装置により実行される処理
次に、本実施形態に係る不具合データ記録装置1により実行される各種処理の手順について図10〜図14に示すフローチャートを用いて説明する。図10は、動作履歴データ50としての運転履歴データ51及び動作状態履歴データ53を記録するための動作履歴データ記録処理の手順を示すフローチャートである。図11は、動作履歴データ50としての不具合発生履歴データ52及び不具合データ60を記録するための不具合データ記録処理の手順を示すフローチャートである。図12は、動作履歴データ50に基づいて不具合記録条件70を更新する不具合記録条件更新処理の手順を示すフローチャートである。図13は、図12のステップ#55の第一特定処理の手順を示すフローチャートである。図14は、図12のステップ#57の第二特定処理の手順を示すフローチャートである。以下に説明する各処理の手順は、上記の各機能部を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。上記の各機能部がプログラムにより構成される場合には、不具合データ記録装置1の制御ユニット10が有する演算処理装置が、上記の各機能部を構成する不具合データ記録プログラムを実行するコンピュータとして動作する。以下、フローチャートに従って説明する。
まず、動作履歴データ記録処理の手順について説明する。図10に示すように、この処理は、メインスイッチ25がオン状態とされることにより開始され(ステップ#11:Yes)、動作履歴記録処理部12は、不具合記録部40に記録されている動作履歴データ50としての運転履歴データ51及び動作状態履歴データ53をワークメモリ26へ読み出す(ステップ#12)。なお、図11に示すようにメインスイッチ25がオン状態とされた際には、これらの他にも、後述するように、不具合記録部40に記録されている不具合発生履歴データ52及び不具合記録条件70がワークメモリ26へ読み出される。次に、動作履歴記録処理部12は、車両用駆動装置20の各部から、動作状態項目テーブル32に規定された全ての動作状態項目のデータを、所定の時間間隔で取得する(ステップ#13)。そして、取得した各動作状態項目のデータを、ワークメモリ26へ読み出した動作状態履歴データ53に含まれる当該動作状態項目のデータと比較する(ステップ#14)。このようにして動作履歴記録処理部12は、動作状態項目テーブル32に規定された全ての動作状態項目のデータを監視する。
そして、動作履歴記録処理部12は、ステップ#14の比較結果に基づいて、動作状態履歴データ53の更新が必要か否かを判定する(ステップ#15)。すなわち、動作履歴記録処理部12は、ステップ#13で取得された動作状態項目のデータに基づいて、例えば、動作状態項目がこれまでの最大値又は最小値を規定したものであれば動作状態履歴データ53の当該最大値又は最小値を上回る値のデータが得られた場合に更新が必要と判定する。また、例えば、動作状態項目が軽微な異常の発生回数を規定したものであれば当該異常が発生したことを示すデータが得られた場合に更新が必要と判定する。動作状態履歴データ53の更新が必要と判定した場合には(ステップ#15:Yes)、動作履歴記録処理部12は、動作状態履歴データ53を更新する(ステップ#16)。すなわち、動作履歴記録処理部12は、ステップ#13において新たに得られた動作状態項目のデータに基づいてワークメモリ26内の動作状態履歴データ53の当該動作状態項目のデータを更新する。そして、当該ワークメモリ26内の更新後の動作状態履歴データ53を不具合記録部40へ記録する(ステップ#17)。動作状態履歴データ53の更新が必要でないと判定した場合には(ステップ#15:No)、動作履歴記録処理部12は、ステップ#16及び#17の処理は行わない。以上のステップ#13からステップ#17の処理は、メインスイッチ25がオフ状態とされない限り(ステップ#18:No)、繰り返し実行される。
そして、メインスイッチ25がオフ状態とされた場合には(ステップ#18:Yes)、動作履歴記録処理部12は、運転履歴データ51を更新する(ステップ#19)。具体的には、動作履歴記録処理部12は、ワークメモリ26内の運転履歴データ51を構成するメインスイッチオン−オフ回数のデータに「1」を加算する。また、ステップ#11でメインスイッチ25がオン状態とされてからの車両用駆動装置20の運転距離及び運転時間のデータを車両用駆動装置20から取得し、当該運転距離及び運転時間をワークメモリ26内の運転履歴データ51を構成する運転距離及び運転時間のデータに加算する。その後、動作履歴記録処理部12は、ワークメモリ26内の更新後の運転履歴データ51を不具合記録部40へ記録する(ステップ#20)。以上により、不具合記録部40に記録された運転履歴データ51及び動作状態履歴データ53が更新される。これで動作履歴データ記録処理を終了する。
