JP2009206226A - 窒化物系半導体レーザ素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】発光効率の低下を抑制することが可能な窒化物系半導体レーザ素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】この窒化物系半導体レーザ素子(窒化物系半導体発光素子)50は、(1−100)面からなる主表面を有する発光層6、光出射面20aおよび光反射面20bを有する半導体レーザ素子部20と、光出射面20aに対して角度θ1(=約62°)傾斜して延びるとともに発光層6の主表面と交差する(1−101)面からなる反射面21aとを含む反射部21と、半導体レーザ素子部20および反射部21(半導体レーザ素子層3)に接合される支持基板30とを備える。そして、反射面21aは、半導体レーザ素子部20の発光層6で発生したレーザ出射光を、光出射面20aに対して角度θ2(=約34°)傾斜した方向に反射するように構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】この窒化物系半導体レーザ素子(窒化物系半導体発光素子)50は、(1−100)面からなる主表面を有する発光層6、光出射面20aおよび光反射面20bを有する半導体レーザ素子部20と、光出射面20aに対して角度θ1(=約62°)傾斜して延びるとともに発光層6の主表面と交差する(1−101)面からなる反射面21aとを含む反射部21と、半導体レーザ素子部20および反射部21(半導体レーザ素子層3)に接合される支持基板30とを備える。そして、反射面21aは、半導体レーザ素子部20の発光層6で発生したレーザ出射光を、光出射面20aに対して角度θ2(=約34°)傾斜した方向に反射するように構成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、窒化物系半導体レーザ素子およびその製造方法に関し、特に、活性層を有する窒化物系半導体層が形成された窒化物系半導体レーザ素子およびその製造方法に関する。
従来、端面出射型の半導体レーザ素子として、ガリウム砒素系の半導体材料を用いて、共振器端面(光出射面)とレーザ出射光を外部に反射させるための反射面とが一体的に形成されたモノリシック型の半導体レーザ素子が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
上記非特許文献1に開示された半導体レーザ素子では、基板上に一様に積層されたガリウム砒素系の半導体素子層に対して、イオンビームエッチング技術により、光出射面側の共振器端面と、この共振器端面と所定の距離を隔てた位置に共振器端面に対して約45°傾斜した方向に延びる反射面(傾斜端面)とが形成されている。これにより、共振器端面から出射されたレーザ光を、反射面によって基板の主表面と略垂直な方向に反射させて外部に出射させることが可能に構成されている。
Appl.Phys.Lett.48(24), 16 June 1986,p.1675−1677
しかしながら、上記非特許文献1に提案されたモノリシック型の半導体レーザ素子では、基板と略垂直な方向にレーザ光を出射させるために共振器端面に対して約45°傾斜した反射面(傾斜端面)が形成されている一方、この反射面の面方位については開示も示唆もされていない。一般的に、イオンビームエッチングなどのドライエッチングを用いて半導体素子層に端面を形成した場合、この端面にはエッチングによる微細な凹凸形状が形成される。したがって、上記非特許文献1に開示されたモノリシック型の半導体レーザ素子では、反射面が微細な凹凸形状を有していると考えられる。この場合、共振器端面(光出射面)から出射されたレーザ光の一部が反射面で散乱するために、半導体レーザ素子としての発光効率が低下してしまうという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、発光効率の低下を抑制することが可能な窒化物系半導体レーザ素子およびその製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子は、共振器面と、{A+B、A、−2A−B、L}面(AおよびBの少なくともいずれか一方が0ではない整数)からなる主表面を有する活性層と、共振器面に対して所定の角度傾斜して延びるとともに活性層の主表面と交差する(000−1)面、または、{A+B、A、−2A−B、2A+B}面(ここでA≧0およびB≧0であり、かつ、AおよびBの少なくともいずれか一方が0ではない整数)からなる反射面とを含む窒化物系半導体層と、窒化物系半導体層に接合される支持基板とを備え、反射面は、活性層で発生したレーザ光を反射する。
この発明の第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子では、上記のように、共振器面に対して所定の角度傾斜して延びるとともに活性層の主表面と交差する(000−1)面、または、{A+B、A、−2A−B、2A+B}面からなる反射面を含む窒化物系半導体層を備えることによって、上記の面方位を有する反射面(ファセット)は平坦性を有するので、共振器面から出射されたレーザ光は、エッチングなどにより微細な凹凸形状が形成された端面で散乱を起こしながら反射される場合と異なり、上記の面方位を有する反射面で散乱を起こすことなく一様に出射方向を変化させて外部に出射される。この結果、半導体レーザ素子の発光効率が低下するのを抑制することができる。
上記第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、窒化物系半導体層と支持基板とは、接合層を介して接合されている。このように構成すれば、接合層により、窒化物系半導体層と支持基板とを確実に接合することができる。
上記第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、反射面は、窒化物系半導体層の結晶成長面からなる。このように構成すれば、上記の面方位を有する反射面を、活性層などが形成される窒化物系半導体層の結晶成長と同時に形成することができる。
この発明の第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法は、成長用基板の主表面上に、共振器面と、{A+B、A、−2A−B、L}面(AおよびBの少なくともいずれか一方が0ではない整数)からなる主表面を有する活性層と、共振器面に対して所定の角度傾斜して延びるとともに活性層の主表面と交差する(000−1)面、または、{A+B、A、−2A−B、2A+B}面(ここでA≧0およびB≧0であり、かつ、AおよびBの少なくともいずれか一方が0ではない整数)からなる反射面とを含む窒化物系半導体層を成長させる工程と、窒化物系半導体層に支持基板を接合する工程とを備える。
