JP2009208324A - 成形体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、電波透過性があり、リサイクル性に優れ、成形時に部分的な変色が生じない成形体を提供することを課題とする。また、従来にはない高い輝度の成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】
少なくとも樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を含んでなる積層数が30以上の積層フィルムが基材に被覆されてなる成形体であって、ゲート部に近接した部位に被覆された積層フィルムの層数Hgと、ゲート部から離れた部位に被覆された積層フィルムの層数Haの比(Hg/Ha)が0.7以上1.05以下であることを特徴とする成形体。
【選択図】なし
Description
本発明における樹脂Aと樹脂Bの好ましい組み合わせとしては、樹脂Aと樹脂BのSP値の差の絶対値が、1.0以下であることが第一に好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下であると層間剥離が生じにくくなる。より好ましくは、樹脂Aからなる層と樹脂Aと同一の基本骨格を含む樹脂Bからなる層を有していることが好ましい。ここで基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は、エチレンテレフタレートが基本骨格である。また別の例としては、一方の樹脂がポリエチレンの場合、エチレンが基本骨格である。樹脂Aと樹脂Bが同一の基本骨格を含む樹脂であると、さらに層間での剥離が生じにくくなるものである。
また、本発明の積層フィルムでは、樹脂Aがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、樹脂Bがスピログリコールを含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコールを含んでなるポリエステルとは、スピログリコールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。スピログリコールを含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。より好ましくは、樹脂Aがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、樹脂Bがスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルであることが好ましい。樹脂Bがスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さく、接着性にも優れるため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
本発明の成形体は、光沢度が500以上の部位を有することが好ましい。光沢度が500以上であると高輝度となり高級感のある金属調となる。より好ましくは、光沢度が650以上である。
本発明の成形体は、成形体の角部近傍に被覆された積層フィルムの厚みTcと、成形体の平坦部に被覆された積層フィルムの厚みTfとの比(Tf/Tc)が、0.8以上3以下であることが好ましい。0.8以上3以下であると、光学特性の急激な変化が少ないために、部位による色変化が目立ちにくく、外観が均一なものとなるためである。ここで、角部とはコーナーRが5mm以下の角のことを言い、平坦部とはコーナー部から10mm以上離れた部位を言う。
ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。
2×(na・da+nb・db)=λ 式1
na:樹脂Aからなる層の面内平均屈折率
nb:樹脂Bからなる層の面内平均屈折率
da:樹脂Aからなる層の層厚み(nm)
db:樹脂Bからなる層の層厚み(nm)
λ:主反射波長(1次反射波長)
次にこのようにして得た積層フィルムに、着色層および/またはバインダー層をコーティングや印刷にて塗布する。塗布方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などが好ましく、より好ましくはスクリーン印刷が好ましい。また、スクリーン印刷で、着色層および/またはバインダー層をそれぞれ5μm以上塗布することが好ましく、着色層を形成するインキとしては2液硬化型のインキであることが好ましい。この場合、射出成形時のインク流れを抑制できやすくなり、インキの膜厚変化による変色を抑制することが可能となる。なお、着色層およびバインダー層に含まれる残存溶媒率としては、0.0001ppm以上3%以下であることが好ましい。残存溶媒率が、0.0001ppm以上3%以下であると、成形体を冷熱サイクル試験しても、着色層またはバインダー層が発泡などを生じないためである。
(物性値の評価法)
(1)層構成 Hg、Ha
成形体のゲート部位と、成形体のゲート部から3cm離れた部位を、ナイフでそれぞれ切り出した。切り出したそれぞれの部位を、ミクロトームを用いて断面の薄膜切片を得た。成形体の基材が厚く、薄膜切片が得られにくい場合は、機械的に基材をフィルムを破壊することなく剥離するなどしてから、ミクロトームを用いて薄膜切片を得た。
成形体の角部と、成形体の平坦部を、ナイフでそれぞれ切り出した。切り出したそれぞれの部位について、ミクロトームにより平坦な断面を得た。次に、株式会社トプコン製の走査電子顕微鏡 ABT−32により、倍率500倍で断面観察を行い、フィルム厚みを測定した。成形体角部に被覆された積層フィルムのもっとも厚みの薄い部分のフィルム厚みをTcとし、成形体平坦部に被覆された積層フィルムの厚みをTfとした。
