JP2009199840A - 絶縁シート、絶縁シートを用いた回転電機及び回転電機の製造方法 - Google Patents

絶縁シート、絶縁シートを用いた回転電機及び回転電機の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】可撓性と形態安定性に優れた絶縁シート、これを用いた回転電機及び回転電機の製造方法を提供する。
【解決手段】アラミドペーパーからなる絶縁材16と、エポキシ樹脂組成物からなる樹脂シート14と、アラミドペーパーからなる絶縁材12との3層からなる絶縁シート10を回転電機のスロット内にスロットの内周面を覆うように配置し、巻き線をスロットに配置された絶縁シート10に嵌通した後にスロット内にエポキシ樹脂を含む封止剤を入れ、巻き線を封止する。エポキシ樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤、及び(c)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を含有し、前記(a)成分がトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂であり、前記(b)成分が10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドを含むようにされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、特に、回転電機のスロットの絶縁に有用な絶縁シート、絶縁シートを用いた回転電機及び回転電機の製造方法に関する。
回転電機のスロットの絶縁処理方法として、樹脂含浸による方法と絶縁層をスロット内に設ける方法がある。樹脂含浸による方法には、室温にて樹脂含浸する浸漬処理方式と真空含浸する全含浸方式がある。浸漬処理方式は、含浸槽に満たした溶剤形ワニス又は無溶剤形ワニスの熱硬化性樹脂からなる含浸樹脂中に浸漬して絶縁処理をするものであり、全含浸方式は含浸槽を真空引きにして含浸樹脂を注入した後、加圧して含浸し、絶縁処理をするものである。
これに対して、絶縁層をスロット内に設ける方法には、耐熱絶縁材を単独で使用する方法、溶着層の樹脂を溶融し、エナメル線間及びコイルと鉄心間に充填させる方法(文献1)、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面にポリエチレンナフタレートフィルムを貼り合わせてなる絶縁シートを用いる方法(文献2)、無機繊維及び/又は有機繊維の不織布又は織布に樹脂を含浸してなる繊維強化プラスチックフィルム基材で形成された内装材の片面乃至両面に外装材を積層してなる多層構成の絶縁紙を用いる方法(文献3)がある。
しかしながら、これらの従来の方法では、絶縁層が厚くなってしまい、エナメル線を挿通する空間が限定されていた。又、エナメル線をスロット内に挿通する際に、エナメル線と絶縁層との接触による絶縁層の破壊が発生する等、可撓性と形態安定性に欠ける面があった。
特開平9−308158号公報 特開平10−304614号公報 特開2004−146093号公報
そこで、本発明は、薄く、可撓性と形態安定性に優れた絶縁シート、これを用いた回転電機及び回転電機の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意研究した結果、絶縁材と、樹脂シートと、絶縁材及び機能剤の一方との3層からなる絶縁シートにより上記の課題を解決できることを見出した。
即ち、以下の発明により上記課題を解決できる。
(1)絶縁材と、樹脂シートと、絶縁材及び機能材の一方が積層された絶縁シートであって、前記樹脂シートはエポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする絶縁シート。
(2)前記エポキシ樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤、及び(c)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を含有し、前記(a)成分がトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂であり、前記(b)成分が10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドを含むことを特徴とする(1)に記載の絶縁シート。
(3)前記(b)成分が、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドとその他の硬化剤とをその配合割合が質量比で50:50〜95:5の範囲で配合されてなるものであることを特徴とする(2)に記載の絶縁シート。
(4)前記(b)成分のその他の硬化剤がビフェニルノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とする(3)に記載の絶縁シート。
(5)前記(a)成分と(b)成分と(c)成分との配合割合が、(a)成分100質量部に対し、(b)成分が40〜140質量部、(c)成分が5〜300質量部の範囲であることを特徴とする(2)乃至(4)のいずれかに記載の絶縁シート。
(6)前記樹脂シートに隣接する前記絶縁材の少なくとも一方はアラミドペーパーであることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の絶縁シート。
(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載の絶縁シートがスロット内に該スロットの内周面を覆うように配置されていることを特徴とする回転電機。
