以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
[1]シール材:
本発明のシール材の一実施形態は、熱可塑性エラストマー組成物によって形成されるものであって、熱可塑性エラストマー組成物が、(A)下記(1)及び(2)の条件を満たすエチレン系共重合体、及びエチレン系共重合体100質量部に対して、50〜150質量部の第一の鉱物油系軟化材を含む油展エチレン系共重合体(以下、「(A)成分」と記す場合がある)と、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂(以下、「(B)成分」と記す場合がある)と、を含む原料組成物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるものであるとともに、JIS K6253に準拠したデュロA硬度が40以下のものである。このようなシール材は、圧縮永久歪みが小さく、シール性、軟化材保持性に優れ、リサイクルが可能なものである。
(1):デカリン溶媒中135℃で測定した極限粘度[η]が、5.5〜9.0dl/gである。
(2):重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が、3以下である。
本実施形態のシール材は、JIS K6262に準拠した圧縮永久歪みが、40%以下であることが好ましく、38%であることが更に好ましく、35%であることが特に好ましい。上記圧縮永久歪みが、40%超であると、シール性が悪化するおそれがある。なお、本明細書において「圧縮永久歪み」は、JIS K6262に準拠し、70℃、22時間の測定条件で行った値である。
本実施形態のシール材は、継ぎ目などに使用し、気体、液体、固体が漏洩するのを防ぐための部品、いわゆるパッキンやガスケットとして使用するものである。このようなシール材は、上記目的を達成することができる限りその形状に特に制限はないが、O−リング状、シート状、及び棒状よりなる群から選択される一つの形状であることが好ましい。
[1−1]熱可塑性エラストマー組成物:
本実施形態のシール材を形成するための熱可塑性エラストマー組成物は、(A)上記(1)及び(2)の条件を満たすエチレン系共重合体、及びエチレン系共重合体100質量部に対して、50〜150質量部の第一の鉱物油系軟化材を含む油展エチレン系共重合体(以下、「(A)成分」と記す場合がある)と、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂(以下、「(B)成分」と記す場合がある)と、を含む原料組成物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるものであることが必要である。
[1−1−1](A)油展エチレン系共重合体:
上記熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物に含有される(A)油展エチレン系共重合体は、上記(1)及び(2)の条件を満たすエチレン系共重合体、及び、このエチレン系共重合体100質量部に対して、50〜150質量部の第一の鉱物油系軟化材を含むものである。
このような(A)油展エチレン系共重合体は、変形回復性に乏しい分子鎖末端の個数が少ないため、得られる熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性が優れる。また、(A)油展エチレン系共重合体は、溶融粘度が高い超高分子量成分の含有量が少ないため、その他の成分との分散性が良好となり、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度が優れる。また、(A)油展エチレン系共重合体、特に、エチレン系共重合体は、低分子量成分の含有量が少ないため、軟化材の保持性が高く、大量の第一の鉱物油系軟化材を含有できる。そのため、得られる熱可塑性エラストマー組成物は、成形加工性が優れる。
(A)油展エチレン系共重合体としては、エチレン系共重合体と第一の鉱物油系軟化材と溶媒とを含む混合液から脱溶媒して得られるものであることが好ましい。このようにして得られる(A)油展エチレン系共重合体は、エチレン系共重合体単独の場合に比べて、その粘度が低いため、その他の成分との分散性が向上することに加え、第一の鉱物油系軟化材がエチレン系共重合体に均一に分散するため、第一の鉱物油系軟化材がブリードアウトし難いという利点がある。
原料組成物中の(A)油展エチレン系共重合体の含有割合は、(A)油展エチレン系共重合体、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び(C)第二の鉱物油系軟化材の合計量100質量%に対して、5〜80質量%であることが好ましく、10〜78質量%であることが更に好ましく、15〜75質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が5質量%未満であると、(C)第二の鉱物油系軟化材を添加した場合に、(C)第二の鉱物油系軟化材がブリードアウトするおそれがある。一方、80質量%超であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性が十分でなくなるおそれがある。
[1−1−1a]エチレン系共重合体:
(A)油展エチレン系共重合体に含まれるエチレン系共重合体は、上記(1)及び(2)の条件を満たすものである。このようなエチレン系共重合体を含むことによって、得られる(A)油展エチレン系共重合体は、変形回復性に乏しい分子鎖末端の個数が少なく、溶融粘度が高い超高分子量成分の含有量が少ないという利点がある。
エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン/α−オレフィン二元共重合体、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン三元共重合体等を挙げることができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体を得るためのα−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましく、炭素数3〜12のα−オレフィンが更に好ましく、炭素数3〜8のα−オレフィンが特に好ましい。α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどを挙げることができる。これらの中でも、工業的な入手が容易であるという観点から、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。なお、これらのα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体中のエチレンに由来する構造単位の含有割合は、全構造単位に対して、50〜80質量%であることが好ましく、54〜75質量%であることが更に好ましく、60〜70質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が、上記範囲内にあると、機械的強度と柔軟性とのバランスに優れるという利点がある。上記含有割合が50質量%未満であると、架橋効率が低下する傾向(特に、架橋剤として有機過酸化物を使用した場合)にあり、十分な機械的強度が得られにくくなる。一方、80質量%超であると、柔軟性が低下するおそれがある。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を得るためのα−オレフィンとしては、例えば、上記エチレン・α−オレフィン共重合体を得るためのα−オレフィンと同様のものを用いることができる。また、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体中のエチレンに由来する構造単位の含有割合は、全構造単位に対して、50〜80質量%であることが好ましく、54〜75質量%であることが更に好ましく、60〜70質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が、上記範囲内にあると、機械的強度と柔軟性とのバランスに優れるという利点がある。上記含有割合が50質量%未満であると、架橋効率が低下する傾向(特に、架橋剤として有機過酸化物を使用した場合)にあり、十分な機械的強度が得られにくくなる。一方、80質量%超であると、柔軟性が低下するおそれがある。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を得るための非共役ポリエンとしては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエンなどの環状ポリエン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、4−エチリデン−1,6−オクタジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、7−エチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエンなどの炭素数が6〜15の内部不飽和結合を有する鎖状ポリエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカジエンなどのα,ω−ジエンを挙げることができる。これらの中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンが好ましく、5−エチリデン−2−ノルボルネンが特に好ましい。なお、これら非共役ポリエンは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を得るための非共役ポリエンの含有量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のヨウ素価が、0〜40となる量であることが好ましく、0〜30となる量であることが好ましい。このヨウ素価は、共重合体中の非共役ポリエンに由来する構造単位の含有量の目安となる値であり、ヨウ素価が40超であると、混練りの際、ゲル化を起こしやすくなるため、押し出しなどの成形工程でブツが発生するおそれがある。
