JP2009209031A - 酸化ジルコニウム水和物粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を提供する。
【解決手段】本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表され、平均一次粒子径が0.5nm以上5nm以下、平均二次粒子径が100nm以下であり、前記一般式中のnは2.5以上10以下の数であることを特徴とする。また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法は、アルカリ水溶液とジルコニウム塩の水溶液とを混合し、pHを7.0以上13.0以下に調整して酸化ジルコニウム水和物粒子を作製する工程と、前記酸化ジルコニウム水和物粒子を密閉容器中において、水の存在下で80℃以上110℃未満の温度で1時間以上5時間未満の時間、マイクロ波水熱処理する工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】図3
【解決手段】本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表され、平均一次粒子径が0.5nm以上5nm以下、平均二次粒子径が100nm以下であり、前記一般式中のnは2.5以上10以下の数であることを特徴とする。また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法は、アルカリ水溶液とジルコニウム塩の水溶液とを混合し、pHを7.0以上13.0以下に調整して酸化ジルコニウム水和物粒子を作製する工程と、前記酸化ジルコニウム水和物粒子を密閉容器中において、水の存在下で80℃以上110℃未満の温度で1時間以上5時間未満の時間、マイクロ波水熱処理する工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、大きな水和水量と良好な分散性能とを有する酸化ジルコニウム水和物粒子とその製造方法に関する。
酸化アルミニウム、ドープ型酸化セリウム、酸化ジルコニウム、各種複合酸化物等の無機材料は、無機プロトン伝導性材料であり、例えば固体酸触媒、電気化学キャパシタや燃料電池等に用いる電解質材料、あるいは電気化学的水素ポンプ、水素センサや酸素センサ等の各種ガスセンサ等の多彩な用途への応用が可能である。上記無機プロトン伝導性材料の中でも酸化ジルコニウムは、製造工程の簡便性や安全性等の面で優れており、利用頻度の高い材料である。
酸化ジルコニウム等の用途としては、例えば、特許文献1には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ等の固体超強酸物質からなるガス感応体を備えたガスセンサが提案されている。また、特許文献2には、水素ガスセンサのイオン伝導性電解質として、安定化ジルコニア又は安定化セリアが有効であると記載されている。さらに、特許文献3には、安定化ジルコニア又はセリア系酸化物からなる固体電解質層を備えた固体電解質型燃料電池が提案されている。
このような酸化ジルコニウムは水和物としても存在し、その作製方法としては、アルカリ溶液とジルコニウム塩溶液との中和反応を利用する方法、又はアンモニアによるジルコニウム塩の加水分解反応を利用する方法が一般に用いられている。これらの方法で作製された一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物の水和水量nは、室温乾燥状態で高々2.5程度となる。ここで、酸化ジルコニウム水和物の水和水には、酸化ジルコニウム水和物粒子の表面に吸着する吸着水と、酸化ジルコニウム水和物粒子の結晶内に存在する結晶水との両者が含まれる。
また、酸化ジルコニウム微粒子の製造方法としては、特許文献4には、中和沈殿法により平均粒子径が5〜100nmの範囲にあるジルコニア微粒子が分散したジルコニアゾルの製造方法が提案されている。また、特許文献5にも、中和沈殿法により平均粒子直径又は平均粒子長軸長さが1〜200nmの範囲にある酸化ジルコニウム粒子の製造方法が提案されている。
一般に酸化ジルコニウム水和物は、その水和水量が多いほどプロトン伝導性が高まることが知られている。大きな水和水量を有する酸化ジルコニウム水和物は、理想的には、(1)比表面積を大きくして吸着水を多くするために、その一次粒子が超微粒子であり、さらに、(2)結晶水及び吸着水の両方を多く含むために結晶性が低いことが必要である。これにより、全体として吸着水と結晶水との総和で与えられる水和水量を可能な限り多くすることができる。この様に、プロトン伝導性の高い酸化ジルコニウム水和物を得るには、その粒子径をできるだけ小さくし、且つ、その結晶性を低くすればよい。
しかし、酸化ジルコニウム水和物の粒子径を小さくするためには、その結晶性を高めて分散性の高い均一な微粒子を得る必要があるが、結晶性を高めると吸着水も結晶水も共に減少するという問題がある。一方、酸化ジルコニウム水和物の結晶性を低くすると、湿潤雰囲気、乾燥雰囲気の差に関わらず、少しの熱で酸化ジルコニウム水和物粒子が凝着して粗大粒子を形成する傾向が強く、そのために、粒子径の異なる大小の粒子が混在し、均一な微粒子を得ることが困難である。その結果、結晶性の低下により吸着水量と結晶水量とはある程度増加するが、粒子径の増大により比表面積が減少して、吸着水量の増加にも限界が生じる。
また、水和水量を高めるために一次粒子を微粒子化すれば、それに伴い粒子間引力が増大するために、数μmにも及ぶ粗大な二次粒子を形成しやすくなる。これらの粗大な二次粒子は、例えば酸化ジルコニウム水和物粒子を溶媒中に分散させて使用する場合には均一に分散することが非常に難しく、あらかじめ二次粒子径の小さな酸化ジルコニウム粒子を得ることが望まれる。
この様に従来は、結晶性が低く、均一な粒子径を持つ超微粒子であり、水和水量が大きく、且つ二次粒子径の小さな酸化ジルコニウム水和物粒子を得ることは困難であった。
本発明は、上記問題を解決したもので、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を提供するものである。
本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子であって、前記粒子の平均一次粒子径は、0.5nm以上5nm以下であり、前記粒子の平均二次粒子径は、100nm以下であり、前記一般式中のnは2.5以上10以下の数であり、前記nは、前記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする。
また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法は、アルカリ水溶液とジルコニウム塩の水溶液とを混合し、pHを7.0以上13.0以下に調整して酸化ジルコニウム水和物粒子を作製する工程と、前記酸化ジルコニウム水和物粒子を密閉容器中において、水の存在下で80℃以上110℃未満の温度で1時間以上5時間未満の時間、マイクロ波水熱処理する工程とを含むことを特徴とする。
本発明により、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を提供することができる。
(実施形態1)
先ず、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表され、上記粒子の平均一次粒子径は0.5nm以上5nm以下であり、その平均二次粒子径は100nm以下であり、上記一般式中のnは2.5以上10以下の数であり、上記nは、上記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする。
先ず、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表され、上記粒子の平均一次粒子径は0.5nm以上5nm以下であり、その平均二次粒子径は100nm以下であり、上記一般式中のnは2.5以上10以下の数であり、上記nは、上記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする。
上記平均一次粒子径は、0.5nm以上5nm以下であり、好ましくは1nm以上3.5nm以下である。上記平均一次粒子径が5nmを超えると粒子の比表面積が減少して吸着水量が減少し、全体の水和水量も減少する。また、酸化ジルコニウムの格子定数が約0.5nm前後であることから、上記平均一次粒子径が0.5nm未満の酸化ジルコニウム水和物粒子を作製することは困難となる。特に、上記平均一次粒子径が1nm以上3.5nm以下では、微粒子の粒子境界が鮮明になり粒子性が増すため、表面吸着水量がより増大するため好ましい。
また、上記平均二次粒子径は100nm以下であり、好ましくは1nm以上80nm以下である。これは、平均一次粒子径がいかに微細であった場合でも、その凝集体である二次粒子径が粗大であるような場合には、これを分散により細かくほぐし、良好な分散性を得ることが困難なためである。用途により異なるが、一般的にこれら微粒子を利用して何らかの製品形態とするには、この微粒子を分散させたインクを塗布する、又は乾燥させて均一に押し固め成形する、などの工程を経る場合が多い。この際に、二次粒子径が大きければ、均一な塗布膜、均一な成形体を得ることができない。
上記酸化ジルコニウム水和物粒子は、水和水量の観点からは、その一次粒子が凝集して二次粒子を形成していても、一次粒子の平均粒子径が上記範囲内にあれば問題ない。一次粒子が凝集して二次粒子を形成しても、水分子の入る隙間がありさえすればよく、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量には影響しないからである。
本発明において、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真から観察される300個の粒子の直径又は長軸長さの算術平均から求めるものとする。
酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量を表す上記一般式中のnは、2.5以上であり、好ましくは4以上である。これにより、水和水量が2.5を下回る従来の酸化ジルコニウム水和物粒子に比べて、高いプロトン伝導性を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を提供できる。特に、上記nが4以上では、燃料電池等に用いるプロトン伝導性電解質材料として最適となる。上記nの特性上の上限は限定されず、nは大きいほど良好なプロトン伝導性を示すこととなるが、後述する本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法により作製した酸化ジルコニウム水和物粒子では、上記nの上限は10程度となる。
本発明では上記nは、酸化ジルコニウム水和物粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に示差熱熱重量同時分析(TG/DTA)により測定した数値であることとする。これは、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量、特に吸着水量は乾燥条件により変化するものであり、酸化ジルコニウム水和物粒子の結晶水と吸着水との総和としての水和水量を相互に比較するための基準を明確にするためである。また、示差熱熱重量同時分析において、酸化ジルコニウム水和物における水和水量変化は、吸着水、結晶水を含めて連続的なものであり、全ての水和水が完全に抜けると、不連続な結晶構造変化が起こるために、約400〜500℃の範囲において発熱ピークが観測される。本発明における水和水量は、示差熱熱重量同時分析において、この発熱ピークが観測される点までの水分量変化から求めるものとする。
(実施形態2)
