しかしながら、上記特許文献1に記載された防熱板においては、主として家庭のキッチン等に設置されるものであることから、表板と裏板を構成する金属としてステンレスを使用する必要があり、このようなステンレス板は高価なものであることから、表板と裏板とに2枚のステンレス板を使用することによって、防熱板が非常に高価なものになってしまうという問題点があった。
そこで、本発明は、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板を提供することを課題とする。
請求項1の発明に係る防熱板は、含水ケイ酸マグネシウム化合物70重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜20重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するケイ酸マグネシウム板からなる裏板と、ステンレス板からなる表板とを具備するものである。
ここで、「含水ケイ酸マグネシウム化合物」としては、天然鉱物であるセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、アタパルジャイト(含水ケイ酸マグネシウムアルミニウム)、タルク(滑石、含水ケイ酸マグネシウム)等があり、またこれらの含水ケイ酸マグネシウム化合物の合成物をも含む。
また、「ガラス繊維」としては、長さ1mm〜3mmの短いものも、長さ4mm〜6mmの長いものも用いることができ、ガラスの材質としてはホウケイ酸ガラス等を用いることができる。更に、「バインダー」としてはアクリル系樹脂・塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂・フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。そして、上記組成からなるケイ酸マグネシウム板は、熱伝導率が0.1W/mK〜0.4W/mKの範囲内となる。
更に、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とを接合する方法としては、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とを耐熱性接着剤(熱硬化性樹脂等)で接着しても良いし、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とをネジ止めしても良い。また、後述するように、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板との間に複数個の表板側リブを、更にスペーサーを、挟んで接合することもできる。
請求項2の発明に係る防熱板は、請求項1の構成において、前記ケイ酸マグネシウム板が含水ケイ酸マグネシウム化合物75重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜15重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するものである。かかる組成からなるケイ酸マグネシウム板は、熱伝導率が0.1W/mK〜0.3W/mKの範囲内となる。
請求項3の発明に係る防熱板は、請求項1または請求項2の構成において、前記ケイ酸マグネシウム板が前記バインダーとしてアクリル系樹脂2重量%〜4重量%及びエポキシ系樹脂1重量%〜3重量%を含有するものである。
請求項4の発明に係る防熱板は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記ケイ酸マグネシウム板の厚さが1mm〜3mmの範囲内であり、前記ステンレス板の厚さが0.3mm〜1.0mmの範囲内であるものである。
請求項5の発明に係る防熱板は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記ケイ酸マグネシウム板と前記ステンレス板とを複数個の裏板側リブを介して施工壁にネジ止めすることによって前記ケイ酸マグネシウム板と前記施工壁との間に3mm〜20mmの範囲内の隙間を形成するものである。
ここで、「複数個の裏板側リブを介して」とは、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とを複数個の裏板側リブにネジ止めして、更に複数個の裏板側リブを施工壁にネジ止めしても良いし、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板と複数個の裏板側リブを貫通して、施工壁にネジ止めしても良いことを意味する。
請求項6の発明に係る防熱板は、請求項5の構成において、前記ケイ酸マグネシウム板の前記ステンレス板と反対側の面に金属箔を貼り付けたものである。ここで、「金属箔」としては、アルミニウム箔、銅箔、真鍮箔、ステンレス箔等があり、厚さが30μm〜100μmのものが特に好ましい。
請求項7の発明に係る防熱板は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記ケイ酸マグネシウム板と前記ステンレス板との間に複数個の表板側リブを挟むことによって前記ケイ酸マグネシウム板と前記ステンレス板との間に3mm〜20mmの範囲内の隙間を形成したものである。
ここで、「複数個の表板側リブを挟む」方法としては、ステンレス板と複数個の表板側リブを耐熱性接着剤(熱硬化性樹脂等)で接着して、更に複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とを耐熱性接着剤で接着しても良いし、ステンレス板と複数個の表板側リブをネジ止めして、更に複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とをネジ止めしても良い。
また、ステンレス板と複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とを一度にネジ止めしても良いし、上述した複数個の裏板側リブを用いる場合には、ステンレス板と複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とを、一度に複数個の裏板側リブにネジ止めしても良い。更に、上述した複数個の裏板側リブを用いない場合には、ステンレス板と複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とを貫通して、施工壁にネジ止めしても良い。
請求項8の発明に係る防熱板は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記ケイ酸マグネシウム板と前記ステンレス板との間または前記ステンレス板と前記複数個の表板側リブとの間にスペーサーとして前記ケイ酸マグネシウム板を挟むことによって前記ケイ酸マグネシウム板と前記ステンレス板との間に1mm〜25mmの範囲内の隙間を形成したものである。
