JP2009229320A - 担体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】非特異的吸着量の抑制のみならず、リガンド固定化量による結合信号と、非特異的吸着抑制能によるバックグラウンドとの差(S/N比)も向上させた担体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】例えば、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物のような、酸無水物官能基を有するシランカップリング剤で処理され、ブロッキング剤が固定化された多孔質体を含む担体。また、多孔質体を、例えば、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物のような、酸無水物官能基を有するシランカップリング剤で処理すること、前記シランカップリング剤で処理された多孔質体に、ブロッキング剤を接触させることを含む担体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、担体及びその製造方法に関する。
診断用チップやタンパク質マイクロアレイなどの固相担体を用いた生化学反応チップは、研究開発分野や臨床分野において有用性が非常に高い。例えばタンパク質マイクロアレイなどではガラス基板上にタンパク質溶液を接触させることによりタンパク質を基板上に固定化し、その固定化タンパク質の生理活性を利用して診断や解析が行われている。
この場合、タンパク質が密度高く固定でき、かつ固定化タンパク質と反応させる物質が担体に非特異的に吸着しないことが求められる。このような要求に対応して、例えば特許文献1には、特定構造の酸無水物付きシランカップリング剤で、ガラス、シリコンウェーハなどの基板を表面修飾することによって、生理活性物質の固定化とそれを用いた生化学的アッセイを行っている。
また、タンパク質などの生理活性リガンドの固定化量を向上させるために、ファイバーの不織布構造や粒子の充填構造などの多孔質構造を有する固相担体が利用される。
例えば、特許文献2では多孔質膜に酸無水物を共有結合させることによって、生化学的アッセイを行っている。また、特許文献3ではガラス繊維紙からなる多孔性固相に酸無水物含有ポリマーとタンパク質を固定化し、生化学的アッセイを行っている。更に、特許文献4では、酸無水物含有ポリマーとタンパク質を固定化し、生化学的アッセイを行う際にブロッキング剤を反応させることで非特異的な吸着を抑制している。
特開2005−201901号公報 特開平6−148190号公報 特開平8−506902号公報 国際公開WO2006/058237号パンフレット
しかしながら、多孔質構造を用いて表面積を増大させるとリガンド固定化量と共に非特異的吸着量も上昇する傾向がある。一般にブロッキング剤を用いると非特異吸着が抑制されるが、高いリガンド固定化量による結合信号(S)と、非特異的吸着抑制能によるバックグラウンド(N)との比、いわゆるS/N比を向上させるものではなかった。
本発明は、非特異的吸着量の抑制のみならず、リガンドに対する結合信号と、非特異的吸着抑制能によるバックグラウンドとの比(S/N比)も向上させた担体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
[1] 下記一般式(I)で表される酸無水物官能基含有シランカップリング剤で処理され、ブロッキング剤が固定化された多孔質体を含む担体。
(式(I)中、Rは、3価の直鎖又は分岐の脂肪族基又は芳香族基を表し、Rは、C〜C20の置換又は非置換の、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基又はアルキルアリーレン基を表し、Rは、水素原子又はC〜C10のアルキル基を表し、Xは、アルコキシ基(−OR)、ハロゲン原子又はアシロキシ基(−OOCR)であって、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC〜C10のアルキル基を表し、nは1、2、もしくは3を表し、mは(3−n)の整数を表す。)
[2] 前記ブロッキング剤が、水溶性高分子及び水溶性タンパク質からなる群より選択された少なくとも1種を部分構造として含んでいる[1]記載の担体。
[3] 前記ブロッキング剤が、アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ホスホリルコリン基含有高分子、多糖、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、双性イオン含有ポリマー、ポリビニルピロリドンからなる群より選択された少なくとも1種を部分構造として含んでいる[1]又は[2]記載の担体。
[4] 前記多孔質の表面が無機酸化物又は無機窒化物である[1]〜[3]のいずれかに記載の担体。
[5] 前記多孔質体が、1nm〜1mmの孔径を有するものである[1]〜[4]のいずれかに記載の担体。
[6] 生理活性物質が、前記多孔質体の表面に結合している[1]〜[5]のいずれかに記載の担体。
[7] イムノクロマトグラフ用担体である[1]〜[6]のいずれかに記載の担体。
[8] 多孔質体を、上記一般式(I)で表される酸無水物官能基含有シランカップリング剤で処理すること、前記シランカップリング剤で処理された多孔質体に、ブロッキング剤を接触させること、を含む担体の製造方法。
[9] 前記ブロッキング剤との接触前に、前記酸無水物官能基に対して前記生理活性物質を直接接触させ結合することを更に含む[8]記載の担体の製造方法。
