JP2009219101A - 音響出力素子アレイ及び音響出力方法 - Google Patents

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陽一 羽田
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Abstract

【課題】音響出力素子アレイの軸方向に音響再生領域を設定する場合において、簡易な作業で所望の指向特性を実現する。
【解決手段】本発明の音響出力素子アレイは、同一軸上に並べられ、各指向特性が当該軸に対して軸対称となる向きに配置される複数の音響出力素子12と、各音響出力素子にそれぞれ対応する互いに独立なディジタルフィルタ111を含み、当該各ディジタルフィルタを用いて生成した各供給信号を、それぞれに対応する音響出力素子に供給する信号供給部110とを含む。このディジタルフィルタには、各音響出力素子から放出される各音響信号を、各音響出力素子から各制御点までが自由空間であると近似した場合における各近似伝達関数で畳み込んで混合した場合に、当該畳み込み混合信号が、各音響出力素子が並べられた軸方向に設定された音響再生領域の制御点で否零となり、当該音響再生領域を除く音響遮断領域の制御点で零となるフィルタ係数が設定される。
【選択図】図4

Description

本発明は、複数の音響出力素子から信号を発信する音響出力素子アレイ及びその音響出力方法に関し、特に、特定の方向に指向性を絞った信号の提供を行う技術に関する。
近年、電話回線やADSL回線、光ネットワークなどを用いて遠隔地同士を結んだ通信会議が頻繁に行われるようになってきた。このような通信会議は、一般的には音響的に閉鎖された会議室などで行われているが、オープンオフィス(ディスクが並んだ大部屋)の片隅においても簡易に通信会議が行われることが望まれている。このような場所での通信会議では、会議に参加していない人々には拡声される音声を聞かせたくないため、ある特定の領域、あるいは特定の方向にのみ音が再生できる技術が望まれている。
これを実現するための音を特定の方向にだけ放射する音響出力素子としては指向性スピーカが知られている。指向性スピーカは、従来からホーンスピーカ、パラメトリックスピーカ、アナログスピーカアレイ、ディジタルフィルタ型スピーカアレイなどが知られている。
ホーンスピーカ(三井田惇郎,「音響工学」, p. 101,昭晃堂,1993年)は、ホーンの
幾何学的形状によって指向性を実現するものであり、通常は高域用に限定されており、幅広い周波数範囲で鋭い指向性を得るためには、1mを越えるような大きなサイズのホーンが必要となり、あまり一般的な用途には利用できない。パラメトリックスピーカ(特許文献1)は、鋭い指向性を持つ超音波を可聴音のキャリア(搬送波)にすることで、可聴音に対しても鋭い指向性を得ようとする方式であり、音声信号で変調された超音波の空気中の非線形性で元の音声信号が復調される方式である。この方法は鋭い指向性が得られることで知られているが、超音波を放出するための特別なアンプが必要なこと、超音波が人体に与える影響を抑えること、などの課題がある。
これに対し、近年ディジタルフィルタ信号処理を用いたスピーカアレイが提案されている(特許文献2)。この方法では、空間に配置された複数のスピーカにそれぞれ独立なディジタルフィルタを接続し、これらディジタルフィルタの特性を、同一空間内に配置された複数の制御点での観測信号が予め設定された音再生方向では所望の平面波となり、予め設定された音響遮断領域では観測信号が零となるように定めたことを特徴とする。結果として、ある特定の方向にのみ音を再生する指向性スピーカを実現することができる。
図1は、特許文献2に示された複数のスピーカ12を直線状に並べたスピーカアレイの構成を示す構成図である。この図において、信号入力端子10は、再生したい音響信号(音)に対応する信号をスピーカアレイに入力するための入力端子であり、ディジタルフィルタ11は、再生される音響信号の指向性を決定するためのディジタルフィルタであり、スピーカ12は、音響信号を空間に放出する音響出力素子である。また、●で示した強調制御点13a,13b及び○で囲んだ×で示した抑圧制御点14は、ディジタルフィルタ11のフィルタ係数を決定するために空間に放出された音響信号を観測する制御点である。また、音響再生領域15は、音響信号を放出する領域であり、受聴者16は、スピーカ12から放出された音響信号を受聴する。なお、信号入力端子10に入力される信号がアナログ信号である場合、信号入力端子10とディジタルフィルタ11との間にA/D変換機が必要となり、ディジタルフィルタ11とスピーカ12との間にD/A変換機とアンプとが必要となるが、図1ではこれらを省略している。また、この例では、通信会議などで、TVモニタの下などに直線スピーカアレイが設置されることを想定し、スピーカアレイを構成する各スピーカ12が並べられた軸(「スピーカアレイの軸」という)に対して垂直な方向に受聴者16がいることを想定している。
また、ディジタルフィルタ11は、通常、以下のようなFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタによって構成される。
Figure 2009219101
ここで、Lはフィルタタップ数であり、m(m=1,...,M、Mはスピーカ12の総数
)は、各ディジタルフィルタを識別する識別子であり、x(τ−k)は、識別子mのディジタルフィルタへの離散時刻τ−kでの入力信号であり、h(k)は、識別子mのディジタルフィルタのインパルス応答(フィルタ係数)である。また、式(1)のインパルス応答(フィルタ係数)の系列をz変換すると以下のようになる。
Figure 2009219101
ただし、zは周波数依存の複素変数である。このようにインパルス応答(フィルタ係数)の系列をz変換したものを伝達関数と呼ぶ。以下では、ωを周波数として式(2)の伝達関数をH(ω)と表現する。
この例では、平面波であることを確認するため、音響信号の進行方向に対して、垂直に強調制御点13aを配置し、さらに進行した音波が平面波を保っていることを保証するために、第2の強調制御点13bを配置している。ここで、各ディジタルフィルタ11は、音響出力素子アレイから放出された音響信号が第一列目の全ての強調制御点13aにおいて1になり 、第2列目の全ての強調制御点13bにおいて、第一列目と第二列目の距離
差を音速で割った時間差分だけ第一列目の音響信号から位相が遅れた音響信号の音圧となり、抑圧制御点14において、音響信号の音圧が0になるように設定される。このような条件を満たすフィルタ特性は以下のように記述することができる。
Figure 2009219101
ここで、Gmn(ω)は、m番目のスピーカ12からn(n=1,...,N、Nは制御点
の総数)番目の制御点までのインパルス応答の系列をz変換した周波数依存の(室内)伝達関数でり、各制御点13a,13b,14でマイクロホンを用いて実際に観測された音響信号に基づき設定されるものである。また、式(3)の左辺の演算結果であるN次元ベクトルの各要素は、式(2)に示すフィルタ係数の各FIRフィルタにインパルス信号が入力された場合に各FIRフィルタから出力される応答信号が各スピーカ12から放出され、それらから各制御点までのインパルス応答で畳み込まれて、各制御点でそれぞれ混合された畳み込み混合信号を示している。また、この式において、n=1からP−1までの制御点が音圧を零に制御する抑圧制御点14を示し、n=PからQ−1までの制御点が第一列目の強調制御点13aを示し、n=QからNまでの制御点が第二列目の強調制御点13bを示している。また、Δは第一列目の強調制御点13a(n=1からP−1までの制御点 )と第二列目の強調制御点13b(n=PからQ−1までの制御点 )との距離差を音速で割った遅延時間である。さらに、expはネイピア数を示し、jは虚数単位を示す。
さて、上記式(3)をG・H=Rとおくと、音響出力素子アレイに接続されたディジタルフィルタの特性は、以下の式で求められる。なお、αはαの転置行列を示す。
H=G・(G・G)−1・R …(4)
また、逆行列が不安定にならないように、G・Gの最大固有値に比べて小さな正の定数をδとしたとき、以下の式で代用してHを求めても良い。ただし、IはM×Mの単位行列である。
H=G・(G・G+δ・I)−1・R …(5)
以上のような構成により、スピーカアレイのサイズよりも広がりを押さえた平面波を実現している。
特開2003−153369号公報 特開2005−236636号公報
スピーカアレイの軸に対して垂直な方向に受聴者16がいるのではなく、図2に示すようにスピーカアレイの軸方向に受聴者16がいる場合、すなわち、スピーカアレイの軸方向に音響再生領域15を設定する場合を考える。なお、軸21はスピーカアレイの軸を示し、スピーカアレイの軸21方向に受聴者16が存在し、その方向に音響再生領域15が設定されていることを示している。また、音響遮断領域22は、音を抑圧すべき領域であり、これと音響再生領域15との音圧差によりスピーカアレイの指向特性が決まる。なお、スピーカアレイの軸21方向に受聴者16がいるのは、例えば、狭い幅の机の上でスピーカアレイを構成する場合などで、受聴者16からみて横方向には幅が取れないが、奥行き方向には幅が取れるような場合である。
このとき、図2に示すように各スピーカ12の前面を、スピーカアレイの軸に対して垂直に向けた場合、各スピーカ12全体を囲むように制御点を設けなければ、所望の指向特性を実現するディジタルフィルタのフィルタ係数を決定できない。なぜなら、各スピーカ12自身が前面と背面で非対称な指向特性を持つため、各スピーカ12の前面側と背面側で別個に指向特性を制御する必要があるからである。この場合、非常に多くの抑圧制御点を配置しなければならない。例えば、図2にあるように、スピーカアレイの軸から45度の方向から315度の方向まで22.5度間隔で抑圧制御点を配置しようとすると全部で13個の抑圧制御点を配置しなければならない。また、上下方向まで制御することを考えると約60個の抑圧制御点を配置しなければならない。そして、フィルタ係数を決定するために、設定した多くの各制御点で実際に音響信号を観測し、それらの観測結果から伝達関数Gmn(ω)を算出するといった煩雑な作業が必要となる。
このような問題は、複数のスピーカから構成されるスピーカアレイに限定される問題ではなく、何らかの音響信号を出力する複数の音響出力素子から構成される音響出力素子アレイに共通する問題である。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、音響出力素子アレイを構成する各音響出力素子が並べられた軸(以下「音響出力素子アレイの軸」という)方向に音響再生領域を設定する場合において、簡易な作業で所望の指向特性を実現できる技術を提供することを目的とする。
本発明では上記課題を解決するために、同一軸上に並べられ、各指向特性が当該軸に対して軸対称となる向きに配置される複数の音響出力素子と、各音響出力素子にそれぞれ対応する互いに独立なディジタルフィルタを含み、当該各ディジタルフィルタを用いて生成した各供給信号を、それぞれに対応する音響出力素子に供給する信号供給部と、を有し、各音響出力素子が、供給された各供給信号に応じた音響信号を空間に放出し、ディジタルフィルタが、各音響出力素子から放出される各音響信号を、各音響出力素子から各制御点までが自由空間であると近似した場合における各音響出力素子から各制御点までの各近似伝達関数で畳み込んで各制御点でそれぞれ混合した場合に、当該畳み込み混合信号が、各音響出力素子が並べられた軸方向に設定された音響再生領域の制御点で否零となり、当該音響再生領域を除く音響遮断領域の制御点で零となるフィルタ係数が設定されたディジタルフィルタであり、各近似伝達関数が、各音響出力素子から各制御点までの各距離を用いてそれぞれ算出された関数である、ことを特徴とする音響出力素子アレイが提供される。なお、自由空間とは、理想的な無響空間(無反射状態の空間)を意味する。
