JP2009229971A - 画像表示装置および光学補償装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一対の基板間に配された液晶層を有する液晶パネル10と、負の一軸性結晶で形成された第1光学補償板12aと正の一軸性結晶で形成された第2光学補償板12bとからなり、当該第1光学補償板12aと当該第2光学補償板12bとの板厚差に起因して生じる光の位相差が前記液晶パネル10にて生じる光の位相差を相殺するように構成されている光学補償板対12と、を備えて画像表示装置を構成する。
【選択図】図2
Description
このような液晶プロジェクタ装置に対しては、投影画像についての画質向上が恒久的に求められている。投影画像の品質を決める重要な要素としては、黒表示時と白表示時における明るさの比であるコントラストが挙げられる。
液晶プロジェクタ装置において、コントラスト向上を図るためには、黒表示時での明るさを必要最小限にすることが有効である。ところが、実際には、光変調器となる液晶パネルの構造や性質、当該液晶パネルに入射する照明系からの光の状態等によっては、黒表示時であっても光漏れが発生してしまう可能性がある。
こうした光漏れを防止するためには、液晶パネルの光学補償に、例えば、多層薄膜を用いること(例えば、特許文献1参照。)や、複屈折板を用いること(例えば、特許文献2参照。)や、正の一軸性の複屈折材料からなる複数の複屈折部材を用いること(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
このようなVA型液晶は、ノーマリーブラックと称されるように、電圧を印加しないときの液晶配向を基板に垂直になるように配置するので、パネル面に対して垂直に入射する光については位相差が発生しないはずである。ただし、現実には諸々の事情により完全に垂直ではなく液晶配向に数°程度のプレチルト角が付与される。そのため、パネル面に対して垂直に光が入射しても、位相差が発生して光漏れが生じてしまうおそれがある。また、照明系からくる光についても、パネル面に対して垂直入射するだけではなく、当該光のFナンバーに相当した発散角の広がりをもって入射するため、これに起因して位相差が発生し光漏れの原因となることが考えられる。つまり、VA型液晶を用いた場合にも、黒表示時の光漏れが発生してしまう可能性がある。
その一方で、ある厚みを持ちつつ液晶配向にプレチルト角が付与されているVA型液晶は、シミュレーション上では傾いたポジティブCプレートとしてモデル化することができる。したがって、光漏れを防止すべくVA型液晶を光学的に補償するためには、ネガティブCプレートとして機能する光学補償板を、当該VA型液晶におけるプレチルト角と同じ方向に傾かせて配置し、これによりそれぞれにおける光の位相差を相殺させるようにすることが考えられる。
しかしながら、上記特許文献1に開示されているように、薄膜を多層積層させて見かけ上ネガティブCプレートとして作用させ補償するという従来技術では、薄膜面に垂直な方向がne方向となるため、VA型液晶に適用する場合には、薄膜作成後にプレチルト角分傾けて配置する必要がある。つまり、当該従来技術は、TN型液晶を想定しているため、VA型液晶に適用する場合には、装置構成のコンパクト化(省スペース化)という点で難がある。また、配置する場所によっては非点収差が発生する等の問題が生じるおそれもある。
さらに、上記特許文献2に開示された従来技術についても、TN型液晶を想定しているため、VA型液晶に適用する場合に、複屈折性を持った材料をそれぞれの特性が液晶の位相差を相殺する方向に配置すると、複屈折板の厚みが数十μm程度と薄くなりすぎて、当該複屈折板の形成加工および取り扱いが困難になってしまうことが考えられる。
また、上記特許文献3に開示された従来技術は、VA型液晶を想定しているが、やはり数十μm程度に形成加工した正の一軸性結晶からなる光学補償板を複数枚使用しなければならず、形成加工上難しく、コスト的にも不利であると考えられる。
このように、従来技術では、液晶パネルの光学補償にあたり、必ずしも装置構成のコンパクト化と量産(低コスト)実現の容易化とを実現し得るとはいえない。
図1は、三板式の液晶プロジェクタ装置の概略構成例を示す模式図である。