[10] 前記生理活性物質が結合した前記担体に対して加水分解処理を行う[9]記載の担体の製造方法。
[11] 前記シランカップリング剤との接触後の担体を、0℃〜60℃の温度範囲下に保持しながら、前記酸無水物官能基に対する前記生理活性物質の結合処理を行うこと、を含む[8]〜[10]のいずれかに記載の担体の製造方法。
本発明によれば、非特異的吸着量の抑制のみならず、S/N比も向上させた担体及びその製造方法を提供することができる。
本発明の担体は、上記一般式(I)で表される酸無水物含有シランカップリング剤で処理され、ブロッキング剤が固定化された多孔質体を含む担体である。
本発明では、担体として多孔質体を用いた場合に、上記一般式(I)で表されるシランカップリング剤と、ブロッキング剤とを組み合わせると、非特異吸着を単に抑制するだけでなく、リガンドに対する結合信号も高めて、S/N比を充分に向上させることができる。
本発明の担体の形状は、多孔質形状を少なくとも一部に含むものであれば特に制限されず、メンブレン、フィルター、粒子充填構造体、カラム、繊維、中空糸、微細多孔質構造、平坦基板、凹凸付き基板、粗面基板、などの任意の形状を選択することができる。
本発明の担体表面を構成する材質としては、シランカップリング反応によって金属(ケイ素)−酸素−ケイ素−炭素結合が形成される無機材料を挙げることができる。具体的にはガラス、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、インジウムスズ酸化物(ITO)などの無機酸化物、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムなどの無機窒化物を単独、またはそれらの複合体として利用することができる。また、更に、最表面が前記のシランカップリング反応によって結合を形成可能な材質であれば、固相担体自体はシリコンや各種金属、ポリマーを用いた多層構造体であってもよい。
最表面にシランカップリング反応性の材質を形成する方法としては、一般的な表面改質方法に従えば特に限定はされず、具体的には物理蒸着、化学蒸着(CVD)スパッタなどの気相での薄膜形成、ゾルゲル法やめっき法などによる液相での薄膜形成、表面酸化などによる表面近傍の改質、などやこれらの組み合わせが挙げられる。また、同様に最表層の少なくとも一部が多孔質形状であればよく、多孔質ではない構造体との複合体でもよい。
これらのうち具体的にはガラスフィルター(ガラスファイバー不織布)、シリカビーズ充填カラム、陽極酸化アルミナ皮膜、メソポーラスシリカ担体などが好ましく挙げられる。
担体として構成する際の多孔質体の大きさ、厚さなどの形状および孔径は特に制限はないが、表面積向上と反応による孔の閉塞を防がない観点から、孔径については、平均孔径として一般に約1nm〜1mmであることが好ましく、約10nm〜100μmであることがより好ましい。なお、本明細書において多孔質体の「孔径」とは、孔の形状が円形の場合には直径を示し、矩形の場合には最大径を意味する。この「孔径」はAFMなどの顕微鏡、または、複雑な形状の場合、粒子などの捕捉能から算出することができる。
粒子などの捕捉能から孔径を算出する方法としては、例えば以下のラテックス法を用いることができる。ラテックス法とは、多孔質を溶媒に浸し、0.01質量%ユニホームラテックス液(例:直径1μmのラテックス)を吸引ろ過し、ろ液の600nmの吸光度を分光光度計で測定し、原液の吸光度との比から捕捉率を算出し、捕捉率が99.9質量%に達する粒径を捕捉能から導かれる孔径とする方法である。
本発明における孔径は、AFMなどの顕微鏡で測定した値と粒子の捕捉能から得られた値との少なくとも一方が上記範囲に含まれていればよい。
本発明における酸無水物官能基シランカップリング剤は、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤である。
一般式(I)中、Rは、3価の直鎖又は分岐の脂肪族基又は芳香族基を表し、酸無水物官能基の安定性の観点から好ましくは、以下のいずれかである。
また、中でも、安定性と反応性のバランスから以下の構造がより好ましい。
は、C〜C20の置換又は非置換の、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基又はアルキルアリーレン基を表し、反応効率と反応後の非特異的吸着抑制の観点から好ましくはC〜Cの直鎖アルキレン基であり、更に好ましくはプロピレン基である。
は、C〜C10のアルキル基を表し、非特異的吸着抑制の観点から好ましくはC〜Cのアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
Xは、加水分解してヒドロキシとなる官能基であり、アルコキシ基(−OR)、ハロゲン原子又はアシロキシ基(−OOCR)であって、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC〜C10のアルキル基を表す。Xにおいて安定性と反応性のバランスの観点から好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、塩素であり、更に好ましくは、メトキシ基かエトキシ基である。
nは1、2、もしくは3を表し、mは(3−n)の整数を表し、反応後の非特異的吸着抑制の観点から好ましくは、nは3、mは0である。
