以下、本発明を具現化したマイクロコンタクトプリント装置100、及びマイクロコンタクトプリント装置100を使用したマイクロコンタクトプリント方法について、図面を参照して説明する。なお以下の図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
本発明のマイクロコンタクトプリント装置100は、マイクロコンタクトプリント法を実現するための装置である。本装置では、スタンプ2(及びスタンプホルダー1)(図2参照)を試料基板3(図1参照)上に載置させ、スタンプ2(及びスタンプホルダー1)の自重によってスタンプ2を試料基板3に押圧させることにより、スタンプ2表面の微細な凹凸部に付着する被覆膜材料を試料基板3に転写させる。
はじめに、図1及び図2を参照して、マイクロコンタクトプリント装置100について説明する。図1は、マイクロコンタクトプリント装置100の物理的構成を示す側面図であり、図2は、スタンパー31及び基板台5の図1中A−A線における矢視方向断面図である。なお、図1における左側をマイクロコンタクトプリント装置100の前方、図1における右側をマイクロコンタクトプリント装置100の後方、図1における紙面手前側をマイクロコンタクトプリント装置100の右方、図1における紙面手奥行き側をマイクロコンタクトプリント装置100の左方とする。
はじめに、図1を参照して、マイクロコンタクトプリント装置100の物理的構成について説明する。図1に示すように、マイクロコンタクトプリント装置100は、水平方向に配置されたベッド部40と、当該ベッド部40の後方端部より垂直方向に立設された脚柱部41とから構成される、側面視逆L字形状のベース34を備えている。
そして、ベース34におけるベッド部40の上側には、マイクロコンタクトプリント装置100により被覆膜材料を転写させる試料基板3を配置するための基板台5が配置されている。基板台5は、その上面に水平面部を備えた側面視略T字形状を有している。また、当該水平面部の上側には基板サポートステージ4が配置されており、被覆膜材料の転写処理が実施される場合には、当該基板サポートステージ4の上側に試料基板3が配置される。また、基板台5の右側面には吸入ホース20の一端側が接続され、当該吸入ホース20の他端側がベース34の脚柱部41の前側面に接続されている。
基板台5は、上方からスタンプ2(図2参照)が試料基板3に対して押圧される場合において、試料基板3を下方から支持するために設けられている。また、基板サポートステージ4は、上側に配置される試料基板3を基板台5に密着させるために設けられている。基板サポートステージ4を構成する材料としては、試料基板3との親和性が良好で試料基板3を密着させ易く、且つ、柔軟性を備えた材料が使用される。このことによって、試料基板3自体が反りや凹凸を有する場合であっても、基板台5に密着させることが可能となる。さらに、試料基板3自体が反りを有していることにより生じるスタンプ2押圧時の圧力集中を、試料基板3全体に均一に分散させることができ、良好に被覆膜材料を試料基板3に転写させることが可能となる。基板サポートステージ4の材料としては、例えば、ゴム、スポンジ、PDMS(Polydimethysiloxane)が挙げられる。
吸入ホース20は、試料基板3と基板サポートステージ4との隙間からエアを吸入するためのホースであり、試料基板3と基板サポートステージ4との隙間の圧力を減圧させることによって、試料基板3を基板サポートステージ4に吸着させている(詳細は後述する。)。吸入ホース20は、ベース34の脚柱部41の内部を経由してバキュームポンプ61(後述)に接続されている。
また、ベース34の脚柱部41の前側面にはスライダ33が配置され、スライダ33より前方水平方向にスタンパーアーム32が延設され、さらにスタンパーアーム32の前端部には直方体形状のスタンパー31が接続されている。スタンパー31の平面視形状は基板台5の平面視形状よりも大きくなるように設定されている。また、スタンパー31は、スタンパーアーム32に支持された状態で基板台5の上方に配置されている。また、スタンパー31の上側には、エア等の気体を注入する気体注入ホース11が接続されており、気体注入ホース11におけるスタンパー31と接続する側と反対側の端部は、ベース34の脚柱部41の前側に接続された状態となっている。
スライダ33は、延設されたスタンパーアーム32及びスタンパー31を三次元方向に駆動可能な駆動機構を備えている。駆動機構は、コントロールボックス36(後述)に内蔵されている制御基板50(図3参照)に設けられたCPU51(図3参照)からの指示に基づいて、スタンパーアーム32及びスタンパー31を移動させる。
スタンパー31の内部には、試料基板3に被覆膜材料を転写するためのスタンプ2(図2参照)が配置されている(詳細は後述する。)。
