以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体ウェハの全体斜視図であり、図2は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体ウェハの一部を示した平面図である。図3は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体ウェハの一部を拡大して示した平面図であり、図4は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体ウェハの一部を示した断面図である。図5〜図8は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体ウェハの構造を説明するための図である。まず、図1〜図8を参照して、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体ウェハの構造について説明する。
第1実施形態による窒化物系半導体ウェハは、図1および図4に示すように、n型GaN基板1の上面(主面)上に活性層5(図4参照)を含む窒化物半導体層20が積層された構造を有している。このn型GaN基板1には、上面から厚み方向に掘られた複数の溝部1aが設けられている。この溝部1aは、図1および図5に示すように、[1−100]方向に沿って延びるとともに、[1−100]方向と直交する[11−20]方向に約400μmの間隔a1(図5参照)を隔てて配列されている。また、複数の溝部1aは、図3および図4に示すように、それぞれ、[1−100]方向に約2μm〜約100μm(たとえば約60μm)の幅w11を有しているとともに、n型GaN基板1の厚み方向に約1μm〜約10μm(たとえば約3μm)の深さd1(図4参照)を有している。なお、n型GaN基板1は、本発明の「窒化物半導体基板」の一例であり、溝部1aは、本発明の「凹部」の一例である。
また、窒化物半導体層20は複数の半導体層から構成されており、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などのエピタキシャル成長法によって、n型GaN基板1上に順次形成されている。
ここで、第1実施形態では、n型GaN基板1の上面に複数の溝部1aが形成されることによって、溝部1a上では、様々な方向から成長が進行して会合部に欠陥(結晶欠陥)が生じている一方、溝部1a以外の領域上では規則正しく成長が進行して、欠陥(結晶欠陥)を伴う成長の会合が抑えられている。このため、図3および図4に示すように、窒化物半導体層20における溝部1aの上方に位置する領域20aは、溝部1aに起因して(溝部1aの影響により)結晶欠陥が多く存在している。その一方、溝部1a以外の領域の上方に位置する領域は、結晶欠陥や歪みが抑えられている。このため、n型GaN基板1に溝部1aを形成することによって、n型GaN基板1上に積層される窒化物半導体層20にクラックが入るのを抑制することができる。これにより、製造歩留を向上させることが可能となる。
一方、n型GaN基板1に溝部1aを形成した場合には、窒化物半導体層20における溝部1a上に位置する領域20aに後述する導波路30を形成することが困難になる。すなわち、n型GaN基板1に溝部1aが形成されることによって、溝部1aの形成領域が導波路形成が困難な領域となる。また、n型GaN基板1上に窒化物半導体層20をエピタキシャル成長させた際に、溝部1aの周辺領域では、エピタキシャル成長中に原子が拡散の制限などの影響を受けるため、溝部1aの周辺領域の上方には、層厚が不均一な乱れ領域20bが形成される。第1実施形態では、図3に示すように、乱れ領域20bは、平面的に見て溝部1aの両端部側にそれぞれ約65μm〜約80μmの幅w12で形成されている。なお、乱れ領域20bの幅w12は、溝部1aの断面積(幅w11×深さd1)やn型GaN基板1の状態(オフ角や表面処理など)によって決まると考えられるが、その値を制御することは困難である。また、このような乱れ領域20bは、基板に溝部1aを形成しなくとも、欠陥集中領域が存在する基板を用いれば、同様に生じる。
また、図2および図3に示すように、窒化物半導体層20には、溝部1aの上方に位置する領域20aと乱れ領域20bとによって、領域20c(ハッチング部分)が構成されている。この領域20cは、[1−100]方向に延びるように形成されており、[11−20]方向に約132μm〜約220μmの幅w13を有している。また、領域20cは、[11−20]方向に周期的に形成されている。なお、領域20aには、上記したように、溝部1aの影響によって結晶欠陥が多く存在するため、領域20aに導波路30を形成するのは困難である。また、乱れ領域20bは、層厚が不均一であるため、導波路30を形成するための後述するリッジ部10(図3および図4参照)を精度よく形成することが困難となる。このため、水平放射角の制御が困難となるので、乱れ領域20bは、導波路30の形成に適さない。したがって、領域20aと乱れ領域20bとによって構成される領域20cも、導波路30の形成に適さない。なお、溝部1aの形成領域は、本発明の「第1領域」の一例であり、窒化物半導体層20における溝部1aの上方に位置する領域20aは、本発明の「第2領域」の一例である。また、乱れ領域20bは、本発明の「第3領域」の一例であり、領域20cは、本発明の「第4領域」の一例である。
また、窒化物半導体層20の所定領域には、図4に示すように、電流通路部となる凸状のリッジ部10が形成されている。このリッジ部10は、図3に示すように、[1−100]方向に延びるとともに、[11−20]方向に配列されることによってストライプ状に形成されている。そして、このリッジ部10の形成によって、窒化物半導体層20にストライプ状の導波路30が形成されている。また、図4に示すように、窒化物半導体層20の上面上であるとともにリッジ部10の両脇には、電流狭窄を行うための埋め込み層12が形成されている。
ここで、第1実施形態では、図3に示すように、導波路形成に適さない領域20cの間の領域20dに、それぞれ、上記リッジ部10が複数形成されており、これによって、領域20dに複数の導波路30が形成されている。また、第1実施形態では、上記リッジ部10が、[11−20]方向に非等間隔で形成されることによって、ストライプ状の導波路30が、[11−20]方向に非等間隔で形成されている。具体的には、上記した領域20dに、リッジ部10が3本ずつ形成されている。この3本のリッジ部10は、隣り合うリッジ部10間の間隔w21およびw22が、それぞれ、約120μmおよび約80μmとなるように形成されている。また、溝部1aの両側に形成されるリッジ部10は、その間の間隔w23が約220μmとなるように形成されている。なお、領域20dは、本発明の「第5領域」の一例である。
また、第1実施形態では、ストライプ状のリッジ部10が上記のように形成されることによって、1枚の窒化物系半導体ウェハに、リッジ部10(導波路30)の形成位置が異なる複数種類の窒化物系半導体レーザ素子を含むように構成されている。これにより、窒化物系半導体ウェハに含まれる窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅([11−20]方向の幅)を縮小した場合でも、リッジ部10(導波路30)が窒化物半導体層20における導波路形成に適さない領域20cに形成されるのを抑制することが可能となる。