次に、不具合データ記録処理の手順について説明する。図11に示すように、この処理も、メインスイッチ25がオン状態とされることにより開始される(ステップ#31:Yes)。これにより、動作履歴記録処理部12は、不具合記録部40に記録されている動作履歴データ50としての不具合発生履歴データ52をワークメモリ26へ読み出し、不具合記録処理部11は、不具合記録部40に記録されている不具合記録条件70をワークメモリ26へ読み出す(ステップ#32)。次に、動作履歴記録処理部12は、不具合項目テーブル31に規定された不具合項目に係る不具合が発生したか否かを判定する(ステップ#33)。ここでは、動作履歴記録処理部12は、不具合項目テーブル31に規定された全ての不具合項目に係る不具合の発生を監視し、各不具合項目について規定された不具合判定条件を満たす場合に不具合が発生したと判定する。不具合項目テーブル31に規定された不具合項目が発生していない場合には(ステップ#33:No)、処理はステップ#41へ進む。そして、不具合項目テーブル31に規定された不具合項目が発生した場合には(ステップ#33:Yes)、動作履歴記録処理部12は、ワークメモリ26へ読み出した不具合発生履歴データ52の該当する不具合項目の発生回数に「1」を加算する(ステップ#34)。これにより、動作履歴記録処理部12は、ワークメモリ26内の不具合発生履歴データ52を更新する。そして、動作履歴記録処理部12は、ワークメモリ26内の更新後の不具合発生履歴データ52を不具合記録部40へ記録する(ステップ#35)。これにより、不具合記録部40に記録された不具合発生履歴データ52も更新される。
次に、不具合記録処理部11は、ステップ#33で発生したと判定された不具合項目が、ワークメモリ26へ読み出した不具合記録条件70の記録トリガとして設定された不具合項目であるか否かを判定する(ステップ#36)。不具合記録条件70の記録トリガとして設定された不具合項目でない場合には(ステップ#36:No)、処理はステップ#41へ進む。そして、発生した不具合に係る不具合項目が不具合記録条件70の記録トリガとして設定された不具合項目である場合には(ステップ#36:Yes)、不具合記録処理部11は、不具合データ60を取得する(ステップ#37)。具体的には、不具合記録処理部11は、バッファ27に記憶されている不具合記録条件70の記録項目のデータから瞬間データ63及び経時データ64を取得する。次に、不具合記録処理部11は、第一不具合データ記録領域61に既に不具合データ60が記録されているか否かを判定する(ステップ#38)。第一不具合データ記録領域61に不具合データ60が記録されていない場合には(ステップ#38:No)、ステップ#37で取得した不具合データ60を不具合記録部40の第一不具合データ記録領域61に記録する(ステップ#39)。一方、第一不具合データ記録領域61に不具合データ60が記録されている場合には(ステップ#38:Yes)、ステップ#37で取得した不具合データ60を不具合記録部40の第二不具合データ記録領域62に記録する(ステップ#40)。この第二不具合データ記録領域62に不具合データ60を記録する際には、第二不具合データ記録領域62に既に不具合データ60が記録されている場合にも、新たに取得した不具合データ60を既存の不具合データ60に上書きして記録する。
以上のステップ#33からステップ#40の処理は、メインスイッチ25がオフ状態とされない限り(ステップ#41:No)、繰り返し実行される。そして、メインスイッチ25がオフ状態とされた場合には(ステップ#41:Yes)、不具合データ記録処理を終了する。
次に、不具合記録条件更新処理の手順について説明する。図12に示すように、この処理も、メインスイッチ25がオン状態とされることにより開始され(ステップ#51:Yes)、制御ユニット10は、不具合記録部40に記録されている動作履歴データ50をワークメモリ26へ読み出す(ステップ#52)。ここでは、制御ユニット10は、動作履歴データ50としての運転履歴データ51、不具合発生履歴データ52、及び動作状態履歴データ53を全てワークメモリ26へ読み出す。次に、初期状態判定部13は、運転履歴データ51に基づいて、車両用駆動装置20の運転履歴が所定の注目属性特定条件を満たすか否かを判定する(ステップ#53)。本実施形態においては、初期状態判定部13は、注目属性特定条件として、運転履歴データ51(図7参照)に含まれるメインスイッチオン−オフ回数が所定回数(例えば30回等)以上であるか否かを判定する。注目属性特定条件を満たさない場合には(ステップ#53:No)、処理はステップ#60へ進む。