エチレン系共重合体は、条件(1)を満たすものである。即ち、デカリン溶媒中135℃で測定した極限粘度[η]が5.5〜9.0dl/gであり、5.5〜8.5dl/gであることが好ましく、5.5〜8.0dl/gであることが更に好ましく、5.5〜7.5dl/gであることが特に好ましい。上記極限粘度[η]が5.5dl/g未満であると、ゴム弾性が低下する。一方、9.0dl/g超であると、粘度が高くなりすぎて工業的生産性が低下する。なお、本明細書における極限粘度[η]は、ウベローデ型粘度計によって測定される値である。
エチレン系共重合体は、条件(2)を満たすものである。即ち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が3以下であり、2.8以下であることが好ましく、2.0〜2.7であることが更に好ましい。重量平均分子量と数平均分子量との比が3超であると、ゴム弾性、軟化材保持性、及び、成形加工性が低下する。なお、本明細書において「重量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と記す場合がある)を用いて測定されるポリスチレン換算の値である。
エチレン系共重合体は、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィーのクロマトグラムにおける、ポリスチレンに換算した分子量10万以下の領域の面積割合が、3%以下であることが好ましく、0〜3%であることが更に好ましく、0〜2.5%であることが特に好ましい。上記面積割合が3%超であると、ゴム弾性、及び、軟化材保持性が低下するおそれがある。
ここで、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィーのクロマトグラムにおける、ポリスチレンに換算した分子量10万以下の領域の面積割合」の算出方法を、図1を用いて具体的に説明する。図1は、エチレン系共重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって分析して得られるクロマトグラムを示す図である。まず、図1に示すクロマトグラムの溶出曲線1の積分値(溶出曲線1と横軸で囲まれた全面積(図1中、「ST」と示す))を算出する。次に、ポリスチレンに換算した分子量10万の成分が溶出する時間(溶出時間)T1以降に検出される部分の積分値(面積(図1中、「S1」と示す))を算出する。次に、これらの値から、式:(S1/ST)×100を算出して「ゲルパーミエーションクロマトグラフィーのクロマトグラムにおける、ポリスチレンに換算した分子量10万以下の領域の面積割合」とする。
エチレン系共重合体は、例えば、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの方法を適宜選択して製造することができる。これらの重合操作は、バッチ式でも連続式でもよい。また、上記溶液重合法またはスラリー重合法においては、反応媒体として、不活性炭化水素を使用することができる。不活性炭化水素溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などを挙げることができる。なお、これらの炭化水素溶媒は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
エチレン系共重合体を製造する際に用いられる重合触媒としては、例えば、V、Ti、Zr及びHfよりなる群から選択される遷移金属の化合物と有機金属化合物とからなるオレフィン重合触媒などを挙げることができる。なお、遷移金属の化合物及び有機金属化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようなオレフィン重合触媒としては、例えば、メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、またはこのメタロセン化合物と反応してイオン性錯体を形成するイオン性化合物とからなるメタロセン系触媒、またはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチーグラー・ナッタ系触媒などを挙げることができる。なお、エチレン系共重合体の製造の際に、分子量調整剤として、水素ガスを用いることもできる。水素ガスの使用量は、触媒種、触媒量、重合温度、重合圧力などの重合条件、及び重合スケール、撹拌状態、チャージ方法などの重合プロセスによっても異なるが、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた溶液重合では、全単量体成分に対して、0.01〜20ppmであることが好ましく、0.1〜10ppmであることが更に好ましい。
[1−1−1b]第一の鉱物油系軟化材:
(A)油展エチレン系共重合体に含まれる第一の鉱物油系軟化材は、成形加工性や柔軟性を付与するとともに、製品外観を向上させるために用いられるものである。第一の鉱物油系軟化材としては、例えば、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系等のものを挙げることができる。これらの中でも、エチレン系共重合体との相容性が高いため軟化材保持性が優れ、耐候性も優れる、パラフィン系またはナフテン系の第一の鉱物油系軟化材が好ましい。
第一の鉱物油系軟化材としては、具体的には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;アロマティック油、ナフテン油、パラフィン油、ホワイトオイル、ペトロラタム、ギルソナイト等の石油系軟化剤;ひまし油、綿実油、菜種油、パーム油、椰子油、ロジン等の植物油系軟化剤;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル、ポリブテン油などを挙げることができる。
第一の鉱物油系軟化材の使用量は、エチレン系共重合体100質量部に対して、50〜150質量部であり、80〜140質量部であることが好ましく、90〜130質量部であることが更に好ましい。上記使用量が50質量部未満であると、柔軟性や成形加工性が低下する。一方、150質量部超であると、べた付きが発生して工業的な生産性が低下する。
(A)油展エチレン系共重合体の形状は、ベール、クラム、ペレット等のいずれの形状でもよい。このような(A)油展エチレン系共重合体は、得られる組成物の柔軟性や弾性回復性を良好にするという観点から、非結晶または低結晶性であることが好ましい。なお、結晶化度は、密度に関係するため、結晶化度よりも簡便に測定できる密度で結晶化度を代用することが一般的に行われている。本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物に含有される(A)油展エチレン系共重合体は、その密度が、0.89g/cm3以下であることが好ましい。更に、エチレン系共重合体のX線回折測定による結晶化度は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることが更に好ましい。上記結晶化度が20%超であると、エチレン系共重合体の柔軟性が低下するおそれがある。
(A)油展エチレン系共重合体の製造方法は、特に制限はないが、例えば、エチレン系共重合体と第一の鉱物油系軟化材と溶媒とを含む混合液を得、得られた混合液から脱溶媒して製造することができる。具体的には、重合して得られた、溶媒を含むエチレン系共重合体溶液に、所定量の第一の鉱物油系軟化材を添加し、混練機によって混練して混練物を得た後、得られた混練物を、スチームストリッピング法、フラッシュ法等の方法で脱溶媒する方法や、重合後、乾燥させて得られたエチレン系共重合体を、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒、またはクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒等の良溶媒に均一に溶解させて溶解液を得、得られた溶解液に所定量の第一の鉱物油系軟化材を添加し、混練機によって混練して混練物を得た後、得られた混練物を、スチームストリッピング法、フラッシュ法等の方法で脱溶媒する方法などを挙げることができる。混練機としては、例えば、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、またはロール等の、通常、ゴムの油展に用いられる装置を使用することができる。
[1−1−2](B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂:
上記熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物に含有される(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂としては、1種以上のα−オレフィンに由来する単量体単位の合計が、50モル%を超えて含まれるものであれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は、α−オレフィン同士の共重合体であってもよいし、α−オレフィンと、このα−オレフィンと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。また、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂は、α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(b1)及びα−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(b2)よりなる群から選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましく、α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(b1)とα−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(b2)とを含有するものであることが更に好ましい。