この発明の第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、成長用基板の主表面上に、共振器面に対して所定の角度傾斜して延びるとともに活性層の主表面と交差する(000−1)面、または、{A+B、A、−2A−B、2A+B}面からなる反射面を含む窒化物系半導体層を成長させる工程を備えることによって、たとえば、成長用基板上に形成した窒化物系半導体層に対してイオンビームエッチングなどにより微細な凹凸形状を有するような反射面(傾斜端面)を形成する場合と異なり、上記の面方位を有する反射面(ファセット)には良好な平坦性が得られる。これにより、共振器面から出射されたレーザ光を、反射面で散乱を起こすことなく一様に出射方向を変化させて外部に出射させることができるので、発光効率の低下が抑制された半導体レーザ素子を形成することができる。また、窒化物系半導体層を成長させる際に同時に活性層の主表面に対して傾斜する反射面を形成するので、成長用基板上に平坦な窒化物系半導体層を成長させた後に、たとえばイオンビームエッチングなどにより共振器面(たとえば光出射面)に対して所定の角度傾斜した反射面(傾斜端面)を形成する工程を必要としない。これにより、半導体レーザ素子の製造プロセスが複雑になるのを抑制することができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法において、好ましくは、窒化物系半導体層に支持基板を接合する工程の後に、成長用基板を除去する工程をさらに備える。このように構成すれば、除去後の成長用基板に表面処理などを行うことによって、この成長用基板を窒化物系半導体層の形成時の成長用基板として再度利用することができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法において、好ましくは、窒化物系半導体層を成長させる工程に先立って、成長用基板の主表面に凹部を形成する工程をさらに備え、窒化物系半導体層を成長させる工程は、成長用基板の凹部の一方の内側面を起点とした共振器面と、共振器面と対向する領域に凹部の他方の内側面を起点とした反射面とを成長させる工程を含む。このように構成すれば、窒化物系半導体層が成長用基板上に結晶成長する際に、成長層の上面(窒化物系半導体層の主表面)が成長する成長速度よりも、凹部の一方の内側面を起点とした共振器面および凹部の他方の内側面を起点とした反射面がそれぞれ形成される成長速度が遅いので、成長層の上面(主表面)が平坦性を保ちながら成長する。これにより、上記共振器面および反射面からなる端面を形成しない場合の窒化物系半導体層の成長層表面と比較して、活性層を有する半導体層の表面の平坦性をより向上させることができる。なお、この理由は、以下の通りと考えられる。
(000−1)面や{A+B、A、−2A−B、2A+B}面のような成長速度の遅い面は表面エネルギーが小さい一方、成長速度の速い面の一例として、たとえば(1−100)面などは表面エネルギーが大きいと考えられる。結晶成長中の表面は、表面エネルギーが小さい方がより安定であるため、上記(1−100)面のみを成長面とした結晶成長を行う場合、(1−100)面よりも表面エネルギーが小さい(1−100)面以外の面が現れやすくなる。この結果、成長面(主表面)の平坦性が損なわれやすい。一方、本発明では、たとえば活性層の主表面として成長させる(1−100)面などよりも表面エネルギーの小さい(000−1)面や{A+B、A、−2A−B、2A+B}面を形成しながら成長面((1−100)面)を成長させるので、上記(1−100)面のみを成長面とした結晶成長を行う場合に比べて、成長面(主表面)の表面エネルギーを小さくすることができる。これにより、成長面の平坦性が改善されると考えられる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法において、好ましくは、成長用基板は、窒化物系半導体からなる。このように構成すれば、窒化物系半導体からなる成長用基板上に窒化物系半導体層の結晶成長を利用して、共振器面および反射面を有する窒化物系半導体層を容易に形成することができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法において、好ましくは、成長用基板は、下地基板と、下地基板上に形成され、AlGaNからなる下地層とを含み、下地基板および下地層の格子定数を、それぞれ、c1およびc2とした場合、c1>c2の関係を有し、共振器面および反射面は、それぞれ、下地層の(0001)面と下地基板の主表面とに実質的に平行に延びるように形成されたクラックの内側面を起点として形成される。このように構成すれば、下地基板上にAlGaNからなる下地層を形成する際に、下地層の格子定数c2が下地基板の格子定数c1よりも小さい(c1>c2)ので、下地基板側の格子定数c1に合わせようとして下地層の内部に引張応力が生じる。この結果、下地層の厚みが所定の厚み以上の場合にはこの引張応力に耐え切れずに下地層にはクラックが形成される。これにより、下地層上に窒化物系半導体層の共振器面および反射面をそれぞれ形成するための起点となるクラックの内側面(凹部の一方の内側面および他方の内側面)を、容易に下地層に形成することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を説明するための、窒化物系半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。図2および図3は、図1に示した窒化物系半導体レーザ素子の構造を説明するための断面図である。まず、図1〜図3を参照して、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子50の構造について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を説明するための、窒化物系半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。図2および図3は、図1に示した窒化物系半導体レーザ素子の構造を説明するための断面図である。まず、図1〜図3を参照して、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子50の構造について説明する。
本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子50では、図1に示すように、約100μmの厚みを有する支持基板30に、約7μmの厚みを有する半導体レーザ素子部20と反射部21とが、接合層31を介して接合された構造を有している。また、半導体レーザ素子部20は、発振波長が約400nm帯のGaN系半導体層により構成されている。
また、半導体レーザ素子部20は、図1および図2に示すように、約3μm〜約4μmの厚みを有するGeドープAlGaNからなる下地層2上に、約3.5μmの厚みを有する半導体レーザ素子層3が形成されている。ここで、下地層2は、n型コンタクト層として機能する。また、半導体レーザ素子部20は、図1に示すように、約1560μmの共振器長(A方向の長さ)L1を有するとともに、[0001]方向(A方向)に、半導体レーザ素子層3の主表面に対して略垂直な光出射面20aおよび光反射面20bがそれぞれ形成されている。なお、半導体レーザ素子層3は、本発明の「窒化物系半導体層」の一例であり、光出射面20aおよび光反射面20bは、それぞれ、本発明の「共振器面」の一例である。また、本発明において、光出射面20aおよび光反射面20bは、光出射側および光反射側のそれぞれの共振器面から出射されるレーザ光強度の大小関係により区別される。すなわち、相対的にレーザ光の出射強度の大きい側が光出射面20aであり、相対的にレーザ光の出射強度の小さい側が光反射面20bである。
また、半導体レーザ素子部20の光出射面20aおよび光反射面20bには、製造プロセスにおける端面コート処理により、AlN膜やAl2O3膜などからなる誘電体多層膜が、それぞれ形成されていてもよい。