図例のように、液晶プロジェクタ装置では、光源1から出射される光が、赤外線や紫外線をカットするフィルタ2、フライアイレンズ3、無偏光波を偏光波に変換するPS分離合成器4を経た後に、特定の波長帯域の光だけを反射するダイクロイック・ミラー5によってRGBの各色成分光に分離され、必要に応じて紫外線を吸収するフィルタ6、全反射ミラー7、コンデンサー・レンズ8、リレーレンズ9等を利用しつつ、RGBの各色に対応して設けられた液晶パネル10R,10G,10Bに入射される。そして、各液晶パネル10R,10G,10Bにて映像信号に応じた光変調が行われた後に、光変調された各色成分光が必要に応じて1/2波長フィルム21を経てダイクロイック・プリズム22によって合成されて、投写レンズ23によって拡大投影される。このようにして、液晶プロジェクタ装置では、スクリーン上へのカラー画像の表示を行うようになっている。
また、各液晶パネル10R,10G,10Bには、それぞれに付随して、入射側偏光板11、光学補償板対12および出射側偏光板13が設けられており、入射側偏光板11を透過した各色成分光が各液晶パネル10R,10G,10Bへ入射し、各液晶パネル10R,10G,10Bにて光変調された各色成分光が光学補償板対12および出射側偏光板13を透過するようになっている。
図2は、液晶プロジェクタ装置の要部構成例を示す模式図である。図例では、入射側偏光板11から出射側偏光板13までの部分を拡大して示している。
図例のように、RGBの各色成分光の光路上において、クロスニコル状態(偏光方向が互いに直交する状態)で配置された入射側偏光板11と出射側偏光板13との間には、光変調器となる液晶パネル10R,10G,10B(以下、単に「液晶パネル10」と記す。)と、その光出射側に位置する光学補償板対12とが、それぞれ配置されている。なお、出射側偏光板13は、複数枚が存在していてもよい。また、入射側偏光板11および出射側偏光板13は、有機偏光板であっても無機偏光板であってもよいが、無機偏光板であれば光源1からの光量が大きい液晶プロジェクタ装置に用いる場合であっても、有機偏光板に比べて変質を抑制することが可能となり、高寿命化や信頼性向上等が図れるようになる。
液晶パネル10としては、VA型液晶を使用することが考えられる。VA型液晶は、垂直配向モードで動作するようになっている。すなわち、電圧を印加しないときの液晶配向を基板に垂直になるように配置したものであり、電圧印加時に液晶配向が基板法線方向に対して傾くように構成されている。ただし、現実には、電圧を印加しないときであっても、液晶配向が完全に基板に対して垂直ではなく、当該液晶配向に数°程度のプレチルト角が付与されるようになっている。つまり、液晶パネル10は、電圧が印加されない状態では所定のプレチルト角だけ傾斜した液晶分子で構成されている。
このようなVA型液晶を使用した液晶パネル10は、ポジティブCプレートとして振舞うことが知られている。ここで、ポジティブCプレートとは、面内において屈折率が等方性を有し、厚さ方向の屈折率が大きい媒体のことをいう。
ただし、光学補償板対12は、負の一軸性結晶で形成された第1光学補償板12aと正の一軸性結晶で形成された第2光学補償板12bとからなる。そして、当該第1光学補償板12aと当該第2光学補償板12bとの板厚差に起因して生じる光の位相差が、液晶パネル10にて生じる光の位相差を相殺するように構成されている。
負の一軸性結晶とは、負の一軸性の光学異方性を持つ結晶のことをいい、その一具体例としては例えばサファイアが挙げられる。このような負の一軸性結晶で形成された第1光学補償板12aは、ネガティブCプレートとして機能することになる。ここで、ネガティブCプレートとは、面内において屈折率が等方性を有し、厚さ方向の屈折率が小さい媒体のことをいう。
一方、正の一軸性結晶とは、正の一軸性の光学異方性を持つ結晶のことをいい、その一具体例としては例えば水晶が挙げられる。このような正の一軸性結晶で形成された第2光学補償板12bは、ポジティブCプレートとして機能することになる。
つまり、光学補償板対12は、負の一軸性結晶で形成されネガティブCプレートとして機能する第1光学補償板12aと、正の一軸性結晶で形成されポジティブCプレートとして機能する第2光学補償板12bとの組み合わせによって構成されている。そして、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの板厚差に起因して、光学補償板対12の全体では、ネガティブCプレートとして振舞うようになっている。