ここで、「スペーサーとしてケイ酸マグネシウム板を挟む」方法としては、ステンレス板とスペーサーとしてのケイ酸マグネシウム板を耐熱性接着剤(熱硬化性樹脂等)で接着して、更にスペーサーとケイ酸マグネシウム板若しくはアルミニウム箔または複数個の表板側リブとを耐熱性接着剤で接着しても良いし、ステンレス板とスペーサーとケイ酸マグネシウム板または複数個の表板側リブとをネジ止めしても良い。
請求項9の発明に係る防熱板は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つの構成において、前記ケイ酸マグネシウム板の材料である前記含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径が10μm〜25μmの範囲内であるものである。
請求項10の発明に係る防熱板は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記ケイ酸マグネシウム板の材料である前記含水ケイ酸マグネシウム化合物がセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)であるものである。
請求項1の発明に係る防熱板は、含水ケイ酸マグネシウム化合物70重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜20重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するケイ酸マグネシウム板からなる裏板と、ステンレス板からなる表板とを具備する。
ここで、「含水ケイ酸マグネシウム化合物」としては、天然鉱物であるセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、アタパルジャイト(含水ケイ酸マグネシウムアルミニウム)、タルク(滑石、含水ケイ酸マグネシウム)等があり、またこれらの含水ケイ酸マグネシウム化合物の合成物をも含む。
また、「ガラス繊維」としては、長さ1mm〜3mmの短いものも、長さ4mm〜6mmの長いものも用いることができ、ガラスの材質としてはホウケイ酸ガラス等を用いることができる。更に、「バインダー」としてはアクリル系樹脂・塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂・フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。そして、上記組成からなるケイ酸マグネシウム板は、熱伝導率が0.1W/mK〜0.4W/mKの範囲内となる。
更に、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とを接合する方法としては、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とを耐熱性接着剤(熱硬化性樹脂等)で接着しても良いし、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とをネジ止めしても良い。また、後述するように、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板との間に複数個の表板側リブを、更にスペーサーを、挟んで接合することもできる。
本発明者らは、鋭意実験研究の結果、断熱材としてのケイ酸マグネシウム板として、含水ケイ酸マグネシウム化合物70重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜20重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するものが、断熱性及び防炎性に優れており、また不燃材料の条件をも満たすことを見出した。
すなわち、上記組成からなるケイ酸マグネシウム板は、不燃材料の発熱性試験において20分の加熱により600℃近くになっても、総発熱量は僅かに0.8MJ/m2(総発熱量の合格値は8.0MJ/m2以下)であり、しかも僅か1.0mmの厚さで亀裂もなく形状を保持し、不燃材料として合格した。また、ケイ酸マグネシウム板の熱伝導率は、0.1W/mK〜0.4W/mKの範囲内であり、断熱性にも優れたものであった。
そこで、本発明者らは、ステンレス板の裏側にケイ酸マグネシウム板の裏板を取り付けることによって、低コストで熱伝導性の小さい(熱伝導率:0.1W/mK〜0.4W/mK)ケイ酸マグネシウム板によって熱伝導を遮断して、ガスコンロ等の熱源に近接した壁面等の温度上昇を安価に抑えることができる防熱板を作製することに思い至った。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項2の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板が含水ケイ酸マグネシウム化合物75重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜15重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有する。かかる組成からなるケイ酸マグネシウム板は、熱伝導率が0.1W/mK〜0.3W/mKの範囲内となる。
本発明者らは、更に鋭意実験研究の結果、断熱材としてのケイ酸マグネシウム板として、請求項1に記載の構成の中でも、含水ケイ酸マグネシウム化合物75重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜15重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するものが、より断熱性及び防炎性に優れており(熱伝導率:0.1W/mK〜0.3W/mK)、また不燃材料の条件をも満たすことを見出した。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項3の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板がバインダーとしてアクリル系樹脂2重量%〜4重量%及びエポキシ系樹脂1重量%〜3重量%を含有する。
本発明者らは、本発明に係る防熱板の裏板を構成するケイ酸マグネシウム板に用いられるバインダーについて、鋭意実験研究を重ねた結果、バインダーとしてアクリル系樹脂2重量%〜4重量%及びエポキシ系樹脂1重量%〜3重量%を含有する場合に、より確実に断熱性と低コストを両立できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項4の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板の厚さが1mm〜3mmの範囲内であり、ステンレス板の厚さが0.3mm〜1.0mmの範囲内である。