次に、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法について説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法は、アルカリ水溶液とジルコニウム塩の水溶液とを混合し、pHを7.0以上13.0以下に調整して酸化ジルコニウム水和物粒子を作製する工程と、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を密閉容器中において、水の存在下で80℃以上110℃未満の温度で1時間以上5時間未満の時間、マイクロ波水熱処理する工程とを含むことを特徴とする。本発明において、マイクロ波水熱処理とは、マイクロ波を用いて加熱する水熱処理をいう。
次に、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法について説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法は、アルカリ水溶液とジルコニウム塩の水溶液とを混合し、pHを7.0以上13.0以下に調整して酸化ジルコニウム水和物粒子を作製する工程と、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を密閉容器中において、水の存在下で80℃以上110℃未満の温度で1時間以上5時間未満の時間、マイクロ波水熱処理する工程とを含むことを特徴とする。本発明において、マイクロ波水熱処理とは、マイクロ波を用いて加熱する水熱処理をいう。
上記製造方法によれば、5nm以下の平均一次粒子径を有し、且つ水和水量が大きく、平均二次粒子径が100nm以下の酸化ジルコニウム水和物の超微粒子を得ることができる。即ち、上記製造方法で製造した酸化ジルコニウム水和物粒子は、粒子径分布が均一で、比較的結晶性が低いにもかかわらず凝着による粗大粒子が存在せず、また二次粒子径も小さいため、実施形態1で説明した水和水量が大きく、プロトン伝導性が高く、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を合理的に得ることができる。
本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法は、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を作製する工程において、上記アルカリ水溶液の温度及び上記ジルコニウム塩の水溶液の温度を、それぞれ0℃以上10℃以下に調整して、上記アルカリ水溶液と上記ジルコニウム塩の水溶液とを混合することが好ましい。これにより、最終的に得られる酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量をさらに大きくすることができる。
また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法は、上記マイクロ波水熱処理を行う工程の前に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した水溶液を、pHが7.0以上13.0以下で、20℃以上40℃以下の温度で、5時間以上40時間以下の時間熟成する工程をさらに含むことが好ましい。これにより、微粒子化と共に水和水量をさらに大きくすることができる。
また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法は、上記マイクロ波水熱処理した酸化ジルコニウム水和物粒子を、空気中で20℃以上80℃以下の温度で、3時間以上12時間以下の時間乾燥する工程をさらに含むことができる。これにより、粉末状の酸化ジルコニウム水和物粒子が得られる。但し、酸化ジルコニウム水和物粒子を水に分散した状態で使用する場合には、必ずしも上記乾燥工程は必要ない。
以下、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法の一例をより詳細に説明する。
<溶液作製工程>
先ず、ジルコニウム塩を水に溶解してジルコニウム塩水溶液を作製する。ジルコニウム塩としては、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム等を使用できるが、水和水量の大きな酸化ジルコニウム水和物粒子を得る上で、塩化酸化ジルコニウムが最も好ましい。
先ず、ジルコニウム塩を水に溶解してジルコニウム塩水溶液を作製する。ジルコニウム塩としては、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム等を使用できるが、水和水量の大きな酸化ジルコニウム水和物粒子を得る上で、塩化酸化ジルコニウムが最も好ましい。
上記ジルコニウム塩水溶液のジルコニウム塩濃度は特に限定されず、通常0.05〜0.5mol/Lとすればよい。
次に、アルカリ水溶液を作製する。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属塩の水溶液、又はアンモニア水溶液を用いることができるが、微粒子の酸化ジルコニウム水和物を得る上で、アンモニア水溶液が最も好ましい。
<沈殿工程>
次に、上記アルカリ水溶液に、上記ジルコニウム塩水溶液を滴下して攪拌し、pHを7.0以上13.0以下、好ましくは9.5以上12.0以下に調整して、酸化ジルコニウム水和物粒子を沈殿させる。pHが上記範囲を外れると、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量が減少するため好ましくない。また、操作手順としてジルコニウム塩水溶液にアルカリ水溶液を滴下すると、ジルコニウム塩水溶液が酸性であるため、pHを7.0以上13.0以下に調整することが困難となるため好ましくない。
