JP2009216104A - 鉄道車両駆動ユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】車輪から負荷される荷重を適切に支持することにより、信頼性の高い鉄道車両駆動ユニットを提供する。
【解決手段】鉄道車両用車輪駆動装置10は、鉄道車両の車輪11を回転駆動する駆動ユニットである。具体的には、車輪11の内径面に保持されて、車輪11と一体回転する減速機ハウジング13と、駆動源に接続されている入力側回転部材14と、入力側回転部材14の回転を減速して減速機ハウジング13に伝達する減速機構15と、減速機ハウジング13の内部に配置され、車両本体に連結固定される固定部材23と、減速機ハウジング13をキャリア23に対して回転自在に支持する複数の車軸軸受とを備える。そして、複数の車軸軸受は、負荷される最大負荷面圧が略均等になるような位置関係で配置される。
【選択図】図1

Description

この発明は、鉄道車両駆動ユニット、特に左右の車輪を独立して駆動可能な鉄道車両駆動ユニットに関するものである。
従来の鉄道車両駆動ユニットは、例えば、特開2007−230508号公報(特許文献1)に開示されている。同公報に開示されている鉄道車両駆動ユニットは、モータと、モータの回転を減速して車輪に伝達する減速機とを備える。
この鉄道車両駆動ユニットには、鉄道車両の運行に必要なトルクを発生させる共に、広い客室スペースを得るために、小型で高減速比が得られるサイクロイド減速機が採用されている。具体的には、モータと一体回転する入力軸と、入力軸に設けられた偏心部に回転自在に支持される曲線板と、曲線板の外周に係合して曲線板に自転運動を生じさせる外ピンと、曲線板の自転運動を回転運動に変換して車輪に伝達する内ピンとで構成される。
特開2007−230508号公報
鉄道車両の車輪には、鉄道車両本体の自重によるラジアル荷重と、旋回時の遠心力によるアキシアル荷重とが負荷される。また、近年の鉄道車両の高積載化、および高速化に伴って、これらの荷重も大きくなっている。
そこで、この発明の目的は、車輪から負荷される荷重を適切に支持することにより、信頼性の高い鉄道車両駆動ユニットを提供することである。
この発明に係る鉄道車両駆動ユニットは、鉄道車両の車輪を回転駆動する駆動ユニットである。具体的には、車輪と一体回転する減速機ハウジングと、駆動源に接続されている入力側回転部材と、入力側回転部材の回転を減速して減速機ハウジングに伝達する減速機構と、減速機ハウジングの内部に配置され、車両本体に連結固定される固定部材と、減速機ハウジングを固定部材に対して回転自在に支持する複数の車軸軸受とを備える。そして、複数の車軸軸受は、負荷される最大負荷面圧が略均等になるような位置関係で配置される。
上記構成のように、車輪からの荷重に対して複数の車軸軸受それぞれに負荷される最大負荷面圧を均一化することにより、車軸軸受全体としての軸受寿命を延伸することができる。その結果、耐久性に優れ、信頼性の高い鉄道車両駆動ユニットを得ることができる。
なお、負荷面圧は、接触楕円のどこで測定するかによって変化する。そこで、この発明では、複数の車軸軸受それぞれについて、負荷面圧の最も大きい位置、すなわち接触楕円の中心で測定した「最大負荷面圧」が略均等であればよい。
例えば、複数の車軸軸受は、車輪の嵌合幅中心の軸方向一方側に配置される第1の車軸軸受と、車輪の嵌合幅中心の軸方向他方側に配置される第2の車軸軸受とに区分される。なお、本明細書中「第1の車軸軸受」は、単一の車軸軸受を指す場合のみならず、複数の車軸軸受の集合体を指す語としても使用される。「第2の車軸軸受」についても同様である。
一実施形態として、複数の車軸軸受は、それぞれ車輪の嵌合幅中心からの軸方向距離が異なっている。このように、複数の車軸軸受それぞれに負荷される荷重を均一化することによって、両軸受の最大負荷面圧を略均等にすることができる。