気体注入ホース11は、加圧孔9(図2参照)を介してスタンパー31内部の空間部分(以下、「加圧室15」という。(図2参照))に向けて気体を放出することにより、スタンプ2(図2参照)が試料基板3に押圧される場合の圧力を補填するために設けられている。気体注入ホース11は、ベース34の脚柱部41の内部を経由してコンプレッサ62に接続されている。
また、ベース34の脚柱部41の右方側面には、表示装置63と入力装置56とが夫々設けられている。表示装置63には、マイクロコンタクトプリント装置100の駆動状態が表示されるとともに、CCDカメラ13(図2参照)にて観察された画像が表示される。表示される画像は、オペレータによるスタンパー31の位置合わせの際に使用される。また、入力装置56は、レバーやボタン、スイッチ等から構成されている。そして、オペレータが入力装置56を操作することにより、マイクロコンタクトプリント装置100の電源制御、各種設定、及び各種駆動制御を行うことが可能となっている。
また、ベース34の脚柱部41の後側面には、バキュームポンプ61を内部に備えたバキュームポンプ格納筺体37、制御基板50(図3参照)を内部に備えたコントロールボックス36、及び、コンプレッサ62を内部に備えたコンプレッサ格納筺体35が、夫々配置されている。
これらのうち、バキュームポンプ格納筺体37の内部に配置されているバキュームポンプ61は、吸入ホース20と接続されており、吸入ホース20を介して気体を吸入する。このことにより、試料基板3と基板サポートステージ4との隙間を減圧し、試料基板3を基板サポートステージ4に吸着させることが可能となっている。また、コンプレッサ格納筺体35の内部に配置されているコンプレッサ62は、気体注入ホース11と接続されており、気体注入ホース11を介して気体を放出する。このことにより、スタンプホルダー1(図2参照)に向けて気体を放出してスタンプ2を試料基板3に押圧させることが可能となっている。また、コントロールボックス36には、マイクロコンタクトプリント装置100の制御処理を司る制御基板50(図3参照)が内蔵されている。そして制御基板50が備えるCPU51(図3参照)により、スライダ33、バキュームポンプ61、及びコンプレッサ62の制御、入力装置56を介した入力操作の監視、CCDカメラ13(図2参照)の観察画像の表示装置63への表示、圧力センサスイッチ6(図2参照)の圧力検出等の処理を実行している(図3参照、後述)。
次に、図2を参照して、基板台5及びスタンパー31の物理的構成について説明する。はじめに、基板台5について説明する。基板台5は、その上面に水平部分を備えた正面視略T字形状を有しており、水平部分の上側には、柔軟性を有する基板サポートステージ4が配置されている。また、基板台5には吸入通路19が内設されている。吸入通路19はその中間部分において3方向に分岐した形状を有しており、一端部は基板台5の右側面において吸入ホース20に接続され、その他の端部は、基板サポートステージ4を貫通して孔部(「基板吸着孔17」という。)が表出された状態となっている。従って、この状態でバキュームポンプ61(図1参照)を駆動させて基板吸着孔17から気体を吸入し、基板サポートステージ4と試料基板3との隙間の圧力を減圧させることによって、試料基板3を基板台5に吸着させることが可能となっている。
次いで、スタンパー31について説明する。スタンパー31は、被覆膜材料が凹凸部に付着されたスタンプ2を備えている。そして、上方からスタンプ2を試料基板3に押圧して被覆膜材料を転写させるために、基板台5の上方に配置される。スタンパー31は、スタンプ2を下面に接着させた状態の透明のスタンプホルダー1と、スタンプホルダー1を下方から接離可能に支持するスタンパー枠7と、スタンプホルダー1とスタンパー枠7との接触部分に設けられた圧力センサスイッチ6と、加圧室15の圧力を制御するための開閉式圧力調整弁8と、気体注入ホース11からの気体を加圧室15に放出するための加圧孔9と、スタンプホルダー1を透してスタンプ2及び下方の試料基板3を観察するためのCCDカメラ13とを備えている。
スタンパー31は、平面視正方形状を有している。そして図2に示すように、水平部7aと、水平部の周縁部より下方鉛直方向に延設された鉛直部7bと、鉛直部7bの下端部よりスタンパー31の内方に延設された支持部7cとから構成されるスタンパー枠7を備えている。スタンパー枠7は、下面に開口部を備えた略直方体形状となっており、鉛直部7bの後側においてスタンパーアーム32(図1参照)と接続されている。そして、支持部7cにおいて、スタンプホルダー1を下方から接離可能に支持している。
