JP2009191813A - 空燃比制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 失火が発生した場合における、機関空燃比の誤った方向への制御を、可及的に抑制する。
【解決手段】 空燃比制御装置(6)は、排気ガス浄化用の触媒(53)よりも上流側の排気通路に配設された上流側空燃比センサ(66)の出力に基づいて、内燃機関(1)の空燃比を制御するように構成されている。ここで、失火が発生した場合、上流側空燃比センサ(66)の出力は、真の機関空燃比に対応するものとは明らかに異なるものとなり得る。そこで、本発明の空燃比制御装置(6)は、失火影響抑制部(607)を備えている。この失火影響抑制部(607)は、上流側空燃比センサ(66)出力における、失火の発生の影響を抑制するようになっている。
【選択図】 図3
【解決手段】 空燃比制御装置(6)は、排気ガス浄化用の触媒(53)よりも上流側の排気通路に配設された上流側空燃比センサ(66)の出力に基づいて、内燃機関(1)の空燃比を制御するように構成されている。ここで、失火が発生した場合、上流側空燃比センサ(66)の出力は、真の機関空燃比に対応するものとは明らかに異なるものとなり得る。そこで、本発明の空燃比制御装置(6)は、失火影響抑制部(607)を備えている。この失火影響抑制部(607)は、上流側空燃比センサ(66)出力における、失火の発生の影響を抑制するようになっている。
【選択図】 図3
Description
本発明は、内燃機関の空燃比を制御する、空燃比制御装置に関する。特に、本発明は、排気ガス浄化用の触媒よりも上流側の排気通路に配設された上流側空燃比センサの出力に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する、空燃比制御装置に関する。なお、本明細書における以下の記述において、「内燃機関」は、単に「機関」と略称されることもある。
この種の装置として、例えば、特開平6−129287号公報、特開平8−68352号公報、特開平10−103139号公報、等に開示されたものが知られている。これらの装置にて用いられている前記上流側空燃比センサは、酸素濃度センサであって、排気ガス中の酸素濃度に応じた出力を生じるようになっている。
特開平6−129287号公報
特開平8−68352号公報
特開平10−103139号公報
失火[misfire]が発生すると、燃焼室に供給された燃料混合気における、未燃燃料と酸素とが、燃焼に供されることなく、前記燃焼室から前記排気通路に放出される。このとき、前記上流側空燃比センサにて、真の機関空燃比(前記燃焼室に実際に供給された燃料混合気の空燃比)に対応するものとは明らかに異なる出力が生じ得る。このため、この種の装置においては、失火発生時に、機関空燃比が誤った方向に制御されることがあり得る。
具体的には、例えば、点火不良による失火時においては、前記上流側空燃比センサにて酸素濃度の増大が検知されることで、(真の機関空燃比がたとえ理論空燃比であったとしても)機関空燃比が理論空燃比よりも大幅にリーンであると誤って判断され得る。このような誤判断が行われると、機関空燃比が誤ってリッチ方向に制御されることで空燃比制御に乱れが生じる、ということがあり得る(特開平8−68352号公報における「従来の技術」欄を参照)。
本発明は、このような課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、失火が発生した場合における、機関空燃比の誤った方向への制御が、可及的に抑制され得る、空燃比制御装置を提供することにある。
本発明の適用対象となる内燃機関には、上流側空燃比センサと、排気ガス浄化用の触媒と、が設けられている。前記上流側空燃比センサは、前記触媒よりも上流側の排気通路に配設されている。また、本内燃機関には、さらに下流側空燃比センサが設けられ得る。この下流側空燃比センサは、前記触媒よりも下流側の前記排気通路に配設されている。これらの空燃比センサは、排気ガスの空燃比(排気ガス中の特定成分の濃度:例えば酸素濃度)に対応する出力を生じるように構成されている。例えば、複数の前記触媒が設けられている場合、それらのうちの最上流側のもの(以下、「上流側触媒」と称する。)よりも上流側、具体的には、前記上流側触媒の直前に、前記上流側空燃比センサが設けられている。また、前記上流側触媒の直後に、前記下流側空燃比センサが設けられている。
本発明の空燃比制御装置は、前記上流側空燃比センサの出力に基づいて、内燃機関の空燃比を制御するように構成されている。具体的には、例えば、本空燃比制御装置は、メインフィードバック部を備えている(なお、「部」は「手段」とも言い換えられ得る(例えば「メインフィードバック手段」等:以下同様。)。このメインフィードバック部は、前記上流側空燃比センサの前記出力に基づいて、前記触媒に流入する排気ガスの空燃比を目標空燃比に近づけるためのメインフィードバック補正値を取得するようになっている。
前記空燃比制御装置は、前記メインフィードバック部に加えて、さらにサブフィードバック部を備え得る。このサブフィードバック部は、前記下流側空燃比センサの出力に基づいて、前記メインフィードバック補正値による空燃比制御に対する補正(前記上流側空燃比センサの前記出力の目標値に対する補正、前記上流側空燃比センサの前記出力に対する補正、あるいは前記メインフィードバック補正値に対する補正)を行うためのサブフィードバック補正値を取得するようになっている。具体的には、例えば、前記サブフィードバック部は、前記触媒から流出する排気ガスの空燃比を理論空燃比に近づける(ひいては前記触媒に流入する排気ガスの平均空燃比を理論空燃比に近づける)方向で前記サブフィードバック補正値を取得するようになっている。
また、前記空燃比制御装置は、前記メインフィードバック部及び前記サブフィードバック部に加えて、さらにサブフィードバック学習部を備え得る。このサブフィードバック学習部は、前記サブフィードバック補正値に基づいて、定常的誤差を補正する(定常偏差分を学習する)ためのサブフィードバック学習値を取得するようになっている。具体的には、例えば、前記サブフィードバック学習部は、PI(あるいはPID)制御による前記サブフィードバック補正値の積分項に基づいて、前記サブフィードバック学習値を取得するようになっている。
※本発明の特徴は、前記空燃比制御装置が、失火影響抑制部を備えたことにある。この失火影響抑制部は、前記上流側空燃比センサの前記出力における、失火の発生の影響を抑制するようになっている。
例えば、前記失火影響抑制部は、帯域抑制部を備え得る。この帯域抑制部は、失火が発生した場合に生じる周波数帯域の、前記上流側空燃比センサの前記出力を、抑制する(除去するあるいは減衰させる)ようになっている。具体的には、前記帯域抑制部として、前記出力を処理することで当該出力における上述の周波数帯域の成分を除去あるいは減衰させる、いわゆる帯域除去フィルタ(BEF:Band Elimination Filter)が用いられ得る。かかる構成においては、前記失火影響抑制部には、帯域変更部がさらに備えられ得る。この帯域変更部は、前記内燃機関の運転状態(前記上流側空燃比センサの酸素濃度に対する応答に影響を与えるパラメータ:エンジン回転数、吸入空気流量、負荷率、等)に応じて、抑制する周波数帯域を変更するようになっている。
あるいは、前記失火影響抑制部は、マスク処理部(失火出力除去部)を備え得る。このマスク処理部は、失火発生時に対応する前記上流側空燃比センサの前記出力をマスク処理(全周波数帯域を除去)するようになっている。
本発明の空燃比制御装置においては、燃焼室を経た排気ガスの空燃比に対応する出力が、前記上流側空燃比センサにて生じる。この出力に基づいて、前記内燃機関の空燃比制御が行われる。具体的には、この出力に基づいて、前記触媒に流入する排気ガスの空燃比が目標空燃比に近づくように、前記内燃機関の空燃比制御が行われる。
ここで、失火が発生した場合、前記上流側空燃比センサの前記出力は、真の機関空燃比(前記燃焼室に実際に供給された燃料混合気の空燃比)に対応するものとは明らかに異なるものとなり得る(なお、失火時の未燃の燃料混合気は、ほとんどの場合、前記触媒にて反応したり浄化されたりするので、失火の発生による前記下流側空燃比センサの出力に対する影響は小さい。)。
例えば、真の機関空燃比が理論空燃比及びその近傍(場合によっては若干リッチ傾向)であっても、失火が発生した場合の前記上流側空燃比センサの前記出力は、理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比に対応するものとなり得る。このとき、当該出力に応じて機関空燃比がリッチ方向に制御されてしまうと、空燃比制御に大きな乱れが生じる。