(8)(1)乃至(6)のいずれかに記載の絶縁シートを回転電機のスロット内に該スロットの内周面を覆うように配置する絶縁工程と、巻き線を前記スロット内に配置された前記絶縁シートに挿通した後に、前記スロット内にエポキシ樹脂を含む封止剤を入れ、前記巻き線を封止する封止工程と、を有することを特徴とする回転電機の製造方法。
本発明の絶縁シートによれば、薄膜であって均一な絶縁層を実現でき、絶縁信頼性を保持したまま線積率を向上させることができる。又、回転電機のスロットへ確実な固定ができるので、作業性を向上させることができる。更に、可撓性と形態安定性を兼ね備えるため、絶縁材の加工性と作業性を向上させることができる。また、機能材を備えた絶縁シートにより、すべり性、耐傷性を向上させることができる。
本発明に係る絶縁シートの最良の実施形態は、アラミドペーパーからなる絶縁材と、エポキシ樹脂組成物からなる樹脂シートと、アラミドペーパーからなる絶縁材との3層からなり、エポキシ樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤、及び(c)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を含有し、(a)成分がトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂であり、(b)成分が10(2.5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドを含み、(b)成分が、10(2.5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドとその他の硬化剤とをその配合割合が質量比で50:50〜95:5の範囲で配合されてなるものであり、(b)成分のその他の硬化剤がビフェニルノボラック型フェノール樹脂であり、(a)成分と(b)成分と(c)成分との配合割合が、(a)成分100質量部に対し、(b)成分が40〜140質量部、(c)成分が5〜300質量部の範囲であるようにされている。
本発明に係る回転電機の最良の実施形態は、上記絶縁シートが全てのスロット内にスロットの内周面を覆うように配置されている。
本発明に係る回転電機の製造方法の最良の実施形態は、上記絶縁シートを回転電機のスロット内にスロットの内周面を覆うように配置する絶縁工程と、巻き線をスロット内に配置された絶縁シートに挿通した後に、スロット内にエポキシ樹脂を含む封止剤を入れ、巻き線を封止する封止工程とからなる。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施例1に係る絶縁シート10は、図1に示すとおり絶縁材12と樹脂シート14と絶縁材16とが、この順で積層されて構成されている。
絶縁材12としては、電気絶縁性樹脂からなる織布、不織布又はフィルム等を用いることができる。
本実施例で使用可能な電気絶縁性樹脂としては、ポリイミドフィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリパラバン酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、液晶ポリマー等が例示され、中でも耐熱性、寸法安定性、機械特性等からポリイミド、アラミド及び液晶ポリマーが好ましい。絶縁材12の厚さは通常4.2〜75μmの範囲であるが、必要に応じて適宜の厚さのものを使用すれば良い。又、これらの絶縁材12の片面若しくは両面に、低温プラズマ処理、コロナ放電処理、サンドブラスト処理等の表面処理を施しても良い。
以下、本実施例に係る絶縁シート10の製造方法について述べる。後述する、本実施例のエポキシ樹脂組成物からなる塗工液を次の手順で調製し、この塗工液を、ロールコーター、コンマコーター等を用いて電気絶縁性樹脂からなる織布、不織布又はフィルムに塗布する。
[塗工液の調製]
(1)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体と所望により用いられる無機フィラー等及びカップリング剤を溶剤中に入れ攪拌。
(2)(1)に硬化剤を添加し、更に混合する。
(3)次に(2)に、溶剤に溶解したエポキシ樹脂を添加し、均一に混合。
これをインラインドライヤーに通して40〜160℃で1〜20分間加熱処理し、エポキシ樹脂組成物からなる塗工液中の溶剤を除去して樹脂シート14を形成する。この絶縁シート10の樹脂シート面上に、所望により離型材を加熱ロールにより圧着・積層させてもよい。このとき使用可能な離型材としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンデン(TPX)フィルム、PETフィルム、シリコーン離型剤付きポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム及びPETフィルム、ポリエチレン樹脂コート紙、ポリプロピレン樹脂コート紙及びPET樹脂コート紙などが挙げられ、離型材の厚さは、フィルムベースのもので13〜75μm、紙ベースのもので50〜200μmが好ましいが、必要に応じて適宜の厚さのものが使用される。
樹脂シート14の塗布厚は、一般に乾燥状態で5〜100μmであれば良い。
なお、使用する電気絶縁性樹脂からなる織布、不織布又はフィルムの厚さが25μm未満の場合は、塗布時のフィルム搬送性及び樹脂シートの塗り斑抑制のため、電気絶縁性樹脂からなる織布、不織布又はフィルムの樹脂シートを形成する面とは反対側の面に、基材上に粘着剤層を設けたキャリアシート等で補強した後に塗工液を塗布するのが好ましい。
