JP2009215633A - 給油系部材用フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

給油系部材用フェライト系ステンレス鋼 Download PDF

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宏紀 冨村
Wakahiro Harada
和加大 原田
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昌夫 五十嵐
Yosuke Washimi
洋介 鷲見
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【目的】燃料タンクや給油管への加工に必要な成形性や衝撃特性を備え、厳しい腐食環境に対して長期にわたって耐食性を保持できる燃料タンクや給油管を提供することを目的とする。
【構成】質量%で、C:0.015%以下、Si:0.5%以下、Cr:11.0〜25.0%、N:0.020%以下、Ti:0.05〜0.50%、Nb:0.10〜0.50%、B:0.0100%以下を含み、これらの成分の間に質量%で式(1)Nb(質量%)−93/12×C(質量%)×4/7≧0.125および(2)Ti(質量%)−48/14×N(質量%)−48/12×C(質量%)×3/7≧0.025を満たし、かつ残部がFeおよび不可避不純物からなる、耐食性に優れた給油系部材用フェライト系ステンレス鋼を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐食性に優れた給油系部材用フェライト系ステンレス鋼に関する。さらに具体的には、ガソリン、メタノール含有ガソリン等、バイオエタノールガソリンならびにバイオディーゼルの燃料を供給する自動車用燃料タンクおよび燃料を補給する給油管の部材として使用するフェライト系ステンレス鋼に関する。
自動車や自動二輪に搭載される燃料タンクは、ガソリンを通常貯蔵しているが、機密性が悪いと気化したガソリンが大気中に散逸する。ガソリンが常に貯蔵されているわけではないが、随時ガソリンが通る給油管も同様な現象が生じる。ガソリンの散逸は、最近特に重要視されている地球環境に悪影響を及ぼす原因の一つである。この点、樹脂を素材にした従来の燃料タンクでは、十分な機密性を維持できない。Znめっき鋼板、Alめっき鋼板等の表面処理鋼板を素材にした燃料タンクも知られているが、燃料タンクに加工する際にめっき層に剥離やき裂が生じやすい。剥離、亀裂等の欠陥部は、ガソリンの劣化によって生じる有機酸を含む腐食性環境に晒されたとき腐食発生の起点となる。その結果、孔食による穴開き等が発生すると機密性が低下する。
他方、外面に対しては、寒冷地等、道路に融雪塩を撒くような地域においては、タンクや給油管の外面に関してはかなりの低温域になるため、外部からの耐衝撃性の点で満足できない。
また近年、自動車材料は全般的に耐久性の向上が求められる中にあって、タンク、給油管ともに、そのニーズに対応できていないのが現実である。
耐食性の観点からは、加工によって導入される欠陥部が腐食起点となりやすく、特に劣化ガソリンと接触する燃料タンク内面では穴開きに至る孔食が発生しやすい。また、タンク、給油管両部材ともシーム溶接部あるいはサポート溶接部等で隙間が形作られ、雨水等の侵入によりステンレス鋼特有の腐食である隙間腐食を生じる。特に融雪塩を撒くような地域においてはそれらの溶接隙間部に塩分が侵入し、乾燥・濃縮が起こるため、極めて厳しい腐食環境となる。隙間腐食の成長によっては孔あき腐食を起こす可能性もあり、燃料タンクや給油管としての機能性を大きく損なう場合がある。
そこで、本発明では、これらの問題を解消すべく案出されたものであり、燃料タンクや給油管への加工に必要な成形性や衝撃特性を備え、厳しい腐食環境に対して長期にわたって耐食性を保持できる燃料タンクや給油管を提供することを目的とする。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、基材の材質が特定されCrリッチの不働態皮膜が基材表面に形成されているステンレス鋼を使用することにより、さらにNbとTi量の規制により粒界腐食を抑える成分選択を行っている。
本発明のフェライト系ステンレス鋼としては、質量%で、C:0.015%以下、Si:0.5%以下、Cr:11.0〜25.0%、N:0.020%以下、Ti:0.05〜0.50%、Nb:0.10〜0.50%、B:0.0100%以下を含み、これらの成分の間に質量%で以下の(1)および(2)式を満たし、かつ残部がFeおよび不可避不純物からなる、鋼種が使用される。