スタンプホルダー1は、鉛直部7bの内接面の平面視形状と同じ平面視形状を有している。そして、外力が加わっていない状態では、支持部7cに下方から接離可能に支持されている。また、スタンプホルダー1に対して上方に押力が加えられた場合に、支持部7cと離隔して鉛直部7bの内接面に沿い上下方に移動する。なお、スタンパー枠7とスタンプホルダー1とに囲まれることにより、加圧室15は気密な状態となっている。さらに、スタンプホルダー1の下面には、被覆膜材料が付着される凹凸面を下方に向けた状態でスタンプ2が接着されている。
スタンプ2及びスタンプホルダー1の重量は、スタンプ2及びスタンプホルダー1を試料基板3上に載置させ、これらの自重によりスタンプ2を試料基板3に押圧させる場合に最適な圧力が加わるように、あらかじめ調整されている。また、水平部7aに配置されたCCDカメラ13(後述)により、スタンプホルダー1を透してスタンプ2及び試料基板3を観察可能とするために、スタンプホルダー1は透明な材料にて形成されている。また、スタンプ2が試料基板3に押圧される場合において、スタンプ2の凹凸の形成状態が不均一であると、スタンプ2に均一に圧力が印加されず良好に被覆膜材料が転写されない可能性がある。このことを防止するために、スタンプホルダー1は、柔軟性のある材料にて形成されていてもよい。スタンプホルダー1を構成する材料としては、透過率の高い公知の材料が使用される。例えば、ガラス、プラスチックが挙げられる。また、柔軟性のある材料が使用されても構わない。例えばPDMSが挙げられる。
支持部7cの上面に設けられている圧力センサスイッチ6は、スタンプホルダー1と支持部7cとの接離状態を検出するために設けられている。そして、スタンプホルダー1が支持部7cと接触し、支持部7cがスタンプホルダー1を支持しているか、又は、スタンプホルダー1が支持部7cと接触しておらず、支持部7cがスタンプホルダー1を支持していないかを検出する。
また、鉛直部7bには、開閉式圧力調整弁8が設けられている。開閉式圧力調整弁8は、加圧室15の圧力を調整するために設けられている。そして、加圧室15の圧力が所定値以上になった場合に、弁を開放して圧力を下げる。このように、開閉式圧力調整弁8にて加圧室15の圧力が所定値以下なるように調整することによって、スタンプホルダー1に過度な力が働いてしまうことを防止している。
また、水平部7aには、CCDカメラ13と加圧孔9とが設けられている。そして、水平部7aの平面視正方形状の中心側に下方を観察可能な状態でCCDカメラ13が複数設けられており、CCDカメラ13の外側に下方に気体を放出可能な状態で加圧孔9が複数設けられている。
CCDカメラ13は、被覆膜材料の転写処理(図4、図5参照)が実施される前に、スタンプ2と試料基板3との位置関係を確認するために設けられている。スタンプ2はスタンプホルダー1の下面の任意の部分に接着させることが可能であり、試料基板3は基板サポートステージ4上面の任意の部分に吸着させることが可能となっている。従って、双方が固定される位置によっては、スタンパー31を下方に移動させた場合に、スタンプ2と試料基板3とが所望の位置関係で接触しない状況が発生しうる。そこでこのような状況を防止するために、被覆膜材料の転写処理の前にあらかじめCCDカメラ13にてスタンプホルダー1を透してスタンプ2と試料基板3とを観察し、観察画像を表示装置63(図1参照)に表示させる。オペレータは、表示装置63に表示されている観察画像を確認し、スタンプ2と試料基板3とが所望の位置関係に配置されていない場合には、入力装置56(図1参照)を操作してスライダ33(図1参照)を駆動させ、スタンパー31を前後左右方向に移動させる。そして、スタンプ2と試料基板3とが所望の位置関係に配置されるように、スタンパー31の位置を調整する。このことによって、確実に試料基板3にスタンプ2が所望の位置関係で接触して押圧され、スタンプ2に付着する被覆膜材料が試料基板3に転写される。
加圧孔9は、スタンパー31の上側に接続されている気体注入ホース11を介してコンプレッサ62(図1参照)より放出される気体をスタンプホルダー1(図2参照)に向けて放出するために、孔を加圧室15に向けた状態で配置されている。このことによって、スタンプ2を試料基板3に押圧させる力を補填し、スタンプ2に付着されている被覆膜材料を良好に試料基板3に転写させる。