本実施例では、絶縁材12は、電気絶縁性フィルムとしてアラミドフィルムを用いたアラミドペーパーである。
樹脂シート14は、エポキシ樹脂組成物からなる。このエポキシ樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤、及び(c)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を含有し、(a)成分がトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂であり、(b)成分が10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドを含む。本実施例で用いられるトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂は、次の化1で表わされるものである。
Figure 2009199840
このエポキシ樹脂としては、常温で固形であるものが好ましく、特にエポキシ当量が190g/eq以下のものを用いるのが耐熱性、難燃性の面から好ましい。また、エポキシ樹脂は、本実施例を阻害しない範囲で他のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂乾式エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型若しくはAD型エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ樹脂、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸とエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂、脂肪族若しくは芳香族アミンとエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂、複素環エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等と組合せて用いても良い。
また、本実施例のエポキシ樹脂組成物に用いられる硬化剤としては、少なくとも10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドが用いられる。硬化剤の使用割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1.0モルに対してフェノール性水酸基が0.5以上であることが好ましい。特に好ましい範囲は0.6以上である。
さらに、硬化剤は、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドを単独で用いても良いが、エポキシ樹脂組成物に従来から用いられている硬化剤、例えば酸無水物、イミダゾール類、フェノール系化合物、アミド類等と組合せて用いても良い。
10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドと組合せて用いられる硬化剤としては、例えば、酸無水物、アミン類、イミダゾール、ジヒドロジン類、ルイス酸、ブレンステッド酸塩類、ポリメルカプトン類、イソシアネート類、ブロックイソシアネート類、フェノール樹脂等が挙げられる。中でもフェノール樹脂が好ましい。このフェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビスフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリレン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシメタン、メタン、フェニルピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等のノボラック樹脂等が挙げられ、特に強靭性と可撓性とのバランスの面からビフェニルノボラック型フェノール樹脂が好ましい。このビフェニルノボラック型フェノール樹脂は、下記の化2で表わされるものである。
Figure 2009199840
(式中nは0.1以上である。)
10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドと他の硬化剤とを組合せて用いる場合、その配合割合は質量比で50:50〜95:5の範囲である。この範囲より他の硬化剤の量が多くなると難燃性が低下するし、この範囲より少ないと配合に見合う効果を得ることができない。好ましい配合割合は50:50〜70:30の範囲である。
本実施例のエポキシ樹脂組成物に用いられるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体は、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体性水酸基を有するジカルボン酸成分、例えば、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、フェノール性水酸基を有しないジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジカルボキシルナフタレン、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、1,3−ジクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−メチレン二安息香酸等に対してジアミン、例えば、3,3’−ジアミン−4