ここで、第1実施形態では、半導体レーザ素子層3は、後述する製造プロセス時に成長用基板として用いるn型GaN基板1の非極性面であるm面((1−100)面)からなる主表面上に、下地層2を介して形成されている。なお、n型GaN基板1は、本発明の「成長用基板」および「下地基板」の一例である。また、図1に示すように、下地層2には、下地層2の結晶成長時に形成される(000−1)面からなる内側面40aを有するクラック40が形成されている。なお、クラック40および内側面40aは、それぞれ、本発明の「凹部」および「凹部の一方の内側面」の一例である。そして、半導体レーザ素子層3の光反射面20bは、下地層2のクラック40の内側面40aを引き継ぐように結晶成長した(000−1)面からなる端面により構成されている。また、半導体レーザ素子層3の光出射面20aは、[0001]方向(図1のA1方向)に垂直な端面であるc面((0001)面)からなる端面により構成されている。
また、第1実施形態では、図1に示すように、窒化物系半導体レーザ素子50には、半導体レーザ素子部20の光出射面20aと対向するA1方向の領域に、溝部41を隔てて反射部21が形成されている。また、反射部21には、半導体レーザ素子層3(発光層6)の光出射面20aに対して角度θ1(=約62°)傾斜した方向に延びる反射面21aが形成されている。また、反射面21aは、半導体レーザ素子層3の形成時の結晶成長に伴う(1−101)面からなるファセット(成長面)により形成されている。そして、反射面21a上には、約200nmの厚みを有するAg層からなる反射膜22が形成されている。これにより、窒化物系半導体レーザ素子50では、後述する発光層6の光出射面20aからA1方向に出射されたレーザ光が、光出射面20aと対向する端面21bから入射して反射部21内部をA1方向に透過するとともに反射面21aによって出射方向を略C1方向(光出射面20aに対して角度θ2(=約34°)傾斜した方向)に変化させて外部に出射させることが可能に構成されている。なお、反射膜22としては、Alなどを用いてもよい。また、Al2O3膜やSiO2膜などからなる誘電体多層膜により反射膜22を構成してもよい。
また、半導体レーザ素子層3は、n型バッファ層4と、n型クラッド層5と、発光層6と、p型クラッド層7およびp型コンタクト層8とを含んでいる。具体的には、図1および図2に示すように、下地層2の上面上に、約1.0μmの厚みを有するGeドープAl0.01Ga0.99Nからなるn型バッファ層4と、約1.9μmの厚みを有するGeドープのAl0.07Ga0.93Nからなるn型クラッド層5とが形成されている。
また、n型クラッド層5上には、発光層6が形成されている。この発光層6は、図3に示すように、n型クラッド層5(図2参照)に近い側から順に、約20nmの厚みを有するAl0.2Ga0.8Nからなるn側キャリアブロック層6aと、約20nmの厚みを有するアンドープIn0.02Ga0.98Nからなるn側光ガイド層6bと、多重量子井戸(MQW)活性層6eと、約0.08μmの厚みを有するアンドープIn0.01Ga0.99Nからなるp側光ガイド層6fと、約20nmの厚みを有するAl0.25Ga0.75Nからなるキャリアブロック層6gとから構成されている。また、MQW活性層6eは、約2.5nmの厚みを有するアンドープIn0.15Ga0.85Nからなる3層の量子井戸層6cと約20nmの厚みを有するアンドープIn0.02Ga0.98Nからなる3層の量子障壁層6dとが交互に積層されている。また、n型クラッド層5は、MQW活性層6eよりもバンドギャップが大きい。また、n側キャリアブロック層6aとMQW活性層6eとの間に、n側キャリアブロック層6aとMQW活性層6eとの中間のバンドギャップを有する光ガイド層などを形成してもよい。また、MQW活性層6eは、単層または単一量子井戸(SQW)構造で形成してもよい。
また、図1および図2に示すように、発光層6上には、約0.5μmの厚みを有するMgドープのAl0.07Ga0.93Nからなるからなるp型クラッド層7が形成されている。また、p型クラッド層7は、MQW活性層6eよりもバンドギャップが大きい。また、p型クラッド層7上には、約3nmの厚みを有するアンドープIn0.07Ga0.93Nからなるp型コンタクト層8が形成されている。なお、n型バッファ層4、n型クラッド層5、発光層6、p型クラッド層7およびp型コンタクト層8は、それぞれ、本発明の「窒化物系半導体層」の一例である。また、発光層6は、本発明の「活性層」の一例である。
また、図2に示すように、p型コンタクト層8の上面上の所定の領域には、約200nmの厚みを有するSiO2からなる電流ブロック層9が形成されている。
また、p型コンタクト層8の上面上の電流ブロック層9が形成されていない領域(図2のB方向の中央部近傍)には、p型コンタクト層8の上面に近い方から順に、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側電極10が形成されている。また、p側電極10は、電流ブロック層9の上面上を覆うように形成されている。
また、図1および図2に示すように、下地層2の下面上には、下地層2から近い順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とからなるn側電極11が形成されている。このn側電極11は、図1に示すように、半導体レーザ素子部20のA方向の両側部まで延びるように下地層2の下面上の全面に形成されている。
また、支持基板30としては、導電性を有する基板を用いてもよいし、絶縁性を有する基板を用いてもよい。導電性を有する基板としては、たとえば、Cu−W系、AlおよびFe−Ni系などの金属板や、単結晶のSi、SiC、GaAsおよびZnOなどの半導体基板や、多結晶のAlN基板を用いてもよい。また、金属などの導電性の微粒子を分散させた導電性樹脂フィルムや、金属および金属酸化物の複合材料などを用いてもよいし、金属を含侵した黒鉛粒子焼結体で構成される炭素および金属の複合材料を用いてもよい。また、導電性を有する基板を用いる場合、半導体層を接合する側と反対側の表面(上面)に電極を形成してもよい。また、支持基板30として半導体基板を用いてもよい。
また、接合層31としては、半田や導電性ペーストなどの材料からなる層を用いることができる。半田としては、AuSn、InSn、SnAgCu、SnAgBi、SnAgCuBi、SnAgBiIn、SnZn、SnCu、SnBiおよびSnZnBiなどからなる半田を用いることができる。
図4〜図10は、図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図および平面図である。次に、図1〜図10を参照して、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子50の製造プロセスについて説明する。
まず、図4に示すように、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いて、n型GaN基板1上に、約20nmの厚みを有するIn0.35Ga0.65Nからなる剥離層32および約3μm〜約4μmの厚みを有するAlGaNからなる下地層2を成長させる。なお、下地層2が結晶成長する際、n型GaN基板1の[0001]方向の格子定数c1よりもAlGaNからなる下地層2の[0001]方向の格子定数c2が小さい(c1>c2)ので、所定の厚みに達した下地層2は、n型GaN基板1の格子定数c1に合わせようとして下地層2の内部に引張応力Rが発生する。この結果、下地層2が局所的にA方向に縮むのに伴って、下地層2には、図4および図5に示すようなクラック40が形成される。ここで、GaNとAlGaNとのc軸の格子定数の差の方が、GaNとAlGaNとのa軸の格子定数の差よりも大きいので、クラック40は、(0001)面とn型GaN基板1の主表面の(1−100)面とに平行な[11−20]方向(B方向)に沿ってストライプ状に延びるように形成されやすい。なお、図5では、下地層2に自発的にクラック40が形成される様子を模式的に示している。