そして、注目属性特定条件を満たす場合には(ステップ#53:Yes)、注目属性特定部14は、不具合発生履歴データ52に関する所定の第一特定処理選択条件を満たすか否かを判定する(ステップ#54)。本実施形態においては、注目属性特定部14は、第一特定処理選択条件として、不具合発生履歴データ52(図8参照)に含まれる全ての不具合項目の発生回数のデータの中で発生回数が最多のデータの回数が所定回数以上(例えば3回以上等)であるか否かを判定する。第一特定処理選択条件を満たす場合には(ステップ#54:Yes)、注目属性特定部14は、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を注目属性として特定するための第一特定処理を実行する(ステップ#55)。この第一特定処理の手順については、後に図13に示すフローチャートに基づいて説明する。一方、第一特定処理選択条件を満たさない場合には(ステップ#54:No)、注目属性特定部14は、次に、動作状態履歴データ53に関する所定の第二特定処理選択条件を満たすか否かを判定する(ステップ#56)。本実施形態においては、注目属性特定部14は、第二特定処理選択条件として、動作状態履歴データ53(図9参照)に含まれる全ての動作状態項目のデータの中で、動作状態項目テーブル32に規定されたしきい値(図4参照)を超える動作状態項目が少なくとも一つあるか否かを判定する。第二特定処理選択条件を満たす場合には(ステップ#56:Yes)、注目属性特定部14は、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を注目属性として特定するための第二特定処理を実行する(ステップ#57)。この第二特定処理の手順については、後に図14に示すフローチャートに基づいて説明する。第二特定処理選択条件を満たさない場合には(ステップ#56:No)、処理はステップ#60へ進む。この場合、注目属性特定部14による注目属性の特定処理は行われない。したがって、不具合記録条件70の更新も行われず、先に設定された不具合記録条件70がそのまま用いられる。
注目属性特定部14が、ステップ#55の第一特定処理又はステップ#57の第二特定処理により、次に発生する可能性が最も高い不具合に関する不具合属性を注目属性として特定した場合には、記録条件更新部15は、当該注目属性として特定された不具合属性に対応する記録条件を、記録条件テーブル33から読み出す(ステップ#58)。その後、記録条件更新部15は、ステップ#58で読み出した記録条件を新たな不具合記録条件70とし、不具合記録部40に記録された不具合記録条件70を更新する(ステップ#59)。以上のステップ#52からステップ#59の処理は、メインスイッチ25がオフ状態とされない限り(ステップ#60:No)、繰り返し実行される。したがって、上記図10のステップ#17又は図11のステップ#35により、不具合記録部40に記録された不具合発生履歴データ52又は動作状態履歴データ53が更新されれば、当該更新結果に基づいて不具合記録条件70も更新される。そして、メインスイッチ25がオフ状態とされた場合に(ステップ#60:Yes)、不具合記録条件更新処理を終了する。
次に、図12のステップ#55の第一特定処理の手順について説明する。図13に示すように、この第一特定処理では、まず、注目属性特定部14は、不具合発生履歴データ52から発生回数が最も多い不具合項目を抽出する(ステップ#71)。次に、注目属性特定部14は、ステップ#71により複数の不具合項目が抽出されたか否かについて判定する(ステップ#72)。発生回数が最も多い不具合項目が一つしか抽出されなかった場合には(ステップ#72:No)、注目属性特定部14は、ステップ#71で抽出された当該一つの不具合項目に関連する不具合属性を、不具合項目テーブル31から取得する(ステップ#73)。一方、発生回数が最も多い不具合項目が複数抽出された場合には(ステップ#72:Yes)、注目属性特定部14は、ステップ#71で抽出された複数の不具合項目のそれぞれの優先順位を不具合項目テーブル31から取得する(ステップ#74)。そして、注目属性特定部14は、ステップ#74で取得された優先順位が最も高い不具合項目に関連する不具合属性を、不具合項目テーブル31から取得する(ステップ#75)。その後、注目属性特定部14は、ステップ#73又はステップ#75により取得された不具合属性を、注目属性として特定する(ステップ#76)。以上で第一特定処理を終了する。
次に、図12のステップ#57の第二特定処理の手順について説明する。図14に示すように、この第二特定処理では、まず、注目属性特定部14は、動作状態履歴データ53から動作状態項目テーブル32に規定されたしきい値(図4参照)を超える値のデータが記録された動作状態項目を抽出する(ステップ#91)。次に、注目属性特定部14は、ステップ#91により複数の動作状態項目が抽出されたか否かについて判定する(ステップ#92)。動作状態項目が一つしか抽出されなかった場合には(ステップ#92:No)、注目属性特定部14は、ステップ#91で抽出された当該一つの動作状態項目に関連する不具合属性を、動作状態項目テーブル32から取得する(ステップ#93)。一方、ステップ#91により動作状態項目が複数抽出された場合には(ステップ#92:Yes)、注目属性特定部14は、ステップ#91で抽出された複数の動作状態項目のそれぞれの優先順位を動作状態項目テーブル32から取得する(ステップ#94)。そして、注目属性特定部14は、ステップ#94で取得された優先順位が最も高い動作状態項目に関連する不具合属性を、動作状態項目テーブル32から取得する(ステップ#95)。その後、注目属性特定部14は、ステップ#93又はステップ#95により取得された不具合属性を、注目属性として特定する(ステップ#96)。以上で第二特定処理を終了する。