他の実施形態として、複数の車軸軸受は、転動体の数が互いに異なる転がり軸受である。さらに他の実施形態として、複数の車軸軸受は、転動体の直径が互いに異なる転がり軸受である。さらに他の実施形態として、複数の車軸軸受は、それぞれ転動体として複数のころを有するころ軸受であって、ころのころ長さが互いに異なっている。さらに他の実施形態として、複数の車軸軸受は、それぞれ軌道輪と、転動体として複数の円錐ころを有する円錐ころ軸受であって、軌道輪と円錐ころとの接触角が互いに異なっている。
または、上記の各構成のように、複数の車軸軸受それぞれの負荷容量を異ならせてもよい。相対的に大きな荷重が負荷される軸受の負荷容量を大きくすることによっても、両軸受の最大負荷面圧を略均等にすることができる。
この発明によれば、車輪からの荷重に対して複数の車軸軸受それぞれに負荷される最大負荷面圧を均一化することにより、車軸軸受全体としての軸受寿命を延伸することができる。その結果、耐久性に優れ、信頼性の高い鉄道車両駆動ユニットを得ることができる。
図1〜図3を参照して、この発明の一実施形態に係る鉄道車両駆動ユニット12および鉄道車両駆動ユニット12を含む鉄道車両用車輪駆動装置10を説明する。なお、図1は鉄道車両用車輪駆動装置10の概略断面図、図2は図1のII−IIにおける断面図、図3は偏心部16a,16b周辺の拡大図である。
まず、図1を参照して、鉄道車両用車輪駆動装置10は、鉄道車両用車輪11(以下「車輪11」という)と、車輪11の内径面に保持されると共に、駆動源(図示省略)の回転を減速して車輪11に伝達する駆動ユニット12(以下「鉄道車両駆動ユニット12」という)とで構成されており、鉄道車両本体(図示省略)の下部に配置されている。
鉄道車両駆動ユニット12は、減速機ハウジング13と、入力側回転部材14と、減速機構15と、固定部材としてのキャリア23と、第1および第2の車軸軸受24,25とを主に備える。
減速機ハウジング13は、車輪11の内径面に保持されると共に、内部に減速機構15を保持している。なお、減速機構15とは、偏心部材16、公転部材としての曲線板17,18、自転規制部材としての複数の内ピン19、外周係合部材としての複数の外ピン20、およびこれらに付随する部材によって構成されており、入力側回転部材14の回転を減速して減速機ハウジング13に伝達する。
また、減速機ハウジング13の内径面とキャリア23の外径面との間には第1および第2の車軸軸受24,25が配置されている。そして、減速機ハウジング13は、キャリア23に対して回転自在となっており、車輪11と一体回転する出力側回転部材(車軸)としても機能する。
第1の車軸軸受24は、キャリア23の外径面に固定される内輪24aと、減速機ハウジング13の内径面に固定される外輪24bと、内輪24aおよび外輪24bの間に配置される複数の円錐ころ24cと、隣接する円錐ころ24cの間隔を保持する保持器24dとを含む円錐ころ軸受である。第2の転がり軸受25も同様の構成であるので、説明は省略する。第1および第2の車軸軸受24,25として高負荷容量の円錐ころ軸受を採用することにより、車輪14に作用するラジアル荷重およびアキシアル荷重を適切に支持することができる。
また、第1の車軸軸受24は車輪11の嵌合位置(より具体的には「車輪11の嵌合幅中心」であって、図1中一点差線lで示す位置を指す)の軸方向一方側(図1中の右側)で、第2の車軸軸受25は車輪11の嵌合幅中心の軸方向他方側(図2中の左側)でそれぞれ減速機ハウジング13をキャリア23に対して回転自在に支持している。この実施形態においては、第1および第2の車軸軸受24,25それぞれの車輪11の嵌合幅中心からの軸方向距離(オフセット)は、等しく設定されている。
さらに、第1および第2の車軸軸受24,25は、互いの小径側端部を向かい合わせて配置されている(背面組合せ)。これにより、車輪11に作用するモーメント荷重を適切に支持することができる。
また、減速機ハウジング13の軸方向両端部には、減速機ハウジング13の内部に潤滑油を封入するための密封部材26,27が設けられている。この密封部材26,27は、キャリア23の外径面に摺接するリップ部を有し、減速機ハウジング13の内径面に固定されて、減速機ハウジング13と一体回転する。
