JP2009227327A - チップ型電子部品収納用台紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、多層板紙製のチップ型電子部品収納用台紙において、チップ部品を収納する角孔内部のケバ発生と裏面のバリの少ないチップ型電子部品収納用台紙を提供する。
【解決手段】
チップ型電子部品を収納するためのキャビティが複数形成されたチップ型電子部品収納用台紙であって、紙基材が多層板紙構造を有し、裏層に含まれるパルプ繊維の保水度(JAPAN TAPPI No.26)が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下であり、チップ型電子部品を格納する角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合が87%以上であることを特徴とするチップ型電子部品収納用台紙。
【選択図】なし

Description

本発明は紙製チップ型電子部品収納台紙に関するものである、詳しく述べるならば、本発明はパンチ加工後の角孔壁面のケバや裏面のバリの発生が少なく、チップ型電子部品の挿入、取り出し時にトラブルが発生することがないチップ型電子部品収納台紙に関するものである。
チップ型電子部品収納用台紙は、通常、台紙用板紙シートに下記の加工処理を施してチップ型電子部品のキャリアに形成される。
(1)台紙用板紙シートを所定の幅にスリットする。
(2)形成された板紙テープに所定大きさの角孔(凹部状又は透孔)と丸孔(透孔)を形成する。角孔はチップ型電子部品収納用であり、丸孔は充填機内において、電子部品を収納している台紙を移動させるために用いられる送り用である。
(3)台紙の裏面(ボトム側)にカバーテープを接着して、角形透孔の底部開口部を閉塞し、それによって角形凹部を形成する。なお、角形透孔を開けないで、台紙に所定の大きさの角状エンボンス加工をして角形凹部を形成することもあり、この場合、このボトム側カバーテープの接着工程は省かれる。台紙とカバーテープを接着する方法は、台紙とカバーテープを重ね、カバーテープ上から熱と圧力を加えて接着する、いわゆるヒートシール法で行われる。
(4)前記角形凹部中に、その封止されていない開口部を通してチップ型電子部品を充填する。
(5)台紙の表面(トップ側)にヒートシール法によってカバーテープを接着して、電子部品を収納している台紙を作製する。
(6)この電子部品収納台紙を所定の大きさのカセットリールに巻き付け、チップ型電子部品と共に出荷する。
(7)最終ユーザーで台紙の表面からトップ側カバーテープを剥がし、前記角孔からチップ型電子部品を取り出す。
前記の用途に対応して、収納台紙に求められる品質として、(1)充填したチップ部品に悪影響を及ぼさないこと、(2)カバーテープが良好に接着されるように、台紙の表面が平滑性を有すること、及び(3)紙に対する各種処理に耐え得る機械的強度を有していること等が挙げられる。
収納台紙の品質欠陥として問題となるものの1つに、角孔壁面のケバや裏面のバリの存在があげられる。ケバとは、角孔壁面に発生するササクレ状のパルプ繊維のことであり、バリとは裏面あるいは裏面に近い角孔部分に残るパルプ繊維の塊のことである。角孔壁面のケバや裏面のバリが発生すると、テーピング機でのチップ型電子部品挿入時にチップ型電子部品が収まらずに斜めに挿入される、あるいはマウンターでのチップ型電子部品取り出し時に角孔壁面ササクレ状のパルプ繊維にロックされて吸引ノズルで取り出せないというトラブルの原因となる。
さらに、最近になりテーピング機のテーピング速度が飛躍的に向上している。テーピング速度の向上に伴い、トラブルが発生しやすい傾向にあり、チップ型電子部品サイズの精度向上はもちろんのこと、角孔サイズの精度向上が望まれていた。