また、窒化物半導体層20上には、図2〜図4に示すように、導波路30に電流を供給するためのp側パッド電極13が形成されている。このp側パッド電極13は、リッジ部10の一部を覆うように形成されている。そして、p側パッド電極13がリッジ部10に対して非対称となるように形成されることによって、ボンディングワイヤが接続される比較的面積の大きいワイヤボンド領域13aが確保されている。また、複数のp側パッド電極13の一部は、その一部が、導波路形成に適さない領域20cに位置するように形成されている。一方、窒化物系半導体ウェハには、窒化物系半導体レーザ素子に個片化するための分割予定線P1およびP2が設定されている。分割予定線P1は、[11−20]方向に平行に延びるとともに、約200μm〜約1600μmの距離Lを隔てて等間隔に設定されている。また、分割予定線P2は、[1−100]方向に平行に延びるとともに、その一部は、リッジ部10(導波路30)から約40μmの距離b1を隔てた位置に設定されている。そして、分割予定線P1およびP2で囲まれた領域内に上記p側パッド電極13が位置するように構成されている。また、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハは、分割予定線P1およびP2で窒化物系半導体ウェハが分割された際に、図6および図7に示すような2種類の窒化物系半導体レーザ素子50および60が得られるように構成されている。なお、p側パッド電極13は、本発明の「電極層」の一例であり、ワイヤボンド領域13aは、本発明の「接続領域」の一例である。
分割後に得られる窒化物系半導体レーザ素子50は、図6に示すように、約120μmのチップ幅(共振器幅)w1を有しているとともに、導波路30と平行な方向([1−100]方向)に、約200μm〜約1600μmの共振器長Lを有している。また、窒化物系半導体レーザ素子50は、導波路30が、チップ幅w1の中心から片方の側端面35側(矢印A1側)にずれた位置に形成されている。具体的には、窒化物系半導体レーザ素子50では、導波路30は、片方の側端面35から約40μmの距離b1だけ離れた位置に形成されている。一方、分割後に得られる窒化物系半導体レーザ素子60は、約160μmのチップ幅(共振器幅)w2を有している。そして、導波路30が、チップ幅w2の中心からもう片方の側端面35側(矢印A2側)にずれた位置に形成されている。具体的には、窒化物系半導体レーザ素子60では、導波路30は、もう片方の側端面35から約40μmの距離b1だけ離れた位置に形成されている。すなわち、窒化物系半導体レーザ素子50と窒化物系半導体レーザ素子60とで、導波路30がチップ幅の中心に対して逆の位置に形成されている。なお、窒化物系半導体レーザ素子60の共振器長Lは、窒化物系半導体レーザ素子50と同様の長さ(約200μm〜約1600μm)に形成されている。
また、上記したp側パッド電極13は、窒化物系半導体レーザ素子50と窒化物系半導体レーザ素子60とで、異なるパターン形状となるように形成されている。また、窒化物系半導体レーザ素子50と窒化物系半導体レーザ素子60とで、p側パッド電極13のワイヤボンド領域13aが、導波路30に対して異なる側に配置されている。具体的には、窒化物系半導体レーザ素子50では、ワイヤボンド領域13aは導波路30に対して矢印A2側に配置されている。一方、窒化物系半導体レーザ素子60では、導波路30に対して矢印A2と反対側の矢印A1側に配置されている。
第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、上記のように、ストライプ状の導波路30(リッジ部10)を非等間隔に配列することにより、導波路30(リッジ部10)の形成位置が異なる複数種類の窒化物系半導体レーザ素子50および60を含むように構成することによって、窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅を縮小した場合でも、ストライプ状の導波路30(リッジ部10)を、導波路形成に適さない領域20cとは異なる領域20dに形成することができる。
ここで、上記した構成と異なりリッジ部10を等間隔で形成した場合には、窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅([11−20]方向の幅)を導波路形成に適さない領域20cの幅w13よりも小さくしようとすると、一部のリッジ部10が導波路形成に適さない領域20cに形成されてしまうという不都合が生じる。
たとえば、図8に示すように、チップ幅w3の中央に導波路30を形成した場合、導波路形成に適さない領域20cに導波路30が形成されないようにしようとすると、窒化物系半導体レーザ素子に含まれる領域20cの割合をチップ幅w3の半分よりも小さくする必要がある。リッジ部を等間隔で配列し、かつ、領域20cを隣接する2つの窒化物系半導体レーザ素子に分配すると、チップ幅w3を領域20cの幅w13よりも大きくなるように設定しなければ、いずれかの導波路30(リッジ部)が領域20c内に形成されてしまう。このような不都合は、導波路30(リッジ部)をチップ幅w3の中央からずらした位置に形成した場合でも同様に生じる。
その一方、上記した第1実施形態の構成のように、リッジ部10を非等間隔に配列することにより上記不都合を解消することが可能となる。このため、信頼性の低下した半導体レーザ素子が形成されるのを抑制することができるので、1枚の窒化物系半導体ウェハから得られる半導体レーザ素子の数(取れ数)を効率よく増やすことができる。これにより、信頼性の低下を抑制しながら、半導体レーザ素子の製造コストを低減することができる。
なお、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、上記のように構成することによって、得られる窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅を160μm以下にすることができる。すなわち、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハの構成では、導波路形成に適さない領域20cの幅w13以下のチップ幅に窒化物系半導体レーザ素子を設定することができる。この導波路形成に適さない領域20cは、溝部1aの幅w11を小さくすることによって、その幅w13を小さくすることが可能であるものの、溝部1aの幅w11を小さくした場合でも、乱れ領域20bの幅w12を制御することが困難であるため、乱れ領域20bの2倍以上の幅を有することになる。そして、乱れ領域20bの幅w12は、大きい場合で80μm程度あるため、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅を160μm以下に設定することができる。なお、乱れ領域20bの幅w12は、小さい場合には、65μm程度であるため、この場合には、窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅を130μm以下に設定することができる。これにより、より容易に、1枚の半導体ウェハから得られる半導体レーザ素子の数(取れ数)を増やすことができる。