これら第1光学補償板12aおよび第2光学補償板12bは、当該第1光学補償板12aの光出射面と当該第2光学補償板12bの光入射面とが互いに接するように、それぞれを一体で配置することが考えられる。
また、第1光学補償板12aおよび第2光学補償板12bは、液晶パネル10の液晶層における液晶分子が所定のプレチルト角だけ傾斜していることから、詳細を後述するように、当該プレチルト角の傾斜方向と一致する方向に光学軸を傾けて形成されているものとする。
液晶パネル10は、VA型液晶、すなわち液晶層が垂直配向モードで動作するものであることから、正の一軸結晶としてモデル化することができる。つまり、電圧をかけない状態でプレチルト角分傾いたVA液晶層は、傾いたポジティブCプレートである。
また、第1光学補償板12aを構成するサファイアは、負の一軸性結晶である。つまり、光線が通過する際に、VA型液とは符号において正反対の位相差を発生させるネガティブCプレートとして機能することになり、光軸を傾けて使用すれば傾いたネガティブCプレートとなる。
さらに、第2光学補償板12bを構成する水晶は、正の一軸性結晶である。つまり、光軸を傾けて使用すれば、傾いたポジティブCプレートとなる。
これらのことから、液晶パネル10、第1光学補償板12aおよび第2光学補償板12bのそれぞれについて略同じ方向に光学軸を傾ければ、ポジティブCプレートである液晶パネル10と第2光学補償板12bから発生する位相差は符号が同じ方向で、ネガティブCプレートである第1光学補償板12aから発生する位相差のみ符号が逆となる。したがって、液晶パネル10と第2光学補償板12bとから発生する位相差の大きさの和が、第1光学補償板12aから発生する位相差の大きさと同じになるようにそれぞれの厚みを調整し、クロスニコルの入射側偏光板11と出射側偏光板13との間で位相ずれが発生しないようにすれば、液晶パネル10から発生する位相差を、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの厚み差から発生する位相差で相殺することになる。
つまり、液晶パネル10のプレチルト方向と略同じ方向に、第1光学補償板12aおよび第2光学補償板12bの厚みを調整することによって、これら第1光学補償板12aおよび第2光学補償板12bがその板厚差に起因してネガティブCプレートとして振舞うことになり、その結果として液晶パネル10から発生する位相差を相殺することになるのである。
図4は、光学補償の一具体例をモデル化して示した説明図(その1)である。
図4(a)は、正の一軸性結晶を示す屈折率楕円体であり、X軸とY軸方向の常光線の屈折率noは互いに等しく、Z軸(光軸)方向の異常光線の屈折率neが常光線の屈折率noよりも大きくなっている(no<ne)。図4(b)は、負の一軸性結晶を示す屈折率楕円体であり、X軸とY軸方向の常光線の屈折率noは互いに等しく、Z軸方向の異常光線の屈折率neが常光線の屈折率noよりも小さくなっている(no>ne)。これら図4(a)(b)に示した各屈折率楕円体を足し合わせると、図4(c)に示すように、見かけ上屈折率楕円体が等方体となり、どの方向からの光に対しても常光線と異常光線の屈折率が等しくなり(no=ne)、位相差は発生しない。このとき、それぞれの位相差量はΔn(neとnoの差)×厚みで決まるが、Δnは物性値で決まっているので、厚みの調整によって位相差量を決めることができる。
図5(a)は、正の一軸性結晶で、Z軸がある角度だけ傾いている状態を示している。これは、VA液晶層が電圧をかけない状態でプレチルト角だけ傾いている場合と同じである。図5(b)は、負の一軸性結晶で、Z軸がある角度だけ傾いている状態を示している。これは、第1光学補償板12aにおける光学軸を傾けて配置した状態と同じである。したがって、Z軸が傾いた状態であっても、図5(a)(b)に示した各屈折率楕円体を足し合わせると、図5(c)に示すように、屈折率楕円体を見かけ上等方体とし、これによりそれぞれの位相差を相殺し得るようになる。
図例のように、平行平板として切り出した補償板の面内で光軸が傾いた状態であれば、液晶プロジェクタ装置に搭載するのにあたり、当該補償板自体を傾けて配置する必要がなく、当該液晶プロジェクタ装置のコンパクト化(省スペース化)を実現する上で有利であり、また非点収差が発生する心配もない。
