(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイカストマシン1を示す側面図である。なお、以下に説明する各種の実施形態において、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
ダイカストマシン1は、固定金型103及び移動金型105を含む主型101を保持し、主型101の型開閉及び型締めを行う型締装置3と、中子107を主型101に出し入れする中子引抜装置5と、主型101に形成されたキャビティCaに成形材料としての溶湯(溶融状態の金属材料)を射出、充填する射出装置7と、キャビティCaに充填された溶湯が凝固して形成された成形品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置9とを有している。
型締装置3は、例えば、トグル式の型締装置により構成されており、固定金型103を保持する固定ダイプレート11と、移動金型105を保持する移動ダイプレート12と、移動ダイプレート12の、固定ダイプレート11とは反対側に配置されるリンクハウジング13と、固定ダイプレート11及びリンクハウジング13に掛架される複数本のタイバー14と、リンクハウジング13に設けられた型締シリンダ装置15と、型締シリンダ装置15の駆動力を移動ダイプレート12に伝達するトグル機構17とを有している。型締シリンダ装置15の駆動力がトグル機構17を介して移動ダイプレート12に伝達されることにより、移動ダイプレート12が型開閉方向(図1の紙面左右方向)に移動して、型開閉及び型締めが行われる。
中子引抜装置5は、中子107を駆動する中子シリンダ装置19を有している。中子シリンダ装置19は、例えば、シリンダチューブが移動金型105に固定され、ピストンロッドが中子107に固定されている。なお、中子引抜装置5は、傾斜ピン等を有して構成されていてもよい。
射出装置7は、例えば、キャビティCaに連通するスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能な射出プランジャ23と、射出プランジャ23を駆動する射出シリンダ装置25とを有している。不図示のラドル等によりスリーブ21内に溶湯が供給され、射出プランジャ23がスリーブ21内をキャビティ側へ前進することにより、溶湯がキャビティCaに射出、充填される。
押出装置9は、移動金型105を背後から貫通して成形品を押し出す押出ピン27と、押出ピン27を駆動する押出シリンダ装置29とを有している。押出シリンダ装置29は、シリンダチューブが移動金型105に固定されており、ピストンロッドが押出ピン27に固定されている。なお、押出装置9は、シリンダチューブが押出ピンに、ピストンロッドが移動金型105に固定されていてもよい。
図2は、各種のシリンダ装置(型締シリンダ装置15、中子シリンダ装置19、射出シリンダ装置25及び押出シリンダ装置29)を含む液圧装置の構成の概要を示す図である。なお、図2では、図示の都合上、タンク39が2箇所に記載されている。
型締シリンダ装置15、中子シリンダ装置19及び押出シリンダ装置29は、単動式のシリンダ装置により構成されており、シリンダチューブ(15t等、各シリンダ装置の符号に、付加符号tを付して示す)と、シリンダチューブに摺動可能に収容されたピストン(15p等、各シリンダ装置の符号に、付加符号pを付して示す)と、ピストンに固定されたピストンロッド(15r等、各シリンダ装置の符号に、付加符号rを付して示す)とを有している。
シリンダチューブ内部のシリンダ室は、ピストンにより、ピストンロッド側のロッド側室(各シリンダ装置の符号に、付加符号aを付して示す)と、その反対側のヘッド側室(各シリンダ装置の符号に、付加符号bを付して示す)とに区画されている。型締シリンダ装置15、中子シリンダ装置19及び押出シリンダ装置29は、ヘッド側室及びロッド側室に選択的に作動液(例えば油)が供給されることにより駆動される。
射出シリンダ装置25は、例えば、直結形の増圧シリンダにより構成されており、射出プランジャ23に固定されたピストンロッド25rと、ピストンロッド25rに固定された射出用ピストン25pと、射出用ピストン25pの背後に配置された増圧用ピストン25ppと、射出用ピストン25p及び増圧用ピストン25ppを摺動可能に収容するシリンダチューブ25tとを有している。
ピストンロッド25rは、例えば、カップリング31(図1)を介して射出プランジャ23と同軸状に連結されている。なお、ピストンロッド25rは射出プランジャ23と一体的に形成されることにより射出プランジャ23に固定されていてもよい。射出用ピストン25pは、ピストンロッド25rの後端に固定されている。なお、ピストンロッド25r及び射出用ピストン25pは、別個に形成されて固定されていてもよいし、一体的に形成されることにより固定されていてもよい。
シリンダチューブ25tは、射出用ピストン25pが摺動するチューブ小径部25taと、チューブ小径部25taの後端に連続し、チューブ小径部25taよりも大径のチューブ大径部25tbとを有している。増圧用ピストン25ppは、チューブ小径部25taを摺動可能なピストン小径部25ppaと、チューブ大径部25tbを摺動可能なピストン大径部25ppbとを有している。
チューブ小径部25taの内部に形成されたシリンダ室は、射出用ピストン25pにより、ピストンロッド25r側のロッド側室25aと、その反対側のヘッド側室25bに区画されている。チューブ大径部25tbの内部に形成されたシリンダ室は、増圧用ピストン25ppのピストン大径部25ppbにより、ヘッド側室25b側の前側室25cと、その反対側の後側室25dとに区画されている。
ヘッド側室25bに作動液が供給されることにより、射出用ピストン25pは前進し、ひいては、射出プランジャ23はキャビティCa側へ前進する。また、後側室25dに作動液が供給されると、後側室25dの作動液の圧力が、増圧用ピストン25ppにより、ピストン小径部25ppaの受圧面積に対するピストン大径部25ppbの受圧面積の比に応じて増圧されてヘッド側室25bに伝達され、ひいては、射出プランジャ23によりキャビティCaの溶湯が増圧される。
なお、以下では、各種のシリンダ装置(15、19、25及び29)のシリンダチューブ、ピストンロッド、ピストン(射出シリンダ装置25では射出用ピストン)、ロッド側室及びヘッド側室を、付加符号(t、r、p、a、b)のみを付して(例えば、「ピストンロッドr」等)、各種のシリンダ装置間において区別しないことがある。
ダイカストマシン1は、各種のシリンダ装置に作動液を供給するために、ポンプ33と、ポンプ33を駆動するモータ(電動機)35と、ポンプ33から各種シリンダ装置への作動液の流れを制御するための液圧回路37とを有している。
ポンプ33は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。また、ポンプ33は、ロータやピストンの1周期の運動における吐出量が、固定された定容量ポンプであってもよいし、可変とされた可変容量ポンプであってもよい。ポンプ33は、1方向に作動液を吐出できればよいが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。ポンプ33は、例えば、タンク39に貯蓄された作動液をフィルタ41を介して吸引して吐出する。
モータ35は、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転するロータとを有している。モータ35は、直流モータであってもよいし、交流モータであってもよい。モータ35は、例えば、サーボモータにより構成されている。すなわち、モータ35には、モータ35の回転を検出するエンコーダ等のモータ用センサ43が設けられ、モータ用センサ43の検出値に基づいて、サーボドライバ(サーボアンプ)45(図3参照)によりモータ35のフィードバック制御がなされる。
液圧回路37は、各種のシリンダ装置(15、19、25及び29)に対応して、型締側方向制御弁47A、中子側方向制御弁47B、射出側方向制御弁47C及び押出側方向制御弁47D(以下、単に「方向制御弁47」といい、これらを区別しないことがある。)を有している。
方向制御弁47は、ポンプ33から各種のシリンダ装置への作動液の流れを許容又は禁止可能であるとともに、ポンプ33からの作動液の供給先をロッド側室aとヘッド側室bとの間で切換可能である。方向制御弁47は、例えば、4ポート3位置の切換弁により構成されている。具体的には以下のとおりである。
方向制御弁47は、3つの矩形の記号により示される3位置のうち、中央の位置(中立位置)においては、ポンプ33及びタンク39と、ヘッド側室b及びロッド側室aとの接続を遮断する。これにより、ポンプ33からヘッド側室b及びロッド側室aへの作動液の供給は禁止される。