次に、上記アルカリ水溶液に、上記ジルコニウム塩水溶液を滴下して攪拌し、pHを7.0以上13.0以下、好ましくは9.5以上12.0以下に調整して、酸化ジルコニウム水和物粒子を沈殿させる。pHが上記範囲を外れると、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量が減少するため好ましくない。また、操作手順としてジルコニウム塩水溶液にアルカリ水溶液を滴下すると、ジルコニウム塩水溶液が酸性であるため、pHを7.0以上13.0以下に調整することが困難となるため好ましくない。
但し、第1と第2の2種類のアルカリ水溶液を準備し、第1のアルカリ水溶液に、第2のアルカリ水溶液と上記ジルコニウム塩水溶液とを同時に滴下することは可能である。この場合、第2のアルカリ水溶液と上記ジルコニウム塩水溶液とをそれぞれ当量ずつ滴下すれば、第1のアルカリ水溶液のpHを多少低く設定しても最終的な混合溶液のpHを7.0以上13.0以下に調整できる。
また、この際に上記アルカリ水溶液の温度及び上記ジルコニウム塩水溶液の温度を、それぞれ0℃以上10℃以下に調整して、上記アルカリ水溶液と上記ジルコニウム塩水溶液とを混合して、酸化ジルコニウム水和物粒子を沈殿させることが好ましい。これにより常温以上の温度で混合して沈殿させる場合よりも、より高い水和水量とすることができる。このため、上記混合・沈殿はより低温で行うことが好ましいが、0℃未満の温度では、攪拌下であるとはいえ溶液が氷る可能性があるために好ましくない。
<熟成工程>
次に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子が沈殿した水溶液を、pHが7.0以上13.0以下、好ましくは7.5以上10.0以下で、20℃以上40℃以下、好ましくは20℃以上30℃以下の温度で、5時間以上40時間以下の時間熟成する。熟成工程は、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法において必須の工程ではないが、熟成工程を行うことにより、この後の工程において、酸化ジルコニウム水和物粒子をより微粒子化し、水和水量をより大きくすることができる。
次に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子が沈殿した水溶液を、pHが7.0以上13.0以下、好ましくは7.5以上10.0以下で、20℃以上40℃以下、好ましくは20℃以上30℃以下の温度で、5時間以上40時間以下の時間熟成する。熟成工程は、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法において必須の工程ではないが、熟成工程を行うことにより、この後の工程において、酸化ジルコニウム水和物粒子をより微粒子化し、水和水量をより大きくすることができる。
上記酸化ジルコニウム水和物粒子が沈殿した水溶液のpHが7.0を下回ると、本来沈殿すべき残りの酸化ジルコニム水和物粒子が十分に沈殿せず、そのpHが13.0を超えると次のマイクロ波水熱処理工程において結晶成長が過多となり、比較的結晶性の高い酸化ジルコニウム水和物粒子となり、吸着水も結晶水も共に減少して、水和水量が減少する。また、熟成温度が20℃を下回ると熟成の効果が十分に得られず、40℃超えると酸化ジルコニウム水和物粒子のゲル化が始まり、粒子径が増加して比表面積が減少し、吸着水が減少して、水和水量が減少する。さらに、熟成時間が5時間を下回ると酸化ジルコニウム水和物粒子の粒子径の均一性が不十分となり、40時間を超えると溶液中での結晶成長が進み、水和水量の大きい酸化ジルコニウム水和物粒子が得られにくくなるため、好ましくない。
<マイクロ波水熱処理工程>
次に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を水の存在下で80℃以上110℃未満、好ましくは90℃以上105℃以下の温度で、1時間以上5時間以下、好ましくは2時間以上4時間以下の時間マイクロ波水熱処理する。マイクロ波を用いることにより、短時間で目的温度まで均一に昇温可能であり、上記酸化ジルコニウム水和物粒子が規定温度を外れて存在する時間が少なくなるため、上記酸化ジルコニウム水和物粒子の凝集を防止できる。
次に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を水の存在下で80℃以上110℃未満、好ましくは90℃以上105℃以下の温度で、1時間以上5時間以下、好ましくは2時間以上4時間以下の時間マイクロ波水熱処理する。マイクロ波を用いることにより、短時間で目的温度まで均一に昇温可能であり、上記酸化ジルコニウム水和物粒子が規定温度を外れて存在する時間が少なくなるため、上記酸化ジルコニウム水和物粒子の凝集を防止できる。
マイクロ波水熱処理は、オートクレーブ等の密閉容器内で、出力が100〜1000Wのマイクロ波を用いて、上記温度で加熱することにより行う。マイクロ波は、300MHz〜30GHzの周波数を有するが、本発明では水熱処理に用いるため、水分子の加熱が可能な約900MHz以上の周波数のマイクロ波を用いればよく、周波数が高いほど効率良く加熱することができる。但し、マイクロ波の周波数は使用制限がされており、日本では2.45GHzのみが工業用に使用可能であり、米国では915MHzも使用可能である。
マイクロ波水熱処理温度が80℃未満では、酸化ジルコニウム水和物が境界のはっきりしない不定形の粒子形状をとることが多く、その結果、凝着による粗大化が起こり、平均一次粒子径が5nm以下の酸化ジルコニウム水和物粒子が得られにくい。また、マイクロ波水熱処理温度が110℃を超えると結晶性の高い酸化ジルコニウム粒子となり、その結果、粒子境界は明確になるが、それとともに結晶水が極めて少ない酸化ジルコニウム粒子となり好ましくない。マイクロ波水熱処理時間が1時間未満では、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量が十分に大きくならず、一方、5時間を超えると水和水量が飽和量に達し、その後水熱処理を続けても水和水量は増加しない。
<乾燥工程>
次に、マイクロ波水熱処理した酸化ジルコニウム水和物粒子を水洗してpHが6〜9程度の酸化ジルコニウム水和物粒子分散液とした後、濾過し、その後、空気中で20℃以上80℃以下の温度で、3時間以上12時間以下の時間乾燥する。上記水洗により不純物をできる限り取り除くことが好ましいが、水洗を省略することもできる。乾燥工程は、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法において必須の工程ではないが、乾燥工程を行うことにより、粉末状の酸化ジルコニウム水和物粒子が得られる。
次に、マイクロ波水熱処理した酸化ジルコニウム水和物粒子を水洗してpHが6〜9程度の酸化ジルコニウム水和物粒子分散液とした後、濾過し、その後、空気中で20℃以上80℃以下の温度で、3時間以上12時間以下の時間乾燥する。上記水洗により不純物をできる限り取り除くことが好ましいが、水洗を省略することもできる。乾燥工程は、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法において必須の工程ではないが、乾燥工程を行うことにより、粉末状の酸化ジルコニウム水和物粒子が得られる。
上記乾燥温度と乾燥時間は一例であって、上記範囲以外であってもよいが、乾燥温度が80℃を超えると、急激な乾燥により酸化ジルコニウム粒子同士が激しく凝集する恐れがあるため、乾燥温度は80℃以下が好ましい。また、乾燥雰囲気も特に限定されないが最も簡便な空気中での乾燥が好ましい。乾燥温度は20℃未満でもかまわないが、その際には乾燥に時間がかかるため、真空乾燥等を行う必要がある。
このようにして得られた酸化ジルコニウム水和物粒子は、平均一次粒子径が0.5nm以上5nm以下の範囲にあり、且つ、一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量nが2.5以上であるものが得られる。得られた酸化ジルコニウム水和物粒子のX線回折スペクトルを測定すると、ZrO2の正方晶構造を有するものの、そのX線回折スペクトルは非常にブロードであり、アモルファス状に近い低結晶性の構造が確認できる。
但し、上記水和水量nは、前述のとおり、酸化ジルコニウム水和物粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であり、結晶水量と吸着水量の両者の総和である。
ここで、吸着水とは粒子表面に吸着している水であるために、乾燥の条件等により大きく変化することが一般的である。従って、吸着水を評価する際には、吸着し得る水分量という意味合いの評価となる。通常の結晶性粒子においては、結晶性が全く同等である場合には、比表面積が大きいほど吸着水量が大きくなることが一般的であるが、僅かでも結晶性が異なれば、表面特性もまた異なってくるために、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子のように、連続的に構造変態する種類の物質については、比表面積で吸着可能水分量を評価することはできない。また、吸着水を完全に取り除き、結晶水のみを評価することも可能ではあるが、酸化ジルコニウムのプロトン伝導性には、結晶水及び吸着水の両方が関与することから、どちらか一方ではなく、全体としての水分量を把握する必要がある。そのために、上記水和水量nの測定基準を定めたものである。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
28%アンモニア水溶液15.12gを300mLの水に溶解して本実施例で使用するアンモニア水溶液(アルカリ水溶液)を調製した。また、このアンモニア水溶液とは別に、塩化酸化ジルコニウム8gを100mLの水に溶解してジルコニウム塩水溶液を調製した(溶液作製工程)。
28%アンモニア水溶液15.12gを300mLの水に溶解して本実施例で使用するアンモニア水溶液(アルカリ水溶液)を調製した。また、このアンモニア水溶液とは別に、塩化酸化ジルコニウム8gを100mLの水に溶解してジルコニウム塩水溶液を調製した(溶液作製工程)。
次に、上記アンモニア水溶液に上記ジルコニウム塩水溶液を室温で滴下しつつ攪拌し、酸化ジルコニウム水和物粒子を含む沈殿物を生成させた(沈殿工程)。上記ジルコニウム塩水溶液は全て滴下して用いた。この沈殿物を含む懸濁液のpHは10.3であった。この沈殿物を懸濁液の状態で25℃で15時間、熟成させた(熟成工程)。15時間経過後の懸濁液のpHは、9.8であった。
続いて、この沈殿物を含む懸濁液をオートクレーブに仕込み、マイルストーンゼネラル社製のマイクロ波水熱装置“Micro SYNTH”を用いて、100℃で2時間加熱する水熱処理を施した(マイクロ波水熱処理工程)。昇温時間は2分、100℃定常状態でのマイクロ波の出力は約300Wとし、冷却は自然冷却とした。上記マイクロ波水熱装置は、1600Wのマグネトロンを搭載した最大出力1000Wの装置であり、マイクロ波の周波数は2.45MHzである。
最後に、マイクロ波水熱処理後の沈殿物から未反応物や不純物を除去するために、超音波洗浄器を使って水洗した後、濾過を行い、前述の水和水量の測定基準に沿って60℃で6時間、空気中で乾燥を行った(乾燥工程)。その後、乳鉢で軽く解砕し、酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
<X線回折スペクトルの測定>
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定した。図1に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子のX線回折スペクトルを示す。図1から、非常にブロードではあるが正方晶の酸化ジルコニウムに特徴的な30度付近と50度付近に、それぞれ2つのスペクトルピークの重なりから現れるピーク強度が観測された。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定した。図1に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子のX線回折スペクトルを示す。図1から、非常にブロードではあるが正方晶の酸化ジルコニウムに特徴的な30度付近と50度付近に、それぞれ2つのスペクトルピークの重なりから現れるピーク強度が観測された。
<平均粒子径の測定>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、得られた酸化ジルコニウム水和物粒子の形状観察を行ったところ、一次粒子径が約4〜5nmの粒子であることが分かった。また、上記粒子を高倍率でミクロに観察すれば個々の粒子に分離独立している様子が分かった。一方、倍率を下げて二次粒子の観察も行った。その結果、二次粒子径が20〜60nmの粒子であることが分かった。図2に、倍率80万倍で撮影した上記酸化ジルコニウム水和物粒子の一次粒子のTEM写真を示す。また、図3に、倍率20万倍で撮影した上記酸化ジルコニウム水和物粒子の二次粒子のTEM写真を示す。図2のTEM写真を用いて、300個の上記一次粒子の直径又は長軸長さの算術平均を求め、上記酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径を求めたところ、4.2nmであった。また、図3のTEM写真3枚を用いて、300個の上記二次粒子の直径又は長軸長さの算術平均を求め、上記酸化ジルコニウム水和物粒子の平均二次粒子径を求めたところ、62nmであった。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、得られた酸化ジルコニウム水和物粒子の形状観察を行ったところ、一次粒子径が約4〜5nmの粒子であることが分かった。また、上記粒子を高倍率でミクロに観察すれば個々の粒子に分離独立している様子が分かった。一方、倍率を下げて二次粒子の観察も行った。その結果、二次粒子径が20〜60nmの粒子であることが分かった。図2に、倍率80万倍で撮影した上記酸化ジルコニウム水和物粒子の一次粒子のTEM写真を示す。また、図3に、倍率20万倍で撮影した上記酸化ジルコニウム水和物粒子の二次粒子のTEM写真を示す。図2のTEM写真を用いて、300個の上記一次粒子の直径又は長軸長さの算術平均を求め、上記酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径を求めたところ、4.2nmであった。また、図3のTEM写真3枚を用いて、300個の上記二次粒子の直径又は長軸長さの算術平均を求め、上記酸化ジルコニウム水和物粒子の平均二次粒子径を求めたところ、62nmであった。
<水和水量の測定>
乾燥終了後1時間経過した上記酸化ジルコニウム水和物粒子について、リガク社製の示差熱天秤(装置型番:TG−DTA−2000S)を用いて示差熱熱重量同時分析(TG/DTA)を行い、一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量nを求めたところ、4.87であった。なお、酸化ジルコニウム水和物は約450℃近辺で完全に水和水が抜け、不連続な結晶変態を起こして酸化ジルコニウム単体となるが、本測定における水和水量変化は、この結晶構造変化温度までの値とした。
乾燥終了後1時間経過した上記酸化ジルコニウム水和物粒子について、リガク社製の示差熱天秤(装置型番:TG−DTA−2000S)を用いて示差熱熱重量同時分析(TG/DTA)を行い、一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量nを求めたところ、4.87であった。なお、酸化ジルコニウム水和物は約450℃近辺で完全に水和水が抜け、不連続な結晶変態を起こして酸化ジルコニウム単体となるが、本測定における水和水量変化は、この結晶構造変化温度までの値とした。
(実施例2)
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子のマイクロ波水熱処理工程において、水熱処理の温度を100℃から107℃に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子のマイクロ波水熱処理工程において、水熱処理の温度を100℃から107℃に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に、非常にブロードな正方晶の酸化ジルコニウムに対応するスペクトルが観測された。また、透過型電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、一次粒子径が約3〜5nm、二次粒子径が10〜60nmの粒子であることが分かり、実施例1と同様にして求めた酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径は4.4nm、平均二次粒子径は55nmであった。さらに、実施例1と同様にして水和水量nを求めたところ、4.16であった。
(実施例3)
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子の作製工程において、熟成工程を行わず、水熱処理の温度を100℃から85℃に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子の作製工程において、熟成工程を行わず、水熱処理の温度を100℃から85℃に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に、非常にブロードな正方晶の酸化ジルコニウムに対応するスペクトルが観測された。また、透過型電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、一次粒子径が約1〜3nm、二次粒子径が20〜100nmの粒子であることが分かり、実施例1と同様にして求めた酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径は2.2nmであり、平均二次粒子径は87nmであった。さらに、実施例1と同様にして水和水量nを求めたところ、2.85であった。
(実施例4)
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子の沈殿工程において、アンモニア水溶液にジルコニウム塩水溶液を滴下しつつ攪拌し、酸化ジルコニウム水和物粒子を含む沈殿物を生成させる際の上記各水溶液の温度を5℃とした以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子の沈殿工程において、アンモニア水溶液にジルコニウム塩水溶液を滴下しつつ攪拌し、酸化ジルコニウム水和物粒子を含む沈殿物を生成させる際の上記各水溶液の温度を5℃とした以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に、非常にブロードな正方晶の酸化ジルコニウムに対応するスペクトルが観測された。また、透過型電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、一次粒子径が約1nm、二次粒子径が10〜50nmの粒子であることが分かり、実施例1と同様にして求めた酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径は1.6nmであり、平均二次粒子径は42nmであった。さらに、実施例1と同様にして水和水量nを求めたところ、7.43であった。
(比較例1)
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子のマイクロ波水熱処理工程において、マイクロ波による加熱ではなく、恒温槽での加熱に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。本比較例では、マイクロ波による加熱の場合と異なり、100℃までの昇温には約1時間ほどの時間を要した。
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子のマイクロ波水熱処理工程において、マイクロ波による加熱ではなく、恒温槽での加熱に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。本比較例では、マイクロ波による加熱の場合と異なり、100℃までの昇温には約1時間ほどの時間を要した。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に、非常にブロードな正方晶の酸化ジルコニウムに対応するスペクトルが観測された。また、透過型電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、一次粒子径が約2〜3nm、二次粒子径が50〜250nmの粒子であることが分かり、実施例1と同様にして求めた酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径は2.6nmであり、平均二次粒子径は214nmであった。この際、二次粒子径を求めるのに用いた、倍率20万倍で撮影したTEM写真を図4に示す。さらに、実施例1と同様にして水和水量nを求めたところ、4.85であった。
(比較例2)
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子のマイクロ波水熱処理工程において、水熱処理の温度を100℃から120℃に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子のマイクロ波水熱処理工程において、水熱処理の温度を100℃から120℃に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、ブロードではあるが、やや幅の狭いピークを持つ正方晶の酸化ジルコニウムに対応するスペクトルが観測された。また、透過型電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、一次粒子径が約4〜6nm、二次粒子径が10〜60nmの粒子であることが分かり、実施例1と同様にして求めた酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径は4.8nm、平均二次粒子径は46nmであった。さらに、実施例1と同様にして水和水量nを求めたところ、2.46であった。
(比較例3)
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子の作製工程において、マイクロ波水熱処理工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子の作製工程において、マイクロ波水熱処理工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に、非常にブロードな正方晶の酸化ジルコニウムに対応するスペクトルが観測された。また、透過型電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、約500nm(0.5μm)〜1μmの様々な粒子径を有する粒子径分布の広い不定形の粒子であることが分かった。このため、本比較例では、各平均粒子径は求めなかった。さらに、実施例1と同様にして水和水量nを求めたところ、2.42であった。
(比較例4)
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子の乾燥工程において、乾燥温度を60℃から120℃に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
実施例1の酸化ジルコニウム水和物粒子の乾燥工程において、乾燥温度を60℃から120℃に変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、比較的明瞭な正方晶の酸化ジルコニウムに対応するスペクトルが観測された。また、透過型電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、一次粒子径が約3nm、二次粒子径が50〜200nmの粒子であることが分かり、実施例1と同様にして求めた酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径は2.8nmであり、平均二次粒子径は125nmであった。
さらに、得られた酸化ジルコニウム水和物粒子を再度水中に分散させた後、濾過を行い、その後、前述の水和水量の測定基準に沿って60℃で6時間、空気中で乾燥を行い、実施例1と同様にして水和水量nを求めたところ、1.96であった。
以上の測定結果を、水熱温度及び乾燥条件と共に表1にまとめて示す。但し、比較例3の平均粒子径の欄には、粒子径の上限値と下限値を示した。
表1から明らかなように、実施例1〜4で得られた酸化ジルコニウム水和物粒子は、これまで作製が困難とされてきた5nm以下の酸化ジルコニウム水和物の超微粒子であり、且つ高い水和水量を示し、さらに二次粒子径が100nm以下となっていることが分かる。このため、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、高いプロトン伝導性及び溶媒に対する微細分散を必要とする各種材料として非常に有効に用いることができる。
一方、比較例1では、一次粒子径や水和水量においては、実施例1〜4とほぼ遜色ない酸化ジルコニウム粒子が得られるものの、二次粒子径が非常に大きいことが分かる。これは、マイクロ波による加熱と比較して恒温槽での加熱では、容器内の酸化ジルコニウム前駆体に対してかかる熱が均一になるまでに長い時間を要し、そのために加熱温度の不均一化が起こり、その間に粒子同士が凝集してしまうためと考えられる。比較例2では、水熱温度が120℃とやや高いために、微粒子が得られ二次粒子径も小さいものの、結晶性がわずかながら向上し、水和水量nが2.5を下回る結果となっている。比較例3の製法は、従来用いられている最も一般的な酸化ジルコニウム水和物粒子の製法であり、比較的大きな水和水量を実現できる製法であるが、粒子の凝着による粗大化が進み、サブミクロンサイズの酸化ジルコニウム水和物粒子となっているために吸着水量が減少し、その水和水量は2.4程度に留まったと考えられる。比較例4では、120℃で乾燥した後に再度吸着水を補給する処理を行っても水和水量が減少しており、また二次粒子径も大きくなっている。これは、一旦120℃で乾燥して加熱したことにより、粒子同士の凝集が起こり、結晶構造が僅かながら変化し、結晶水の量が減少したためと考えられる。
以上のように本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、凝集粒子径が小さいために分散性能に優れるため、固体酸触媒、電気化学キャパシタや燃料電池等に用いる電解質材料、あるいは電気化学的水素ポンプ、水素センサや酸素センサ等の各種ガスセンサ等の多彩な用途への応用が可能である。
Claims (8)
- 一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子であって、
前記粒子の平均一次粒子径は、0.5nm以上5nm以下であり、
前記粒子の平均二次粒子径は、100nm以下であり、
前記一般式中のnは2.5以上10以下の数であり、
前記nは、前記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする酸化ジルコニウム水和物粒子。 - 前記一般式中のnは、4以上である請求項1に記載の酸化ジルコニウム水和物粒子。
- 前記粒子の平均一次粒子径は、1nm以上3.5nm以下である請求項1又は2に記載の酸化ジルコニウム水和物粒子。
- 前記平均二次粒子径は、1nm以上80nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化ジルコニウム水和物粒子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法であって、
アルカリ水溶液とジルコニウム塩の水溶液とを混合し、pHを7.0以上13.0以下に調整して酸化ジルコニウム水和物粒子を作製する工程と、
前記酸化ジルコニウム水和物粒子を密閉容器中において、水の存在下で80℃以上110℃未満の温度で1時間以上5時間未満の時間、マイクロ波水熱処理する工程とを含むことを特徴とする酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法。 - 前記酸化ジルコニウム水和物粒子を作製する工程において、前記アルカリ水溶液の温度及び前記ジルコニウム塩の水溶液の温度を、それぞれ0℃以上10℃以下に調整して、前記アルカリ水溶液と前記ジルコニウム塩の水溶液とを混合する請求項5に記載の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法。
- 前記マイクロ波水熱処理を行う工程の前に、前記酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した水溶液を、pHが7.0以上13.0以下で、20℃以上40℃以下の温度で、5時間以上40時間以下の時間熟成する工程をさらに含む請求項5又は6に記載の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法。
- 前記マイクロ波水熱処理した酸化ジルコニウム水和物粒子を、空気中で20℃以上80℃以下の温度で、3時間以上12時間以下の時間乾燥する工程をさらに含む請求項5〜7のいずれかに記載の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法。
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