JP2009200484A - 縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を基板上に積層することを含む新規有機半導体薄膜の製造方法、及び液状分散体 - Google Patents

縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を基板上に積層することを含む新規有機半導体薄膜の製造方法、及び液状分散体 Download PDF

Info

Publication number
JP2009200484A
JP2009200484A JP2009014287A JP2009014287A JP2009200484A JP 2009200484 A JP2009200484 A JP 2009200484A JP 2009014287 A JP2009014287 A JP 2009014287A JP 2009014287 A JP2009014287 A JP 2009014287A JP 2009200484 A JP2009200484 A JP 2009200484A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dispersion
thin film
organic semiconductor
pentacene
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009014287A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5576611B2 (ja
Inventor
Takashi Namikata
尚 南方
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Corp filed Critical Asahi Kasei Corp
Priority to JP2009014287A priority Critical patent/JP5576611B2/ja
Publication of JP2009200484A publication Critical patent/JP2009200484A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5576611B2 publication Critical patent/JP5576611B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Liquid Deposition Of Substances Of Which Semiconductor Devices Are Composed (AREA)
  • Thin Film Transistor (AREA)

Abstract

【課題】常温ウェットプロセスによる高いキャリア移動度を発現する有機半導体薄膜の製造方法、及当該方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子の提供。
【解決手段】以下のステップ:
有機半導体材料である縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を液状媒体に分散して分散体を形成し;
得られた分散体を基板上にトランスファした後、前記液状媒体を、80℃以下の温度で、前記縮合多環芳香族化合物の溶液の形成を経由せずに、前記分散体から除去して、前記基板上に、前記縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を積層する;
を含む、基板上への有機半導体薄膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を基板上に積層することを含む新規有機半導体薄膜の製造方法、新規液状分散体、及び当該方法により製造された有機半導体膜を有する有機半導体素子に関する。
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子や有機薄膜トランジスタを用いた表示装置は、高画質、低消費電力、及び省スペースといった利点により、薄型テレビや携帯端末の表示装置として期待されている。
ところで、無機半導体であるアモルファスシリコンや多結晶シリコン薄膜の製造プロセスは、高価な真空装置と高温プロセスを必要とし、また、フォトリソグラフィーを用いているため複数の工程を経る必要があるため、製造コストが高いという問題がある。また、無機半導体の場合、薄膜の成膜温度として約300ないし400度以上の高温を必要とするため、ガラス基板やシリコンウエハを基板として用いなければならず、耐衝撃性及びフレキシブル性が望まれるプラスティック基板などへの応用は極めて困難である。
一方、有機半導体の場合には、成膜温度が室温から200度以下と無機半導体の場合の成膜温度よりも低温であるので、プラスティック基板上への成膜が可能である。さらに、有機半導体材料を含有する液体(分散体を含む)の塗布による塗布プロセスによる有機半導体薄膜の形成が可能となれば、製造の低コスト化、薄膜形成の大面積化、半導体素子のフレキシブル化等が期待できる。
従来、有機半導体材料として、ポリフェニレンビニレンやポリピロール、ポリチオフェンなどの共役系高分子や、それら高分子のオリゴマー等とともにアントラセン、テトラセン、ペンタセンなどのポリアセン化合物を中心とした低分子系有機半導体材料が用いられてきた。とりわけ、ペンタセンは産業界から学術界までに亘る研究機関により広く用いられ、真空蒸着で成膜されたペンタセン薄膜トランジスタのキャリア移動度は1cm/V・sを超えるものも報告され、アモルファスシリコンに匹敵する性能を示すに至っている。
しかしながら、最も移動度が高い材料のひとつであるペンタセンは、溶媒への溶解性が極めて低く、主に真空蒸着法を用いた成膜プロセスが用いられており、塗布プロセスへの応用が困難であり、また、高分子系有機半導体材料を用いた薄膜トランジスタでは、低分子系有機半導体材料に比較して溶媒への溶解性が高く、スピンコート法やドロップキャスト法のような簡便な塗布プロセスからインクジェットなどの高度な印刷技術を用いて成膜されている。しかしながら、高分子系有機半導体材料の薄膜トランジスタのキャリア移動度は、ペンタセンなどの薄膜トランジスタのものと比較して低いので、デバイス用途が限られている。それゆえ、高い電気特性と溶解性を併せ持つ材料の開発が強く求められ活発な開発が行われてきた。
これまで、キャリア移動度が高いペンタセンを基本骨格として置換基を導入することにより、ペンタセンの溶解性を向上させる試みがなされてきた。ペンタセンの6,13−位を架橋したペンタセン前駆体を得ることにより、溶解性を向上させ、この前駆体溶液を一般的な塗布プロセスで成膜したのち、200℃程度の温度で焼成することで前駆体をペンタセンに変換するという方法が報告されている(以下、非特許文献1、2を参照のこと)。しかしながら、かかる方法では塗布後の焼成により薄膜中に構造欠陥を生じ性能や機械的強度を低下させるだけではなく、焼成温度が200℃程度と比較的高いことから、プラスティック基板などの選択肢が限られるという問題がある。
一方、本願発明者は、ペンタセンを1,2,4−トリクロロベンゼンなどを可溶性溶媒に用いることで、ペンタセン前駆体を用いることなく、ペンタセンの加熱溶液を形成し、加熱した基板に展開して薄膜を形成する方法(溶液直接塗布法)を報告した(以下、非特許文献3を参照のこと)。また、縮合多環芳香族化合物の微粒子を可溶性溶媒に分散した分散体を基板上に展開し、加熱して一旦溶液を形成した後に薄膜を作製する方法が提案されている(以下、特許文献1を参照のこと)。
特開2005−281180号公報
A. Afzali, C. D. Dimitrakopoulos, and T. L. Breen, Journal of American chemical society, 124, 8812 (2002) P. T. Herwig, and K. Mullen, Advanced Materials, 11, 480 (1999) T. Minakata, and Y. Natsume, Synthetic Metals, 153, 1 (2005)
前記した有機半導体材料の溶液直接塗布法や溶液経由の分散体塗布で作製した薄膜は高移動度、高結晶性を示すものの、利用できる溶媒が限られ、溶液及び基板の温度を高くしなければならないため、適用できる基板が限られ、溶液が酸化されやすいため不活性ガス雰囲気中で薄膜を形成しなければならないなどの問題点がある。したがって、従来の薄膜形成方法では作製条件が限られ、作製プロセスの制御性も悪く、適用できる基板材料や素子も限定される。例えば、高温及び溶液を用いる場合には、基板と有機半導体層との間の線膨張係数差によりクラックが発生して欠陥基板が製造される。また、溶液状態においては、有機半導体材料の分子が孤立した状態となり該分子が酸化され易いため、有機半導体材料の溶液は、酸素を排除した雰囲気制御環境下で取り扱う必要がある。
溶液を基板上に塗布して有機半導体薄膜を成長させる方法では、成長する薄膜結晶が大きく成長できるため高い移動度を示す薄膜が形成される。ところがこの方法で大面積の基板上に塗布薄膜形成する際、局所的に生成する欠陥により素子アレイの性能均一性が低下するという問題が残されている。
したがって、前記した従来の薄膜形成法が有する問題点を解決し、すなわち、常温ウエットプロセスによる、高いキャリア移動度を示す均一性の高い有機半導体薄膜の製造方法を提供する必要性が未だ在る。
また、印刷製法を用いたパターン塗布を行なうためには適用する印刷製法に応じたインクの粘度調整が必要である。さらに前記のインクを基板上に塗布するために基板の表面エネルギーに応じインクの表面張力を調整する必要がある。
本願発明者は、前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、今般、驚くべきことに、有機半導体材料である縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を液状媒体に分散した分散体を基板上にトランスファした後、液状媒体を80℃以下の温度で縮合多環芳香族化合物の溶液の形成を経由せずに前記分散体から除去して前記基板上に縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を積層することにより作製した縮合多環芳香族化合物の薄膜が、均一なものであり、かつ、高キャリア移動度を示すことを発見し、本願発明を完成するに至った。
また、本発明により、酸化に対し不安定な溶液を経由しないことによる雰囲気制御が容易な有機半導体薄膜製造方法が提供される。
具体的には、前記課題は、以下の手段[1]〜[18]により解決される。
[1]以下のステップ:
有機半導体材料である縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を液状媒体に分散して分散体を形成し;
得られた分散体を基板上にトランスファした後、前記液状媒体を、80℃以下の温度で、前記縮合多環芳香族化合物の溶液の形成を経由せずに、前記分散体から除去して、前記基板上に、前記縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を積層する;
を含む、基板上への有機半導体薄膜の製造方法。
[2]前記分散体中の前記縮合多環芳香族化合物のシート状結晶の含有量が0.3重量%以上8重量%未満であり、前記分散体が前記縮合多環芳香族化合物を溶解することができる可溶性溶媒をさらに含有し、そして前記分散体中の前記可溶性溶媒の含有量が30重量%未満である、前記[1]に記載の方法。
[3]前記の縮合多環芳香族化合物のシート状結晶が分散された液状分散体において、前記液状分散媒が、30重量%未満の可溶性溶媒と、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、及び脂肪族炭化水素から選ばれる非可溶性液状媒体とから構成される、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記縮合多環芳香族化合物がアセン系化合物である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記アセン系化合物がペンタセン又はペンタセン誘導体である、前記[4]に記載の方法。
[6]前記ペンタセン誘導体が、2−メチルペンタセン、2−ヘキシルペンタセン、2−エチルペンタセン、2−プロピルペンタセン、2−(ペンチルジメチルシリル)ペンタセン、2,3−ジメチルペンタセン、2,3−ジエチルペンタセン、2,3−ジプロピルペンタセン、及び2,3−ジヘキシルペンタセンから選ばれる一種以上である、前記[5]に記載の方法。
[7]前記アセン系化合物が、テトラセン又はテトラセン誘導体である、前記[4]に記載の方法。
[8]前記テトラセン誘導体が、2−メチルテトラセン、2−エチルテトラセン、2−プロピルテトラセン、2−ヘキシルペンタセン、2,3−ジメチルテトラセン、2,3−ジエチルテトラセン、2,3−ジプロピルテトラセン、及び2,3−ジヘキシルテトラセンから選ばれる一種以上である、前記[7]に記載の方法。
[9]縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を液状媒体に分散した液状分散体であって、該分散体は、該縮合多環芳香族化合物を溶解することができる可溶性溶媒をさらに含有し、ここで、該シート状結晶の含有量は、0.3重量%以上8重量%未満であり、該縮合多環芳香族化合物を溶解することができる可溶性溶媒は10重量%未満であり、そして該分散体の残部は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、及び脂肪族炭化水素から選ばれる非可溶性液状媒体で構成されることを特徴とする前記分散体。