これまで、角孔内のケバ防止手段としては、特開平6−127566号公報(特許文献1参照)、特開平10−218281号公報(特許文献2参照)、特開平11−165786号公報(特許文献3参照)においては、角孔内部に樹脂層を設ける方法によりケバ防止を行っているが、ケバの防止は不十分であるだけでなく、裏面のバリの改善は不可能である。特開2006−182417号公報(特許文献4参照)ではラジカル重合反応により硬化する樹脂を使用して角孔のケバを防ぐ方法が提案されているが、本方法でも裏面ケバの改善は困難であり、更にコストが高く実用的ではない。また、特開平9−221192号公報(特許文献5参照)では台紙表面にラミネート層を設けてパンチ加工することにより、角孔内壁を樹脂で覆う方法を行っているが、樹脂層は角孔を十分に覆うことはできず、更に裏面バリは、表面のラミネート層の存在により逆に悪化する傾向にある。一方、特開2006−273372号公報(特許文献6参照)では、角孔のMD方向の最狭部の最長部に対する比率を規定しているが、この発明では角孔の形成はなくプレス成形による凹部のケバを改善する方法であることから、貫通の角孔のケバ及び裏面バリの改善にはなっていない。
一方、従来から裏面のバリの除去方法としてパンチ加工後に、バーナーや電気ゴテなどによりバリを焼き消す方法が採用されているが、十分に焼き消すことはできず、更にコストアップになる問題を抱えていた。
特開平6−127566号公報 特開平10−218281号公報 特開平11−165786号公報 特開2006−182417号公報 特開平9−221192号公報 特開2006−273372号公報
本発明は、多層板紙製のチップ型電子部品収納用台紙において、チップ部品を収納する角孔内部のケバ発生と裏面のバリの少ないチップ型電子部品収納用台紙を提供しようとするものである。
本発明者らは従来の多層板紙からなるチップ型電子部品収納台紙において角孔内壁のケバの状態と裏面に生じるバリの状態を検証したところ、角孔内壁はパンチ金型によって切断されているのではなく、特に裏面に近い部分ではパルプ繊維が引き抜かれ削げ落とされていることをみつけ、寸法精度良く削ぎ落ちやすい紙層構造をつくることで角孔内側部のケバ発生と裏面のバリを少なくできることを見出し、裏面に近い紙層のパルプ繊維の結合力を下げることによって本発明を完成させた。
本発明はチップ型電子部品を収納するためのキャビティが複数形成されたチップ型電子部品収納用台紙であって、紙基材が多層板紙構造を有し、ボトムテープに接する裏層に含まれるパルプ繊維の保水度(JAPAN TAPPI No.26)が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下であり、チップ型電子部品を格納する表面の角孔A寸に対する裏面の角孔A寸の割合が87%以上であるチップ型電子部品収納用台紙である。
本発明のチップ型電子部品収納用台紙は、パンチ加工後の角孔寸法において、表面の角孔A寸に対する各孔裏面のA寸の割合が87%以上にすることにより、角孔壁面のケバや裏面のバリの発生が少なく、チップ型電子部品の挿入、取り出し時にトラブルが発生することが少ないという効果を有している。
本発明では、パンチ加工後の角孔寸法において、台紙のトップカバーテープに接する表面(以下表面とする)の角孔A寸に対する、台紙のボトムカバーテープに接する裏面(以下裏面とする)の角孔A寸の割合が87%以上であることが重要であり、さらに好ましくは90%以上である。本発明では、A寸とは角孔の短辺方向の長さを示す。ちなみに長辺方向はB寸と呼ばれる。A寸、B寸の測定は電子顕微鏡により角孔を観察し、表からの画像写真と裏からの画像写真により測定する。表面の角孔A寸に対する裏面の角孔A寸の割合が87%以上であれば高湿度環境下でパルプ繊維が膨潤して角孔壁面のケバや裏面のバリが大きく膨れても、チップ型電子部品の挿入、取り出しに悪影響を及ぼすことはない。表面の角孔A寸に対する裏面の角孔A寸の割合が87%未満の場合は、高湿度環境下の膨潤で角孔の大きさが小さくなるだけでなく、既に常温でも角孔壁面や裏面にケバやバリが存在し、チップ型電子部品の挿入、取り出し時にトラブルの原因となる。
本発明では、裏層に含まれるパルプ繊維の保水度が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下であることにより、表面のA寸に対する裏面のA寸の割合が87%以上の角孔を実現できる。チップ型電子部品収納用台紙のパンチ加工では、凹部を持つメス金型(あるいはダイ)に、台紙を介してオス金型を押し込むことによって角孔が形成される。本発明者らは、角孔壁面や裏面の電子顕微鏡観察によって、角孔形成時のパルプ繊維のせん断状態を明確にして本発明を達成するに至った。即ち、オス金型が台紙を押し切る際に、表面に近い部分ではパルプ繊維が切断されているが、裏面に近い部分では、紙層がちぎられるように丸ごと削げ落とされていた。裏層を削げ落ちやすいパルプ繊維で構成することにより、パンチ加工時の負荷が軽減され良好な角孔を形成することができるが、逆に裏層が削げ落ちない状態になると、裏下層や中層の切断や削げ落ちに影響する。本発明では、オス金型によって削げ落ちやすい紙層構造とパルプ繊維を検討した結果、裏層に含まれるパルプ繊維の保水度が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下であることが重要であることを見出した。