なお、第1実施形態では、下地層2を結晶成長させる際に、n型GaN基板1と下地層2との格子定数差を利用することにより凹部としてのクラック40を下地層2に形成しているが、下地層2を結晶成長させた後に、下地層2の表面側から機械的スクライブ、レーザスクライブ、ダイシングおよびエッチングなどにより、(000−1)面を含む内側面(凹部の内側面)を形成してもよい。また、上記手法を用いて凹部を形成する場合には、下地層2を基板(下地基板)であるn型GaN基板1と同様の格子定数を有するGaNとしてもよい。さらには、後述するように、機械的スクライブ、レーザスクライブ、ダイシングおよびエッチングなどにより、n型GaN基板1上の表面側に直接(000−1)面からなる内側面を有する凹部(第2実施形態の溝部80)を形成してもよい。
また、第1実施形態では、図4に示すように、下地層2にクラック40が形成される際に、クラック40には、AlGaN層(下地層2)の(000−1)面からなり、下地層2とn型GaN基板1上の剥離層32との界面近傍まで達する内側面40aが形成される。なお、内側面40aは、n型GaN基板1の(1−100)面からなる主表面に対して略垂直に形成される。また、クラック40の内側面40aと対向する位置には内側面40bが形成される。なお、内側面40bは、本発明の「凹部の他方の内側面」の一例である。ここで、クラック40は、下地層2の内部に発生する引張応力Rを利用して形成されるので、外部的な加工技術(たとえば、機械的スクライブ、レーザスクライブ、ダイシングおよびエッチングなど)により凹部(溝形状の窪み)を形成する場合と異なり、内側面40aを結晶学的面指数(000−1)面に容易に一致させることが可能である。この結果、内側面40aを極めて平坦な(000−1)面として形成することができるので、平坦な内側面40a上に半導体レーザ素子層3を結晶成長させる際、内側面40aの(000−1)面を引き継ぐような平坦な端面((000−1)面)を有する半導体レーザ素子層3を容易に成長させることができる。
また、第1実施形態では、下地層2の内部に剥離層32の上面近傍まで達するクラック40が形成されるので、n型GaN基板1と格子定数が異なる下地層2の格子歪を開放することができる。したがって、下地層2の結晶品質が良好になり、下地層2上に形成される半導体レーザ素子層3を高品質な結晶状態とすることができる。この結果、後述する工程で形成されるn型クラッド層5、n側キャリアブロック層6a、キャリアブロック層6f、p型クラッド層7およびp型コンタクト層8などの電気特性が向上されるとともに、これらの層内での光吸収を抑制することが可能となる。さらに、発光層6(n側キャリアブロック層6a、n側光ガイド層6b、MQW活性層6e、p側光ガイド層6fおよびキャリアブロック層6g)の内部損失を低減するとともに、発光層6の発光効率を向上させることが可能である。なお、第1実施形態では、下地層2の内部に剥離層32の上面近傍まで達するクラック40を形成したが、下地層2の厚み方向(図4の矢印C1方向)に、下地層2の厚みに相当する深さの溝部を形成するようにしてもよい。このように構成しても、下地層2の厚みに相当する深さの溝部によって下地層2の内部歪を開放することができるので、クラック40を形成する場合と同様の効果を得ることができる。
次に、図6に示すように、MOCVD法を用いて、クラック40が形成された下地層2上に、n型バッファ層4、n型クラッド層5、発光層6(詳細は図3参照)、p型クラッド層7およびp型コンタクト層8を順次成長させて半導体レーザ素子層3を形成する。
上記半導体レーザ素子層3の形成において、具体的には、まず、基板温度を約1000℃の成長温度に保持した状態で、Ga原料であるTMGa(トリメチルガリウム)およびAl原料であるTMAl(トリメチルアルミニウム)を含んだH2からなるキャリアガスを反応炉内に供給して、下地層2上にn型バッファ層4を成長させる。次に、TMGaおよびTMAlと、n型導電性を得るためのGe不純物の原料であるGeH4(モノゲルマン)とを含んだH2からなるキャリアガスを反応炉内に供給して、n型バッファ層4上にn型クラッド層5を成長させる。その後、TMGaおよびTMAlを含んだH2ガスを反応炉内に供給して、n型クラッド層5上にn側キャリアブロック層6aを成長させる。
次に、基板温度を約850℃の成長温度に下げて保持した状態で、反応炉内にNH3ガスを供給した窒素ガス雰囲気中にて、Ga原料であるTEGa(トリエチルガリウム)およびIn原料であるTMIn(トリメチルインジウム)を供給して、n側光ガイド層6b、MQW活性層6eおよびp側光ガイド層6fを成長させる。そして、TMGaおよびTMAlを反応炉内に供給して、キャリアブロック層6gを成長させる。これにより、発光層6(図3参照)が形成される。
次に、基板温度を約1000℃の成長温度に上昇させて保持した状態で、反応炉内にNH3ガスを供給した水素ガスおよび窒素ガス雰囲気中にて、p型不純物であるMgの原料であるMg(C5H5)2(シクロペンタンジエニルマグネシウム)、Ga原料であるTMGaおよびAl原料であるTMAlを供給して、発光層6上にp型クラッド層7を成長させる。その後、再び基板温度を約850℃の成長温度に下げて保持した状態で、反応炉内にNH3ガスを供給した窒素ガス雰囲気中にて、Ga原料であるTEGaおよびIn原料であるTMInを供給して、p型コンタクト層8を成長させる。このようにして、下地層2上に半導体レーザ素子層3が形成される。
ここで、第1実施形態による製造プロセスでは、図6に示すように、下地層2上に半導体レーザ素子層3を成長させた場合、B方向(図5参照)にストライプ状に延びるクラック40の(000−1)面からなる内側面40aにおいて、半導体レーザ素子層3は、クラック40の(000−1)面を引き継ぐように[1−100]方向(C2方向)に延びる(000−1)面を形成しながら結晶成長する。
また、第1実施形態による製造プロセスでは、図6に示すように、クラック40の内側面40aに対向する内側面40b側では、半導体レーザ素子層3には、内側面40bを起点として光反射面20bに対して角度θ1(=約62°)傾斜した方向に延びる反射面21aが形成される。また、反射面21aは、半導体レーザ素子層3の結晶成長に伴う(1−101)面からなるファセット(成長面)である。
なお、半導体レーザ素子層3を上述の方法により形成することによって、半導体レーザ素子層3の結晶成長時に、n型GaN基板1の主表面に対して略垂直な光反射面20bと反射面21aとを同時に形成することが可能となる。したがって、クラック40などが無い平坦な基板上に積層された半導体レーザ素子層3に対してエッチング加工により光反射面20bまたは反射面21aに相当する端面を形成する場合と異なり、光反射面20bおよび反射面21aの形成にエッチング加工を必要としないので、窒化物系半導体レーザ素子50の製造プロセスが簡素化される。