[10]前記非可溶性液状媒体が、アルコール類又は脂肪族炭化水素である、前記[9]に記載の分散体。
[11]前記非可溶性液状媒体として、アルコール類を20重量%以上80%未満で含有する、前記[9]又は[10]に記載の分散体。
[12]前記分散体の室温における粘度が0.5センチポイズ以上10ポイズ以下である、前記[9]〜[11]のいずれかに記載の分散体。
[13]前記分散体の表面張力が10mN/m以上45mN/m以下である、前記[9]〜[12]のいずれかに記載の分散体。
[14]前記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法により製造された有機半導体薄膜。
[15]前記[14]に記載の有機半導体薄膜を有する有機半導体素子。
[16]−20℃における電界効果移動度対30℃における電界効果移動度の比(R−20=μ−20/μ30)と、120℃における電界効果移動度対30℃における電界効果移動度の比(R120=μ120/μ30)はともに、0.2以上2以下である、前記[15]に記載の有機半導体素子。
[17]半導体/電極の界面抵抗が2MΩ/cm以下である、前記[15]又は[16]に記載の有機半導体素子。
[18]大気中、30℃、50%RHで3ヶ月間保存した後の電界効果キャリア移動度が、前記有機半導体薄膜を作製した直後の電解効果キャリア移動度に対し70%以上で保持される、前記[15]〜[17]のいずれかに記載の有機半導体素子。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法によれば、塗布工程における分散体及び基板はともに室温で存在することができ、塗布工程後の液状媒体の除去工程においても80℃以下の温度で高性能、高結晶性の有機半導体薄膜が作製できる。また、分散体は有機半導体材料の含有量の調整範囲が広いため液状媒体の選択自由度が高い。例えば、溶液よりも分散体のほうが、有機半導体材料の固形分濃度を高めることができる。また、溶液よりも分散体の方が、分散媒の選択の自由度が高く、例えば、脱ハロゲン溶媒とすることもできる。また、分散媒の選択自由度が高いため、分散液の粘度調整が容易で、各種印刷製法に適合させたインクを調整できる。また、分散媒の選択自由度が高いため、分散液の表面張力を広い範囲で調整でき、塗布形成する基板の表面エネルギーに適合させ基板表面のインク濡れ性を制御することもできる。さらに、基板上で溶液から結晶を成長させるよりも、結晶サイズが制御された結晶粒子を分散した分散体を用いることができるため、分散体を塗布形成した薄膜の方が形成される性能を均一化し易い。さらにまた、溶液状態に比較して分散体中での有機半導体材料の耐酸化安定性は優れているため薄膜形成プロセスにおける雰囲気制御がより容易となる。したがって、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法は、従来の薄膜形成方法に比べ格段に薄膜形成プロセスの制御性が容易であり、適用できる基板材料の選択範囲も広いので、有機半導体素子の製造範囲を拡大することに貢献しうる。
また、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法では、高温及び溶液を用いる場合に見られる、基板と有機半導体層との間の線膨張係数差によりクラックが発生して欠陥基板が製造されるという問題が著しく低減される。
さらに、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜は、電界効果トランジスタとして高いキャリア移動度とともに良好なスイッチング性を発現し、アレイにおいては素子間ばらつきが少なく性能均一性に優れており、有機半導体素子として優れた電子特性を有している。
本発明に係る有機半導体薄膜は、結晶粒子が積層された構造を有し、電極と有機半導体薄膜との界面抵抗が極めて低く、良好な半導体素子動作を示す。また、本発明に係わる有機半導体薄膜は、動作の温度安定性に優れ、低温及び高温の環境下においても性能変化が小さく、広い温度範囲で均一した性能を示す。さらに、本発明に係る有機半導体薄膜は、大気中保存安定性に優れる特徴を有する。このため、本発明に係る有機半導体薄膜は、通常の有機半導体素子で用いられる薄膜保護層を軽減し、簡略化できるという効果も併せ持つ。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜は、有機半導体材料である縮合多環芳香族化合物のシート状結晶が単層又は多層で積層されている。有機半導体結晶の形状はシート状であり、高アスペクト比3以上であることが好ましく、さらに好ましくは5以上、そして最も好ましくは10以上である。また、シート状有機半導体結晶はドメイン内に欠陥のない単結晶であることが好ましい。シート状結晶の長辺は利用する素子用途、作製プロセスにより範囲が異なるが、30nm以上10mm以下であり、好ましくは100nm以上30μm以下、最も好ましくは300nm以上10μm以下である。薄膜は、シート状結晶が単層又は多層で積層されており、シート状結晶粒子の長辺が基板面に並行に配列する。本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜では、シート状結晶同士が面でコンタクトした構造を形成しており、多数の粒子から形成される薄膜(多結晶薄膜)においても薄膜の電気抵抗が低く、薄膜トランジスタとして高キャリア移動度を発現するなど好ましい特性を有する。薄膜構造中のシート状結晶(粒子)間の接合が良好で粒子間抵抗が低減されているようである。
本発明のシート状結晶が積層された薄膜の粒子間の電気伝導性は、例えば薄膜に複数の電極を接合させた構造の素子を形成し、電極間の電気抵抗を評価することによって確認できる。電極間距離の異なる前記素子の低電圧領域の薄膜抵抗と電極間距離の関係から電極間距離をゼロに外挿した抵抗値を電極と半導体薄膜の界面抵抗として求めることができる。この電極は、半導体薄膜を電極上に形成する前に予め設けた素子構造(ボトムコンタクト構造)又は基板上に半導体薄膜を形成後、薄膜表面に局所的に電極を形成した素子構造(トップコンタクト構造)を有することができる。本発明の薄膜は界面抵抗値が低いことが特徴であり、好ましくは、2MΩ/cm以下さらに好ましくは、0.5MΩ/cm以下である。この低界面抵抗の理由として、本発明の有機半導体薄膜の特徴であるシート状結晶面が電極と面状にコンタクトした構造が形成できることが挙げられる。
また、このように電極間に半導体薄膜が介在する構想で形成した素子の電気抵抗や電界効果移動度の温度依存性により、結晶粒子間の接合を評価することができる。粒子間の接合が良好な場合、電子キャリアの輸送における接合障壁は小さく、この結果、電気抵抗や電界効果移動度の温度依存性は小さい。一方、粒子間の接合が不良の場合、電子キャリアの輸送障壁が大きく、大きな温度依存性を示す。本発明のシート状結晶が積層された薄膜の電気抵抗、電界効果移動度の温度依存性は小さいことが特徴である。例えば−20℃、室温(30℃)、120℃の電界効果移動度を比較した場合、−20℃と室温の電界効果移動度の比(R−20=μ−20/μ30)、及び120℃と30℃の電界効果移動度の比(R120=μ120/μ30)はともに0.2以上2以下であり、好ましくは0.5以上1.5以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下である。このように電界効果移動度の温度依存性が低いことは、幅広い温度範囲で安定した素子性能を示すため好ましいものとなる。また、電界効果移動度や電気抵抗が高温において急激に増加しないことは、急激な電流変化においても素子性能が安定して示され、異常電流発熱による素子抵抗の急激な低下と連鎖する発熱暴走を抑制する効果も併せ持つため好ましい。
本発明で用いる有機半導体材料としては、例えば、複数(例えば、2個以上15個以下)の芳香環が縮合した多環化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、オバレン、コロネン、ジベンゾコロネン、ヘキサベンゾコロネン、テリレン、クオテリレン、イソビオラントレン、ビスアンテン、アンタンスレン、サーカムアントラセン、テトラベンゾコロネン、ジコロニレン、サーコビフェニルなどの縮合多環芳香族化合物;及びチオフェン、チオフェン-フェニレン、フェニルアミン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレン、チエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ピロールなどのオリゴマーが挙げられる。分子量範囲として2,000(ダルトン)以下の結晶性低分子系材料が用いられる。
これら有機半導体材料は、ベンゼン環などの芳香環に結合する水素原子の一部又は全部が官能基で置換された分子構造を有する誘導体であってもよい。官能基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシル基、エーテル基、ハロゲン基、ホルミル基、アシル基、エステル基、メルカプト基、チオアルキル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基等が挙げられる。また、前記した縮合多環芳香族化合物中の炭素の一部は硫黄、窒素などのヘテロ原子で置換されていてもよい。
前記した有機半導体材料の内、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のポリアセン化合物及びポリアセン化合物の誘導体は、高いキャリア移動度を示すため、とりわけ好ましい。この理由としては、ポリアセン化合物が分子同士でスタックして導電面が2次元的ネットワークを有するヘリンボン構造を取りやすいため、π電子軌道の重なりが大きくなり、キャリアが分子間を移動しやすいことが挙げられる。また、キャリア移動度の安定性を考慮すると、ペンタセン及びペンタセン誘導体がさらに好ましい。本発明で用いる結晶粒子はこれら分子から形成されたシート状形態であることが好ましく、針状や低アスペクト比のブロック形状は好ましくない。有機半導体結晶の形状はシート状であり、高アスペクト比3以上であることが好ましく、さらに好ましくは5以上、そして最も好ましくは10以上である。また、シート状有機半導体結晶はドメイン内に欠陥のない単結晶であることが好ましい。
前記のポリアセン化合物誘導体として、例えば、前記ペンタセン誘導体として、2−メチルペンタセン、2−ヘキシルペンタセン、2−エチルペンタセン、2−プロピルペンタセン、2−(ペンチルジメチルシリル)ペンタセン、2,3−ジメチルペンタセン、2,3−ジエチルペンタセン、2,3−ジプロピルペンタセン、2,3−ジヘキシルペンタセンが挙げられ、これらは単体若しくはこれらからの内から選ばれる一種以上であることができ、テトラセン誘導体として、2−メチルテトラセン、2−エチルテトラセン、2−プロピルテトラセン、2−ヘキシルペンタセン、2,3−ジメチルテトラセン、2,3−ジエチルテトラセン、2,3−ジプロピルテトラセン、2,3−ジヘキシルテトラセンが挙げられ、これらは単体若しくはこれらの内から選ばれる一種以上であることができ、使用する用途によっては、前記ペンタセン若しくはペンタセン誘導体とテトラセン若しくはテトラセン誘導体のそれぞれの結晶を混合して使用しても、異種分子からなる結晶を用いてもよい。
ポリアセン化合物誘導体は、ポリアセン化合物骨格に導入された官能基によって、シート状結晶を溶液から形成する場合の溶媒溶解性や、シート状結晶を昇華により形成する場合の昇華温度を調整することができる。また、ポリアセン化合物誘導体の分子構造によって、シート状結晶粒子の表面エネルギーを調整することができ、シート状結晶が分散された液状分散体の分散媒や分散液の表面張力を調整することができ、さらに、シート状結晶が積層された薄膜の積層や溶解除去などの加工性を調整することができる。
有機半導体薄膜の作製
本発明によれば、有機半導体薄膜は、有機半導体のシート状結晶を液状媒体に分散させた分散体から、ウェットプロセスによって製造される。
有機半導体結晶の製造方法としては、有機半導体材料が溶解した溶液を冷却することにより、前記溶液から有機半導体材料の微粒子を析出させる方法や、前記溶液を有機半導体材料の難溶性溶媒と混合することにより、前記溶液から有機半導体材料の微粒子を析出させる方法等が挙げられる。溶液の冷却は、容器等に入れた状態で行ってもよいが、溶液の噴霧によってもよい。噴霧により形成された液滴は急冷されるので、液滴内に有機半導体材料の微粒子が析出する。また、噴霧により形成された液滴を加熱乾燥して、有機半導体材料の微粒子を得ることもできる。さらに、本発明においては、有機半導体材料の蒸気を用い気相中又は気相固体界面で成長させた有機半導体材料の結晶を用いることもできる。
さらに、結晶粒子を機械的に粉砕して得た微粒子を用いることができる。
シート状結晶の長辺は利用する素子の用途、作製プロセスにより範囲が異なるが、30nm以上10mm以下であり、好ましくは50nm以上30μm以下である。また、太陽電池などの用途によっては複数の有機化合物粒子結晶を混合して用いることもできる。
有機半導体材料のシート状結晶を液状媒体に分散させて得た分散体を用いて、有機半導体材料の薄膜を製造する。液状媒体の種類は特に限定されるものではないが、一般的な溶剤を使用することができ、塗布する分散体の加工工程の内容に応じて適宜選択しうる。例えば、粘度、蒸気圧、分散体と接触する基板部分の耐溶剤性、環境安全性等を考慮して選択することが好ましい。