原料組成物中の(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂の含有割合は、(A)油展エチレン系共重合体、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び(C)第二の鉱物油系軟化材の合計量100質量%に対して、1〜20質量%であることが好ましく、3〜18質量%であることが更に好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が1質量%未満であると、成形加工性が低下するおそれがある。一方、20質量%であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性が十分でなくなるおそれがある。
[1−1−2a]α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(b1):
α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(b1)(以下、単に「結晶質重合体(b1)」と記す場合がある)は、α−オレフィンに由来する構成単位を主成分とするものである。このような結晶質重合体(b1)を含有することによって、結晶が、即ち、結晶質重合体(b1)の結晶構造が、補強効果を示すため、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度が向上するという利点がある。ここで、結晶質重合体(b1)において「α−オレフィンに由来する構成単位を主成分とする」とは、上記結晶質重合体(b1)の総量を100質量%とした場合に、α−オレフィンに由来する構成単位を80質量%以上含有するものであることを意味し、α−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、90質量%以上であることが好ましい。α−オレフィンに由来する構成単位の含有量が90質量%未満であると、結晶の含有量が低下するため、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度が低下するおそれがある。
上記結晶質重合体(b1)はα−オレフィンの単独重合体であっても、2種以上のα−オレフィンの共重合体であっても、α−オレフィンではない単量体との共重合体であってもよい。また、これらの異なる2種以上の重合体及び/または共重合体の混合物であってもよい。
上記結晶質重合体(b1)が共重合体である場合、この共重合体はランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれであってもよい。但し、ランダム共重合体の場合には、このランダム共重合体中の構成単位のうち、α−オレフィンに由来する構成単位を除く構成単位の合計含量が、ランダム共重合体の全体量100質量%に対して、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。上記α−オレフィンに由来する構成単位を除く構成単位の合計含量が15質量%超であると、結晶化が阻害されるため、十分な結晶化度を得ることが得られないおそれがある。また、ブロック共重合体の場合には、このブロック共重合体中の構成単位のうち、α−オレフィンに由来する構成単位を除く構成単位の合計含量が、ブロック共重合体の全体量100質量%に対して、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。上記α−オレフィンに由来する構成単位を除く構成単位の合計含量が40質量%超であると、結晶の含有量が低下するため、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度が低下するおそれがある。
結晶質重合体(b1)は、結晶性を有するものである限り特に制限はないが、結晶質重合体(b1)の結晶性としては、X線回折測定による結晶化度が50%以上であることが好ましく、53%以上であることが更に好ましく、55%以上であることが特に好ましい。ここで、結晶化度は、密度と密接に関係している値である。即ち、例えば、ポリプロピレンの場合、α型結晶(単斜晶形)の密度は0.936g/cm3、スメチカ型微結晶(擬六方晶形)の密度は0.886g/cm3、非晶質(アタクチック)成分の密度は0.850g/cm3である。また、ポリ−1−ブテンの場合、アイソタクチック結晶の密度は0.91g/cm3、非晶質(アタクチック)成分の密度は0.87g/cm3である。このような結晶化度と密度との関係から、結晶化度が50%以上の結晶質重合体(b1)とは、密度が0.89g/cm3以上である。そして、結晶質重合体(b1)は、その密度が、0.90〜0.94g/cm3であることが好ましい。この結晶化度が50%未満、即ち、密度が0.89g/cm3未満であると、耐熱性、強度等が低下するおそれがある。
結晶質重合体(b1)は、示差走査熱量測定法による最大ピーク温度、即ち、融点(以下、単に「Tm」と記す場合がある)が、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。上記Tmが100℃未満であると、十分な耐熱性及び強度が発揮されないおそれがある。
結晶質重合体(b1)は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒などの既存の触媒の存在下で、単量体を重合させて得られる重合体であり、触媒としてメタロセン触媒を用いると、低分子量成分や低結晶性成分の含有量を低くすることができるため、耐熱性や耐油性が良好になるという観点から好ましい。
結晶質重合体(b1)は、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(以下、単に「MFR」と記す場合がある)が、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.5〜80g/10分であることが更に好ましい。上記MFRが0.1g/10分未満であると、熱可塑性エラストマー組成物の混練加工性、押出成形加工性等が不十分となるおそれがある。一方、100g/10分超であると、熱可塑性エラストマー組成物によって得られる成形品の機械的強度が低下するおそれがある。
以上の点から、結晶質重合体(b1)としては、具体的には、結晶化度が50%以上、密度が0.89g/cm3以上であり、エチレン単位の含有量が20質量%以下であり、Tmが100℃以上であり、MFRが0.1〜100g/10分であり、融点が140〜170℃である、ポリプロピレン、プロピレンとエチレンとの共重合体、または、プロピレンとエチレンと1−ブテンとの共重合体を用いることが特に好ましい。
[1−1−2b]α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(b2):
α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(b2)(以下、単に「非晶質重合体(b2)」と記す場合がある)は、α−オレフィンに由来する構成単位を主成分とする。このような非晶質重合体(b2)を含有することによって、得られる熱可塑性エラストマー組成物を、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーとともに射出融着する場合に、被着体との接着強度が向上するという利点がある。ここで、非晶質重合体(b2)において「α−オレフィンに由来する構成単位を主成分とする」とは、上記非晶質重合体(b2)の総量を100質量%とした場合に、α−オレフィンを50質量%以上含有するものであることを意味し、α−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、60質量%以上であることが好ましい。α−オレフィンに由来する構成単位の含有量が60質量%未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物を、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーとともに射出融着した場合に、被着体との接着強度が十分に得られないおそれがある。
上記非晶質重合体(b2)はα−オレフィンの単独重合体であっても、2種以上のα−オレフィンの共重合体であっても、α−オレフィンではない単量体との共重合体であってもよい。また、これらの異なる2種以上の重合体及び/または共重合体の混合物であってもよい。
上記非晶質重合体(b2)としては、例えば、アタクチックポリプロピレン、アタクチックポリ−1−ブテン等の単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。なお、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体としては、プロピレンに由来する構成単位の含有量が、共重合体の総量に対して、50質量%以上であり、他のα−オレフィンが、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等である共重合体である。また、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体としては、1−ブテンに由来する構成単位の含有量が、共重合体の総量に対して、50質量%以上であり、他のα−オレフィンが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等である共重合体である。
上記非晶質重合体(b2)が共重合体である場合、この共重合体はランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれであってもよい。但し、ブロック共重合体の場合には、主成分となるα−オレフィン(上記プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、及び、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体においては、プロピレン、及び、1−ブテン)に由来する構成単位は、アタクチック構造で結合している必要がある。また、上記非晶質共重合体(b2)が炭素数3以上のα−オレフィンとエチレンとの共重合体である場合、上記α−オレフィンに由来する構成単位の含有量が、非晶質共重合体(b2)の全体量100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、60〜99質量%であることが更に好ましい。