また、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、p側パッド電極13を、平面的に見て、導波路30に対して非対称となるように形成することによって、ストライプ状の導波路30を非等間隔に配列することにより、導波路30(リッジ部10)の形成位置が異なる複数種類の窒化物系半導体レーザ素子を含むように構成した場合でも、所定の平面積を有するp側パッド電極13を容易に形成することができる。これにより、容易に、窒化物系半導体レーザ素子の低コスト化に対応することができるとともに、容易に、信頼性の低下が抑制された窒化物系半導体レーザ素子を得ることができる。
また、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、一部のp側パッド電極13を、その一部が導波路形成に適さない領域20cに位置するように形成することによって、導波路形成に適さない窒化物半導体層20の領域20cをp側パッド電極13の形成領域として有効に活用することができる。このため、1枚の窒化物系半導体ウェハから得られる窒化物系半導体レーザ素子の数(取れ数)をより効果的に増やすことができる。
ここで、1枚の窒化物系半導体ウェハに、複数種類の窒化物系半導体レーザ素子を混在せた場合、リッジ部10の形成位置が誤認されるおそれがある。このため、個片化した後のテスト工程や窒化物系半導体レーザ素子の実装工程、また、それぞれの工程における搬送系において、リッジ部10への接触による不良発生や信頼性の棄損などの不都合が生じるおそれがある。また、ボンディングワイヤをワイヤボンド領域13aに接続する際に、接続位置を変える必要があり、このとき、誤った位置にボンディングワイヤを接続してしまうおそれがある。
しなしながら、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、p側パッド電極13を、窒化物系半導体レーザ素子50と窒化物系半導体レーザ素子60とで、異なるパターン形状に形成しているため、1枚の窒化物系半導体ウェハに複数種類(2種類)の窒化物系半導体レーザ素子を含むように構成した場合でも、p側パッド電極13のパターン形状の違いを手掛かりにして、窒化物系半導体レーザ素子の種類を判別することができる。このため、窒化物系半導体ウェハを分割することにより個々の窒化物系半導体レーザ素子50および60に個片化した後でも、窒化物系半導体レーザ素子の導波路30の形成位置を認識することができる。したがって、複数種類の窒化物系半導体レーザ素子が混在する場合でも、上記した不都合が生じるのを抑制することができる。
なお、p側パッド電極13は、複数種類の窒化物系半導体レーザ素子の種類毎に平面積の大きさが異なるように形成してもよい。このように構成すれば、認識カメラなどを用いてp側パッド電極13を画像認識させることにより、p側パッド電極13の平面積の大きさの違いを明るさの違いとして認識することができる。これにより、容易に、窒化物系半導体レーザ素子の種類を判別することができる。
また、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、窒化物系半導体レーザ素子50と窒化物系半導体レーザ素子60とで、異なるチップ幅となるように構成されているので、これによっても、窒化物系半導体レーザ素子の種類を判別することができる。また、窒化物系半導体レーザ素子60のチップ幅w2を窒化物系半導体レーザ素子50のチップ幅w1よりも大きく構成することによって、窒化物系半導体レーザ素子60に導波路形成に適さない領域20cが多く含まれるように構成することができる。これにより、他の窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅を揃えることができる。
また、窒化物系半導体レーザ素子の種類を判別する判別手段を複数盛り込むことによって、1つの判別手段が使えなくなった場合でも、他の判別手段を使うことにより窒化物系半導体レーザ素子の種類を判別することができる。また、複数の判別手段を用いることによって、より精度よく、窒化物系半導体レーザ素子の種類を判別することができる。
また、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、n型GaN基板1に溝部1aを設けることによって、窒化物半導体層20における導波路形成に適さない領域20c以外の領域20dにクラックや歪みが発生するのを抑制することができる。また、第1実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、チップ幅を縮小した場合でも、この領域20dにリッジ部10(導波路30)を形成することができるので、信頼性の高い、長寿命の窒化物系半導体レーザ素子を形成することができるとともに、このような窒化物系半導体レーザ素子を歩留よく製造することができる。
図9は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。図10は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の活性層の構造を示した断面図である。次に、図6、図7、図9および図10を参照して、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造について説明する。なお、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、上記した第1実施形態による窒化物系半導体ウェハから得ることができるため、以下の説明では、上記窒化物系半導体ウェハから得られる窒化物系半導体レーザ素子60を例にして説明する。
第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子60は、図6および図7に示すように、劈開により形成され、互いに対向する一対の共振器端面36を有している。この一対の共振器端面36は、レーザ光が出射される光出射端面36aと、光出射端面36aと反対側の光反射端面36bとを含んでいる。
また、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子60は、図9に示すように、n型GaN基板1の(0001)面上に、約0.1μm〜約10μm(たとえば約4μm)の厚みを有するn型GaNからなる下部コンタクト層2が形成されている。下部コンタクト層2上には、約0.5μm〜約3.0μm(たとえば約2μm)の厚みを有するn型Al0.05Ga0.95Nからなる下部クラッド層3が形成されている。下部クラッド層3上には、0〜約0.2μm(たとえば約0.1μm)の厚みを有するn型GaNからなる下部ガイド層4が形成されている。下部ガイド層4上には、活性層5が形成されている。
この活性層5は、図10に示すように、Inx1Ga1-x1Nからなる3つの量子井戸層5aと、Inx2Ga1-x2Nからなる4つの障壁層5b(但しx1>x2)とが交互に積層された多重量子井戸(MQW)構造を有している。なお、量子井戸層5aは、たとえば、約4nmの厚みを有するInx1Ga1-x1N(x1=0.05〜0.1)から構成されており、障壁層5bは、たとえば、約8nmの厚みを有するInx2Ga1-x2N(x2=0〜0.05)から構成されている。
また、活性層5上には、図9に示すように、0〜約0.02μm(たとえば約0.01μm)の厚みを有するp型Al0.3Ga0.7Nからなる蒸発防止層6が形成されている。蒸発防止層6上には、0〜約0.2μm(たとえば0.01μm)のp型GaNからなる上部ガイド層7が形成されている。上部ガイド層7上には、凸部と、凸部以外の平坦部とを有するp型Al0.05Ga0.95Nからなる上部クラッド層8が形成されている。
また、上部クラッド層8の凸部上には、約0.01μm〜約1.0μm(たとえば約0.05μm)の厚みを有するp型GaNからなる上部コンタクト層9が形成されている。この上部コンタクト層9と上部クラッド層8の凸部とによって、約1μm〜約3μm(たとえば約1.5μm)の幅を有するストライプ状(細長状)のリッジ部10が構成されている。このリッジ部10は、[1−100]方向に延びるように形成されている。なお、下部コンタクト層2、下部クラッド層3、下部ガイド層4、活性層5、蒸発防止層6、上部ガイド層7、上部クラッド層8、および上部コンタクト層9によって、窒化物半導体層20が構成されている。
ここで、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子60では、n型GaN基板1の所定領域に上面から厚み方向に掘られた溝部1aを有している。このため、上述したように、この溝部1aによって、窒化物半導体層20に導波路30の形成に適さない領域20cが形成されている。この領域20cは、窒化物系半導体レーザ素子60では、片方の側端面35側(矢印A1側)に配されているとともに、リッジ部10(導波路30)と直交する方向([11−20]方向)に、n型GaN基板1の幅(チップ幅w2:図6参照)の半分以上の大きさの幅を有している。そして、上記したリッジ部10は、窒化物半導体層20の領域20cとは異なる領域20dに形成されている。
また、リッジ部10を構成する上部コンタクト層9上には、約5nm〜約10nm(たとえば15nm)の厚みを有するp側オーミック電極11がストライプ状(細長状)に形成されている。このp側オーミック電極11は、上部コンタクト層9と直接接触するように形成されている。なお、窒化物半導体は、p型半導体の抵抗率が大きくp型キャリアが生じ難いため、オーミック接触が取り難いという不都合がある。このため、p側オーミック電極11は、上部コンタクト層9とオーミック接触を取るために、仕事関数の大きい金属材料であるPdから構成されている。
また、リッジ部10の両脇には、電流狭窄を行うための埋め込み層12が形成されている。具体的には、上部クラッド層8上、上部コンタクト層9の側面上、およびp側オーミック電極11の側面上に、約0.1μm〜約0.3μm(たとえば約0.15μm)の厚みを有するとともにSiO2を主成分とする埋め込み層12が形成されている。このような構成により、水平および垂直横モードの光閉じ込めを行うことが可能となる。なお、埋め込み層12は、厚みが50nm未満では光吸収による導波ロスが生じる可能性があるため、その性質(光吸収)を積極的に利用する場合以外は、厚みが50nm以上に設定されているのが好ましい。
また、埋め込み層12の上面上には、p側オーミック電極11よりも大きい平面積を有するp側パッド電極13が、p側オーミック電極11の一部を覆うように形成されている。このp側パッド電極13は、p側オーミック電極11の一部を覆っている部分において、p側オーミック電極11と直接接触している。また、p側パッド電極13は、埋め込み層12側からTi層(図示せず)、Mo層(図示せず)、およびAu層(図示せず)が順次積層された多層構造からなる。
また、n型GaN基板1の裏面上には、n型GaN基板1の裏面側から順に、Hf層(図示せず)およびAl層(図示せず)が順次積層された多層構造からなるn側オーミック電極14aと、n側オーミック電極14a上に形成され、n側オーミック電極14a側から順に、Mo層(図示せず)、Pt層(図示せず)およびAu層(図示せず)が順次積層された多層構造からなるn側パッド電極14bとからなるn側電極14が形成されている。
また、光出射端面36aには、光出射端面36a側から、たとえば、窒化アルミニウム層(図示せず)および酸化アルミニウム層(図示せず)が積層された2層からなるAR(Anti−Reflection)コーティング層(図示せず)が形成されている。一方、光反射端面36bには、たとえば、酸化シリコン層(図示せず)と酸化チタン層(図示せず)とが交互に全9層積層されたHR(High−Reflection)コーティング層(図示せず)が形成されている。
図11〜図23は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。次に、図2〜図7、および、図10〜図23を参照して、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、n型GaN基板1の上面全面に、スパッタ法などを用いて、約1μmの厚みを有するSiO2層(図示せず)を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、SiO2層上に、約400μmピッチでレジストパターンとしての開口部(図示せず)を形成する。そして、RIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチング技術を用いて、SiO2層をマスクとしてn型GaN基板1をエッチングすることにより、n型GaN基板1の所定領域を除去する。その後、HF(フッ酸)などのエッチャントを用いて、SiO2層を除去する。これにより、図5および図11に示すような、約2μm〜約100μm(たとえば約60μm)の幅w11(図11参照)を有し、n型GaN基板1の厚み方向に約1μm〜約10μm(たとえば約3μm)の深さd1(図11参照)を有する溝部1aが形成される。この溝部1aは、図5に示したように、[1−100]方向に延びるとともに、[11−20]方向に約400μmの間隔a1でストライプ状に形成される。
続いて、図12に示すように、MOCVD法を用いて、n型GaN基板1上に、窒化物半導体層20を成長させる。具体的には、n型GaN基板1の(0001)面上に、約0.1μm〜約10μm(たとえば約4μm)の厚みを有するn型GaNからなる下部コンタクト層2、約0.5μm〜約3.0μm(たとえば約2μm)の厚みを有するn型Al0.05Ga0.95Nからなる下部クラッド層3、0〜約0.2μm(たとえば約0.1μm)の厚みを有するn型GaNからなる下部ガイド層4、および活性層5を順次成長させる。なお、活性層5を成長させる際には、図10に示したように、約8nmの厚みを有するInx2Ga1-x2N(x2=0〜0.05)からなる4つの障壁層5bと、約4nmの厚みを有するInx1Ga1-x1N(x1=0.05〜0.1)からなる3つの量子井戸層5aとを交互に成長させる。これにより、下部ガイド層4上に、3つの量子井戸層5aと4つの障壁層5bとからなるMQW構造を有する活性層5が形成される。
次に、図12に示すように、活性層5上に、0〜約0.02μm(たとえば約0.01μm)の厚みを有するp型Al0.3Ga0.7Nからなる蒸発防止層6、0〜約0.2μm(たとえば約0.1μm)の厚みを有するp型GaNからなる上部ガイド層7、約0.1μm〜約1.0μm(たとえば約0.5μm)の厚みを有するp型Al0.05Ga0.95Nからなる上部クラッド層8、約0.01μm〜約1.0μm(たとえば約0.05μm)の厚みを有するp型GaNからなる上部コンタクト層9を順次成長させる。
結晶成長の完了した窒化物系半導体ウェハにおいては、結晶成長中の原子が拡散の制限などの影響を受けることにより、溝部1aの近傍に層厚の不均一な乱れ領域20bが生じる。この乱れ領域20bの幅w12は、図3に示したように、平面的に見て、溝部1aの端部から左右各65μm〜80μm程度である。また、溝部1aの上方に位置する領域20aは、上述したように、導波路形成が困難な領域となっている。そして、溝部1aおよびその周辺の領域の上方には、領域20aと乱れ領域20bとからなる導波路形成に適さない領域20cが形成される。
次に、図13に示すように、真空蒸着法などを用いて、上部コンタクト層9上に、Pdからなるp側オーミック電極11を形成する。この際、p側オーミック電極11は、その厚みが5nm以上100nm以下(たとえば15nm)となるように形成する。そして、図14に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、p側オーミック電極11上に、約1μm〜約3μm(たとえば約1.5μm)の幅Wを有するとともに、[1−100]方向に延びるストライプ状(細長状)のレジスト40を形成する。
ここで、第1実施形態では、ストライプ状のレジスト40を、[11−20]方向に非等間隔で配列するとともに、導波路形成に適さない領域20c以外の領域20dに位置するように形成する。また、レジスト40は、領域20cの間の領域20dに複数(3本)形成する。
次に、図15に示すように、SiCl4、Cl2などの塩素系ガスや、ArガスなどによるRIE(反応性イオンエッチング)法を用いて、レジスト40をマスクとして上部クラッド層8の途中の深さまでエッチングを行う。このようにして、上部クラッド層8の凸部と上部コンタクト層9とによって構成されるとともに、[1−100]方向に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部10を形成する。このストライプ状のリッジ部10は、図3および図4に示したように、[11−20]方向に非等間隔に配列されるように形成される。また、これらのリッジ部10は、窒化物半導体層20における導波路形成に適さない領域20c以外の領域20dにそれぞれ形成される。
また、第1実施形態では、ストライプ状のリッジ部10を[11−20]方向に非等間隔で形成することによって、1枚の窒化物系半導体ウェハに、図6および図7に示したようなリッジ部10の形成位置が異なる複数種類(2種類)の窒化物系半導体レーザ素子を含むように形成する。
続いて、図16に示すように、リッジ部10上にレジスト40を残した状態で、スパッタ法などにより、約0.1μm〜約0.3μm(たとえば約0.15μm)の厚みを有するSiO2からなる埋め込み層12を形成し、リッジ部10を埋め込む。そして、リフトオフによりレジスト40を除去することによって、リッジ部10の上面(p側オーミック電極11)を露出させる。これにより、リッジ部10の両脇に、図17に示すような埋め込み層12が形成される。
次に、図18に示すように、埋め込み層12が形成された基板(ウェハ)の上面上の全面にレジスト45を形成するとともに、フォトリソグラフィ技術を用いて、リッジ部10(p側オーミック電極11)の一部を含む所定領域を露出させる開口部45aを複数形成する。
このとき、上記複数種類(2種類)の窒化物系半導体レーザ素子の種類が判別できるように、上記開口部45aの平面形状を異なる形状に構成しておく。また、リッジ部10の延びる方向([1−100]方向)における開口部45aのパターン間隔は、求められる窒化物系半導体レーザ素子の共振器長L(図3参照)と同一とする。
その後、レジスト45が形成された基板(ウェハ)上に、真空蒸着法などを用いて、基板(ウェハ)側からTi層(図示せず)、Mo層(図示せず)、およびAu層(図示せず)を順次形成することにより、多層構造からなるp側パッド電極を形成する。そして、リフトオフによりレジスト45を除去することによって、p側パッド電極をパターニングする。これにより、図2および図19に示すように、上記したレジスト45の開口部45aに対応する埋め込み層12上の領域に、パターニングされたp側パッド電極13がマトリクス状に複数形成される。このp側パッド電極13は、図19に示すように、p側オーミック電極11の一部を覆うように(p側オーミック電極11の上面の一部と直接接触するように)形成される。
次に、基板(ウェハ)を分割し易くするために、n型GaN基板1の裏面を研削または研磨することにより、n型GaN基板1を約80μm〜約150μm(たとえば約130μm)の厚みまで薄くする。そして、研削または研磨した面にドライエッチングなどを施して表面を調整する。
次に、図20に示すように、n型GaN基板1の裏面上に、n側電極14を形成する。具体的には、真空蒸着法などを用いて、n型GaN基板1の裏面側からHf層(図示せず)およびAl層(図示せず)を順次形成することにより、多層構造からなるn側オーミック電極14aを形成する。そして、n側オーミック電極14a上に、n側オーミック電極14a側からMo層(図示せず)、Pt層(図示せず)およびAu層(図示せず)を順次形成することにより、多層構造からなるn側パッド電極14bを形成する。これにより、n側オーミック電極14aとn側パッド電極14bとからなるn側電極14がn型GaN基板1の裏面上に形成される。なお、n側オーミック電極14aの形成前に、n側の電気特性の調整などの目的で、ドライエッチングやウェットエッチングを行ってもよい。
続いて、図21に示すように、分割予定線P1で窒化物系半導体ウェハを劈開(分割)することにより、図22に示すようなバー状に分割する。その後、蒸着法やスパッタ法などの手法を用いて、バーの両側端面(共振器端面)にコーティングを施す。具体的には、片側の端面(光出射端面)に、たとえば、窒化アルミニウム層(図示せず)および酸化アルミニウム層(図示せず)が積層された2層からなるARコーティング層(図示せず)を形成する。また、その反対側の端面(光反射端面)に、たとえば、酸化シリコン層(図示せず)と酸化チタン層(図示せず)とが交互に全9層積層されたHRコーティング層(図示せず)を形成する。
その後、分割予定線P2でバーを劈開(分割)することにより、個々のチップ(素子)に個片化する。このとき、図6および図7に示したように、導波路形成に適さない領域20cを多く含むチップ(窒化物系半導体レーザ素子)60のチップ幅w2を大きくし、残りのチップ(窒化物系半導体レーザ素子)50のチップ幅w1が揃うようにする。このようにして、1枚の窒化物系半導体ウェハから、リッジ部10(導波路30)の形成位置が異なる2種類の窒化物系半導体レーザ素子50および60が形成される。なお、形成された窒化物系半導体レーザ素子50および60は、いずれも、リッジ部10からチップの側端面35までの距離b1が40μmとなるように形成されている。
続いて、形成されたチップ(窒化物系半導体レーザ素子)の特性を検査する。チップ検査は、通常、この時点で不良品を仕分けることで、不良品が実装される無駄を省くために行う。
第1実施形態では、チップ検査時にチップ(窒化物系半導体レーザ素子)の種類を判別することで、形成されたチップを種類毎に仕分ける。このチップ検査時に、p側パッド電極13の違いを画像で認識させ、特定の種類のチップのみを拾い上げて検査し、収納する。このようにすれば、デバイスに実装する際の効率を高めることができる。なお、この仕分は、p側パッド電極13のパターン形状の違いにより行う方法の他、p側パッド電極13の面積差に起因する明るさの違いや、チップサイズの違いによって行ってもよい。