本発明者らは、本発明に係る防熱板の裏板を構成するケイ酸マグネシウム板の厚さと、表板を構成するステンレス板の厚さについて、鋭意実験研究を重ねた結果、ケイ酸マグネシウム板の厚さが1mm〜3mmの範囲内であり、ステンレス板の厚さが0.3mm〜1.0mmの範囲内である場合に、より確実に断熱性と低コストを両立できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
すなわち、ケイ酸マグネシウム板の厚さが1mm未満であると薄過ぎて十分な断熱性を得ることができない場合があり、ケイ酸マグネシウム板の厚さが3mmを超えると厚過ぎて十分に低コスト化できない可能性が出てくる。また、ステンレス板の厚さが0.3mm未満であると薄過ぎて十分な機械的強度を得ることができない場合があり、ステンレス板の厚さが1.0mmを超えると厚過ぎて十分に低コスト化できない可能性が出てくる。したがって、ケイ酸マグネシウム板の厚さは1mm〜3mmの範囲内で、ステンレス板の厚さが0.3mm〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、より確実に大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項5の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とを複数個の裏板側リブを介して施工壁にネジ止めすることによってケイ酸マグネシウム板と施工壁との間に3mm〜20mmの範囲内の隙間を形成する。
ここで、「複数個の裏板側リブを介して」とは、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とを複数個の裏板側リブにネジ止めして、更に複数個の裏板側リブを施工壁にネジ止めしても良いし、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板と複数個の裏板側リブを貫通して、施工壁にネジ止めしても良いことを意味する。
このように、ケイ酸マグネシウム板からなる裏板と施工壁との間に3mm〜20mmの範囲内の隙間を形成することによって、裏板と施工壁との間に空気層が形成されて施工壁の壁面に更に熱が伝わり難くなり、空気層内の暖められた空気は開放された上端から逃がされるため、コストアップすることなく防熱板としての性能が向上する。また、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板とをネジ止めで接合することによって、有機系の接着剤(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、等)を使用する必要がなくなるため、防熱板のコンロ側からより高い熱を受けても耐えられるようになり、防熱板とコンロとの隙間をより小さくすることができる。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項6の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板のステンレス板と反対側の面に金属箔を貼り付けている。ここで、「金属箔」としては、アルミニウム箔、銅箔、真鍮箔、ステンレス箔等があり、厚さが30μm〜100μmのものが特に好ましい。
断熱性に優れたケイ酸マグネシウム板によって、ステンレス板からの熱が施工壁に伝わることが防止されるが、長時間ステンレス板が加熱されると、ケイ酸マグネシウム板に熱が蓄積されてケイ酸マグネシウム板の温度が上昇し、施工壁が若干温められる現象が生ずる場合がある。このような場合においても、ケイ酸マグネシウム板の裏面すなわちステンレス板と反対側の面に金属箔を貼り付けることによって、ケイ酸マグネシウム板に蓄積された熱が金属箔に吸収されて空気中に放出される。
ここで、ケイ酸マグネシウム板の裏面と施工壁との間には3mm〜20mmの範囲内の隙間が形成されているため、金属箔に吸収された熱は施工壁に伝わることはなく、前述した隙間から放出される。これによって、長時間ステンレス板が加熱された場合においても、施工壁の温度をより低く保つことができる。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項7の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板との間に複数個の表板側リブを挟むことによってケイ酸マグネシウム板とステンレス板との間に3mm〜20mmの範囲内の隙間を形成している。
ここで、「複数個の表板側リブを挟む」方法としては、ステンレス板と複数個の表板側リブを耐熱性接着剤(熱硬化性樹脂等)で接着して、更に複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とを耐熱性接着剤で接着しても良いし、ステンレス板と複数個の表板側リブをネジ止めして、更に複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とをネジ止めしても良い。
また、ステンレス板と複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とを一度にネジ止めしても良いし、上述した複数個の裏板側リブを用いる場合には、ステンレス板と複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とを、一度に複数個の裏板側リブにネジ止めしても良い。更に、上述した複数個の裏板側リブを用いない場合には、ステンレス板と複数個の表板側リブとケイ酸マグネシウム板とを貫通して、施工壁にネジ止めしても良い。
このように、ステンレス板からなる表板とケイ酸マグネシウム板からなる裏板との間に3mm〜20mmの範囲内の隙間を形成することによって、表板と裏板との間に空気層が形成されて施工壁の壁面に更に熱が伝わり難くなり、空気層内の暖められた空気は開放された上端から逃がされるため、コストアップすることなく防熱板としての性能が向上する。また、このような構成とした場合には、ケイ酸マグネシウム板のステンレス板側の面に金属箔を貼り付けることもでき、これによって、ケイ酸マグネシウム板に蓄積された熱が金属箔に吸収されて空気中に放出され、長時間ステンレス板が加熱された場合においても、施工壁の温度をより低く保つことができる。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項8の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板とステンレス板との間またはステンレス板と複数個の表板側リブとの間にスペーサーとしてケイ酸マグネシウム板を挟むことによってケイ酸マグネシウム板とステンレス板との間に1mm〜25mmの範囲内の隙間を形成している。