7.その他の実施形態
(1)上記の実施形態においては、記録条件テーブル33に、記録条件としてのサンプリング間隔を記録条件毎(すなわち不具合属性毎)に規定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、各記録条件に含まれる記録項目毎にサンプリング間隔を規定することも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、上記の実施形態においては、記録条件テーブル33にサンプリング間隔のみが規定され、サンプリング時間は記録条件更新部15により導出されたものが不具合記録条件70として設定される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、サンプリング間隔とサンプリング時間の双方を、記録条件として記録条件テーブル33に規定することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(2)上記の実施形態では、不具合データ60としての経時データ64を構成する全ての記録項目のデータについて、記録トリガが発生した瞬間の前のサンプリング時間と、後のサンプリング時間との割合は同じとする場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、記録トリガが発生した瞬間の前のサンプリング時間と、後のサンプリング時間との割合は任意に決定することができ、前又は後のサンプリング時間をゼロに設定することも可能である。また、経時データ64を構成する記録項目毎に、記録トリガが発生した瞬間の前のサンプリング時間と、後のサンプリング時間との割合を個別に設定しても好適である。この場合、記録トリガが発生した瞬間の前後のサンプリング時間の割合を規定する条件が、不具合記録条件70として設定される。
(3)上記の実施形態では、不具合データ60が記録される記録領域として不具合記録部40に第一不具合データ記録領域61及び第二不具合データ記録領域62の2つが設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、不具合記録部40に、第二不具合データ記録領域62に相当する上書き可能な不具合データ60の記録領域が一つだけ設けられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(4)上記の実施形態においては、初期状態判定部13が注目属性特定条件として、運転履歴データ51に含まれるメインスイッチオン−オフ回数が所定回数(例えば30回等)以上であるか否かを判定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、注目属性特定部14による注目属性の特定のために十分な動作履歴データ50が取得されたと判定できる条件であれば、他の条件を注目属性特定条件とすることが可能である。したがって、例えば、運転履歴データ51に含まれる運転距離が所定距離以上であるという条件や、運転時間が所定時間以上であるという条件等を、注目属性特定条件とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(5)上記の実施形態においては、記録条件更新部15が、注目属性特定部14により特定された注目属性に応じた記録条件が、現在設定されている不具合記録条件70と同じであるか否かに関わらず、不具合記録条件70を更新する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、特定された注目属性に応じた記録条件が現在設定されている不具合記録条件70と同じ場合には、不具合記録条件70の更新を行わない構成としても好適である。この場合、記録条件更新部15は、不具合記録部40に記録された現在の不具合記録条件70が、注目属性特定部14により特定された注目属性に対応する記録条件と同じであるか否かの判定を行い、同じである場合には不具合記録条件70の更新を行わない。
(6)上記の実施形態においては、記録条件としての記録トリガが、不具合項目テーブル31に規定された不具合項目が発生したことをトリガ条件とするものである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、記録トリガを、不具合項目とは無関係に設定したトリガ条件とすることも可能である。この場合、記録条件テーブル33には、記録トリガとなる条件の具体的内容が規定され、或いは当該記録トリガの具体的内容が規定されたテーブル等の格納場所への関連付けデータが記録されると好適である。