本発明では、音響出力素子アレイの軸方向に音響再生領域を設定する場合において、簡易な作業で所望の指向特性を実現できる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔原理〕
まず、本形態の原理について説明する。
本形態では、音響出力素子アレイの軸に対して垂直方向に音響信号を出力するのではなく、音響出力素子アレイの軸方向に受聴者がおり、この音響出力素子アレイの軸方向に音響信号を出力し、それ以外の方向で音響信号を抑圧するものである。すなわち、本形態の音響出力素子アレイは、音響出力素子アレイの軸方向の受聴者側に設定された音響再生領域に音響信号を放出し、当該音響再生領域を除く音響遮断領域で音響信号を抑圧する。
そのために、本形態では、同一軸上に並べられ、各指向特性が当該軸に対して軸対称となる向きに配置される複数の音響出力素子と、各音響出力素子にそれぞれ対応する互いに独立なディジタルフィルタを含み、当該各ディジタルフィルタを用いて生成した各供給信号を、それぞれに対応する音響出力素子に供給する信号供給部と、を有し、各音響出力素子が、供給された各供給信号に応じた音響信号を空間に放出し、ディジタルフィルタが、各音響出力素子から放出される各音響信号を、各音響出力素子から各制御点までが自由空間であると近似した場合における各音響出力素子から各制御点までの各近似伝達関数で畳み込んで各制御点でそれぞれ混合した場合に、当該畳み込み混合信号が、各音響出力素子が並べられた軸方向に設定された音響再生領域の制御点で否零となり、当該音響再生領域を除く音響遮断領域の制御点で零となるフィルタ係数が設定されたディジタルフィルタであり、各近似伝達関数が、各音響出力素子から各制御点までの各距離を用いてそれぞれ算出された関数である音響出力素子アレイを用いる。
ここで、本形態の音響出力素子アレイを構成する複数の音響出力素子(例えば、スピーカ)は、同一軸上に並べられ、各指向特性が当該軸に対して軸対称となる向きに配置される。これにより、各音響出力素子自体の指向特性が音響出力素子アレイの軸に対して軸対称となる。そのため、空間の伝達関数も当該軸に対して軸対称であれば、互いに軸対称な制御点を設けることなく全方位の指向特性の制御が可能となることが期待される。 しかしながら、実際の環境では、音響出力素子を上述のように配置したとしても、反射の影響から伝達関数が当該軸に対して軸対称とならない場合が多い。したがって、互いに軸対称な制御点のうち一方の制御点のみにマイクロホンを設置し、マイクロホンが設置された制御点の観測結果をもとに伝達関数を求め、当該伝達関数をマイクロホンが設置された制御点に対して軸対称な制御点に対応する伝達関数としても、実環境に適した適切なフィルタ係数を設定することはできない。そのため、制御点に配置したマイクロホンで測定した結果を用いて伝達関数を設定する場合、たとえ、各音響出力素子を上述のように配置したとしても、多くの抑圧制御点を設け、それらにマイクロホンを設置しなければならない。
そこで本形態では、実際にマイクロホンで音響信号を測定して伝達関数を設定するのではなく、各音響出力素子から各制御点までが自由空間(無反射状態、理想的な無響空間)であると近似し、各音響出力素子から各制御点までの距離のみから各伝達関数の近似関数(近似伝達関数)を算出する。このような近似に基づく近似伝達関数は、実際に観測点で音響信号を観測することなく、各音響出力素子から各制御点までの各距離を用いて容易に算出できる。さらに、このように近似伝達関数に基づいてフィルタ係数が設定されたディジタルフィルタは、或る制御点での実際の観測結果から算出した伝達関数をその観測点と軸対称な観測点の伝達関数としてフィルタ係数を設定したディジタルフィルタよりも、実環境に適合した性能を発揮する。反射の影響は軸対称ではなく、むしろそれらの影響を無視したほうが適切な解が得られるからである。
このような近似伝達関数として、例えば、以下の式を用いることができる。
Gmn(ω)=(α/rmn)・exp(‐j・ω・rmn/c) …(6)
ここで、ωは周波数[Hz]を示し、Gmn(ω)はm番目(m=1,...,M、Mは2以上
の整数)の音響出力素子から、n番目(n=1,...,N、Nは1以上の整数)の制御点ま
での近似伝達関数を示す。また、rmnはm番目の音響出力素子からn番目の制御点までの距離[m]を示し、cは音速[m/s]を示し、jは虚数単位を示し、expはネイピア数を示し、α≠0は定数を示す。なお、本形態では、各制御点で信号を観測する必要がないため、各制御点を実際に空間上に配置する必要はない。各制御点は、各距離rmnが定まるように空間上に仮想的に配置されればよい。
各音響出力素子を上述のように配置し、式(6)に従って各音響出力素子から各制御点までの各近似伝達関数を設定した場合、同一の音響出力素子から音響出力素子アレイの軸に対して軸対称に配置された2つの制御点までの各近似伝達関数は互いに等しくなる。そのため、各制御点を、音響出力素子アレイの軸上(各音響出力素子が並べられた軸上)、及び/又は、当該軸に対して軸対称となる点の組うち一方の点のみに仮想的に設定するだけで、所望の指向特性を持つ音響出力素子アレイを構成するためのフィルタ係数を算出できる。
また、音響出力素子が、第1部位から第1音響信号を出力し、第2部位から当該第1音響信号と位相が反転した第2音響信号を出力する二重音源素子である場合には、例えば、以下の式を近似伝達関数として用いることができる。
Figure 2009219101
ここで、rFmnはm番目の音響出力素子の第1部位からn番目の制御点までの距離[m]を示し、rRmnはm番目の音響出力素子の第2部位からn番目の制御点までの距離[m]を示す。また、α及びαは正の定数である。なお、式(7)の二項目の符号が負となっているのは、第1音響信号の位相と第2音響信号との位相が互いに反転しているからである。また、このような二重音源素子の具体例としては、例えば、エンクロージャー(スピーカボックス)に入っていないスピーカがある。この場合、例えば、スピーカの音響信号放出面(前面)の中心部が第1部位となり、その背面の中心部が第2部位となる。通常、スピーカの振動板が前面側に押し出された状態は、その背面側から見ると振動板が前面側に押し込まれた状態となっているため、このようなスピーカの前面から放出される音響信号の位相と背面から放出される音響信号の位相とは互いに反転した状態となっている。
そして、以上のように設定された各音響出力素子から各制御点までの各距離を用いて各近似伝達関数を算出し、各音響出力素子から出力される各音響信号を、各音響出力素子から各制御点までの各近似伝達関数で畳み込んで各制御点でそれぞれ混合した場合に、当該畳み込み混合信号が、各音響出力素子が並べられた軸方向に設定された音響再生領域の制御点で否零となり、当該音響再生領域を除く音響遮断領域の制御点で零となるようにフィルタ係数を設定することで、所望の指向特性を持つ音響出力素子アレイを実現できる。
このように、本形態では、音響信号を放射したい方向に音響出力素子アレイの軸を配置し、さらにその軸に対して各音響出力素子の指向特性が軸対称になるように配置し、さらに仮想的に制御点を配置することで、制御点に実際にマイクロホンを配置し、マイクロホンでの観測結果を用いて音響出力素子と制御点の問の伝達関数を設定する必要がなくなり、式を計算するだけで容易に所望の指向特性を実現するフィルタ係数を求めることができる。つまり、実際に空間に制御点を配置することなく、仮想的な制御点の配置によってフィルタ係数を決定できるため、マイクロホンの設置などの煩わしい作業から開放される。
〔第1実施形態〕
次に、本発明の第1実施形態について説明する。本形態は、本発明を指向性スピーカに適用した実施形態である。
<配置構成>
図3は、第1実施形態の音響出力素子アレイ100を構成する音響出力素子及び制御点の配置を説明するための図であり、図4は、第1実施形態の音響出力素子アレイ100の構成を説明するための構成図である。
図3に示すように、本形態では、音響出力素子アレイ100の軸21に対して垂直方向に音響信号を出力するのではなく、音響出力素子アレイ100の軸21方向に受聴者16がおり、この音響出力素子アレイ100の軸21方向に音響信号を出力し、それ以外の方向では音響信号を抑圧する。すなわち、本形態の音響出力素子アレイ100は、軸21方向の受聴者16側に設定された音響再生領域15に音響信号を放出し、当該音響再生領域15を除く音響遮断領域22で音響信号を抑圧する。
そのために、本形態では、軸21上に複数(図3,4の例では4個)の音響出力素子1
2を並べ、これらの各指向特性が当該軸21に対して軸対称となる向きに各音響出力素子12を配置する。本形態では、例えば、音響信号の放出軸に対して軸対称な指向特性を持つ音響出力素子12(例えば、スピーカ)を複数用い、これらの各音響信号の放出軸がそれぞれ軸21上に配置され、さらに、各音響出力素子12の音響信号放出面が受聴者16側を向くように配置される(図3参照)。また、各音響出力素子12の性能は互いに同一であり、これらは軸21上に同一の間隔或いは不等間隔で配置される。
また、本形態では、各音響出力素子が並べられた軸21方向の受聴者16側に音響再生領域15を設定し、音響再生領域15の軸21上に制御点13(強調制御点)を設定する。これにより、上述のように配置された各音響出力素子12は、供給された各供給信号に応じた音響信号の少なくとも一部を音響再生領域15に向けて出力することになる。
さらに、本形態では、音響再生領域15を除く領域に音響遮断領域22を設定し、この音響遮断領域22に、複数の制御点14(抑圧制御点)を設定する。ただし、音響遮断領域22の各制御点14は、各音響出力素子12が並べられた軸21に対して軸対称となる点の組うち一方の点にのみ設定される。図3の例では、軸21上に配置された音響出力素子12列の中心点を中心とし、制御点13を通る円の円周と軸21との音響遮断領域22での交点、及び、軸21を境界とした一方側(図3の左側)の音響遮断領域22の当該円周上のみに7個の仮想的な制御点14が配置される。
また、図4に示すように、上述のように配置された複数の音響出力素子12には、これらに供給信号を供給する信号供給部110が電気的に接続される。信号供給部110は、各音響出力素子12にそれぞれ対応する互いに独立なディジタルフィルタ111、アンプ112、D/A変換機113及びA/D変換機114と、アナログ信号が入力される信号入力端子115とを具備し、各ディジタルフィルタ111を用いて生成した各供給信号を、それぞれに対応する音響出力素子に供給する。
<フィルタ係数設定方法>
次に、上記の各ディジタルフィルタ111のフィルタ係数を設定する方法について説明する。ここでは、図4に例示するように、各音響出力素子12が音響出力素子アレイ100の軸21上にs[m]間隔で受聴者13の方向に向けて配置され、軸21上に配置された音響出力素子12列の中心点からL[m]の距離の位置に音響再生領域15の制御点13(強調制御点)及び音響遮断領域22の各制御点14(抑圧制御点)が配置されているものとする。また、図4における各音響出力素子12を上から順番にm=1,...,M(Mは音響出力素子12の総数、図4の例ではM=4)にそれぞれ対応する音響出力素子とし、制御点13をn=1に対応する制御点とし、各制御点14を上から順番にn=2,...,N(Nは制御点の総数、図4の例ではN=8)にそれぞれ対応する制御点とする。また、図4において、音響出力素子12列の中心点とn番目の制御点とを結ぶ直線と、軸21とがなす角度θを、各音響出力素子の正面方向を0度として定義する(θ=0)。この場合、m番目の音響出力素子12からn番目の制御点までの距離は、
Figure 2009219101
となる。このように求めた距離rmnを式(6)に代入することで、各音響出力素子12から各制御点14までの近似伝達関数Gmn(ω)を決定することができる。
次に、以下の方程式を満たすフィルタ係数H(ω)(m=1,...,M)を求める。
Figure 2009219101
ここで、式(9)の一番上の行の要素は制御点13(強調制御点)に対応する要素であり、上から2〜N番目の要素は各制御点14(抑圧制御点)に対応する要素である。すなわり、式(9)は、各音響出力素子(m=1,...,M)からそれぞれ出力される各音響信号H(ω)を、各近似伝達関数Gmn(ω)で畳み込んで各制御点でそれぞれ混合した場合に、当該畳み込み混合信号が、各音響出力素子12が並べられた軸方向に設定された音響再生領域15の制御点(n=1)で否零となり、当該音響再生領域15を除く音響遮断領域22の制御点(n=2,...,M)で零となることを示している。なお、各音響信号
(ω)は、各ディジタルフィルタ111に同一のインパルスが入力された場合の出力信号系列のz変換を意味している。そのため、このような関係を満たすH(ω)をm番目の音響出力素子12に対応するディジタルフィルタ11のフィルタ係数とすれば、制御点13(強調制御点)で音響信号が再生され、各制御点14(抑圧制御点)で音響信号が抑圧される指向特性が実現できる。
なお、上述のように各音響出力素子から各制御点までを自由空間と近似し、Gmn(ω)を簡略化できた結果、Nの数がMに比べて大きくても小さくても、ある程度適切な指向特性を実現できる。しかし、指向特性を最適化するためには、N+1≦Mであることが望ましい。また、Lは、再生したい周波数帯域の下限周波数の波長よりも大きいことが望ましいが、その半分以上でも構わない。また、各角度θの間隔(θとθn-1との差)は、Lにもよるが10〜45度の間であればよい。
また、音響再生領域15の少なくとも一部の制御点13で、畳み込み混合信号の値が周波数に応じて変化するフィルタ係数が設定する構成でもよい。この場合には、式(9)の代わりに、以下の方程式を満たすフィルタ係数H(ω)(m=1,...,M)を求める。
なお、D(ω)は周波数ωに依存して異なる値をとる関数である。
Figure 2009219101
さて、上記式(9)又は(10)をG・H=Rとおくと、音響出力素子アレイ100に接続されたディジタルフィルタ11の各フィルタ係数H(ω)は、以下の式で求められる。なお、αはαの転置行列を示す。
H=G・(G・G)−1・R …(11)
また、逆行列が不安定にならないように、G・Gの最大固有値に比べて小さな正の定数をδとしたとき、以下の式で代用して各フィルタ係数H(ω)を求めても良い。ただし、IはM×Mの単位行列である。
H=G・(G・G+δ・I)−1・R …(12)
また、式(9)(10)は単なる例示であり、強調制御点の数は2以上でもよいし、これらの式の強調制御点に対応する右辺の要素として式(9)(10)以外の値や関数を用いてもよい。
<音響信号出力処理>
次に、音響出力素子アレイ100の音響信号出力処理について説明する。
まず、信号入力端子115から再生音声に対応するアナログ信号が入力される。入力されたアナログ信号は各A/D変換機114でディジタル信号に変換され、上述のようにフィルタ係数が設定された各ディジタルフィルタ111に入力される。各ディジタルフィルタ111は、入力された各ディジタル信号を所望の指向特性を実現するための各供給信号に変換し、それらをそれぞれ各D/A変換機113に出力する。各D/A変換機113はそれらをアナログ信号に変換して各アンプ121に入力し、各アンプ121はそれらを増幅して各音響出力素子12に供給する。そして、各音響出力素子12は、それぞれ、入力信号に応じた音響信号を出力する。
<実測結果>
次に、上述のように構成した本形態の音響出力素子アレイ100の指向特性の実測結果を例示する。
図5は、本形態の音響出力素子アレイ100の指向特性の実測結果を例示するグラフである。ここでは、上方を受聴者13の方向とし、この方向を角度0度とし、反時計方向に90度、180度とし、22.5度おきに音響出力素子アレイ100の中心から50cm離れた点において音圧を測定した。また、ここでは、音響出力素子12の間隔sを0.048m(4.8cm)とし、Lを0.5m(50cm)とし、仮想的な制御点13(強調制御点)が角度θ=0°の位置にあるとし、仮想的な各制御点14(抑圧制御点)がそれぞれ角度θ=45°, θ=67.5°, θ=90°, θ=112.5°, θ=135°, θ=157.5°, θ=180°の位置にあるものとする。また、音速cは、室温Tを摂氏24度と仮定して、
c=33l.5+0.61T …(13)
により算出した。そして、これらの値を式(8)に代入することで、各距離rmnを算出し、近似伝達関数Gmn(ω)を式(6)により計算し、式(9)の方程式を満たすH(ω)をm番目の音響出力素子12に対応するディジタルフィルタ11のフィルタ係数として算出した。
また、図5では、同心円状に広がる破線の中心が最も低い音圧値を示し、外に広がるほど高い音圧値を示している。また、この破線間隔は10dBの音圧差を示している。また、図5の実線は上述のように音響出力素子アレイ100の中心から50cm離れた点において測定された音圧値を示す。図5に示すように、前方(受聴者13方向、0度)に比べて側面(90度、270度)や後方(180度)において15dB以上抑圧効果が高く、結果として受聴者13にのみ音が到達し、その他の方向には音が聞こえにくいという指向特性を持つ音響出力素子アレイ100が形成されていることがわかる。
ただし、斜め後方(135度、225度)と後方(180度)の抑圧効果を比較すると、後方の抑圧量が少ない。後方の音圧が斜め後方よりも7dB程度大きく、後方への音漏れがある。そこで、この後方の抑圧量を増やす工夫をした第2実施形態を次に説明する。
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、式(14)に示すように、フィルタ係数を求める時に各制御点の数Nに対応する重み係数(a,a,…,a)を乗算するようにしたものである。
Figure 2009219101
式(14)において、行列の行の上から順番に音響出力素子が並べられた軸正面(0度)から後方(180度)の方向に対応しているとすると、後方への音漏れを少なくするためには、重み係数がa<a<…<an−1であることが望ましい。式(14)をAGH=ARと置き、最小自乗法により誤差を最小にするフィルタ係数Hは式(15)で求められる。
H=(G・AAG)−1・AA・R …(15)
式(14)において、最後の行を音響出力素子アレイ100の180度の制御点をコントロールするための式であるとする。そして、例えば、a=1(n=1からN−1まで)、a=3(n=N)とし、音響出力素子12の数をM=4としてフィルタ係数を求める。つまり、音響出力素子12が同一軸上に並べられた音響遮断領域の当該軸上の制御点に対応する重み係数を最大に設定する。
その重み係数を乗算して求めたフィルタ係数H〜Hを、第1実施形態のディジタルフィルタ111のフィルタ係数として測定した指向特性を図6に示す。図6は、上記した音響出力素子アレイ100の指向特性の実験結果を例示した図5と基本的に同じ図であるが、音圧の測定点が異なる。図6では、音響出力素子アレイ100の中心から1.0mの距離の音圧を、反時計方向に15度置きに測定している。
図6中に一点鎖線で示す特性は、1個の音響出力素子(単一のスピーカ)での特性である。破線で示す特性は、重み係数を用いない音響出力素子アレイ100の指向特性である。これらの特性に対して重み係数a=3とした時の指向特性を実線で示す。0度を中心とした音響再生領域(例えば0±30度の範囲)における指向特性は変化が無いのに対して、後方(180度)の音圧を約4dB抑圧している。
図7に、更に重み係数a=8とした時の指向特性を示す。この時のn=1からN−1までの重み係数aはa=1である。後方(180度)の音圧を更に約2dB抑圧しているが、斜め後方(120度、240度)の音圧が増えている。そこで、斜め後方の音圧を増加させない目的で、重み係数を、a=1,a=1,a=2,a=4,a=6,a=8,a=10,a=12とした場合の指向特性を図8に示す。斜め後方の音圧を、重み係数を用いない場合の指向特性(破線)よりも小さくすることが出来た。しかし、その分、斜め前方(60度、330度)方向の音圧が約6dB増加し、指向特性の全体の幅が広がる特性を示す。
このように音響遮断領域の制御点の数Nに対応する重み係数(a,a,…,a)によって、音響出力素子アレイ100の指向特性を制御することが可能である。
また、式(15)に示すように厳密解ではなく最小自乗法によってフィルタ係数Hを求めた場合、強調制御点での特性が1になることが保障されない。そのため音響出力素子アレイ100の音色が、単一のスピーカの音色と異なってしまう場合がある。
そこで、単一のスピーカと同じ音色の音声を補償する目的で、補正フィルタF(ω)を導入する方法が考えられる。それは、式(16)に示すように最終的なフィルタ係数H を補正フィルタF(ω)によって補正された特性とする考えである。この場合、補正フィルタF(ω)は式(17)を満たす補正フィルタF(ω)を用いる。添え字のFは最終(Fianl)を意味する。
(ω)=F(ω)H(ω)…(16)
Figure 2009219101
この補正フィルタF(ω)により、例えば強調制御点n=1における畳み込み混合信号の特性が1になるように補正される。図9に補正フィルタF(ω)の効果を表す音響出力素子アレイ100が出力する音圧の周波数特性を示す。図9は、音響出力素子アレイ100の正面、つまり音を再生したい方向での音の周波数特性を示す。横軸は周波数(kHz)であり、縦軸は音圧(dB)である。
図9中に細線で示す特性が単一のスピーカの周波数特性である。点線が最小自乗法で求めたフィルタ係数を用いた音響出力素子アレイ100の周波数特性である。1.5kHz〜3KHzにおける音圧が、単一のスピーカの特性より約0.25dB高めに出ている。つまり、音響出力素子アレイ100と、単一のスピーカとで音色が異なっている。
この細線の特性に対して補正フィルタF(ω)を用いた特性を太線で示す。太線の特性は、点線の特性とほぼ等しい周波数特性を示すことが分かる。このように補正フィルタF(ω)により、強調制御点n=1における畳み込み混合信号の特性を1になるように補正することで、この発明の音響出力素子アレイ100の音を単一のスピーカの音とほぼ同じ音色にすることが出来る。なお、畳み込み混合信号の特性を1にするように補正する制御点は任意の制御点でかまわない。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本形態は、通信会議システムのように通信端末装置間で相互音声通信を行う場合に使用されるハンズフリー装置に本発明を適用した実施形態である。なお、以下では、これまで説明した内容との相違点を中心に説明する。
図10は、第3実施形態の音響出力素子アレイ200の構成を示す構成図である。
図10に示すように、本形態の音響出力素子アレイ200は、複数の音響出力素子12と、互いに独立なディジタルフィルタ111を含む信号供給部110と、音響遮断領域に配置された音声通信用の受音素子263(例えば、マイクロホン)と、エコーキャンセラ266と、入力端子264と、出力端子265とを有する。なお、図10では、信号供給部110が具備するアンプ112、D/A変換機113、A/D変換機114の記載を省略する。
ここで、複数の音響出力素子12は、第1実施形態と同様に、同一軸上に並べられ、各指向特性が当該軸に対して軸対称となる向きに配置される。しかし、各音響出力素子12は、各音響出力素子12の音響信号放出面が受聴者261側を向くように配置されるのではなく、これらが水平面と垂直な上方を向くように配置される。すなわち、各音響出力素子12が並べられる軸は、地面に対して垂直な軸であり、各音響出力素子12は、それぞれの音響信号放出面を地面と反対の方向に向けて配置される(図10参照)。なお、「垂直」とは数学的に厳密な垂直だけではなく、実用上同様な作用効果を得ることが可能な略垂直をも含む概念である。
また、信号供給部110の構成は、第1実施形態と同様でよく、各音響出力素子12の配置に応じ、音響再生領域を各音響出力素子12の上方に設定し、それを除く領域に音響抑圧領域を設定して、各仮想的な制御点を設定し、第1実施形態と同様に、ディジタルフィルタ111のフィルタ係数を設定すればよい。また、音声通信用の受音素子263は、音響遮断領域に配置されるが、この設置位置を音響遮断領域の仮想的な制御点としてフィルタ係数を設定することがより望ましい。
本形態の音響出力素子アレイ200の場合、受聴者261から発せられた音声は、受音素子263に受音され、電気信号に変換されてエコーキャンセラ266を通じて出力端子265から出力され、通信相手の装置へ送信される。一方、通信相手の装置から送信された送信信号は、エコーキャンセラ266の処理に利用されるとともに、信号入力端子115に入力される。信号入力端子115は、第1実施形態と同様に各ディジタルフィルタ111を用いて各供給信号を生成し、生成した各供給信号を対応する各音響出力素子12に供給し、各音響出力素子12はこれに応じた音響信号を放出する。
このような音響出力素子アレイ200の場合、指向特性は、上向きとなるため、受聴者261は、音響信号が放出される領域から側面方向にもれた音を聴くことになる。この場合、音響出力素子アレイ200の近くでは音は十分聞こえるが、離れると聞こえなくなるため、結果としてある特定の領域内のみで音が再生されることになり、周囲に音漏れがない会議装置を形成することが可能となる。
また、受聴者261の声を拾うための受音素子263を音響出力素子アレイ200の音響遮断領域に配置することで、各音響出力素子12から放出された音響信号が受音素子263に入るエコー信号を抑制することができ、結果的に後段のエコーキャンセラ266の負荷を軽減させることが期待できる。
図11は、第3実施形態の音響出力素子アレイ200の指向特性と、各音響出力素子12、受音素子263,267及び受聴者261,262の配置とを重ねた図である。なお、受音素子267は、受音素子263と同様なものである。また、この図の表記は図5と同様であり、その指向特定は、仮想的な抑圧制御点をL=50cmで、角度90度、120度、150度、180度の4箇所としてフィルタ係数を定めた場合のものである。
図11に示すように、音響出力素子アレイ200では、受聴者261,262の耳元には音が十分な音量で届くが、受音素子263,267の位置では音が小さいことがわかる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記の各実施形態では、ディジタルフィルタ111のフィルタ係数が事前計算によって設定される例を示した。しかし、音響出力素子と制御点との距離が動的に変化し、それらの距離情報を動的に得ることができる場合には、ディジタルフィルタ111のフィルタ係数を動的に設定し、指向特性を動的に変化させることとしてもよい。
また、図4の第1実施形態の音響出力素子アレイ100の構成は、A/D変換機114を各ディジタルフィルタ111に対応させて複数用いる例で説明したが、1個のA/D変換機の出力を各ディジタルフィルタ111に分配する構成でも構わない。
また、上記の各実施形態では、音響出力素子アレイを構成する各音響出力素子を同一性能のものとしたが、音響出力素子アレイを構成する音響出力素子の一部が他の音響出力素子と異なる性能を持っていてもよい。例えば、音響出力素子アレイを構成する音響出力素子の一部が二重音源素子であり、他の音響出力素子が単音源素子であってもよい。
また、上記の各実施形態では、音響出力素子アレイを構成する各音響出力素子の各音響信号放出面が同一方向を向くように各音響出力素子を配置したが、音響出力素子アレイの軸に対して軸対称な指向特性を実現できるのであれば、一部の音響出力素子が他の音響出力素子と異なる向きを向いていてもよい。
また、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
本発明は、例えば、オーディオ信号を再生する音響機器、通信機器等に利用することができる。
図1は、特許文献2に示された複数のスピーカを直線状に並べたスピーカアレイの構成を示す構成図である。 図2は、スピーカアレイの構成を例示するための図である。 図3は、第1実施形態の音響出力素子アレイを構成する音響出力素子及び制御点の配置を説明するための図である。 図4は、第1実施形態の音響出力素子アレイの構成を説明するための構成図である。 図5は、本形態の音響出力素子アレイの指向特性の実測結果を例示するグラフである。 図6は、第2実施形態の音響出力アレイの指向特性の一例を示す図である。 図7は、第2実施形態の音響出力アレイの指向特性の一例を示す図である。 図8は、第2実施形態の音響出力アレイの指向特性の一例を示す図である。 図9は、補正フィルタF(ω)の効果を表す音圧の周波数特性を示す図である。 図10は、第3実施形態の音響出力素子アレイの構成を示す構成図である。 図11は、第3実施形態の音響出力素子アレイの指向特性と、各音響出力素子、受音素子及び受聴者の配置とを重ねた図である。

Claims (15)

  1. 同一軸上に並べられ、各指向特性が当該軸に対して軸対称となる向きに配置される複数の音響出力素子と、
    前記各音響出力素子にそれぞれ対応する互いに独立なディジタルフィルタを含み、当該各ディジタルフィルタを用いて生成した各供給信号を、それぞれに対応する前記音響出力素子に供給する信号供給部と、を有し、
    前記各音響出力素子は、供給された前記各供給信号に応じた音響信号を出力し、
    前記ディジタルフィルタは、前記各音響出力素子から出力される各音響信号を、各音響出力素子から各制御点までが自由空間であると近似した場合における各音響出力素子から各制御点までの各近似伝達関数で畳み込んで各制御点でそれぞれ混合した場合に、当該畳み込み混合信号が、前記各音響出力素子が並べられた軸方向に設定された音響再生領域の制御点で否零となり、当該音響再生領域を除く音響遮断領域の制御点で零となるフィルタ係数が設定されたディジタルフィルタであり、
    前記各近似伝達関数は、各音響出力素子から各制御点までの各距離によってそれぞれ定まる関数である、
    ことを特徴とする音響出力素子アレイ。
  2. 請求項1に記載の音響出力素子アレイであって、
    前記各制御点は、前記各音響出力素子が並べられた軸上、及び/又は、当該軸に対して軸対称となる点の組の或る一点のみに設定される、
    ことを特徴とする音響出力素子アレイ。
  3. 請求項1又は2に記載の音響出力素子アレイであって、
    少なくとも一部の音響出力素子から任意の制御点までの前記近似伝達関数は、当該音響出力素子と当該制御点との間の距離をrとし、音速をcとし、虚数単位をjとし、周波数をωとし、ネイピア数をexpとし、α≠0を定数とした場合における、(α/r)・exp(‐j・ω・r/c)である、
    ことを特徴とする音響出力素子アレイ。
  4. 請求項1から3の何れかに記載の音響出力素子アレイであって、
    少なくとも一部の前記音響出力素子は、その第1部位から第1音響信号を出力し、第2部位から当該第1音響信号と位相が反転した第2音響信号を出力する二重音源素子であり、
    前記二重音源素子である音響出力素子から任意の制御点までの前記近似伝達関数は、第1部位と当該制御点との間の距離をrとし、第2部位と当該制御点との間の距離をrとし、音速をcとし、虚数単位をjとし、周波数をωとし、ネイピア数をexpとし、α>0及びα>0を定数とした場合における、(α/rF)・exp(‐j・ω・rF/c)‐(α/rR)・exp(‐j・ω・rR/c)である、
    ことを特徴とする音響出力素子アレイ。
  5. 請求項1から4の何れかに記載の音響出力素子アレイであって、
    前記ディジタルフィルタは、前記音響再生領域の少なくとも一部の制御点で、前記畳み込み混合信号の値が周波数に応じて変化するフィルタ係数が設定されたディジタルフィルタである、
    ことを特徴とする音響出力素子アレイ。
  6. 請求項1から5の何れかに記載の音響出力素子アレイであって、
    前記各音響出力素子は、供給された前記各供給信号に応じた音響信号の少なくとも一部を前記音響再生領域側に向けて出力する、
    ことを特徴とする音響出力素子アレイ。
  7. 請求項1から6の何れかに記載の音響出力素子アレイであって、
    前記フィルタ係数を求める時に、前記近似伝達関数に前記各制御点の数に対応する重み係数が乗算されることを特徴とする音響出力素子アレイ。
  8. 請求項7に記載の音響出力素子アレイであって、
    前記音響遮断領域における前記軸上の制御点に対応する前記重み係数が最大であることを特徴とする音響出力素子アレイ。
  9. 請求項7または8に記載の音響出力素子アレイであって、
    前記音響再生領域の制御点での前記畳み込み混合信号の特性が1になるように補正することを特徴とする音響出力素子アレイ。
  10. 請求項1から9の何れかに記載の音響出力素子アレイであって、
    前記音響遮断領域に配置された音声通信用の受音素子をさらに有し、
    前記受音素子から出力された出力信号は、通信相手の装置へ送信され、
    前記信号供給部は、前記通信相手の装置から送信された送信信号が前記各ディジタルフィルタに入力されることで生成された各供給信号を前記音響出力素子に供給する、
    ことを特徴とする音響出力素子アレイ。
  11. 請求項10に記載の音響出力素子アレイであって、
    前記複数の音響出力素子が並べられる軸は、地面に対して垂直な軸であり、
    前記各音響出力素子は、それぞれの音響信号放出面を地面と反対の方向に向けて配置される、
    ことを特徴とする音響出力素子アレイ。
  12. 同一軸上に並べられ、各指向特性が当該軸に対して軸対称となる向きに配置された複数の音響出力素子に対し、信号供給部が、各音響出力素子にそれぞれ対応する互いに独立な各ディジタルフィルタを用いて生成した各供給信号を供給する過程と、
    前記各音響出力素子が、供給された前記各供給信号に応じた音響信号を出力する過程と、を有し、
    前記ディジタルフィルタは、前記各音響出力素子から出力される各音響信号を、各音響出力素子から各制御点までが自由空間であると近似した場合における各音響出力素子から各制御点までの各近似伝達関数で畳み込んで各制御点でそれぞれ混合した場合に、当該畳み込み混合信号が、前記各音響出力素子が並べられた軸方向に設定された音響再生領域の制御点で否零となり、当該音響再生領域を除く音響遮断領域の制御点で零となるフィルタ係数が設定されたディジタルフィルタであり、
    前記各近似伝達関数は、各音響出力素子から各制御点までの各距離によってそれぞれ定まる関数である、
    ことを特徴とする音響出力方法。
  13. 請求項12に記載の音響出力方法であって、
    前記各制御点は、前記各音響出力素子が並べられた軸上、及び/又は、当該軸に対して軸対称となる点の組の或る一点のみに設定される、
    ことを特徴とする音響出力方法。
  14. 請求項12または13に記載の音響出力方法であって、
    前記フィルタ係数を求める時に、前記近似伝達関数に前記各制御点の数に対応する重み係数が乗算されることを特徴とする音響出力方法。
  15. 請求項14に記載の音響出力方法であって、
    前記音響遮断領域における前記軸上の制御点に対応する前記重み係数が最大であることを特徴とする音響出力方法。
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