ここで、「スペーサーとしてケイ酸マグネシウム板を挟む」方法としては、ステンレス板とスペーサーとしてのケイ酸マグネシウム板を耐熱性接着剤(熱硬化性樹脂等)で接着して、更にスペーサーとケイ酸マグネシウム板または複数個の表板側リブとを耐熱性接着剤で接着しても良いし、ステンレス板とスペーサーとケイ酸マグネシウム板または複数個の表板側リブとをネジ止めしても良い。
このように、ステンレス板とケイ酸マグネシウム板または複数個の表板側リブとの間にスペーサーとしてそれぞれケイ酸マグネシウム板を挟むことによって、ステンレス板とケイ酸マグネシウム板または複数個の表板側用リブとの間が断熱されて、コストアップすることなく防熱板としての性能が向上する。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項9の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板の材料である含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径が10μm〜25μmの範囲内、より好ましくは平均粒径が12μm〜18μmの範囲内である。
ここで、「平均粒径」は、ベックマンコールター社製レーザー粒度測定器LS13−320型を用いてエタノール分散で測定した値である。本発明者らは、鋭意実験研究の結果、含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径が10μm〜25μmの範囲内である場合に、防熱板を構成するケイ酸マグネシウム板がより断熱性及び防炎性に優れていることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
更に、本発明者らは、鋭意実験研究の結果、含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径が12μm〜18μmの範囲内である場合に、防熱板を構成するケイ酸マグネシウム板がより断熱性及び防炎性に優れているとともに、含水ケイ酸マグネシウム化合物を含むスラリーの粘度が適切な値となり、抄造工程がよりスムーズに行えるため製造が容易となり、より好ましいことを見出した。したがって、含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径は10μm〜25μmの範囲内であることが好ましく、12μm〜18μmの範囲内であることが、より好ましい。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
請求項10の発明に係る防熱板においては、ケイ酸マグネシウム板の材料である含水ケイ酸マグネシウム化合物がセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)である。
セピオライトは、含水ケイ酸マグネシウム化合物の中でも、吸着性・揺変性・固結性を有し、断熱性と耐水性を兼ね備えたケイ酸マグネシウム板を抄造することができる無機化合物である。そこで、ケイ酸マグネシウム板の材料である含水ケイ酸マグネシウム化合物として、セピオライトを用いることによって、より優れた断熱性と耐水性を得ることができる。
このようにして、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板を開発して、このケイ酸マグネシウム板をステンレス板の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さとを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる防熱板となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味し、実施の形態相互の同一の記号及び同一の符号は、それら実施の形態に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1に係る防熱板について、図1乃至図4を参照して説明する。
図1(a)は本発明の実施の形態1に係る防熱板の積層構造を示す部分断面図、(b)は本発明の実施の形態1の変形例に係る防熱板の積層構造を示す部分断面図である。図2(a),(b)は本発明の実施の形態1に係る防熱板の防熱性試験の試験方法を示す説明図である。図3(a),(b),(c)は本発明の実施の形態1に係る防熱板の防熱性試験の結果を示すグラフである。図4は本発明の実施の形態1に係る防熱板を構成するケイ酸マグネシウム板の製造工程を示すフローチャートである。
まず、本実施の形態1に係る防熱板の積層構造について、図1(a)を参照して説明する。
図1(a)に示されるように、本実施の形態1に係る防熱板1は、熱源側に位置する表板としてのステンレス板2と、裏板としてのケイ酸マグネシウム板3とを積層させて構成される。本実施の形態1に係る防熱板1においては、ステンレス板2の厚さは0.5mmであり、ケイ酸マグネシウム板3の厚さは1.0mmまたは2.5mmである。そして、ケイ酸マグネシウム板3は、含水ケイ酸マグネシウム化合物70重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜20重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するものである。
より詳しくは、本実施の形態1に係る防熱板1を構成するケイ酸マグネシウム板3は、含水ケイ酸マグネシウム化合物としてのセピオライト80重量%・パルプ10重量%・ガラス繊維5重量%、及びバインダーとしてのアクリル系樹脂3重量%とエポキシ系樹脂2重量%を含有するものである。
このケイ酸マグネシウム板3は、不燃材料の発熱性試験において20分の加熱により600℃近くになっても、総発熱量は僅かに0.8MJ/m2(総発熱量の合格値は8.0MJ/m2以下)であり、しかも僅か1.0mmの厚さで亀裂もなく形状を保持し、不燃材料として合格した。また、熱伝導率を測定したところ、0.11W/mKと極めて小さいものであった。
したがって、ステンレス板2の裏側にケイ酸マグネシウム板3の裏板を取り付けることによって、低コストで製造することができ、かつ、熱伝導性の小さい(熱伝導率:0.11W/mK)ケイ酸マグネシウム板3によって熱伝導を遮断して、ガスコンロ等の熱源に近接した壁面等の温度上昇を安価に抑えることができる防熱板1となる。
次に、本実施の形態1の変形例に係る防熱板6の積層構造について、図1(b)を参照して説明する。