また、半導体レーザ素子層3がn型GaN基板1上に結晶成長する際に、成長層の上面(半導体レーザ素子層3の主表面)が成長する成長速度よりも、クラック40の内側面40aを起点とした光反射面20bおよびクラック40の内側面30bを起点とした反射面21aがそれぞれ形成される成長速度が遅いので、成長層の上面(主表面)が平坦性を保ちながら成長する。これにより、上記光反射面20bおよび反射面21aからなる端面を形成しない場合の発光素子層の成長層表面と比較して、発光層6を有する半導体レーザ素子層3の表面(上面)の平坦性をより向上させることが可能である。
そして、窒素ガス雰囲気中で、約800℃の温度条件下でp型化アニール処理を行う。また、図2に示すように、p型コンタクト層8の上面上に、フォトリソグラフィによりレジストパターンを形成した後、そのレジストパターンをマスクとしてドライエッチングなどを行うことにより、SiO2からなる電流ブロック層9を形成する。また、図2および図7に示すように、真空蒸着法を用いて、電流ブロック層9上および電流ブロック層9が形成されていないp型コンタクト層8上に、p側電極10を形成する。また、図7に示すように、真空蒸着法を用いて、反射面21a上にAg層からなる反射膜22を形成する。そして、p側電極10側と支持基板30とをAuSnからなる接合層31を介して接合する。
そして、図8に示すように、n型GaN基板1の下面側から剥離層32(破線で示す)に向かってC2方向にレーザ照射を行う。その際、Nd:YAGレーザ光の第2高調波(波長:約532nm)を、約500mJ/cm2〜約2000mJ/cm2のエネルギ密度に調整した上で、n型GaN基板1の下面側からn型GaN基板1に向けて断続的(パルス状)に照射する。これにより、剥離層32の結晶結合が分解されて蒸発するとともに、半導体レーザ素子層3側がn型GaN基板1から剥離される。なお、約532nmの波長を有するレーザ光は、剥離層32において吸収される一方、基板(n型GaN基板1および支持基板30)および半導体レーザ素子層3では吸収されない。
その後、図9に示すように、所定の共振器面を形成したい位置を、半導体レーザ素子層3の裏面側(下面側)からp側電極10まで達する方向(矢印C1方向)にドライエッチングを行うことにより、半導体レーザ素子層3の一方の側面が平坦な略(0001)面を有する溝部41を形成する。これにより、溝部41の一方の側面である略(0001)面が、半導体レーザ素子部20における一対の共振器面のうちの光出射面20aとして容易に形成される。また、溝部41の他方の側面である略(000−1)面が、反射部21の端面21bとして形成される。なお、溝部41は、平面的に見て、クラック40の延びる方向と略平行な[11−20]方向(B方向)に伸びるように形成される。
その後、図9に示すように、半導体レーザ素子部20となる領域の下地層2の下面上に、真空蒸着法を用いてn側電極11を形成する。そして、図10に示すように、下地層2の裏面側の所定の位置にレーザスクライブまたは機械式スクライブにより、半導体レーザ素子層3の[0001]方向(図1のA1方向)と直交する[11−20]方向(図1のB方向)に延びるように直線状のスクライブ溝42を形成する。この状態で、図10に示すように、支持基板30の下面側(下側)が開くように支持基板30の上面側(上側)を支点として荷重を印加することにより、ウェハをスクライブ溝42の位置(劈開線500)で劈開する。
最後に、共振器方向(A方向)に沿って素子を分割してチップ化することによって、図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子50が形成される。
第1実施形態では、上記のように、共振器面(半導体レーザ素子部20の光出射面20a)に対して角度θ1(=約62°)傾斜して延びるとともに発光層6の主表面((1−100)面)と交差する(1−101)面からなる反射面21aを含む半導体レーザ素子層3(反射部21)を備えることによって、上記の面方位を有する反射面21a(ファセット)は平坦性を有するので、光出射面20aから出射されたレーザ光は、エッチングなどより微細な凹凸形状が形成された端面で散乱を起こしながら反射される場合と異なり、上記の面方位を有する反射面21aで散乱を起こすことなく一様に出射方向を変化させて外部に出射される。この結果、窒化物系半導体レーザ素子50の発光効率が低下するのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、半導体レーザ素子層3と支持基板30とを接合層31を介して接合することによって、接合層31により、半導体レーザ素子層3と支持基板30とを確実に接合することができる。
また、第1実施形態では、反射面21aを、半導体レーザ素子層3の結晶成長面からなるように構成することによって、(1−101)面からなる反射面21aを、発光層6などが形成される半導体レーザ素子層3の結晶成長と同時に形成することができる。
また、第1実施形態では、製造プロセスの際に、成長用基板として用いるn型GaN基板1上に、主表面が(1−100)面からなる半導体レーザ素子層3(発光層6)を形成することによって、半導体レーザ素子層3(発光層6)に発生するピエゾ電場を低減することができる。これにより、レーザ光の発光効率を向上させることができる。
また、第1実施形態では、(000−1)面からなる光出射面20aを、半導体レーザ素子層3の結晶成長面からなるように構成することによって、半導体レーザ素子層3の結晶成長時に同時に光出射面20aを形成することができる。これにより、n型GaN基板上に半導体素子層を成長した後に、イオンビームエッチングなどによりn型GaN基板上の主表面に対して略垂直な共振器端面を形成する場合と異なり、窒化物系半導体レーザ素子50の製造プロセスが複雑になるのをより抑制することができる。
また、第1実施形態では、製造プロセスの際に、GaNからなるn型GaN基板1を成長用基板として用いることによって、n型GaN基板1上に半導体レーザ素子層3の結晶成長を利用して、容易に、光出射面20aに対して角度θ1(=約62°)傾斜した反射面21aを形成することができる。
また、第1実施形態では、m面((1−100)面)からなる主表面を有するn型GaN基板1を成長用基板として用いることによって、特に、無極性面からなる主表面を有するn型GaN基板1上に半導体レーザ素子層3(発光層6)が形成されるので、半導体レーザ素子層3に発生するピエゾ電場をより一層低減させることができる。これにより、レーザ光の発光効率をより一層向上させることができる。
(第1実施形態の変形例)
図11は、本発明の第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の構造を説明するための、窒化物系半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。図12は、図11に示した第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。図11および図12を参照して、この第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子55では、上記第1実施形態の製造プロセスと異なり、成長用基板であるn型GaN基板1上に、アンドープAlGaNからなる下地層2および剥離層32をこの順に形成した後に半導体レーザ素子層3を結晶成長させる場合について説明する。