具体的には、真の機関空燃比の平均値がリッチ側にずれる。すると、前記サブフィードバック部によって機関空燃比をリーン側に補正する傾向が増大するとともに、前記サブフィードバック学習値がリーン側にずれる。このような学習ズレが発生すると、再学習によって前記サブフィードバック学習値が本来収束すべき値にまで回復するためには、かなりの機関運転時間が必要となってしまう。さらに、失火の頻発(失火率の増大)によって大幅な学習ズレが生じると、学習値の早期回復が著しく困難となる。
そこで、本発明の空燃比制御装置においては、前記上流側空燃比センサの前記出力における、失火の発生の影響が、前記失火影響抑制部によって抑制される。すなわち、例えば、前記上流側空燃比センサの前記出力における、失火が発生した場合に生じる周波数帯域の成分が、抑制(除去あるいは減衰)される。あるいは、失火が発生した場合に、この失火に対応する前記上流側空燃比センサの前記出力がマスク処理される。
本発明によれば、失火が発生した場合に、真の機関空燃比から(例えばリーン方向に大きく)ずれた見かけ上の空燃比が前記上流側空燃比センサによって検出されることによる、機関空燃比の誤った方向への制御が、可及的に抑制され得る。
また、本発明によれば、失火が発生しやすい運転領域(これには実際の失火発生時も含まれ得る)にて空燃比フィードバック制御を停止する技術(特開平8−68352号公報参照)とは異なり、失火発生時も可及的に適切な範囲で空燃比フィードバック制御が実施される。したがって、より適切な空燃比制御が実施され得る。
・前記空燃比制御装置は、失火の発生を検知する失火検知部をさらに備え得る。かかる構成においては、前記失火影響抑制部は、前記失火検知部により失火の発生が検知された場合に、前記上流側空燃比センサの前記出力における、失火の発生の影響を抑制するための処理(当該出力に対する帯域抑制処理あるいはマスク処理)を実行するようになっている。
かかる構成においては、失火が発生した場合に(のみ)、前記上流側空燃比センサの前記出力に対する上述のような処理が実行される。一方、失火が発生していない場合には、通常通り、前記上流側空燃比センサの前記出力に基づいて、機関空燃比が制御される。
このように、かかる構成によれば、失火が発生していない場合に、前記上流側空燃比センサの前記出力における、適切な空燃比制御のために有用な成分まで除去されてしまうことが、可及的に抑制され得る。したがって、かかる構成によれば、よりいっそう適切な空燃比制御が実施され得る。
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。実施形態に対する変形例(modification)の例示は、当該実施形態の説明中に挿入されると、首尾一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
<内燃機関の装置構成>
図1は、本発明の一実施形態が適用された内燃機関1の概略構成図である。この内燃機関1は、シリンダブロック部2と、シリンダヘッド部3と、吸気系統4と、排気系統5と、本発明の空燃比制御装置の一実施形態である制御装置6と、を備えている。
図1は、本発明の一実施形態が適用された内燃機関1の概略構成図である。この内燃機関1は、シリンダブロック部2と、シリンダヘッド部3と、吸気系統4と、排気系統5と、本発明の空燃比制御装置の一実施形態である制御装置6と、を備えている。
<<エンジンブロック>>
ロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部2は、シリンダヘッド部3とともに、内燃機関1の本体部分(エンジンブロック)を構成するものであって、シリンダブロック部2の上端部にはシリンダヘッド部3が固定されている。
ロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部2は、シリンダヘッド部3とともに、内燃機関1の本体部分(エンジンブロック)を構成するものであって、シリンダブロック部2の上端部にはシリンダヘッド部3が固定されている。
シリンダブロック部2には、複数のシリンダ21が形成されている。各シリンダ21内には、ピストン22が、往復移動可能に収容されている。シリンダ21及びピストン22の下方には、クランクシャフト23が回転可能に支持されつつ収容されている。クランクシャフト23は、ピストン22の往復移動に基づいて回転駆動されるように、コンロッド24を介して、クランクシャフト23と連結されている。
シリンダヘッド部3の下端面(シリンダブロック部2と対向する面)には、凹部が形成されている。この凹部は、シリンダ21の上端部に対応する位置に設けられている。この凹部の内側の空間と、ピストン22の頂面よりも上側のシリンダ21の内側の空間と、によって、燃焼室25が形成されている。
シリンダヘッド部3は、吸気ポート31と、吸気弁32と、可変吸気タイミング装置33と、排気ポート34と、排気弁35と、エキゾーストカムシャフト36と、点火プラグ37と、イグナイタ38と、インジェクタ39と、を備えている。
吸気ポート31は、燃焼室25に連通するように設けられている。吸気弁32は、吸気ポート31を開閉するように設けられている。可変吸気タイミング装置33は、吸気弁32を駆動する図示しないインテークカムシャフトを備えるとともに、このインテークカムシャフトの位相角を連続的に変更するためのアクチュエータ33aを備えている。
排気ポート34は、燃焼室25に連通するように設けられている。排気弁35は、排気ポート34を開閉するように設けられている。エキゾーストカムシャフト36は、排気弁35を駆動するように設けられている。
点火プラグ37は、その端部(下端部)に設けられた火花発生電極が燃焼室25の上端部に露出するように配置されている。イグナイタ38は、点火プラグ37における上述の火花発生電極に印加するための高電圧を発生するイグニッションコイルを備えている。インジェクタ39は、燃料を吸気ポート31内に噴射するように設けられている。
<<吸排気系統>>
吸気系統4は、吸気管41と、エアフィルタ42と、スロットル弁43と、を備えている。インテークマニホールドを含む吸気管41は、吸気ポート31とともに吸気通路を形成するものであって、吸気ポート31に連通するように設けられている。この吸気管41には、エアフィルタ42が介装されている。吸気管41における、エアフィルタ42と吸気ポート31との間の位置には、スロットル弁43が介装されている。スロットル弁43は、吸気通路の開口断面積を可変とするように設けられていて、スロットル弁アクチュエータ43aによって駆動されるようになっている。
吸気系統4は、吸気管41と、エアフィルタ42と、スロットル弁43と、を備えている。インテークマニホールドを含む吸気管41は、吸気ポート31とともに吸気通路を形成するものであって、吸気ポート31に連通するように設けられている。この吸気管41には、エアフィルタ42が介装されている。吸気管41における、エアフィルタ42と吸気ポート31との間の位置には、スロットル弁43が介装されている。スロットル弁43は、吸気通路の開口断面積を可変とするように設けられていて、スロットル弁アクチュエータ43aによって駆動されるようになっている。
排気系統5は、エキゾーストマニホールド51と、排気管52と、複数の触媒(上流側触媒53及び下流側触媒54)と、を備えている。エキゾーストマニホールド51は、排気ポート34に連通するように設けられている。排気管52は、排気ポート34及びエキゾーストマニホールド51とともに排気通路を構成するものであって、エキゾーストマニホールド51に接続されている。この排気管52には、上流側触媒53及び下流側触媒54が介装されている。
上流側触媒53及び下流側触媒54は、いわゆる三元触媒であって、排気ガス中のHC、CO、及びNOxを浄化し得るように構成されている。上流側触媒53は、複数の触媒のうちの最上流側に配置されている。下流側触媒54は、上流側触媒53の直後、すなわち、上流側触媒53から排出された排気ガスが他の触媒を介さずにそのまま流入し得るような位置に、配置されている。
<制御装置の構成>
本実施形態に係る制御装置6は、インジェクタ39からの燃料噴射(量及びタイミング)や、点火プラグ37による火花発生を含む、内燃機関1の運転動作を制御するように、以下の通りに構成されている。
本実施形態に係る制御装置6は、インジェクタ39からの燃料噴射(量及びタイミング)や、点火プラグ37による火花発生を含む、内燃機関1の運転動作を制御するように、以下の通りに構成されている。