パルプ繊維の保水度は、膨潤度の指標であり、膨潤繊維中に取り込まれて保持された水分と繊維内及び繊維間に存在する自由水とを、一定の遠心力により区別することで測定される。裏層に含まれるパルプ繊維の保水度が160%よりも大きいとパルプ繊維間結合が強くなりやすく削げ落ち性が悪化する。保水度はあまり低すぎると繊維の柔軟性がなくなり、抄造時にプレスで搾る際に繊維同士の結合面積が小さくなり、紙層内剥離又は、紙層間剥離しやすくなるため、135%を超えたものが好ましい。また、パルプ繊維幅が16.0μmよりも大きいと同様にパルプ繊維間結合が強くなってしまい削げ落ち性が悪化する。本発明では、保水度160%以下と平均パルプ繊維幅16.0μm以下を両立した場合において、最適な削げ落ち性を達成できる。
台紙の厚さ方向のパルプ繊維の配置の観点では、本発明では、裏層のパルプ繊維の保水度が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下であることが重要であるが、裏下層にも、保水度が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下のパルプ原料を用いてもかまわない。ただし、中層にまで及ぶ場合は、層間強度の低下の問題が発生し好ましくない。一般的には、使用する抄紙機によるが、層構成が全層で5層から9層であり、裏層の付量は30g/m2から100g/m2の範囲である。本発明において裏層の付量については、40〜70g/mが好ましい。40g/m2よりも少ない場合は、削げ落ち性が悪化する。ただし、この場合は、裏下層にも裏層と同様のパルプを使用することで削げ落ち性を良好にすることができる。一方、裏層が70g/m2を超える場合は、裏層の地合が悪化する恐れがあり好ましくない。
本発明のチップ型電子部品収納台紙に使用する原料パルプには特に制限はなく、化学パルプ(広葉樹、針葉樹)、機械パルプ、古紙パルプ、非木材繊維パルプ、合成パルプ等の各種パルプが使用できるが裏層または裏層および裏下層にはパルプ繊維の保水度が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下のパルプ繊維を使用する。パルプ繊維の保水度が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下を実現するパルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプを主なパルプとして使用し、木材の材種として、ユーカリ材、アカシア材が好ましく、ユーカリ材としては、ユーカリエグザータ、ユーカリグランディス、ユーカリデリガテンシス、ユーカリシトリオドラ、ユーカリライチョウNo.1が好ましく、アカシア材としてはアカシアメランシーから製造された広葉樹晒クラフトパルプが好ましい。これらの材種は、気象条件や土地などの生育環境の影響を受けにくく、パルプ繊維が細いという特徴を持ち、更にルンケル比が大きいため叩解時にルーメンが破壊されることが少ないためパルプ繊維間結合力が弱いだけでなく、パルプ繊維が細いことによりオス金型が紙層を削げ落とすときに応力を分散して伝播しやすく均一に削げ落ちるという特徴がある。尚、蒸解条件、晒条件などのパルプ化工程の条件については、何等制限を受けるものではない。
裏層または裏層及び裏下層には乾燥履歴を持つパルプを使用することが好ましい。乾燥履歴を持つパルプは、乾燥工程によりパルプ繊維表面の水酸基の割合が減少しているため、水素結合の形成能力が低く、パルプ繊維間結合の低減に有効である。
また、保水度は叩解条件により大幅に変化し、叩解を進めるほど保水度が大きくなる。保水度160%以下を達成するためには、フリーネスは400ml以上が好ましく、550mlを超えると繊維結合力の大幅な低下による層間強度と層内強度の低下の問題が発生するだけでなく、地合悪化によりパンチ加工性が大幅に低下するため好ましくない。叩解の方法としては粘状叩解よりも遊離状叩解を行った方がより好ましい。しかしながら本発明は、パルプ繊維の選定と叩解条件の調整で達成できるものであり何等制限を受けるものではない。