以上説明したように、マイクロコンタクトプリント装置100は、外力が加わっていない状態では、スタンプ2とスタンプホルダー1とがスタンパー枠7により下方から接離可能に支持された状態となっている。そして、被覆膜材料の転写処理時においては、スライダ33が制御され、スタンパー31が下方に移動することによって、試料基板3にスタンプ2とスタンプホルダー1とが載置され、スタンプ2及びスタンプホルダー1に対してスタンパー枠7がさらに下方に移動することにより、そのスタンパー枠7がスタンプホルダー1から離隔する。この状態で、スタンプ2とスタンプホルダー1との自重によりスタンプ2が試料基板3に押圧される。このことによって、スタンプ2と試料基板3とを平行に配置した状態で、被覆膜材料を試料基板3に転写させることが可能となる。また、スタンプ2が試料基板3に押圧されている状態で、加圧孔9よりスタンプホルダー1に向けて気体を放出し、スタンプ2を試料基板3に押し付ける。このことによって、スタンプ2及びスタンプホルダー1の自重では押圧する力が不足するような場合であっても、押圧する力を補填することが可能となり、良好に被覆膜材料を試料基板3に転写させることが可能となる。
さらに、基板サポートステージ4は、柔軟性のある材料にて形成されている。このことによって、試料基板3にスタンプ2が押圧される場合において、局所的に圧力が印加されてしまう場合に、基板サポートステージ4が撓むことにより圧力集中を分散させることが可能となる。このことによって、スタンプ2を均一に試料基板3に押圧させることが可能となり、良好に被覆膜材料を試料基板3に転写させることが可能となる。
次いで、コントロールボックス36(図1参照)内に備えられている制御基板50の電気的構成について、図3を参照して説明する。図3は、制御基板50の電気的構成を示すブロック図である。
制御基板50には、図3に示すように、マイクロコンタクトプリント装置100(図1参照)の制御処理を司るCPU51が設けられている。また、CPU51が制御処理を実行するために必要なプログラムやパラメータを記憶する不揮発性記憶素子であるROM52と、CPU51がプログラムに基づいて処理を実行する場合に発生する一時的なデータを記憶する揮発性記憶素子であるRAM53とが夫々設けられている。そして、CPU51がROM52及びRAM53のデータを読み出し、また必要に応じてRAM53にデータを記憶させることが可能なように、双方はバスを介して電気的に接続した状態となっている。また、CPU51にて実行される時間監視処理を可能とするためのタイマ58が設けられている。そして、CPU51に対して所定の周期信号を出力することが可能なように、タイマ58はCPU51と電気的に接続された状態となっている。
また、制御基板50には、バキュームポンプ61を駆動させるための駆動回路71と、コンプレッサ62を駆動させるための駆動回路72と、表示装置63を駆動させるための駆動回路73と、スライダ33を駆動させるための駆動回路74とが設けられており、CPU51による制御が可能なように、夫々の駆動回路とCPU51とが電気的に接続した状態となっている。駆動回路71は、バキュームポンプ61の気体吸入駆動の制御を実行することが可能な回路であり、バキュームポンプ61と電気的に接続されている。また、駆動回路72は、コンプレッサ62の気体放出駆動の制御を実行することが可能な回路であり、コンプレッサ62と電気的に接続されている。また、駆動回路73は、表示装置63にマイクロコンタクトプリント装置100の駆動状態を通知するための情報や、CCDカメラ13にて観察された画像等を表示させることが可能な回路であり、表示装置63と電気的に接続されている。また、駆動回路74は、スライダ33を制御してスタンパーアーム32及びスタンパー31を三次元方向に駆動させることが可能な回路であり、スライダ33と電気的に接続されている。
また、制御基板50に設けられているCPU51には、支持部7c(図2参照)に設けられている圧力センサスイッチ6が接続されており、圧力センサスイッチ6とスタンプホルダー1との接触の有無を検知可能な状態となっている。そして、CPU51は、圧力センサスイッチ6とスタンプホルダー1とが接触している場合に、支持部7cがスタンプホルダー1を支持した状態であると判断し、圧力センサスイッチ6とスタンプホルダー1とが接触していない場合に、支持部7cとスタンプホルダー1とが離隔し、スタンプ2(及びスタンプホルダー1)が試料基板3に載置した状態であると判断している。
また、制御基板50に設けられているCPU51には、水平部7a(図2参照)に設けられているCCDカメラ13が接続されており、CCDカメラ13により観察された画像のデータを受信することが可能な状態となっている。なお、受信した画像のデータは駆動回路73を介して表示装置63に表示させている。また、ベース34の脚柱部41(図1参照)の右方側面に設けられている入力装置56が接続されており、入力装置56を介した入力操作の監視をすることが可能な状態となっている。