入力側回転部材14は、駆動源(例えば、モータ等)に接続されて、駆動源の回転に伴って回転する。また、曲線板17,18の両側で転がり軸受28a,28bによって両持ち支持されており、キャリア23に対して回転自在に保持されている。なお、この実施形態においては、転がり軸受28a,28bとして円筒ころ軸受を採用している。また、転がり軸受28aのさらに外側(図1中の右側)は、減速機ハウジング13の内部に潤滑油を封入する密封部材29が配置されている。
偏心部材16は、第1および第2の偏心部16a,16bを有し、入力側回転部材14に嵌合固定されている。第1および第2の偏心部16a,16bは、偏心運動による遠心力を互いに打ち消しあう位相、つまり180°位相を変えて配置されている。すなわち、第1および第2の偏心部16a,16bは、偏心運動によって生じる不均一な荷重を吸収するバランス調整機構としても機能する。
曲線板17は、転がり軸受30によって第1の偏心部16aに相対回転自在に保持されている。そして、入力側回転部材14の回転軸心を中心とする公転運動を行う。また、図2を参照して、曲線板17は、厚み方向に貫通する第1および第2の貫通孔17a,17bと、外周にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形17cを有する。
第1の貫通孔17aは、曲線板17の中央部に形成されており、第1の偏心部16aおよび転がり軸受30を受け入れる。第2の貫通孔17bは、曲線板17の自転軸心を中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、キャリア23に保持される内ピン19を受入れる。波形17cは、減速機ハウジング13に保持される外ピン20に係合して、曲線板17の回転を減速機ハウジング13に伝達する。なお、曲線板18も同様の構成であって、転がり軸受31によって第2の偏心部16bに回転自在に保持されている。
転がり軸受30は、偏心部16aの外径面に嵌合し、その外径面に内側軌道面を有する内輪部材30aと、曲線板17の貫通孔17aの内径面に直接形成された外側軌道面と、内側軌道面および外側軌道面の間に配置される複数の円筒ころ30bと、隣接する円筒ころ30bの間隔を保持する保持器30cとを備える円筒ころ軸受である。転がり軸受31も同様の構成であるので、説明は省略する。
なお、2枚の曲線板17,18の中心点をGとすると、中心点Gは車輪11の重心位置と一致させているが、車輪11から鉄道車両駆動ユニット12に負荷されるモーメント荷重を極小化させるためには、中心点Gと車輪重心位置とをオフセットさせたほうがよい。これにより、構成部品(「曲線板17,18、内ピン19、および外ピン20等」を指す)が傾いて、接触部分に過大な負荷が生じるのを防止することができる。その結果、鉄道車両駆動ユニット12の回転がスムーズになると共に、鉄道車両用車輪駆動装置10の耐久性が向上する。
また、2つ曲線板17,18の間には、複数の内ピン19に外接する外接リング34が配置されている。これにより、曲線板17,18の軸方向の動き量を規制している。なお、曲線板17,18と外接リング34とは滑り接触するので、互いに接触する壁面に研削加工を施す等するのが望ましい。また、この外接リング34の機能は、複数の内ピン19に内接する内接リング、または複数の外ピン20に内接する内接リングでも代替することができる。
内ピン19は、入力側回転部材14の回転軸心を中心とする円周軌道上に等間隔に複数個設けられている。複数の内ピン19のうちの一部は、中央に大径部と、両端に大径部より相対的に直径の小さい小径部とを有する略円柱形状である。そして、小径部がキャリア23に保持されると共に、大径部が曲線板17,18の第2の貫通孔17b,18bの内部に位置している。また、大径部の端面は、キャリア23の壁面に当接して内ピン19を位置決めする基準面として機能する。なお、他の内ピン19は、長手方向全域で直径が同一の単純円柱形状である。