本発明では、カバーテープ剥離時のケバの発生を防ぐために台紙表面に表面処理剤を塗布する。本発明の表面処理剤は水溶性高分子を含有する。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、澱粉、ポリアクリルアミド、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−ビニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂などがあるが、本発明ではポリビニルアルコール、澱粉、ポリアクリルアミドから選ばれる少なくともひとつを含有する。ポリビニルアルコール、澱粉、ポリアクリルアミドはパルプ繊維の接着強度を効率よく安価に高めることができ、台紙表面への塗工適性も良好である事から好ましい。塗布量としては、0.1〜2.0g/m2である。0.1g/m未満ではケバ抑制は不十分であり、2.0g/m2より多い場合では効果が頭打ちになるばかりでなく、カバーテープが接着しなくなる。
また、表面処理剤にはカバーテープとの接着性を向上させ、さらに台紙表面の強度を高めるためにスチレン・マレイン酸樹脂、オレフィン・マレイン酸樹脂をも含有させる。スチレン・マレイン酸樹脂、オレフィン・マレイン酸樹脂は疎水基とカルボン酸のような親水基を有しており、台紙表面に塗工する事により、表面のカバーリングのほか、紙層中に浸透し、親水基であるカルボン酸がパルプ繊維と水素結合を形成し、パルプ繊維間を架橋した状態にし、繊維間結合を大幅に向上させると推察される。繊維間結合の向上により、カバーテープを剥がす際の抵抗力が向上し、剥離強度を強くするほかケバとなる繊維の抜けを防止出来る。
本発明では、スチレン・マレイン酸又はオレフィン・マレイン酸の塗布・含浸量をコントロールすることにより、ケバ発生を抑制して必要なカバーテープの接着強度のレベルを得ることができる。表面処理剤にスチレン・マレイン酸又はオレフィン・マレイン酸を混合して塗布する場合、水溶性高分子との固形分比率は任意に調整できるが、スチレン・マレイン酸又はオレフィン・マレイン酸の塗布・含浸量は、0.01g/m2〜0.10g/m2の範囲が好ましい。スチレン・マレイン酸又はオレフィン・マレイン酸の塗布・含浸量が0.10g/mを超えても効果は頭打ちとなるためコスト的に好ましくなく、0.01g/mよりも少ないと効果が明確に発現しない。
本発明において、台紙表面に表面処理剤を塗布・含浸する手段としては、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーターやサイズプレスやキャレンダーコーター等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパーコーター等製紙製造設備が使用できる。中でも、サイズプレスやキャレンダーコーターのニップ圧調整が容易でより表面処理剤を深く浸透させやすいため好ましい。
本発明の紙製チップ型電子部品収納台紙を製造するための製造装置、製造条件に特に限定はなく、それぞれの製造装置に合わせた製造条件を選択し、本発明の製品を製造することができる。例えば、円網抄紙機、長網抄紙機での多層抄き合わせによって抄紙され、前述の内添薬品配合やコーターによる表面処理剤の塗布など外添によって薬品が添加されている表層を有する台紙が製造される。
本発明では、必要に応じてさらに種々の内添薬品を使用できる。例えば、ロジン系サイズ剤、スチレン・マレイン酸、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸など、天然および合成の製紙用の内添サイズ剤、各種紙力増強剤、濾水歩留り向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、タルク等の填料、染料等を使用することができる。