図1(b)に示されるように、本実施の形態1の変形例に係る防熱板6は、熱源側に位置する表板としてのステンレス板2と、裏板としてのケイ酸マグネシウム板3とを積層させて、更にケイ酸マグネシウム板3と施工壁5との間に、金属製の裏板側リブ4として図1(b)に示される断面形状を有し、上下方向(紙面に垂直な方向)に伸びる複数個の鋼板製の裏板側リブ4を取り付けたものである。本実施の形態1の変形例に係る防熱板6においても、ステンレス板2の厚さは0.5mmであり、ケイ酸マグネシウム板3の厚さは1.0mmまたは2.5mmである。
そして、図1(b)に示されるように、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3とをビス7によって裏板側リブ4にネジ止めし、裏板側リブ4を木ネジ8によって施工壁5にネジ止めすることによって、ケイ酸マグネシウム板3とステンレス板2とを上下方向に伸びる複数個の裏板側リブ4を介して施工壁5にネジ止めしている。これによってケイ酸マグネシウム板3と施工壁5との間に隙間が形成され、その隙間の厚さは裏板側リブ4の高さと同じ5mmである。
このように、ケイ酸マグネシウム板3からなる裏板と施工壁5との間に5mmの隙間を形成することによって、裏板3と施工壁5との間に空気層が形成されて施工壁5の壁面に更に熱が伝わり難くなり、複数個の裏板側リブ4は上下方向に伸びるものであることから、空気層内の暖められた空気は開放された上端から逃がされるため、コストアップすることなく防熱板6としての性能が向上する。
また、ケイ酸マグネシウム板3とステンレス板2とをネジ止めで接合することによって、有機系の接着剤(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、等)を使用する必要がなくなるため、防熱板6のコンロ側からより高い熱を受けても耐えられるようになり、防熱板6とコンロとの隙間をより小さくすることができるという作用効果が得られる。
以上のような構成を有する本実施の形態1に係る防熱板1,6のうち、最も簡単な構成を有する防熱板1について、その防熱性能を実験によって評価した。防熱板1の防熱性試験の試験方法について、図2を参照して説明する。
図2(a),(b)に示されるように、家庭用ガスコンロ12に近接して、本実施の形態1に係る防熱板1を、2本の支持柱11で支持することによって略垂直に立設した。ここで、防熱板1を構成する表板としてのステンレス板2と、裏板としてのケイ酸マグネシウム板3とは、ネジ止めすることを想定して、接着剤を用いずに図示しないクリップによって仮止めして固定した。
ここで、家庭用ガスコンロ12の上板13と表板としてのステンレス板2との間隔tは、t=80mmとした。そして、裏板としてのケイ酸マグネシウム板3の裏側の高さの異なる三箇所に、測熱センサとしての熱電対9A,9B,9Cを、それぞれ耐熱テープ10で貼り付けた。
このような構成の試験装置において、図2(b)に示されるように、家庭用ガスコンロ12の上板13の上に水を入れた鍋14を置いて、家庭用ガスコンロ12を点火して水を入れた鍋14を加熱して、熱電対9A,9B,9Cで測定される温度の変化を、ステンレス板2のみの場合、ケイ酸マグネシウム板3の厚さを1.0mmとした場合、ケイ酸マグネシウム板3の厚さを2.5mmとした場合のそれぞれについて評価した。
ステンレス板2のみの場合には、ステンレス板2の裏側の同じ高さに、熱電対9A,9B,9Cをそれぞれ貼り付けた。ステンレス板2のみの場合、ケイ酸マグネシウム板3の厚さが1.0mmの場合、2.5mmの場合のそれぞれについての、家庭用ガスコンロ12を点火してからの時間に対する熱電対9A,9B,9Cで測定される温度の変化をグラフにしたものを、図3(a),(b),(c)に示す。
図3(a),(b),(c)に示されるように、どの場合においても、ステンレス板2またはケイ酸マグネシウム板3の裏側の最上部に取り付けた熱電対9Aによる温度が最も低く、最下部に取り付けた熱電対9Cによる温度が最も高く推移している。これは、家庭用ガスコンロ12の上板13の上に鍋14を置いたことによって、家庭用ガスコンロ12の炎の先端がステンレス板2の下部に接近するためと考えられる。
図3(a)に示されるように、防熱板として厚さ0.5mmのステンレス板2のみを用いた場合には、熱電対9B,9Cで測定される温度が120℃を超えており、消防法で定められる防熱板の基準を満たしていない。これに対して、図3(b),(c)に示されるように、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3とから構成される防熱板1の場合には、最も高温となる熱電対9Cで測定される温度が、80℃以下に抑えられており、消防法で定められる防熱板の基準を満たすことが明らかになった。
このように、最も簡単な構成を有する本実施の形態1に係る防熱板1について、防熱性試験において消防法で定められる防熱板の基準を満たすことから、より防熱性に優れる本実施の形態1の変形例に係る防熱板6については、更に好ましい結果が得られることが、容易に推認できる。防熱板1の厚さは5mm未満であり、防熱板6の厚さは10mm未満であることから、ガスコンロと施工壁5との間隙が10mm以下と小さい場合にも設置することができ、このようにガスコンロが極めて近接している場合でも、本実施の形態1に係る防熱板1,6においては、防熱板としての役割を果たすことができる。
ここで、本実施の形態1に係る防熱板1,6に用いられるケイ酸マグネシウム板3の製造方法について、図4を参照して説明する。
本実施の形態1に係るケイ酸マグネシウム板3の製造方法においては、まず原料混合工程S10において、含水マグネシウムケイ酸塩(セピオライト)繊維及び補強用の無機繊維としてのガラス繊維をパルパー等の解繊機に入れて、攪拌によって解繊し、繊維の分散性を向上させた。また、有機増量材としての木材パルプを叩解機に入れて叩解した。そして、解繊されたセピオライト及びガラス繊維、叩解された木材パルプを混合タンクに入れて混合した。ここで、更にエポキシ樹脂・フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂が混合される。
この原料混合工程S10において作製された混合液は、抄造に適した凝集処理を行うため、凝集工程S11において固結・凝集用のバインダーが添加されてスラリーが作製された。固結・凝集用のバインダーとしては、紙力を増加するためのPAA(ポリアクリルアミド)、凝集性・耐水性を付与するためのEPA(ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン)、凝集用のAA(アクリルアミドアクリル酸共重合体)、及び凝集用のDMAEM(ジメチルアミノエチルメタクリレート)を添加した。