本発明の縮合多環芳香族化合物のシート状結晶が分散された液状分散体において、液状分散媒は、30重量%未満の可溶性溶媒と、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、脂肪族炭化水素から選ばれる非可溶性液状媒体とから構成されることを特徴とする。この非可溶性溶媒の例として、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロヘキシルフェノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、オテトラヒドロフラン、ジオキサン、オリゴジメチルシロキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類、デカン、ドデカン、ウンデカン、テトラデカン、デカリン、ジシキロへキサン、ドデセン、パラフィンなどの脂肪族炭化水素が挙げられる。これら非可溶性溶媒は、単体又は混合物tで分散液として液状媒体に用いることができる。
特に、非可溶性溶媒は混合して用いることが好ましく、シート状結晶の分散媒として非可溶性液状媒体がアルコール類、脂肪族炭化水素の混合物である場合、シート状結晶の分散安定化できるためさらに好ましい。また、非可溶性液状媒体としてアルコール類を含有する場合の該アルコール類の含有量は20重量%以上80%未満であることが、分散液中のシート状結晶の分散安定化の観点から好ましい。
本発明の有機半導体結晶分散液は、通常の有機半導体溶液と異なり、分散体の組成調整によって様々な印刷製法、塗布製法に適用できる。本発明を特定の印刷製法に適用する場合、印刷動作安定化のために粘度調整を行なうことが好ましい。本発明の分散液の粘度は、広い範囲で調整でき、液状分散体の室温における粘度は好ましくは、0.5センチポイズ以上10ポイズ以下の範囲である。例えば、前記の非可溶性液状媒体として適用可能なアルコール類は分子構造によって高粘度から低粘度まで広い粘度範囲をとることが可能であるためアルコールの種類と含量によって粘度調整を容易に行うことができる。
また、本発明の有機半導体結晶分散体を印刷製法、塗布製法によって基板上に有機半導体薄膜を形成する際、基板の表面エネルギーによっては分散液の濡れ性が充分でない、すなわち基板表面で分散液がはじかれ、流動する場合には欠陥が生じるため好ましくない。このような場合に対処するためには、分散液の組成を調整することによって表面張力を基板の表面エネルギーに近づけることが好ましい。本発明の有機半導体結晶が分散された分散液は、液状分散媒の組成によって表面張力を調整することができ、縮合多環芳香族化合物のシート状結晶が分散された液状分散体の表面張力は、10mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。特に、有機半導体を用いて薄膜トランジスタを作製する場合、有機半導体に隣接する絶縁膜は素子性能に大きく寄与し、絶縁膜として低誘電率材料を用いることが電子キャリアのトラップ低減のために好ましい。本発明の有機半導体分散液を印刷、塗布するためには分散液の表面張力を低くすることが好ましい。低い表面張力の分散液を形成するために、低誘電率の分散媒を用いたり、該分散媒の含量を調整したり、フッ素系やシリコ−ン系など微量の界面活性剤を添加したりすることができる。
分散体中の有機半導体材料のシート状結晶の含有量は、好ましくは0.3重量%以上8重量%以下である。0.3重量%未満では形成する有機半導体材料の膜厚が極めて薄く、薄膜中に欠陥を生じ易いため好ましくない。また、8重量%を超えると、分散体中の結晶粒子の凝集による粘性不安定化が生じ易くなるため好ましくない。
液状媒体の組成によってシート状結晶の含有量がさらに高い分散液を形成するこも可能であり、印刷製法によっては高粘度が好ましい場合もあるため、分散液におけるシート状結晶の含有量は、最大20%まで利用できる。従って、分散液におけるシート状結晶の好ましい含有量は、0.3重量%以上20重量%以下である。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法は、有機半導体材料の結晶粒子が、シート状結晶の形状を維持した状態で、基板にトランスファされることを特徴としており、液状(分散)媒体中に有機半導体材料を溶解することができる可溶性溶媒を含まないことが好ましい。例えば、有機半導体材料結晶の作製過程で有機半導体材料の溶液から析出させて有機半導体材料の結晶粒子を作製する際に、結晶粒子沈降後に再分散で分散体を調製する場合、可溶性溶媒が残存する可能性がある。本発明においては、分散体中の可溶性溶媒の含有量は、好ましくは30重量%未満である。分散体中に30重量%以上の可溶性溶媒が含有される場合、有機半導体材料のシート状結晶粒子が溶解して結晶粒子の形態が保持されなくなって薄膜構造を変化させて、性能の劣化をもたらすため好ましくない。
シート状結晶分散液における可溶性溶媒の含有量は、さらに好ましくは10重量%未満、最も好ましくは2重量%未満である。
使用される可溶性溶媒は、対象とする有機半導体材料の性質によって変化するため、必ずしも限定されない。本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法における液状媒体の除去は、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下又は30℃以下の温度で行われる。当該温度は、液体媒体の除去に要する時間、溶液の形成を経由しないことや、形成される薄膜の性能などの様々な条件を考慮して、最適化されうるが、通常、室温で行われる。可溶性溶媒は、所定の処理温度において溶解度0.01g/リットル以上を有するものとする。
例えば、有機半導体材料としてペンタセンを用いる場合、可溶性溶媒の例として、ハロゲン化炭化水素が挙げられる。ハロゲン化炭化水素の具体例としては、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジヨードベンゼン、トリクロロベンゼン、ジクロロエチルベンゼン、ジブロモエチルベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ジクロロナフタレン、ジクロロアントラセン、トリフルオロベンゼン、トリクロロベンゼン、トリブロモベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素や、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジフルオロエタン、テトラクロロエタン、テトラフルオロエタン、フルオロクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、クロロペンタン、クロロヘキサン、クロロシクロペンタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素が挙げられる。
これらハロゲン化炭化水素に限らず、例えば、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、ナフタレン、アントラセン、トルエン、キシレン、テトラリンなどの芳香族炭化水素、ジメチルスルフォキシドなどのスルフォキシド類、ピロリドン、カーボネート類も可溶性溶媒用いることもできる。
分散体の調製としては、例えば、可溶性溶媒に溶解した有機半導体溶液から有機半導体結晶を形成した後、有機半導体結晶を沈降、浮遊させて、可溶性溶媒を取り除き、有機半導体結晶の濃縮又は有機半導体結晶の分取を行い、次いで、分散媒を添加してこれを再分散させて、本発明の有機半導体結晶が分散された分散液を作製することが挙げられる。また、気相成長、粉砕などにより得た有機半導体結晶を用いる場合も、有機半導体結晶成分に分散媒を添加して分散液を調製することができる。ここで添加する分散媒の組成は、非可溶性溶媒、可溶性溶媒、界面活性剤などの添加物を適宜調整して行なうことが好ましい。また、有機半導体結晶粒子の分散体中の分散安定化を図るため、高濃度の有機半導体結晶と少量の分散媒で混合し、機械的な分散処理を施したミルベースを作製した後、分散媒をさらに添加して分散液を調製調整することもできる。
分散体は、種々の印刷方法や印刷装置を用いて、(基板等の)ベース上に配され薄膜が形成される。前記したように分散媒体の種類は限定されず種々の溶媒を使用することができるため、分散体をベース上に配するために用いる塗布プロセスや印刷プロセスも様々なものであることができる。また、有機半導体材料薄膜の用途が光学材料、発光材料等である場合には、有機半導体材料の結晶粒子を固体中に分散させた分散体でも差し支えなく、分散体中の有機半導体材料以外の固形分が残存していてもよい。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法において使用される有機半導体材料の結晶が分散される分散体中の液状媒体は、当該分散体を基板上にトランスファした後、80℃以下の温度で、当該有機半導体材料の溶液の形成を経由せずに、蒸発や抽出などの方法で除去可能であることを特徴とする。分散体を(基板等の)ベース上にトランスファする方法としては、塗布や噴霧の他、ベースを分散体に接触させる方法等が挙げられる。具体的には、スピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ブレード塗布、印刷(平版印刷,凹版印刷,凸版印刷等)などの公知の方法が挙げられる。液体媒体(分散媒)の例としては、各種有機溶媒、液状電解質、超臨界流体などが利用可能である。
例えば、分散体のトランスファ方法にもよるが、通常のインクジェット、ディスペンサ、活版印刷などの方法を用いる場合、液体媒体の沸点は100℃以上、さらに好ましくは150℃以上、そして最も好ましくは200℃程度であることが好ましい。さらに、分散体又は溶液から、含有されることができる前記した可溶性溶媒を除去して薄膜を形成するために、可溶性溶媒の蒸気圧は有機半導体材料の蒸気圧よりも高いことが好ましい。また、電解質を用いる場合、基板上に分散体をトランスファした後に、可溶性溶媒や水を用いて電解質を抽出して薄膜を形成することもできる。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法においては、酸化されにくい有機半導体の結晶粒子分散体を用い、かつ、酸化されやすい溶液状態を経由することなく有機半導体薄膜が形成できるため、薄膜形成時の雰囲気制御が容易となるため好ましい。この理由として、有機半導体の結晶粒子では半導体分子が自己集積した強固な結晶を形成し、酸素分子が結晶粒子内部に侵入しにくいことが考えられる。
さらにこの特徴は薄膜状態でも反映され、本発明の薄膜は大気中でも極めて高い保存安定性を示す。一般の有機半導体薄膜や素子は、大気中保存で大気中の酸素や水蒸気を吸着したりそれと反応したりすることによって劣化するが、本発明の有機半導体薄膜では、有機半導体結晶粒子が基板上に積層して形成され、前記のように粒子内部に酸素や水蒸気が拡散することが困難であるため、保存安定性に優れるものと思われる。本発明の有機半導体素子を大気中、25℃、50%RHでの3ヶ月間、保存した後の電界効果キャリア移動度は、薄膜作製直後の電界効果キャリア移動度に対し、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上で保持される。このため、本発明の素子は、保存安定化、信頼性向上を図ることができる。さらに、通常の有機半導体素子で用いられる有機半導体層の保護層を軽減、簡略でき、さらに用途によっては保護層のない構造で素子を用いることもできるため、素子構造だけでなく、作製工程を簡略化し、低コストで製造できることもできる。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法においては、液状媒体の除去工程は室温で行うことが好ましいが、場合によっては液状媒体の蒸発を調整するために加熱してもよい。但し、この加熱処理の温度は80℃以下である。
分散体の調製、加熱、分散体のベース上への供給、液体媒体の蒸発等の操作は、縮合多環芳香族化合物の構造によっても異なるが、通常は大気下又は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法は、有機半導体材料の溶液状態を本質的に経由しないことが特徴である。分散体に含有される有機半導体材料結晶は、溶液状態に比べ耐酸化安定性に優れるため、有機半導体材料の溶液を取り扱う場合の雰囲気に比べ、雰囲気の制御が容易であるため工業上好ましいものである。
有機半導体薄膜を形成するためのベース材料としては、各種材料が挙げられる。例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリコン、ガリウム砒素、インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛、マイカ等のセラミックスや、アルミニウム、金、ステンレス鋼、鉄、銀等の金属が挙げられる。また、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や、炭素や、紙等が挙げられる。また、ベース材料として各種材料の複合体を用いてもよい。ベースが膨潤したり溶解したりして不都合が生じるおそれがある場合には、ベースに溶媒などが拡散することを抑制するために、バリア層を設けることが好ましい。