また、本発明ではボトムテープとの接着性およびケバ防止効果を向上させるために収納台紙の裏面に、ポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミド、アクリル系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、スチレン・イソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンー酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニルービニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂など必要な薬品を適宜塗布させることも可能である。さらに塗布手段についても、前述のように例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーターやサイズプレスやキャレンダーコーター等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパコーター等の設備使用が可能である。
本発明のチップ型電子部品収納台紙の坪量は、中に収納するチップ型電子部品の大きさにより決ってくるが、一般に200〜1000g/m程度である。このような坪量範囲であるため、抄造方法としては、地合いの取り易い多層抄きが好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、配合、濃度等を示す数値は、固型分又は有効成分の質量基準の数値である。加工条件、測定条件の詳細は下記の通りである。
<パンチ加工方法>
温度23℃、相対湿度50%の環境下で、試料を8mm幅のテープ状にスリットして、JIS C 0806−3に準拠し、日本オートマチック社製パンチ機(型番ACP505S)を使用して、4mm間隔で直径1.54mmのオス金型を用いて丸孔を開けると同時に、2mm間隔でCD方向(長辺方向:B寸)1.12mm、MD方向(短辺方向:A寸)0.62mmのオス金型を用いて角孔を形成した。
<角孔の電子顕微鏡観察による表面の角孔A寸に対する裏面の角孔A寸の割合>
電子顕微鏡でパンチ加工した角孔を観察して表と裏の画像写真を50倍で撮影し、角孔のA寸の長さを表裏共に測定した。表裏の角孔A寸の測定結果から、次の計算式によって表面の角孔A寸に対する裏面の角孔A寸の割合を算出した。表面の角孔A寸に対する裏面の角孔A寸の割合は値が大きいほど、裏面に近い紙層が綺麗に削げ落ちていることを示している。尚、A寸の測定は、表面は最長部、裏面は最狭部を測定した。N数は20個とした。
表面の角孔A寸に対する裏面の角孔A寸の割合(%)
=裏面の角孔A寸の長さ/表面の角孔A寸の長さ×100
表2に電子顕微鏡観察写真の一例を示す。
<保水度>
裏層用パルプ及びパンチ加工後の台紙を使用して、JAPAN TAPPI No.26に準じて測定した。絶乾で0.5g相当のパルプマットを形成し、200メッシュ金網を有する金属カップろ過器で遠心分離機(型式H−103N:国産遠心器社製)を用いて3000Gの遠心力で15分間脱水して、湿潤パルプの質量を求める。次にこのマットを105±3℃で恒量まで乾燥し、絶乾質量を求める。保水度は次の式により算出した。
保水度(%)=〔遠心脱水後の湿潤パルプの質量(g)−パルプの絶乾質量(g)〕/パルプの絶乾質量(g)×100
<平均パルプ繊維幅>
裏層用パルプ及びパンチ加工後の台紙を使用して、JIS P 8220によりパルプの離解を行い、Kajaani社製の繊維長分布測定機「Fiber Lab」にて測定を行った。測定繊維本数は10000本以上とした。
<パンチ加工後チップ型電子部品収納用台紙の裏層の剥離方法と調成方法>
前述のパンチ加工後のチップ型電子部品収納用台紙を使用して、市販のα−アミラーゼ(ファンガミル、ノボザイムズ社製)を水で10倍に希釈した溶液の中に24時間浸漬し、十分に台紙が湿潤して層間で剥離しやすい状態になった後に、裏層を剥がして分離し、水で十分に水洗後に標準離解機で離解して保水度及び平均パルプ繊維長測定用のパルプを調成した。
<実装テスト>
縦1.0mm、横0.5mmのコンデンサーチップを充填し、次いで、表面にカバーテープを貼る操作は、日東工業(株)製の「NST−35」を使用して行った。表面にカバーテープを貼る条件は、ヒートシール温度190℃、ヒートシール圧力3.5kg、テーピング速度3800タクト/minであった。次に、温度27℃、相対湿度65%の環境下で松下電器産業(株)製の「Panasert MSR」を使用し、600個/minの実装速度で2万個を実装して、その間にコンデンサーチップの飛び出しによる実装ミスの回数をカウントした。
原料とした広葉樹晒クラフトパルプについて
<LBKP(A)>
ユーカリグランディス材から製造されたドライパルプをLBKP(A)とした。未叩解の保水度は89.9%、平均パルプ繊維幅は15.1μmであった。
<LBKP(B)>
ユーカリエグザータとユーカリライチョウNo.1の50:50混合材から製造されたパルプをLBKP(B)とした。未叩解の保水度は131.9%、平均パルプ繊維幅は15.4μmであった。
<LBKP(C)>
ユーカリライチョウNo.1とユーカリグロブラスの90:10混合材から製造されたパルプをLBKP(C)とした。未叩解の保水度は135.0%、平均パルプ繊維幅は14.6μmであった。
<LBKP(D)>
アスペン材から製造されたドライパルプをLBKP(D)とした。未叩解の保水度は100.0%、平均パルプ繊維幅は19.7μmであった。
<LBKP(E)>
オーク材から製造されたドライパルプをLBKP(E)とした。未叩解の保水度は98.3%、平均パルプ繊維幅は18.2μmであった。
実施例1
表層、中層、裏層でパルプを使い分け、表層用にはLBKP(A)100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス430mlに調成した。中層用にはNBKP20%(ラジアータパイン材)、LBKP(B)80%の配合で混合叩解を行いカナディアンスタンダードフリーネス380mlのパルプを調成し、裏層用にはLBKP(A)100%を叩解しカナディアンスタンダードフリーネス430mlのパルプを調成した。裏層用のLBKP(A)の保水度は148%、平均パルプ繊維幅は15.3μmであった。それぞれのパルプスラリーに硫酸バンドを添加してpH6.0に調整し、内添紙力増強剤としてポリアクリルアミド(荒川化学製ポリストロン−1250)を0.3%添加した。以上の条件のパルプスラリーを円網抄紙機で、それぞれ表層100g/m2、中層300g/m2、裏層100g/m2で抄併せ、抄紙機に設置されたカレンダーで平滑化処理した後、ポリアクリルアミド(荒川化学製ポリマセット−512)を表面処理剤カラー温度を60℃に調整し、カラー濃度3.6%で塗布し、坪量500g/m2、厚さ0.60mmのチップ型電子部品収納用台紙を製造した。このチップ型電子部品収納用台紙にパンチ加工を施し、角孔の電子顕微鏡観察による角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合を測定すると共に、実装テストを行った。また、剥離した裏層のパルプ繊維の保水度、平均パルプ繊維幅を測定した。
実施例2
裏層用パルプとしてLBKP(A)を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネスを470mlに調成した。このときの裏層用のLBKP(A)の保水度は138%、平均パルプ繊維幅は15.0μmであった。これ以外は実施例1と同様にして坪量500g/m2、厚さ0.60mmのチップ型電子部品収納用台紙を製造した。このチップ型電子部品収納用台紙にパンチ加工を施し、角孔の電子顕微鏡観察による角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合を測定すると共に、実装テストを行った。また、剥離した裏層のパルプ繊維の保水度、平均パルプ繊維幅を測定した。
実施例3
裏層用のパルプとしてLBKP(C)を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス400mlに調成した。このときの裏層用のLBKP(C)の保水度は157%、平均パルプ繊維幅は14.7μmであった。これ以外は実施例1と同様にして坪量500g/m2、厚さ0.60mmのチップ型電子部品収納用台紙を製造した。このチップ型電子部品収納用台紙にパンチ加工を施し、角孔の電子顕微鏡観察による角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合を測定すると共に、実装テストを行った。また、剥離した裏層のパルプ繊維の保水度、平均パルプ繊維幅を測定した。
実施例4〜5