しかしながら、これをネガティブCプレートの補償板だけで成し遂げようとすると、負の一軸性結晶からなる補償板の厚みは数十μm程度となり、薄くなりすぎて、当該補償板の形成加工および取り扱いが非常に困難になる。
このことから、光学補償板対12は、負の一軸性結晶で形成されネガティブCプレートとして機能する第1光学補償板12aと、正の一軸性結晶で形成されポジティブCプレートとして機能する第2光学補償板12bとの組み合わせによって構成されているのである。
図7においても、図5,6の場合と同様に、(a)は傾いたVA液晶層、(b)は傾いた負の一軸性結晶の屈折率楕円体の状態を示している。ここで、例えば図7(b)に示した負の一軸性結晶による補償板の厚みを、その加工上問題ない数百μm程度に設定した場合を考える。このような厚みに設定すると、図7(a)(b)に示した各屈折率楕円体を足し合わせた状態では、(b)の負の一軸性結晶から発生する位相差量が(a)の液晶層から発生する位相差量を上回っているので、見かけ上は図7(c)に示すようなネガティブCプレートの屈折率楕円体となってしまう。これを等方体にするためには、さらにポジティブCプレートの屈折率楕円体が必要である。このことから、光学補償板対12では、図7(d)に示すような正の一軸性結晶の屈折率楕円体を組み合わせているのである。つまり、図7(c)に示した位相差を相殺するように、図7(d)に示した正の一軸性結晶による補償板の厚みを設定することによって、図7(e)に示すように、見かけ上屈折率楕円体を等方体にすることができる。
図8(a)は、一軸性結晶を模式的に示している。一軸性結晶の具体例であるサファイアおよび水晶は、いずれも厳密には三方晶系であるが、広義に捉えると六方晶系であると言える。六方晶系において、c軸は光軸であり、a1、a2、a3の結晶軸がある。光学補償板の光軸をθ°傾けたい場合は、c軸に垂直な面(c面)からθ°傾いた平行平板を切り出せばよい。この平行平板について、例えば図8(a)に示すように、その短辺がa軸に平行な長方形であるとすると、その長辺は図8(b)に示すようにm軸をこの平行平板面に投影したm′軸に平行となる。この状態の平行平板では、光軸(c軸)がm′軸方向にθ°傾いた方向を向いている。基準面をm′軸に平行な長辺とすると、液晶層の配向方向は基準面から45°傾いた方向であるから、液晶層のプレチルト角と同じ方向に光軸を傾かせるためには、さらにこの平行平板基準面から45°傾いた方向に基準面を持つ長方形の平板を切り出せばよい。最終的に完成した平板の方位は、図8(c)に示すようになり、これにより基準面から45°方向にθ°傾いた光軸を持つ光学補償板が形成されることになる。
例えば図9(a)に示すように、液晶パネル10の液晶層のプレチルト方向が基準面から45°方向にθ°傾いているとすると、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの組み合わせからなる光学補償板対12を形成するためには、第1光学補償板12aを構成する負の一軸性結晶であるサファイアと、第2光学補償板12bを構成する正の一軸性結晶である水晶とのそれぞれについて、光軸の方向が液晶分子のプレチルト角の方向と同じになるように切り出して、平行平板状に加工すればよい。そして、切り出したそれぞれの平行平板を、図9(b)に示すように、接着して一体型とする。このとき、それぞれの厚みは、数百μm程度とすればよい。すなわち、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの厚み差から発生する位相差で、液晶層から発生する位相差を相殺することになるので、一方を厚くすれば他方も厚くすることができ、現実的な形成加工および取り扱いが可能となる数百μm程度の厚さが実現可能となる。
ただし、液晶パネル10の液晶層、第1光学補償板12aを構成する負の一軸性結晶であるサファイア、第2光学補償板12bを構成する正の一軸性結晶である水晶は、屈折率波長分散がそれぞれ異なっている。また、Δnの値(neとnoとの差)についても、物質によって決まる値であることから、それぞれで異なった値となる。これらのことを考慮すると、サファイアからなる第1光学補償板12aと水晶からなる第2光学補償板12bとは、光学軸の傾斜角度を液晶パネル10の液晶層のプレチルト角と全く同じにするよりは、数°程度(例えば1°〜5°程度、より好ましくは1°〜3°程度)ずらして設計したほうがよい効果が得られると考えられる。