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジクロロメタン、3,4−ジアミノ−1,5−ベンゼンジオール、3,3’−ヒドロロキシ−4,4’−ジアミノビスフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)メタン等、フェノール性水酸基を含有しないジアミンとして、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノナフタレン、ピペラジン、ヘキサネチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニル等を加え、これらを例えば、亜リン酸エステルとピリジン誘導体の存在下で縮合剤を使用して、N−メチル−2−ピロリドンによって代表される有機溶媒中で窒素等の不活性雰囲気下にて加熱攪拌、縮合反応を行なって、フェノール性水酸基を含有するポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を生成させる。中でも下記の化3で表わされる化合物を使用するのが好ましい。
Figure 2009199840
(式中、x、y、z、l、m及びnは、それぞれ平均重合度であって、x=3〜7、y=1〜4、z=5〜15、l+m=2〜200の整数をそれぞれ示し、m/(l+m)≧0.04である。)
これは可撓性、接着性を付与するために必要であり、添加により硬化物に可撓性を付与すると同時に巻き線やスロットとの接着強度を増すことができる。このフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体の配合割合は、エポキシ樹脂と硬化剤との合計量100質量部に対し、5〜300質量部の範囲が好ましい。この範囲よりフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体が少ないと可撓性及び接着性が低下するし、この範囲を超えると電気特性が低下するので好ましくない。可撓性、接着性及び電気特性の面から特に好ましい配合割合は10〜150質量部の範囲である。
また、本実施例のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて他の添加物を加えることができる。
添加剤としては、例えばトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、例えば、トリエチルアミン、テトラエタノールアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペラジン等の第3級アミン系化合物、例えば1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のホウ素系化合物等の硬化促進剤や天然ワックス類、合成ワックス類及び長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤、酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤、ニトリルゴム、ブタジエンゴム等の応力緩和剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等の無機難燃剤、テトラプロモビス無水フタル酸、ヘキサプロモベンゼン、ブロム化フェノールノボラック等の臭素系難燃剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤、溶融シリカ、結晶性シリカ、低α線シリカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、タルク、アルミナ、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マグネシア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、フェライト、希土コバルト、金、銀、ニッケル、銅、鉛、鉄粉、酸化鉄、砂鉄等の金属粉、黒鉛、カーボン、弁柄、黄鉛等の無機質フィラー又は導電性粒子等、染料や顔料等の着色剤、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイト繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等の無機系繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、炭素繊維等の有機系繊維、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤消、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。中でもシラン系カップリング剤は、エポキシ樹脂とフィラーとの密着性の面で用いるのが好ましい。また、難燃性や耐フロー性を付与する場合には水酸化アルミニウム等を用いるのが好ましい。
本実施例のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤及びフェノール性水酸基含有ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体、必要に応じ各種添加剤を混合して得ることができ、上記各成分を所定の割合で溶媒中に均一に混合させることにより塗工液とする。この場合の溶媒としては、例えばトルエン、エタノール、セロソルブ、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が挙げられる。