(7)上記の実施形態においては、不具合記録条件70を構成する記録条件の中で動作履歴データ50に基づいて更新される条件が、記録トリガ、記録項目、サンプリング間隔、及びサンプリング時間である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、動作履歴データ50に基づいて更新される条件をこれらの中の一部の条件のみとし、他の条件は固定とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。したがって、例えば、動作履歴データ50に基づいて記録条件として記録項目のみを更新し、記録トリガ、サンプリング間隔、及びサンプリング時間を固定とした構成、或いは、動作履歴データ50に基づいて記録条件として記録項目及び記録トリガを更新し、サンプリング間隔、及びサンプリング時間を固定とした構成等も、本発明の好適な実施形態の一つである。
(8)上記の実施形態においては、不具合データ60が、瞬間データ63と経時データ64とで構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、不具合データ60が瞬間データ63のみで構成され、或いは経時データ64のみで構成されているものも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(9)上記の実施形態においては、注目属性特定部14が、第一特定処理と第二特定処理との2つの処理を所定の条件に基づいて使い分けて注目属性を特定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、注目属性特定部14が、不具合発生履歴データ52に基づく第一特定処理のみにより注目属性を特定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、テーブル格納部30の動作状態項目テーブル32は不要であり、動作履歴記録処理部12が動作履歴データ50としての動作状態履歴データ53を記録しない構成とすることができる。そして、注目属性特定部14は、第一特定処理選択条件を満たさない場合には、注目属性の特定を行わず、よって不具合記録条件70の更新も行われない。同様に、注目属性特定部14が、動作状態履歴データ53に基づく第二特定処理のみにより注目属性を特定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、動作履歴記録処理部12が動作履歴データ50としての不具合発生履歴データ52を記録しない構成とすることができる。そして、注目属性特定部14は、第一特定処理選択条件の判定を行わず、第二特定処理選択条件を満たさない場合には、注目属性の特定を行わず、よって不具合記録条件70の更新も行われない。
(10)上記の実施形態においては、動作履歴記録処理部12が、不具合発生履歴データ52として、不具合項目テーブル31に規定された不具合項目に係る不具合の発生回数のデータを、不具合項目毎に計数したデータとして不具合記録部40に記録する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、動作履歴記録処理部12が、不具合発生履歴データ52として、不具合項目テーブル31に規定された不具合項目に係る不具合の発生回数のデータを、各不具合項目に関連する不具合属性毎に計数したデータとして不具合記録部40に記録する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、注目属性特定部14は、不具合発生履歴データ52に含まれる不具合属性毎の不具合の発生回数が最も多い不具合属性を、注目属性として特定することができる。
(11)上記の実施形態においては、不具合属性が、対象装置としての車両用駆動装置20の各部位に対応して規定されている場合を例として説明した。しかし、本発明に係る不具合属性の実施形態は、この例に限定されるものではなく、各不具合項目に係る不具合が属する属性を規定するものであれば、他の分け方で不具合属性を規定することもできる。したがって、例えば、回転数、温度、電流値、電圧値、回数等のように、不具合の性質に応じて分けた属性として規定することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(12)上記の実施形態においては、対象装置がハイブリッド車両用の駆動装置20である場合を例として説明した。しかし、本発明に係る不具合データ記録装置1の適用範囲はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、回転電機のみを駆動源とする電動車両用の駆動装置、エンジン(内燃機関)を駆動源とする車両における、自動変速機、手動変速機等の他の車両用駆動装置、各種車両の全体を対象装置としても好適である。また、このような車両や車両用駆動装置以外にも、航空機や船舶等の各種の運送機械、工場等で使用される生産設備等、各種の装置を対象として不具合データの記録を行う場合に、本発明に係る不具合データ記録装置1は好適に利用可能である。