上記非晶質重合体(b2)としては、プロピレンに由来する構造単位の含有量が50質量%以上であるアタクチックポリプロピレン、プロピレンに由来する構造単位の含有量が50質量%以上であるプロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンと1−ブテンとの共重合体を用いることが特に好ましい。
非晶質重合体(b2)は、190℃における溶融粘度が、50000cps以下であることが好ましく、100〜30000cpsであることが更に好ましく、200〜20000cpsであることが特に好ましい。上記溶融粘度が50000cps超であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物を、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーとともに射出融着した場合に、被着体との接着強度が低下する、即ち、十分な接着性が得られないおそれがある。また、非晶質重合体(b2)のX線回折測定による結晶化度は、50%未満であることが好ましく、30%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。上記結晶化度が50%超であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物を、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーとともに射出融着した場合に、被着体との接着強度が低下する、即ち、十分な接着性が得られないおそれがある。
非晶質重合体(b2)の結晶化度は、結晶質重合体(b1)と同様に、密度と密接に関係している値であり、非晶質重合体(b2)の密度は、0.85g/cm3以上であり、0.89g/cm3未満であることが好ましく、0.85〜0.88g/cm3であることが更に好ましい。上記密度が0.89g/cm3以上であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物を加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマーと射出融着する場合に、被着体との接着強度が低下するおれがある。また、非晶質重合体(b2)の数平均分子量(Mn)は、1000〜20000であることが好ましく、1500〜15000であることが更に好ましい。ここで、本明細書において、「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定されるポリスチレン換算の値である。
[1−1−3](C)第二の鉱物油系軟化材:
上記熱可塑性エラストマー組成物は、(C)第二の鉱物油系軟化材を更に含有することが好ましい。(C)第二の鉱物油系軟化材を含有することによって、成形加工性や柔軟性を付与するとともに、製品外観を向上させることができる。(C)第二の鉱物油系軟化材としては、既に上述した第一の鉱物油系軟化材と同様のものを好適に用いることができる。
なお、鉱物油系炭化水素からなるゴム用軟化剤は、一般に、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の三者の混合物である。これらは、パラフィン鎖の炭素数が全炭素数中の50%以上を占めるものがパラフィン系鉱物油であり、ナフテン環の炭素数が全炭素数中の30〜45%のものがナフテン系鉱物油であり、芳香族環の炭素数が全炭素数中の30%以上のものが芳香族系鉱物油である。
上記パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の鉱物油は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、パラフィン系鉱物油が好ましく、特に水添パラフィン系鉱物油が好ましい。パラフィン系鉱物油としては、例えば、出光興産社製の(商品名)「ダイアナプロセスオイルPW90」、(商品名)「ダイアナプロセスオイルPW380」等が挙げられる。
熱可塑性エラストマー組成物中の(C)第二の鉱物油系軟化材の含有割合は、(A)油展エチレン系共重合体、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び(C)第二の鉱物油系軟化材の合計量100質量%に対して、0〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることが更に好ましく、10〜40質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が50質量%超であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の強度が十分でなくなるおそれがある。また、(C)第二の鉱物油系軟化材がブリードアウトするおそれがある。
(C)第二の鉱物油系軟化材のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300〜2,000、より好ましくは500〜1,500である。また、40℃における動粘度は、好ましくは20〜800cSt、より好ましくは50〜600cStである。更に、流動点は、好ましくは−40〜0℃、より好ましくは−30〜0℃である。
なお、(C)第二の鉱物油系軟化材は、ポリブテン系、ポリブタジエン系等の低分子量の炭化水素等と併用することができる。
(C)第二の鉱物油系軟化材は、動的に熱処理する前の原料組成物に含有させもよいし、動的に熱処理した後に添加して用いてもよい。
[1−1−4](D)水添ジエン系重合体:
上記熱可塑性エラストマー組成物は、(D)水添ジエン系重合体を更に含有することが好ましい。(D)水添ジエン系重合体を含有することによって、水添ジエン系重合体が鉱物油系軟化材(第一の鉱物油系軟化材及び第二の鉱物油系軟化材)の保持性に優れるため、軟化材保持性が向上するという利点がある。
(D)水添ジエン系重合体は、共役ジエン化合物に由来する単量体単位を含む重合体の水素添加物(以下、「水素添加物(d1)」と記す場合がある)、及び、前記共役ジエン化合物に由来する単量体単位と、ビニル芳香族化合物に由来する単量体単位と、を含む重合体の水素添加物(以下、「水素添加物(d2)」と記す場合がある)の少なくともいずれかであることが好ましい。即ち、それぞれ、1種単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。(D)水添ジエン系重合体が、これらの水素添加物の少なくともいずれかであると、水添ジエン系重合体が(第一の鉱物油系軟化材及び第二の鉱物油系軟化材)の保持性に優れるため、軟化材保持性が向上するという利点がある。
熱可塑性エラストマー組成物中の(D)水添ジエン系重合体の含有量は、(A)油展エチレン系共重合体、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び(C)第二の鉱物油系軟化材の合計量100質量部に対して、0〜50質量部であることが好ましく、0.5〜45質量部であることが更に好ましく、1〜40質量部であることが特に好ましい。上記含有量が50質量部超であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の流動性が悪化するおそれがある。
なお、(D)水添ジエン系重合体は、動的に熱処理する前の原料組成物に含有させもよいし、動的に熱処理した後に添加して用いてもよい。
水素添加物(d1)としては、例えば、水添ブタジエンブロック共重合体等が挙げられる。
水素添加物(d2)としては、例えば、(i)ビニル芳香族化合物に由来する重合体ブロックと共役ジエン化合物に由来する重合体ブロックとを含むブロック共重合体(例えば、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン・イソプレンブロック共重合体、水添スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体等)、(ii)ビニル芳香族化合物に由来する重合体ブロックと、共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に由来するランダム共重合体ブロックとを含むブロック共重合体、(iii)共役ジエン化合物に由来する重合体ブロックと、共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に由来する共重合体ブロックとを含むブロック共重合体、(iv)共役ジエン化合物に由来する重合体ブロックと、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物に由来する重合体共ブロックとを含有し、ビニル芳香族化合物に由来する単量体単位が漸増するテーパー状ブロックを含むブロック共重合体、(v)共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に由来するランダム共重合体ブロックと、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物に由来する共重合体ブロックとを含有し、ビニル芳香族化合物に由来する単量体単位が漸増するテーパー状ブロックを含むブロック共重合体等が挙げられる。
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましい。
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
(D)水添ジエン系重合体は、分子中の水素原子の一部が塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子に置換されたハロゲン化水添ジエン系重合体であってもよし、これらの重合体の存在下で、塩化ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の誘導体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド等)、マレイン酸、マレイン酸の誘導体(例えば、無水マレイン酸、マレイミド、マレイン酸ジメチル等)、共役ジエン化合物(例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等)等の不飽和モノマーを重合して得られるグラフト重合体であってもよい。