また、サファイアからなる第1光学補償板12aと水晶からなる第2光学補償板12bについては、それぞれの空気と接する側に、反射防止膜(ARコート)を形成することが望ましい。反射防止膜によって透過率を上げることが可能になるからである。
さらに、サファイアの屈折率は1.77付近、水晶の屈折率は1.55付近であり、これらを接着する接着剤の屈折率は1.5付近である。そのため、水晶と接着剤との間での屈折率差は少なく、これらの境界面での反射は殆どないと考えられる。ところが、サファイアと接着剤との間では屈折率差があり、これらの境界面での反射が透過率を減少させるおそれがある。したがって、サファイアと接着剤とが接する面にも、反射防止膜を形成することが望ましい。
図10(a)は、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの組み合わせからなる光学補償板対12を用いていない場合のシミュレーション結果を示しており、0°から20°までの入射角を持つ光についてシミュレーションを行っているが、コントラスト2000:1以上の部分が狭く、線幅が中心に向かって密になっていることがわかる。これは、入射角度が大きくなっていくと、急激にコントラストが低下していくことを意味している。
これに対して、図10(b)は、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの組み合わせからなる光学補償板対12を用いた場合のシミュレーション結果を示しており、図10(a)のシミュレーション結果と比較して、コントラスト2000:1以上の部分が広く、線幅も緩やかに広がっていることがわかる。つまり、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの組み合わせからなる光学補償板対12を用いれば、0°入射から10°入射付近まで精度よく補償できていると言える。
ところで、一般に、光学補償板を使用する場合には、面内に回転調整をして一番黒が沈むところを探さなければならず、そのための回転調整機構が必要となったり、回転調整処理の手間がかかったりする。しかしながら、上述した構成の光学補償板対12を用いれば、面内回転に対する感度が低いので、例えば±5°〜10°程度回転させても十分な補償効果が得られ、当該光学補償板対12そのものを単独で回転調整する必要がなくなる。すなわち、光学補償板対12について、回転調整のための機構や手間等を必要とすることがなく、後述するように、偏光板11,13と一体にしたり、液晶パネル10を構成する基板と一体にするといったことも、容易に実現することが可能になる。
さらには、光学補償板対12が液晶パネル10に対する光学的な補償を行うことで、当該液晶パネル10での黒表示時の光漏れ発生を防止し得るようになり、このことを通じて黒ムラ改善に関しても非常に有効なものなる。
ところで、例えば液晶プロジェクタ装置のような明るさ重視の装置構成では、実効開口率を上げるため、液晶パネル10の光入射側に、マイクロレンズアレイを配置することがある。このような装置構成においては、マイクロレンズアレイに入射する光線の角度と当該マイクロレンズアレイを通過した後の光線の角度とが変化することになる。
その場合に、液晶パネル10の光出射側に光学補償板対12を構成する第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとを一体で配置すれば、マイクロレンズアレイを通過した後、液晶パネル10の液晶層を通る光線の角度と、当該光学補償板対12を通る光線の角度とを、互いに一致させることができ、その結果として十分な光学補償効果が得られるようになる。
図11は、液晶プロジェクタ装置の他の要部構成例を示す模式図である。図例においても、図2に示した構成例と同様に、入射側偏光板11から出射側偏光板13までの部分を拡大して示している。
図例においても、上述した一体配置の場合(図2参照)と同様に、クロスニコル状態で配置された入射側偏光板11と出射側偏光板13との間に、液晶パネル10と、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの組み合わせからなる光学補償板対12とが、それぞれ配置されている。なお、出射側偏光板13は、複数枚が存在していてもよい。