次いで、マイクロコンタクトプリント装置100(図1参照)が備えるCPU51により実行される被覆膜材料の転写処理について、図4及び図5のフローチャートを参照して説明する。図4及び図5は、マイクロコンタクトプリント装置100のCPU51により実行される被覆膜材料の転写処理のフローチャートを示している。なお、図4及び図5に示す処理を実行させるプログラムはROM52に記憶されており、CPU51はこのプログラムを読み込んで処理を実行する。また、図4及び図5に示す処理は、オペレータにより入力装置56を介して入力が行われ、マイクロコンタクトプリント装置100による被腹膜材料の転写処理の実行指示がなされた場合に起動される。
図4に示すように、転写処理が起動されると、はじめに、CPU51は、オペレータによるスタンパー31の位置調整が可能なように、CCDカメラ13による観察処理を開始する。そして得られる観察画像データを表示装置63に表示させる(S10)。
次いで、スタンプ2が配置されていない場合には、オペレータによりスタンプ2がスタンプホルダー1に接着され固定される。また、スタンプ2の凹凸面には被覆膜の材料が付着された状態となっている。ここで、試料基板3が基板台5上に配置されていない場合には、オペレータにより試料基板3が配置される。そして、試料基板3が基板サポートステージ4に配置された旨の入力操作が入力装置56(図1参照)を介してなされた場合には、CPU51は、駆動回路71を制御してバキュームポンプ61を駆動させ、試料基板3と基板サポートステージ4との隙間を減圧して試料基板3を吸着させる(S11)。
次いで、表示装置63に表示されるCCDカメラ13の観察画像として、スタンプ2と試料基板3とが映し出され、オペレータによりスタンプ2と試料基板3との位置関係が確認される。ここで、スタンプ2と試料基板3とが所望の位置関係に配置されていない状態となっている場合には、オペレータにより入力装置56を介しスタンパー31を移動させるための入力操作が実施される。
そこでCPU51は、入力装置56よりスタンパー31を移動させるための入力操作が実行されたことを検出した場合には(S12:YES)、入力操作に応じ、駆動回路74を制御してスライダ33を駆動させ、スタンパー31を前後左右方向に移動させる(S14)。このことによって、スタンプ2の真下に試料基板3が配置される。そしてS13の処理に移行する。一方、スタンプ2と試料基板3とが所望の位置関係に配置されている場合には、入力装置56よりスタンパー31を移動させるための入力操作は行われないため(S12:NO)、そのままS13の処理に移行する。
S13においては、CPU51は、オペレータにより転写処理の開始指示がなされたかどうかを判断する(S13)。何ら入力操作が実行されず、転写処理の開始指示がなされない場合には(S13:NO)、S12に戻り、継続して入力装置56よりスタンパー31を移動させるための入力操作を監視する(S12)。一方、オペレータにより入力装置56が操作され、転写処理の開始指示が選択された場合(S13:YES)、スタンプ2の直下に試料基板3が位置する状態となっていると判断して、転写処理を開始する。
オペレータにより転写処理の開始指示が選択されると、CPU51は、駆動回路74を制御してスライダ33を駆動させ、スタンパー31を下方に移動させる(以下、スタンパー31を下方に移動させる工程を「第一移動工程」という。)。このことによって、支持部7cに接離可能に支持されているスタンプホルダー1に接着されているスタンプ2と試料基板3とが徐々に接近し、そして双方は接触する。
第一移動工程においてスタンパー31が下方に移動され、スタンプ2と試料基板3とが接触した状態で、CPU51は、さらに駆動回路74を制御してスライダ33を駆動させ、スタンパー31をさらに下方に移動させる(S15)。スタンプ2が接着したスタンプホルダー1は、支持部7cに接離可能に下方から支持された状態であるため、スタンパー31がさらに下方に移動することにより、スタンプホルダー1及びスタンプ2は試料基板3の上面に載置され、スタンプホルダー1は支持部7cから離隔した状態となる。そしてこの状態で、スタンプホルダー1及びスタンプ2の自重によりスタンプ2が試料基板3に押圧される。このことにより、スタンプ2に付着している被覆膜材料が試料基板3に転写される。
CPU51は、第一移動工程の過程で、支持部7cに配置されている圧力センサスイッチ6の状態を常時監視している(S17:NO)。そして、スタンプホルダー1及びスタンプ2が試料基板3の上面に載置した状態となることにより、支持部7cからスタンプホルダー1が離隔する。CPU51は圧力センサスイッチ6を介して離隔状態を検出し(S17:YES)、スタンプホルダー1及びスタンプ2が試料基板3に載置されたと判断する(以下、スタンプホルダー1及びスタンプ2を試料基板3上に載置させる工程を「載置工程」という。)。