(D)水添ジエン系重合体の水素添加率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。なお、この「水素添加率」とは、水素添加前のジエン系重合体を構成する共役ジエン単位の側鎖もしくは主鎖中のオレフィン性不飽和結合の数に対し、水素添加された側鎖もしくは主鎖中のオレフィン性不飽和結合の数の割合を示す値である。
(D)水添ジエン系重合体は、未架橋の重合体を用いてもよいし、架橋された重合体を用いてもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。なお、架橋された水添ジエン系重合体は、従来公知の方法により得ることができる。
(D)水添ジエン系重合体は、5質量%トルエン溶液とした場合の30℃における溶液粘度は、好ましくは5mPa・s以上であり、より好ましくは10mPa・s以上である。このトルエン溶液粘度は、分子量の代用指標であり、5mPa・s未満では、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度が低下するおそれがある。
(D)水添ジエン系重合体としては、具体的には、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体が好ましい。
(D)水添ジエン系重合体は、従来公知の方法によって製造することができる。
例えば、特開平2−36244号公報に開示された方法、即ち、共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物をリビングアニオン重合する方法等で水添前重合体を得、その後、得られた水添前重合体を触媒の存在下で水素添加する方法等を挙げることができる。
上記リビングアニオン重合に際し、通常、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物等の開始剤が用いられる。この有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等のアルキルリチウムが挙げられる。また、重合時に用いる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルブテン−1、2−メチルブテン−2等の炭化水素系溶媒が用いられる。なお、リビングアニオン重合の方式は、バッチ式であっても連続式であってもよく、重合温度は、通常、0〜120℃の範囲である。
また、リビングアニオン重合に際しては、エーテル、3級アミン、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)のアルコキシド、フェノキシド、スルホン酸塩等を併用し、その種類、使用量等を適宜選択することによって、得られる水添ブロック共重合体における側鎖にオレフィン性不飽和結合を有する共役ジエン単位の数の全共役ジエン単位の数に対する割合を容易に制御することができる。
なお、リビングアニオン重合の終了直前に、多官能のカップリング剤または(D)水添ジエン系重合体用架橋剤を添加してカップリング反応または架橋させることによって、重合体の分子量を大きくすることもできる。
カップリング剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、(ジクロロメチル)トリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、1,3−ジクロロ−2−プロパノン等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
(D)水添ジエン系重合体用架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジエステル、エポキシ化液状ブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
このようにして得られた水添前重合体を、例えば、炭化水素系溶媒中で水添触媒の存在下、水素圧1〜100kg/cm2、−10〜150℃の範囲の温度で反応させて、所望の(D)水添ジエン系重合体を得ることができる。
水添触媒としては、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt等の周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb及びVIII族元素から選ばれる金属元素を含む化合物を用いることができる。この化合物としては、例えば、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等の元素を含むメタロセン系化合物、Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒、Ni、Co等の元素の有機塩またはアセチルアセトン塩と、有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒、Ru、Rh等の有機金属化合物または錯体、水素を吸蔵させたフラーレン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらの水添触媒は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応が可能な、Ti、Zr、Hf、Co及びNiから選ばれる元素を含むメタロセン化合物や、Ti、Zr及びHfから選ばれる元素を含むメタロセン化合物が好ましい。
また、水添触媒としては、安価で工業的に有用であるという観点から、チタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させて得られるものを用いることができる。
水添後は、必要に応じて触媒の残渣を除去することにより、または、フェノール系またはアミン系の老化防止剤を添加することにより、反応溶液から生成した水添ジエン系重合体を単離する。(D)水添ジエン系重合体の単離は、例えば、反応溶液にアセトン、アルコール等を加えて沈殿させる方法、反応溶液を攪拌下の熱湯中に投入し、その後、溶媒を蒸留除去する方法等により行うことができる。
水添ジエン系重合体としては、以下の市販品を用いることができる。例えば、クラレ社製の(商品名)「セプトン」、(商品名)「ハイブラー」等を挙げることができ、(商品名)「セプトン」のうち、水添スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体として好ましいグレードは、4044、4055、4077等であり、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体としては、8007、8004、8006等である。また、旭化成社製の(商品名)「タフテック」等を挙げることができ、好ましいグレードとしては、H1052、H1031、H1041、H1051、H1062、H1943、H1913、H1043、H1075、JT−90P等である。また、JSR社製の(商品名)「ダイナロン」等を挙げることができ、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体として好ましいグレードは、8600、8900等である。また、クレイトンポリマーズ社製の(商品名)「クレイトン」を挙げることができ、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体として好ましいグレードは、G1650、G1651、G1652、G1657等である。
[1−1−5]その他の成分:
上記熱可塑性エラストマー組成物は、(A)油展エチレン系共重合体、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び、(D)水添ジエン系重合体以外に、他の重合体成分を含有することができる。他の重合体成分としては、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度、柔軟性等を阻害しないものであれば、特に限定されない。なお、以下、(A)油展エチレン系共重合体、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、(D)水添ジエン系重合体、及び、他の重合体成分を総称として「重合体成分」と記す場合がある。
他の重合体成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、アミノアクリルアミド重合体、ポリエチレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、ポリイソブチレン、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキサイド、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリプロピレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、ポリイソブチレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、塩素化ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ACS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ビニルアルコール樹脂、ビニルアセタール樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、