方向制御弁47は、3つの矩形の記号により示される3位置のうち、紙面左側(射出シリンダ装置25では紙面右側)の位置においては、ポンプ33とヘッド側室bとを接続し、タンク39とロッド側室aとを接続する。ポンプ33によりヘッド側室bに作動液が供給されると、ピストンp及びピストンロッドrはシリンダチューブtから突出する方向へ前進する。ロッド側室aの作動液は、ピストンpに押し出されてタンク39に流れる。
方向制御弁47は、3つの矩形の記号により示される3位置のうち、紙面右側(射出シリンダ装置25では紙面左側)の位置においては、ポンプ33とロッド側室aとを接続し、タンク39とヘッド側室bとを接続する。ポンプ33によりロッド側室aに作動液が供給されると、ピストンp及びピストンロッドrは後退する。ヘッド側室bの作動液は、ピストンpに押し出されてタンク39に流れる。
方向制御弁47は、例えば、電磁式の制御機構が作動することにより位置が切り換えられるように構成されており、入力された電気信号に応じて切り換えられる。なお、型締側方向制御弁47A,中子側方向制御弁47B及び押出側方向制御弁47Dは、制御機構として電磁式の制御機構のみを有し、射出側方向制御弁47Cは、電磁式の制御機構及び液圧式の制御機構が順次作動する制御機構を有するなど、制御機構は、要求される性能に応じて適宜に構成されてよい。
なお、ポンプ33と、各種のシリンダ装置の方向制御弁47とは、ポンプ33から延びる流路が各種のシリンダ装置に対応して分岐して方向制御弁47に到達することにより接続されている。同様に、タンク39と、各種のシリンダ装置の方向制御弁47とは、タンク39から延びる流路が各種のシリンダ装置に対応して分岐して方向制御弁47に到達することにより接続されている。ただし、タンク39と、各種のシリンダ装置の方向制御弁47とを接続する流路は、一部のシリンダ装置において、又は、全てのシリンダ装置において、個別に形成されていてもよい。また、各シリンダ装置においてピストンpに押し出された作動液がタンク39へ流れる流路には、作動液を冷却するクーラ49が設けられている。
図3は、図2に示した液圧装置のうち射出シリンダ装置25に係る構成の詳細、及び、液圧装置を制御する制御装置51を示す図である。なお、図3では、図示の都合上、タンク39が2箇所に記載されている。
ダイカストマシン1の液圧装置は、射出シリンダ装置25に作動液を供給するために、圧力が付与された作動液を保持するアキュムレータ53を更に有している。
アキュムレータ53は、例えば、気体圧式のピストン形アキュムレータにより構成されており、作動液を蓄積しているとともに、圧縮された気体の圧力をピストンを介して作動液に付与している。なお、アキュムレータ53は、重りの荷重を作動液に付与する重力式のものであってもよいし、バネの復元力を作動液に付与するバネ式のものであってもよいし、気体と作動液とを可撓性の隔膜により隔離する隔膜式のものであってもよい。
液圧回路37は、ポンプ33とアキュムレータ53とを接続する第1流路55を有しており、ポンプ33によるアキュムレータ53の蓄圧を可能としている。第1流路55には、例えば、ポンプ33側からアキュムレータ53側への流れを許容する一方で、アキュムレータ53側からポンプ33側への流れを禁止する第1逆止弁57及び第2逆止弁59が設けられている。第2逆止弁59は、第1逆止弁57よりも上流側に設けられている。
液圧回路37は、上述のように、ポンプ33と射出シリンダ装置25とを接続しており、ポンプ33による射出シリンダ装置25の駆動を可能としている。具体的には、液圧回路37は、ポンプ33に接続された第2流路61と、射出シリンダ装置25のロッド側室25aに接続された第3流路63と、射出シリンダ装置25のヘッド側室25bに接続された第4流路65とを有している。
第2流路61は、例えば、第1逆止弁57と第2逆止弁59との間において、第1流路55から分岐することにより(第1流路55と一部が共通化されることにより)、ポンプ33に接続されている。上述の射出側方向制御弁47Cは、第2流路61(ポンプ33)と、第3流路63(ロッド側室25a)及び第4流路65(ヘッド側室25b)との接続状態を切り換える。
なお、ポンプ33と、射出シリンダ装置25以外のシリンダ装置とを接続する流路、例えば、ポンプ33と型締シリンダ装置15とを接続する第10流路93(図2)も、第1逆止弁57と第2逆止弁59との間において、第1流路55から分岐している。
液圧回路37は、アキュムレータ53と射出シリンダ装置25とを接続しており、アキュムレータ53による射出シリンダ装置25の駆動を可能としている。具体的には、以下のとおりである。
液圧回路37は、アキュムレータ53と射出シリンダ装置25のヘッド側室25bとを接続する第5流路67と、第5流路67に設けられ、アキュムレータ53からヘッド側室25bへの流れを許容又は禁止可能な供給制御弁69とを有している。
第5流路67は、例えば、第1流路55に対して、第2逆止弁59よりもアキュムレータ53側において接続されることにより、アキュムレータ53に対して接続されている。なお、第5流路67は、第1流路55とは別個にアキュムレータ53に対して接続されていてもよい(第1流路55と一部が共通化されていなくてもよい。)。
供給制御弁69は、例えば、パイロット圧が導入されているときは閉じられ、パイロット圧が導入されていないときは、アキュムレータ53側からヘッド側室25b側への流れを許容する一方で、ヘッド側室25b側からアキュムレータ53側への流れを禁止するパイロット式の逆止弁により構成されている。従って、供給制御弁69へのパイロット圧の導入が停止されると、アキュムレータ53からヘッド側室25bへ作動液が供給され、射出用ピストン25p及びピストンロッド25rは紙面左側へ前進する。
液圧回路37は、アキュムレータ53からヘッド側室25bへ作動液を供給しているときに射出シリンダ装置25を制御するためのメータアウト回路を有している。具体的には、例えば、液圧回路37は、ロッド側室25aとタンク39とを接続する第6流路71と、第6流路71の流量を制御する射出側流量制御弁73とを有している。
射出側流量制御弁73は、例えば、サーボ機構に組み込まれ、入力信号に応じて流量を無段階に変調可能なサーボバルブにより構成されている。射出側流量制御弁73は、例えば、電磁式の制御機構及び液圧式の制御機構が順次作動することにより流量の設定値を変更するように構成されている。
射出側流量制御弁73によって、射出シリンダ装置25のロッド側室25aから排出される作動液の流量が制御されることにより、射出シリンダ装置25の射出用ピストン25p及びピストンロッド25rの速度が制御される。
液圧回路37は、アキュムレータ53と射出シリンダ装置25の後側室25dとを接続する第7流路75と、第7流路75に設けられた増圧側流量制御弁77とを有している。
第7流路75は、例えば、第1流路55に対して、第2逆止弁59よりもアキュムレータ53側において接続されることにより、アキュムレータ53に対して接続されている。なお、第7流路75は、第1流路55とは別個にアキュムレータ53に接続されていてもよい(第1流路55と一部が共通化されていなくてもよい。)。
増圧側流量制御弁77は、例えば、サーボ機構に組み込まれ、入力信号に応じて流量を無段階に変調可能なサーボバルブにより構成されている。増圧側流量制御弁77は、例えば、電磁式の制御機構及び液圧式の制御機構が順次作動することにより流量の設定値を変更するように構成されている。
アキュムレータ53から第7流路75を介して後側室25dに作動液が供給されることにより、増圧用ピストン25ppを介したヘッド側室25bの増圧が行われる。この際、増圧の速さは、増圧側流量制御弁77によって制御される。
液圧回路37は、前側室25cと、タンク39及びポンプ33とを接続する第8流路79を有している。第8流路79は、例えば、第3流路63に対して方向制御弁47よりもロッド側室25a側において接続されるとともに、第6流路71に対して射出側流量制御弁73よりもロッド側室25a側において接続されている。
従って、アキュムレータ53の作動液が後側室25dに供給されて増圧用ピストン25ppが前進するときには、射出側流量制御弁73を開くことにより、前側室25cの作動液は、タンク39に排出される。また、射出側方向制御弁47Cが図3の紙面左側の位置に切り換えられ、ポンプ33からロッド側室25aへ作動液が供給されて射出用ピストン25pが後退するときには、ポンプ33から前側室25cへも作動液が供給され、増圧用ピストン25ppも後退する。
液圧回路37は、後側室25dとタンク39とを接続する第9流路81と、第9流路81に設けられた第3逆止弁82とを有している。第9流路81は、例えば、第4流路65に対して方向制御弁47よりもヘッド側室25b側において接続されている。第3逆止弁82は、後側室25d側から射出側方向制御弁47C側への流れを許容する一方で、射出側方向制御弁47C側から後側室25d側への流れを禁止するように設けられている。
