JP2009236161A - 転がり軸受用密封装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転がり軸受10は、外輪14に固定された密封用のシール20と、シール20の軸受外側に配置され内輪12または軸に固定されるスリンガ30とを備え、シール20とスリンガ30とは相対回転する構成とされている。そして、シール20に形成されたアキシアルリップ26が相対摺動するスリンガ30のシール摺動面38上には、突起40が形成されている。そして、アキシアルリップ26がスリンガ30と相対摺動する際に、スリンガ30のシール摺動面38上に形成された突起40の周方向の前後でアキシアルリップ26の内径側から外径側に通じる気流通路が形成される。
【選択図】図5
Description
そこで、シールの外側にスリンガと呼ばれる遮蔽板を設けて水や塵がシールに直接当たらない構成とした密封装置が提案された。
そこで、シールのスリンガ側の側面に軸受外方に向いた円環状の突起であるアキシアルリップを形成し、アキシアルリップをスリンガに摺動させて軸受の密封性を向上させる方法が提案されている。なお、スリンガとの接触圧をアキシアルリップの変形によって吸収し、アキシアルリップとスリンガの接触部からの異物の侵入を防ぐために、アキシアルリップは軸受外方に拡径した円錐状に形成されることが多い。
また、アキシアルリップがスリンガに摺動することでシールとスリンガの間のアキシアルリップよりも内径側の空間が閉ざされて密封域が形成される。そして外輪と共にシールが高速回転するため、密封域の空気はシールリップの内輪に対する摺動による発熱及びアキシアルリップのスリンガに対する摺動による発熱により熱せされて、密封域の気圧が外気よりも高くなる。この場合は、アキシアルリップをスリンガから離す方向に圧力がかかるので、密封域の空気はアキシアルリップとスリンガの摺動部分を押し開けて抜け出して、密封域と外気の気圧差が解消される。
また、軸受が高速回転して密封域の空気が加熱された後、軸受の回転停止中に密封域の空気が自然冷却することによっても密封域は外気よりも気圧が低くなって負圧状態となり、吸付きが生じる。そこで、次に軸受が回転起動するときには、アキシアルリップが全周でスリンガに密着した状態となっているため大きなトルク増加が生じる。
このトルク増加の問題の解決に当たっては、軸受の寸法の制約を考慮する必要があり、コストの問題もある。そこで、大幅な設計変更を伴うことなくトルクを低減させることが求められる。
前記シールには前記シール相手部材に相対摺動するアキシアルリップが形成されており、該アキシアルリップが相対摺動するシール相手部材のシール摺動面には突起又は凹溝が形成されていることを特徴とする。
また、密封域が高温となった状態でシール相手部材に水がかかって密封域が冷やされ密封域の気圧が外気よりも低くなったときは、突起の周囲の又は凹溝による気流通路から外気が流入して密封域と外気の気圧差が解消される。また、軸受が高速回転して密封域の空気が加熱された後、軸受の回転停止中に密封域の空気が自然冷却することによって、密封域が外気よりも気圧が低くなって負圧状態となったときも、突起の周囲の又は凹溝による気流通路から外気が流入して密封域と外気の気圧差が解消される。
よって、大幅な設計変更を伴うことなく、アキシアルリップにより遮蔽される軸受内部が負圧になることが抑止され、シールの吸付きが防止されるので、アキシアルリップによるトルク増加を防止することができる。
なお、シール相手部材に突起又は凹溝を設けるためには、大幅な設計変更を必要としない。
まず、本発明の一実施例についてその構成を説明する。
図1に本発明の一実施例における転がり軸受用密封装置を備えた転がり軸受10を使用するアイドラプーリ50の部分断面図を示す。そして、図2に図1に示した転がり軸受10の密封装置部分の拡大図を示す。
図1および図2に示すように、転がり軸受10はアイドラプーリ50に使用される外輪回転タイプの複列玉軸受であって、内輪12、外輪14、複列の球16、球16を保持する保持器18,内輪12と外輪14の間を覆うシール20、シール20の軸受外側方向位置に設けられたスリンガ30から構成されている。ここで、スリンガ30が本発明のシール相手部材に該当する。そして、これらの構成要素のうちで、内輪12、外輪14、シール20およびスリンガ30が転がり軸受10を密封する密封装置を形成している。