本実施例のエポキシ樹脂組成物の作製は、主に加熱硬化により行なうが、例えば室温前後での触媒や酸素、湿気によって起こる常温硬化、紫外線照射で発生する酸による触媒によって起こる光硬化等を併用することも可能である。
絶縁材16は、絶縁材12と同じ構成であるが、絶縁材12と異なる電気絶縁性樹脂を用いるようにしてもよい。
次に、サンプルとして実施例1〜3の絶縁シート10及び比較例1〜3の絶縁シートを作成し、難燃性、折り曲げ性、電気特性、耐熱性、埋め込み性、しみだし性、の6項目について評価した。これらの項目については、以下の方法により評価した。
(1)難燃性
作製した絶縁シートを180℃、荷重40kgf/cmで60分間プレスし硬化させ、サンプルの難燃性をUL94の試験方法に従い評価した。
○:VTM−0
△:VTM−1
×:VTM−2
(2)折り曲げ性
作製した絶縁シートを180℃、荷重40kgf/cmで60分間プレスし硬化させ、これを180°に折り曲げた状態を以下の基準により目視で評価した。
○:折り曲げ部に亀裂の発生が見られない。
×:折り曲げ部に亀裂の発生が見られる。
(3)電気特性
JIS C 2317に準拠した絶縁破壊電圧の測定方法にて、各絶縁シートの絶縁破壊電圧を測定した。
(4)耐熱性(ガラス転移温度)
示差走査熱量測定(DSC)によりガラス転移温度を測定した。
(5)しみだし性
40mm角に切った絶縁シートを180℃、1時間、40kgf/cm2で熱プレスし、硬化後の形状を観察。
○:40±3mm角内
×:44mm角以上
詳細には、実施例1の絶縁シート10は以下の方法で作製した。
フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体(固形分40%DMF溶液品)300質量部、ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「EPPN502H」)100質量部、硬化剤[10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三公社製、商品名「HCA−HQ」)65質量部及びビフェニルノボラック型フェノール樹脂(明和化成社製、商品名「MEH−7851−3H」)30質量部]95質量部、トリフェニルホスフィン3質量部をDMAC(ジメチルアセトアミド)400質量部に混合、溶解し樹脂シート形成塗工液を調製した。
この塗工液を、アラミドフィルム(デュポン帝人アドバンストペーパー社製、商品名「ノーメックス410」、厚さ50μm)の片面に塗布し、乾燥(110℃、3分間)し、次いで塗布面にさらにアラミドフィルム(デュポン帝人アドバンストペーパー社製、商品名「ノーメックス410」、厚さ50μm)を120℃で加熱加圧し、樹脂シートの膜厚約30μm、全体の厚さが130μmの絶縁シートを作製した。
実施例2の絶縁シートは以下の方法で作製した。
実施例1において、硬化剤を10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三公社製、商品名「HCA−HQ」)95質量部とし、ビフェニルノボラック型フェノール樹脂を用いなかった以外は全て実施例1と同様にして絶縁シートを作製した。
実施例3の絶縁シートは以下の方法で作製した。
実施例1において、硬化剤を10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三公社製、商品名「HCA−HQ」)47.5質量部とビフェニルノボラック型フェノール樹脂(明和化成社製、商品名「MEH−7851−3H」)47.5質量部とした以外は、全て実施例1と同様にして絶縁シートを作製した。
[比較例1]
比較例1の絶縁シートは以下の方法で作製した。
実施例1において、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名「EPICLON850S」)とした以外は、全て実施例1と同様にして絶縁シートを作製した。
[比較例2]
比較例2の絶縁シートは以下の方法で作製した。
実施例1において、硬化剤として、ビフェニルノボラック型フェノール樹脂を130質量部とし、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(商品名「HCA−HQ」)85質量部を用いなかった以外は全て実施例1と同様にして絶縁シートを作製した。
[比較例3]
比較例3の絶縁シートは以下の方法で作製した。
実施例1において、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を用いなかった以外は全て実施例1と同様にして絶縁シートを作製した。
これらの実施例1〜3の絶縁シート、比較例1〜3の絶縁シートについての評価の結果を表1に示す。
[比較例4]
比較例4の絶縁シートは以下のものを用いた。
アラミドフィルム(デュポン帝人アドバンストペーパー社製、商品名「ノーメックス410」、厚さ130μm)
これらの実施例1〜3の絶縁シート、比較例1〜4の絶縁シートについての評価の結果を表1に示す。
Figure 2009199840
表1の結果から、本発明の実施例1乃至3に係る絶縁シートは難燃性と可撓性を同時に満足する性能を有するものであることが分かる。
次に、実施例1の絶縁シート10を用いて回転電機を製造する方法を説明する。