従って、射出側方向制御弁47Cが図2の紙面左側の位置に切り換えられ、ポンプ33から前側室25cへ作動液が供給され、増圧用ピストン25ppが後退するときには、後側室25dの作動液は第9流路81を介してタンク39に排出される。一方、射出側方向制御弁47Cが図2の紙面右側の位置に切り換えられ、ポンプ33からヘッド側室25bに作動液が供給されて射出用ピストン25pが前進しているときは、第3逆止弁82により、ポンプ33から後側室25dへの流れが阻止され、増圧用ピストン25ppは前進しない。
制御装置51は、例えば、CPU83、及び、ROMやRAM等のメモリ84を有している。CPU83は、入力回路85を介して入力される各種の電気信号に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号を出力回路86を介して各種の機器に出力する。
制御装置51に入力される電気信号は、例えば、各種のシリンダ装置(15、19、25及び29)のピストンロッドrの位置を検出する位置センサ87A〜87D(図2参照。以下、A〜Dを省略することがある。)の検出信号S1〜S4、作動液の圧力を検出する第1圧力センサ88、第2圧力センサ89及び第3圧力センサ90からの電気信号P1〜P3、ユーザの操作を受け付ける入力装置91からのユーザの操作に応じた操作信号である。制御装置51から出力される電気信号は、例えば、モータ35、方向制御弁47等の各種の弁、ユーザに各種の情報を提示する表示装置92を制御する制御信号である。
位置センサ87は、例えば、ピストンロッドrの進退方向に沿ってピストンロッドrに設けられた不図示のスケール部とともに、磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成しており、スケール部の位置センサ87に対する移動量に応じた数のパルスを出力する。制御装置51は、位置センサ87からのパルスを計数することにより、ピストンロッドrの位置及び速度を特定可能であり、ひいては、ピストンロッドrにより駆動される部材、例えば、移動ダイプレート12、中子107、射出プランジャ23、押出ピン27の位置及び速度を特定可能である。制御装置51は、位置センサ87の検出結果に基づいて、各種のシリンダ装置の速度、出力、停止位置等を、プログラミングされたタイミングにおいて制御する。
第1圧力センサ88は、ポンプ33の吐出圧を検出する。具体的には、第1逆止弁57と、第2逆止弁59及び方向制御弁47との間の作動液の圧力を検出する。第2圧力センサ89は、アキュムレータ53の作動液の圧力を検出する。第3圧力センサ90は、ヘッド側室25bの作動液の圧力を検出する。なお、ヘッド側室25bの圧力は、概ね、射出プランジャ23が溶湯に加える圧力(射出圧力)に等しい。
ダイカストマシン1の動作について説明する。まず、ダイカストマシン1の動作の概要を説明する。
ダイカストマシン1においては、まず、型開き状態(若しくは型閉じの初期)において、中子シリンダ装置19により中子107が移動金型105の前面側に配置される。次に、型締シリンダ装置15により、移動ダイプレート12が固定ダイプレート11側へ駆動され、移動金型105を固定金型103に接触させる型閉じが行われ、更には、移動金型105及び固定金型103の接触圧を高める型締めが行われる。その後、射出シリンダ装置25により射出プランジャ23が駆動され、溶湯がキャビティCaに射出、充填される。一定時間が経過すると、換言すれば、溶湯が凝固して成形品が形成されると、型締シリンダ装置15により、移動ダイプレート12が固定ダイプレート11とは反対側へ駆動され、型開きが行われる。この際、成形品は、移動金型105とともに移動して、固定金型103から離型する。そして、押出シリンダ装置29により、押出ピン27が駆動され、成形品は、押出ピン27に押し出されて移動金型105から離型する。
次に、ダイカストマシン1における射出動作の詳細を説明する。
図4(a)は、ダイカストマシン1における射出圧力の経時変化を示す図であり、図4(b)は、ダイカストマシン1における射出速度(射出プランジャ23の速度)の経時変化を示す図である。
ダイカストマシン1において、主型101の型閉じ及び型締めが完了し、スリーブ21内に溶湯が供給されると、射出プランジャ23が前進を開始し、低速射出が行われる。低速射出では、溶湯による空気の巻き込みを防止するために、射出プランジャ23は、比較的低速の速度VLで前進する。なお、射出プランジャ23が速度VLで前進するときの射出圧力は、比較的低圧の圧力PLである。
射出プランジャ23が所定の高速切換位置に到達すると(図4(b)のD点)、射出プランジャ23の速度が、サイクルタイムの短縮等の目的から、比較的低速の速度VLから比較的高速の速度VHに切り換えられ、高速射出が開始される。なお、射出プランジャ23が速度VHで前進するときの射出圧力は、圧力PLよりも高圧の圧力PHである。
溶湯がキャビティCaに概ね充填されると(図4(b)のL点)、射出プランジャ23により押圧されている溶湯は逃げ場を失うから、射出圧力は圧力PHから急激に上昇する(圧力Pd)。これと同時に、射出速度は、速度VHから急激に減速される(速度Vd)。
高速射出が終了すると、増圧が開始され(図4(b)のM点以降)、射出速度は更に遅くなりつつ(速度Vt)、射出圧力は上昇する(圧力Pt)。そして、射出プランジャ23は停止し、射出圧力は鋳造圧力(終圧)Pmaxになり、溶湯の充填は完了する。その後、射出圧力は鋳造圧力Pmaxに維持される。
上記のような動作を実現するために、制御装置51は、モータ35や各種の弁を以下のように制御する。
(型開き状態)
モータ35は停止している。アキュムレータ53は蓄圧された状態となっている。各種のシリンダ装置(15、19、25及び29)の方向制御弁47は中立位置となっている。供給制御弁69、射出側流量制御弁73及び増圧側流量制御弁77は閉じられている。
(中子の装入)
制御装置51は、中子側方向制御弁47Bを中立位置から図2の紙面左側の位置に切り換えるとともに、所定の回転数でモータ35を駆動する。これにより、ポンプ33から中子シリンダ装置19のヘッド側室19bに作動液が供給され、中子107が移動金型105の前面に配置される。制御装置51は、中子107の配置が完了すると、中子側方向制御弁47Bを中立位置へ戻す。
(型閉じ及び型締)
制御装置51は、型締側方向制御弁47Aを中立位置から図2の紙面左側の位置に切り換えるとともに、所定の回転数でモータ35を駆動する。これにより、ポンプ33から型締シリンダ装置15のヘッド側室15bに作動液が供給され、移動ダイプレート12が固定ダイプレート11側へ移動し、型閉じ及び型締めが行われる。
目標とする型締力が得られると、制御装置51は、その型締力が維持されるように、型締側方向制御弁47A及びモータ35の制御を行う。例えば、制御装置51は、型締側方向制御弁47Aの位置を図2の紙面左側の位置とする制御、及び、モータ35を駆動する制御を継続し、すなわち、ポンプ33による型締シリンダ装置15への作動液の供給を継続し、型締力を維持する。また、例えば、制御装置51は、一旦、型締側方向制御弁47Aを中立位置に戻し、型締力が低下したときなど、必要に応じて、型締側方向制御弁47Aの位置を図2の紙面左側の位置とする制御を行い、換言すれば、間欠的に、ポンプ33による型締シリンダ装置15への作動液の供給を継続し、型締力を目標値に維持する。型締力の維持は、後にキャビティCaに射出される溶湯が凝固するまで行われる。
なお、型締力は、例えば、タイバー14の伸び量、型締シリンダ装置15のピストンロッド15rの移動量、型締シリンダ装置15のヘッド側室15bの圧力等の適宜な物理量を検出することにより検出される。制御装置51は、検出された型締力に基づいて、型締側方向制御弁47A及びモータ35の制御を行う。
(低速射出)
制御装置51は、モータ35を回転させるとともに、射出側方向制御弁47Cを図2の紙面右側の位置へ切り換える。これにより、ポンプ33からヘッド側室25bへ作動液が供給され、射出用ピストン25p及びピストンロッド25rが前進し、ひいては、射出プランジャ23が前進する。
制御装置51は、例えば、位置センサ87Cの検出結果に基づいて、射出プランジャ23の速度を所定の低速速度(VL)に制御する(フィードバック制御を行う)。射出プランジャ23の速度は、例えば、モータ35の回転速度を制御することにより制御される。ポンプ33が可変容量ポンプにより構成されている場合には、ポンプ33の一周期における吐出量の制御により、若しくは、当該吐出量の制御とモータ35の回転速度の制御との組み合わせにより、射出プランジャ23の速度が制御されてもよい。
モータ35の回転速度の制御においては、例えば、モータ35が直流モータである場合には、モータ35に供給する電力の電圧を制御することにより、モータ35のトルク及び回転速度を制御し、モータ35が交流モータである場合には、モータ35に供給する電力の周波数を制御することにより、モータ35の回転速度を制御する。
モータ35が交流モータである場合、モータ35の回転速度は、負荷トルクが発生トルクを下回るときは、モータ35に供給される電力の周波数に比例する。そこで、発生トルクが負荷トルクを常に上回るようにモータ35を制御すれば、モータ35の回転速度を電力の周波数に追従させて射出プランジャ23の動作をスムーズにすることができる。