図11は、本発明の第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の構造を説明するための、窒化物系半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。図12は、図11に示した第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。図11および図12を参照して、この第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子55では、上記第1実施形態の製造プロセスと異なり、成長用基板であるn型GaN基板1上に、アンドープAlGaNからなる下地層2および剥離層32をこの順に形成した後に半導体レーザ素子層3を結晶成長させる場合について説明する。
ここで、第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子55では、図11に示すように、半導体レーザ素子層3を構成するn型コンタクト層4の下面上に、n側電極11が形成されている。すなわち、第1実施形態の変形例による製造プロセスでは、図12に示すように、成長用基板であるn型GaN基板1上に、下地層2および剥離層32をこの順に形成した後に半導体レーザ素子層3を結晶成長させる。その後、上記第1実施形態と同様の製造プロセスにより、接合層31(図11参照)を介して支持基板30(図11参照)を接合するとともに、n型GaN基板1を半導体レーザ素子層3から剥離する。その際、レーザ照射によって下地層2上の剥離層32が蒸発するために、n型GaN基板1と下地層2とが半導体レーザ素子層3から分離される。その後、半導体レーザ素子層3の下面側に露出したn型コンタクト層4上にn側電極11を形成することにより、図11に示した窒化物系半導体レーザ素子55が形成される。
なお、第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子55のその他の構造および製造プロセスは、上記第1実施形態と同様である。また、第1実施形態の変形例の効果についても、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を説明するための、窒化物系半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。図14〜図18は、図13に示した第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。まず、図13を参照して、この第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子90では、上記第1実施形態と異なり、成長用基板として用いるn型GaN基板71(図14参照)の(11−20)面からなる主表面に、エッチング技術を用いて、[−1100]方向に延びる溝部80(図14参照)を形成した後に、半導体レーザ素子層3を形成する場合について説明する。なお、n型GaN基板71は、本発明の「成長用基板」の一例であり、溝部80は、本発明の「凹部」の一例である。
図13は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を説明するための、窒化物系半導体レーザ素子の共振器方向に沿った面における断面図である。図14〜図18は、図13に示した第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。まず、図13を参照して、この第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子90では、上記第1実施形態と異なり、成長用基板として用いるn型GaN基板71(図14参照)の(11−20)面からなる主表面に、エッチング技術を用いて、[−1100]方向に延びる溝部80(図14参照)を形成した後に、半導体レーザ素子層3を形成する場合について説明する。なお、n型GaN基板71は、本発明の「成長用基板」の一例であり、溝部80は、本発明の「凹部」の一例である。
本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子90では、図13に示すように、所定の位置にPD(フォトダイオード)100が組み込まれた支持基板30に、約5μmの厚みを有する半導体レーザ素子部60と反射部61とが、接合層31を介して接合された構造を有している。また、半導体レーザ素子部60は、発振波長が約400nm帯のGaN系半導体層により構成されている。
また、半導体レーザ素子部60は、約1560μmの共振器長(A方向の長さ)L1を有するとともに、[0001]方向(A方向)に、半導体レーザ素子層3の主表面に対して略垂直な光出射面60aおよび光反射面60bがそれぞれ形成されている。なお、光出射面60aおよび光反射面60bは、それぞれ、本発明の「共振器面」の一例である。
また、半導体レーザ素子部60は、端面出射型のレーザ素子であり、図13に示すように、発光層6から出射されたレーザ光は、光出射面60aから出射されるレーザ光90aの出射強度の方が、光反射面60bから出射されるレーザ光90bの出射強度よりも大きくなるように構成されている。
ここで、第2実施形態では、半導体レーザ素子層3は、後述する製造プロセス時に成長用基板として用いるn型GaN基板71(図14参照)の非極性面であるa面((11−20)面)からなる主表面上に形成されている。
また、第2実施形態では、図13に示すように、半導体レーザ素子部60には、半導体レーザ素子層3の光反射面60bと対向する領域に、空隙部62を隔てて反射部61が形成されている。そして、反射部61には、半導体レーザ素子層3の光反射面60bに対して角度θ3(=約58°)傾斜した方向に延びる反射面61aが形成されている。また、反射面61aは、半導体レーザ素子層3の形成時の結晶成長に伴う(11−22)面からなるファセット(成長面)により形成されている。これにより、窒化物系半導体レーザ素子90では、図13に示すように、発光層6の光出射面60aからA1方向にレーザ光90aが出射される一方、発光層6の光反射面60bからA2方向に出射されたレーザ光90bが、反射面61aによって出射方向を略C2方向(光反射面60bに対して角度θ4(=約26°)傾斜した方向)に変化させてPD100に入射されるように構成されている。
また、図13に示すように、n型コンタクト層4の下面上には、n型コンタクト層4から近い順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とからなるn側電極11が形成されている。このn側電極11は、空隙部62を跨ぐとともに窒化物系半導体レーザ素子90のA方向の両側部まで延びるように形成されている。
次に、図13〜図18を参照して、第2実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
ここで、第2実施形態では、図14に示すように、上記第1実施形態における窒化物系半導体レーザ素子50の製造プロセスと異なり、n型GaN基板71のa面((11−20)面)からなる主表面に、エッチング技術を用いて、[0001]方向(A方向)に約10μmの幅W1を有するとともに、約2μmの深さを有し、[−1100]方向(B方向)に延びる溝部80を形成する。また、溝部80は、A方向に、約1600μm(=W1+L2)周期でストライプ状に形成する。また、その際、溝部80には、n型GaN基板71の(11−20)面に対して略垂直な(000−1)面からなる内側面80aと、n型GaN基板71の(11−20)面に対して略垂直な(0001)面からなる内側面80bとが形成される。なお、内側面80aおよび80bは、それぞれ、本発明の「凹部の一方の内側面」および「凹部の他方の内側面」の一例である。