Nb(質量%)−93/12×C(質量%)×4/7 ≧0.125 ・・・(1)
Ti(質量%)−48/14×N(質量%)−48/12×C(質量%)×3/7 ≧0.025・・・(2)
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、必要に応じ、Mo:3.0%以下含んでもよい。さらに、本発明のフィライト系ステンレス鋼は、必要に応じ、Ni:2.0%以下、Cu: 2.0%以下またはAl:4.0%以下から選択される1種以上を含んでもよい。
本発明による給油系部材用フェライト系ステンレス鋼は、自動車の燃料タンクや給油管等の部材として使用されると、製造時に想定される溶接での熱履歴を受けた場合でも粒界優先腐食が生じず、優れた耐食性を示す。
燃料タンク、給油管に代表される給油系部材は、溶接や部材との接合部で生じる「すきま腐食」により、腐食環境として厳しい状況にさらされる。とくにCは溶接での冷却中に炭化物を形成すると、そのCrの炭化物近傍で母相よりCr濃度が低下する領域ができ、粒界が優先的に腐食することが懸念される。この粒界優先腐食の回避することで、想定される腐食の不具合を回避した。以下の実施例で詳述するが、粒界優先腐食の有無は電流密度1.5A/cmで60秒のシュウ酸電解エッチングによって判定した。
以下、本発明を特定する事項について説明する。なお、各元素の含有量を示す「%」は特に示さない限り「質量%」を意味する。
[ステンレス鋼の組成]
C:0.015%以下
CはTi、Nbと炭化物を形成し、それが最終焼鈍での再結晶フェライトのランダム化の再結晶核として働く。しかしCは冷延焼鈍後の強度を上昇させる元素であり、あまり高いと延性の低下を招くため、0.015%以下とした。
Si:0.5%以下
Siは通常脱酸の目的のために使用するが、固溶強化能が高く、あまりその含有量が多いと材質が硬化し延性の低下を招くので、0.5%以下とした。
Cr:11.0〜25.0%
Crは、ステンレス鋼としての耐食性を備えるために、11.0%の含有が必要である。しかし、Cr量が高くなると、靭性や加工性の低下を招くためCr含有量の上限を25.0%とする。
N:0.02%以下
NはTiと窒化物を形成し、Cと同様にそれが最終焼鈍での再結晶フェライトの結晶方位ランダム化の再結晶核として働く。しかしNは冷延焼鈍材の強度を上昇させる元素であり、あまり高いと延性の低下を招くため、0.020%以下とした。
Ti:0.05〜0.50%
TiはC,Nを固定し、加工性および耐食性を向上させる元素であり、その効果が認められる最低量は0.05%である。しかし、Tiを添加すると、鋼材コストの増大を招き、Ti系介在物が原因の表面欠陥が問題となることから、Ti含有量の上限を0.50%に設定した。
Nb:0.10〜0.50%
NbはC,Nを固定し、耐衝撃特性や二次加工性を向上させる元素であり、これらの効果が認められる最低量は、0.10%である。しかし、Nbを添加しすぎると材料が硬化し加工性に悪影響をもたらす。また、再結晶温度を上げることから、上限を0.50%とする。
B:0.0100%以下
Bは、Nを固定し、耐食性や加工性を改善する作用をもつ合金成分である。上記作用を発揮させるためには0.0005%以上添加することが望ましい。しかし、過剰に添加すると熱間加工性の低下や溶接性の低下を招くため、上限を0.0100%に設定した。
Mo:3.0%以下
Moは耐食性を改善するのに有効な元素であるが、過度の添加は高温での固溶強化や動的再結晶の遅滞により、熱間加工性の低下をもたらすので、添加する場合は3.0%以下とした。
Ni:2.0%以下
Niはオーステナイト形成元素であり、2.0%を越える添加は硬質化やコスト上昇を招くため、2.0%を上限とした。
Cu:2.0%以下
Cuは溶製時のスクラップからの混入等、不可避的に含有されるが、過度の添加は熱間加工性や耐食性を低下させるので2.0%以下とした。
Al:4.0%以下
Alは脱酸や耐酸化性のために有効な元素であるが、過剰な添加は表面欠陥の原因となるため上限を4.0%とした。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記元素を含み、さらに以下に示す式(1)および(2)の条件を満たすものである。
Nb(質量%)−93/12×C(質量%)×4/7 ≧0.125 ・・・(1)
Ti(質量%)−48/14×N(質量%)−48/12×C(質量%)×3/7 ≧0.025・・・(2)
