JP2006022352A - 加工性,塗装後耐食性に優れた燃料タンク用ステンレス鋼板 - Google Patents

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和加大 原田
Hiroki Tomimura
宏紀 冨村
Masaya Yamamoto
雅也 山本
Hirobumi Taketsu
博文 武津
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Abstract

【課題】 厳しい絞り加工や二次加工でも亀裂,破断が生じることなく、ステンレス鋼本来の耐食性に加えて塗装後耐食性も良好なステンレス鋼製燃料タンクを提供する。
【解決手段】 C:0.15質量%以下,Si:0.5質量%以下,Cr:11.0〜25.0質量%,N:0.020質量%以下,Ti:0.05〜0.50質量%,Nb:0.10〜0.50質量%,B:0.0100質量%以下を含み、一軸引張りで加工したときの破断伸び:30%以上,最小ランクフォード値rmin:1.3以上のステンレス鋼を基材に用い、伸び:200〜1000%,強度:3000〜9000N/cm2,強度/伸びの比率:3.0〜36.0のウレタン樹脂塗膜がクロメート皮膜を介して基材表面に設けられている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、車両用内燃機関にガソリン,メタノール含有ガソリン等の燃料を供給する燃料タンクの素材として使用されるステンレス鋼板に関する。
自動車,自動二輪等の車両に搭載される燃料タンクは、ガソリン,メタノール含有ガソリン等の燃料を貯蔵しているが、気密性が悪いと気化した燃料が大気中に散逸する。燃料の散逸は地球環境に悪影響を及ぼす原因の一つであるが、樹脂を素材にした従来の燃料タンクでは十分な気密性を維持できない。Pbめっき鋼板,Alめっき鋼板等のめっき鋼板を素材にした燃料タンクも知られているが、燃料タンクに加工する際にめっき層に剥離や亀裂が生じやすい。剥離,亀裂等の欠陥部は、ガソリンの劣化によって生じるギ酸や酢酸等の有機酸を含む腐食性環境に曝されたとき腐食発生の起点となる。その結果、孔食による穴開き等が発生し、燃料タンクの気密性が低下する。
燃料タンクは、内面側の腐食に加えて外面側も腐食性環境に曝される。たとえば、道路に融雪塩を散布する寒冷地等では、タンクや給油管の外面が過酷な腐食環境に曝され、従来の素材では長期耐食性を満足しない。外面の腐食抑制には、エポキシ系やメラミン系等の樹脂塗料を焼き付ける防錆塗装が一般的に採用されている。
所定形状に加工したアッパーハーフ,ロアーハーフのフランジを互いにシーム溶接することにより組み立てられる燃料タンクは、シーム溶接部やタンク固定用バンドとタンク本体との間に隙間(金属隙間)が生じやすい。隙間に雨水等が侵入すると、ステンレス鋼特有の隙間腐食が発生する。特に、融雪塩が散布される地域では、溶接部の隙間に侵入した塩分の乾燥・濃縮により極めて過酷な腐食環境になり、隙間腐食が加速されやすい。隙間腐食の成長によっては穴開き腐食に至ることもあり、燃料タンクの機能自体も大きく損なわれる。防錆塗装は、隙間腐食対策としても有効である。
燃料タンクに要求される気密性,耐食性を満足させるため、代表的な耐食材料であるステンレス鋼を燃料タンクや給油管の素材に使用することが検討されているが、普通鋼に比較して加工性に劣るステンレス鋼を成形加工すると加工割れが発生しやすい。加工割れは、燃料タンク,給油管の気密性を損ない、貯蔵燃料の揮散を促進させる。オーステナイト系ステンレス鋼は、加工性の点で有利であるが、応力腐食割れが発生する虞がある。