このようなシランカップリング剤としては、例えば、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、4−(トリエトキシシリル)ブチルコハク酸無水物、3−(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、3−(トリエトキシシリル)プロピルグルタル酸無水物、等を挙げることができ、反応性と反応後の非特異的吸着抑制の観点から、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物が好ましい。
本発明におけるブロッキング剤としては水溶性タンパク質または水溶性高分子を含む分子が挙げられる。水溶性タンパク質としては、アルブミン、カゼイン、ゼラチン等を好ましく挙げることができ、非特異的吸着抑制能の観点からはアルブミンまたはカゼインであることがより好ましい。水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、ホスホリルコリン基含有高分子、多糖、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、双性イオン含有ポリマー、ポリビニルピロリドン等を好ましく挙げることができ、非特異的吸着抑制能の観点からは、ポリエチレングリコール、ホスホリルコリン基含有高分子、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、デキストラン硫酸であることが好ましい。これらの水溶性タンパク質及び水溶性高分子は、単独で又は組み合わせて使用してもよく、またこれらの分子を単体として含むだけでなく、部分構造として含むものであってもよい。
またこれらの水溶性高分子を用いる場合、前記多孔質体に対する固定化能を向上させるために、多孔質体と結合もしくは吸着する部位を水溶性高分子中に有していてもよい。多孔質体と結合する部位としてはアミンなどのように酸無水物と結合・吸着する構造であってもよく、また積極的に結合・吸着はしない疎水的な部位であってもよい。また、酸無水物の加水分解基であるカルボキシル基と安定的に吸着させる観点から、多点の静電相互作用によって多孔質体と吸着する構造が挙げられる。具体的には固定化のpHにおいて正電荷を複数有する構造、より具体的にはポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリリジンやその誘導体などが挙げられる。このような構造を有する水溶性高分子としては、株式会社ナオビオテック製のナノビオブロッカーも好ましく利用することができる。
前記多孔質体においてブロッキング剤を固定化する部分としては、予め生理活性物質を固定化した同一部分、つまり生理活性物質の固定化処理を行ったが固定化されなかった隙間であってもよく、また多孔質体において生理活性物質の固定化処理を行わなかった部分でもよく、またその両方でもよい。
本発明の多孔質体には生理活性物質が固定化されていることが好ましい。
生理活性物質としては、特に限定されず、例えばタンパク質、ペプチド、核酸、糖鎖、脂質、ホルモン、サイトカイン、細胞、微生物などの生体由来物質やその複合体、誘導体やそれらの人為的合成物などが挙げられる。また、ビタミン、薬剤、環境ホルモンなどの主に生体外で合成される化合物などでもよい。
タンパク質としては抗体、抗体結合タンパク質、酵素、糖鎖認識タンパク質、レセプターなどが挙げられ、自然界に存在しているものの精製物でもよく、人為的に合成されたものでもよく、更には人為的に変異の導入や複合化、断片化されたものでもよい。抗体としては、種々の免疫グロブリン、即ちIgG、IgM、IgA、IgE、IgDやこれらの誘導体、複合体、断片を使用することができる。具体的に該多孔質体を免疫測定用の担体として利用する場合、測定対象物に対する抗体を使用することができる。また、抗体結合タンパク質として、プロテインG、プロテインA、プロテインLなどを使用することができ、これらを介して測定対象に対する抗体を固定化することもできる。
酵素としては、種々の酵素、例えば酸化還元酵素、加水分解酵素、異性化酵素、脱離酵素、合成酵素等を使用することができる。グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カテコールアミンエステラーゼ、ノルアドレナリンエステラーゼ、ドーパミンエステラーゼ等の酵素を使用することができる。
糖鎖認識タンパク質としては、ConAやWGAといったレクチンが挙げられる。レセプターとしては、GPCR(G-proein-coupled receptor)、EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)などが挙げられる。
ペプチドとしては、自然界に存在しているものでもよく、また人工的に合成されたものでもよい。更に自然界に存在しないアミノ酸が導入されたペプチドでもよい。
核酸として任意の配列のDNA、RNA、PNA(ペプチド核酸)やこれらの複合体を利用することができ、自然界からの抽出物でも遺伝子工学的に合成したものでもよく、化学的に合成したものでもよい。糖鎖としては任意の配列のオリゴ糖、多糖や単糖を利用することができ、それらの長さや配列が制御されているものでもよく、厳密には制御されていないものでもよい。また、アミノ基、アセチルアミド基、スルホン酸、カルボキシル基誘導体を利用することもでき、更に糖鎖とタンパク質と結合した糖タンパク質を利用することもできる。脂質としてはグリセリドや複合脂質を利用することができる。ホルモンやサイトカインは天然で実際に生産されているものでもよく、またその合成物や誘導体を利用することができる。細胞、微生物としては自然界からの抽出物でもよく、その継代培養物でもよく、リポソームなどを用いた擬似細胞でもよい。