ただし、上述した一体配置の場合とは異なり、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとは、それぞれが別体で配置されている。具体的には、液晶パネル10の光入射側に、負の一軸性結晶であるサファイアで形成された第1光学補償板12aが配置され、当該液晶パネル10の光出射側に、正の一軸性結晶である水晶で形成された第2光学補償板12bが配置されている。
このように、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとが別体で配置されていても、当該第1光学補償板12aと当該第2光学補償板12bとの板厚差に起因して生じる光の位相差を利用して、液晶パネル10にて生じる光の位相差を相殺することで、当該第1光学補償板12aおよび当該第2光学補償板12bのいずれについても現実的な厚さを担保しつつ、液晶パネル10に対する光学的な補償を行い得るようになる。つまり、当該液晶パネル10を利用して行う画像表示の高コントラスト化を達成して良好な画像品質を実現することができる。
その一方で、第1光学補償板12aを構成するサファイアについても、また第2光学補償板12bを構成する水晶についても、熱伝導率が高く、放熱効果があることが知られている。そのため、サファイアまたは水晶が、入射側偏光板11または出射側偏光板13の基材として用いられることもあり得る。
これらのことから、各偏光板11,13については、その基材に、第1光学補償板12aまたは第2光学補償板12bとしての機能を持たせることも考えられる。すなわち、各偏光板11,13が、光学補償板対12における第1光学補償板12aまたは第2光学補償板12bのいずれか一方としての機能を兼ね備えるように、当該各偏光板11,13を構成しても構わない。
具体的には、図11に示すように、入射側偏光板11の基材として負の一軸性結晶であるサファイアを用い、かつ、出射側偏光板13の基材として正の一軸性結晶である水晶を用い、これらの基材に偏光層を形成するか、或は偏光フィルムを貼り付ける等をして、各偏光板11,13としての機能を実現する。そして、液晶パネル10にて生じる光の位相差を相殺するように、入射側偏光板11の基材と出射側偏光板13の基材との板厚差を設定し、これらに第1光学補償板12aおよび第2光学補償板12bとしての機能を持たせるようにする。
このように構成すれば、液晶パネル10に対する光学的な補償を行い得るという技術的効果を担保しつつ、各偏光板11,13の基材に光学補償の役割をも担わせることになり、光学補償板を別途新たに組み込むよりは、部品点数を減らすことができ、これにより装置コスト面でも有利なものとなる。
なお、基材に光学補償の役割をも担わせるのは、必ずしも各偏光板11,13の両方である必要はなく、いずれか一方のみであっても構わない。
このような一体配置を採用すれば、液晶パネル10と第1光学補償板12aまたは第2光学補償板12bとの間の空隙が存在しなくなるので、当該空隙が存在する場合に比べて、装置構成のコンパクト化の実現が非常に容易となる。
図例の液晶プロジェクタ装置においても、透過型液晶パネルを用いた液晶プロジェクタ装置の場合(図1参照)と同様に、光源1から出射される光が、フィルタ2、フライアイレンズ3、PS分離合成器4を経た後に、ダイクロイック・ミラー5によってRGBの各色成分光に分離される。そして、各色成分光が、必要に応じて全反射ミラー7や偏光ビームスプリッタ(PBS)24等を利用しつつ、RGBの各色に対応して設けられた液晶パネル25R,25G,25Bに入射される。その後、各液晶パネル25R,25G,25Bにて映像信号に応じた光変調が行われ、光変調された各色成分光がダイクロイック・プリズム22によって合成されて、投写レンズ23によって拡大投影される。このようにして、液晶プロジェクタ装置では、スクリーン上へのカラー画像の表示を行うようになっている。
図例の光学系では、S偏光でPBS24に入射した光が、膜面で反射し光学補償板対12を通過してから反射型の液晶パネル25に入射する。そして、当該液晶パネル25の反射面で反射され、来た経路を戻って再び光学補償板対12を通り、PBS24に入射するようになっている。