ベースの形状は、特に限定されるものではないが、通常はフィルム状のベースや板状のベース(基板)が用いられる。さらに、線状体や繊維構造体をベースとして用いることもできる。なお、分散物や必要があれば用いる前記有機化合物に対するベースの濡れ性を調整するため、ベースの表面に表面処理を施してもよい。分散体の濡れ性にあわせてベース表面を局所的に表面処理して表面エネルギーを調整して局所塗布を行うこともできる。また、ベースに表面エネルギーを調整した材料を局所的にパターン化してバンク構造を形成して分散体を所定の位置(バンク)に保持して薄膜パターンを形成することもできる。
有機半導体素子の製造方法
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子がトランジスタである場合には、その素子構造は、例えば、基板/ゲート電極(シリコン基板)/絶縁体層(誘電体層、ゲート絶縁膜、シリコン酸化膜)/ソース電極及びドレイン電極/有機半導体層という構造;基板/有機半導体層/ソース電極及びドレイン電極/絶縁体層(誘電体層、ゲート絶縁膜、シリコン熱酸化膜)/ゲート電極(シリコン基板)という構造;基板/ソース電極(又はドレイン電極)/半導体層+絶縁体層(誘電体層)+ゲート電極/ドレイン電極(又はソース電極)という構造などが挙げられる。ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極は、それぞれ、複数設けてもよい。また、複数の半導体層を同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。
トランジスタの構成としては、MOS(メタル−酸化物(絶縁体層)−半導体)型、及びバイポーラ型のいずれでもあってもよい。有機半導体のうち、多くはp型半導体であるので、ドナードーピングしてn型半導体とした有機半導体と組み合わせたり、有機半導体又は有機半導体以外のn型半導体と組み合わせたりすることにより、素子を構成することができる。
また、有機半導体素子がダイオードである場合には、その素子構造としては、例えば、電極/n型半導体層/p型半導体層/電極という構造が挙げられ、p型半導体層及び/又はn型半導体層に、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を使用することができる。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素の有機半導体薄膜内部又は有機半導体薄膜表面と電極との接合面の少なくとも一部は、ショットキー接合及び/又はトンネル接合とすることができる。このような接合構造を有する有機半導体素子は、単純な構成でダイオードやトランジスタを作製することができるので好ましい。さらに、このような接合構造を有する有機半導体素子を複数接合して、インバータ、オスシレータ、メモリ、センサ等の素子を形成することもできる。
さらに、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子を表示素子として用いる場合は、表示素子の各画素に配置され各画素の表示をスイッチングするトランジスタ素子(ディスプレイTFT)として利用できる。このようなアクティブ駆動表示素子は、対向する導電性基板のパターニングが不要なため、回路構成によっては、画素をスイッチングするトランジスタを持たないパッシブ駆動表示素子と比べて画素配線を簡略化できる。通常は、1画素当たり1個から数個のスイッチング用トランジスタが配置される。このような表示素子は、基板面に二次元的に形成したデータラインとゲートラインとを交差した構造を有し、データラインやゲートラインがトランジスタのゲート電極、ソース電極、ドレイン電極に、それぞれ、接合されている。なお、データラインとゲートラインとを分割することや、電流供給ライン、信号ラインを追加することもできる。
また、表示素子の画素に、画素配線、トランジスタに加えてキャパシタを併設して、信号を記録する機能を付与することもできる。さらに、表示素子が形成された基板に、データライン及びゲートラインのドライバ、画素信号のメモリ、パルスジェネレータ、信号分割器、コントローラ等を搭載することもできる。
また、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子は、ICカード、スマートカード、及び電子タグにおける演算素子、記憶素子としても利用することができる。その場合、これらが接触型であっても非接触型であっても、問題なく適用可能である。このようなICカード、スマートカード、及び電子タグは、メモリ、パルスジェネレータ、信号分割器、コントローラ、キャパシタ等で構成されており、さらにアンテナ,バッテリを備えていてもよい。
さらに、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子でダイオード、ショットキー接合構造を有する素子、トンネル接合構造を有する素子を構成すれば、そのような素子は光電変換素子、太陽電池、赤外線センサ等の受光素子、フォトダイオードとして利用することもできるし、発光素子として利用することもできる。また、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子でトランジスタを構成すれば、そのようなトランジスタは発光トランジスタとして利用することができる。これらの発光素子の発光層には、公知の有機材料や無機材料を使用することができる。
さらに、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子はセンサとして利用することができ、ガスセンサ、バイオセンサ、血液センサ、免疫センサ、人工網膜、味覚センサ等、種々のセンサに応用することができる。通常は、有機半導体素子を構成する有機半導体薄膜に測定対象物を接触又は隣接させた際に生じる有機半導体薄膜の抵抗値の変化によって、測定対象物の分析を行うことができる。
なお、本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子においては、有機半導体薄膜の上に、保護層、配線、別素子等をさらに積層することもできる。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を有する半導体素子の性能
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜は、シート状結晶から構成され、高いキャリア移動度を有するなど、半導体特性に優れている。このため、本発明に係る方法により得られる有機半導体素子は、高性能となり好ましい。本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法により製造された有機半導体薄膜を用いることにより、エレクトロニクス、フォトニクス、バイオエレクトロニクス等の分野において有益な半導体素子を製造することができる。このような半導体素子の例としては、ダイオード、トランジスタ、薄膜トランジスタ、メモリ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、発光ダイオード、発光トランジスタ、センサ等が挙げられる。
トランジスタ又は薄膜トランジスタは、ディスプレイに利用することが可能であり、液晶ディスプレイ、分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、粒子回転型表示素子、エレクトロクロミックディスプレイ、有機発光ディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示素子に利用可能である。トランジスタ又は薄膜トランジスタは、これらの表示素子において表示画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバー回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等に利用される。
以下の例示を目的とする実施例において、本発明をさらに説明する。
実施例1:液体媒体(イソプロパノール97%以上トリクロロベンゼン1%以下)中ペンタセンの2重量%の分散体
ペンタセン粉末(東京化成工業製)30mgと1,2,4−トリクロロベンゼン30mlの混合物を、窒素雰囲気下で180℃に加熱して、赤紫色の均一溶液を調製した。この溶液を室温のイソプロパノール270mlに滴下してペンタセン結晶粒子を作製した。結晶粒子を放置して沈降させた後デカンテーションで濃縮、溶媒置換して2wt%の分散体(イソプロパノール97%以上トリクロロベンゼン1%以下)とした。なお、これら工程は窒素雰囲気中(酸素濃度50ppm以下)で行った。得られた結晶粒子は、光散乱により平均粒径1.3μm(長径)であり、別途シリコン基板上にイソプロパノールで希釈した分散体を塗布して作製した基板表面のペンタセン粒子の原子間力顕微鏡により、厚さ25nmの角板シート状粒子であることがわかった。
n型ドーパントでドープされたシリコン基板(厚さ200nmの酸化膜を表面に備えていた)を用意し、その表面にソース及びドレイン電極として金電極のパターンを形成した。次いで基板表面にヘキサメチレンジシラザン(和光純薬製)をスピンコート(2,000rpm、20秒)した。このような電極パターンが形成されたシリコン基板表面に、前記分散体を、室温で、塗布(分散液をピペットで基板上に展開)した。その後、液体媒体(分散媒)又は可溶性溶媒を、室温で、蒸発させて平均膜厚230nmのペンタセン薄膜を作製した(簡易グローブボックスの窒素フロー雰囲気、酸素濃度0.1%)。ペンタセン薄膜の表面を走査型電子顕微鏡観察した結果、ペンタセン粒子形状(平均径約2μm)が層状に積層された構造であることが観察された。
得られた薄膜の広角X線回折パターンを測定した結果、(00n)回折ピーク(n=1〜6)が観測され、これ以外の回折ピークは観測されなかった。また面間距離は1.45nmでありペンタセン分子が基板面に垂直方向に配列した結晶性薄膜であることが判明した。
ソース・ドレイン電極パターン上に形成したペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定した結果、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.27cm/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比6桁〜7桁、閾値電圧+3V(20個のトランジスタの平均値)であった。
前記ペンタセン分散体を前記したものと同一の基板に、大気中で、塗布して、ペンタセン薄膜を作製した。このようにして得られた大気中で塗布し形成された薄膜を有する素子のトランジスタ特性を同様に評価したところ、電界効果キャリア移動度0.20cm/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比6桁〜7桁、閾値電圧+8Vであり、大気中で薄膜を形成した素子も良好な性能を示した。
実施例2:液体媒体(イソプロパノール95%以上トリクロロベンゼン5%以下)中ペンタセンの1重量%の分散体
実施例1と同様に調製した均一溶液を徐冷してペンタセンの結晶を析出させた。室温冷却後、ペンタセン結晶はトリクロロベンゼン液の上面に浮遊した状態となり、トリクロロベンゼンを除去してイソプロパノールに置換した分散体(イソプロパノール95%、残存トリクロロベンゼン5%の混合溶媒中のペンタセン1重量%分散体)を調整した。得られた分散体(室温)を、実施例1と同様の電極パターンが表面に形成されたシリコン基板(室温)上に、室温で、展開(分散液をピペットで基板上に展開)した。その後、液体媒体又は可溶性溶媒(分散媒)を、室温で、蒸発させてペンタセン薄膜を形成した。基板上に形成したペンタセン薄膜は平均膜厚100nmであった。ペンタセン薄膜の表面を光学顕微鏡観察した結果、角板状ペンタセン粒子形状(平均径約35μm)が析出された構造であることが観察された。別途シリコン基板上に塗布した分散体を希釈後溶媒乾燥後光学顕微鏡観察した結果、平均粒径35μmからなるシート状結晶が部分的に析出しており、触診式膜厚計による表面ステップよりシート状結晶の厚さは約70nmであることが判明した。これより電極パターン形成基板上に塗布したペンタセン薄膜は、シート状結晶が1層ないし2層で形成されることが判明した。このシート状結晶が部分析出した基板表面を偏光顕微鏡観察した結果、シート状結晶は偏光子回転によって一斉に変化し、結晶ドメインは光学的に均一であり単結晶であることが判明した。
実施例1と同様にこの薄膜の広角X線回折パターンを測定した結果、(00n)回折ピーク(n=1〜6)が観測され、これ以外の回折ピークは観測されなかった。また、面間距離は1.45nmでありペンタセン分子の長軸が基板面に垂直方向に配列した結晶性薄膜であることが判明した。
ソース及びドレイン電極パターンの上に作製したペンタセン薄膜を有するトランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定したところ、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.8cm2/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比6〜8桁、閾値電圧+2V(20個のトランジスタの平均値)であった。
実施例3:液体媒体(テトラリン98%以上トリクロロベンゼン1%以下)中ペンタセンの1重量%の分散体
