しかし、上述した従来の大電流用インダクタ(リアクトル装置)は、次のような解決すべき課題が存在した。
第一に、従来のリアクトル装置は、縦形の平角導線を用いるとともに、放熱用ケースを含む全体の幾何学形状を偏平化することにより、熱伝導性及び放熱性を高める工夫を行っているが、熱伝導性及び放熱性に関しては、使用素材及び使用部品を含む総合的な見地から更なる見直しの余地があった。
第二に、縦形の平角導線を治具等に巻付けてコイルを製造するため、製造プロセスの複雑化、更には製造工数の増加を招くなど、量産性の向上及び低コスト性の向上に関しては更なる改善の余地があった。
第三に、コイルとコア間の隙間を狭くするには、コイルの角部をできるだけ直角に近付けることが望ましいが、縦形の平角導線を湾曲させて角部を形成するため、角部を直角にすることは困難であり、結局、偏平化により熱伝導性及び放熱性を高めるには、コイルの製造面からも限界があった。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した大電流用インダクタ及びその製造方法の提供を目的とするものである。
本発明に係る大電流用インダクタ1は、上述した課題を解決するため、縦形の平角導線を巻回した一又は二以上のコイル2と、このコイル2に装填するコア3と、このコア3を装填したコイル2を収容し、かつ熱伝導性素材により形成したパッケージ4とを備える大電流用インダクタであって、コイル2,コア3,パッケージ4の一又は二以上の表面2f,3f,4fの一部又は全部に、少なくともシリカ(Si−O)ネットワーク構造を有する液剤を用いたバインダ及び少なくとも遠赤外線放射性物質を含む一種又は二種以上の顔料を配合させてなる熱放射性及び熱伝導性を有する放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcをコーティングすることにより、所定の厚さLa,Lb,Lcを有する放熱助長皮膜5,6,7を設けてなることを特徴とする。
本発明に係る大電流用インダクタ1では、基本的な作用として、コイル2で発生する熱は放熱助長皮膜5におけるシリカネットワーク構造を効率よく伝わることにより良好な熱伝導性が得られ、かつ少なくとも遠赤外線放射性物質を含む一種又は二種以上の顔料により良好な熱伝導性及び熱放射性が得られる。特に、遠赤外線放射性物質による積極的な熱放射性により放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcの裏面側に位置するコーティング面と放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcの表面側に位置する被放熱側に対する熱の効率的な授受が行われる。また、必要な絶縁性は、シリカネットワーク構造を有する液剤を用いたバインダ及び一種又は二種以上の顔料を含む放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcの基本的な物性により確保される。
本発明に係る大電流用インダクタ1は、好適な形態により、バインダには、主鎖にシラン化合物から重合したシリカネットワークを有し、かつ側鎖にアルキル基とフェニル基の一方又は双方を有するポリシロキサン又はポリアルキルフェニルシロキサンを用いたバインダを用いることができるとともに、他のバインダとしては、アルコキシド化合物の加水分解後にシラノール脱水縮合の進行により形成されるシリカネットワーク及び残存するシラノール基を含むバインダを用いることができる。また、顔料には、酸化チタン(TiO2),シリカ(SiO2),コージェライト(菫青石),カオリン(高陵土),アルミナ(Al2O3),酸化鉄(FeO,Fe2O3,Fe3O4),二酸化マンガン(MnO2),酸化コバルト(CoO),三酸化コバルト(Co2O3),酸化銅(Cu2O,CuO),酸化ニッケル(NiO),酸化ジルコニウム(ZrO2),窒化アルミニウム(AlN),カーボン,ボロンナイトライド(窒化ホウ素)、の一種又は二種以上を含ませることができる。一方、コイル2には、シート材Msにより連続形成したコイルパターンプレート2pを順次折り畳んで製作したコイルを用いることができるとともに、コア3には、複数のコア分割部3a,3b,3c,3dを組合わせて構成することができる。なお、コイル2の表面2fと放熱助長皮膜5間には、金属メッキ処理による酸化防止膜を設けてもよい。さらに、パッケージ4の内部には、少なくとも熱伝導性を有するポッティング材8を充填することができる。
一方、本発明に係る大電流用インダクタ1の製造方法は、上述した課題を解決するため、縦形の平角導線を巻回した一又は二以上のコイル2と、このコイル2に装填するコア3と、このコア3を装填したコイル2を収容し、かつ熱伝導性素材により形成したパッケージ4とを組付けて製造するに際し、予め、コイル2,コア3,パッケージ4、の一又は二以上の表面2f,3f,4fの一部又は全部に、少なくともシリカ(Si−O)ネットワーク構造を有する液剤を用いたバインダ及び少なくとも遠赤外線放射性物質を含む一種又は二種以上の顔料を配合させてなる熱放射性及び熱伝導性を有する放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcをコーティングすることにより、所定の厚さLa,Lb,Lcを有する放熱助長皮膜5,6,7を設け、この後、コイル2,コア3及びパッケージ4を組付けることにより大電流用インダクタ1を製造することを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、バインダは、主鎖にシラン化合物から重合したシリカネットワークを有し、かつ側鎖にアルキル基とフェニル基の一方又は双方を有するポリシロキサン又はポリアルキルフェニルシロキサンを用いたバインダであってもよいし、或いはアルコキシド化合物の加水分解後にシラノール脱水縮合の進行により形成されるシリカネットワーク及び残存するシラノール基を含むバインダであってもよい。また、顔料には、酸化チタン(TiO2),シリカ(SiO2),コージェライト(菫青石),カオリン(高陵土),アルミナ(Al2O3),酸化鉄(FeO,Fe2O3,Fe3O4),二酸化マンガン(MnO2),酸化コバルト(CoO),三酸化コバルト(Co2O3),酸化銅(Cu2O,CuO),酸化ニッケル(NiO),酸化ジルコニウム(ZrO2),窒化アルミニウム(AlN),カーボン,ボロンナイトライド(窒化ホウ素)、の一種又は二種以上を用いることができる。この際、バインダに対しては、10〜60〔重量%〕の顔料を配合することが望ましい。また、顔料に対しては、10〜20〔重量%〕の酸化防止剤を配合することが望ましい。一方、コイル2の各導体ターン部2m…間に隙間を空けることにより放熱性絶縁塗料Xaによるディップコート処理を行うとともに、この後、コーティングした放熱性絶縁塗料Xaに対する焼成処理を行うことができる。なお、コイル2に放熱性絶縁塗料Xaをコーティングする前に、コイル2の表面2fに酸化防止膜5を設けるための金属メッキ処理を行ってもよい。さらに、コイル2に、複数のコア分割部3a,3b…を組合わせたコア3を装填し、このコア3を装填したコイル2を、パッケージ4に収容するとともに、この後、パッケージ4の内部に、少なくとも熱伝導性を有するポッティング材8を充填することができる。
このような構成を有する大電流用インダクタ1及びその製造方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) コイル2,コア3,パッケージ4の一又は二以上の表面2f,3f,4fの一部又は全部に、少なくともシリカネットワーク構造を有する液剤を用いたバインダ及び少なくとも遠赤外線放射性物質を含む一種又は二種以上の顔料を配合させてなる放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcをコーティングすることにより、所定の厚さLa,Lb,Lcの放熱助長皮膜5,6,7を設けてなるため、放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcを用いた熱助長皮膜5,6,7における固有の熱伝導性能及び熱放射性能により、コイル2,コア3,パッケージ4,外気の各相互間における熱伝導性及び熱放射性を飛躍的に高めることができる。
(2) 大電流用インダクタ1を製造するに際し、予め、コイル2,コア3,パッケージ4、の一又は二以上の表面2f,3f,4fの一部又は全部に、少なくともシリカ(Si−O)ネットワーク構造を有する液剤を用いたバインダ及び少なくとも遠赤外線放射性物質を含む一種又は二種以上の顔料を配合させてなる放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcをコーティングすることにより、所定の厚さLa,Lb,Lcの放熱助長皮膜5,6,7を設け、この後、コイル2,コア3及びパッケージ4を組付けることにより大電流用インダクタ1を製造するようにすれば、コイル2,コア3及びパッケージ4に対して、所定の厚さLa,Lb,Lcを有する放熱助長皮膜5,6,7を容易かつ確実に設けることができる。
(3) 好適な態様により、バインダとして、主鎖にシラン化合物から重合したシリカネットワークを有し、かつ側鎖にアルキル基とフェニル基の一方又は双方を有するポリシロキサン又はポリアルキルフェニルシロキサンを用いたバインダ、或いはアルコキシド化合物の加水分解後にシラノール脱水縮合の進行により形成されるシリカネットワーク及び残存するシラノール基を含むバインダを用いれば、コーティング面と放熱助長皮膜5,6,7間に要求される性能、即ち、界面付着性及び追従性、更には皮膜自体の耐熱性及び耐久性を十分に確保することができる。
(4) 好適な態様により、バインダに対して、10〜60〔重量%〕の顔料を配合すれば、本発明により得られる各種作用効果の有効性をより高めることができる。
(5) 好適な態様により、顔料に対して、10〜20〔重量%〕の酸化防止剤を配合させれば、コイル2の表面2fの酸化による放熱助長皮膜5の剥離防止を図ることができる。