固結・凝集用のバインダーを添加した混合液は、集束化反応装置によって集束化し、このときのスラリーの濃度は、約0.5%に調整した。そして、均一に維持したスラリーを定量ポンプで定量ホッパーにポンプアップし、定量ホッパーで計量したスラリーを抄造工程S12に導いた。抄造工程S12においては、長網式ウェットマシンを用いて、凝集フロックが形成されたスラリーを抄網が張られた抄具に上方から流し、凝集フロックを通して水を速やかに抄網から流下させ、含水率が60%〜70%、厚さ0.8mm程度の湿シートが得られた。
次に、積層工程S13において、この厚さ0.8mm程度の湿シートが複数枚積層される。なお、セピオライト、エポキシ樹脂・フェノール樹脂等によって完成後のシートの層間接合力を確保することができるが、層間剥離をより確実に防止するため、積層前に湿シートの表面にアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を接着剤として塗布しておいても良い。
積層工程S13において複数枚積層された湿シートは、加圧加熱工程S14において、ホットプレスによって、加圧と加熱が同時に行われる。ホットプレスは、加圧力15kgf/cm2 〜80kgf/cm2 、加熱温度130℃〜180℃の条件下で、3分間〜10分間行った。このホットプレスによって、積層された湿シートは脱水されながらボード状に形成されるとともに、加熱によって内部の水分が蒸発して乾燥固化する。
この加熱条件下においては、内部にエポキシ樹脂が混合されている場合には溶融するため、各繊維間の結合力が増大し、そしてエポキシ樹脂が熱硬化して不溶・不融化することによって層間強度が向上して、不燃性のケイ酸マグネシウム板3が形成される。こうして製造されたケイ酸マグネシウム板3が、本実施の形態1に係る防熱板1,6の裏板として使用される。
このようにして、本実施の形態1に係る防熱板1,6においては、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板3を開発して、このケイ酸マグネシウム板3をステンレス板2の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる。
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2に係る防熱板について、図5を参照して説明する。図5(a)は本発明の実施の形態2に係る防熱板の積層構造を示す部分断面図、(b)は本発明の実施の形態2の変形例に係る防熱板の積層構造を示す部分断面図である。
まず、本実施の形態2に係る防熱板の積層構造について、図5(a)を参照して説明する。図5(a)に示されるように、本実施の形態2に係る防熱板16においては、熱源側に位置する表板としてのステンレス板2と、裏板としてのケイ酸マグネシウム板3との間に、金属製の表板側リブ17として図5(a)に示される断面形状を有し、上下方向(紙面に垂直な方向)に伸びる複数個のアルミニウム製の表板側リブ17が挟まれている。
そして、図5(a)に示されるように、ステンレス板2をビス7によって表板側リブ17にネジ止めし、表板側リブ17をビス7によってケイ酸マグネシウム板3にネジ止めすることによって、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3との間に隙間が形成され、その隙間の厚さは表板側リブ17の高さと同じ5mmである。
更に、図5(a)に示されるように、本実施の形態2に係る防熱板16においては、ケイ酸マグネシウム板3と施工壁5との間に、金属製の裏板側リブ18として図5(a)に示される断面形状を有し、上下方向(紙面に垂直な方向)に伸びる複数個のアルミニウム製の裏板側リブ18が取り付けられている。本実施の形態2に係る防熱板16においても、ステンレス板2の厚さは0.5mmであり、ケイ酸マグネシウム板3の厚さは1.0mmまたは2.5mmである。
そして、図5(a)に示されるように、表板側リブ17とケイ酸マグネシウム板3とをビス7によって裏板側リブ18にネジ止めし、裏板側リブ18を木ネジ8によって施工壁5にネジ止めすることによって、表板側リブ17とケイ酸マグネシウム板3とを上下方向に伸びる複数個の裏板側リブ18を介して施工壁5にネジ止めしている。これによってケイ酸マグネシウム板3と施工壁5との間に隙間が形成され、その隙間の厚さは裏板側リブ18の高さと同じ5mmである。
このように、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3との間、及びケイ酸マグネシウム板3と施工壁5との間に、各5mmの隙間を形成することによって、表板2と裏板3との間及び裏板3と施工壁5との間に、それぞれ空気層が形成されて施工壁5の壁面に更に熱が伝わり難くなり、複数個の表板側リブ17及び裏板側リブ18は上下方向に伸びるものであることから、空気層内の暖められた空気は開放された上端から逃がされるため、コストアップすることなく防熱板16としての性能が向上する。
また、複数個の表板側リブ17及び裏板側リブ18が熱伝導率の高いアルミニウムからなることから、空気層の熱がアルミニウム製の表板側リブ17及び裏板側リブ18に吸収されて分散され、上端から放熱されるため、表板2と裏板3との間隙が比較的小さくても表板側リブ17及び裏板側リブ18によって十分な防熱作用を得ることができるので、防熱板16の厚さを薄くすることができる。
更に、ケイ酸マグネシウム板3とステンレス板2とを、表板側リブ17を介してネジ止めで接合することによって、有機系の接着剤(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、等)を使用する必要がなくなるため、防熱板16のコンロ側からより高い熱を受けても耐えられるようになり、防熱板16とコンロとの隙間をより小さくすることができるという作用効果が得られる。
次に、本実施の形態2の変形例に係る防熱板の積層構造について、図5(b)を参照して説明する。図5(b)に示されるように、本実施の形態2の変形例に係る防熱板21の基本的な構成は、上述した本実施の形態2に係る防熱板16と同様である。本実施の形態2の変形例に係る防熱板21が、防熱板16と異なるのは、図5(b)に示されるように、ステンレス板2と表板側リブ17との間にスペーサーとしてのケイ酸マグネシウム板20が挟まれている点である。
これによって、ステンレス板2と表板側リブ17との間の熱伝導が遮断されるため、防熱板としての性能が更に向上する。そして、スペーサーとしてのケイ酸マグネシウム板20は低コストで製造できるため、コストアップすることもない。
このような構成を有する本実施の形態2に係る防熱板16,21は、上述の如く、ケイ酸マグネシウム板3とステンレス板2のみからなる防熱板1が、防熱性試験において消防法で定められる防熱板の基準を満たすことから、より防熱性に優れる本実施の形態2に係る防熱板16,21については、更に好ましい結果が得られることが、容易に推認できる。