そして、図2に示すように、スリンガ30の軸受内側の平坦部36にはシール20のアキシアルリップ26の先端が接触して、シール20とスリンガ30の隙間を塞いでいる。そして、アキシアルリップ26による遮蔽により、アキシアルリップ26よりも内径側でシール20とスリンガ30に囲まれた密封域44が形成されている。
なお、この実施例では内輪12は回転せず内輪12に固定されたスリンガ30の突起40の位置は変わらない。よって、突起40が転がり軸受10の下方となるように、転がり軸受10を軸に取付けることにより、転がり軸受10に水がかかったときに突起40の周辺から水が軸受内部へ侵入することを防いでいる。
なお、突起40はスリンガ30のシール摺動面38上に複数個形成してもよい。
転がり軸受10では、軸受の高速回転により外輪14に固定されたシール20が高速回転しシールリップ24及びアキシアルリップ26も高速回転する。すると、シールリップ24の内輪12に対する摺動による発熱及びアキシアルリップ26のスリンガ30に対する摺動による発熱により密封域44の空気が熱せられて、密封域44の気圧が外気よりも高くなる。
ここで、シール20が高速回転しているときは、シール20の回転によりスリンガ30の突起40に当たった部分のアキシアルリップ26の先端は突起40によって跳ね上げられていく。そして、図4に示したように、突起40の周方向の前後でアキシアルリップ26と突起40の間にアキシアルリップ26の内径側から外径側に通じる気流通路46が形成される。そこで、密封域44の中の空気はアキシアルリップ26がスリンガ30の突起40に摺動する周囲の気流通路46から外径側へ抜け出して、密封域44と外気の圧力差が解消される。
また、転がり軸受10が高速回転して密封域44の空気が加熱された後、軸受の回転停止中に密封域44の空気が自然冷却することにより密封域44の気圧が外気よりも低くなった時も、アキシアルリップ26がスリンガ30の突起40に接触している周囲の気流通路46から外気が流入して密封域44と外気の気圧差が解消される。
また、上記の実施例のように、スリンガが鋼版をプレス加工して形成されるものであれば、突起はプレス加工による形成時に同時に加工することができるので、突起を設けてもコストはほとんど増加しない。
また、上記の実施例ではスリンガ30に突起40を設ける構成としているが、スリンガ30の平坦部36に径方向にシール摺動面38の幅を超える長さの空気抜きのための通気溝41を設ける構成としても良い。図6(A)に変形実施例として通気溝41を設けたスリンガ30の軸受内側の部分平面図を、図6(B)に図6(A)のB−B位置におけるシール20のアキシアルリップ26とスリンガ30の部分断面図を示す。なお、通気溝41は、アキシアルリップ26によって通気溝41が塞がることがない形状とされている。なお、通気溝41は複数個形成しても良い。
また、上記実施例では、アイドラプーリに使用される外輪回転の複列玉軸受に適用する例を示したが、本発明は、外輪回転、内輪回転を問わず、密封用のシールとシール相手部材を備え、シールとシール相手部材が相対回転する構成の転がり軸受一般に適用することができるものである。
その他、本発明に係る転がり軸受用密封装置はその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
12 内輪
13 摺動面
14 外輪
15 シール溝
16 球
18 保持器
20 シール
22 芯金
23 固定部
24 シールリップ
25 側面
26 アキシアルリップ
30 スリンガ(シール相手部材)
32 円筒部
34 先端部
36 平坦部
38 シール摺動面
40 突起
41 通気溝
42 開口部
44 密封域
46 通気通路
50 アイドラプーリ
Claims (1)
- 外輪に固定された密封用のシールと、該シールの軸受外側方向位置に該シールと間隔をおいて配置され、内輪または内輪が一体的に嵌合する軸部材に固定された円環状のシール相手部材とを備え、前記シールとシール相手部材とは相対回転する構成として配設されていると共に、シール相手部材の軸受外径側で軸受の外部に開口する構成とされている転がり軸受用密封装置であって、
前記シールには前記シール相手部材に相対摺動するアキシアルリップが形成されており、該アキシアルリップが相対摺動するシール相手部材のシール摺動面には突起又は凹溝が形成されていることを特徴とする転がり軸受用密封装置。
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