載置工程においてスタンプホルダー1及びスタンプ2が試料基板3に載置された場合、次いでCPU51は、駆動回路72を制御してコンプレッサ62を駆動させ、気体注入ホース11を介して加圧孔9より加圧室15内に気体を放出させる(S19)。気体が放出されることにより、スタンプホルダー1が下方に押し下げられる。このことによって、さらにスタンプ2が試料基板3に押圧され、スタンプ2に付着した被覆膜材料が試料基板3に転写される(以下、気体を放出してスタンプ2を試料基板3に押圧させる工程を「圧力転写工程」という。)。
CPU51は、圧力転写工程において加圧孔9より気体を放出し、スタンプ2を試料基板3に押圧させた後、駆動回路74を制御してスライダ33の下方移動を停止させる(S21)。次いでCPU51は、図5に示すように、S19において気体を放出したタイミングからの経過時間を監視する(S23)。そして、所定の時間が経過するまで継続して駆動回路72を制御してコンプレッサ62を駆動させる。このことにより、継続して気体注入ホース11を介して加圧孔9よりスタンプホルダー1に向けて気体が放出される(S23:NO)。
そして、S19において気体を放出したタイミングからの経過時間が所定時間となった場合(S23:YES)、CPU51は、駆動回路72を制御してコンプレッサ62の駆動を停止させ、加圧孔9からの気体の放出を停止させる(S25)。なおこの状態では、スタンプホルダー1及びスタンプ2の自重と、加圧室15内の圧力により、スタンプ2が継続して試料基板3に押圧されている状態となっており、スタンプ2に付着した被覆膜材料が試料基板3に転写されている。次いで、CPU51は、コンプレッサ62の駆動を停止させて気体の放出を停止させたタイミングからの経過時間の監視を開始する(S27)。
CPU51は、気体の放出を停止させたタイミングからの経過時間が所定時間未満である状態では(S27:NO)、継続してスタンプホルダー1及びスタンプ2を試料基板3に載置させた状態を保持し、スタンプ2に付着した被覆膜材料を試料基板3に転写させる。そして、気体の放出を停止させたタイミングからの経過時間が所定時間となった場合に(S27:YES)、駆動回路74を制御してスライダ33を駆動させ、スタンパー31を上方に移動させる(S29)(以下、「第二移動工程」という。)。第二移動工程により、支持部7cがスタンプホルダー1を下方から支持した状態となり、スタンプ2が試料基板3から離隔する。そして処理を終了する。
次いで、上述した第一移動工程〜載置工程〜圧力転写工程〜第二移動工程におけるスタンパー31及び基板台5の状態について、図6〜図9を参照して説明する。図6は、第一移動工程におけるスタンパー31及び基板台5の状態を示しており、図7は、第一移動工程の結果スタンプ2と試料基板3とが接触した状態を示しており、図8は、載置工程及び圧力転写工程におけるスタンパー31及び基板台5の状態を示しており、図9は、第二移動工程におけるスタンパー31及び基板台5の状態を示している。なお以下においては、図4及び図5にて示した被覆膜の転写処理のフローチャートの各処理に対応付けて各工程におけるスタンパー31及び基板台5の状態を説明する。
はじめに、図6を参照して、第一移動工程におけるスタンパー31及び基板台5の状態について説明する。図6に示すように、第一移動工程が開始する前に、試料基板3が基板サポートステージ4に配置され、試料基板3と基板サポートステージ4との隙間が減圧されることによって、試料基板3が吸着され固定される(S11)。そして、オペレータが表示装置63を介してCCDカメラ13の観察画像を確認し、必要に応じて入力装置56が操作され、スタンパー31の位置が調整される(S12:YES→S14)。その結果、スタンプ2と試料基板3とが所望の位置関係に配置された状態となる。
そしてこの状態でオペレータによりスタンパー31を下方に移動させる指示がなされると(S13:YES)、スタンパー31は下方に移動し、スタンプ2と試料基板3とが接近、接触する。なおこの状態では、未だスタンプホルダー1は支持部7cに支持されている。
次に、図7を参照して、第一移動工程の結果スタンプ2と試料基板3とが接触した状態について説明する。図7に示すように、第一移動工程においてスタンパー31が下方に移動した結果、スタンプ2と試料基板3とが接触する。なお、この状態では、支持部7cとスタンプホルダー1とは離隔しておらず、圧力センサスイッチ6は離隔状態を検出していない(S17:NO)。
次に、図8を参照して、載置工程及び圧力転写工程におけるスタンパー31及び基板台5の状態について説明する。図8に示すように、スタンプ2と試料基板3とが接触した後も、継続してスタンパー31は下方に移動する。このことによって、スタンプ2及びスタンプホルダー1が試料基板3上に載置される。そして、支持部7cとスタンプホルダー1とが離隔し、圧力センサスイッチ6が離隔状態を検出する(S17:YES)。この状態で、スタンプ2及びスタンプホルダー1の自重により、スタンプ2が試料基板に押圧される。そして、スタンプ2に付着した被覆膜材料が試料基板3に転写される。