フェライト系ステンレス鋼は、応力腐食割れが発生しない利点をもつが、加工性に問題がある。そこで、Ti,Nbの添加によって加工性を改善した低C,Nフェライト系ステンレス鋼を基材とし、潤滑性の良い皮膜を設けることが提案されている(特許文献1)。しかし、燃料タンク形状が複雑化するに従い一層加工性に優れたタンク素材の要求が強くなっており、基材の改質だけでは要求特性を十分に満足させ得ない。
特開2002-363711号公報
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、材質が特定されたステンレス鋼基材の表面に潤滑剤として働く樹脂皮膜を形成することにより、プレス加工時に均一な材料の流れ込みを確保して耐食性に必要な不動態皮膜の損傷を抑え、長期間にわたり良好な塗装後耐食性を維持し、貯蔵燃料の揮散がないステンレス鋼製燃料タンクを提供することを目的とする。
本発明の燃料タンク用ステンレス鋼板は、一軸引張りで加工したときの破断伸び:30%以上,最小ランクフォード値rmin:1.3以上のフェライト系ステンレス鋼を基材とし、クロメート皮膜を介して樹脂皮膜を基材表面に設けている。
基材のフェライト系ステンレス鋼は、C:0.15質量%以下,Si:0.5質量%以下,Cr:11.0〜25.0質量%,N:0.020質量%以下,Ti:0.05〜0.50質量%,Nb:0.10〜0.50質量%,B:0.0100質量%以下を含み、更に必要に応じてMo:3.0質量%以下,Ni:2.0質量%以下,Cu:2.0質量%以下,Al:4.0質量%以下の1種又は2種以上を含む。
樹脂皮膜は、有機ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させたウレタン樹脂をベースとし、伸び:200〜1000%,強度:3000〜9000N/cm2,強度/伸びの比率:3.0〜36.0の樹脂組成物から成膜されている。樹脂皮膜に固形潤滑剤を分散させると、潤滑性が更に向上する。
車両用燃料タンクは、鋼板を複雑形状にプレス加工したアッパーハーフ,ロアハーフのフランジをシーム溶接することにより作製したタンク本体1に、インレットパイプ2,フュエルパイプ3,フュエルリターンパイプ4,仕切り板(図示せず),サブタンク5,ドレーンプラグ6等の各種部材を溶接,ろう付け等で取り付けている(図1)。燃料タンク形状への成形に際し、伸び,圧縮等が複合された複雑な塑性変形を伴う過酷な条件下で鋼板がプレス加工されることから、基材に使用するステンレス鋼板の加工性が不足すると、過酷な加工を受けた部位にクラックが発生しやすい。
そこで、本発明者等は、板厚収縮や幅方向に沿った材料流入の指標としてランクフォード値に着目し、燃料タンク形状への成形に耐えうるステンレス鋼を調査した。ランクフォード値の中でも、特に重要な因子は圧延方向(L方向),圧延方向に対して45度の角度で交差する方向(D方向),圧延方向に直交する方向(T方向)での最小値rmin及び一軸引張りで加工したときの破断伸びである。
最小ランクフォード値rminは、圧延方向に平行する方向を長手方向とするサンプルを鋼板から切り出してJIS Z2201の13B号試験片に加工し、15%の引張り歪みを与えた後、L方向,D方向,T方向に関するランクフォード値を測定し、最も小さなランクフォード値として求められる。一軸引張りで加工したときの破断伸びは、同じく13B号試験片を速度10mm/分で破断するまで引っ張り、破断後の試験片を突き合わせて標点間距離の伸びを測定することにより求められる。
プレス加工後の欠陥発生と破断伸び,最小ランクフォード値rminとの関係を種々調査・検討した結果、破断伸び:30%以上,最小ランクフォード値rmin:1.3以上のフェライト系ステンレス鋼を使用すると、絞り成形時や二次的な加工時に割れ,破断等の欠陥が発生せず、目標とする燃料タンク形状に加工できる。
以下、基材として使用するフェライト系ステンレス鋼に含まれる合金成分,含有量等を説明する。
C:0.15質量%以下