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、算出した。また、溶液粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示した。なお、n数は3とし、その平均値を採用した。
成形体から分離した積層フィルムについて、示差熱量分析(DSC)を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って、融解熱量を測定・算出した。なお、測定条件としては以下の通り。
装置:セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”
データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg
昇温条件:25℃から300℃まで10℃/min.で昇温した後、300℃で5分間ホールドした後、25℃まで急冷。
成形体から分離した積層フィルムについて、示差熱量分析(DSC)を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って、発熱ピークの熱量(冷結晶化熱量)を測定・算出した。なお、測定条件としては以下の通り。
装置:セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”
データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg
昇温条件:25℃から300℃まで10℃/min.で昇温した後、300℃で5分間ホールドした後、25℃まで急冷。
日本電色工業株式会社製 ハンディ型光沢計PG−1Mを用いて、成形体の光沢度を測定した。測定条件としては、以下の通り。
測定部位 : 積層フィルム面
角度 : 20°
(7)電磁波シールド性
ASTM D4935に準拠して、キーコム株式会社の同軸管タイプ シールド効果測定システムにて、45M〜3GHzの電磁波透過性を測定した。実施例・比較例については、2.4GHzの損失を記載した。
成形体を蛍光灯下で目視にて観察し、部分的な変色がほとんど認められない場合は○、変色がわずかにある場合を△、変色がはっきりとある場合を×とした。
成形体を蛍光灯下で目視にて観察し、部分的な変色がほとんど認められない場合は○、変色がはっきりとある場合を×とした。
<樹脂A ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル(以下、DMT)100重量部とエチレングリコール(以下、EG)62重量部をエステル交換反応(以下EI反応)装置に仕込み、150℃で溶融した。ついで酢酸マグネシウム4水塩を0.05重量部仕込み、反応物の温度を3時間かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させ、EI反応をおこなった。所定量のメタノールが留出してEI反応が終了したのちトリメチルリン酸(以下、TMPA)を0.02重量部添加した。
まず始めに、チタン触媒 クエン酸キレートチタン化合物の合成方法を記す。撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(284g、1.0モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を減圧下で蒸留・留去した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、その溶液を撹拌しながらNaOHの32重量%水溶液380gを滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、8.1モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
<積層フィルムの製造方法>
2種類の熱可塑性樹脂として、樹脂Aと樹脂Bを準備した。準備した樹脂AおよびBは、それぞれ、ベント付き二軸押出機にて280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプおよびフィルターを介して、901層のフィードブロックにて合流させた。なお、両表層部分は樹脂Aとなるようにし、かつ隣接する樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層の層厚みは、ほぼ同じになるようにした。つづいて901層フィードブロックにて合流させ、T−ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。なお、樹脂Aと樹脂Bの重量比が約1になるように吐出量を調整し、隣接する層の厚み比が約1となるにようにした。
得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
次に、この得られたフィルムの片面に、スクリーン印刷にて2液硬化型のインクを塗布し着色層を形成した後、バインダー層を形成した。印刷条件は以下の通り。
<着色層>
インキ:帝国インキ製造株式会社製 IPX971
溶剤:帝国インキ製造株式会社製 F−003(10%希釈)
硬化剤:帝国インキ製造株式会社製 240硬化剤(10%混合)
スクリーンメッシュ:T−225
乾燥:80℃×10分(ボックス乾燥)
<バインダー>
バインダー:帝国インキ製造株式会社製 IMB−003
スクリーンメッシュ:T−225
乾燥:90℃×60分(ボックス乾燥)
次に、この着色層およびバインダー層を形成したフィルムを、所定の寸法にカットし、金型にセットして、以下の条件でインサート成形した。
型締圧力:60ton
金型温度:表1
成形樹脂:住友ダウ株式会社製 PC/ABSアロイ SDポリカ IM6011
成形樹脂温度:260℃
射出速度:表1
成形品寸法(L×W×H):60×60×3 mm
ゲート:φ2mmピンゲート
得られた結果を表1に示す。
吐出量を調整し、隣接する層厚みの比が2となるようにした積層フィルムを得た以外は、実施例3と同様にして成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