このような構成の光学系においても、光学補償板対12における第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの板厚差に起因して生じる光の位相差を利用して、液晶パネル25にて生じる光の位相差を相殺することで、第1光学補償板12aおよび第2光学補償板12bのいずれについても現実的な厚さを担保しつつ、液晶パネル25に対する光学的な補償を行い得るようになる。したがって、液晶パネル25を利用して行う画像表示の高コントラスト化を達成して良好な画像品質を実現することができる。
その場合に、反射型の液晶パネル25は、その液晶層を光が往復透過した場合に、透過型の液晶パネル10において光が1回通過した場合と同様の特性が得られるように構成されている。そのため、液晶層から発生する位相差量の大きさについては、往復で発生する分を足し合わせれば算出することができる。
このように、反射型の液晶パネル25を用いた液晶プロジェクタ装置であっても、透過型の液晶パネル10の場合と同様に、第1光学補償板12aと第2光学補償板12bとの組み合わせからなる光学補償板対12を用いて、当該液晶パネル25の光の位相差を相殺することが可能である。ただし、光学補償板対12においても光線が往復で2回通過することになるので、第1光学補償板12aおよび第2光学補償板12bのそれぞれの厚みの設計値は、透過型の場合と比べて略半分程度になる。
例えば、本実施形態では、画像表示装置として液晶プロジェクタ装置を例に挙げたが、液晶パネルを備えて構成された画像表示装置であれば、他の装置(テレビジョン装置、デスクトップ型のパーソナルコンピュータのモニタ装置、ノート型パーソナルコンピュータ、液晶表示装置を有するビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの撮像装置、PDA、携帯電話機)にも適用することができることは無論のこと、液晶パネルを備えて構成された画像表示装置を有する種々の電子機器にも広く用いることができる。
Claims (9)
- 一対の基板間に配された液晶層を有する液晶パネルと、
負の一軸性結晶で形成された第1光学補償板と正の一軸性結晶で形成された第2光学補償板とからなり、当該第1光学補償板と当該第2光学補償板との板厚差に起因して生じる光の位相差が前記液晶パネルにて生じる光の位相差を相殺するように構成されている光学補償板対と
を備える画像表示装置。 - 前記液晶パネルは、垂直配向モードで動作し、電圧が印加されない状態で前記液晶層における液晶分子が所定のプレチルト角だけ傾斜しているものであり、
前記第1光学補償板および前記第2光学補償板は、前記プレチルト角の傾斜方向と一致する方向に光学軸を傾けて形成されている
請求項1に記載の画像表示装置。 - 前記負の一軸性結晶はサファイアである
請求項2に記載の画像表示装置。 - 前記正の一軸性結晶は水晶である
請求項2または3に記載の画像表示装置。 - 前記光学補償板対は、前記第1光学補償板と前記第2光学補償板とが一体で配置されたものである
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像表示装置。 - 前記光学補償板対は、前記第1光学補償板と前記第2光学補償板とが別体で配置されたものである
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像表示装置。 - 前記液晶パネルの光入射側または光出射側に配された偏光板を備えるとともに、
前記偏光板は、前記光学補償板対における前記第1光学補償板または前記第2光学補償板のいずれか一方としての機能を兼ね備えている
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像表示装置。 - 前記光学補償板対は、前記第1光学補償板と前記第2光学補償板との少なくとも一方が、前記液晶パネルを構成する前記基板と一体で配置されたものである
請求項1から7のいずれか一項に記載の画像表示装置。 - 一対の基板間に配された液晶層を有する液晶パネルに付随して用いられ、負の一軸性結晶で形成された第1光学補償板と正の一軸性結晶で形成された第2光学補償板とからなり、当該第1光学補償板と当該第2光学補償板との板厚差に起因して生じる光の位相差が前記液晶パネルにて生じる光の位相差を相殺するように構成されている光学補償板対
を備える光学補償装置。
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