制御装置6は、エンジン電子コントロールユニット(ECU)60を備えている。本発明のメインフィードバック部、サブフィードバック部、サブフィードバック学習部、失火影響抑制部(帯域抑制部、帯域変更部、マスク処理部)、及び失火検知部を構成するECU60は、CPU60aと、ROM60bと、RAM60cと、バックアップRAM60dと、インターフェース60eと、双方向バス60fと、を備えている。CPU60a、ROM60b、RAM60c、バックアップRAM60d、及びインターフェース60eは、双方向バス60fによって互いに接続されている。
ROM60bには、CPU60aにより実行されるルーチン(プログラム)、及びその実行の際に用いられるテーブル、マップ、パラメータ、等が、予め格納されている。RAM60cは、CPU60aによりルーチンが実行される際に、必要に応じてデータを一時的に格納し得るように構成されている。バックアップRAM60dは、電源が投入された状態でCPU60aによりルーチンが実行される際にデータを格納するとともに、この格納されたデータを電源遮断後も保持し得るように構成されている。
インターフェース60eは、後述する各種センサと電気的に接続されていて、これらからの信号をCPU60aに伝達し得るように構成されている。また、インターフェース60eは、可変吸気タイミング装置33(アクチュエータ33a)、イグナイタ38、インジェクタ39、スロットル弁アクチュエータ43a、等の動作部と電気的に接続されていて、これらの動作部を動作させるための動作信号をCPU60aからこれらの動作部に伝達し得るように構成されている。すなわち、ECU60は、後述する各種センサからの信号を受け取るとともに、当該信号に応じたCPU60aの演算結果に基づいて、上述の動作信号を各動作部に送出するようになっている。
<<各種センサ>>
本実施形態においては、エアフローメータ62と、スロットルポジションセンサ63と、カムポジションセンサ64と、クランクポジションセンサ65と、冷却水温センサ66と、上流側空燃比センサ67(以下「A/Fセンサ67」と称する)と、下流側空燃比センサ68(以下「O2センサ68」と称する)と、アクセル開度センサ69と、が設けられている。
本実施形態においては、エアフローメータ62と、スロットルポジションセンサ63と、カムポジションセンサ64と、クランクポジションセンサ65と、冷却水温センサ66と、上流側空燃比センサ67(以下「A/Fセンサ67」と称する)と、下流側空燃比センサ68(以下「O2センサ68」と称する)と、アクセル開度センサ69と、が設けられている。
エアフローメータ62は、吸気管41に介装されている。このエアフローメータ62は、吸気管41内を流れる吸入空気の単位時間あたりの質量流量である吸入空気流量Gaに対応する信号を出力するように構成されている。
スロットルポジションセンサ63は、吸気管41における、スロットル弁43に対応する位置に装着されている。スロットルポジションセンサ63は、スロットル弁43の回転位相(スロットル弁開度TA)に対応する信号を出力するように構成されている。
カムポジションセンサ64は、シリンダヘッド部3に装着されている。このカムポジションセンサ64は、可変吸気タイミング装置33に備えられている上述の図示しないインテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランクシャフト23が180°回転する毎に)、一つのパルスを有する信号(カム位置信号G2:気筒判別に用いられる)を発生するように構成されている。
クランクポジションセンサ65は、クランクシャフト23と対向するように配置されている。このクランクポジションセンサ65は、クランクシャフト23の回転角度に応じたパルスを有する波形の信号を出力するように構成されている。具体的には、クランクポジションセンサ65は、クランクシャフト23が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに、クランクシャフト23が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するように構成されている。すなわち、クランクポジションセンサ65の出力信号に基づいて、エンジン回転数Neが取得されるようになっている。