実施例1と同様の方法で、ペンタセンのトリクロロベンゼン溶液(10ml)を160℃で調製後、200mlのイソプロパノールに攪拌しながら滴下してペンタセン結晶を析出させた。結晶粒子を放置して沈降させた後デカンテーションで濃縮、溶媒置換して1wt%の分散体(テトラリン98%以上トリクロロベンゼン1%以下)とした。得られた結晶粒子は光散乱により平均粒径85nm(長径)であり、別途シリコン基板上にイソプロパノールで希釈した分散体を塗布して作製した基板表面のペンタセン粒子の原子間力顕微鏡により厚さ約15nmの角板シート状結晶粒子であることが判明した。
実施例1と同様にして電極パターンが形成されたシリコン基板表面に前記分散体を、室温で、塗布(分散液をピペットで基板上に展開)した。その後、液体媒体又は可溶性溶媒(分散媒)を、室温で、蒸発させて、平均膜厚100nmのペンタセン薄膜を作製した。ペンタセン薄膜の表面を走査型電子顕微鏡観察した結果、ペンタセン粒子形状(平均径約0.1μm)が層状に積層された構造であることが観察された。膜厚と結晶の形態より得られたペンタセン薄膜中にはシート状結晶が凡そ7層で積層された構造を有することが判明した。
この薄膜の広角X線回折パターンを測定した結果、(00n)回折ピーク(n=1〜6)が観測され、これ以外の回折ピークは観測されなかった。また面間距離は1.45nmでありペンタセン分子が基板面に垂直方向に配列した結晶性薄膜であることがわかった。
ソース及びドレイン電極パターン上に形成したペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定したところ、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.16cm2/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比6桁、閾値電圧+5V(20個のトランジスタの平均値)であった。
実施例4:分散体の局所塗布
実施例3において調製したペンタセン分散体を用い、ディスペンサにより電極パターンが形成されたシリコン基板(実施例1と同様)上の電極チャネルに、室温で、局所塗布して、ペンタセンの薄膜パターンを作製した。
ソース・ドレイン電極パターン上に形成したペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定したところ、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.18cm/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比7桁から8桁、閾値電圧+3V(20個のトランジスタの平均値)であった。
実施例5:液体媒体(ジエチレングリコール:イソプロパノール=体積比50%:50%)中2−ヘキシルペンタセンの1重量%の分散体
4−ヘキシル−1,2−フタルアルデヒドと1,4−ジヒドロアントラセンのカップリングした2−ヘキシル−5,14−ペンタセンキノンを還元して、2−ヘキシルペンタセンを合成した。次いで、窒素雰囲気中2−ヘキシルペンタセン20mgをキシレン20mlに混合して120℃に加熱して均一溶液を調整した。該溶液を室温のジエチレングリコール−イソプロパノール混合液(体積比50%ジエチレングリコール)200mlに滴下して2−ヘキシルペンタセン結晶粒子を析出させた。これを静止放置後、沈降した2−ヘキシルペンタセン結晶粒子をデカンテーションして濃縮し、同様の操作により溶媒置換を行いジエチレングリコール−イソプロパノール(体積比50%−50%)の分散体(2−ヘキシルペンタセン固形分1重量%)を調製した。
実施例1で用いたものと同様の基板上に前記分散体をピペットで、室温で、滴下した。その後、約90℃の温度で減圧乾燥して基板表面に2−ヘキシルペンタセン薄膜(平均膜厚150nm)を形成した。
別途シリコン基板上にイソプロパノールで希釈した分散体を塗布して作製した基板表面の2−ヘキシルペンタセン粒子の光学顕微鏡観察により平均粒径5〜20μmの板状結晶であり、偏光観察において偏光角回転時に粒子内のコントラスト反転が一斉に起こることから単一粒子は単結晶であることが判明した。また、触針式膜厚計により厚さ約55nmのシート状結晶であることが判明した。これにより、得られた膜厚150nmの薄膜は略3層のシート状結晶が積層された構造であることが判明した。
この薄膜の広角X線回折パターンを測定した結果、(00n)回折ピーク(n=1〜6)が観測され、これ以外の回折ピークは観測されなかった。また、面間距離は2.25nmであり2−ヘキシルペンタセン分子が基板面に垂直方向に配列した結晶性薄膜であることが判明した。
ソース及びドレイン電極パターン上に形成した2−ペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定したところ、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.35cm/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比6桁、閾値電圧+5V(20個のトランジスタの平均値)であった。
実施例6:分散体のドクターブレード塗布
SiO2薄膜で表面被覆したポリエチレンテレフタレート上にクロム(膜厚100nm)電極パターンを形成した後、アルミナ薄膜を300nmの厚さでスパッタリング成膜し、さらにこの表面にレジストパターン形成後、チタンを下敷きとして金薄膜を電子線蒸着により成膜(チタン3nm/金32nm)して、レジストのリフトオフでパターンを形成して、基板を作成した。ここで、クロム電極パターンは金電極のチャネル間の下面を埋める構造で形成した。該基板表面に実施例1で作製したペンタセン分散体を、室温で、大気中、ドクターブレード塗布した。その後、液体媒体又は可溶性溶媒(分散媒)を、室温で、乾燥除去して、平均膜厚250nmのペンタセン薄膜を得た。
ペンタセン分散体の塗布で得られた基板のクロム電極を、ゲート電極、金電極をソース及びドレイン電極として電界効果トランジスタの特性を評価したところ、平均キャリア移動度0.23cm2/V・s(20個の素子の平均値)、on/off比6〜7桁、閾値電圧-1V(20個の素子の平均値)であった。
実施例7:液体媒体(テトラデカン:イソプロパノール=体積比50%:50%)中2,3−ジプロピルペンタセンの1重量%の分散体
4,5ジプロピル−1,2−フタルアルデヒドと1,4−ジヒドロアントラセンとをカップリングした2,3−ジプロピル−5,14−ペンタセンキノンを、還元して、2,3−ジプロピルペンタセンを合成した。次いで、窒素雰囲気中2,3−ジプロピルペンタセン20mgをキシレン20mlに混合し、100℃に加熱して均一溶液を調製した。該溶液を室温のイソプロパノール200mlに滴下して、2,3−ジプロピルペンタセン結晶粒子を析出させた。これを静止放置後、沈降した2,3−ジプロピルペンタセン結晶粒子をデカンテーションにより濃縮し、同様の操作により溶媒置換を行い、テトラデカン−イソプロパノール(体積比50%−50%)の分散体(2,3−ジプロピルペンタセン固形分1重量%)を調製した。
実施例1で用いたものと同様の基板上に前記分散体をピペットで、室温で、滴下した。その後、常温で10時間放置して、基板表面に2,3−ジプロピルペンタセン薄膜(平均膜厚100nm)を形成した。
別途シリコン基板上にイソプロパノールで希釈した分散体を塗布して作製した基板表面の2,3−ジプロピルペンタセン粒子の光学顕微鏡観察により平均粒径約2μmの板状結晶であり、偏光観察において偏光角回転時に粒子内のコントラスト反転が一斉に起こることから、単一粒子は単結晶であることが判明した。また、触針式膜厚計により厚さ約25nmのシート状結晶であることが判明した。これにより、得られた膜厚100nmの薄膜は略4層のシート状結晶が積層された構造であることが判明した。
ソース及びドレイン電極パターン上に形成した2,3−ジプロピルペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定したところ、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.56cm/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比6桁、閾値電圧−3V(20個のトランジスタの平均値)であった。
実施例8:液体媒体(テトラデカン:シクロヘキサノール=体積比50%:50%)中2,3−ジメチルペンタセンの10重量%の分散体
4,5ジメチル−1,2−フタルアルデヒドと1,4−ジヒドロアントラセンとをカップリングした2,3−ジメチル−5,14−ペンタセンキノンを還元して、2,3−ジメチルペンタセンを合成した。次いで、窒素雰囲気中2,3−ジメチルペンタセン20mgを2−メチルナフタレン20mlに混合して180℃に加熱して均一溶液を調製した。該溶液を室温のイソプロパノール200mlに滴下して、2,3−ジプロピルペンタセン結晶粒子を析出させた。これを静止放置後、沈降した2,3−ジメチルペンタセン結晶粒子をデカンテーションにより濃縮し、同様の操作により溶媒置換を行い、テトラデカン−シクロヘキサノール(体積比50%−50%)の分散体(2,3−ジメチルペンタセン固形分10重量%)を調製した。分散体の粘度を回転式粘度計で測定した結果、2.5ポイズであることがわかった。
さらに同様の操作によって2,3−ジメチルペンタセンの20重量%分散体(分散媒はテトラデカン50%−シクロヘキサノール)を調整した。この分散液の粘度は8ポイズであった。
実施例1で用いたものと同様の基板上に前記分散液(10重量%)をスピンコート(回転数2000rpm)して基板表面に2,3−ジメチルペンタセン薄膜(平均膜厚110nm)を形成した。また、20重量%の分散液を同様にしてスピンコート(4,000rpm)して平均膜厚350nmの薄膜を作製した。
別途シリコン基板上にイソプロパノールで希釈した分散体を塗布して作製した基板表面の2,3−ジメチルペンタセン粒子は、光学顕微鏡観察により平均粒径約1.5μmの板状結晶であることが、そして触針式膜厚計により厚さ約50nmのシート状結晶であることが判明した。これにより、得られた膜厚110nmの薄膜は、略2層のシート状結晶が積層された構造であることが判明した。
ソース及びドレイン電極パターン上に形成した10重量%の分散液で形成した2,3−ジメチルペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定したところ、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.87cm/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比7桁、閾値電圧−5V(20個のトランジスタの平均値)であった。
また、同様にして20重量%の分散液で形成した20個の薄膜トランジスタの電界効果キャリア移動度の平均値は、0.66cm/V・s、on/off比7桁、閾値電圧平均値は−9Vであった。
実施例9:液体媒体(テトラデカン:イソプロパノール=体積比66%:33%)中2−ヘキシルテトラセンの5重量%の分散体
4−ヘキシル−1,2−フタルアルデヒドと1,4−ジヒドロナフタレンとをカップリングした2−へキシル−5,12−テトラセンキノンを還元して、2−ヘキシルテトラセンを合成した。次いで、窒素雰囲気中2−ヘキシルテトラセン20mgをトルエン20mlに混合して50℃に加熱して均一溶液を調製した。該溶液を室温のイソプロパノール200mlに滴下して、2−ヘキシルテトラセン結晶粒子を析出させた。これを静止放置後、沈降した2−ヘキシルテトラセン結晶粒子をデカンテーションにより濃縮し、同様の操作により溶媒置換を行い、テトラデカン−イソプロパノール(体積比66%−33%)の分散体(2−ヘキシルテトラセン固形分5重量%)を調製した。
実施例1で用いたものと同様の基板上に前記分散体をピペットで、室温で滴下して、基板表面に2−ヘキシルテトラセン薄膜(平均膜厚250nm)を形成した。
別途シリコン基板上にイソプロパノールで希釈した分散体を塗布して作製した基板表面の2−ヘキシルテトラセン粒子は、光学顕微鏡観察により平均粒径約3μmの板状結晶であり、偏光観察において偏光角回転時に粒子内のコントラスト反転が一斉に起こることから、単一粒子は単結晶であることが判明した。また、触針式膜厚計により厚さ約45nmのシート状結晶であることが判明した。これにより、得られた膜厚250nmの薄膜は略5層のシート状結晶が積層された構造であることが判明した。
ソース及びドレイン電極パターン上に形成した2−ペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定したところ、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.08cm/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比7桁、閾値電圧−2V(20個のトランジスタの平均値)であった。
実施例10:液体媒体(テトラデカン:イソプロパノール=体積比80%:20%)中ジフェニルキンキチオフェンの1重量%の分散体
窒素雰囲気中、ジフェニルキンキチオフェン(5,5’’’’-Diphenyl-2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’-quinquethiophene)20mgを2−メチルナフタレン20mlに混合し、180℃に加熱して均一溶液を調製した。該溶液を室温のエタノール180mlに滴下して2,ジフェニルキンキチオフェン結晶粒子を析出させた。これを静止放置後、沈降したジフェニルキンキチオフェン結晶粒子をデカンテーションにより濃縮し、同様の操作により溶媒置換を行い、テトラデカン−イソプロパノール(体積比80%−20%)の分散体(ジフェニルキンキチオフェン固形分1重量%)を調製した。