最終焼鈍時に再結晶フェライトをランダム化させる再結晶核として有効な炭化物を形成する合金成分である。しかし、冷延焼鈍後の強度を上昇させ、過剰なC含有は延性低下の原因となる。また、0.15質量%を超えるC含有量では、溶接部等の熱影響部を鋭敏化させ、耐食性を低下させる。好ましくは、0.001〜0.050質量%の範囲にC含有量を設定する。
Si:0.5質量%以下
製鋼段階で脱酸剤として添加される成分であるが、固溶強化能が高いのでSi含有量の増加に伴い硬質化,延性低下を引き起こす。そこで、Si含有量の上限を0.5質量%(好ましくは、0.1質量%)に設定した。
Cr:11.0〜25.0質量%
ステンレス鋼としての耐食性を確保するために11.0質量%以上のCrが必要である。しかし、Cr含有量の増加に伴い靭性や加工性が低下するので、Cr含有量の上限を25.0質量%に設定した。好ましくは、15.0〜22.0質量%の範囲にCr含有量を設定する。
N:0.020質量%以下
Cと同様に最終焼鈍時に再結晶フェライトをランダム化させる再結晶核として有効な窒化物を形成する合金成分である。しかし、冷延焼鈍材の強度を上昇させ、過剰なN含有は延性低下の原因となるので、上限を0.020質量%(好ましくは、0.010質量%)に設定する。
任意成分としては、以下の合金成分が必要に応じて添加される。
Ti:0.05〜0.50質量%
C,Nを固定して加工性,耐食性を向上させる合金成分であり、0.05質量%以上でTiの添加効果がみられる。しかし、Ti添加によって鋼材コストの上昇,Ti系介在物起因の表面欠陥が生じやすくなるので、Ti含有量の上限を0.50質量%(好ましくは、0.2質量%)に設定する。
Nb:0.10〜0.50質量%
C,Nを固定して耐衝撃特性や二次加工性を向上させる合金成分であり、0.10質量%以上でNbの添加効果がみられる。しかし、Nbの過剰添加は材料を硬質化させて加工性に悪影響を及ぼし、再結晶温度を上昇させることから、Nb含有量の上限を0.50質量%(好ましくは、0.25質量%)に設定する。
B:0.0100質量%以下
Nを固定して耐食性,加工性を改善する作用を呈し、0.0005質量%以上でBの添加効果が顕著になる。しかし、Bを過剰添加すると熱間加工性、溶接性が低下するので、B含有量の上限を0.0100質量%(好ましくは、0.0015質量%)に設定する。
Mo:3.0質量%以下
耐食性の改善に有効な合金成分であるが、過剰添加すると過剰添加は高温での固溶強化や動的再結晶の遅滞が生じて熱間加工性が低下するので、Mo含有量の上限を3.0質量%(好ましくは、1.0質量%)に設定する。
Ni:2.0質量%以下
オーステナイト形成元素であり、過剰添加は硬質化や鋼材コストの上昇を招くのでNi含有量の上限を2.0質量%(好ましくは、0.2質量%)に設定する。
Cu:2.0質量%以下
溶製時にスクラップ等から混入する不純物であり、過度にCuが含まれると熱間加工性、耐食性が低下するので、2.0質量%(好ましくは、0.05質量%)以下にCu含有量を規制する。
Al:4.0質量%以下
脱酸や耐酸化性のために添加される合金成分であるが、過剰添加は表面欠陥の原因となるので、上限を4.0質量%(好ましくは、0.005質量%)に設定する。
使用するフェライト系ステンレス鋼は、更に以下に掲げる成分を含む場合もある。
Mn:2.0質量%以下
オーステナイト形成元素であり、固溶強化能が小さく、材質への悪影響も少ない。しかし、Mn含有量の増加に応じて溶製時にヒュームが発生する等、製造性が低下するので、Mnを添加する場合には上限を2.0質量%(好ましくは、0.15質量%)に設定する。
P:0.050質量%以下
熱間加工性に有害な成分であり、0.050質量%を超えるとPの影響が顕著になるので、上限を0.050質量%(好ましくは、0.020質量%)に設定する。
S:0.020質量%以下