図3に回転電機のスロット20の断面を模式的に示す断面図を示す。このスロット20内にスロットの内周面を覆うように絶縁シート10を配置する。このとき、隙間が無いように絶縁シート10の端と端を重ねるようにする。そして巻き線22の束をこの絶縁シート10に挿通した後にスロット20内にエポキシ樹脂を含む封止剤を入れ巻き線22を封止する。回転電機の他のスロットにも、同様に絶縁シート10を配置し、巻き線22を挿通した後封止剤を入れ巻き線22を封止する。絶縁シート10を構成する樹脂シート14のエポキシ樹脂組成物と、封止剤中のエポキシ樹脂との相性がよいため、より効果的に巻き線22をスロット20内に固定することができる。
このようにして得た回転電機30の断面図を図4に示す。図4においてはスロット20を含むスロットが円環状に多数並んでいる。この回転電機30には図4中Aで示される中空の空間があり、この空間にスロット20と同様に絶縁シート10を配置し、この絶縁シート10に巻き線22を挿通するようにすることもできる。
本発明の絶縁シートは上記実施例に限られず、絶縁材に樹脂シートをコーティングするようにしても良いし、また、熱ラミネートにより作製しても良い。また、硬化過程を取るようにしても良いし、取らないようにしても良い。
本発明の絶縁シートは従来のものよりも薄膜で均一であるため、絶縁信頼性と線積率の向上が期待できる。従って、従来よりも多くの巻き線をスロット内に挿通することが可能である。また、スロットへの確実な固定をすることができるため、回転電機を製造する際の作業性の向上が期待できる。また、本発明の絶縁シートは可撓性と形態安定性に優れるため、巻き線をスロット内に通す際に破れたりすることが無く、作業性の向上が期待できる。エッジ部分の絶縁をすることも可能となるため、エッジカバー率の向上も期待することができる。
また、本発明の絶縁シートは、図2に示すように、絶縁材16の代わりに機能材18を用いるようにしてもよい。この絶縁シート40は、機能材18を備えているので、すべり性、耐傷性に優れている。
なお、本発明は上記実施例に限定されず、アラミドペーパー以外の絶縁材を用いてもよいし、他のエポキシ樹脂組成物を用いてもよい。また、巻き線には、エナメル線等を用いることができる。
絶縁シートをスロット内に配置する際には、図3に示されるように、端と端が重なる位置はスロットの開口部にあるようにしてもよいし、スロットの開口部以外にあるようにしてもよい。
また、本発明の絶縁シートは、図5に示すような回転電機を構成するコア40の絶縁用に用いることもできる。この場合、絶縁シートはコア表面41を覆うように配置したり、コア表面41からコア内面42に折り曲げるようにして配置してもよい。さらに、前述したスロットと同様、コア内面42に絶縁シートを配置してもよい。
本発明の実施例に係る絶縁シートを模式的に示す断面図 本発明の他の実施例に係る絶縁シートを模式的に示す断面図 本発明の実施例に係る絶縁シートが配置されたスロットを模式的に示す断面図 本発明の実施例に係る回転電機を模式的に示す断面図 本発明の実施例に係る回転電機のコアを模式的に示す斜視図
符号の説明
10、40…絶縁シート
12、16…絶縁材
14…樹脂シート
18…機能材
20…スロット
22…巻き線
30…回転電機
40…コア
41…コア表面
42…コア内面

Claims (8)

  1. 絶縁材と、樹脂シートと、絶縁材及び機能材の一方が積層された絶縁シートであって、
    前記樹脂シートはエポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする絶縁シート。
  2. 請求項1において、
    前記エポキシ樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤、及び(c)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を含有し、前記(a)成分がトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂であり、前記(b)成分が10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドを含むことを特徴とする絶縁シート。
  3. 請求項2において、
    前記(b)成分が、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドとその他の硬化剤とをその配合割合が質量比で50:50〜95:5の範囲で配合されてなるものであることを特徴とする絶縁シート。
  4. 請求項3において、
    前記(b)成分のその他の硬化剤がビフェニルノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とする絶縁シート。
  5. 請求項2乃至4のいずれかにおいて、
    前記(a)成分と(b)成分と(c)成分との配合割合が、(a)成分100質量部に対し、(b)成分が40〜140質量部、(c)成分が5〜300質量部の範囲であることを特徴とする絶縁シート。
  6. 請求項1乃至5のいずれかにおいて、
    前記樹脂シートに隣接する前記絶縁材の少なくとも一方はアラミドペーパーであることを特徴とする絶縁シート。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の絶縁シートがスロット内に該スロットの内周面を覆うように配置されていることを特徴とする回転電機。
  8. 請求項1乃至6のいずれかに記載の絶縁シートを回転電機のスロット内に該スロットの内周面を覆うように配置する絶縁工程と、巻き線を前記スロット内に配置された前記絶縁シートに挿通した後に、前記スロット内にエポキシ樹脂を含む封止剤を入れ、前記巻き線を封止する封止工程と、
    を有することを特徴とする回転電機の製造方法。
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