ニトリルゴム及びその水素添加物、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、天然ゴム、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、単純ブレンド型オレフィン系熱可塑性エラストマー、インプラント型オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの重合体成分は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱可塑性エラストマー組成物は、(A)油展エチレン系共重合体、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、(D)水添ジエン系重合体、及び、他の重合体成分以外に、添加剤を含有することができる。添加剤は、原料組成物中に添加しても良いし、原料組成物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理した後に添加してもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング剤、シール性改良剤、滑剤、老化防止剤、熱安定剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤等の安定剤、防菌・防かび剤、分散剤、可塑剤、結晶核剤、難燃剤、粘着付与剤、発泡助剤、染料、顔料(酸化チタン等)、カーボンブラック等の着色剤、
フェライト等の金属粉末、磁性体(フェライト系、希土類系)、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維、複合繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の無機ウィスカー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、ポリマービーズ等の充填剤またはこれらの混合物、ポリオレフィンワックス、セルロースパウダー、ゴム粉、木粉等の充填剤、低分子量ポリマー等を挙げることができる。
[1−1−6]架橋剤:
上記熱可塑性エラストマー組成物を得るために用いられる架橋剤は、特に限定されないが、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂の融点以上の温度における動的な熱処理により、(A)油展エチレン系共重合体、または(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂の少なくともいずれかを架橋できる化合物が好ましい。
このような架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、フェノール樹脂架橋剤、硫黄、硫黄化合物、p−キノン、p−キノンジオキシムの誘導体、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物、シラン化合物、アミノ樹脂、ポリオール架橋剤、ポリアミン、トリアジン化合物、金属石鹸等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、有機過酸化物、フェノール樹脂架橋剤が好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−イソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシド、p−メンタンパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジラウロイルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ(t−ブチルパーオキシ)パーベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びα,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドが好ましい。
フェノール系架橋剤としては、例えば、下記一般式(1)で示されるp−置換フェノール系化合物、o−置換フェノール・アルデヒド縮合物、m−置換フェノール・アルデヒド縮合物、臭素化アルキルフェノール・アルデヒド縮合物等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、下記一般式(1)で示されるp−置換フェノール系化合物が好ましい。
なお、上記一般式(1)において、X,Yはヒドロキシル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子であり、X,Yは同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜15の飽和炭化水素基、mは0〜10の整数である。
一般式(1)で示されるp−置換フェノール系化合物は、アルカリ触媒の存在下においてp−置換フェノールとアルデヒド(好ましくは、ホルムアルデヒド)との縮合反応により得ることができる。
架橋剤の使用量は、原料組成物に含まれる重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部、更に好ましくは1〜10質量部である。
架橋剤として有機過酸化物を使用する場合には重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。この有機過酸化物の使用量が0.05質量部未満であると、架橋度が不足し、得られる熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性及び機械的強度が低下するおそれがある。一方、10質量部超であると、架橋度が過度に高くなり、成形加工性が悪化したり、機械的物性が低下するおそれがある。
架橋剤としてフェノール系架橋剤を使用する場合には、重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。このフェノール系架橋剤の使用量が0.2質量部未満であると、架橋度が不足し、得られる熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性及び機械的強度が低下するおそれがある。一方、10質量部超であると、成形加工性が悪化するおそれがある。
架橋剤は、架橋助剤または架橋促進剤と併用することにより架橋反応を穏やかに行うことができ、特に均一な架橋を形成することができる。
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合には、架橋助剤として、硫黄、硫黄化合物(粉末硫黄、コロイド硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、表面処理硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等)、オキシム化合物(p−キノンオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム等)、多官能性モノマー類(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−トルイレンビスマレイミド、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等)等を用いることが好ましい。
これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジビニルベンゼンが好ましい。
なお、架橋助剤のうち、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドは、架橋剤としての作用を有するため、架橋剤として使用することもできる。
架橋剤として有機過酸化物を使用する場合、架橋助剤の使用量は、原料組成物に含まれる重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.2〜5質量部である。この架橋助剤の使用量が10質量部超であると、架橋度が過度に高くなり、成形加工性が悪化したり、機械的物性が低下するおそれがある。
架橋剤としてフェノール系架橋剤を用いる場合、架橋速度を調節するために、架橋促進剤を併用することができる。架橋促進剤としては、例えば、金属ハロゲン化物(塩化第一すず、塩化第二鉄等)、有機ハロゲン化物(塩素化ポリプロピレン、臭化ブチルゴム、クロロプレンゴム等)等を挙げることができる。また、架橋促進剤以外に、更に、酸化亜鉛等の金属酸化物やステアリン酸等の分散剤を併用することが更に好ましい。
[1−1−7]「動的に熱処理」:
上記熱可塑性エラストマー組成物は、(A)成分と(B)成分とを含む原料組成物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるものである。ここで、本明細書において「動的に熱処理」するとは、剪断力を加えること、及び、加熱することの両方を行うことを意味する。
「動的に熱処理」するために用いる装置としては、例えば、溶融混練装置等が挙げられる。この溶融混練装置による処理は、連続式でもよいし、バッチ式でもよい。溶融混練装置としては、例えば、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機、連続式混練機、加圧ニーダー等が挙げられる。これらの中でも、経済性、処理効率等の観点から、一軸押出機、二軸押出機、連続式混練機等の連続式の溶融混練装置を用いることが好ましい。連続式の溶融混練装置は、同一または異なる装置を2台以上組み合わせて用いてもよい。
二軸押出機を用いる場合には、L/D(スクリュー有効長さLと外径Dとの比)が30以上であることが好ましく、より好ましくは36〜60である。また、この二軸押出機としては、例えば、2本のスクリューが噛み合うもの、噛み合わないもの等の任意の二軸押出機を使用することができるが、2本のスクリューの回転方向が同一方向でスクリューが噛み合うものがより好ましい。
このような二軸押出機としては、例えば、池貝社製の「PCM」、神戸製鋼所社製の「KTX」、日本製鋼所社製の「TEX」、東芝機械社製の「TEM」、ワーナー社製の「ZSK」等が挙げられる。
連続式混練機を用いる場合には、L/D(スクリュー有効長さLと外径Dとの比)が5以上であることが好ましく、より好ましくはL/Dが10である。このような連続式混練機としては、例えば、神戸製鋼所社製の「ミクストロンKTX・LCM・NCM」、日本製鋼所社製の「CIM・CMP」等が挙げられる。