(6) 好適な態様により、コイル2に放熱性絶縁塗料Xaをコーティングする前に、コイル2の表面2fに酸化防止膜を設けるための金属メッキ処理を行うようにすれば、酸化による放熱助長皮膜5のより確実な剥離防止を図ることができ、加えてコイル2の表面2fに対する均一なコーティング処理を行うことができるとともに、コイル2のエッジ部に対して厚膜のディップコーティングを行うことができる。
(7) 好適な態様により、シート材Msにより連続形成したコイルパターンプレート2pを順次折り畳んで製作するコイル2を用いれば、製造プロセスの簡易化及び単純化、更には、これに伴う製造工数の削減を図れるため、大電流用インダクタ1に係わる量産性の向上及び低コスト性の向上を実現することができる。また、コイル2の角部を直角にできるため、大電流用インダクタ1の更なる偏平化により熱伝導性及び熱放射性をより高めることができる。
(8) 好適な態様により、コア3を構成するに際し、複数のコア分割部3a,3b…を組合わせて構成すれば、各コア分割部3a,3b…は容易に偏平化が可能になり、コア3の形態的な側面から大電流用インダクタ1の偏平化に寄与できる。
(9) 好適な態様により、パッケージ4の内部には、少なくとも熱伝導性を有するポッティング材8を充填するようにすれば、コイル2(コア3)とパッケージ4間の熱伝導性能を飛躍的に高めることができるとともに、コイル2に対する保護効果、更には大電流用インダクタ1の耐久性を高めることができる。
(10) 好適な態様により、コイル2の各導体ターン部2m…間に隙間を空けることにより放熱性絶縁塗料Xaによるディップコート処理を行うとともに、この後、コーティングした放熱性絶縁塗料Xaに対する焼成処理を行うようにすれば、コイル2に対する放熱性絶縁塗料Xaのコーティング、更にはコイル2における所定の厚さLaを有する放熱助長皮膜5の成膜を容易かつ確実に行うことができるとともに、特に、シート材Msにより連続形成したコイルパターンプレート2pを順次折り畳んで製作したコイル2のように、塗布しにくい形状部分を有するコイルであっても容易かつ均質なコーティングを行うことができる。
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
最初に、本実施形態に係る大電流用インダクタ1の製造に用いる放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcについて説明する。
本実施形態に係る大電流用インダクタ1は、主要部品として、コイル2,コア3及びパッケージ4を使用する。そして、コイル2の表面2fには放熱性絶縁塗料Xaによる放熱助長皮膜5を設けるとともに、コア3の表面3fには放熱性絶縁塗料Xbによる放熱助長皮膜6を設け、さらに、パッケージ4の表面4fには放熱性絶縁塗料Xcによる放熱助長皮膜7を設ける。この場合、各放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcは、コーティング面や晒される環境等の違いに応じて異ならせることが望ましく、例えば、コイル2は最も高温に晒されることから耐熱性等を考慮し、パッケージ4は外部に晒されることから防水性や耐候性等を考慮してその特性(性能)を異ならせることができる。なお、コスト面等を考慮して同じものを使用しても勿論よい。本実施形態に係る大電流用インダクタ1では、放熱性絶縁塗料XaとXbには同じものを使用し、放熱性絶縁塗料Xcは、放熱性絶縁塗料Xa(Xb)に対して異なるものを使用する。即ち、第一の放熱性絶縁塗料Xa(Xb)と第二の放熱性絶縁塗料Xcを使用する。第一の放熱性絶縁塗料Xa(Xb)と第二の放熱性絶縁塗料Xcは、シリカ(Si−O)ネットワーク構造を有する液剤を用いたバインダ、及び少なくとも遠赤外線放射性物質を含む一種又は二種以上の顔料を配合した点では一致する。
まず、第一の放熱性絶縁塗料Xa(Xb)について説明する。この放熱性絶縁塗料Xa(Xb)は、バインダとして、主鎖にシラン化合物から重合したシリカネットワークを有し、かつ側鎖にメチル,エチルを含むアルキル基とフェニル基の一方又は双方を有するポリシロキサン又はポリアルキルフェニルシロキサンを用いる。本実施形態では、側鎖にアルキル基とフェニル基の双方を有するポリアルキルフェニルシロキサンを用いた。なお、使用するバインダは溶媒が含まれる液剤である。このようなバインダを用いることにより、コイル2の表面2f(コーティング面)と放熱助長皮膜5間、コア3の表面3f(コーティング面)と放熱助長皮膜6間にそれぞれ要求される性能、即ち、界面付着性及び追従性、更には皮膜自体の耐熱性及び耐久性を十分に確保できる。