実施例1で用いたものと同様の基板上に前記分散体をピペットで、室温で、滴下した。その後、約90℃の温度で減圧乾燥して基板表面にジフェニルキンキチオフェン薄膜(平均膜厚80nm)を形成した。
別途シリコン基板上にイソプロパノールで希釈した分散体を塗布して作製した基板表面の2,3−ジプロピルペンタセン粒子は、光学顕微鏡観察により平均粒径約4μmの板状結晶であり、偏光観察において偏光角回転時に粒子内のコントラスト反転が一斉に起こることから単一粒子は単結晶であることが判明した。また、触針式膜厚計により厚さ約35nmのシート状結晶であることが判明した。これにより、得られた膜厚80nmの薄膜は略2層のシート状結晶が積層された構造であることが判明した。
ソース及びドレイン電極パターン上に形成したジフェニルキンキチオフェン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定したところ、飽和領域の電界効果キャリア移動度0.09cm/v・s(20個のトランジスタの平均値)、on/off比7桁、閾値電圧−5V(20個のトランジスタの平均値)であった。
実施例11
ペンタセン粉末(東京化成工業製)30mgと2−メチルナフタレン50mlの混合物を、窒素雰囲気下で180℃に加熱して、赤紫色の均一溶液を調製した。この溶液を室温のイソプロパノール270mlに滴下してペンタセン結晶粒子を作製した。結晶粒子を放置して沈降させた後デカンテーションで濃縮、溶媒置換して2wt%の分散体(テトラデカン20%シクロヘキサノール80%)を調整した。得られた結晶粒子は光散乱により平均粒径0.8μm(長径)であり、別途分散体を塗布して作製した基板表面のペンタセン粒子の触針式膜厚計により厚さ約20nmのシート状粒子であることがわかった。
同様にして繰り返し作製したペンタセン結晶をそれぞれ調製して2重量%の分散液(テトラデカン40%、60%、80%のシクロヘキサノール混合液に分散)を作製した。
これら4種類の分散液の粘度を回転式粘度計で測定した結果、テトラデカン含量20%、40%、60%、80%の分散液の粘度は、それぞれ、35cps、28cps、22cps、13cpsであることがわかった。
n型ドーパントでドープされたシリコン基板(厚さ200nmの酸化膜を表面に備えていた)を用意し、その表面にソース及びドレイン電極として金電極のパターンを形成した。次いで基板表面にヘキサメチレンジシラザン(和光純薬製)をスピンコート(2,000rpm、20秒)した。このような電極パターンが形成されたシリコン基板表面に、前記4種類の分散体を、室温で、ドクターブレード塗布(分散液をピペットで基板上に展開)した。その後、液体媒体(分散媒)又は可溶性溶媒を、室温で、蒸発させて平均膜厚約180〜220nmのペンタセン薄膜を作製した。
それぞれの分散液を用いソース・ドレイン電極パターン上に形成したペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定した結果、飽和領域の電界効果キャリア移動度は、テトラデカン含量20%、40%、60%、80%の分散液に対し、20個のトランジスタの平均値として、それぞれ、0.25cm/v・s、0.29cm/V・s、0.32cm/V・s、0.28cm/V・sであり、on/off比はいずれも6桁〜7桁、閾値電圧は、それぞれ、−2V、−3V、−3V、−2Vであった。
実施例12
実施例11と同様にしてペンタセン粉末30mgと2−メチルナフタレン50mlの混合物を、窒素雰囲気下で180℃に加熱して、赤紫色の均一溶液を調製後、室温のイソプロパノール270mlに滴下してペンタセン結晶粒子を作製した。この操作を繰り返し作製した3組の結晶粒子を沈降させた後、デカンテーションにより濃縮し、遠心分離して得たケーキをイソプロパノールで洗浄した後、減圧乾燥し、その後窒素中で溶媒置換して2wt%の分散体を調製した。ここで分散媒としてシクロヘキサノール30体積%に、それぞれ、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピルをランスした分散媒を用いて分散液を調製した。
これら分散液の表面張力を自動接触角計により評価した結果、分散媒にシクロヘキサノール30体積%にジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピルを、それぞれ、混合した分散液の表面張力は、それぞれ、31mN/m、28mN/m、30mN/mであった。
なお、得られたペンタセン結晶粒子は光散乱により平均粒径1.2μm(長径)であり、別途分散体を塗布して作製した基板表面のペンタセン粒子の触針式膜厚計により、厚さ約25nmのシート状粒子であることがわかった。
実施例1と同様にシリコン基板の表面にソース及びドレイン電極として金電極のパターンを形成し、次いで基板表面にヘキサメチレンジシラザン(和光純薬製)をスピンコート(2000rpm、20秒)した。このような電極パターンが形成されたシリコン基板表面に、前記3種類の分散体を、室温で、ドクターブレード塗布(分散液をピペットで基板上に展開)した。その後、液体媒体(分散媒)又は可溶性溶媒を、室温で、蒸発させて平均膜厚約150nmのペンタセン薄膜を作製した。
前記各分散液を用いてソース・ドレイン電極パターン上に形成したペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定した結果、飽和領域の電界効果キャリア移動度は、前記各分散液に対し、20個のトランジスタの平均値として、それぞれ、0.55cm/V・s(シクロヘキサノール/ジエチレングリコール分散液)、0.45cm/V・s(シクロヘキサノール/メチルイソブチルケトン分散液)、0.39cm/V・s(シクロヘキサノール/酢酸プロピル分散液)、閾値電圧は、それぞれ、0V、−3V、−4Vであった。このように分散媒の組成を変化させて調製した分散体を用いても良好なトランジスタ性能を発揮することがわかった。
実施例13
実施例12で調製した各分散液に、フッ素系界面活性剤(エフトップ351:エチレングリコール/プロピレングリコールアクリレート−パーフルオロアルキルアクリレート共重合体)を、各分散液の重量の0.05%で混合した分散液を調製した。
これらフッ素系界面活性剤を含有する分散液の表面張力を自動接触角計により評価した結果、分散媒にシクロヘキサノール30体積%にジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピルをそれぞれ混合した分散液の表面張力は、それぞれ、22mN/m、18mN/m、19mN/mであった。
実施例1と同様に表面に熱酸化膜が形成されたシリコン基板の表面にソース及びドレイン電極として金電極のパターンを形成した後、撥水性表面処理剤(オプツールDSX)をスピンコートして、表面にフッ素系極薄膜を形成した。被覆後の基板の水接触角より表面エネルギーは15mN/mである。このような電極パターンが形成されフッ素系薄膜が形成されたシリコン基板表面に、前記3種類の分散体を、室温で、塗布(分散液をピペットで基板上に展開)して平均膜厚約約200nmのペンタセン薄膜を作製した。
フッ素系界面活性剤を添加した分散液の基板表面濡れ性は良好であり、均一薄膜が形成されていた。一方、比較として実施例12で調整した分散液(界面活性剤無添加)を該基板に塗布したが、基板表面で分散液がはじかれ、分散液が流動し均一な薄膜は得られなかった。
界面活性剤を添加した各分散液を用いてソース・ドレイン電極パターン上に形成したペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定した結果、飽和領域の電界効果キャリア移動度は、各分散液に対し、20個のトランジスタの平均値としてそれぞれ0.85cm/V・s(シクロヘキサノール/ジエチレングリコール分散液)、0.92cm/V・s(シクロヘキサノール/メチルイソブチルケトン分散液)、0.88cm/V・s(シクロヘキサノール/酢酸プロピル分散液)、閾値電圧は、それぞれ、−5V、−7V、−6Vであった。
実施例14
ペンタセン粉末30mgと2−メチルナフタレン30mlの混合物を、窒素雰囲気下で180℃に加熱して、赤紫色の均一溶液を調製した。この溶液を冷却速度10℃/分及び1℃/分で冷却してペンタセン結晶を成長させた。室温冷却後200mlのイソプロパノール/テトラデカン(イソプロパノール50%)に混合放置した結果、ペンタセン結晶粒子は液の底部に沈降し、さらにデカンテーションによりペンタセン結晶を濃縮した分散液を調製した。ここで形成した分散液の固形分濃度を1%、分散媒組成をイソプロパノール49%、テトラデカン49%、メチルナフタレン2%に調製した。
さらに別途ペンタセン粉末30mgを2−メチルナフタレン30mlに溶解して180℃の均一溶液を調製した後、該溶液を攪拌したイソプロパノール/テトラデカン(イソプロパノール50%)200mlに滴下してペンタセン微結晶を形成し、ペンタセン結晶を沈降分離、濃縮し、溶媒置換によりペンタセン結晶含量1%、分散媒組成イソプロパノール49%、テトラデカン49%、メチルナフタレン2%に調整した分散液を調製した。
形成した3種の分散体をそれぞれ少量シリコン基板上に展開し、溶媒を蒸発させた後、顕微鏡観察した結果、冷却速度1℃/分、10℃/分、溶液滴下で形成したペンタセン結晶の平均粒径は、それぞれ、10μm、2μm、0.8μmであった。また、触針式膜厚計による段差測定で求めたシート状結晶の厚さは、150nm(冷却1℃/分)、80nm(冷却10℃/分)、50nm(溶液滴下)であった。
実施例1と同様にシリコン基板の表面にソース及びドレイン電極として金電極のパターンを形成し、次いで基板表面にヘキサメチレンジシラザン(和光純薬製)をスピンコート(2000rpm、20秒)した基板を準備した。ここで形成した基板面内の電極パターンのチャネル幅500μm、チャネル長は5μm、10μm、20μm、50μmのパターンが混在して形成されていた。このような電極パターンが形成されたシリコン基板表面に、前記3種類の分散体を、室温で、ドクターブレード塗布した。その後、液体媒体(分散媒)を、室温で、蒸発させて平均膜厚約110nmのペンタセン薄膜を作製した。
前記各分散液を用いてソース・ドレイン電極パターン(チャネル長20μm)上に形成したペンタセン薄膜トランジスタを、シリコン基板をゲート電極として電界効果トランジスタの動作を測定した結果、飽和領域の電界効果キャリア移動度は、各分散液に対し、20個のトランジスタの平均値として、それぞれ、1.1cm/V・s(冷却速度1℃/分)、0.65cm/V・s(冷却速度10℃/分)、0.09cm/V・s(溶液滴下)、閾値電圧は、それぞれ、1V、−1V、−2Vであり、そしてon/off比は5桁以上であった。
次いで、測定する素子の温度を調節して、−20℃、120℃の前記の種類の分散液で作製した薄膜トランジスタの特性を測定した。−20℃における電界効果キャリア移動度と室温(30℃)における電界効果キャリア移動度の比(R−20=μ−20/μ30)、及び120℃と30℃の電界効果キャリア移動度の比(R120=μ120/μ30)を求めた結果、冷却速度1℃/分の薄膜ではR−20=1.1、R120=0.9、冷却速度10℃/分の薄膜ではR−20=1.0、R120=1.0であり、溶液滴下で形成した結晶粒子の薄膜では、R−20=0.8、R120=1.3であった。
実施例15
実施例14で作製した3種類の粒径のペンタセン粒子を積層したチャネル長が異なる各薄膜トランジスタの線形領域(ゲート電圧―5V、ドレイン電圧−5V)の半導体薄膜抵抗値を、チャネル長に対してプロットし、チャネル長をゼロに外挿した点(2Rc)より界面抵抗Rcを求めた結果、冷却速度1℃/分、冷却速度10℃/分、溶液滴下で形成したペンタセン結晶を積層した各薄膜で、それぞれ、50kΩ/cm、100kΩ/cm、300kΩ/cmであった。なお電極との界面抵抗を含めた半導体薄膜の抵抗値は、界面抵抗より1桁以上大きいことから、界面抵抗が低く良好な半導体−電極接合が形成されていることがわかった。
実施例16
実施例14で形成した3種類の粒径のペンタセン粒子を積層した薄膜トランジスタを大気中(25℃、湿度50%)に3ヶ月保存した後、薄膜トランジスタ特性を評価し、電界効果キャリア移動度の維持率を評価した。冷却速度1℃/分、10℃/分、溶液滴下で形成したペンタセン結晶が積層された薄膜トランジスタの電界効果キャリア移動度の維持率は、それぞれ、97%、88%、71%であった。
比較例:ペンタセン溶液の190℃での基板塗布により薄膜形成
ペンタセン10mg(東京化成工業社製)と1,2,4−トリクロロベンゼン10mlとを混合した後、窒素中(酸素濃度1ppm以下)190℃で加熱して溶液を調製した。この溶液を、実施例1で用いた表面が電極パターン形成された表面熱酸化シリコン基板に、190℃で、塗布(基板温度190℃)してペンタセン薄膜を形成した(窒素雰囲気中、酸素濃度2ppm以下)。該薄膜のペンタセン薄膜トランジスタ特性を評価したところ、電界効果キャリア移動度は0.45cm/V・s(20個の素子のうち動作不良5個を除く平均)、on/off比は6桁、閾値電圧は3V(20個の素子のうち動作不良5個を除く平均)であった。動作不良の素子は、ペンタセン薄膜中にクラックを有していた。
また、大気中で、ペンタセンとトリクロロベンゼンを混合・加熱して溶液の調製を試みたが、ペンタセンが変性(黄色)したため、薄膜を形成することができなかった。
本発明に係る有機半導体薄膜の製造方法、及び当該方法により製造された薄膜を有する有機半導体素子は、エレクトロニクス、フォトニクス、バイオエレクトロニクス等において利用可能である。