動的に熱処理する際の温度条件は、120〜350℃、好ましくは150〜290℃である。処理時間は、通常、20秒間〜320分間、好ましくは30秒間〜25分間である。また、混合物に加える剪断力は、ずり速度で10〜20,000/sec、好ましくは100〜10,000/secである。
本実施形態のシール材を形成するための熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K6253に準拠したデュロA硬度が、40以下であることが必要であり、35以下であることが好ましく、30以下であることが更に好ましい。上記デュロA硬度が40超であると、圧縮永久歪みが悪化してシール性が低下するという問題がある。
[1−2]シール材の製造方法:
本実施形態のシール材は、例えば、以下のように製造することができる。まず、(A)油展エチレン系共重合体と、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂と、を混合して原料組成物を得、得られた原料組成物に架橋剤を添加し、既に上述した混練機を用いて混練して混練物を得、得られた混練物を動的に熱処理して熱可塑性エラストマー組成物を得る。次に、得られた熱可塑性エラストマー組成物によってシール材を形成する。
シール材を形成する方法は、特に制限はなく、従来公知の方法、例えば、押出成形法、カレンダー成形法、溶剤キャスト法、射出成形法、真空成形法、パウダースラッシュ成形法、加熱プレス法などを採用することができる。
[2]複合体:
本発明の複合体の一実施形態は、本発明のシール材によって形成される成形品を備えるものである。このような複合体は、本発明のシール材によって形成される成形品を備えるものであるため、その成形品が、圧縮永久歪みが小さく、シール性に優れ、軟化剤のブリードアウトがなく、リサイクルができるという利点がある。成形品としては、例えば、複写機用のトナーケース、プリンタ用のトナーケースなどの容器に使用する、いわゆるパッキンやガスケットなどを挙げることができる。
本実施形態の複合体は、少なくとも一つの開口部を有する筐体部と、本発明のシール材によって形成され、筐体部の開口部に沿って配置されるシール部(即ち、成形品)と、を備え、上記筐体部と、上記シール部とが、射出成形によって成形されるものであることが好ましい。このような複合体としては、例えば、複写機用のトナーケース、プリンタ用のトナーケースなどの容器を挙げることができる。
[2−1]筐体部:
筐体部の材料としては、例えば、ゴム、樹脂、金属(合金)、ガラス、布、木材等が挙げられる。これらの中でも、リサイクルが容易であるという観点から、樹脂の中でも、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとの少なくともいずれかを含む材料が好ましい。熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとの少なくともいずれかを材料として用いると、リサイクルが容易であるという利点がある。
熱可塑性樹脂、または、熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、アイオノマー樹脂、アミノアクリルアミド重合体、ポリエチレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、ポリイソブチレン、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキサイド、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリプロピレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、ポリイソブチレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、塩素化ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ACS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ビニルアルコール樹脂、ビニルアセタール樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、単純ブレンド型オレフィン系熱可塑性エラストマー、インプラント型オレフィン系熱可塑性エラストマー、動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。なお、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、筐体部の材料としては、シール材と相容性の良いものを選択して使用することが好ましく、具体的には、ポリプロピレンやポリエチレンを挙げることができる。
本実施形態の複合体は、筐体部、及びシール部は、それぞれ個別に射出成形した後、これらを組み合わせて得られるものであってもよいが、筐体部とシール部とを一体化するように射出成形して得ることが好ましい。このように筐体部及びシール部が一体化した複合体は、極めて優れたシール性能を発揮するという利点がある。
筐体部とシール部とを一体化する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ダイスライド法、ロータリー法、コアバック法などを挙げることができる。これらの中でも、ダイスライド法(DSI(Die Slide Injection))が好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例、比較例中の各種の測定は、下記の方法により行った。
[極限粘度[η]]:
ウベローデ型粘度計を用いて、エチレン系共重合体の135℃のデカリン溶媒中における極限粘度[η]を測定する。
[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比の(Mw/Mn)の値]:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「PL−GPC220」、ポリマーラボラトリー社製)を使用して、エチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比の(Mw/Mn)の値を算出する。表1中、「Mw/Mn」と示す。カラムは、ポリマーラボラトリー社製の商品名「MIXED−B」、移動相はオルトジクロロベンゼン、温度は135℃、濃度は0.1%、検知器は示差屈折計を用いる。
[ポリスチレンに換算した分子量10万以下の領域の面積割合]:
上記[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値]で得られたゲルパーミエーションクロマトグラフィーのクロマトグラムから算出する。表1中、「面積割合(%)」と示す。
[圧縮永久歪み]:
弾性回復性の指標として、JIS K6262に準拠して70℃で22時間、25%圧縮したときの圧縮永久歪みを測定する。圧縮永久歪みが小さい程、弾性回復性がよいと判断できる。
[硬度(デュロA)]:
JIS K6253に準拠してデュロA硬度における測定開始5秒後の硬度を測定する。
[引張破断強度(MPa)、引張破断伸び(%)]:
JIS K6301に準拠して射出成形した120mm×120mm×2mm(縦×横×厚さ)の平板について、引張破断強度(MPa)、及び引張破断伸び(%)を測定する。この平板は、型締力110トンの射出成形機(日本製鋼社製、商品名「J−110AD」)を用いて作製する。
[メルトフローレート(MFR)]:
JIS K7210に準拠して、メルトフローレートを、190℃、荷重21Nの条件にて測定する。
[オイルブリード性]:
型締力110トンの射出成形機(日本製鋼社製、商品名「J−110AD」)を用いて120mm×120mm×2mm(縦×横×厚さ)の平板を射出成形して成形品を得る。得られた成形品を、100℃、72時間の条件で放置した後、成形品の表面の外観変化を目視にて観察して、オイルブリード性(軟化材保持性)を下記の2段階で評価する。
○:鉱物油系軟化材のブリードが観察されず、軟化材保持性が良好。
×:鉱物油系軟化材のブリードが観察され、軟化材保持性が劣る。
[リサイクル性]:
試験片を、熱可塑性エラストマー組成物をリサイクルする際に使用される温度である160〜250℃とし、塑性変形特性の有無を観察する。塑性変形特性が認められる場合、即ち、試験片が溶融変形する場合をリサイクル性が良好「○」であると評価し、塑性変形特性が認められない場合、即ち、試験片の溶融変形が観察されない場合をリサイクル性が不良「×」であると評価した。
[シール性]:
まず、筐体部とシール部とを備える立方体状の複合体(容器)を作製する。日本製鋼所社製の二色成形用射出成形機「220EII−P2M」を用い、シリンダー温度210℃、金型温度50℃の条件でダイスライド射出成形法によって、ポリスチレン(日本ポリスチレン社製の「グレードH230」)の筐体部を成形した。その後、連続的に、シリンダー温度210℃、金型温度50℃の条件で、熱可塑性エラストマー組成物によってシール部を成形し、複合体(容器)を作製する。
次に、作製した複合体に、この複合体の内容積に対して、90体積%を占めるように水を充填する。次に、この複合体に蓋を被せ、8個のダブルクリップ(コクヨ社製:クリー34、口幅25mm)を用いて蓋を複合体に固定し、密閉容器(試験容器)を得る。得られた試験容器を1mの高さからダンボール紙上に落下させ、試験容器からの水の漏れの有無を確認し、シール性の評価とする。表2中、「水漏れ率(%)」と示す。
評価基準は、水漏れが確認されないときを良好「○」とし、水漏れが確認されたときを不良「×」とする。なお、1個のサンプルで落下方向を変えて5回テスト(即ち、試験容器の底面がダンボール紙に衝突するように落下させること(1回)、試験容器の各側面がダンボール紙に衝突するように落下させること(各1回で計4回))して、以下の「水漏れ率(%)」の計算式によって算出される値を上記評価基準によって評価し、シール性の指標とする。シール性は、水漏れ率(%)の数値が小さいほど良好であることを意味する。