また、顔料には、酸化チタン(TiO2),シリカ(SiO2),コージェライト(菫青石),カオリン(高陵土),アルミナ(Al2O3),酸化鉄(FeO,Fe2O3,Fe3O4),二酸化マンガン(MnO2),酸化コバルト(CoO),三酸化コバルト(Co2O3),酸化銅(Cu2O,CuO),酸化ニッケル(NiO),酸化ジルコニウム(ZrO2),窒化アルミニウム(AlN),カーボン,ボロンナイトライド(窒化ホウ素)、の一種又は二種以上を含ませる。これらの顔料により、遠赤外線放射波長領域における高温領域から低温領域までの効率良い変換を行うことができる。本実施形態では、酸化チタン,アルミナ,コージェライト,カオリンの四種を用いた。この場合、酸化チタンの粒子には、遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングすることが望ましい。酸化チタンは含有させることにより白色に発色するが、皮膜の表面積に酸化チタンが表出するので表面積に占める遠赤外線放射性物質の表出する割合が減少して放射率が低下する。このため、遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングすれば、白色の着色を確保できるとともに、放射率の低下を回避できる。これらの顔料はいずれも粉体のため、それぞれ適量を配合し、顔料全体で、上述したバインダに対して、10〜60〔重量%〕となるように配合(調合)する。このような配合比率を選定すれば、本発明により得られる各種作用効果の有効性をより高めることができる。
さらに、添加剤として、酸化防止剤と分散剤を配合する。酸化防止剤は、顔料に対して、10〜20〔重量%〕の配合比率となるように配合(調合)する。これにより、銅素材を用いたコイル2の表面2fの酸化による放熱助長皮膜5の剥離防止を図ることができる。また、分散剤は、顔料の配合量等に応じて適量添加する。放熱性絶縁塗料Xaでは、顔料を比較的多量に使用するため、分散剤を配合することにより、顔料をより良好に分散させることができる。
次に、第二の放熱性絶縁塗料Xcについて説明する。この放熱性絶縁塗料Xcは、バインダとして、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダであって、アルコキシド化合物の加水分解後にシラノール脱水縮合の進行により形成されるシリカネットワーク及び残存するシラノール基を含むバインダを用いる。一例として、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを使用し、(テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン)の配合割合が、(5:5)〜(0:10)の条件を満たすように調合し、アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するシリカネットワーク構造の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことにより得ることができる。他のバインダとしては、テトラアルコキシシラン,トリアルコキシシラン及びジアルコキシシランを使用し、(テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシラン)の配合割合が、(4.5:4.5:1.0)〜(7.2:1.8:1.0)の条件を満たすように調合し、アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するシリカネットワーク構造の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことにより得てもよい。これにより、絶縁性,熱放射性,耐熱性,付着性,靭性を同時に得ることができる。なお、シリカネットワーク素材をある程度まで形成しておくことにより、膜が形成される過程における収縮率が小さくなるため、残留応力が小さくなり、コーティング面への付着力を向上させることができる。
また、顔料には、シリカ,コージェライト,カオリン,アルミナ,酸化チタン,酸化鉄,二酸化マンガン,酸化コバルト,三酸化コバルト,酸化銅,酸化ニッケル,酸化ジルコニウム,窒化アルミニウム,カーボン,ボロンナイトライド、の一種又は二種以上を含ませる。この場合、顔料は、三つのグループに分けることができ、第一グループには、シリカ,コージェライト,カオリン,アルミナを、第二グループには、酸化鉄,二酸化マンガン,酸化コバルト,三酸化コバルト,酸化銅,酸化ニッケル,酸化ジルコニウム,窒化アルミニウム,カーボン,ボロンナイトライドを、第三グループには、酸化チタンをそれぞれ含ませることができる。そして、選定に際しては、第一グループは必須顔料として使用し、第二グループは第一グループの顔料に加えて任意に使用する。第三グループの酸化チタンは、着色顔料として使用する。この場合、顔料全体では、バインダに対して、10〜60〔重量%〕となるように配合(調合)する。
さらに、適量の溶媒を配合する。溶媒には常温よりも沸点の高いアルコール類を用いる。これにより、皮膜の形成時に溶媒が揮発し、ポーラス構造が形成されるため、皮膜全体としての靭性をより高めることができる。また、添加剤として、酸化防止剤と分散剤を、上述した第一の放熱性絶縁塗料Xaの場合と同様に配合(調合)することができる。
次に、本実施形態に係る大電流用インダクタ1の製造方法について、図1〜図4,図6〜図10を参照しつつ図5に示す製造工程図に従って説明する。