結晶粒界に偏析しやすく、粒界酸化を促進させて熱間加工性を低下させる有害成分であるが、0.020質量%(好ましくは、0.001質量%)以下に規制するとS起因の悪影響が抑えられる。
V,Zr:0.01〜0.30質量%
固溶Cを炭化物として析出させ、加工性を改善する合金成分であり、0.01質量%以上でV,Zrの添加効果がみられる。Zrは、更に鋼中[O]を酸化物として捕捉することによっても加工性,靭性の向上に有利である。しかし、V,Zrの過剰添加は製造性を低下させることになるので、添加量を0.30質量%(好ましくは、0.020質量%)以下に規制する。
その他の成分としてCa,Mg,Co,REM等が溶製中の鋼材に原料スクラップから混入することもあるが、過剰に含まれる場合を除きプレス成形品の形状凍結性に影響を及ぼさない。
本成分系では、Nbの添加により結晶粒の微細化を図っており、鋼板の中間焼鈍,冷延で微細な結晶粒に歪みを導入することにより、最終焼鈍時に(111)面を出現させている。これにより、最小ランクフォード値rmin:1.3以上が達成される。更に、高ランクフォード値を維持しながらC:0.015質量%以下,Si:0.5質量%以下,N:0.020質量%以下と不純物を規制することにより、一軸引張りで加工したときの破断伸び:30%以上が得られる。
以上のように成分調整されたフェライト系ステンレス鋼は,極めて優れた加工性を呈する。しかし、燃料タンクの形状は自動車メーカごとに、更には車種ごとに異なり、浅いものから深いものまで多岐にわたる。浅い燃料タンクでは、比較的小さな加工度のプレス加工によりステンレス鋼板を目標形状に成形できるため、前掲の成分設計に従ったフェライト系ステンレス鋼が使用可能である。他方、大きな加工度を必要とする深い燃料タンクでは、当該フェライト系ステンレス鋼を使用した場合でも割れ,破断等の加工欠陥が散見される。同様な加工欠陥は、浅い燃料タンクであっても大きな加工を受けた縦壁部等にも生じがちである。しかも、普通鋼に比較してCrを多量に含み硬質化しており、伸びも低いフェライト系ステンレス鋼を燃料タンク素材に使用する場合、素材の延性に基づく張出し要素による加工性の向上を期待できない。
加工欠陥は、プレス加工されるステンレス鋼基材に潤滑油を塗布することによりある程度防止できる。しかし、塗布された潤滑油は、金型に材料が流れ込む際に基材表面を均一に覆った状態でなく、基材の一部が露出した状態(膜切れ)で基材表面に分布する。潤滑油のない表面部で基材が金型に直接接触すると、局部的に大きな変形が生じる結果、亀裂,破断等の加工欠陥が発生しやすくなる。プレス加工後に潤滑油をアルカリ洗浄等で除去する工程を必要とし、製造工数が多くなることも欠点である。
膜切れが加工欠陥の発生原因であるとの前提で、潤滑油を使用することなく、基材表面に設けた樹脂皮膜でプレス加工時に必要な潤滑性を得る方法を調査・検討した。過酷な条件下で塗装鋼板を絞り加工すると、樹脂皮膜が損傷して基材が疵付きやすい。基材の疵付きに至る樹脂皮膜の損傷は、樹脂皮膜の伸びと強度とのバランスに大きく影響されていることが判った。
多数の予備実験の結果から、樹脂皮膜の伸びを200〜1000%,強度を3000〜9000N/cm2の範囲に調整すると、絞り加工時に樹脂皮膜が損傷しないことを見出した。また、伸びとの比較で強度が大きくなりすぎると、局部的に過剰な凝集力が作用した樹脂皮膜の部分を起点として損傷が発生しやすいが、強度/伸びの比率を3.0〜36.0の範囲に調整するとき、過剰な凝集力に起因する樹脂皮膜の損傷を防止できる。
伸び,強度,強度/伸びの比率に関する条件を満足する樹脂皮膜としては、有機ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させたウレタン樹脂をベースとするウレタン樹脂皮膜が好適であり、クロメート皮膜を介在させると塗膜密着性が向上する。ウレタン樹脂皮膜は、耐カジリ性,溶接性を考慮して0.2〜10μmの膜厚で形成することが好ましい。
クロメート皮膜は、樹脂皮膜の密着性を向上させると共に、塗膜下腐食の防止にも有効である。クロメート皮膜は、塗布型,焼付け型何れのクロメート処理でも形成可能であるが、リン酸含有定着色タイプのクロメート皮膜が好ましい。クロメート皮膜が厚いほど溶接性が低下するので、好ましくはCr換算付着量:1〜200mg/m2の範囲で塗布量を調整する。
耐カジリ性,溶接性は、固形潤滑剤をウレタン樹脂皮膜に分散させることによって更に向上する。固形潤滑剤には、ウレタンと相溶しないフッ素系,ポリオレフィン系,スチレン系,塩化ビニル等の合成樹脂があり、1種又は2種以上を混合しても使用できる。ウレタンに対する相溶性のない合成樹脂粉末を分散させた樹脂組成物を用い、合成樹脂粉末の一部を樹脂皮膜から突出させると、過酷な加工を施してもカジリの発生なく所定形状に成形加工できる。合成樹脂粉末の平均粒径が0.1μm以上になると、耐カジリ性の向上に有効な合成樹脂粉末の突出がみられる。しかし、平均粒径が5μmを超えると、樹脂皮膜から大きく突出した合成樹脂粉末がプレス加工金型で削り取られ、必要な潤滑性が得られがたい。
加工性向上効果は樹脂組成物に対する合成樹脂粉末の分散量1質量%以上でみられるが、20質量%を超える過剰量の合成樹脂粉末を配合すると分散状態が不安定になり樹脂組成物がゲル化しやすくなる。樹脂組成物の長期安定性を確保する上では、合成樹脂粉末の配合量を1〜10質量%の範囲で選定することが好ましい。
樹脂組成物には、温間加工時における塗膜の軟化に起因するカジリの発生を抑制する作用のあるシリカ,アルミナ,ジルコニア等の無機粉末を必要に応じて分散させても良い。無機粉末の配合によって樹脂皮膜の熱安定性が向上し、たとえば100〜200℃に予熱した金型を使用する温間加工等においても樹脂皮膜の軟化が防止され、良好な耐カジリ性が維持される。
所定組成に調製された塗料組成物は、常法に従ってクロメート処理されたステンレス鋼板に塗布され、焼付け・乾燥によって樹脂皮膜となる。塗料組成物の塗布に格段の制約はなく、ローラ,ロールコータ,シャワーリング,スプレー等の塗布方法を採用できる。
表1の成分・組成をもつ板厚0.8mmのステンレス鋼板を塗装原板に用いた。表中、A〜Eは本件の請求項で特定した成分・組成を満足する鋼種であり、F〜Hはそれ以外の鋼種である。
Figure 2006022352
各ステンレス鋼板にクロメート処理液を塗布し、焼き付けることにより、Cr換算付着量30mg/m2のクロメート皮膜を形成した。
樹脂組成物として、有機ポリイソシアネート化合物,ポリオール化合物,カルボキシル基含有化合物,鎖伸張剤の各成分を変化させることにより、樹脂の伸び,強度を調整したウレタン樹脂のエマルジョン処理液を用意した。有機ポリイソシアネート化合物にはフェニレンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネートを、ポリオール化合物にはポリエーテルポリオール,ポリカーボネートポリオールを、カルボキシル基含有化合物には2,2-ジメチルプロピオン酸,ジオキシマレイン酸を、鎖伸張剤にはジエチレンアミン,ジエチレントリアミンを用いた。
ロールコータでエマルジョン処理液をステンレス鋼板に塗布し、最高到達板温:120℃で焼き付けることにより膜厚:2μmのウレタン樹脂皮膜を形成した。
樹脂皮膜が形成されたステンレス鋼板を燃料タンク形状(図1)にプレス加工し、得られた成形品を観察して加工欠陥の有無を調査した。調査結果を、ステンレス鋼板の伸び,最小ランクフォード値rmin及び樹脂皮膜の伸び,強度,強度/伸びの比率と関連付けて表2に示す。
表2の結果は、本発明で規定した条件を満足するステンレス鋼と樹脂皮膜との組合せによって初めて、割れの発生がなく所定の燃料タンク形状への成形加工が可能になったことを示している(A-1,B-1,C-1,D-1)。