Claims (18)

  1. 以下のステップ:
    有機半導体材料である縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を液状媒体に分散して分散体を形成し;
    得られた分散体を基板上にトランスファした後、前記液状媒体を、80℃以下の温度で、前記縮合多環芳香族化合物の溶液の形成を経由せずに、前記分散体から除去して、前記基板上に、前記縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を積層する;
    を含む、基板上への有機半導体薄膜の製造方法。
  2. 前記分散体中の前記縮合多環芳香族化合物のシート状結晶の含有量が0.3重量%以上8重量%未満であり、前記分散体が前記縮合多環芳香族化合物を溶解することができる可溶性溶媒をさらに含有し、そして前記分散体中の前記可溶性溶媒の含有量が30重量%未満である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記の縮合多環芳香族化合物のシート状結晶が分散された液状分散体において、前記液状分散媒が、30重量%未満の可溶性溶媒と、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、及び脂肪族炭化水素から選ばれる非可溶性液状媒体とから構成される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記縮合多環芳香族化合物がアセン系化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記アセン系化合物がペンタセン又はペンタセン誘導体である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記ペンタセン誘導体が、2−メチルペンタセン、2−ヘキシルペンタセン、2−エチルペンタセン、2−プロピルペンタセン、2−(ペンチルジメチルシリル)ペンタセン、2,3−ジメチルペンタセン、2,3−ジエチルペンタセン、2,3−ジプロピルペンタセン、及び2,3−ジヘキシルペンタセンから選ばれる一種以上である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記アセン系化合物が、テトラセン又はテトラセン誘導体である、請求項4に記載の方法。
  8. 前記テトラセン誘導体が、2−メチルテトラセン、2−エチルテトラセン、2−プロピルテトラセン、2−ヘキシルペンタセン、2,3−ジメチルテトラセン、2,3−ジエチルテトラセン、2,3−ジプロピルテトラセン、及び2,3−ジヘキシルテトラセンから選ばれる一種以上である、請求項7に記載の方法。
  9. 縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を液状媒体に分散した液状分散体であって、該分散体は、該縮合多環芳香族化合物を溶解することができる可溶性溶媒をさらに含有し、ここで、該シート状結晶の含有量は、0.3重量%以上8重量%未満であり、該縮合多環芳香族化合物を溶解することができる可溶性溶媒は10重量%未満であり、そして該分散体の残部は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、及び脂肪族炭化水素から選ばれる非可溶性液状媒体で構成されることを特徴とする前記分散体。
  10. 前記非可溶性液状媒体が、アルコール類又は脂肪族炭化水素である、請求項9に記載の分散体。
  11. 前記非可溶性液状媒体として、アルコール類を20重量%以上80%未満で含有する、請求項9又は10に記載の分散体。
  12. 前記分散体の室温における粘度が0.5センチポイズ以上10ポイズ以下である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の分散体。
  13. 前記分散体の表面張力が10mN/m以上45mN/m以下である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の分散体。
  14. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により製造された有機半導体薄膜。
  15. 請求項14に記載の有機半導体薄膜を有する有機半導体素子。
  16. −20℃における電界効果移動度対30℃における電界効果移動度の比(R−20=μ−20/μ30)と、120℃における電界効果移動度対30℃における電界効果移動度の比(R120=μ120/μ30)はともに、0.2以上2以下である、請求項15に記載の有機半導体素子。
  17. 半導体/電極の界面抵抗が2MΩ/cm以下である、請求項15又は16に記載の有機半導体素子。
  18. 大気中、30℃、50%RHで3ヶ月間保存した後の電界効果移動度が、前記有機半導体薄膜を作製した直後の電解効果移動度に対し70%以上で保持される、請求項15〜17のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
JP2009014287A 2008-01-25 2009-01-26 縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を基板上に積層することを含む新規有機半導体薄膜の製造方法、及び液状分散体 Expired - Fee Related JP5576611B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009014287A JP5576611B2 (ja) 2008-01-25 2009-01-26 縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を基板上に積層することを含む新規有機半導体薄膜の製造方法、及び液状分散体