大電流用インダクタ1の製造に際しては、予め、主要部品となる、コイル2,コア3及びパッケージ4の製作を行う。
まず、コイル2の製作工程について説明する。コイル2の製作に際しては、厚さが0.5〜1.0〔mm〕程度、幅がコイル2の設計仕様に対応した寸法の銅素材によるフープ母材を用意する(ステップS1)。そして、このフープ母材を所定のコイル製造機に供給する。コイル製造機では、プレス工程によりフープ母材の打ち抜き処理を行い、図2に示すようなシート材Msにより連続形成したコイルパターンプレート2pを得る(ステップS2)。このコイルパターンプレート2pは、図2に示すように、1ターン分を構成するコイルパターン部2pc…及びコイルパターン部2pc…同士を連結する連結パターン部2jx,2jy…を有する。この連結パターン部2jx,2jy…は、コイルパターン部2pc…から突出する長さ(オフセット長)の異なる二種類の連結パターン部2jx,2jy…を有し、順次交互に設ける。なお、例示するコイルパターン部2pc…の幅(最大部位)は10〔mm〕である。
また、このコイルパターンプレート2pは、図2に示す拡大抽出図のように、全ての角部(コーナー部)2ps…に曲率Rsのアール形成を行い、かつ全てのエッジ部2pe…に曲率Reのアール形成を行うとともに、バリを生じさせないバリフリー処理を行う(ステップS3)。これらのアール形成及びバリフリー処理は、プレス工程と同時又はプレス工程の後工程で行うことができる。このようなアール形成及びバリフリー処理を行うことにより、放熱性絶縁塗料Xaを均一にコーティングできる。
次いで、折畳工程によりコイルパターンプレート2pを順次折り畳む折り畳み処理を行う(ステップS4)。この場合、連結パターン部2jx,2jy…における二位置、即ち、図2に示す連結パターン部2jx,2jy…の端部位置K1…と中間部位置K2…をそれぞれ反対方向に折り返す。これにより、コイルパターン部2pc…は順次積層された状態となり、図1に示す形態のコイル2を製作できる。この際、二種類の連結パターン部2jx,2jy,2jx,2jy…は、図4に示すように、軸方向から見て相互にオフセットした位置に配されることになり、両者の重なりが回避される。したがって、各連結パターン部2jx…と2jy…の軸方向における積層時の厚さを1/2にできる。
よって、このようなコイル2を用いれば、製造プロセスの簡易化及び単純化、更には、これに伴う製造工数の削減を図れるため、大電流用インダクタ1に係わる量産性の向上及び低コスト性の向上を実現できる。特に、コイルパターンプレート2pを順次折り返して製作できるため、任意の折り返し間で得られるコイルを製造する際の巻数は1ターン(360〔゜〕)となり巻効率を高めることができるとともに、フープ母材を打ち抜く際の形状が一方向に整列するため、コイル製造機(製造工程)を単純化し、製造コストの低減及び製造精度の向上を図ることができる。
また、コイル2の角部を直角にできるため、大電流用インダクタ1の更なる偏平化により熱伝導性及び熱放射性をより高めることができる。加えて、コイル2を製造する際におけるコイル2自身の内部には折り返し部分が存在しないため、磁気回路としての磁気効率を高めることができるとともに、小型コンパクト化(薄型化)を図る上で有利になる。しかも、コイル部2の全体形状を任意の形状に選定できるなど、設計自由度を飛躍的に高めることができる。
一方、得られたコイル2に対して、前述した第一の放熱性絶縁塗料Xaのコーティング処理を行う(ステップS5)。即ち、第一の放熱性絶縁塗料Xaを収容したディップ槽にコイル2をディップするディップコート処理を行う。この場合、コイル2の両端におけるリード部をチャック等により把持し、コイル2の各導体ターン部2m…間に隙間を空けた状態(図1の抽出図に示す状態)でディップを行う。ディップコート処理では、ディップ槽からの引き上げ速度によりコーティング層の厚さが決まるため、予め引き上げ速度を設定する。引き上げ速度としては、コーティング層により形成される放熱助長皮膜5の厚さLaが20〜50〔μm〕程度となるように、0.1〜2.0〔mm/s〕の範囲で設定することができる。
この後、放熱性絶縁塗料Xaをコーティングしたコイル2に対する焼成処理を行う(ステップS6)。焼成処理は、焼成温度を200〔℃〕、焼成時間を15〔min〕に設定した環境下で行う。これにより、コイル2の表面2fに、所定の厚さLa、即ち、20〜50〔μm〕の厚さを有する放熱助長皮膜5を設けたコイル2を得ることができる(ステップS7)。このようなディップコート処理及び焼成処理を行うことにより、コイル2に対する放熱性絶縁塗料Xaのコーティング、更にはコイル2における所定の厚さLaを有する放熱助長皮膜5の成膜を容易かつ確実に行うことができるとともに、特に、シート材Msにより連続形成したコイルパターンプレート2pを順次折り畳んで製作したコイル2のような塗布しにくい形状部分を有するコイルであっても容易かつ均質なコーティングを行うことができる。