水漏れ率(%)=(5回の試験のうち、水の漏れた不良「×」の回数)÷5×100
(合成例1)
[(A)油展エチレン系共重合体の作製]:
予め窒素置換した、攪拌機を備える内容積10リットルのステンレス鋼製のオートクレーブを用い、1MPaの圧力下で連続的に共重合反応を行った。上記オートクレーブの下部の供給口から重合溶媒であるヘキサンを毎時65Lの速度で連続的に供給するとともに、エチレン、プロピレン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンを、それぞれ毎時0.80Nm3、2.0L、及び0.11Lの速度で連続的に供給した。また、同時に、触媒であるエチルアルミニウムセスキクロライドと三塩化バナジウムとを、それぞれ毎時13.585g、及び0.384gの速度で連続的に供給するとともに、分子量調節剤として水素を毎時0.4NLの速度で連続的に供給した。なお、オートクレーブ内の重合温度は22℃に保持して共重合させた。反応停止後、共重合反応によって得られたポリマー(エチレン系共重合体)は、別の貯蔵機内に移した。この共重合ポリマー100部に対して、第一の鉱物油系軟化材として出光興産社製の「ダイアナプロセスPW90」(商品名)120部を添加し、攪拌して、スチームストリッピングにより共重合ゴムを析出させ、(A)油展エチレン系共重合体としての油展エチレン系共重合体(a−1)を作製した。
作製した油展エチレン系共重合体(a−1)のエチレン系共重合体について、上記極限粘度[η]、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値、及び、ポリスチレンに換算した分子量10万以下の領域の面積割合の各評価を行った。その評価結果は、極限粘度[η]が6.7であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が2.4であり、ポリスチレンに換算した分子量10万以下の領域の面積割合が0.5%であった。また、油展エチレン系共重合体(a−1)は、エチレンに由来する構造単位(表1中、「エチレン」と示す)、プロピレンに由来する構造単位(表1中、「プロピレン」と示す)、及び、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構造単位(表1中、「5−エチリデン−2−ノルボルネン」と示す)が、それぞれ、全構造単位100%に対して、67%、26.5%、及び、6.5%であった。
(合成例2、4、5)
表1に示す配合処方となるように、エチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、エチルアルミニウムセスキクロライド、三塩化バナジウム、水素の供給量、重合温度を調整し、合成例1と同様にして、それぞれ順に、油展エチレン系共重合体(a−2)、(a−4)、(a−5)を作製した。
(合成例3)
エチレン、プロピレン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンを、それぞれ毎時0.75Nm3、1.4L、及び0.10Lの速度で連続的に供給すること、触媒である三塩化バナジウムを毎時1.216gの速度で連続的に供給すること、水素を毎時0.06NLの速度で連続的に供給すること、重合温度を30℃に保持して共重合すること、及び、第一の鉱物油系軟化材の添加量を100部とした以外は、合成例1と同様にして油展エチレン系共重合体(a−3)を作製した。
作製した油展エチレン系共重合体(a−3)のエチレン系共重合体は、極限粘度[η]が4.7であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が3.7であり、ポリスチレンに換算した分子量10万以下の領域の面積割合が3.2%であった。
作製した油展エチレン系共重合体(a−2)〜(a−5)について、上記各評価を行った。評価結果を表1に示す。
以下に示す実施例及び比較例に用いた、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂(即ち、α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(b1)、及び、α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(b2))、(C)第二の鉱物油系軟化材、(D)水添ジエン系重合体、架橋剤、架橋助剤、老化防止剤について以下に説明する。
α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(b1)としては、プロピレン/エチレンランダム共重合体(商品名「プライムポリプロB241」、プライムポリマー社製、密度0.91g/cm3、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)0.5g/10分、表2中、「b−1」と示す)を使用する。
α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(b2)としては、プロピレン/1−ブテン非晶質共重合体(商品名「REXTAC RT2780」、ハンツマン社製、密度0.87g/cm3、190℃の溶融粘度8000mPa・s、表2中、「b−2」と示す)を使用する。
(C)第二の鉱物油系軟化材としては、出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW90」を使用する。
(D)水添ジエン系重合体(スチレン・ブタジエン・イソプレン水添ジエン系重合体)
クラレ社製、商品名「セプトン4077」(スチレン単量体単位量;30質量%、比重;0.91、水添率;98%、トルエン溶液粘度(30℃、濃度5質量%);300mPa・s、メルトフローレート(230℃、21.2N)は測定不能(流動しないため))を使用する。
架橋剤としては、5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンとシリカの混合物(商品名「パーヘキサ25B−40」、日本油脂社製、表2中、「e−1」と示す)を使用する。架橋助剤としては、ジビニルベンゼン(商品名「ジビニルベンゼン(81%)」、新日鐵化学社製、表2中、「e−2」と示す)を使用する。
老化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「イルガノックス1010」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を使用する。
(実施例1)
合成例1で得られた油展エチレン系共重合体(a−1)90部、α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(b1)5部、α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(b2)5部、及び老化防止剤0.1部を、予め150℃に加熱した加圧型ニーダー(容量10リットル、モリヤマ社製)に投入し、(B)α−オレフィン系熱可塑性樹脂が溶融して各成分が均一に分散するまで40rpm(ずり速度200/秒)で15分間混練して、溶融状態の混練物を得た。その後、得られた溶融状態の混練物をフィーダールーダー(モリヤマ社製)によりペレット化した。
次に、上記ペレット100部、架橋剤1部、及び、架橋助剤0.9部をヘンシェルミキサーに投入し、30秒間混合した。その後、二軸押出機(同方向完全噛み合い型スクリュー、スクリューフライト部の長さLとスクリュー直径Dとの比L/D=33.5、池貝社製、形式PCM45)を用い、200℃、滞留時間1分30秒、300rpm、ずり速度400/secの処理時間で動的に熱処理を行いながら押出して、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
次に、得られたペレット状の熱可塑性エラストマー組成物(I)を、射出成形機(日本製鋼所製、型式「J−110AD」)により加工し、長さ120mm、幅120mm及び厚さ2mmのシート(試験片)を作製した。この試験片について上記各種評価を行うことによってシール材の評価とした。
本実施例のシール材(試験片)についての上記各評価結果は、圧縮永久歪みが28%であり、硬度(デュロA)が35であり、引張破断強度が3.6MPaであり、引張破断伸びが660%であり、メルトフローレート(MFR)が23g/10分であり、オイルブリード性(軟化材保持性)が良好「○」であり、リサイクル性が良好「○」であり、水漏れ率が0%のためシール性が良好であることが確認できた。
(実施例2〜4、比較例1〜4)
表2に示す配合処方とすること以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物(II)〜(VII)を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物(II)〜(VII)によってそれぞれシート(試験片)を作製した。作製した各試験片について上記各種評価を行うことによってシール材の評価とした。評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例1〜4のシール材は、比較例1〜4のシール材に比べて、圧縮永久歪みが小さく、シール性と軟化材保持性に優れ、リサイクルができることが確認できた。
一方、比較例1の熱可塑性エラストマー組成物(V)は、油展エチレン系共重合体に含まれるエチレン系共重合体の極限粘度[η]の値、及びMw/Mnの値が、本発明の範囲外であるため、実施例2の熱可塑性エラストマー組成物(II)と比べて、圧縮永久歪みと軟化材保持性に劣る。比較例2の熱可塑性エラストマー組成物(VI)は、油展エチレン系共重合体に含まれるエチレン系共重合体のMw/Mnの値が、本発明の範囲外であるため、実施例2の熱可塑性エラストマー組成物(II)と比べて、圧縮永久歪みと軟化材保持性に劣る。比較例3の熱可塑性エラストマー組成物は、油展エチレン系共重合体に含まれるエチレン系共重合体の極限粘度[η]の値が、本発明の範囲外のため、熱可塑性エラストマー組成物を作製することが不可能であった。比較例4の熱可塑性エラストマー組成物(VII)は、硬度が本発明の範囲外であるため、実施例2の熱可塑性エラストマー組成物(II)と比べて、シール性に劣る。