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008014536 2008-01-25
JP2008014536 2008-01-25
JP2009014287A JP5576611B2 (ja) 2008-01-25 2009-01-26 縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を基板上に積層することを含む新規有機半導体薄膜の製造方法、及び液状分散体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009200484A true JP2009200484A (ja) 2009-09-03
JP5576611B2 JP5576611B2 (ja) 2014-08-20

Family

ID=41143604

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009014287A Expired - Fee Related JP5576611B2 (ja) 2008-01-25 2009-01-26 縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を基板上に積層することを含む新規有機半導体薄膜の製造方法、及び液状分散体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5576611B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012029544A1 (ja) * 2010-08-29 2012-03-08 国立大学法人信州大学 有機半導体微粒子材料、有機半導体薄膜、有機半導体膜形成用分散液、有機半導体薄膜の製造方法および有機薄膜トランジスタ
WO2013046547A1 (ja) * 2011-09-26 2013-04-04 パナソニック株式会社 有機薄膜トランジスタ
JP2013533608A (ja) * 2010-05-27 2013-08-22 コーニング インコーポレイテッド ポリマー縮合チオフェン半導体配合物
JP5398910B2 (ja) * 2010-05-12 2014-01-29 帝人株式会社 有機半導体膜及びその製造方法、並びにコンタクトプリント用スタンプ
JP2014530490A (ja) * 2011-09-14 2014-11-17 コミッサリアア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ 有機電界効果トランジスタ
JP2015156474A (ja) * 2013-12-17 2015-08-27 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー 高い結晶性の電気伝導性有機材料、それらの製造方法、及びそれらを含む物品

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005281180A (ja) * 2004-03-29 2005-10-13 Asahi Kasei Corp 縮合多環芳香族化合物微粒子及びその製造方法、並びに、縮合多環芳香族化合物薄膜及びその製造方法
JP2006344895A (ja) * 2005-06-10 2006-12-21 Asahi Kasei Corp 縮合多環芳香族化合物を含有する混合物,縮合多環芳香族化合物薄膜,及びその製造方法
JP2007134629A (ja) * 2005-11-14 2007-05-31 Konica Minolta Holdings Inc 半導体層の成膜方法、半導体層を成膜する製造装置
JP2007287968A (ja) * 2006-04-18 2007-11-01 Fuji Electric Holdings Co Ltd 薄膜電界効果トランジスタの製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005281180A (ja) * 2004-03-29 2005-10-13 Asahi Kasei Corp 縮合多環芳香族化合物微粒子及びその製造方法、並びに、縮合多環芳香族化合物薄膜及びその製造方法
JP2006344895A (ja) * 2005-06-10 2006-12-21 Asahi Kasei Corp 縮合多環芳香族化合物を含有する混合物,縮合多環芳香族化合物薄膜,及びその製造方法
JP2007134629A (ja) * 2005-11-14 2007-05-31 Konica Minolta Holdings Inc 半導体層の成膜方法、半導体層を成膜する製造装置
JP2007287968A (ja) * 2006-04-18 2007-11-01 Fuji Electric Holdings Co Ltd 薄膜電界効果トランジスタの製造方法

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5398910B2 (ja) * 2010-05-12 2014-01-29 帝人株式会社 有機半導体膜及びその製造方法、並びにコンタクトプリント用スタンプ
JP2013533608A (ja) * 2010-05-27 2013-08-22 コーニング インコーポレイテッド ポリマー縮合チオフェン半導体配合物
JP5613948B2 (ja) * 2010-08-29 2014-10-29 国立大学法人信州大学 有機半導体微粒子材料、有機半導体薄膜、有機半導体膜形成用分散液および有機半導体薄膜の製造方法
CN103081149A (zh) * 2010-08-29 2013-05-01 国立大学法人信州大学 有机半导体微粒材料、有机半导体薄膜、有机半导体膜形成用分散液、有机半导体薄膜的制造方法及有机薄膜晶体管
WO2012029544A1 (ja) * 2010-08-29 2012-03-08 国立大学法人信州大学 有機半導体微粒子材料、有機半導体薄膜、有機半導体膜形成用分散液、有機半導体薄膜の製造方法および有機薄膜トランジスタ
US9518224B2 (en) 2010-08-29 2016-12-13 Shinshu University Organic semiconductor particulate material, organic semiconductor thin-film, dispersion liquid for forming organic semiconductor film, method for producing organic semiconductor thin-film, and organic thin-film transistor
JP2014530490A (ja) * 2011-09-14 2014-11-17 コミッサリアア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ 有機電界効果トランジスタ
CN103477440A (zh) * 2011-09-26 2013-12-25 松下电器产业株式会社 有机薄膜晶体管
WO2013046547A1 (ja) * 2011-09-26 2013-04-04 パナソニック株式会社 有機薄膜トランジスタ
US8916863B2 (en) 2011-09-26 2014-12-23 Panasonic Corporation Organic thin-film transistor and method of manufacturing organic thin-film transistor
JPWO2013046547A1 (ja) * 2011-09-26 2015-03-26 パナソニック株式会社 有機薄膜トランジスタ
JP2015156474A (ja) * 2013-12-17 2015-08-27 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー 高い結晶性の電気伝導性有機材料、それらの製造方法、及びそれらを含む物品
US10600964B2 (en) 2013-12-17 2020-03-24 Rohm And Haas Electronic Materials Llc Highly crystalline electrically conducting organic materials, methods of manufacture thereof and articles comprising the same

Also Published As

Publication number Publication date
JP5576611B2 (ja) 2014-08-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Pandey et al. Recent advances in the orientation of conjugated polymers for organic field-effect transistors
Umeda et al. Surface-energy-dependent field-effect mobilities up to 1 cm2/V s for polymer thin-film transistor
JP4812079B2 (ja) 有機半導体ダイオード
JP5576611B2 (ja) 縮合多環芳香族化合物のシート状結晶を基板上に積層することを含む新規有機半導体薄膜の製造方法、及び液状分散体
Umeda et al. High-mobility and air-stable organic thin-film transistors with highly ordered semiconducting polymer films
JP2005272460A (ja) ポリアセン化合物及び有機半導体薄膜
US20110017981A1 (en) Process for the preparation of semiconducting layers
JP2011003852A (ja) 硫黄原子を含有する縮合多環芳香族化合物のシート状結晶が基板上に積層された有機半導体薄膜、及びその製法
JP4783282B2 (ja) 縮合多環芳香族化合物薄膜及び縮合多環芳香族化合物薄膜の製造方法
JP2005072569A (ja) 有機電界効果トランジスタ
JP2007273594A (ja) 電界効果トランジスタ
WO2014136436A1 (ja) 有機薄膜トランジスタ及びその製造方法
Waheed et al. Performance improvement of ultrasonic spray deposited polymer solar cell through droplet boundary reduction assisted by acoustic substrate vibration
JP2010123951A (ja) 薄膜トランジスタおよび半導体組成物
WO2014136942A1 (ja) 有機薄膜の形成方法
WO2021110162A1 (zh) 一种有机单晶异质结复合膜、其制备方法及用途
JP4500082B2 (ja) 縮合多環芳香族化合物微粒子の製造方法、並びに、縮合多環芳香族化合物薄膜の製造方法
Kang et al. Influence of substrate temperature and overlap condition on the evaporation behavior of inkjet-printed semiconductor layers in organic thin film transistors
Johnson et al. Structural characterization of α, ω-DH6T monolayer films grown at the liquid–liquid interface
JP2006344895A (ja) 縮合多環芳香族化合物を含有する混合物,縮合多環芳香族化合物薄膜,及びその製造方法
JP2005294737A (ja) 縮合多環芳香族化合物薄膜の製造方法
JP5630364B2 (ja) 有機半導体素子の製造方法および有機半導体素子
WO2023217034A1 (zh) 一种有机场效应晶体管及其制备方法
Liu et al. AC 6-DPA/PMMA binary blend ink for high-performance inkjet-printed organic field-effect transistors
Ishihara et al. Highly Ordered Molecular Orientation in a Phthalocyanine Film Deposited on a Well-Polished Indium–Tin Oxide Substrate

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131022

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131217

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140701

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140704

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5576611

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees