JP2009200411A - はんだ接合部、プリント配線板およびはんだの接合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ランド剥離の発生を防止するはんだ接合部、プリント配線板およびはんだの接合方法、を提供する。
【解決手段】はんだ接合部は、基材12の実装面13aと裏面13bとを貫通するスルーホール14と、スルーホール14に挿入される電子部品のリード部46とが接合されるはんだ接合部である。実装面13a側および裏面13b側のスルーホール14の開口部には、それぞれランド32が配置される。はんだ接合部は、裏面13b側のランド32と鉛フリーはんだ21のフィレット22との界面に、はんだの低融点相の偏析を有する。
【選択図】図1

Description

この発明は、一般的には、はんだ接合部、プリント配線板およびはんだの接合方法に関し、より特定的には、無鉛はんだが使用されるはんだ接合部、プリント配線板およびはんだの接合方法法に関する。
従来のはんだ接合部に関して、たとえば、特開2002−237674号公報には、ランドはく離を抑制することを目的とした回路基板およびそれを用いた電子機器が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された回路基板においては、ランド端部の全周または一部に被せるようにして、基板表面にソルダレジストが形成されている。
特開2002−237674号公報
近年、環境保護の観点から、接合用に使用されるはんだから鉛を除去した、いわゆる鉛フリーはんだ(たとえば、Sn−Ag−Cu系はんだ)が、プリント配線板への電子部品の実装に利用されている。
しかしながら、鉛フリーはんだは、鉛を含むはんだと比較して引っ張り強度、クリープ強度が大きく、伸びが小さいという特性を有するため、はんだ接合部において応力緩和が起こり難くなる。また、鉛フリーはんだは、一般的に溶融温度が高くなるため、はんだ形成後の凝固工程における収縮量も大きくなる。これらに起因し、鉛フリーはんだを用いた場合には、ランドが基材から浮き上がる、いわゆるランド剥離と呼ばれる現象が多発する。
これに対して、上述の特許文献1における回路基板においては、ランド剥離を防ぐために、回路基板の表面をはんだから保護するためのソルダレジストを利用する。しかしながら、このような方法によってもランド剥離を完全に防ぐことはできない。特に、はんだ接合部が高温になる、こてはんだ付けの場合には、ランド剥離が起こり易くなり、はんだ接合部の信頼性の低下が懸念される。
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、ランド剥離の発生を防止するはんだ接合部、プリント配線板およびはんだの接合方法を提供することである。
この発明に従ったはんだ接合部は、基材の実装面と裏面とを貫通するスルーホールと、スルーホールに挿入される電子部品のリード部とが接合されるはんだ接合部である。実装面側および裏面側のスルーホールの開口部には、それぞれ電極が配置される。はんだ接合部は、裏面側の電極とはんだのフィレットとの界面に、はんだの低融点相の偏析を有する。
この発明に従えば、ランド剥離の発生を防止するはんだ接合部、プリント配線板およびはんだの接合方法を提供することができる。
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるはんだ接合部を示す断面図である。図1を参照して、本実施の形態におけるはんだ接合部の基本的な構造についてまず説明すると、はんだ接合部は、基材12の実装面13aと裏面13bとを貫通するスルーホール14と、スルーホール14に挿入される電子部品のリード部46とが接合されるはんだ接合部である。実装面13a側および裏面13b側のスルーホール14の開口部には、それぞれ電極としてのランド32が配置される。はんだ接合部は、裏面13b側のランド32とはんだとしての鉛フリーはんだ21のフィレット22との界面に、はんだの低融点相の偏析を有する。
はんだ接合部は、主表面13を有する基材12と、ランド32と、鉛フリーはんだ21とを備える。基材12には、主表面13に開口し、電子部品のリード部46が挿入されるスルーホール14が形成される。ランド32は、主表面13を被覆し、スルーホール14の開口の周囲に配置される。鉛フリーはんだ21は、ランド32上に配置されるフィレット22を有し、スルーホール14を充填する。鉛フリーはんだ21は、フィレット22とランド32とが剥離するように設けられる。
続いて、図1中のはんだ接合部の構造について詳細な説明を行なう。本実施の形態におけるはんだ接合部の構造は、電子部品45(図3を参照)を実装するプリント配線板10に用いられている。
基材12は、主表面13の延在方向に板状に広がる形状を有する。主表面13は、電子部品45が実装される実装面13aと、その裏側に面する裏面13bとから構成されている。基材12には、主表面13に開口するスルーホール14が形成されている。スルーホール14は、実装面13aから裏面13bに達する貫通孔である。スルーホール14は、主表面13に略円形の開口面を有する。
基材12は、エポキシ樹脂が含浸させられたガラスクロスから形成されている。基材12は、これに限られず、たとえば、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂などが含浸させられた、絶縁性を有する材料(紙基材またはポリエステル基材など)から形成されてもよい。
基材12には、導電材料から形成された導電部材31が設けられている。導電部材31は、筒部33およびランド32を含んで構成されている。ランド32は、主表面13(実装面13aおよび裏面13b)上においてスルーホール14を中心に環状に延在する形状を有する。ランド32は、主表面13に対して面接触し、密着している。筒部33は、スルーホール14を規定する基材12の内壁を覆うように形成されている。ランド32は、スルーホール14の開口の周縁から筒部33へと連なって形成されている。
スルーホール14には、電子部品45のリード部46が挿入されている。リード部46は、スルーホール14内部において、リード部46の外周面と導電部材31の内周面との間に隙間を設けるように配置されている。
主表面13には、回路配線としての配線パターン36が形成されている。ランド32は、配線パターン36に接続されている。本実施の形態では、裏面13b上において、ランド32と配線パターン36とが接続されている。主表面13には、さらにソルダレジスト41が形成されている。ソルダレジスト41は、ランド32を避け、かつ配線パターン36を覆うように形成されている。
リード部46は、鉛フリーはんだ21によって基材12に対してはんだ付けされている。鉛フリーはんだ21は、Bi(ビスマス)を含有するSn基合金から形成されている。本実施の形態では、鉛フリーはんだ21が、Sn−Ag−Cu系はんだに、微量のBiを添加したSn−3.0Ag−0.5Cu−1.0Biから形成されている。
鉛フリーはんだ21は、充填部25およびフィレット22を含んで構成されている。充填部25は、スルーホール14内部を充填するように形成されている。充填部25は、リード部46の外周面と導電部材31の内周面との間の隙間を充填するように形成されている。フィレット22は、スルーホール14からはみ出した鉛フリーはんだ21の部分であり、ランド32上に配置されている。フィレット22は、主表面13上においてランド32と向い合うフィレット裏面23を有する。鉛フリーはんだ21は、裏面13b上においてフィレット22がランド32から浮き上がった状態、つまりランド32とフィレット裏面23との間に隙間が形成された状態に設けられている。本実施の形態におけるはんだ接合部は、裏面13b側においてランド32とフィレット22との界面に、はんだの低融点相の偏析を有する。
なお、鉛フリーはんだ21は、実装面13aおよび裏面13b上の双方においてフィレット22がランド32から浮き上がった状態に設けられてもよい。
図2および図3は、図1中のはんだ接合部の製造方法の工程を示す断面図である。次に、図1中のはんだ接合部の製造方法について実施例を用いて説明する。以下に説明する実施例では、いわゆるフローはんだ付け工程によって、基材12に対するリード部46のはんだ付けを行なった。
図2を参照して、基材12に、導電部材31、配線パターン36およびソルダレジスト41を形成し、スルーホール14の開口部にランド32が配置された基材12を準備した。
図3を参照して、次に、スルーホール14に電子部品45のリード部46を挿入した。コンベア51によって基材12を搬送しつつ、その基材12を裏面13b側から溶融はんだ52に浸漬させることにより、スルーホール14に溶融はんだ52を充填した。使用した溶融はんだ52は、上記のSn−3.0Ag−0.5Cu−1.0Biであり、はんだの融液温度を250℃とし、コンベア51の送り速度を1.0m/minとした。また、フラックスとして、標準的なRMAタイプのものを使用した。基材12を溶融はんだ52から離脱させた後、冷却により、はんだを凝固させた。以上の工程により、図1中のはんだ接合部が得られた。
次に、上記のはんだ接合部の製造方法により、図1中に示すはんだ接合部が得られる理由について説明する。
図4は、比較のためのはんだ接合部を示す断面図である。図5は、図4中のはんだ接合部で生じる配線パターンの断線を説明するための断面図である。図4および図5中の比較のためのはんだ接合部は、図1中のはんだ接合部と比較して、裏面13b側のフィレット22とランド32とが接触している点で異なる。
図4および図5を参照して、はんだの凝固工程時、はんだと基材12との熱収縮差に起因して、はんだ接合部に過大な応力が作用する。これにより、フィレット22がランド32から剥離しようとし、このフィレット22に追従してランド32も一緒に裏面13bから剥離する。このランド剥離に伴って配線パターン36も裏面13bから浮き上がるため、比較のためのはんだ接合部では、図5中に示すように配線パターン36の断線が生じる懸念が生じる。
一方、本実施の形態におけるはんだ接合部について説明すると、基材12が溶融はんだ52に接触した後のはんだ接合部において、溶融はんだ52の最終凝固位置は、溶融はんだ52が最後に離脱する、裏面13b側のランド32と、はんだのフィレット22との界面となる。このため、このフィレット22の界面位置に、溶融はんだ52に含まれるBiの低融点相(Sn−58Bi)が偏析する。すなわち、はんだの凝固工程において、基材12の実装面13a側を低温側とし、裏面13b側を高温側とする温度勾配を持たせて、裏面13b側のフィレット22とはんだとの界面にBiの低融点相を偏析させる。
Biの低融点相が偏析した部分では、はんだの接合強度が低くなる。このため、フローはんだ付け工程の後の冷却過程において、はんだと基材12との間に熱収縮差が生じた時に、Biの低融点相が偏析したはんだのフィレット22の部分をより積極的にランド32から剥離させることができる。この結果、ランド32が裏面13bから剥離することを防止できる。
なお、はんだの凝固工程時、はんだを空冷または水冷により急冷すると、ランド32とはんだのフィレット22との界面に発生させる低融点相の偏析が抑制される。この場合、目的とするフィレット22がランド32から浮き上がったはんだ接合部が得られ難くなる。このため、はんだの凝固工程時の冷却は自然冷却が好ましい。
図6は、ランドの大きさと、ランド剥離の発生確率との関係を示す表である。図6を参照して、図4中に示す比較のためのはんだ接合部を用いた電子機器に、−40℃(30分間)および125℃(30分間)の温度サイクルを与える試験を1000サイクルまで実施した。試験後のサンプルの基材12を断面観察し、ランド剥離の有無を確認した。
図1中に示すように、実装面13aを正面から見た場合のランド32の内径をD1と呼び、ランド32の外径をD2と呼ぶ。ランド32の内外径の差(D2−D1)が0.4mm未満の場合、フィレット22が小さく、フィレット22によるランド32の拘束力が小さくなるため、ランド剥離は起こり難くなる。一方、ランド32の内外径の差が1.2mmを越える場合、ランド32と基材12との接触面積が大きくなり、主表面13に対するランド32の密着力が大きくなるため、ランド剥離は起こり難くなる。このため、上記試験では、ランド32の内外径の差が0.4mm以上1.2mm以下の場合に、ランド剥離の発生が顕著となった。つまり、ランド32の内外径の差が0.4mm以上1.2mm以下の場合に、本発明は特に有効に適用される。
図7は、Sn−3.0Ag−0.5Cuはんだに関する、Bi添加量とはんだの伸びとの関係を示すグラフである。図7を参照して、Bi添加量とはんだの伸びとの間には、相関関係があり、Bi添加量が1.5質量パーセント以上の場合、はんだの機械的特性、特に伸びが著しく低下する。このため、図1中のはんだ接合部において、鉛フリーはんだ21に対するBi添加量を1.5質量パーセント未満に設定することが好ましい。
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるはんだ接合部によれば、裏面13b側においてランド32とフィレット22との界面に、はんだの低融点相の偏析を有する構成により、はんだ凝固工程時に、ランド32が主表面13から剥離することを防止できる。これにより、配線パターン36の断線を防ぎ、はんだ接合部の信頼性を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、鉛フリーはんだ21がSn−Ag−Cu系の場合について説明したが、これに限られず、たとえば、Sn−Cu系はんだ、Sn−Ag系はんだ、Sn−Zn系はんだ、またはSn−Sbはんだのいずれかが鉛フリーはんだ21に用いられてもよい。また、本発明は、鉛フリーはんだを用いる場合により好適に適用されるが、鉛を含有するはんだを用いる場合にも適用可能である。また、本実施の形態では、フローはんだ付け工程によって図1中のはんだ接合部を製造した場合を説明したが、こてはんだ付け工程による場合にも図1中のはんだ接合部の構造を得て、上記効果を同様に得ることができる。
(実施の形態2)
この発明の実施の形態2におけるはんだ接合部では、実施の形態1におけるBiに替えて、In(インジウム)が鉛フリーはんだ21に添加される。この場合においても、はんだの凝固工程時、ランド32とフィレット22との界面に、Inの低融点相(Sn−50In)が偏析する。このInの低融点相が偏析した部分では、はんだの接合強度が低くなる。このため、Inの低融点相が偏析したフィレット22の部分をより積極的にランド32から剥離させ、ランド32が裏面13bから剥離することを防止できる。
図8は、Sn−In二元系の平衡状態図である。図8を参照して、プリント配線板は、高温環境下(たとえば、車載機器においては約120℃)で使用されることもある。このため、鉛フリーはんだ21に対するInの添加量が20質量パーセント以上の場合、鉛フリーはんだ21の融点(固相線)が使用環境温度よりも低くなり、はんだ接合部の接合信頼性が確保されない。このため、図1中のはんだ接合部において、鉛フリーはんだ21に対するIn添加量を20質量パーセント未満に設定することが好ましい。
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるはんだ接合部によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明の実施の形態1におけるはんだ接合部を示す断面図である。 図1中のはんだ接合部の製造方法の第1工程を示す断面図である。 図1中のはんだ接合部の製造方法の第2工程を示す断面図である。 比較のためのはんだ接合部を示す断面図である。 図4中のはんだ接合部で生じる配線パターンの断線を説明するための断面図である。 ランドの大きさと、ランド剥離の発生確率との関係を示す表である。 Sn−3.0Ag−0.5Cuはんだに関する、Bi添加量とはんだの伸びとの関係を示すグラフである。 Sn−In二元系の平衡状態図である。
符号の説明
10 プリント配線板、12 基材、13 主表面、13a 実装面、13b 裏面、14 スルーホール、21 鉛フリーはんだ、22 フィレット、32 ランド、36 配線パターン、45 電子部品、46 リード部、52 溶融はんだ。

Claims (9)

  1. 基材の実装面と裏面とを貫通するスルーホールと、前記スルーホールに挿入される電子部品のリード部とが接合されるはんだ接合部であって、
    実装面側および裏面側の前記スルーホールの開口部には、それぞれ電極が配置され、
    裏面側の前記電極とはんだのフィレットとの界面に、はんだの低融点相の偏析を有する、はんだ接合部。
  2. 実装面側の前記電極は、前記スルーホールの開口部の周縁から、前記スルーホールを規定する前記基材の内壁に連なるように形成され、
    実装面を正面から見た場合の前記電極の内径と外径との差が、1.2mm以下である、請求項1に記載のはんだ接合部。
  3. 実装面側の前記電極は、前記スルーホールの開口部の周縁から、前記スルーホールを規定する前記基材の内壁に連なるように形成され、
    実装面を正面から見た場合の前記電極の内径と外径との差が、0.4mm以上である、請求項1または2に記載のはんだ接合部。
  4. 前記はんだは、BiおよびInのいずれか一方を含有するSn基合金である、請求項1から3のいずれか1項に記載のはんだ接合部。
  5. 前記Sn基合金は、1.5質量パーセント未満のBiを含有する、請求項4に記載のはんだ接合部。
  6. 前記Sn基合金は、20質量パーセント未満のInを含有する、請求項4に記載のはんだ接合部。
  7. 前記はんだは、無鉛はんだである、請求項1から6のいずれか1項に記載のはんだ接合部。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載のはんだ接合部を備え、前記電極に接続される回路配線が形成される、プリント配線板。
  9. 基材の実装面と裏面とを貫通するスルーホールと、前記スルーホールに挿入される電子部品のリード部とを接合するはんだの接合方法であって、
    実装面側および裏面側の前記スルーホールの開口部に、それぞれ電極が配置された基材を準備する工程と、
    前記スルーホールにはんだを充填する工程と、
    前記基材の実装面側を低温側とし、裏面側を高温側とする温度勾配を持たせて、裏面側の前記電極とはんだとの界面にはんだの低融点相を偏析させる凝固工程とを備える、はんだの接合方法。
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