さらに、曲線板17,18の第2の貫通孔17b,18bの内壁面に当接する位置(大径部)には、内ピンカラー19aが取り付けられている。これにより、曲線板17,18と内ピン19との摩擦抵抗を低減することができる。なお、この実施形態に係る内ピンカラー19aは、滑り軸受である。
なお、第2の貫通孔17b,18bの直径は、内ピン19の直径(「内ピンカラー19aを含む最大外径」を指す)と比較して所定分だけ大きく設定されている。その結果、内ピン19は、曲線板17,18が入力側回転部材14の回転に伴って回転しようとする際に、曲線板の公転運動を許容しつつ、自転運動を阻止する自転規制部材として機能する。
外ピン20は、入力側回転部材14の回転軸心を中心とする円周軌道上に等間隔に複数個設けられている。この外ピン20は、その中央部が減速機ハウジングに保持されると共に、両端部が車軸軸受24,25に当接して固定されている。そして、外ピン20は、曲線板17,18の波形17c,18cに係合して、減速機ハウジング13を入力側回転部材14に対して減速回転させる。
さらに、曲線板17,18の波形17c,18cに当接する位置には、外ピンカラー20aが取り付けられている。これにより、曲線板17,18と外ピン20との摩擦抵抗を低減することができる。なお、この実施形態に係る外ピンカラー20aは、滑り軸受である。
カウンタウェイト21は、重心と異なる位置に入力側回転部材14を受け入れる貫通孔を有し、偏心部16aの偏心運動による不釣合い慣性偶力を打消す位相、つまり偏心部16aと180°位相を変えて入力側回転部材14に嵌合固定されている。つまり、カウンタウェイト21は、偏心部16aの偏心運動によって生じる不均一な荷重を吸収するバランス調整機構として機能する。なお、カウンタウェイト22も同様の構成であって、偏心部16bの偏心運動による不釣合い慣性偶力を打ち消す位相で入力側回転部材14に嵌合固定されている。
図3を参照して、2枚の曲線板17,18の中心点Gの右側について、中心点Gと曲線板17の中心との距離をL、曲線板17、転がり軸受30、および偏心部16aの質量の和をm、曲線板17の重心の回転軸心からの偏心量をεとし、中心点Gとカウンタウェイト21との距離をL、カウンタウェイト21の質量をm、カウンタウェイト21の重心の回転軸心からの偏心量をεとすると、L×m×ε=L×m×εを満たす関係となっている。また、図3の中心点Gの左側の曲線板18とカウンタウェイト22との間にも同様の関係が成立する。
キャリア23は、鉄道車両本体に連結固定されており、曲線板17,18に対面する壁面に内ピン19を保持すると共に、外径面に嵌合固定された第1および第2の車軸軸受24,25によって減速機ハウジング13を、内径面に嵌合固定された転がり軸受28a,28bによって入力側回転部材14をそれぞれ回転自在に支持している。
また、キャリア23には、減速機構15と車軸軸受24,25との間で潤滑油を循環させる潤滑油循環機構を備える。この潤滑油循環機構は、入力側回転部材14の回転に伴って生じる遠心力を利用して潤滑油を循環させる。具体的には、キャリア23の内部を径方向に貫通し、潤滑油を径方向外側から径方向内側に向かって還流する複数の潤滑油路32,33が形成されている。
潤滑油路32の径方向外側の開口部は、第1の車軸軸受24の大径側端部と密封部材26との間に設けられている。同様に、潤滑油路33の径方向外側の開口部は、第2の車軸軸受25の大径側端部と密封部材27との間に設けられている。円錐ころ軸受24,25の内部の潤滑油は、遠心力によって大径側端部から排出される。そこで、潤滑油路32,33の径方向外側の開口部は、第1および第2の車軸軸受24,25の大径側端部に隣接する位置に設けるのが望ましい。