図6は、コイル2の表面2fに設けた放熱助長皮膜5の試験データを示す。図6(a)は、200〔℃〕と250〔℃〕に設定した加熱環境下での円筒形マンドレル法を用いた耐屈曲性試験データである。この試験データによれば、200〔℃〕の加熱環境下の場合、500〔H〕以上の加熱時間でも十分な耐屈曲性を得ることができる。しかし、250〔℃〕の加熱環境下の場合には、加熱時間が10〔H〕を越えた付近から耐屈曲性が急速に低下してしまう。図6(b)は、200〔℃〕と250〔℃〕に設定した加熱環境下でのJISの付着性分類により判定した付着性試験データである。この試験データによれば、200〔℃〕の加熱環境下の場合、500〔H〕以上の加熱時間でも十分な付着性を得ることができる。しかし、250〔℃〕の加熱環境下の場合には、加熱時間が10〔H〕を越えた付近から付着性が急速に低下してしまう。
また、図7は、放熱助長皮膜5の厚さLa〔μm〕に対する円筒形マンドレル法を用いた耐屈曲性試験データを示す。同図中、Zpで示す領域がコイル2のエッジ部2peにおける絶縁性低下領域を示し、放熱助長皮膜5の厚さLa〔μm〕がLad以下、即ち、20〔μm〕よりも薄い場合には絶縁性を確保できない。したがって、放熱助長皮膜5の厚さLa〔μm〕は、この試験データ等を考慮すれば、上述した20〜50〔μm〕程度が望ましい。
さらに、図8は、コイル2の通電時間〔min〕に対するコイル2の表面2fの温度(表面温度)の温度変化特性を示す。同図中、Toは絶縁塗料を全くコーティングしていないいわば裸状態のコイル2の表面温度、Tpは従来の一般的な絶縁塗料であるポリエステル樹脂塗料をコーティングしたコイル2の表面温度、Tiは本実施形態で用いた放熱性絶縁塗料Xaをコーティングして放熱助長皮膜5を設けたコイル2の表面温度をそれぞれ示す。同図から明らかなように、放熱助長皮膜5を設けた本実施形態に係るコイル2の表面温度が最も低くなっている。この場合、各コイル2…のディメンション(インダクタンス:500〔μH〕)は全て同一であり、通電条件(150〔A〕)も全て同一である。したがって、全て同じ熱量が発生しているにも拘わらず、本実施形態に係るコイル2の表面温度が最も低いことは、コイル2の表面2fからの放熱が効率的に行われていることが考えられ、放熱助長皮膜5における熱伝導性及び熱放射性の優位性を確認できる。
なお、以上は、コイル2の表面2fに対して放熱性絶縁塗料Xaを直接コーティングする場合を示したが、必要により、コイル2に放熱性絶縁塗料Xaをコーティングする前に、コイル2の表面2fに酸化防止膜5を設けるための金属メッキ処理を行ってもよい。金属メッキとしては、ニッケルメッキ,アルミニウムメッキ,亜鉛メッキ等を用いることができる。これにより、コイル2の表面2fと放熱助長皮膜5間に、金属メッキ処理による酸化防止膜を設けることができ、酸化による放熱助長皮膜5のより確実な剥離防止を図ることができるとともに、加えて、コイル2の表面2fに対する均一なコーティング処理、更にはコイル2のエッジ部に対するディップコーティングによる厚膜形成を行うことができる。
次に、コア3の製作工程について説明する。コア3は複数(例示は、四つ)のコア分割部3a,3b,3c,3dを組合わせて構成する。したがって、予め、コア分割部3a,3b…の製作を行う。なお、コア分割部3a,3b…は、いずれも同一のコア分割部3a…を用いることができる。コア分割部3aの製作に際しては、まず、珪素鋼板等の磁性板を打抜成形等することにより、図3に示す多数のコア板片3ap…を用意する(ステップS8)。この場合、一枚のコア板片3apは、図3に仮想線で示すように、一定の厚さを有し、かつ平面視がコア3の平面形状を四等分した形状に選定する。例示のコア3は、図1に示すように、平面形状が中央に開口を有する小判形(長円形)となるため、四等分した形状は図3のようになる。このように、コア3を複数のコア分割部3a,3b…の組合わせにより構成すれば、各コア分割部3a,3b…を容易に偏平化することが可能になり、コア3の形態的な側面からも大電流用インダクタ1の偏平化に寄与できる。
そして、得られたコア板片3ap…は複数枚積層してコア分割部3aを製作する(ステップS9)。積層に際しては接着剤等により接着する。例示のコア分割部3aは、四枚のコア板片3ap…を積層した場合を示す。コア3は、このようなコア分割部3aを四つ用意し、各コア分割部3a…の向き等を考慮して組合わせれば、図1に示すような四つのコア分割部3a,3b,3c,3dとして用いることができる。なお、コア3の例示形状は、小判形であるが、その他、円形,楕円形など、一般的には、折曲部を有しない非多角形のリング状に形成することができるとともに、コア分割部3a…を得るための分割数は任意に選定できる。
ところで、複数のコア板片3ap…を積層した積層構造となるコア3は、図4に示すような偏平形状にすることが望ましい。このため、コア3の全幅寸法/厚さ寸法は、所定値以上、望ましくは10以上に選定する。これにより、偏平な大電流用インダクタ1を得ることができ、従来の大電流用インダクタ(リアクトル)を設置できない狭い隙間等の空間であっても挿入により容易に設置することができる。よって、設置性(省スペース性,融通性等)に優れるため、例えば、ハイブリッド自動車及び燃料電池自動車等のように配設スペースの制限された設置場所であっても容易に設置することができるとともに、設置場所における設計自由度を高めることができる。しかも、コア3は、軸心方向における剛性が飛躍的に高められるため、大電流用インダクタ1の振動が抑制され、コア3の構造面からも低騒音化(静音性向上)が図られる。しかも、大電流用インダクタ1は、偏平形状となるため、特に、中央側の熱放射性が飛躍的に高められる。
一方、得られたコア分割部3a…に対して、放熱性絶縁塗料Xb、即ち、上述した第一の放熱性絶縁塗料Xaのコーティング処理を行う(ステップS10)。この場合、第一の放熱性絶縁塗料Xaを収容したディップ槽にコア分割部3a…をディップするディップコート処理を行う。ディップコート処理は、基本的に上述したコイル2のコーティング処理と同様に行うことができる。したがって、コーティング層により形成される放熱助長皮膜6の厚さLbは20〜50〔μm〕程度となるようにコーティング処理を行う。また、放熱性絶縁塗料Xaをコーティングしたコア分割部3a…に対する焼成処理を行う(ステップS11)。焼成処理も、基本的には上述したコイル2の焼成処理と同様に行うことができる。よって、これらの処理工程を経て、コア分割部3a…(コア3)の表面3fに所定の厚さLbを有する放熱助長皮膜6を設けたコア分割部3a…、即ち、後述するコア3を得ることができる(ステップS12)。
次に、パッケージ4の製作工程について説明する。パッケージ4はコイル2を収容可能な上方に開口したケース部4pと、このケース部4pの開口を覆うカバー部4cを備える。ケース部4pとカバー部4cは、熱伝導性素材、例えば、アルミニウム素材等により、それぞれ一体成形する(ステップS13)。
一方、得られたケース部4pとカバー部4cに対して、前述した第二の放熱性絶縁塗料Xcのコーティング処理を行う(ステップS14)。この場合、第二の放熱性絶縁塗料Xcを収容したディップ槽に、ケース部4p及びカバー部4cをディップするディップコート処理を行う。ディップコート処理は、基本的に上述したコア分割部3a…のコーティング処理と同様に行うことができる。したがって、コーティング層により形成される放熱助長皮膜7の厚さLcが20〜50〔μm〕程度となるようにコーティング処理の条件を設定してコーティングを行う。また、第二の放熱性絶縁塗料Xcをコーティングしたケース部4p及びカバー部4cに対する焼成処理を行う(ステップS15)。焼成処理も、基本的には上述したコア分割部3a…の焼成処理と同様に行うことができる。よって、これらの処理工程を経て、ケース部4p及びカバー部4c(パッケージ4)の表面4fに所定の厚さLcを有する放熱助長皮膜7を設けたケース部4p及びカバー部4c、即ち、後述するパッケージ4を得ることができる(ステップS16)。
以上の製作工程を経て、放熱性絶縁塗料Xaにより放熱助長皮膜5を設けたコイル2,放熱性絶縁塗料Xa(Xb)により放熱助長皮膜6を設けたコア分割部3a…(コア3)及び放熱性絶縁塗料Xcにより放熱助長皮膜7を設けたケース部4p及びカバー部4c(パッケージ4)が得られるため、これらの組立を行う。まず、コイル2にコア分割部3a…を組付けるコイルアッセンブリの組立を行う(ステップS17)。この場合、各コア分割部3a,3b…3dを、コイル2の内部空間に収容するとともに、各コア分割部3a,3b…3dの相互間に、厚さ1〔mm〕程度のガラスエポキシ樹脂製のセパレータシート11…を介在させ、接着剤を用いて各コア分割部3a,3b…3dの相互間を結合する。これにより、コア3を装着したコイル2、即ち、コイルアッセンブリが得られる。
また、得られたコイルアッセンブリは、図1及び図4に示すケース部4pの内部に収容する(ステップS18)。この際、例えば、シリコンゴム等を用いた複数の保持部材12…をケース部4pの内部底面上に敷き、この上にコイルアッセンブリ(コイル2)を載せる。なお、必要によりケース部4pの内壁部とコイル2間にも同様の保持部材12…を介在させてもよい。そして、ケース部4pの内部には、少なくとも熱伝導性を有するポッティング材8を充填する(ステップS19)。ポッティング材8の一例としては、シリコン樹脂13に60〜90重量パーセントの熱伝導用粉材14…を含有させたポッティング材を用いることができる。例示は、最も効果的な75重量パーセントの熱伝導用粉材14…を含有させている。この場合、シリコン樹脂13は、二液混合の加熱硬化型或いは一液性常温硬化型のシリコンゴムを用いることができるとともに、熱伝導用粉材14…には、熱伝導率(熱伝導性)をより高めるためのものであり、粒子が0.2〔mm〕以下の酸化アルミニウム(アルミナ)やボロン材をはじめ、前述した顔料の一部を利用することができる。このようなポッティング材8を用いれば、コイル2(コア3)とケース部4p(パッケージ4)間の熱伝導性能を飛躍的に高めることができるとともに、コイル2に対する保護効果、更には大電流用インダクタ1の耐久性を高めることができる。
ポッティング材8の充填が終了したなら、ケース部4pの上にカバー部4cを載せ、複数の固定ネジ15…により固定する(ステップS20)。この場合、カバー4cには、図1に示す端子引出用の切欠孔16が形成されているため、コイル2の両端から導出されるリード部2i,2jを、この切欠孔16の中を通して外部に突出させるとともに、ポッティング材8の充填量を設定することにより、カバー部4cをケース部4pの上に載せた際に、ポッティング材8の一部8uが切欠孔16内に進入するようにする(図4参照)。これにより、リード部2i,2jとカバー部4c間の絶縁性が確保される。以上の製造工程を経て、図1及び図4に示す目的の大電流用インダクタ1を得ることができる(ステップS21)。
図9は、本実施形態に係る大電流用インダクタ1における全ての放熱助長皮膜5,6,7を明示した模式的断面構成図を示している。また、図10は、インダクタ1に通電した際における通電時間〔H〕に対する各部の温度変化特性を示す。Taはコイル2の表面温度、Tbはコア3の表面温度、Tcはパッケージ4の表面温度、Tdは周囲温度を示している。コイル2の表面温度が202〔℃〕と高い状態にあってもパッケージ4の表面温度は90〔℃〕と抑制されており、本実施形態に係るインダクタ1は良好な熱伝導性及び熱放射性を有している。
このように、本実施形態に係る大電流用インダクタ1によれば、コイル2,コア3,パッケージ4の一又は二以上の表面2f,3f,4fの一部又は全部に、少なくともシリカネットワーク構造を有する液剤を用いたバインダ及び少なくとも遠赤外線放射性物質を含む一種又は二種以上の顔料を配合させてなる放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcをコーティングすることにより、所定の厚さLa,Lb,Lcの放熱助長皮膜5,6,7を設けてなるため、放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcを用いた熱助長皮膜5,6,7における固有の熱伝導性能及び熱放射性能により、コイル2,コア3,パッケージ4,外気の各相互間における熱伝導性及び熱放射性を飛躍的に高めることができる。また、大電流用インダクタ1を製造するに際し、予め、コイル2,コア3,パッケージ4、の一又は二以上の表面2f,3f,4fの一部又は全部に、少なくともシリカ(Si−O)ネットワーク構造を有する液剤を用いたバインダ及び少なくとも遠赤外線放射性物質を含む一種又は二種以上の顔料を配合させてなる放熱性絶縁塗料Xa,Xb,Xcをコーティングすることにより、所定の厚さLa,Lb,Lcの放熱助長皮膜5,6,7を設け、この後、コイル2,コア3及びパッケージ4を組付けることにより大電流用インダクタ1を製造するようにすれば、コイル2,コア3及びパッケージ4に対して、所定の厚さLa,Lb,Lcを有する放熱助長皮膜5,6,7を容易かつ確実に設けることができる。
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、第一の放熱性絶縁塗料Xa(Xb)をコイル2とコア3に使用し、第二の放熱性絶縁塗料Xcをパッケージ4に使用した例を挙げたが、第一の放熱性絶縁塗料Xa(Xb)をパッケージ4に使用し、第二の放熱性絶縁塗料Xcをコイル2及び/又はコア3に使用することも可能である。また、例示のポッティング材8は一例であり、第一の放熱性絶縁塗料Xa(Xb)又は第二の放熱性絶縁塗料Xcを用いてもよいし、或いはこの改良タイプなどを用いてもよい。一方、コイル2に銅素材を使用し、パッケージ4にアルミニウム素材を使用した例を挙げたが、他の素材の使用を排除するものではない。特に、コイル2は、銅素材が望ましいがアルミニウム素材等の他の素材であってもよい。また、コイル2は、コイルパターンプレート2pを利用する製作方法が望ましいが、他の製作方法を排除するものではない。さらに、コア3も、アモルファス,パーマロイ,ナノ結晶合金,フェライト,Fe−Al−Si系合金,純鉄等を用いた焼結タイプを排除するものではない。
なお、実施形態では、単一のコイル2を用いたインダクタ1を例示したが、例えば、パッケージ4を複数のコイル2…(コア3…を含む)を収容可能な形状に形成し、複数のコイル2…を有するインダクタ1として構成してもよい。また、コイル2の一部又は複数のコイル2…を利用したトランス等として構成してもよく、本発明に係るインダクタ1は、各種コイル製品を含む概念であり、各種コイル製品に利用することができる。
1:大電流用インダクタ,2:コイル,2f:コイルの表面,2p:コイルパターンプレート,3:コア,3f:コアの表面,3a:コア分割部,3b:コア分割部,3c:コア分割部,3d:コア分割部,4:パッケージ,4f:パッケージの表面,5:放熱助長皮膜,6:放熱助長皮膜,7:放熱助長皮膜,8:ポッティング材,Xa:放熱性絶縁塗料,Xb:放熱性絶縁塗料,Xc:放熱性絶縁塗料,La:所定の厚さ,Lb:所定の厚さ,Lc:所定の厚さ,Ms:シート材