そして、図15に示すように、第1実施形態と同様の製造プロセスによってn型GaN基板71上に、剥離層32、n型コンタクト層4、n型クラッド層5、発光層6、p型クラッド層7およびp型コンタクト層8を順次積層することにより、半導体レーザ素子層3を形成する。
この際、第2実施形態では、図15に示すように、溝部80の(000−1)面からなる内側面80aにおいて、半導体レーザ素子層3は、溝部80の(000−1)面を引き継ぐように[11−20]方向(C2方向)に延びる(000−1)面を形成しながら結晶成長する。これにより、半導体レーザ素子層3の(000−1)面が、半導体レーザ素子部60における一対の共振器端面のうちの光反射面60bとして形成される。また、溝部80の(000−1)面に対向する(0001)面(内側面80b)側では、半導体レーザ素子層3は、内側面80bを起点として光反射面60bに対して角度θ3(=約58°)傾斜した方向に延びる(11−22)面からなる反射面61a(ファセット)を形成しながら結晶成長する。
そして、第1実施形態と同様の製造プロセスにより、半導体レーザ素子層3上に電流ブロック層9およびp側電極10を形成する。その後、図16に示すように、PD100が固定された支持基板30を、AuSnからなる接合層31を介して半導体レーザ素子層3のp側電極10側に接合する。その後、n型GaN基板71の下面側から剥離層32に向かってC2方向にレーザ照射を行うことにより、n型GaN基板71を半導体レーザ素子層3から剥離する。
その後、図17に示すように、n型コンタクト層4の下面上の所定領域に、真空蒸着法を用いてn側電極11を形成する。そして、図17に示すように、n側電極11の裏面側の所定の位置にレーザスクライブまたは機械式スクライブにより、半導体レーザ素子層3の[0001]方向(図13のA1方向)と直交する[−1100]方向(図13のB方向)に延びるように直線状のスクライブ溝81を形成する。この状態で、図18に示すように、支持基板30の下面側(下側)が開くように支持基板30の上面側を支点として荷重を印加することにより、ウェハをスクライブ溝81の位置(劈開線600)で劈開する。これにより、半導体レーザ素子層3の(0001)面が、半導体レーザ素子部60における一対の共振器端面のうちの光出射面60aとして形成される。
この後、共振器方向(A方向)に沿って素子を分割してチップ化することによって、図13に示した第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子90が形成される。
第2実施形態では、上記のように、共振器面(半導体レーザ素子部60の光反射面60b)に対して角度θ3(=約58°)傾斜して延びるとともに発光層6の主表面((11−20)面)と交差する(11−22)面からなる反射面61aを含む半導体レーザ素子層3(反射部61)を備えることによって、上記の面方位を有する反射面61a(ファセット)は平坦性を有するので、光反射面60bから出射されたレーザ光90bは、エッチングなどより微細な凹凸形状が形成された端面で散乱を起こしながら反射される場合と異なり、上記の面方位を有する反射面61aで散乱を起こすことなく一様に出射方向を変化させて出射される。この結果、窒化物系半導体レーザ素子90の発光効率が低下するのを抑制することができる。また、結晶成長面として良好な平坦性を有する反射面61aにより光の散乱が抑制されたレーザ光90b(半導体レーザ素子部60のレーザ光強度をモニタするサンプル光)をPD100に導くことができるので、レーザ光強度をより正確に測定することができる。
また、第2実施形態においても、反射面61aを半導体レーザ素子層3の結晶成長面である(11−22)面からなるように構成することによって、(11−22)面からなる反射面61aを、発光層6などが形成される半導体レーザ素子層3の結晶成長と同時に形成することができる。
また、第2実施形態では、製造プロセスの際に、成長用基板として用いるn型GaN基板71上に、主表面が(11−20)面からなる半導体レーザ素子層3(発光層6)を形成することによって、半導体レーザ素子層3(発光層6)に発生するピエゾ電場を低減することができる。これにより、レーザ光の発光効率を向上させることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、半導体レーザ素子層3を、AlGaNやInGaNなどの窒化物系半導体層により形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体レーザ素子層3を、AlN、InN、BN、TlNおよびこれらの混晶からなるウルツ構造の窒化物系半導体層により形成してもよい。
また、上記実施形態では、成長用基板としてGaNからなるn型GaN基板を用いるとともに、n型GaN基板上にAlGaNからなる下地層を形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、基板としてInGaN基板を用いるとともに、InGaN基板上にGaNまたはAlGaNからなる下地層を形成してもよい。
また、上記実施形態では、成長用基板としてGaN基板を使用した例について示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、a面((11−20)面)を主表面とする窒化物系半導体を予め成長させたr面((1−102)面)サファイア基板や、a面またはm面((1−100)面)を主表面とする窒化物系半導体を予め成長させたa面SiC基板またはm面SiC基板などを使用してもよい。また、m面を主表面とする窒化物系半導体を予め成長させたLiAlO2やLiGaO2基板などの(100)面基板などを用いてもよい。
また、上記第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスでは、n型GaN基板1と下地層2との格子定数差を利用して下地層2に自発的にクラック40が形成されるのを利用した例について示したが、本発明はこれに限らず、下地層2のB方向(図5参照)の両端部(n型GaN基板1のB方向の端部に対応する領域)にのみスクライブ傷を形成してもよい。このように構成しても、両端部のスクライブ傷を起点としてB方向に延びるクラックを導入することができる。
また、上記第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスでは、n型GaN基板1と下地層2との格子定数差を利用して下地層2に自発的にクラック40が形成されるのを利用した例について示したが、本発明はこれに限らず、n型GaN基板1上の下地層2にB方向(図6参照)に延びる破線状のスクライブ傷を形成することによって発生位置が制御されたクラックを形成するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、成長用基板のm面((1−100)面)およびa面((11−20)面)からなる主表面上に窒化物系半導体層を成長させて、一方の共振器面(光出射面)と、レーザ光を外部に反射させる反射面とを形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、下記に例示する面方位からなる主表面を有する成長用基板を用いて窒化物系半導体層を成長させてもよい。