一方、潤滑油路32の径方向内側の開口部は、偏心部16aに対面する位置に設けられている。同様に、潤滑油路32の径方向内側の開口部は、偏心部16bに対面する位置に設けられている。入力側回転部材14は高速回転するので、偏心部16a,16bの周辺、より具体的には転がり軸受30,31には多くの潤滑油が必要となる。そこで、潤滑油路32,33の径方向内側の開口部は、偏心部16a,16bに対面する位置に設けるのが望ましい。
上記構成の鉄道車両駆動ユニット12の作動原理を詳しく説明する。
まず、駆動源の回転に伴って入力側回転部材14および偏心部材16が一体回転する。このとき、曲線板17,18も回転しようとするが、第2の貫通孔17b,18bに挿通する内ピン19に自転運動を阻止され、公転運動のみを行うことになる。つまり、曲線板17,18は、入力側回転部材14の回転軸心を中心とする円周軌道上を平行移動する。
曲線板17,18が公転運動すると、波形17c,18cと外ピン20とが係合し、減速機ハウジング13および車輪11が入力側回転部材14と同一方向に一体回転する。このとき、曲線板17,18から減速機ハウジング13に伝達される回転は減速され、高トルクになっている。
具体的には、外ピン20の数をZ、曲線板17,18の波形の数をZとすると、鉄道車両駆動ユニット12の減速比はZ/(Z−Z)で算出され、さらに減速比をnとすると、図1の実施形態における速度比は1/(n+1)で算出される。図2に示す実施形態では、Z=24、Z=22であるので、減速比は11となり、速度比は1/12となる。したがって、低トルク、高回転型の駆動源を採用した場合でも、車輪11に必要なトルクを伝達することが可能となる。
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速機構15を採用することにより、コンパクトで高減速比の鉄道車両駆動ユニット12を得ることができる。また、内ピン19および外ピン20の曲線板17,18に当接する位置にカラー19a,20aを設けたことにより、接触部分の摩擦抵抗が低減される。その結果、鉄道車両駆動ユニット12の伝達効率が向上する。
次に、上記構成の鉄道車両駆動ユニット12の潤滑油の流れを詳しく説明する。
まず、減速機ハウジング13の内部には、予め潤滑油が封入されている。この潤滑油は、入力側回転部材14が回転に伴う遠心力によって径方向外側に運ばれる。このとき、転がり軸受28a,28b,30,31、曲線板17,18と転がり軸受30,31との間、曲線板17,18と内ピン19との間、内ピン19と内ピンカラー19aとの間、曲線板17,18と外接リング34との間、曲線板17,18と外ピン20との間、および外ピン20と外ピンカラー20aとの間にそれぞれ供給される。
さらに、潤滑油は、第1および第2の車軸軸受24,25の小径側端部から軸受内部を通って、大径側端部側に排出される。そして、第1および第2の車軸軸受24,25と密封部材26,27とで囲まれた空間に到達した潤滑油は、潤滑油路32,33を通って入力側回転部材14の周辺に還流する。
このように、鉄道車両駆動ユニット12の内部で潤滑油を循環させることにより、潤滑油の封入量を削減することができる。その結果、鉄道車両駆動ユニット12の発熱およびトルク損失を低減することができると共に、高速回転部(「偏心部材16の周辺」を指す)の潤滑を確保することができる。また、入力側回転部材14の回転に伴う遠心力を利用して潤滑油を循環させることにより、外部に循環装置を設ける場合と比較して装置をコンパクト化することができる。
次に、表1および図4を参照して、第1および第2の車軸軸受24,25のオフセットと軸受寿命との関係について説明する。なお、表1および図4は、オフセットを変化させたときの第1および第2の車軸軸受24,25の軸受寿命のシミューレション結果である。また、以下の説明は、車輪11が鉄道車両の進行方向を向いて左側に配置されているものとして行う。この場合、鉄道車両が右旋回する時に、車輪11に図1の右側から左側に向かってアキシアル荷重が負荷される。
Figure 2009216104
まず、図1に示す鉄道車両用車輪駆動装置10は、車輪11の嵌合幅中心に対する第1および第2の車軸軸受24,25の中心のオフセット、つまり、第1および第2の車軸軸受24,25の軸方向中心位置と車輪11の嵌合幅中心とのオフセットをδとするとδ=0、すなわち、車輪11の中心から第1の車軸軸受24までの軸方向距離と、第2の車軸軸受25までの軸方向距離とが等距離となっている。表1を参照して、この場合(δ=0)における第2の車軸軸受25の軸受寿命は、第1の車軸軸受24のおよそ6倍となっている。これは、第1および第2の車軸軸受24,25の負荷容量は同一であるので、第1の車軸軸受24に負荷される荷重が第2の車軸軸受25と比較して遥かに大きいことを示している。
次に、表1を参照して、図1の車輪11を第1の車軸軸受24の側に近づけると(δ>0)、第1の車軸軸受24の軸受寿命は途中(δ≒60mm辺り)まで増加し、その後減少している。一方、第2の車軸軸受25の軸受寿命は単調減少している。そして、総合寿命は、10mm≦δ≦50mmの範囲内で250万kmを超え、δ≒30mmで最も長く(261万km)なっている。
このように、オフセットδを調整することにより、第1および第2の車軸軸受24,25に負荷される荷重を均一化することができる。その結果、両軸受の最大負荷面圧を略均等にすることができるので、耐久性に優れ、信頼性の高い鉄道車両用車輪駆動装置10を得ることができる。
また、上記構成とすれば、第1および第2の車軸軸受24,25それぞれの軸受寿命をも均一化することができるので、両軸受のメンテナンスのタイミングを合わせることができる。これにより、メンテナンスに要する時間や費用を低減することが可能となる。
なお、上記の実施形態においては、最大負荷面圧を均等にするために、車輪11の嵌合幅中心の軸方向一方側に第1の車軸軸受24を、軸方向他方側に第2の車軸軸受25を配置した例を示したが、これに限ることなく、最大負荷面圧が略均等となる位置関係であれば、どのような配置形態であってもよい。例えば、相対的に車両本体に近い側(内側)に車輪11を、相対的に車両本体から遠い側(外側)に第1および第2の車軸軸受24,25を配置してもよいし、その逆であってもよい。
また、上記の実施形態においては、第1および第2の車軸軸受24,25の最大負荷面圧を均等にする方法として、オフセットを変化させた例を示したが、これに限ることなく、他の方法を採用することができる。
例えば、第1および第2の車軸軸受24,25の負荷容量を互いに異ならせてもよい。具体的には、δ=0mmの状態で相対的に大きな荷重が負荷される第2の車軸軸受25の負荷容量を第1の車軸軸受24より大きくする。これによっても、第1および第2の車軸軸受の最大負荷面圧を略均等にすることができる。
なお、負荷容量を異ならせる具体的な方法としては、第1および第2の車軸軸受24,25の保持する円錐ころ24c,25cの本数を異ならせてもよい。具体的には、相対的に大きな荷重の負荷される第2の車軸軸受25の保持する円錐ころ24cの本数を第1の車軸軸受24と比較して多くする。
または、円錐ころ24c,25cの直径を異ならせてもよいし、ころ長さを異ならせてもよい。具体的には、上記と同様に、円錐ころ25cの直径を円錐ころ24cと比較して大きくしたり、ころ長さを長くする。
または、軌道輪(内輪および外輪)と円錐ころとの接触角を異ならせてもよい。具体的には、相対的に大きなアキシアル荷重が負荷される第2の車軸軸受25の接触角を第1の車軸軸受24と比較して大きくする。
さらには、第1および第2の車軸軸受24,25の軸受種類を互いに異ならせてもよい。例えば、相対的に大きな荷重の負荷される第2の車軸軸受25を円錐ころ軸受とし、相対的に小さな荷重しか負荷されない第1の車軸軸受24をアンギュラ球軸受とすること等が考えられる。
上記の各方法によっても、耐久性に優れ、信頼性の高い鉄道車両用車輪駆動装置10を得ることができる。また、上記の方法を適宜組み合わせることによって、相乗効果が期待できる。