しかし、発生トルクを大きくし過ぎれば、モータ35に供給する電力が大きくなり、また、モータ35の寿命も短くなる。一方、射出プランジャ23の受ける負荷は、スリーブ21やキャビティCa等の大きさや形状により、ダイカストマシン1や主型101毎に、若しくは、成形サイクル毎に変動する。
そこで、制御装置51は、モータ35の発生トルクが、検出されるモータ35の負荷トルクよりも、所定量だけ、大きくなるようにモータ35を制御する。例えば、制御装置51は、第3圧力センサ90の検出する圧力に基づいて、射出シリンダ装置25が射出プランジャ23から受ける負荷を算出し、さらには、モータ35の負荷トルクを算出する。負荷トルクを算出するための算出式若しくはチャートは、理論に基づいて求められてもよいし、実験により求められてもよい。そして、制御装置51は、モータ35の発生トルクが、算出した負荷トルクを上回るように、サーボドライバ45(インバータ)からモータ35に供給される電力の電流を制御する。
なお、電圧を制御することにより、結果として電流を制御してもよい。また、発生トルクが負荷トルクを上回るようにする制御は、以前の成形サイクルにおける負荷トルクに基づいて、現在の成形サイクルにおいて目標とする発生トルクを算出して制御するものであってもよいし、一の成形サイクル中において、現時点の負荷トルクに基づいて、新たに目標とする発生トルクを算出して制御するものであってもよい。発生トルクは、使用され得る回転速度範囲におけるトルク全体が、検出された負荷トルクよりも大きくなるように設定されてもよいし、一の成形サイクル中において、現時点の負荷トルクに基づいて、新たに目標とする発生トルクを設定する場合には、現時点の目標回転速度における発生トルクが負荷トルクを上回るように設定されてもよい。
(高速射出)
位置センサ87Cの検出する位置が、所定の高速切換位置に到達すると(図4のD点)、制御装置51は、射出側方向制御弁47Cを中立位置へ切り換える制御、供給制御弁69を開く制御、射出側流量制御弁73を開く制御を行う。これにより、アキュムレータ53からヘッド側室25bへ作動液が供給され、高速射出が行われる。これらの弁の制御タイミングは、低速射出から高速射出への移行が円滑に行われるように、試験等に基づいて適宜に設定される。射出プランジャ23の速度は、射出側流量制御弁73による流量制御により、所定の昇速カーブで所定の高速速度(VH)に追従するようにフィードバック制御される。
なお、制御装置51は、高速射出から増圧までの間、型締力の維持に必要な回転数でモータ35を回転させる。ただし、射出側方向制御弁47Cが中立位置に切り換えられることにより、ポンプ33と射出シリンダ装置25とは、直接的には非連動とされているから、ポンプ33による射出速度等への影響は少ない。
(減速)
制御装置51は、射出プランジャ23が所定の減速開始位置(図4のL点)に到達すると、射出プランジャ23が、所定のタイミングで、所定の減速カーブで減速するように、射出側流量制御弁73を制御する。
(増圧)
制御装置51は、射出プランジャ23が所定の増圧開始位置(図4のM点)に到達すると、射出側流量制御弁73を全開にする制御、及び、増圧側流量制御弁77を開く制御を行う。これにより、アキュムレータ53から後側室25dに作動液が供給され、増圧用ピストン25ppの増圧作用により、ヘッド側室25bの作動液が加圧され、ひいては、射出プランジャ23によりキャビティCaの溶湯が増圧される。射出側流量制御弁73及び増圧側流量制御弁77の制御タイミングは、増圧工程への移行が円滑に行われるように、試験等に基づいて適宜に設定される。制御装置51は、射出圧力が所定の昇圧カーブで所定の鋳造圧力Pmaxまで上昇するように、第3圧力センサ90の検出値に基づいて増圧側流量制御弁77を制御する。
供給制御弁69は、ヘッド側室25bの圧力が増圧用ピストン25ppにより加圧されて、アキュムレータ53の圧力よりも高くなることにより自閉する。ただし、パイロット圧が導入されて閉じられてもよい。
(型開き)
射出圧力が鋳造圧力Pmaxに到達してから所定時間経過後、換言すれば、キャビティCaに充填された溶湯が凝固した後、制御装置51は、型締側方向制御弁47Aを図2の紙面左側の位置から紙面右側の位置へ切り換える。これにより、ヘッド側室15bの圧抜きが行われ、更には、ポンプ33からの作動液がロッド側室15aに供給され、型開きが行われる。移動ダイプレート12が所定の型開き位置に到達すると、制御装置51は、型締側方向制御弁47Aを中立位置へ戻す。
(中子の引き抜き)
型開き中、若しくは、型開き後、制御装置51は、中子側方向制御弁47Bを中立位置から紙面右側の位置へ切り換える。これにより、ポンプ33からの作動液がロッド側室19aに供給され、中子107が成形品から引き抜かれる。中子107が成形品から引き抜かれると、制御装置51は、方向制御弁47Bを中立位置へ戻す。
(押し出し)
中子107の引き抜き後、制御装置51は、押出側方向制御弁47Dを中立位置から紙面左側の位置へ切り換える。これにより、ポンプ33からの作動液がヘッド側室29aに供給され、押出ピン27が駆動されて成形品が移動金型105から押し出される。その後、次の型閉じ開始までの適宜な時期に、制御装置51は、押出側方向制御弁47Dを紙面右側の位置へ切り換えて押出ピン27を後退させ、押出側方向制御弁47Dを中立位置へ戻す。
(射出プランジャの後退)
射出圧力が鋳造圧力Pmaxに到達してから所定時間経過後、換言すれば、キャビティCaに充填された溶湯が凝固した後、制御装置51は、射出側流量制御弁73及び増圧側流量制御弁77を閉じる制御を行い、保圧を終了する。その後、射出側方向制御弁47Cを図2の紙面左側の位置に切り換える制御を行う。これにより、ポンプ33により送出された作動液がロッド側室25a及び前側室25cに供給され、射出用ピストン25p(射出プランジャ23)及び増圧用ピストン25ppが後退する。射出用ピストン25p及び増圧用ピストン25ppの後退が終了すると、制御装置51は、射出側方向制御弁47Cを中立位置に戻す。なお、射出プランジャの後退は、型開き、中子の引き抜き、成形品の押し出しと時期的に重複していてもよいし、重複していなくてもよい。
(アキュムレータの蓄圧)
型開き、中子の引き抜き、射出プランジャの後退、成形品の押し出しが終了し、各種シリンダ装置の方向制御弁47が中立位置に戻されると、制御装置51は、所定の回転数でモータ35を駆動する。これにより、ポンプ33からアキュムレータ53へ作動液が供給されてアキュムレータ53の蓄圧がなされる。なお、制御装置51は、第2圧力センサ89の検出値が所定の設定圧力になるまで、所定の圧力及び速度で作動液がアキュムレータ53に送出されるように、モータ35等の制御を行う。
以上の実施形態によれば、ダイカストマシン1は、主型101を型締する型締力を生じる型締シリンダ装置15と、主型101に形成されたキャビティCaに溶湯を押し出す射出プランジャ23と、射出プランジャ23を駆動する射出シリンダ装置25と、作動液を送出可能なポンプ33と、ポンプ33を駆動するモータ35と、圧力が付与された作動液を保持するアキュムレータ53と、ポンプ33とアキュムレータ53とを接続し、ポンプ33と型締シリンダ装置15とを接続し、アキュムレータ53と射出シリンダ装置25とを接続し、型締シリンダ装置15及び射出シリンダ装置25への作動液の供給を制御する液圧回路37と、液圧回路37及びモータ35を制御する制御装置51と、を有し、液圧回路37及び制御装置51は、ポンプ33によりアキュムレータ53を蓄圧し、ポンプ33から型締シリンダ装置15へ作動液を供給し、アキュムレータ53から射出シリンダ装置25へ作動液を供給するように構成されていることから、ポンプ33を型締シリンダ装置15と射出シリンダ装置25との間で共通化しつつも、射出シリンダ装置25をアキュムレータ53を介して駆動することができ、ポンプ33に要求される性能を低くして、ポンプ33を小型化し、液圧装置全体として小型化を図ることができる。
液圧回路37及び制御装置51は、ポンプ33により型締シリンダ装置15へ作動液を供給して型締を行い、ポンプ33から型締シリンダ装置15への作動液の供給を継続して型締力を維持しつつ、アキュムレータ53により射出シリンダ装置25へ作動液を供給して高速射出を行うように構成されていることから、高速射出に必要な作動液をアキュムレータ53から得ることができるとともに、ポンプ33を有効活用して型締力を維持し、バリの発生等の成形不良の発生を防止することができる。
液圧回路37及び制御装置51は、ポンプ33により型締シリンダ装置15へ作動液を供給して型締を行い、ポンプ33による型締シリンダ装置15への作動液の供給を継続して型締力を維持しつつ、低速射出及び増圧の少なくとも一方(本実施形態では低速射出)をポンプ33から射出シリンダ装置25への作動液の供給により行うように構成されていることから、アキュムレータ53は、射出プランジャ23の前進工程全てではなく、一部においてのみ利用されることになる。その結果、高速射出に必要な、短時間での大量の作動液の供給がアキュムレータ53により実現されるとともに、アキュムレータ53が小型化される。
液圧回路37は、ポンプ33とアキュムレータ53とを接続する第1流路55と、第1流路55に設けられ、ポンプ33からアキュムレータ53への作動液の流れを許容する一方で、アキュムレータ53からポンプ33への作動液の流れを禁止する第2逆止弁59と、第1流路55の、第2逆止弁59よりもポンプ33側の位置において分岐して型締シリンダ装置15に接続された第10流路93を含む流路と、当該流路に設けられ、ポンプ33から型締シリンダ装置15への作動液の流れを許容又は禁止する型締側方向制御弁47Aと、アキュムレータ53から射出シリンダ装置25への作動液の流れを許容又は禁止する供給制御弁69と、を有し、制御装置51は、ポンプ33から型締シリンダ装置15への作動液の流れを禁止するように型締側方向制御弁47Aを制御し、アキュムレータ53から射出シリンダ装置25への作動液の流れを禁止するように供給制御弁69を制御し、ポンプ33を駆動するようにモータ35を制御して、ポンプ33によるアキュムレータ53の蓄圧を行い、ポンプ33から型締シリンダ装置15への作動液の流れを許容するように型締側方向制御弁47Aを制御し、アキュムレータ53から射出シリンダ装置25への作動液の流れを禁止するように供給制御弁69を制御し、ポンプ33を駆動するようにモータ35を制御して、ポンプ33から型締シリンダ装置15に作動液を供給して型締を行い、ポンプ33から型締シリンダ装置15への作動液の流れを許容するように型締側方向制御弁47Aを制御し、アキュムレータ53から射出シリンダ装置25への作動液の流れを許容するように供給制御弁69を制御し、ポンプ33を駆動するようにモータ35を制御して、ポンプ33から型締シリンダ装置15へ作動液を供給して型締力を維持しつつ、アキュムレータ53から射出シリンダ装置25へ作動液を供給して高速射出を行うことから、簡素な構成で、ポンプ33によるアキュムレータ53の蓄圧、ポンプ33による型締め、アキュムレータ53による高速射出を行うことができる。
液圧回路37は、ポンプ33と射出シリンダ装置25とを接続するとともに、ポンプ33から射出シリンダ装置25への作動液の流れを許容又は禁止可能な射出側方向制御弁47Cを有し、制御装置51は、アキュムレータ53の蓄圧、型締、及び、高速射出においては、ポンプ33から射出シリンダ装置25への作動液の流れを禁止し、低速射出においては、ポンプ33から射出シリンダ装置25への作動液の流れを許容するように射出側方向制御弁47Cを制御することから、上述のような、ポンプ33の、射出プランジャ23の前進工程の一部における活用が、簡素な構成でなされる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係るダイカストマシンの液圧装置の概要を示す図である。
第2の実施形態のダイカストマシンは、第1の実施形態のポンプ33に代えて、双方向(2方向)ポンプにより構成されたポンプ233を有しており、また、液圧回路237が双方向ポンプに適した構成となっている点が第1の実施形態のダイカストマシンと相違する。具体的には以下のとおりである。
ポンプ233は、2つの第1ポート233a及び第2ポート233bを有しており、回転方向の切り換えにより、第1ポート233a及び第2ポート233bの間で、吸入口と吐出口とが切り換えられる。ポンプ233は、ポンプ33と同様に、ロータリポンプであってもよいし、プランジャポンプであってもよいし、定容量ポンプであってもよいし、可変容量ポンプであってもよい。なお、第1流路55は、例えば、第1ポート233aに接続されている。
液圧回路237は、各シリンダ装置(15、19、25及び29)の、ロッド側室a及びヘッド側室bの一方と第1ポート233aとを接続するとともに、ロッド側室a及びヘッド側室bの他方と第2ポート233bとを接続するように構成されている。
具体的には、例えば、液圧回路237は、第1ポート233a及び第2ポート233bから延び、各シリンダ装置に対応して分岐する、第11流路261及び第12流路262と、各シリンダ装置のヘッド側室b及びロッド側室aから延びる流路と、これらの流路を接続する型締側方向制御弁247A、中子側方向制御弁247B、射出側方向制御弁247C及び押出側方向制御弁247D(以下、単に「方向制御弁247」といい、これらを区別しないことがある。)を有している。なお、第11流路261及び第12流路262の一方(図5では第11流路261)は、第1流路55から分岐している。
方向制御弁247は、例えば、4ポート2位置の切換弁により構成されており、2つの矩形の記号により示される2位置のうち、一の位置では、ロッド側室a及びヘッド側室bの一方と第1ポート233aとを接続するとともに、ロッド側室a及びヘッド側室bの他方と第2ポート233bとを接続し、他の位置(中立位置)では、その接続を遮断する。なお、方向制御弁247に代えて、第1の実施形態と同様の方向制御弁47が設けられていてもよい。
ロッド側室a及びヘッド側室bのいずれが、第1ポート233a及び第2ポート233bのいずれに接続されるかは、各種シリンダ装置毎に異なっていても同一でもよいが、図5では、型締シリンダ装置15、中子シリンダ装置19及び押出シリンダ装置29においては、ロッド側室aと第1ポート233aとが接続され、ヘッド側室bと第2ポート233bとが接続され、射出シリンダ装置25においては、ヘッド側室bと第1ポート233aとが接続され、ロッド側室aと第2ポート233bとが接続される場合を例示している。
なお、一のシリンダ装置と他のシリンダ装置とが同時に駆動される場合には、液圧回路237は、同時に作動液が供給される、一のシリンダ装置のロッド側室a又はヘッド側室bと、他のシリンダ装置のロッド側室a又はヘッド側室bとが、同時に同一のポートに接続可能であるように構成される必要がある。例えば、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、型締シリンダ装置15のヘッド側室15bに作動液を供給して型締を継続しつつ、射出シリンダ装置25のヘッド側室25bに作動液を供給して低速射出を行うから、ヘッド側室15b及びヘッド側室25bは、同一のポート(本実施形態では第1ポート233a)に接続可能に、流路及び方向制御弁が設けられている。
液圧回路237は、ポンプ233に過不足なく作動液が補給されるように構成されることが好ましい。例えば、ロッド側室aの、作動液を受け入れ可能な断面積は、ピストンロッドrの断面積の分だけ、ヘッド側室bの、作動液を受け入れ可能な断面積よりも小さい。従って、ポンプ233は、ロッド側室aから作動液を吸引してヘッド側室bへ作動液を吐出するときには作動液が不足し、ヘッド側室bから作動液を吸引してロッド側室aへ作動液を吐出するときには作動液が過剰となる。
そこで、液圧回路237は、ポンプ233における作動液の過不足を補償するための自給弁回路294を有している。自給弁回路294は、第11流路261及び第12流路262を接続する自給用接続流路295と、自給用接続流路295から分岐してタンク39に接続される自給用タンク流路296と、自給用接続流路295に設けられた第1自給用逆止弁297A及び第2自給用逆止弁297Bとを有している。
第1自給用逆止弁297Aは、自給用接続流路295の、自給用タンク流路296が分岐する位置よりも第11流路261側に設けられている。第1自給用逆止弁297Aは、パイロット圧が導入されているときは開かれ、パイロット圧が導入されていないときは、第11流路261側から自給用タンク流路296側への流れを禁止する一方で、自給用タンク流路296側から第11流路261側への流れを許容するパイロット式の逆止弁により構成されている。第1自給用逆止弁297Aは、パイロット圧として、第12流路262の作動液の圧力が導入されるように設けられている。
第2自給用逆止弁297Bは、自給用接続流路295の、自給用タンク流路296が分岐する位置よりも第12流路262側に設けられている。第2自給用逆止弁297Bは、パイロット圧が導入されているときは開かれ、パイロット圧が導入されていないときは、第12流路262側から自給用タンク流路296側への流れを禁止する一方で、自給用タンク流路296側から第12流路262側への流れを許容するパイロット式の逆止弁により構成されている。第1自給用逆止弁297Aは、パイロット圧として、第11流路261の作動液の圧力が導入されるように設けられている。
自給弁回路294の動作は以下のとおりである。
例えば、ポンプ233が、第2ポート233bから作動液を吸引して第1ポート233aから作動液を吐出する場合において、作動液が不足するときは、タンク39の作動液が、自給用タンク流路296、第2自給用逆止弁297B及び第12流路262を経由してポンプ233に補給される。なお、このとき、第11流路261からタンク39への作動液の流れは、第1自給用逆止弁297Aにより禁止される。
また、例えば、ポンプ233が、第2ポート233bから作動液を吸引して第1ポート233aから作動液を吐出する場合において、作動液が過剰となるときは、第11流路261の作動液の圧力がパイロット圧として第2自給用逆止弁297Bに導入されて第2自給用逆止弁297Bが開かれ、第12流路262における過剰な作動液が、第2自給用逆止弁297B及び自給用タンク流路296を経由してタンク39に排出される。なお、第11流路261からタンク39への作動液の流れは、第1自給用逆止弁297Aにより禁止される。
ポンプ233が、第1ポート233aから作動液を吸引して第2ポート233bから作動液を吐出する場合における、作動液が不足するとき、及び、作動液が過剰となるときの自給弁回路294の動作も、第1自給用逆止弁297A及び第2自給用逆止弁297Bの役割が互いに逆になる以外は同様である。
液圧回路237は、第1の実施形態と同様に、第1流路55の作動液の圧力、換言すれば、第1ポート233aの作動液の圧力を検出する第1圧力センサ88を有している。また、液圧回路237は、第12流路262の作動液の圧力、換言すれば、第2ポート233bの作動液の圧力を検出する第4圧力センサ288を有している。
液圧回路237は、第1の実施形態のクーラ49を有していない。第2の実施形態では、射出用ピストン等に押し出される作動液がポンプ233に吸引されることから、第1の実施形態に比較して、弁を流れるときに発熱してタンク39へ排出される作動液が少ないことなどからである。
第2の実施形態のダイカストマシンの動作は、第1の実施形態と概ね同様である。ただし、第1の実施形態においては、方向制御弁47の切り換えにより、ポンプ33からの作動液の供給先がロッド側室aとヘッド側室bとの間で切り換えられていたところ、第2の実施形態では、ポンプ233の回転方向の切り換えにより、ポンプ233からの作動液の供給先がロッド側室aとヘッド側室bとの間で切り換えられる。
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、ポンプ233を型締シリンダ装置15と射出シリンダ装置25との間で共通化しつつも、射出シリンダ装置25をアキュムレータ53を介して駆動することにより、ポンプ233に要求される性能を低くして、ポンプ233を小型化し、液圧装置全体として小型化を図ることができる。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係るダイカストマシン301を示す図である。なお、図6において、型締装置305は、上面図の模式図が描かれている。
ダイカストマシン301は、型締装置305が、型開閉を行う駆動装置と型締を行う駆動装置とが別個に設けられた複合式の型締装置により構成されている点が第1の実施形態と相違する。具体的には以下のとおりである。
型締装置305は、第1の実施形態と同様に、固定金型103(図1)を保持する固定ダイプレート311と、移動金型105(図1)を保持する移動ダイプレート312と、固定ダイプレート311及び移動ダイプレート312に掛架される複数本のタイバー314とを有している。
また、型締装置305は、型開閉を行うための第1型開閉シリンダ装置316A及び第2型開閉シリンダ装置316B(以下、単に「型開閉シリンダ装置316」といい、両者を区別しないことがある、)と、型締を行うための複数の型締シリンダ装置315とを有している。これらのシリンダ装置の構成は、上述した各種のシリンダ装置と同様であり、ピストンロッドr、ピストンp及びシリンダチューブtを有している。ただし、型締シリンダ装置315は、タイバー314によりピストンロッドが構成されている。以下では、タイバー314をピストンロッド315r(若しくはピストンロッドr)ということがある。
第1型開閉シリンダ装置316A及び第2型開閉シリンダ装置316Bは、例えば、型開閉方向に見て金型に対して左右対称に配置されている。型開閉シリンダ装置316は、ピストンロッド316rが固定ダイプレート311及び移動ダイプレート312の一方(図6では移動ダイプレート312)に固定され、シリンダチューブ314tが固定ダイプレート311及び移動ダイプレート312の他方(図6では固定ダイプレート311)に固定されており、伸縮により型開閉可能である。
型締シリンダ装置315は、シリンダチューブ315tが、固定ダイプレート311又は移動ダイプレート312(図6では固定ダイプレート311)に固定されている。固定ダイプレート311及び移動ダイプレート312のうち、型締シリンダ装置315が設けられるダイプレートとは反対側のダイプレート(図6では移動ダイプレート312)には、ハーフナット317が設けられている。ハーフナット317は、開閉によりタイバー314に対して係合又は当該係合を解除可能である。
従って、ハーフナット317を開いた状態で型開閉シリンダ装置316により型開閉を行うことができ、また、型閉じ後、ハーフナット317を閉じた状態で型締シリンダ装置315により型締めを行うことができる。ハーフナット317は、ナット開閉シリンダ装置318により駆動される。ナット開閉シリンダ装置318の構成は、他のシリンダ装置と同様である。
型締シリンダ装置315、第1型開閉シリンダ装置316A、ナット開閉シリンダ装置318は、第1の実施形態の各種のシリンダ装置と同様に、ポンプ33から作動液が供給されて駆動される。なお、第3の実施形態のダイカストマシン301も、第1の実施形態と同様に、中子シリンダ装置19を含む中子引抜装置5及び押出シリンダ装置29を含む押出装置9を有するが、図6では、図示を省略している。
液圧回路337は、ポンプ33及びタンク39と、上記のシリンダ装置(315、316A、318)とを接続する流路と、各シリンダ装置に対応して、型締側方向制御弁47E、型開閉側方向制御弁47F、ナット開閉側方向制御弁47Gを有する。なお、型締側方向制御弁47E及びナット開閉側方向制御弁47G、並びに、これらの方向制御弁47に接続が制御される流路は、複数の型締シリンダ装置315及び複数のナット開閉シリンダ装置318に対応して複数並列に設けられるが、図6では図示を省略している。
第2型開閉シリンダ装置316Bは、ポンプ33とは別個に設けられた第2ポンプ334により駆動される。第2ポンプ334は、例えば、双方向ポンプにより構成されるとともに、第1ポート334a及び第2ポート334bが第2型開閉シリンダ装置316Bのヘッド側室316b及びロッド側室316aに接続されており、作動液の供給先をヘッド側室316b及びロッド側室316aとの間で切換可能である。
第2ポンプ334は、ポンプ33と同様に、サーボモータとしての第2モータ336により駆動され、不図示のサーボドライバにより、エンコーダ344の検出値に基づいてフィードバック制御される。
液圧回路337には、第2ポンプ334に対応して、第2の実施形態の自給弁回路294と同様の構成の第2自給弁回路338が設けられている。また、第2ポンプ334の吐出圧を検出する圧力センサ388及び389が設けられている。
型締シリンダ装置315及び型開閉シリンダ装置316も、第1の実施形態の各種のシリンダ装置と同様に、ピストンロッドrの位置を検出する位置センサ87E及び87Fが設けられており、位置センサ87の検出信号は、制御装置51に出力される。
ダイカストマシン301の動作は、型開閉及び型締めを除いて、第1の実施形態のダイカストマシン1と同様である。以下では、ダイカストマシン301の型開閉及び型締めの動作について説明する。
(型開き状態)
第1の実施形態と同様である。すなわち、全てのモータ(35、336)は停止され、全ての方向制御弁47は中立位置となっており、供給制御弁69、射出側流量制御弁73及び増圧側流量制御弁77は閉じられており、アキュムレータ53は蓄圧された状態となっている。加えて、ハーフナット317は開かれている。
(型閉じ)
制御装置51は、型開閉側方向制御弁47Fを中立位置から図6の紙面右側の位置に切り換えるとともに、所定の回転数でモータ35を駆動する。同時に、第2ポンプ334の第2ポート334bから作動液が吐出される方向へ第2モータ336を駆動する。これにより、ポンプ33から第1型開閉シリンダ装置316Aのロッド側室316aに作動液が供給されるとともに、第2ポンプ334から第2型開閉シリンダ装置316Bのロッド側室316aに作動液が供給され、移動ダイプレート12が固定ダイプレート11側へ移動し、型閉じが行われる。
制御装置51は、型閉じ開始から型接触まで、第1型開閉シリンダ装置316A及び第2型開閉シリンダ装置316Bに対応して設けられた、2つの位置センサ87Fの検出値に基づいて、第1型開閉シリンダ装置316A及び第2型開閉シリンダ装置316Bの位置が一致するように、換言すれば、移動ダイプレート312が型開閉方向に対して傾斜しないように、モータ35及び第2モータ336の同期制御を行う。例えば、第1型開閉シリンダ装置316A及び第2型開閉シリンダ装置316Bの一方に対して、他方が位置ずれを生じた場合には、その位置ずれを解消するように、当該他方のシリンダ装置を駆動するモータへの制御指令を補正する。
型接触がなされると、制御装置51は、型開閉側方向制御弁47Fを中立位置に戻すとともに、第2モータ336を停止して、型開閉シリンダ装置316への作動液の供給を停止して、型閉じを終了する。なお、制御装置51は、例えば、位置センサ87Fの検出値に基づいて、型接触の有無を検出できる。
(型締め)
型閉じが終了すると、制御装置51は、ナット開閉側方向制御弁47Gを図6の紙面左側の位置に切り換えるとともに、所定の回転数でモータ35を駆動する。これにより、ハーフナット317が閉じられ、タイバー314と移動ダイプレート312とは係合される。
次に、制御装置51は、型締側方向制御弁47Eを図6の紙面右側の位置に切り換えるとともに、所定の回転数でモータ35を駆動する。これにより、ピストン315pがタイバー314を伸長させる方向へ移動して、タイバー314の伸長量に応じた型締力が生じる。
所望の型締力が得られた後は、第1の実施形態と同様に、ポンプ33から型締シリンダ装置315への作動液の供給を継続しつつ、ポンプ33から射出シリンダ装置25に作動液が供給されることにより低速射出が、アキュムレータ53から射出シリンダ装置25に作動液が供給されることにより高速射出が、アキュムレータ53から射出シリンダ装置25に作動液が供給されることにより増圧が行われる。なお、型締めが行われている間、ナット開閉側方向制御弁47Gは、中立位置に戻されてもよいし、係合を確実に継続するために、図6の紙面左側の位置とされたままでもよい。
(圧抜き)
キャビティCaに射出された溶湯が凝固した後、制御装置51は、ポンプ33から型締シリンダ装置315へ供給する作動液の量を徐々に減じるように、モータ35の回転数を下げていく。なお、ポンプ33が可変容量ポンプにより構成されている場合には、ポンプ33の一周期における吐出量の制御により、若しくは、当該吐出量の制御とモータ35の回転速度の制御との組み合わせにより、型締シリンダ装置315へ供給される作動液の量を減じてもよい。
ポンプ33の吐出する作動液の量が徐々に減じられていくことにより、型締シリンダ装置315のロッド側室315aの圧力は徐々に低下する。そして、ポンプ33の吐出する作動液の量が所定値(0を含む)まで低下すると、制御装置51は、型締側方向制御弁47Eを図6の紙面右側の位置に切り換えて圧抜きを行う。これにより、ピストン315pは、タイバー314の復元力により、ロッド側室315aの作動液をタンク39へ押し出しつつ、タイバー314側へ移動する。
(型開き)
圧抜きが終了すると、制御装置51は、ナット開閉側方向制御弁47Gを図6の紙面右側の位置に切り換えるとともに、所定の回転数でモータ35を駆動する。これにより、ハーフナット317が開かれ、タイバー314と移動ダイプレート312とは係合が解除される。
次に、制御装置51は、型開閉側方向制御弁47Fを中立位置から図6の紙面左側の位置に切り換えるとともに、所定の回転数でモータ35を駆動する。同時に、第2ポンプ334の第1ポート334aから作動液が吐出される方向へ第2モータ336を駆動する。これにより、ポンプ33から第1型開閉シリンダ装置316Aのヘッド側室316bに作動液が供給されるとともに、第2ポンプ334から第2型開閉シリンダ装置316Bのヘッド側室316bに作動液が供給され、移動ダイプレート12が固定ダイプレート11から離間する方向へ移動し、型開きが行われる。
なお、型開きにおいても、2つの型開閉シリンダ装置316は、型閉じ時と同様に、同期制御がなされる。また、ハーフナット317が開かれてから次の型閉じが開始されるまでの適宜な時期において、型締シリンダ装置315は、ポンプ33からロッド側室315aに作動液が供給されて、原位置に復帰される。
以上の第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、ポンプ33を型締シリンダ装置315と射出シリンダ装置25との間で共通化しつつも、射出シリンダ装置25をアキュムレータ53を介して駆動することにより、ポンプ33に要求される性能を低くして、ポンプ33を小型化し、液圧装置全体として小型化を図ることができる。
さらに、ダイカストマシン301は、主型101を開閉する、並列に設けられた複数(本実施形態では2つを例示)の型開閉シリンダ装置316と、作動液を送出する第2ポンプ334と、第2ポンプ334を駆動する第2モータ336と、を有し、液圧回路337は、ポンプ33と第1型開閉シリンダ装置316Aとを接続し、第2ポンプ334と第2型開閉シリンダ装置316Bとを接続するように構成されていることから、ポンプ33を第1型開閉シリンダ装置316Aの駆動にも利用して一層の液圧装置の小型化を図りつつ、移動ダイプレート312が傾斜しないように、第1型開閉シリンダ装置316A及び第2型開閉シリンダ装置316Bを同期制御することができる。
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態のダイカストマシン401の構成を示す図である。
第4の実施形態のダイカストマシン401は、第3の実施形態と同様に、複合式の型締装置305を有するが、第2型開閉シリンダ装置316Bへの作動液の供給を、他のシリンダ装置に共用されているポンプ33により行う点が、第3の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
液圧回路437は、例えば、ポンプ33及びタンク39と、第2型開閉シリンダ装置316Bのロッド側室316a及びヘッド側室316bとの接続状態を切り換え可能であるとともに、流量を制御可能な比例方向制御弁448を有している。
比例方向制御弁448は、例えば、4ポート3位置の切換弁により構成されおり、3つの矩形の記号により示される3位置のうち、中央の位置(中立位置)においては、ポンプ33及びタンク39と、第2型開閉シリンダ装置316Bのヘッド側室316b及びロッド側室316aとの接続を遮断し、紙面左側の位置においては、ポンプ33とヘッド側室316bとを接続するとともにタンク39とロッド側室316aとを接続し、紙面右側の位置においては、ポンプ33とロッド側室316aとを接続するとともにタンク39とヘッド側室316bとを接続する。
また、比例方向制御弁448は、切り換えを行うスプールが、入力される電気信号に比例した量で駆動されることにより、接続した流路の流量を連続的に変化させることができる。なお、比例方向制御弁448は、例えば、電気信号がアンプを介して入力され、電磁式の制御機構により駆動される。
第4の実施形態のダイカストマシン401の動作は、第3の実施形態のダイカストマシン301と概ね同様である。ただし、第3の実施形態においては、型開閉において、第2ポンプ334から第2型開閉シリンダ装置316Bに作動液を供給していたところ、第4の実施形態では、比例方向制御弁448の位置が切り換えられることにより、ポンプ33から第2型開閉シリンダ装置316Bに作動液が供給される。
また、制御装置51は、第1の実施形態と同様に、型開閉において、2つの型開閉シリンダ装置316の検出位置が一致するように、換言すれば、移動ダイプレート312が傾斜しなしように、2つの位置センサ87Fの検出値に基づいて2つの型開閉シリンダ装置316の同期制御を行うが、このとき、制御装置51は、2つの位置センサ87Fの偏差に基づいて比例方向制御弁448の開度を制御することにより、2つの型開閉シリンダ装置316の同期制御を行う。換言すれば、第2型開閉シリンダ装置316Bへの制御指令を補正することにより、2つの型開閉シリンダ装置316の同期制御を行う。
以上の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、ポンプ33を型締シリンダ装置315と射出シリンダ装置25との間で共通化しつつも、射出シリンダ装置25をアキュムレータ53を介して駆動することにより、ポンプ33に要求される性能を低くして、ポンプ33を小型化し、液圧装置全体として小型化を図ることができる。
また、ダイカストマシン401は、主型101を開閉する、並列に設けられた複数(本実施形態では2つ)の型開閉シリンダ装置316を有し、液圧回路437は、ポンプ33から第1型開閉シリンダ装置316Aへの作動液の流れを許容又は禁止可能な型開閉側方向制御弁47Fと、ポンプ33から第2型開閉シリンダ装置316Bへの作動液の流量を制御可能な比例方向制御弁448とを有することから、ポンプ33の共通化を図りつつ、ひいては、液圧装置の小型化を図りつつ、移動ダイプレート312が傾斜しないように、第1型開閉シリンダ装置316A及び第2型開閉シリンダ装置316Bを同期制御することができる。
なお、ポンプ33は、第3の実施形態のように1つの型開閉シリンダ装置316へ作動液を供給するときよりも、第4の実施形態のように2つの型開閉シリンダ装置に作動液を供給するときの方が、単位時間当たりに大量の作動液を吐出しなければならない。しかし、一方で、2つの型開閉シリンダ装置316へ送出する単位時間当たりの作動液の量が、型開閉シリンダ装置316とは同時に駆動されない他のシリンダ装置へ送出するときの単位時間当たりの作動液の量よりも少なければ、ポンプ33は、2つの型開閉シリンダ装置に作動液を供給するためだけに大型化される必要はない。従って、第3の実施形態及び第4の実施形態は、ダイカストマシンの大きさ(射出シリンダ装置の大きさ)、ダイカストマシンが含む各種の射出シリンダ装置のうち最も大きなシリンダ装置において必要とされる作動液の流量、ポンプ33を共通して同時に利用する射出シリンダ装置の種類及び数等により、いずれかが液圧装置の小型化に有利となる。
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態のダイカストマシン501の構成を示す図である。
第5の実施形態のダイカストマシン501は、第3の実施形態(図6)のダイカストマシン301と同様に、複合式の型締装置305を有するが、第2の実施形態(図5)のダイカストマシンと同様に、双方向ポンプにより構成されたポンプ233により作動液を供給する。すなわち、第5の実施形態は、第3の実施形態と第2の実施形態との組み合わせである。
ダイカストマシン501の液圧回路537は、第2の実施形態が第1の実施形態に対してそうであったように、第3の実施形態の4ポート3位置の方向制御弁47に代えて、4ポート2位置の、型締側方向制御弁247E、型開閉側方向制御弁247F、及び、ナット開閉側方向制御弁247Gを有している。なお、特に図示しないが、液圧回路537は、第2の実施形態と同様に、中子シリンダ装置19及び押出シリンダ装置29に対応する4ポート2位置の方向制御弁247も有している。また、液圧回路537は、第2の実施形態と同様に、自給弁回路294を有している。
方向制御弁247は、第2の実施形態と同様に、一の位置では、ロッド側室a及びヘッド側室bの一方と第1ポート233aとを接続するとともに、ロッド側室a及びヘッド側室bの他方と第2ポート233bとを接続し、他の位置(中立位置)では、その接続を遮断する。なお、方向制御弁247に代えて、第3の実施形態と同様の方向制御弁47が設けられていてもよい。
第2の実施形態と同様に、基本的には、ロッド側室a及びヘッド側室bのいずれが、第1ポート233a及び第2ポート233bのいずれに接続されるかは、各種シリンダ装置毎に異なっていても同一でもよいが、同時に作動液が供給される、一のシリンダ装置のロッド側室a又はヘッド側室bと、他のシリンダ装置のロッド側室a又はヘッド側室bとは、同時に同一のポートに接続可能とされる。
図5では、ナット開閉シリンダ装置318のヘッド側室318bへの作動液の供給によるハーフナット317の締め付けの継続、型締シリンダ装置315のロッド側室315aへの作動液の供給による型締めの継続、射出シリンダ装置25のヘッド側室25bへの作動液の供給による低速射出を同時に行うことが可能に、液圧回路537の流路及び方向制御弁247は、ヘッド側室318b、ロッド側室315a及びヘッド側室25bを同時に第2ポート233bに接続可能に構成されている。
ダイカストマシン501の動作は、第3の実施形態のダイカストマシン301の動作と概ね同様である。ただし、第2の実施形態と同様に、ポンプ233の回転方向の切り換えにより、ポンプ233からの作動液の供給先がロッド側室aとヘッド側室bとの間で切り換えられる。
また、型締後の圧抜きの際には、ポンプ233からの単位時間当たりの吐出量が徐々に小さくなって0になるようにモータ35の回転数及び/又はポンプ233の1周期当たりの吐出量が制御される。そして、必要に応じて、型締時とは逆方向にポンプ233が徐々に回転される。
(第6の実施形態)
図9は、本発明の第6の実施形態のダイカストマシン601の構成を示す図である。
第6の実施形態のダイカストマシン601は、第5の実施形態(図8)のダイカストマシン501と同様に、双方向ポンプにより構成されたポンプ233から作動液が供給される複合式の型締装置305を有するが、第4の実施形態(図7)のダイカストマシン401と同様に、液圧回路637の比例方向制御弁648により2つの型開閉シリンダ装置316の同期制御が行われる。すなわち、第6の実施形態は、第5の実施形態と第4の実施形態との組み合わせである。
ただし、比例方向制御弁648は、第4の実施形態の比例方向制御弁448が4ポート3位置の方向制御弁であったのに対し、4ポート2位置の方向制御弁により構成されている。そして、第2型開閉シリンダ装置316Bのロッド側室316a及びヘッド側室316bは、他のシリンダ装置のロッド側室a及びヘッド側室bと同様に、ポンプ233の回転方向の切り換えにより、いずれに作動液が供給されるかが切り換えられる。
なお、以上の第1〜第6の実施形態において、ダイカストマシン1等は、本発明の成形機の一例であり、金属材料は本発明の成形材料の一例であり、第1流路55は本発明のポンプ−アキュムレータ流路の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。換言すれば、成形材料は、金属材料に限定されない。例えば、成形機は、成形材料としての樹脂を射出する射出成形機であってもよい。また、作動液は、油に限定されない。例えば、作動液は、水であってもよい。
ポンプは、型締力が得られたあと、型締シリンダ装置への作動液の供給を継続しなくてもよい。例えば、型締後に、移動ダイプレート、タイバー、若しくは、型締シリンダ装置のピストンの位置を一定位置に保持するストッパを設けることなどにより、型締力を維持することができる。
液圧回路は、ポンプから射出シリンダ装置へ作動液を直接的に供給可能に構成されていなくてもよい。例えば、アキュムレータのみにより、射出シリンダ装置が駆動されてもよい。ただし、実施形態のように、射出プランジャの前進工程の一部においてポンプにより射出シリンダ装置へ作動液を供給すると、ポンプの有効活用によりアキュムレータの小型化を図ることができる。
液圧回路及び制御装置は、増圧をポンプにより行うように構成されていてもよい。例えば、図3において、第1流路55の、第7流路75が分岐する位置よりもアキュムレータ53側に、流れを許容又は禁止可能な弁(例えば、パイロット圧が導入されると閉じられ、パイロット圧が導入されていないときは、ポンプ33からアキュムレータ53への流れを許容する一方で、アキュムレータ53からポンプ33への流れを禁止するパイロット式の逆止弁)を設け、増圧以外のときには、増圧側流量制御弁77を閉じるとともに、逆止弁にはパイロット圧を導入せず、増圧のときには、増圧側流量制御弁77を開くとともに、逆止弁にパイロット圧を導入して閉じ、ポンプ33を駆動するように、液圧回路及び制御装置が構成されてもよい。なお、この場合、ポンプ33の回転数及び/又はポンプの1周期当たりの吐出量の制御により、増圧時の圧力を制御できるから、増圧側流量制御弁77は、流量制御機能を有さない弁であってもよい。
液圧回路及び制御装置は、低速射出及び高速射出をアキュムレータにより行い、増圧をポンプにより行うように構成されていてもよい。この場合であっても、射出プランジャの前進工程において、ポンプの活用によるアキュムレータの負担低減が図られる。ただし、低速射出においてシリンダ装置が必要とする作動液は比較的多いから、低速射出をポンプにより行ったほうが、アキュムレータの負担低減が実効的に図られ、また、高速射出前にアキュムレータの圧力低下が生じることも抑制される。
液圧回路の具体的構成、及び、制御装置による具体的な制御は、第1〜第6の実施形態以外にも種々可能である。例えば、ポンプからの作動液の供給先をアキュムレータとシリンダ装置との間で切り換える方向制御弁を設けることにより、ポンプにより、アキュムレータの蓄圧と、シリンダ装置の駆動とを行うようにすることが可能である。
また、例えば、実施形態では、アキュムレータからの作動液により射出シリンダ装置を駆動するときに、メータアウト回路により、射出シリンダ装置の速度を制御したが、メータイン回路により、射出シリンダ装置の速度を制御してもよい。例えば、図3において、供給制御弁69として、逆止弁ではなく、流量制御弁を設け、また、射出側流量制御弁73に代えて、流れを許容又は禁止するのみの弁を設けてもよい。
射出シリンダ装置は、増圧式のものに限定されず、単動式のものであってもよい。また、増圧式のシリンダ装置は、小径のシリンダチューブに大径のシリンダチューブが同軸的に直結された直結形のものに限定されず、例えば、小径のシリンダチューブと、増圧のためのシリンダチューブとがホース等により形成された流路により接続された分離形のものであってもよい。
低速射出時におけるモータの制御は、負荷の検出値に基づかず、射出プランジャの速度の検出値のみに基づいて、速度及び/又はトルクを補正するフィードバック制御がなされてもよい。
1…ダイカストマシン(成形機)、15…型締シリンダ装置、23…射出プランジャ、25…射出シリンダ装置、33…ポンプ、35…モータ、37…液圧回路、51…制御装置、53…アキュムレータ、101…主型、Ca…キャビティ。