素材として使用するステンレス鋼が本発明で規定した機械的特性を満足していても樹脂皮膜が本発明で規定した条件を満足していない場合には、部分的に縦割れが発生し、目標の燃料タンク形状に成形できなかった(A-2,B-2,C-2,D-2)。逆に、本発明で規定した機械的特性を満足しないステンレス鋼板に本発明で規定した条件を満足する樹脂皮膜を設けたものでは、大きな割れが発生し、プレス加工自体が不可能であった(F-1,G-1,H-1)。
Figure 2006022352
実施例1で燃料タンク形状に加工可能な試験番号A-1の樹脂被覆ステンレス鋼板を燃料タンク形状にプレス加工した後、タンク外面にエポキシ系の焼付け塗装を施した。塩水噴霧(5%NaCl,15分)→乾燥(60℃,35%RH,180分)→湿潤(60℃,95%RH,180分)を1サイクルとする塩乾湿複合サイクル試験を300サイクル繰り返した後、隙間腐食部の侵食深さからタンク外面の耐食性を評価した。比較のため、Pbめっき鋼板を素材として同様に加工,塗装した燃料タンクについても、同じ塩乾湿複合サイクル試験で耐食性を調査した。
表3の調査結果にみられるように、Pbめっき鋼板を素材に用いた比較例では,シーム溶接隙間,金属隙間部共に侵食が検出された。これに対し、試験番号A-1の樹脂被覆ステンレス鋼板を素材とした燃料タンクでは、溶接部,隙間部共に腐食が発生していなかった。しかし、クロメート皮膜を省略すると、溶接部で塗膜フクレが生じ、塗膜下腐食が検出された。以上の対比から、本発明で規定した成分,機械特性のステンレス鋼板を素材とし、クロメート皮膜を介して樹脂皮膜を形成すると、燃料タンクに要求される加工性,耐食性を満足した樹脂被覆ステンレス鋼板が得られることが確認される。
Figure 2006022352
以上に説明したように、一軸引張りで加工したときの破断伸び:30%以上,最小ランクフォード値rmin:1.3以上のステンレス鋼板を基材に用い、伸び:200〜1000%,強度:3000〜9000N/cm2,強度/伸びの比率:3.0〜36.0のウレタン樹脂皮膜をクロメート皮膜を介して基材表面に形成しているので、潤滑油を塗布しなくても複雑形状の燃料タンクにプレス加工でき、高度の加工を受けた部位にも亀裂,破断等の加工欠陥が生じない。しかも、ステンレス鋼表面の不動態皮膜が樹脂皮膜で保護されるため、塗装後耐食性も良好に維持され、ステンレス鋼本来の優れた耐食性が発現する。その結果、有害な貯蔵燃料の揮散を防止する気密性が長期にわたって維持される燃料タンクが得られる。
本発明が対象とする燃料タンクの形状

Claims (3)

  1. C:0.15質量%以下,Si:0.5質量%以下,Cr:11.0〜25.0質量%,N:0.020質量%以下,Ti:0.05〜0.50質量%,Nb:0.10〜0.50質量%,B:0.0100質量%以下を含み、一軸引張りで加工したときの破断伸び:30%以上,最小ランクフォード値rmin:1.3以上のフェライト系ステンレス鋼を基材とし、クロメート皮膜を介して樹脂皮膜が基材表面に設けられており、有機ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させたウレタン樹脂をベースとし、伸び:200〜1000%,強度:3000〜9000N/cm2,強度/伸びの比率:3.0〜36.0の樹脂組成物から樹脂皮膜が成膜されていることを特徴とする加工性,塗装後耐食性に優れた燃料タンク用ステンレス鋼板。
  2. 基材のフェライト系ステンレス鋼が更にMo:3.0質量%以下,Ni:2.0質量%以下,Cu:2.0質量%以下,Al:4.0質量%以下の1種又は2種以上を含む請求項1記載の燃料タンク用ステンレス鋼板。
  3. 樹脂皮膜に固形潤滑剤が分散している請求項1記載の燃料タンク用ステンレス鋼板。
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