そして、防熱板16の厚さは15mm未満であり、防熱板21の厚さは20mm未満であることから、ガスコンロと施工壁5との間隙が20mm以下と小さい場合にも設置することができ、このようにガスコンロが極めて近接している場合でも、本実施の形態2に係る防熱板16,21においては、防熱板としての役割を果たすことができる。
このようにして、本実施の形態2に係る防熱板16,21においては、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板3を開発して、このケイ酸マグネシウム板3をステンレス板2の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる。
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3に係る防熱板について、図6乃至図8を参照して説明する。図6(a)は本発明の実施の形態3に係る防熱板の積層構造を示す部分断面図、(b)は本発明の実施の形態3の変形例に係る防熱板の積層構造を示す部分断面図である。図7(a),(b)は本発明の実施の形態3に係る防熱板の防熱性試験の試験方法を示す説明図である。図8(a),(b)は本発明の実施の形態3に係る防熱板の防熱性試験の結果を示すグラフである。
図6(a)に示されるように、本実施の形態3に係る防熱板26は、熱源側に位置する表板としてのステンレス板2と、裏板としてのケイ酸マグネシウム板3と、ケイ酸マグネシウム板3のステンレス板2と反対側の面に貼り付けられた金属箔としてのアルミニウム箔22とを積層させて、更にケイ酸マグネシウム板3と施工壁5との間に、金属製の裏板側リブ4として図6(a)に示される断面形状を有し、水平方向(紙面に垂直な方向)に伸びる複数個のアルミニウム板製の裏板側リブ23を取り付けたものである。
本実施の形態3に係る防熱板26においては、ステンレス板2の厚さは0.5mmであり、ケイ酸マグネシウム板3の厚さは1.2mmであり、金属箔としてのアルミニウム箔22の厚さは50μmである。そして、ケイ酸マグネシウム板3は、含水ケイ酸マグネシウム化合物70重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜20重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するものである。
より詳しくは、本実施の形態3に係る防熱板26を構成するケイ酸マグネシウム板3は、含水ケイ酸マグネシウム化合物としてのセピオライト80重量%・パルプ10重量%・ガラス繊維5重量%、及びバインダーとしてのアクリル系樹脂3重量%とエポキシ系樹脂2重量%を含有するものである。
このケイ酸マグネシウム板3は、不燃材料の発熱性試験において20分の加熱により600℃近くになっても、総発熱量は僅かに0.8MJ/m2(総発熱量の合格値は8.0MJ/m2以下)であり、しかも僅か1.0mmの厚さで亀裂もなく形状を保持し、不燃材料として合格した。また、熱伝導率を測定したところ、0.11W/mKと極めて小さいものであった。
したがって、ステンレス板2の裏側にケイ酸マグネシウム板3の裏板を取り付けることによって、低コストで製造することができ、かつ、熱伝導性の小さい(熱伝導率:0.11W/mK)ケイ酸マグネシウム板3によって熱伝導を遮断して、ガスコンロ等の熱源に近接した壁面等の温度上昇を安価に抑えることができる防熱板26となる。
そして、図6(a)に示されるように、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3とをビス7によって裏板側リブ23にネジ止めし、裏板側リブ23を木ネジ8によって施工壁5にネジ止めすることによって、ケイ酸マグネシウム板3とステンレス板2とを水平方向に伸びる複数個の裏板側リブ23を介して施工壁5にネジ止めしている。これによって、ケイ酸マグネシウム板3の裏面に貼り付けられたアルミニウム箔22と施工壁5との間に隙間が形成され、その隙間の厚さは裏板側リブ23の高さと同じ10mmである。
このように、ケイ酸マグネシウム板3からなる裏板と施工壁5との間に10mmの隙間を形成するとともに、ケイ酸マグネシウム板3の裏面すなわちステンレス板2と反対側の面に金属箔としてのアルミニウム箔22を貼り付けることによって、ケイ酸マグネシウム板3に蓄積された熱がアルミニウム箔22に吸収されて空気中に放出され、裏板3と施工壁5との間に空気層が形成されて施工壁5の壁面に更に熱が伝わり難くなり、空気層内の暖められた空気は開放された上端から逃がされるため、コストアップすることなく防熱板26としての性能が向上する。
また、ケイ酸マグネシウム板3とステンレス板2とをネジ止めで接合することによって、有機系の接着剤(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、等)を使用する必要がなくなるため、防熱板26のコンロ側からより高い熱を受けても耐えられるようになり、防熱板26とコンロとの隙間をより小さくすることができるという作用効果が得られる。
次に、本実施の形態3の変形例に係る防熱板27の積層構造について、図6(b)を参照して説明する。図6(b)に示されるように、本実施の形態3の変形例に係る防熱板27の基本的な構成は、上述した本実施の形態3に係る防熱板26と同様である。変形例に係る防熱板27が上述した防熱板26と異なるのは、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3との間にスペーサーとしてのケイ酸マグネシウム板24が挟まれている点である。
これによって、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3との間の熱伝導が更に遮断されるため、防熱板としての性能がより一層向上する。そして、スペーサーとしてのケイ酸マグネシウム板24は低コストで製造できるため、コストアップすることもない。なお、防熱板27においては、スペーサー24の厚さを2.5mm程度として、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3との間に形成される空気層の厚さを約3mmとした。
これらの本実施の形態3に係る防熱板26,27について、その防熱性能を実験によって評価した。防熱板26,27の防熱性試験の試験方法について、図7を参照して説明する。
図7(a)に示されるように、ガスコンロとしては、リンナイ(株)製のビルドインタイプRBG−32A8(型番)ガスコンロ30を使用した。RBG−32A8ガスコンロ30は、高カロリーコンロ30A,中カロリーコンロ30B,小カロリーコンロ30C及びグリル30Dを備えている。
図7(b)に示されるように、高カロリーコンロ30Aの中心30aから施工壁5の壁面に垂直に伸ばした位置において、施工壁5に測熱センサとしての熱電対29Aを貼り付け、熱電対29Aの先端から水平方向に60mm後方の位置に、熱電対29Bを貼り付けた。また、雰囲気温度を測定するために、RBG−32A8ガスコンロ30の前面上方に、熱電対29Cを貼り付けた。
このような構成の試験装置において、図7(a)に示されるように、高カロリーコンロ30A,中カロリーコンロ30B,小カロリーコンロ30Cの上に、それぞれ水を入れた鍋31A,31B,31Cを置いて、各コンロ30A,30B,30Cに点火して強火にし、水を入れた鍋31A,31B,31Cを加熱して、熱電対29A,29B,29Cで測定される温度の変化を、防熱板26,27の場合のそれぞれについて評価した。なお、グリル30Dは15分後に点火し、30分後に一旦消火、45分後に再び点火した。
各コンロ30A,30B,30Cに点火してからの時間に対する熱電対29A,29B,29Cで測定される温度の変化をグラフにしたものを、図8(a),(b)に示す。図8(a)に示されるように、防熱板26を用いた場合には、熱電対29A,29Bで測定される温度は最高40℃前後まで上昇している。測定条件が異なるので直接に比較することはできないが、図3(c)に示される実施の形態1の場合よりも更に温度は低くなっている。
なお、15分後〜30分後及び45分後〜60分後の間において、熱電対29Aで測定される温度の上昇が止まっているのは、グリル30Dを点火することによって、各コンロ30A,30B,30Cから施工壁5の側に流れる熱量が減少するためと考えられる。
また、図8(b)に示されるように、防熱板27を用いた場合には、熱電対29A,29Bで測定される温度は最高30℃程度までしか上昇せず、防熱板27の方が防熱板26よりも防熱性能において優れており、スペーサー24を用いることによって約3mmの空気層を設けることが有効であることが明らかになった。
そして、防熱板26の厚さは15mm未満であり、防熱板27の厚さも15mm未満であることから、ガスコンロと施工壁5との間隙が20mm以下と小さい場合にも設置することができ、このようにガスコンロが極めて近接している場合でも、本実施の形態3に係る防熱板26,27においては、防熱板としての役割を果たすことができる。
このようにして、本実施の形態3に係る防熱板26,27においては、含水ケイ酸マグネシウム化合物・パルプ・ガラス繊維及びバインダーの配合率を最適にして、不燃材料の発熱性試験に合格するとともに優れた断熱性を有するケイ酸マグネシウム板3を開発して、このケイ酸マグネシウム板3をステンレス板2の裏側に接合することによって、ガスコンロ等に近接する壁面の温度が100℃を超えないようにするという防熱効果と薄さを維持しつつ、大幅な低コスト化を図ることができる。
上記各実施の形態においては、ケイ酸マグネシウム板3の主成分である含水ケイ酸マグネシウム化合物としてセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)を用いた場合について説明したが、セピオライト以外にも、またセピオライトと混合して、アタパルジャイト(含水ケイ酸マグネシウムアルミニウム)、タルク(滑石、含水ケイ酸マグネシウム)等を用いることもできる。
また、上記各実施の形態においては、ケイ酸マグネシウム板3として、含水ケイ酸マグネシウム化合物としてのセピオライト80重量%・パルプ10重量%・ガラス繊維5重量%、及びバインダーとしてのアクリル系樹脂3重量%とエポキシ系樹脂2重量%を含有するものを用いた場合について説明したが、ケイ酸マグネシウム板としては、含水ケイ酸マグネシウム化合物70重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜20重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するものであれば、その他の配合からなるものであっても良い。
その中でも、特に、ケイ酸マグネシウム板が、含水ケイ酸マグネシウム化合物75重量%〜85重量%・パルプ5重量%〜15重量%・ガラス繊維4重量%〜6重量%及びバインダー3重量%〜7重量%を含有するものであることが好ましい。
更に、上記各実施の形態においては、裏板側リブ及び表板側リブとして、図1(a),図5(a),(b)及び図6に示される断面形状の裏板側リブ4,18,22及び表板側リブ17を用いた場合について説明したが、裏板側リブ及び表板側リブの断面形状はこれらに限られるものではなく、「コ」の字形、「ロ」の字形、「エ」の字形、「T」の字形、等を始めとして、種々の断面形状のものを用いることができる。
また、裏板側リブ及び表板側リブの幅としても、図1(a),図5(a),(b)に示されるように幅が狭くて互いの間隔が広いものに限られず、例えば「コ」の字形を伏せたような形状の幅の広い裏板側リブまたは表板側リブとして、互いを密着させるような裏板側リブ及び表板側リブの設置方法も可能である。
更に、上記各実施の形態においては、ステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3との接合方法として、またステンレス板2と表板側リブ17、ケイ酸マグネシウム板3と裏板側リブ4,18,22の接合方法として、いずれもネジ止めする場合のみについて説明したが、これらの接合部分の一部または全部を接着剤(熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂等)、特に耐熱性の接着剤(熱硬化性樹脂等)による接合とすることも可能である。
また、上記各実施の形態においては、金属箔としてアルミニウム箔22を使用した場合について説明したが、金属箔はアルミニウム箔22に限られるものではなく、銅箔、真鍮箔、ステンレス箔等を始めとして他の種類の金属箔を用いることもできる。更に、厚さについても、50μmに限られるものではなく、種々の厚さのアルミニウム箔を始めとする金属箔を用いることができる。中でも、30μm〜100μmの厚さのものが特に好ましい。
更に、金属箔としてのアルミニウム箔22を、ケイ酸マグネシウム板3の裏面すなわちステンレス板2と反対側の面に貼り付けた場合についてのみ説明したが、図5(a),(b),図6(b)に示されるように、表板側リブ17やスペーサー24を用いることによってステンレス板2とケイ酸マグネシウム板3の間に隙間ができる場合には、ケイ酸マグネシウム板3の表面すなわちステンレス板2側の面に貼り付けることもできる。
本発明を実施するに際しては、防熱板のその他の部分の構成、構造、材質、成分、配合、厚さ、数量、形状、大きさ、製造方法等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。