次に、仕分けの終わったチップをそれぞれデバイスに実装する。形成されたチップは、種類により(窒化物系半導体レーザ素子50と窒化物系半導体レーザ素子60とで)リッジ部10の形成位置が異なるため、図23に示すように、各種類のチップのリッジ部を、ステム46の特定の位置に合わせるように実装するとよい。なお、図23には、カソードコモンタイプのステム46にチップ(窒化物系半導体レーザ素子)を実装した例が示されており、リッジ部を合わせた位置を仮想線P3として表示されている。
最後に、ボンディングワイヤ47をチップに接続する。このとき、チップの種類によってワイヤボンド領域13a(図6参照)の位置が異なるため、この時点で再度チップの種類を判別してもよい。これにより、ワイヤボンド領域13aの位置を確認(識別)することができるので、確実に、ボンディングワイヤ47をワイヤボンド領域13aに接続することができる。また、特にレーザ特性に影響がないのであれば、リッジ部上にボンディングワイヤを接続してもよい。なお、ボンディングワイヤ47は、本発明の「金属細線」の一例である。
図24は、第1実施形態の変形例による窒化物系半導体ウェハの一部を示した平面図である。図25は、第1実施形態の変形例による窒化物系半導体ウェハから得られる窒化物系半導体レーザ素子の平面図である。図26は、第1実施形態の変形例による窒化物系半導体ウェハから得られる窒化物系半導体レーザ素子の斜視図である。次に、図24〜図26を参照して、第1実施形態の変形例による窒化物系半導体ウェハおよび窒化物系半導体レーザ素子について説明する。
この第1実施形態の変形例による窒化物系半導体ウェハは、図24に示すように、溝部1aで分割されるように、分割予定線P12が設定されている。これにより、第1実施形態の変形例では、1枚の窒化物系半導体ウェハに、チップ幅およびリッジ部10(導波路30)の形成位置が異なる3種類の窒化物系半導体レーザ素子150、160および170(図25および図26参照)を含むように構成されている。また、上記したp側パッド電極13は、窒化物系半導体レーザ素子の種類毎に異なるパターン形状となるように形成されている。
また、分割予定線P1、P2およびP12で分割されることによって得られる3種類の窒化物系半導体レーザ素子150、160および170は、図25に示すように、それぞれ、120μm、140μmおよび140μmのチップ幅w101、w102およびw103を有している。また、図25および図26に示すように、窒化物系半導体レーザ素子160は、分割予定線P12(図24参照)で分割されることによって、片方(矢印A1側)の側端面35に段差部1bを有している。また、窒化物系半導体レーザ素子170は、分割予定線P12(図24参照)で分割されることによって、もう片方(矢印A2側)の側端面35に段差部1bを有している。
なお、第1実施形態の変形例のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第1実施形態の変形例では、上記のように、溝部1aの位置で窒化物系半導体ウェハを分割することによって、窒化物系半導体ウェハの分割を容易にすることができる。これにより、製造歩留を向上させることができる。
第1実施形態の変形例のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態)
図27は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体ウェハの一部を示した平面図である。図28は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体ウェハの基板部分を示した断面図である。図29は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体ウェハから得られる窒化物系半導体レーザ素子の平面図である。次に、図27〜図29を参照して、第2実施形態による窒化物系半導体ウェハについて説明する。
第2実施形態による窒化物系半導体ウェハは、図27および図28に示すように、n型GaN基板201の所定領域に転位集中領域(欠陥集中領域)201bを有している。この転位集中領域201bは、図27に示すように、[1−100]方向に延びるとともに、[11−20]方向に約400μmの間隔a1を隔てて周期的に形成されている。そして、第2実施形態では、平面的に見て、転位集中領域201bを挟むように、転位集中領域201bの両側に溝部201aが形成されている。この溝部201aは、上記第1実施形態と同様、[1−100]方向に延びるように形成されている。また、溝部201aは、図28に示すように、[1−100]方向に約2μm〜約100μm(たとえば約60μm)の幅w11を有しているとともに、n型GaN基板201の厚み方向に約1μm〜約10μm(たとえば約3μm)の深さd1を有している。また、図27に示すように、転位集中領域201bを挟む2つの溝部201aの間隔w201は、約60μmに設定されている。なお、n型GaN基板201は、本発明の「窒化物半導体基板」の一例であり、溝部201aは、本発明の「凹部」の一例である。
また、第2実施形態では、上記第1実施形態と同様、導波路30(リッジ部)が[11−20]方向に非等間隔で形成されることによって、1枚の窒化物系半導体ウェハに、導波路30の形成位置が異なる2種類の窒化物系半導体レーザ素子250および260(図29参照)を含むように構成されている。なお、第2実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、隣り合う導波路30の間隔は、上記第1実施形態と同じに設定されている。また、第2実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、転位集中領域201bを挟むように溝部201aが形成されているため、導波路形成に適さない領域20cの幅w202が上記第1実施形態よりも若干大きくなっている。
分割予定線P1およびP22で分割されることによって得られる2種類の窒化物系半導体レーザ素子250および260は、上記第1実施形態と同様のチップ幅を有している。具体的には、図29に示すように、窒化物系半導体レーザ素子250は、約120μmのチップ幅w211を有している。また、窒化物系半導体レーザ素子260は、約160μmのチップ幅w212を有している。なお、窒化物系半導体レーザ素子250では、導波路30は、片方(矢印A1側)の側端面35から約40μmの距離b1だけ離れた位置に形成されている。また、窒化物系半導体レーザ素子260では、導波路30は、もう片方(矢印A2側)の側端面35から約40μmの距離b1だけ離れた位置に形成されている。
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、上記のように、転位集中領域201bを囲い込むように溝部201aを形成することによって、転位集中領域201bに起因する影響を排除することができるとともに、窒化物半導体層20にクラックが入るのを抑制することができる。
また、第2実施形態では、ストライプ状の導波路30を非等間隔で配列することによって、導波路形成に適さない領域20cの幅w202が大きくなっている場合でも、窒化物半導体層20の領域20cとは異なる領域20dに導波路30を形成することができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
図30は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。次に、図4および図30を参照して、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子について説明する。なお、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、上記した第2実施形態による窒化物系半導体ウェハから得ることができるため、以下の説明では、上記窒化物系半導体ウェハから得られる窒化物系半導体レーザ素子260を例にして説明する。
第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子260では、n型GaN基板201上に、上記第1実施形態と同様の窒化物半導体層20が形成されている。また、窒化物半導体層20を構成する上部コンタクト層9と上部クラッド層8の凸部とによって、上記第1実施形態と同様のリッジ部10が形成されている。このリッジ部10は、導波路形成に適さない領域20cとは異なる領域20dに位置するように形成されている。また、リッジ部10を構成する上部コンタクト層9上には、p側オーミック電極11が形成されている。そして、リッジ部10の両脇には、電流狭窄を行うための埋め込み層12が形成されている。
また、窒化物系半導体レーザ素子260では、片方の側端面35側(矢印A1側)に、転位集中領域201bおよび溝部201aを有しているとともに、片方の側端面35に、溝部201aで分割されることによって形成された段差部201cを有している。
なお、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。また、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、n型GaN基板1(図4参照)に代えて、n型GaN基板201を用いることで、上記した第1実施形態と同様の方法で製造することができる。また、n型GaN基板201に形成される溝部201aも、上記第1実施形態と同様の方法で形成することができる。
第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図31は、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体ウェハの平面図である。続いて、図31を参照して、この第3実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、上記第1および第2実施形態と異なり、チップ幅がさらに縮小された窒化物系半導体レーザ素子を含むように構成されている。
具体的には、導波路形成に適さない領域20c(ハッチング部分)の間の領域に、4本の導波路30(リッジ部)が形成されている。そして、分割予定線P1およびP32で分割した際に、1枚の窒化物系半導体ウェハから、チップ幅w301が約80μmの窒化物系半導体レーザ素子と、チップ幅w302が約120μmの窒化物系半導体レーザ素子とが得られるように構成されている。なお、チップ幅w301の窒化物系半導体レーザ素子は、チップ幅の中央に導波路30が位置するように構成されている。すなわち、分割予定線P32から導波路30までの距離b12が40μmとなるように設定されている。
一方、チップ幅w302の窒化物系半導体レーザ素子は、分割予定線P32から導波路30までの距離b11が約30μmとなるように設定されている。このチップ幅w302の窒化物系半導体レーザ素子は、矢印A1側と矢印A2側とで導波路30の形成位置が異なるように構成されている。このため、第3実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、導波路30の形成位置およびチップ幅の異なる3種類の窒化物系半導体レーザ素子を含むように構成されている。
また、第3実施形態では、窒化物系半導体ウェハの上面に、窒化物系半導体レーザ素子の種類を判別するためのマーカ部320および330が形成されている。このマーカ部320および330は、それぞれ、埋め込み層(図示せず)および窒化物半導体層20をエッチングなどで除去することによって形成されている。そして、マーカ部320から導波路30までの距離c1およびc2は、それぞれ、27.5μmおよび25μmに設定されている。
なお、第3実施形態による窒化物系半導体ウェハは、上記第2実施形態と同様の構成を有するn型GaN基板301を用いて形成されている。具体的には、n型GaN基板301の所定領域には、転位集中領域301bが周期的に形成されている。そして、この転位集中領域301bを囲い込むように溝部301aが形成されている。なお、n型GaN基板301は、本発明の「窒化物半導体基板」の一例である。
第3実施形態による窒化物系半導体ウェハのその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
第3実施形態による窒化物系半導体ウェハでは、上記のように、導波路形成に適さない領域20cの間の領域に、4本の導波路30を形成することによって、1枚の窒化物系半導体ウェハから得られる窒化物系半導体レーザ素子の数(取れ数)を容易に増やすことができる。このため、容易に、窒化物系半導体レーザ素子の製造コストを低減することができる。
なお、転位集中領域が形成された基板を用いる代わりに、上記第1実施形態と同様のn型GaN基板を用いることもできる。また、第3実施形態では、上記第1および第2実施形態と同様の方法を用いて、チップ幅がさらに縮小された窒化物系半導体レーザ素子を製造することができる。
第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
図32は、第3実施形態の変形例による窒化物系半導体ウェハの平面図である。次に、図31を参照して、この第3実施形態の変形例による窒化物系半導体ウェハでは、上記第3実施形態と同様、導波路形成に適さない領域20c(ハッチング部分)の間の領域に、4本の導波路30(リッジ部)が形成されている。
そして、分割予定線P1およびP42で分割した際に、1枚の窒化物系半導体ウェハから、チップ幅w401が約80μmの窒化物系半導体レーザ素子と、チップ幅w402が約160μmの窒化物系半導体レーザ素子とが得られるように構成されている。なお、約80μmのチップ幅w401を有する窒化物系半導体レーザ素子は、導波路30の形成位置が同じになるように構成されている。一方、約160μmのチップ幅402の窒化物系半導体レーザ素子は、約80μmのチップ幅w401を有する窒化物系半導体レーザ素子とは異なる位置に導波路30が形成されている。すなわち、第3実施形態の変形例では、1枚の窒化物系半導体ウェハに、導波路30の形成位置およびチップ幅の異なる2種類の窒化物系半導体レーザ素子を含むように構成されている。
また、第3実施形態の変形例では、上記第3実施形態と同様、窒化物系半導体レーザ素子の種類を判別するためのマーカ部420が形成されている。
なお、第3実施形態の変形例では、導波路形成に適さない領域20cを多く含む窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅w402を大きくすることによって、他の窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅w401を同じ大きさに揃えることができる。
第3実施形態の変形例による窒化物系半導体ウェハのその他の構成および効果は、上記第3実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、基板にn型GaN基板を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、InGaN、AlGaN、および、AlGaInNなどからなる基板を用いてもよい。なお、基板上に結晶成長される窒化物系半導体層の各層については、その厚みや組成等は、所望の特性に合うものに適宜組み合わせたり、変更したりすることが可能である。たとえば、半導体層を追加または削除したり、半導体層の順序を一部入れ替えたりしてもよい。また、導電型を一部の半導体層について変更してもよい。すなわち、窒化物系半導体レーザ素子としての基本特性が得られる限り自由に変更可能である。
また、上記第1〜第3実施形態では、埋め込み層をSiO2から構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、SiO2以外の絶縁性材料から構成してもよい。たとえば、SiN、Al2O3やZrO2などから埋め込み層を構成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、p側オーミック電極をPdから構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、仕事関数の大きい材料であればPd以外の材料によってp側オーミック電極を構成してもよい。たとえば、Ni、PtまたはAuなどからp側オーミック電極を構成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、p側パッド電極を、埋め込み層側からTi層、Mo層、およびAu層を順次積層することにより形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、埋め込み層側から、たとえば、Mo層およびAu層を順次積層することによりp側パッド電極を形成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、n側オーミック電極を、n型GaN基板の裏面側からHf層およびAl層を順次積層することにより形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、n型GaN基板の裏面側から、たとえば、Ti層およびAl層を順次積層することによりn側オーミック電極を形成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、リッジ部を形成する際のマスク層としてレジストを用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、SiO2などからなるマスク層を用いてリッジ部を形成することもできる。この場合、フォトリソグラフィ工程とフッ酸系溶液とによる溶解の組み合わせ等の方法で、リッジ部の頂上(上面)を露出させることが可能である。
なお、上記第1〜第3実施形態において、p側オーミック電極の形成は、リッジ部の形成後であってもよい。この場合は、リッジ部および埋め込み層を形成した後、パターン化されたp側オーミック電極をリッジ部の上面に接するように作製すればよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、劈開により共振器端面を形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、劈開以外の方法を用いて、共振器端面(光出射端面、光反射端面)を形成してもよい。たとえば、ドライエッチングなどの手法を用いて、共振器端面を形成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、本発明をリッジ型のレーザ構造に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、リッジ型以外のBH(Buried Heterostructure)型やRiS(Ridge by Selective re−growth)型などのレーザ構造に本発明を適用することもできる。
また、上記第1〜第3実施形態では、リッジ部を[1−100]方向に延びるように形成するとともに、共振器端面を[11−20]方向に沿った方向に形成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、これらの方向が結晶学的に等価な方向に形成することが可能である。また、M面やA面などを利用した基板においては、[0001]方向にリッジ部を形成すると、劈開により端面形成を行うのに都合がよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、MOCVD法を用いて、窒化物系半導体各層を結晶成長させた例を示したが、本発明はこれに限らず、MOCVD法以外の方法を用いて、窒化物系半導体各層を結晶成長させるようにしてもよい。MOCVD法以外の方法としては、たとえば、HVPE法(Hydride Vapor Phase Epitaxy)、および、ガスソースMBE法(Molecular Beam Epitaxy)などが考えられる。
また、上記第1〜第3実施形態では、工程の順序について、チップの種類をチップ検査時に判別し、種類毎に分離することとしたが、本発明はこれに限らず、ダイボンド(実装)時にチップの種類を判別し、各個にリッジ部の位置調節を行うようにしてもよい。この場合でも、出来上がるレーザデバイスの形態に違いがないことは言うまでもない。
また、上記第1〜第3実施形態では、1枚の窒化物系半導体ウェハに、チップ幅の異なる窒化物系半導体レーザ素子を含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅を全て同じにしてもよい。
なお、1枚の窒化物系半導体ウェハに含まれる窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅(チップサイズ)は、上記第1〜第3実施形態で示した構成以外の構成であってもよい。
また、上記第1実施形態では、約400μmの間隔を隔てて溝部を形成(配列)した例を示したが、本発明はこれに限らず、溝部の間隔を400μm以外の間隔にしてもよい。このように構成した場合には、得られる窒化物系半導体レーザ素子のチップ幅を全て同じにすることができる。
また、上記第1および第2実施形態では、リッジ部(導波路)をチップ幅の中央からずれた位置に形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、チップ幅の中央部にリッジ部(導波路)が形成された窒化物系半導体レーザ素子を一部に含むように構成することもできる。
また、上記第3実施形態では、埋め込み層および窒化物半導体層にマーカ部を形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、p側パッド電極にマーカ部を形成してもよい。また、上記第1および第2実施形態において、マーカ部をさらに形成してもよい。なお、p側パッド電極にマーカ部を形成する場合には、マーカ部を基準としてリッジ部(導波路)の位置を認識可能に構成すれば、容易に、窒化物系半導体レーザ素子の種類およびリッジ部(導波路)の形成位置を認識することができる。
また、本発明は、光ピックアップの光源として用いられる窒化物系半導体レーザ素子以外に、たとえば、照明用に用いられるブロードエリア半導体レーザ素子や、通信用レーザ素子、マルチリッジレーザなどにも適用することができる。