次いで、圧力センサスイッチ6が支持部7cとスタンプホルダー1とが離隔した状態を検出すると、加圧孔9より気体が放出され(S19)、スタンプホルダー1が下方に押圧される。このことによって、スタンプ2の試料基板3への押圧が補填され、スタンプ2に付着する被覆膜材料が試料基板3に転写される。なお、第一移動工程より継続して下方移動していたスタンパー31は、圧力センサスイッチ6が支持部7cとスタンプホルダー1とが隔離したことを検知した時点で移動が停止する(S21)。また、加圧孔9からの気体の放出は、所定時間が経過した後停止する(S23:YES→S25)。そしてこの状態で所定時間保持され(S27:NO)、スタンプ2及びスタンプホルダー1の自重と、加圧室15の圧力により、スタンプ2が試料基板3に継続して押し付けられる。
次に、図9を参照して、第二移動工程におけるスタンパー31及び基板台5の状態について説明する。図9に示すように、スタンプ2が試料基板3に押圧された状態で所定時間が経過した場合(S27:YES)、スライダ33が駆動してスタンパー31が上方に移動する(S29)。すると、支持部7cがスタンプホルダー1を支持する状態となって、スタンプ2と試料基板3とは離隔する。このことによって、一連の被覆膜の転写処理は終了する。
以上説明したように、マイクロコンタクトプリント装置100では、スタンプ2が接着した状態のスタンプホルダー1は、下方から接離可能に支持部7cに支持されている。また試料基板3は、基板台5の上面の基板サポートステージ4に吸着された状態で配置されている。基板サポートステージ4は柔軟性のある材料にて形成されているため、基板吸着孔17から気体が吸入されて試料基板3が基板サポートステージ4に吸着された場合に、試料基板3自体の反りや凹凸に倣って基板サポートステージ4が変形する。このことによって、良好に試料基板3を吸着させることが可能となる。
そして、スタンパー31を下方に移動させて、スタンプ2を試料基板3に接触させる(第一移動工程)。そしてさらに継続してスタンパー31を下方に移動させることによって、支持部7cからスタンプホルダー1が離隔し、スタンプ2が試料基板3に載置した状態となる(載置工程)。この状態で、スタンプ2及びスタンプホルダー1の自重により、スタンプ2が試料基板3に押圧され、スタンプ2の凹凸に付着した被覆膜材料が試料基板3に転写される。スタンプ2及びスタンプホルダー1は、支持部7cから離隔した状態であるので、試料基板3への局所的な圧力に応じて水平方向の角度を変化させる。このことにより、複雑な制御を行うことなくスタンプ2と試料基板3とが高度に並行に保持され、スタンプ2に付着した被覆膜材料を均一に試料基板3に転写させることが可能となる。
また、載置工程においてスタンプ2が試料基板3に載置された状態で、加圧孔9よりスタンプホルダー1に向けて気体が放出される。このことにより、スタンプ2がさらに下方に押圧され、スタンプ2が試料基板3に押圧される力を補填する。このことにより、スタンプ2及びスタンプホルダー1の自重ではスタンプ2を試料基板3に押圧する力が不足する場合に、加圧孔9からの気体放出によって押圧の力を補填することが可能となる。
そして所定時間が経過した後、スタンパー31が上方に移動し、支持部7cがスタンプ2及びスタンプホルダー1を支持する状態となり、試料基板3からスタンプ2が離隔する。このことによって、被覆膜の転写処理が終了する。
尚、上記実施の形態における第一移動工程、載置工程、圧力転写工程、及び第二移動工程を経て実行される被覆膜材料の転写処理にて、被覆膜材料を試料基板に転写する方法が、本発明の「マイクロコンタクトプリント方法」に相当する。また、支持部7cを備えたスタンパー枠7が、本発明の「支持体」に相当し、図4におけるS15にて、スタンパー31を下方に移動させるために、駆動回路74を制御してスライダ33を駆動させる制御を行うCPU51が、本発明の「第一移動手段」に相当し、S17において、スタンパー31からスタンプホルダー1が離隔したことを、圧力センサスイッチ6を介して検出する処理を行うCPU51が、本発明の「離隔状態検出手段」に相当し、図5におけるS29にて、スタンパー31を上方に移動させるために、駆動回路74を制御してスライダ33を駆動させる制御を行うCPU51が、本発明の「第二移動手段」に相当し、図4におけるS19にて、加圧孔9より気体を放出させるために、駆動回路72を制御してコンプレッサ62を駆動させる制御を行うCPU51が、本発明の「気体放出手段」に相当する。また、基板サポートステージ4を形成する材料が、本発明の「柔軟材料」に相当する。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。本実施の形態においては、スタンプ2及びスタンプホルダー1を支持するスタンパー31を下方に移動させることによって、試料基板3上にスタンプ2及びスタンプホルダー1を載置させ、被覆膜材料の転写処理を実行したが、これに限定されるものではない。従って、スタンパー31を固定し、試料基板3を吸着させた基板台5を上方に移動させることにより、スタンプ2及びスタンプホルダー1を試料基板3に載置させて被覆膜材料の転写処理を実行しても構わない。また双方を相対的に移動させて接近させることにより、スタンプ2及びスタンプホルダー1を試料基板3に載置させて被覆膜材料の転写処理を実行しても構わない。
また、本実施の形態においては、基板台5の上面に柔軟材料にて形成された基板サポートステージ4を配置し、基板サポートステージ4の上側に試料基板3を配置させていたが、これに限定されるものではなく、試料基板3からの圧力に対して柔軟に変形し、スタンプ2の押圧により試料基板3に印加される圧力を均一に分散させることが可能であれば、他の構成であっても構わない。以下基板台5の構成の変形例について説明する。
<変形例1>
変形例1における基板台5の構成について、図10を参照して説明する。図10は、変形例1における基板台5の物理的構成を示す断面図である。
図10に示すように、基板台5は、その上面に基板サポートステージ4が配置され、基板サポートステージ4の上面に載置板14が配置されている。基板サポートステージ4は、柔軟性のある材料により構成されており、上方からの圧力に応じて形状を変形させることが可能な状態となっている。また、載置板14は、硬性を有する板状体であり、基板サポートステージ4の上面を覆うように配置されている。載置板14の材料としては、例えば、ステンレス、鉄、銅などの金属が挙げられる。
上記構成の基板台5を使用して被覆膜材料の転写処理が実施された場合について説明する。第一移動工程においてスタンパー31が下方に移動し、スタンプ2と試料基板3とが接触する。そして継続してスタンパー31が下方に移動し、スタンプ2及びスタンプホルダー1が試料基板3に載置される。さらに、加圧孔9から気体が放出され、スタンプホルダー1が下方に押し下げられる。このことによって、スタンプ2が試料基板3に押圧される。
ここで、試料基板3とスタンプ2とが平行状態となっていない場合には、スタンプ2の押圧に伴う試料基板3への圧力が不均一な状態となる。すると、局所的に強い圧力が加わっている部分の基板サポートステージ4が凹み、載置板14の水平方向の角度が変化することによって、局所的な圧力が分散される。そして、スタンプ2試料基板3とが平行状態となる。この状態で試料基板3にスタンプ2が押圧されることによって、スタンプ2の圧力が試料基板3に均一に加わることとなり、スタンプ2に付着した被覆膜の材料を均一に試料基板3に転写させることが可能となる。
尚、上記変形例1における載置板14が、本発明の「硬質材料」に相当する。
<変形例2>
変形例2における基板台5の構成について、図11を参照して説明する。図11は、変形例2における基板台5の物理的構成を示す断面図である。
図11に示すように、基板台5は、その上面に複数の弾性体16が配置され、弾性体16の上面に載置板14が配置されている。弾性体16は、弾性力のある材料により構成されており、上方からの圧力に応じて上下方向に伸縮可能な状態となっている。また、載置板14は、硬性を有する板状体であり、基板サポートステージ4の上面を覆うように配置されている。弾性体16の材料としては、例えば、バネが挙げられる。
上記構成の基板台5を使用して被覆膜材料の転写処理が実施された場合について説明する。第一移動工程においてスタンパー31が下方に移動し、スタンプ2と試料基板3とが接触する。そして継続してスタンパー31が下方に移動し、スタンプ2及びスタンプホルダー1が試料基板3に載置される。さらに、加圧孔9から気体が放出され、スタンプホルダー1が下方に押圧される。このことによって、スタンプ2が試料基板3に押圧される。
ここで、試料基板3とスタンプ2とが平行状態となっていない場合には、スタンプ2の押圧時に伴う試料基板3への圧力が不均一な状態となる。すると、局所的に強い圧力が加わっている部分の弾性体16が凹み、載置板14の水平方向の角度が変化することによって、局所的な圧力が分散される。そして、スタンプ2試料基板3とが平行状態となる。この状態で試料基板3にスタンプ2が押圧されることによって、スタンプ2の圧力が試料基板3に均一に加わることとなり、スタンプ2に付着した被覆膜の材料を均一に試料基板3に転写させることが可能となる。
尚、上記変形例2における弾性体16が、本発明の「弾性支持手段」に相当する。