ビタミン、薬剤、環境ホルモンなどの主に生体外で合成される低分子有機化合物としては生体への効果が未知の物でもよく、既にその薬理的な作用機序が解明されているものでもよい。また自然界からの抽出物でも化学的もしくは生化学的な合成物でもよい。
このような生理活性物質は、前記シランカップリング剤で処理後の多孔質体に固定化されており、好ましくは、前記シランカップリング剤による処理後の多孔質体上に存在する酸無水物官能基と反応して結合している。
本発明の担体は、前記多孔質体を、前記酸無水物含有シランカップリング剤で処理すること、該シランカップリング剤で処理された多孔質体に、ブロッキング剤を接触させることを含む製造方法により得ることができる。
シランカップリング剤による処理は、多孔質体とシランカップリング剤とを接触させればよく、これにより、加水分解によってシラノール基を有するシランカップリング剤と多孔質体のヒドロキシ基の間に水素結合が形成され、それに続き脱水縮合が生じることで、強固な結合が形成されると推測される。なお、完全な脱水縮合が進行する必要はなく、完全に脱水縮合が進行しなかった場合においても、目的に応じてそのまま利用することができる。
本発明におけるシランカップリング剤で多孔質体を処理する際には、シランカップリング剤と上記多孔質体とを接触させればよい。接触させる際には、シランカップリング剤は、原液そのまま、もしくは適当な溶液の形態で用いればよく、薄く均一に表面修飾する観点から、0.01質量%〜10質量%の溶液、更に好ましくは0.1質量%〜2質量%の溶液が選択される。
溶媒の種類としては、極性溶媒及び非極性溶媒のいずれを用いることができる。極性溶媒としては、エタノール、メタノール、水などを挙げることができる。また、非極性溶媒としては、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪属系炭化水素系、ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族系炭化水素系、ジエチルエーテルなどのエーテル系、クロロホルム、塩化メチレンなどの塩素系、その他、酢酸エチルなどのエステル系等を挙げることができる。これらの溶媒については、多孔質体の溶媒耐性等に基づいて極性溶媒及び非極性溶媒の中から適宜選択することができ、例えばヘキサン、エタノールなどを適宜選択することができる。中でも、ベーキング処理をしなくても脱水縮合を効果的に進行させる観点からは、非極性溶媒であることが好ましく、中でもトルエン、キシレンが好ましい。
このような接触は、多孔質体上にシランカップリング剤をそのまま、もしくは溶媒に溶解した溶液を接触させられれば、特に限定はされない。具体的にはシランカップリング剤溶液中に多孔質体を浸漬させて適当な時間経過後に溶液から取り出す、浸漬法が挙げられる。この浸漬法では、接触工程中に脱水縮合反応が進行することができるので、溶液から取り出した後に多孔質体表面に吸着したシランカップリング剤を洗い流しても結合したシランカップリング剤のみを残すことができる。この結果、孔径を変えずに薄く均一な表面修飾を行うことが可能となる。また、多孔質体の形状によらず採用可能であるため、汎用性が高い。
シランカップリング剤を洗い流す際、洗浄液は少なくとも最後の一回は揮発性溶媒を使用することが好ましい。これは多孔質体中に洗浄液が残留しやすく、この洗浄液が続く反応を阻害したり固定化される生理活性物質の活性を低下させてりする恐れがあるためである。揮発性溶媒としては、アセトン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ヘキサン、メタノール、エタノールなどが挙げられる。また、反応性がなくかつ適度な揮発性であることからアセトン、ジエチルエーテル、アセトニトリルが好ましく利用できる。
接触処理は、多孔質体に対して酸無水物官能基が保持される状態になるまで継続すればよいが、経時的な加水分解による酸無水物の分解やシランカップリング剤の多層化による不均一化を防ぐ観点から3時間未満とすることが好ましく、処理効率の観点から2時間未満とすることがより好ましく、1時間以下が更により好ましい。ただし、多孔質体は一般的に溶媒が全面に均一塗れるようになるのに時間を要する場合があるため、予めシランカップリングを溶解する溶媒と同じ溶媒で多孔質体表面を充分に濡らしておいてもよい。この場合、該溶媒にシランカップリング剤の混合する、もしくはシランカップリング溶液に入れ替えた時点から適当な時間だけ接触することが好ましい。
また、シランカップリング剤の加水分解は多孔質体と接触させる前に予め行ってもよく、接触工程中に随時加水分解と結合を同時に進行させてもよいが、接触工程中に随時加水分解と結合を同時に進行させる方法がより好ましい。この同時進行処理は単に加水分解前のシランカップリング剤を溶媒に溶解させ多孔質体に接触させることで容易に達成される。
更に、シランカップリング剤溶液に加水分解用の水分を添加してもよいが、多孔質体に吸着した水分や空気中から侵入する水分で充分である場合が多いため、続く脱水縮合反応の効率上昇のために、水分は添加しない方が好ましく、更には溶媒に溶け込んでいる水分はできるだけ除くことが好ましい。
接触処理後の多孔質体には、シランカップリング剤に由来する酸無水物官能基が設けられている。この接触処理後の多孔質体に対して例えば100℃〜300℃ほどの高温処理(ベーキング)を行ってから、加水分解処理を行ってもよい。
生理活性物質の結合は、酸無水物官能基を一度加水分解してカルボキシル基にしてから、更に活性化を行ったカルボキシル基に対して生理活性物質を接触させて固定化することもできる。ただし、本発明では、非特異的吸着を抑制する観点から、該多孔質体表面のベーキング及び活性化処理等を行うことなく、多孔質体表面の酸無水物官能基に対して生理活性物質を直接接触させ固定化することが好ましい。これにより、活性化前後の操作数、時間が大幅に短縮できるため、外乱要因による化学的な状態の変化(吸着など)を抑制できるために、非特異的吸着を大幅に抑制することができる。
本発明でいう「活性化処理」とは、接触処理後の多孔質体表面の酸無水物官能基に由来するカルボキシル基に対して活性化剤を反応させて活性状態にする処理をいう。ここで用いられる活性化剤としては、例えば、カルボジイミド及びこれらの誘導体を挙げることができ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)塩酸塩、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)が挙げられる。更に反応性や反応安定性を向上させるためにコハク酸イミドなどを併用することもでき、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、N−ヒドロキシスルホコハク酸イミド(Sulfo−NHS)及び3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(Dhbt)等が該当する。
生理活性物質を多孔質体に結合する結合処理では、これらの生理活性物質は、適当な溶媒に溶解した溶液(以下、生理活性物質含有溶液)として用いられる。ここで使用可能な溶媒としては、生理活性物質の溶媒として用いられる一般的な溶液をそのまま用いることができ、例えば、水、生理食塩水、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、MES緩衝液(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid)等を挙げることができる。ただし、結合処理において酸無水物官能基、もしくはその加水分解・活性化された官能基は一般に求核性官能基との反応性が高いため、Tris緩衝液(trihydroxymethylaminomethane)などのアミンを有する緩衝液は好ましくない。
生理活性物質を多孔質体に結合する結合処理では生理活性物質と結合・吸着する物質を介して結合させてもよい。具体的にはニトリロトリ酢酸誘導体(NTA)、イミノジ酢酸誘導体(IDA)を酸無水物化表面に結合させ、そこに複数のヒスチジン残基を含むペプチドタグを有するタンパク質を固定化させる方法が挙げられる。
生理活性物質は該多孔質体表面の荷電と逆の荷電を有する場合に該多孔質体表面に濃縮され、その結合効率が上昇する。酸無水物官能基はその一部が分解するとカルボキシル基を有するため、およそpH3以上の溶液が接触している場合その表面は負に帯電していると考えられる。そのため、溶液のpHが生理活性物質の等電点より低くかつ3以上である場合、生理活性物質は溶液中で正に帯電して、該多孔質体表面と逆の電荷を有することになるので、その結合効率が高まる。そのため、溶液のpHは3以上かつ生理活性物質の等電点未満とすることは、結合量を高めることができる観点から、好ましい。
結合処理後において、非特異的吸着を抑制する観点から加水分解処理を行うことが好ましい。この加水分解処理によって、未反応の酸無水物官能基がカルボキシル基となるので、効果的に非特異的吸着が抑制される。
加水分解処理は、酸無水物官能基を分解してカルボキシル基を生成する従来公知の方法で行うことができ、一般に、20℃〜100℃の水溶液を用いて行われる。加水分解反応を完全の完了させるためにアルカリ性もしくは酸性の水溶液を用いることが好ましく、特にpH10以上のアルカリ水溶液を用いることがより好ましい。具体的には1mM〜1MのNaOH水溶液、KOH水溶液などが挙げられる。この場合、反応性が高いため、10分以内の処理で充分である。
ただし、結合した生理活性物質の活性を保持する観点からはpH5〜9のマイルドな水溶液が好ましく用いられる。具体的には純水、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液などが挙げられる。更に、簡易に操作する観点からは水蒸気雰囲気中に保持する方法も挙げられる。これらのマイルドな方法の場合は10分以上処理することが好ましい。これにより、酸無水物官能基から二つのカルボキシル基が生成される。加水分解処理が進行したことの指標としては、処理後の多孔質体の水などに対する接触角を測定する方法が挙げられる。
本発明の担体の製造方法においけるブロッキング剤を用いたブロッキング工程は、多孔質体をシランカップリング剤で処理する工程の後に含まれる。このブロッキング工程において、ブロッキング剤が多孔質体に固定化される。ブロッキング工程は、シランカップリング剤による処理後であればよく、生理活性物質を固定化した直後、加水分解処理後、生理活性物質の固定化と同時などが挙げられる。また、生理活性物質の固定化後にブロッキング剤固定化処理を行うことで加水分解処理も同時に行うことも可能である。
ブロッキング処理は、ブロッキング剤を多孔質体に接触させればよい。ブロッキング剤の種類及び濃度並びに多孔質体の種類等によって異なるが、一般にブロッキング処理は、充分に反応させる観点から0.5分〜120分であることが好ましく、1分〜30分であることが更に好ましい。またブロッキング処理は、一般に0℃〜60℃、生理活性物質の安定性の観点から3℃〜30℃の温度で行われるが、通常、室温(約25℃)で行えばよい。
ブロッキング剤は、ブロッキング剤の種類によっても異なるが、一般に0.1質量%〜10質量%、効率の観点から好ましくは0.3質量%〜3質量%の濃度で使用できる。この場合の溶媒としては、通常この用途に用いられる水溶性溶媒をそのまま使用することができ、生理活性物質の結合処理に用いられるような溶媒、例えば水、生理食塩水、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、MES緩衝液(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid)等を同様に挙げることができる。
上記のようにして得られた担体は、表面に生理活性物質を充分量固定化可能なものである。担体表面に固定化される生理活性物質の量は、この目的のために通常用いられる方法によって確認することができ、例えば、蛍光物質を用いた蛍光測定方法や、放射性同位元素を用いたRI法を挙げることできる。
本発明の担体は、ブロッキング剤を表面に有するため非特異的吸着量を充分に低減したものであると共に、表面に固定された生理活性物質による特異的な結合量も良好なものとすることができる。この結果、表面に高密度に生理活性物質が固定化されて特異的結合信号(S)と、非特異的吸着量抑制によるバックグラウンド(N)との比(S/N比)が充分に大きくなる。
従って、多孔質体上の生理活性物質に特異的な分子の検出や分析に有用であり、特に、微量な分析や、微細な相互作用の検出など、生理活性物質に対する高い特異性が要求される各種のマイクロアレイや、バイオセンサー等に適している。
また、本発明の担体は、三次元構造を有する多孔質で構成されているので、試料液等を一方向又は多方向に展開しながら、特異的吸着を検出するため等に用いられるイムノクロマトグラフ用の多孔質体として特に有利である。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)無水コハク酸化ガラスメンブレンの作製
シランカップリング剤として3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(Gelest製)を2mmol/lで含む脱水キシレン溶液に、予めUV/オゾン処理後に脱水キシレンで洗浄されたガラスメンブレン(Whatman製GF/A 10mm×35mm、孔径(粒子捕捉)1.6μm)を浸漬させ、室温で攪拌させながら1時間反応させた。反応させたガラスメンブレンを脱水キシレンで2回、アセトンで2回浸漬洗浄を行った後、乾燥させてアセトンを飛ばした。本ガラスメンブレンを無水コハク酸化メンブレン(単に「メンブレン」ということもある。)と呼ぶ。
(2)無水コハク酸化メンブレンのブロッキング
上記(1)で作製された無水コハク酸化メンブレンを、100mMのNaOH水溶液、PBS(リン酸バッファー)、純水の順で各30秒ずつ浸漬させた。取り出した無水コハク酸化メンブレンから軽く水分を除いて下記のブロッキング溶液、もしくは純水をそれぞれ150μl染み込ませた。
1%BSA(牛血清アルブミン シグマアルドリッチ製)のPBS溶液
N−102(日本油脂製ブロッキング剤 原液をそのまま)
NanoBioBlocker(ナノビオテック製ブロッキング剤 原液をそのまま)
室温で1時間静置させてブロッキング処理を行った後、PBS、純水の順で30秒ずつ浸漬洗浄を行った。なお、N−102は合成化合物系のブロッキング剤で非特異的吸着を抑制する水溶性ポリマーと吸着性基を有すると考えられる。また、NanoBioBlockerはポリエチレングリコールとオリゴアミンが結合した化合物であることが予想される。
(3)無水コハク酸化ガラススライドの作製
無水コハク酸化メンブレンと同様に、ガラススライド(松浪硝子工業製白縁磨)に対してシランカップリング剤の反応と洗浄を行った。本ガラススライドを無水コハク酸化スライド(単に「スライド」ということもある。)と呼ぶ。また、メンブレンと同様にブロッキング処理を行った。
(4)非特異的吸着量の解析
上記のブロッキング処理済みの無水コハク酸化メンブレン、無水コハク酸化スライドに対して、10nMに調製したCy5化CRP(オリエンタル酵母製CRPに対してGEヘルスケアバイオサイエンス製Cy5で標識を行い精製した物)150μlを染み込ませた、もしくは滴下した。室温、高湿かつ暗環境中で1時間静置する。PBSで2回、純水で2回、浸漬洗浄を行い、FLA−8000(富士フイルム製)で蛍光強度を測定した(635nm励起/675nm検出)。各種ブロッキング処理を行ったメンブレン、スライドにおける蛍光強度(非特異低吸着量)をブロッキング処理の代わりに純水を用いた場合の値との比として算出した。即ち、この数値が1を超えるものは、ブロッキング処理によって非特異的吸着量が上昇したことを示し、数が小さいほど、ブロッキング処理による非特異的吸着の抑制幅が大きいことを示す。結果を表1に示す。
表1に示されるように、無水コハク酸化メンブレンでは、非特異的吸着量の比は、ブロッキング剤の種類を問わず1以下であり、0.02〜0.17となった。このことは、多孔質体を用いた本発明に相当する担体では、ブロッキング処理によって非特異的吸着量が減少したことを示している。一方、無水コハク酸化スライドにおいてはブロッキング処理を行わなかった場合に比べてブロッキング処理を行った場合、いずれのブロッキング剤を用いても1.02〜3.5であり、ブロッキング剤の効果が充分に発揮されず、非特異的吸着量が上昇することがわかった。このことから非多孔質表面において無効、もしくは逆効果であったブロッキング剤の非特異的吸着抑制効果が多孔質においては効果的であることが示された。
[実施例2]
実施例1と同様に作製した無水コハク酸化メンブレンに10mM、pH5.0の酢酸バッファーで0.1mg/mlに調製した抗CRPモノクローナル抗体(Fitzgerald製、#701289)を3μl滴下し、室温、高湿かつ暗環境中で1時間反応させた。0.1MのNaOH、リン酸バッファー(PBS)、純水の順で浸漬洗浄させた後、下記のブロッキング溶液、もしくは純水を150μl染み込ませた。
1%BSA pH5(PBS溶液)
1%BSA pH7(酢酸バッファー溶液)
1%カゼイン(TBS溶液:PIERCE製)
N−102(日本油脂製ブロッキング剤原液をそのまま)
NanoBioBlocker(ナノビオテック製ブロッキング剤原液をそのまま)
室温で1時間静置させてブロッキング処理を行った後、PBS、純水の順で30秒ずつ浸漬洗浄を行った。
抗体固定化処理、ブロッキング処理済みの無水コハク酸化メンブレンに対して、150μlのCy5化CRP(10nM PBS溶液)を染み込ませた。室温、高湿かつ暗環境中で1時間静置した。PBSで2回、純水で2回ずつ浸漬洗浄を行い、FLA−8000で蛍光強度を測定した(635nm励起/675nm検出)。抗CRP抗体を固定化した部位におけるCRP結合量(信号値:S)と固定化しなかった部位におけるCRPの非特異的吸着量吸着量(ノイズ:N)を測定した。また、その比率(S/N比)を算出した。結果を表2に示す。またブロッキングなしの場合とNanoBioBlockerを用いた場合における蛍光イメージ図を図1に示す。
結果を表2に示されるように、ブロッキング処理を行ったサンプルにおける非特異的吸着量(N)はブロッキング処理なしのサンプルに比べて1/6〜1/50と大幅に減少した。また、結合量(S)は全てのブロッキング処理サンプルにおいてブロッキング処理なしのサンプルと比較して1.5倍以上に向上していることが確認された。更に、S/N比はブロッキングなしの場合には約0.5であり、検出が行えていないのに対して、ブロッキング処理を行ったサンプルでは4.4〜45となり充分に検出が行えていることが示された。
また図1において、ブロッキングを行った場合(図1A)では、Cy5化CRPを滴下した部分の蛍光はより強くなっており、また周辺部の蛍光強度は低く抑えられている。この結果、蛍光発色している部分がより鮮明に見える。これに対してブロッキングを行っていない場合(図1B)では、Cy5化CRP滴下部分の蛍光強度は、ブロッキングを行った場合よりも低く、その一方で、周辺の非特異吸着による蛍光が強くなっていた。
[実施例3]
実施例2と同様に無水コハク酸化メンブレンに抗CRP抗体(Fitzgerald製、#7111422)を固定化し、ブロッキング処理を行った。ただし、ブロッキング処理はNanoBioBlocker、N−102を用いた。
1%BSAを含むPBSで100nMに調製したFITC化抗CRPモノクローナル抗体(Fitzgerald製、#701289を同仁化学研究所製FITCで標識、精製を行った物)と、各濃度(10pM〜10nM)に調製したCRPとを等量で混合し、予め1時間静置して反応させた。抗原・抗体混合溶液を抗体固定・ブロッキング処理済みメンブレンに200μl染み込ませた。室温、高湿かつ暗環境中で1時間静置した。PBSで2回、純水で2回ずつ浸漬洗浄を行い、FLA−8000で蛍光強度を測定した(473nm励起/530nm検出)。なおFLA−8000によるノイズの許容限界は1000とする。
抗CRP抗体を固定化した部位におけるFITC化抗CRP抗体結合量(信号値:S)と固定化しなかった部位における非特異的吸着量吸着量(ノイズ:N)を測定した。また、その比率(S/N比)を算出した。結果を表3に示す。
表3に示されるように、いずれのブロッキング剤を用いても非特異的吸着量(N)は全ての条件において検出限界(1000)以下であった。また、結合量(S)は、NanoBioBlockerを用いた場合は抗原濃度10pM以上において、N−102を用いた場合は抗原濃度1nM以上において抗原濃度依存的に上昇することが示された。
[実施例4]
実施例1と同様に無水コハク酸化メンブレンを作製し、100mM NaOH水溶液、PBS、純水の順で各30秒ずつ浸漬させた。続いて一部を70℃で1時間乾燥させた(ベーキング処理)。上記のメンブレンの一部、また無処理のガラスメンブレンに対して実施例1と同様にブロッキング処理を行った。ただしブロッキング剤はNanoBioBlockerを用いた。更に実施例1と同様にCy5化CRPの非特異的吸着量を測定した。結果を表4に示す。
表4に示されるように、ベーキング処理ありの条件においてもブロッキング処理によって非特異的吸着は大幅に抑制されるが、ベーキング処理はしない場合の方がより吸着抑制能が高いことから、ベーキング処理を行わない方がより好ましいことが示された。
[実施例5]
実施例2と同様に無水コハク酸化メンブレンに抗hCG抗体を固定化し、ブロッキング処理を行った。ただし、ブロッキング処理は1%BSA、NanoBioBlockerもしくは純水(ブロッキングなし)をそれぞれ用いた。抗体固定化・ブロッキング済みメンブレンをイムノクロマトキットに組み込み、1%BSAを含むPBSで180pMに調製したhCG溶液で展開した。
ただし、hCG溶液は抗体固定化メンブレン中を展開する前に抗hCG抗体固定化金コロイドが保持されたガラスパッド中を通過し、金コロイドを懸濁しながら展開する。
これによってメンブレンに固定化された抗体とhCG抗原と金コロイドに固定化された抗体との3者でサンドイッチ構造が形成されるため、抗体固定化部への金コロイド残存量によって抗原の有無を検出することができる。本手法をイムノクロマトと呼ぶ。