たとえば、(1−10−4)面からなる主表面を有する成長用基板を用いてもよい。この場合、窒化物系半導体層の光出射側の共振器面(光出射面)およびレーザ光を外部に反射させる反射面は、それぞれ、(1−101)面および(000−1)面からなるように構成される。また、反射面((000−1)面)は、光出射面((1−101)面)に対して約65°傾斜した方向に延びるように形成される。なお、光反射側の共振器面(光反射面)については、上記実施形態の製造プロセスと同様に、半導体層の劈開により(−110−1)面からなる光反射面が形成される。
また、(11−2−5)面からなる主表面を有する成長用基板を用いてもよい。この場合、窒化物系半導体層の光出射側の共振器面およびレーザ光を外部に反射させる反射面は、それぞれ、(11−22)面および(000−1)面からなるように構成される。また、反射面((000−1)面)は、光出射面((11−22)面)に対して約57°傾斜した方向に延びるように形成される。なお、光反射側の共振器面(光反射面)については、上記実施形態の製造プロセスと異なり、半導体層のエッチングにより(−1−12−2)面からなる光反射面が形成される。その後、レーザスクライブなどにより支持基板を劈開してチップ化される。
また、(1−10−2)面からなる主表面を有する成長用基板を用いてもよい。この場合、レーザ光を外部に反射させる反射面は(000−1)面からなるように構成される。また、反射面((000−1)面)は、成長用基板の主表面と垂直な方向([1−10−2]方向)に対して約47°傾斜した方向に延びるように形成される。したがって、レーザ光を半導体層の主表面と略垂直な方向([1−10−2]方向)に出射させることができる。なお、共振器面(光出射面および光反射面)については、上記実施形態の製造プロセスと異なり、半導体層のエッチングにより[1−10−2]方向に延びる端面として形成される。その後、レーザスクライブなどにより支持基板を劈開してチップ化される。
また、(11−2−3)面からなる主表面を有する成長用基板を用いてもよい。この場合も、レーザ光を外部に反射させる反射面は(000−1)面からなるように構成される。また、反射面((000−1)面)は、成長用基板の主表面と垂直な方向([11−2−3]方向)に対して約43°傾斜した方向に延びるように形成される。したがって、レーザ光を半導体層の主表面と略垂直な方向([11−2−3]方向)に出射させることができる。なお、共振器面(光出射面および光反射面)については、上記実施形態の製造プロセスと異なり、半導体層のエッチングにより[11−2−3]方向に延びる端面として形成される。その後、レーザスクライブなどにより支持基板を劈開してチップ化される。
また、上記実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、利得導波型のオキサイドストライプ構造を有する窒化物系半導体レーザ素子を形成する例について示したが、本発明はこれに限らず、リッジ部をSiO2またはAlGaNなどからなる電流ブロック層で埋め込んだ屈折率導波型のリッジ導波構造を有する窒化物系半導体レーザ素子を形成してもよい。
1 n型GaN基板(成長用基板、下地基板)
2 下地層
3 半導体レーザ素子層(窒化物系半導体層)
4 n型バッファ層、n型コンタクト層(窒化物系半導体層)
5 n型クラッド層(窒化物系半導体層)
6 発光層(窒化物系半導体層、活性層)
7 p型クラッド層(窒化物系半導体層)
8 p型コンタクト層(窒化物系半導体層)
20a、60a 光出射面(共振器面)
20b、60b 光反射面(共振器面)
21a、61a 反射面
40 クラック
40a、80a 内側面(凹部の一方の内側面)
40b、80b 内側面(凹部の他方の内側面)
71 n型GaN基板(成長用基板)
80 溝部(凹部)
2 下地層
3 半導体レーザ素子層(窒化物系半導体層)
4 n型バッファ層、n型コンタクト層(窒化物系半導体層)
5 n型クラッド層(窒化物系半導体層)
6 発光層(窒化物系半導体層、活性層)
7 p型クラッド層(窒化物系半導体層)
8 p型コンタクト層(窒化物系半導体層)
20a、60a 光出射面(共振器面)
20b、60b 光反射面(共振器面)
21a、61a 反射面
40 クラック
40a、80a 内側面(凹部の一方の内側面)
40b、80b 内側面(凹部の他方の内側面)
71 n型GaN基板(成長用基板)
80 溝部(凹部)
Claims (8)
- 共振器面と、{A+B、A、−2A−B、L}面(AおよびBの少なくともいずれか一方が0ではない整数)からなる主表面を有する活性層と、前記共振器面に対して所定の角度傾斜して延びるとともに前記活性層の主表面と交差する(000−1)面、または、{A+B、A、−2A−B、2A+B}面(ここでA≧0およびB≧0であり、かつ、AおよびBの少なくともいずれか一方が0ではない整数)からなる反射面とを含む窒化物系半導体層と、
前記窒化物系半導体層に接合される支持基板とを備え、
前記反射面は、前記活性層で発生したレーザ光を反射する、窒化物系半導体レーザ素子。 - 前記窒化物系半導体層と前記支持基板とは、接合層を介して接合されている、請求項1に記載の窒化物系半導体レーザ素子。
- 前記反射面は、前記窒化物系半導体層の結晶成長面からなる、請求項1または2に記載の窒化物系半導体レーザ素子。
- 成長用基板の主表面上に、共振器面と、{A+B、A、−2A−B、L}面(AおよびBの少なくともいずれか一方が0ではない整数)からなる主表面を有する活性層と、前記共振器面に対して所定の角度傾斜して延びるとともに前記活性層の主表面と交差する(000−1)面、または、{A+B、A、−2A−B、2A+B}面(ここでA≧0およびB≧0であり、かつ、AおよびBの少なくともいずれか一方が0ではない整数)からなる反射面とを含む窒化物系半導体層を成長させる工程と、
前記窒化物系半導体層に支持基板を接合する工程とを備える、窒化物系半導体レーザ素子の製造方法。 - 前記窒化物系半導体層に支持基板を接合する工程の後に、前記成長用基板を除去する工程をさらに備える、請求項4に記載の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法。
- 前記窒化物系半導体層を成長させる工程に先立って、前記成長用基板の主表面に凹部を形成する工程をさらに備え、
前記窒化物系半導体層を成長させる工程は、前記成長用基板の前記凹部の一方の内側面を起点とした前記共振器面と、前記共振器面と対向する領域に前記凹部の他方の内側面を起点とした前記反射面とを成長させる工程を含む、請求項4または5に記載の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法。 - 前記成長用基板は、窒化物系半導体からなる、請求項4〜6のいずれか1項に記載の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法。
- 前記成長用基板は、下地基板と、前記下地基板上に形成され、AlGaNからなる下地層とを含み、
前記下地基板および前記下地層の格子定数を、それぞれ、c1およびc2とした場合、c1>c2の関係を有し、
前記共振器面および前記反射面は、それぞれ、前記下地層の(0001)面と前記下地基板の主表面とに実質的に平行に延びるように形成されたクラックの内側面を起点として形成される、請求項4〜7のいずれか1項に記載の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法。
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