次に、数式(1)〜(3)および図5を参照して、第1の車軸軸受24に負荷される最大負荷面圧Pmaxの測定方法を説明する。なお、数式(1)〜(3)は最大負荷面圧を算出するための一般式、図5は臨界剪断応力τ、残留応力生成深さZ、および軸受の曲率の和Σρから最大負荷面圧Pmaxを推定する基礎となるグラフである。
まず、最大負荷面圧Pmaxは、内輪24a(外輪24bでも可、以下同じ)と円錐ころ24cとの接触楕円の短軸半径b、および内輪24aと円錐ころ24cとの接触点の中央での接触面下の任意の深さZにおける主剪断応力τから数式(1)で算出することができる。また、数式(1)は、内輪24aの曲率ρの和Σρを用いて、数式(2)で表わすことができる。さらに、最大主剪断応力τmaxは、数式(3)で与えられる深さZ45°に作用する。
Figure 2009216104
Figure 2009216104
Figure 2009216104
ここで、内輪24aの外径面を電界研磨しながら表面にX線を照射し、各深さZにおける主剪断応力τを測定すると、理想的には、所定の深さZまでは主剪断応力τが増加し、その後減少する(残留応力分布のピークが現れる)。すなわち、最大主剪断応力τmaxの作用する深さZ45°(=Z)を実測することができる。また、Σρは軸受の型番から計算できる値であるので、これらを数式(2)および(3)に代入すれば、最大接触面圧Pmaxを算出することができる。
ただし、現実に使用された第1の車軸軸受24には、主剪断応力τの他に異物の噛み込みや表面層の温度上昇等による圧縮残留応力が生成される。その結果、上記のようなX線照射によって残留応力分布のピークを特定することができない場合がある。この場合、臨界剪断応力τ、残留応力生成深さZ、および軸受の曲率の和Σρから図5を用いて最大接触面圧Pmaxを推定することもできる。
残留応力分布のピークが特定できないような場合、測定される残留応力分布は深さZが深くなるにつれて減少するので、残留応力が測定されなくなる(残留応力=0MPa)深さを残留応力生成深さZと定義する。また、残留応力分布にピークが認められたものについて数式(2)および(3)から最大負荷面圧Pmaxを算出し、その最大負荷面圧Pmaxが負荷されるときに残留応力生成深さZに作用する主剪断応力を臨界剪断応力τと定義する。なお、過去の測定結果からτ=600MPaが得られている。
すなわち、残留応力生成深さZを測定すれば、図5を用いて、τ(=600MPa)およびZ×Σρの交点と最大接触面圧の曲線との位置関係から最大接触面圧Pmaxを推定することができる。
上記のいずれかの方法によって、第1の車軸軸受24に負荷される最大接触面圧を得ることができる。なお、第2の車軸軸受25に負荷される最大接触面圧も同様の方法で得られることは言うまでもない。
なお、上記の実施形態においては、減速部Bの曲線板17,18を180°位相を変えて2枚設けたが、この曲線板の枚数は任意に設定することができ、例えば、曲線板を3枚設ける場合は、120°位相を変えて設けるとよい。
また、上記の実施形態において、偏心部16a,16bを有する偏心部材16を入力側回転部材14に嵌合固定した例を示したが、これに限ることなく、入力側回転部材14の外径面に直接偏心部16a,16bを形成してもよい。
また、上記の実施形態における転がり軸受24,25,28a,28b,30,31は、図1の形態に限定されることなく、例えば、すべり軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受、針状ころ軸受、自動調心ころ軸受、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、3点接触球軸受、4点接触玉軸受等、すべり軸受であるか転がり軸受であるかを問わず、転動体がころであるか玉であるかを問わず、さらには複列か単列かを問わず、あらゆる軸受を適用することができる。
また、上記の実施形態におけるカラー19a,19bは、滑り軸受である例を示したが、これに限ることなく、転がり軸受を採用してもよい。この場合、厚み方向にコンパクト化する観点から針状ころ軸受を採用するのが望ましい。