抗体固定化部への金コロイド残存量(S)とその周囲への金コロイド残存量(N)を撮影した画像に対してAdobe Systems社製Photoshopを用いてマゼンタの輝度を解析することによって定量を行った。ただし、本値はオフセット値を取り除けていない可能性があるため、S/N比として低く見積もられている可能性がある。結果を表5に、またその時の画像を図2A,B,Cに示す。
表5に示されるようにブロッキング処理なしの場合はS/N比が1を切って0.62となり、抗体固定化部の方が周囲より金コロイド残存量が少なくなる結果となった。一方、BSA、NanoBioBlockerでブロッキング処理を行った結果ではSが上昇し、Nが抑制されることによって、S/N比が1以上となり優位に検出できることが示された。このように金コロイドを用いたイムノクロマトによる評価系においても本発明の優位性が示された。
本発明の実施例2にかかるブロッキング処理を行ったメンブレンのCy5化CRPの検出結果を示す蛍光イメージ像である。 本発明の実施例2にかかるブロッキング処理を行っていないメンブレンのCy5化CRPの検出結果を示す蛍光イメージ像である。 本発明の実施例5にかかるBSAブロッキング処理を行ったメンブレンにおけるイムノクロマト結果を示すイメージ像である。 本発明の実施例5にかかるNanoBioBlockerブロッキング処理を行ったメンブレンにおけるイムノクロマト結果を示すイメージ像である。 本発明の実施例5にかかるブロッキング処理を行わなかったメンブレンにおけるイムノクロマト結果を示すイメージ像である。

Claims (11)

  1. 下記一般式(I)で表される酸無水物官能基含有シランカップリング剤で処理され、ブロッキング剤が固定化された多孔質体を含む担体。

    (式(I)中、Rは、3価の直鎖又は分岐の脂肪族基又は芳香族基を表し、Rは、C〜C20の置換又は非置換の、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基又はアルキルアリーレン基を表し、Rは、水素原子又はC〜C10のアルキル基を表し、Xは、アルコキシ基(−OR)、ハロゲン原子又はアシロキシ基(−OOCR)であって、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC〜C10のアルキル基を表し、nは1、2、もしくは3を表し、mは(3−n)の整数を表す。)
  2. 前記ブロッキング剤が、水溶性高分子及び水溶性タンパク質からなる群より選択された少なくとも1種を部分構造として含んでいる請求項1記載の担体。
  3. 前記ブロッキング剤が、アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ホスホリルコリン基含有高分子、多糖、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、双性イオン含有ポリマー、ポリビニルピロリドンからなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2記載の担体。
  4. 前記多孔質体の表面が無機酸化物又は無機窒化物である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の担体。
  5. 前記多孔質体が、1nm〜1mmの孔径を有するものである請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の担体。
  6. 生理活性物質が、前記多孔質体の表面に結合している請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の担体。
  7. イムノクロマトグラフ用担体である請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の担体。
  8. 多孔質体を、下記一般式(I)で表される酸無水物官能基含有シランカップリング剤で処理すること、
    前記シランカップリング剤で処理された多孔質体に、ブロッキング剤を接触させること、
    を含む担体の製造方法。

    (式(I)中、Rは、3価の直鎖又は分岐の脂肪族基又は芳香族基を表し、Rは、C〜C20の置換又は非置換の、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基又はアルキルアリーレン基を表し、Rは、水素原子又はC〜C10のアルキル基を表し、Xは、アルコキシ基(−OR)、ハロゲン原子又はアシロキシ基(−OOCR)であって、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC〜C10のアルキル基を表し、nは1、2、もしくは3を表し、mは(3−n)の整数を表す。)
  9. 前記ブロッキング剤との接触前に、前記酸無水物官能基に対して前記生理活性物質を直接接触させ結合することを更に含む請求項8記載の担体の製造方法。
  10. 前記生理活性物質が結合した前記担体に対して加水分解処理を行う請求項9記載の担体の製造方法。
  11. 前記シランカップリング剤との接触後の担体を、0℃〜60℃の温度範囲下に保持しながら、前記酸無水物官能基に対する前記生理活性物質の結合処理を行うこと、
    を含む請求項8〜請求項10のいずれか1項記載の担体の製造方法。
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