樹脂Aとして、固有粘度が0.72のポリエチレンナフタレート(PEN)を用いた。この樹脂Aは結晶性樹脂であった。また樹脂Bとしてイソフタル酸12mol%を共重合したエチレンテレフタレート(PET/I)を用いた。なお、この樹脂Bの固有粘度は0.67であり、結晶性樹脂であった。その他の条件については、実施例4と同様に製膜し、成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
表2のように成形条件を変更した以外は、実施例2と同様に成形体を作成した。得られた結果を表1に示す。
樹脂Bとして、固有粘度0.67のイソフタル酸12mol%を共重合したエチレンテレフタレート(PET/I)を用い、成形条件を表2のように変更した以外は、実施例1と同様に成形体を作成した。得られた結果を表2に示す。
次に記す条件のようにプレ成形、インサート成形した以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた結果を表2に示す。
<プレ成形>
予備加熱(フィルム温度):180℃
プレ成形方法:プレス成形
プレス成形によるプレ成形品寸法(L×W×H):60×80×6mmの凸型、角部R=2.1mm
プレス成形金型温度:70℃
<インサート成形>
型締圧力:60ton
金型温度:表2
成形樹脂:住友ダウ株式会社製 PC/ABSアロイ SDポリカ IM6011
成形樹脂温度:260℃
射出速度:表2
成形品外形寸法(L×W×H):60×80×6 mm(肉厚2.5mm)、角部R=2.1mm
(実施例8)
次に記す条件のようにプレ成形、インサート成形した以外は、実施例7と同様の条件で成形体を得た。得られた結果を表2に示す。
<プレ成形>
予備加熱(フィルム温度):80℃
プレ成形方法:プレス成形
プレス成形によるプレ成形品寸法(L×W×H):60×80×6mmの凸型、角部R=2.1mm
プレス成形金型温度:50℃
<インサート成形>
型締圧力:60ton
金型温度:表2
成形樹脂:住友ダウ株式会社製 PC/ABSアロイ SDポリカ IM6011
成形樹脂温度:260℃
射出速度:表2
成形品外形寸法(L×W×H):60×80×6 mm(肉厚2.5mm)、角部R=2.1mm
Claims (5)
- 少なくとも樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を含んでなる積層数が30以上の積層フィルムが基材に被覆されてなる成形体であって、ゲート部に近接した部位に被覆された積層フィルムの層数Hgと、ゲート部から離れた部位に被覆された積層フィルムの層数Haの比(Hg/Ha)が0.7以上1.05以下であることを特徴とする成形体。
- 成形体を被覆している積層フィルムのDSC測定における100℃〜200℃の範囲に観察される発熱ピークの熱量が、0J/g以上5J/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
- 光沢度が500以上の部位を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形体。
- 成形体の角部近傍に被覆された積層フィルムの厚みTcと、成形体の平坦部に被覆された積層フィルムの厚みTfとの比(Tf/Tc)が、0.8以上3以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
- 少なくとも樹脂Aからなる層と樹脂Bからなる層を含んでなる積層数が30以上の積層フィルムが基材に被覆されてなる成形体であって、成形体の角部近傍に被覆された積層フィルムの厚みTcと、成形体の平坦部に被覆された積層フィルムの厚みTfとの比(Tf/Tc)が、0.8以上3以下であることを特徴とする成形体。
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---|---|---|---|---|
JP2011079168A (ja) * | 2009-10-05 | 2011-04-21 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 樹脂板の製造方法 |
JP2017170886A (ja) * | 2016-03-18 | 2017-09-28 | 東レ株式会社 | 積層フィルムおよびその製造方法 |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2004108408A1 (ja) * | 2003-06-04 | 2004-12-16 | Toray Industries, Inc. | 積層フィルムおよび二軸配向ポリエステルフィルム |
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2008
- 2008-03-04 JP JP2008052957A patent/JP5169317B2/ja active Active
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WO2004108408A1 (ja) * | 2003-06-04 | 2004-12-16 | Toray Industries, Inc. | 積層フィルムおよび二軸配向ポリエステルフィルム |
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JP2011079168A (ja) * | 2009-10-05 | 2011-04-21 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 樹脂板の製造方法 |
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