Nb,Ti系の炭窒化物を考えるにあたり、析出物の生成エネルギーと計算状態図から下記のことが明らかである。
・窒素はTiNとして生成する。
・炭素はNbとTi複合の炭化物を形成するが、原子量比でNbとTiの比が4:3になる。
固溶CとNがNb系とTi系析出物として生成するとして上式(1)(2)を設定し、(1)の有効Nb量は0.125以上、(2)の有効Ti量では0.025以上でシュウ酸電解エッチングによる粒界優先腐食がないことを見出した。
以下の元素は請求項の中では記載していないが、含有してもさしつかえない。
Mn:2.0%以下
Mn:オーステナイト形成元素であり、固溶強化能が小さく材質への悪影響が少ない。しかし、含有量が多いと溶製時にMnヒュームが生成する等、製造性が低下するので、望ましくは成分範囲を2.0%以下とする。
P:0.050%以下
P:熱間加工性に有害な元素である。とくに0.050%を超えるとその影響は顕著になるので 望ましくは0.050%以下である。
S:0.020%以下
S:結晶粒界に偏析しやすく、粒界脆化により熱間加工性の低下等を促進する元素である。0.020%を超えるとその影響は顕著になるので望ましくは0.020%以下である。
V,Zr:0.30%以下
Vrは固溶Cを炭化物として析出させる効果による加工性向上、Zrは鋼中の酸素を酸化物として捕えることによる加工性や靭性向上の面から有用な元素である。しかしながら、多量に添加すると製造性が低下するので、適正含有量はV、Zrは0.01〜0.30%である。
これら以外にもCa、Mg、Co、REMなどは、溶製中に原料であるスクラップ中より含まれることもあるが、とりたてて多量に含まれる場合を除き、成形品の形状凍結性には影響ない。
なお、本発明素材にカチオン電着塗装やZn主成分めっきAlめっきやジンクリッチペイントを1種以上塗布してもかまわない。
表1の成分・組成をもつ板厚0.8mmのステンレス鋼板を素材とし(表1中の鋼種No.1から9は化学成分値が本発明の範囲内にある本発明品、10〜12はそれ以外の鋼(比較品)である。)、1000℃−10分焼鈍後に1000℃から400℃までの冷却速度 3℃/秒で冷却した。これらの鋼の粒界優先腐食の有無を、電流密度1.5A/cmで60秒のシュウ酸電解エッチングで判定した。
その結果を図1に示す。また代表例として粒界優先腐食の生じたNo.10(下段)と粒界優先腐食を生じていないNo.7(上段)の組織を示す(図2)。なお、この冷却速度は燃料タンクや給油管で想定される溶接後の冷却速度より遅い条件つまり炭窒化物生成による耐食性低下という意味ではさらに厳しい条件で行った。
また、表1の有効Nb量とは式(1)により計算されたNbの量である。また有効Ti量とは式(2)により計算されたTiの量である。
Figure 2009215633
図1が示す結果から、有効Nb量が0.125以上であり、かつ有効Ti量が0.025以上の本発明品で粒界優先腐食が生じておらず、優れた耐食性を有することが示された。さらに、その様子が具体的に図2により確認できる。
フェライト系ステンレス鋼板の有効Nb量および有効Ti量と粒界優先腐食との関係を示す図である。●は本発明品、×は比較品を表す。図中の番号は鋼種の番号に対応している。 粒界優先腐食を生じていない本発明品No.7(上段)と粒界優先腐食の生じた比較品No.10(下段)との組織を示す。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.015%以下、Si:0.5%以下、Cr:11.0〜25.0%、N:0.020%以下、Ti:0.05〜0.50%、Nb:0.10〜0.50%、B:0.0100%以下を含み、これらの成分の間に質量%で以下の(1)および(2)式を満たし、かつ残部がFeおよび不可避不純物からなる、耐食性に優れた給油系部材用フェライト系ステンレス鋼。
    Nb(質量%)−93/12×C(質量%)×4/7 ≧0.125 ・・・(1)
    Ti(質量%)−48/14×N(質量%)−48/12×C(質量%)×3/7 ≧0.025・・・(2)
  2. 質量%で、Mo:3.0%以下をさらに含む、請求項1記載の耐食性に優れた給油系部材用フェライト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、Ni:2.0%以下、Cu: 2.0%以下またはAl:4.0%以下から選択される1種以上をさらに含む請求項1または請求項2に記載の耐食性に優れた給油系部材用フェライト系ステンレス鋼。
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