裏層用パルプとしてLBKP(B)100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス500ml(実施例4)、450ml(実施例5)に調成した。このときの裏層用のLBKP(B)の保水度は145%(実施例4)、157%(実施例5)、平均パルプ繊維幅は15.4μm(実施例4)、15.5μm(実施例5)であった。これ以外は実施例1と同様にして坪量500g/m2、厚さ0.60mmのチップ型電子部品収納用台紙を製造した。このチップ型電子部品収納用台紙にパンチ加工を施し、角孔の電子顕微鏡観察による角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合を測定すると共に、実装テストを行った。また、剥離した裏層のパルプ繊維の保水度、平均パルプ繊維幅を測定した。
比較例1
裏層用パルプとしてLBKP(D)100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス400mlに調成した。このときの裏層用のLBKP(D)の保水度は167%、平均パルプ繊維幅は20.4μmであった。これ以外は実施例1と同様にして坪量500g/m2、厚さ0.60mmのチップ型電子部品収納用台紙を製造した。このチップ型電子部品収納用台紙にパンチ加工を施し、角孔の電子顕微鏡観察による角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合を測定すると共に、実装テストを行った。また、剥離した裏層のパルプ繊維の保水度、平均パルプ繊維幅を測定した。
比較例2
裏層用パルプとしてLBKP(E)100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス450mlに調成した。このときの裏層用のLBKP(E)の保水度は158%、平均パルプ繊維幅は19.4μmであった。これ以外は実施例1と同様にして坪量500g/m2、厚さ0.60mmのチップ型電子部品収納用台紙を製造した。このチップ型電子部品収納用台紙にパンチ加工を施し、角孔の電子顕微鏡観察による角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合を測定すると共に、実装テストを行った。また、剥離した裏層のパルプ繊維の保水度、平均パルプ繊維幅を測定した。
比較例3
裏層用パルプとしてLBKP(B)100%を叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス370mlに調成した。このときの裏層用のLBKP(B)の保水度は174%、平均パルプ繊維幅は14.9μmであった。これ以外は実施例1と同様にして坪量500g/m2、厚さ0.60mmのチップ型電子部品収納用台紙を製造した。このチップ型電子部品収納用台紙にパンチ加工を施し、角孔の電子顕微鏡観察による角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合を測定すると共に、実装テストを行った。また、剥離した裏層のパルプ繊維の保水度、平均パルプ繊維幅を測定した。
前記実施例および比較例の角孔の電子顕微鏡観察による角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合、各裏層用パルプの保水度、平均パルプ繊維幅、剥離した裏層のパルプの保水度、平均パルプ繊維幅、実装テスト結果を表1、実施例1と比較例3の電子顕微鏡の角穴写真を表2に示す。
Figure 2009227327
Figure 2009227327
表1に示されるように、本発明に係わる実施例1〜5のチップ型電子部品収納台紙は、角孔のケバ、バリが少ないことにより、実装テストによるミス回数が少ないという効果を有している。

Claims (1)

  1. チップ型電子部品を収納するためのキャビティが複数形成されたチップ型電子部品収納用台紙であって、紙基材が多層板紙構造を有し、裏層に含まれるパルプ繊維の保水度(JAPAN TAPPI No.26)が160%以下であり、かつ平均パルプ繊維幅が16.0μm以下であり、チップ型電子部品を格納する角孔表面のA寸に対する角孔裏面のA寸の割合が87%以上であることを特徴とするチップ型電子部品収納用台紙。
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