また、上記の実施形態においては、2個の車軸軸受24,25によって減速機ハウジング13を支持した例を示したが、これに限ることなく、複数であれば3個以上の車軸軸受で減速機ハウジング13を支持してもよい。この場合、車輪12の軸方向一方側に配置される車軸軸受(第1の車軸軸受)と、軸方向他方側に配置される車軸軸受(第2の車軸軸受)とは同数である必要はなく、例えば、より負荷の大きい側に多くの車軸軸受を配置するようにしてもよい。
さらに、鉄道車両用車輪駆動装置10には、上記構成の減速機構15に限ることなく、任意の構成の減速機構を採用することができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明は、鉄道車両駆動ユニットに有利に利用される。
この発明の一実施形態に係る鉄道車両用車輪駆動装置を示す図である。 図1のII−IIにおける断面図である。 図1の偏心部周辺の拡大図である。 車軸軸受のオフセットと軸受寿命との関係を示す図である。 最大接触面圧の推定の基礎となるグラフである。
符号の説明
10 鉄道車両用車輪駆動装置、11 車輪、12 鉄道車両駆動ユニット、13 減速機ハウジング、14 入力側回転部材、15 減速機構、16 偏心部材、16a,16b 偏心部、17,18 曲線板、17a,17b,18a,18b 貫通孔、17c,18c 波形、19 内ピン、20 外ピン、19a,20a カラー、21,22 カウンタウェイト、23 キャリア、24,25 車軸軸受、24a,25a 内輪、24b,25b 外輪、24c,25c,30b,31b 円錐ころ、24d,25d,30c,31c 保持器、26,27,29 密封部材、28a,28b,30,31 転がり軸受、30a,31a 内輪部材、32,33 潤滑油路、34 外接リング。

Claims (7)

  1. 鉄道車両の車輪を回転駆動する駆動ユニットであって、
    前記駆動ユニットは、
    車輪の内径面に保持されて、車輪と一体回転する減速機ハウジングと、
    駆動源に接続されている入力側回転部材と、
    前記入力側回転部材の回転を減速して前記減速機ハウジングに伝達する減速機構と、
    前記減速機ハウジングの内部に配置され、車両本体に連結固定される固定部材と、
    前記減速機ハウジングを前記固定部材に対して回転自在に支持する複数の車軸軸受とを備え、
    前記複数の車軸軸受は、負荷される最大負荷面圧が略均等になるような位置関係で配置される、鉄道車両駆動ユニット。
  2. 前記複数の車軸軸受は、車輪の嵌合幅中心の軸方向一方側に配置される第1の車軸軸受と、車輪の嵌合幅中心の軸方向他方側に配置される第2の車軸軸受とに区分される、請求項1に記載の鉄道車両駆動ユニット。
  3. 前記複数の車軸軸受は、それぞれ車輪の嵌合幅中心からの軸方向距離が異なっている、請求項1または2に記載の鉄道車両駆動ユニット。
  4. 前記複数の車軸軸受は、転動体の数が互いに異なる転がり軸受である、請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道車両駆動ユニット。
  5. 前記複数の車軸軸受は、転動体の直径が互いに異なる転がり軸受である、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄道車両駆動ユニット。
  6. 前記複数の車軸軸受は、それぞれ転動体として複数のころを有するころ軸受であって、前記ころのころ長さが互いに異なっている、請求項1〜5のいずれかに記載の鉄道車両駆動ユニット。
  7. 前記複数の車軸軸受は、それぞれ軌道輪と、転動体として複数の円錐ころとを有する円錐ころ軸受であって、前記軌道輪と前記円錐ころとの接触角が互いに異なっている、請求項1〜6のいずれかに記載の鉄道車両駆動ユニット。
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