冷却水温センサ66は、シリンダブロック部2に装着されている。この冷却水温センサ66は、シリンダブロック部2の内部に設けられたウォータージャケット内の冷却水の温度(冷却水温THW)に対応する信号を出力するように構成されている。
A/Fセンサ67は、上流側触媒53の直前の排気通路(より詳細にはエキゾーストマニホールド51における末端部であって排気管52との接続部)に配設されている。このA/Fセンサ67は、排気ポート34を介して燃焼室25から排出された排気ガスの酸素濃度に対応する電圧を出力するように構成されている。具体的には、このA/Fセンサ67は、限界電流式の酸素濃度センサであって、図2Aに示されているように、理論空燃比(略14.6)にて理論空燃比対応値Vstoichとなるとともに、理論空燃比の前後の広範囲にわたって空燃比を検出し得るような、ほぼリニアな特性の出力電圧Vafsを生じるように構成されている。
O2センサ68は、上流側触媒53の直後、すなわち、上流側触媒53よりも下流側且つ下流側触媒54よりも上流側の排気通路(排気管52)に配設されている。このO2センサ68は、上流側触媒53を経た排気ガスの酸素濃度に対応する電圧を出力するように構成されている。具体的には、このO2センサ68は、起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサであって、図2Bに示されているように、空燃比が理論空燃比にて理論空燃比対応値Voxs_ref=0.5[V]、理論空燃比よりもリッチのときはリッチ対応値(略0.9[V])、及び理論空燃比よりもリーンのときはリーン対応値(略0.1[V])となるとともに、理論空燃比近傍において急変する電圧Voxsを出力するように構成されている。
アクセル開度センサ69は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を表す信号(アクセルペダル操作量Accp)を出力するようになっている。
<第1の実施形態における機能ブロック構成>
図3は、図1に示されている本実施形態の制御装置6の機能ブロック図である。以下、図3を参照しつつ、この制御装置6の機能ブロック構成について説明する。この制御装置6は、601〜613の各機能ブロックを備えている。なお、以下の説明において、図1に示されている各要素について言及する場合は、図1の符号が適宜参照されるものとする。また、「フィードバック」は単に「F/B」と略称されることもある。
図3は、図1に示されている本実施形態の制御装置6の機能ブロック図である。以下、図3を参照しつつ、この制御装置6の機能ブロック構成について説明する。この制御装置6は、601〜613の各機能ブロックを備えている。なお、以下の説明において、図1に示されている各要素について言及する場合は、図1の符号が適宜参照されるものとする。また、「フィードバック」は単に「F/B」と略称されることもある。
<<基本燃料噴射量算出部>>
空気量算出部(air quantity calculator)601は、エアフローメータ62の出力に基づいて得られる吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ65の出力に基づいて得られるエンジン回転数Neと、ROM60bに記憶されているマップであるMapMcと、に基づき、吸気行程を迎える気筒の今回の吸入空気量である筒内吸入空気量Mc(k)を求めるとともに、これを各気筒の吸気行程に対応させながらRAM60cに順次記憶させるようになっている。ここで、添え字の(k)は、今回の吸気行程に対する値であることを示している(以下、他の物理量についても同様。)。
空気量算出部(air quantity calculator)601は、エアフローメータ62の出力に基づいて得られる吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ65の出力に基づいて得られるエンジン回転数Neと、ROM60bに記憶されているマップであるMapMcと、に基づき、吸気行程を迎える気筒の今回の吸入空気量である筒内吸入空気量Mc(k)を求めるとともに、これを各気筒の吸気行程に対応させながらRAM60cに順次記憶させるようになっている。ここで、添え字の(k)は、今回の吸気行程に対する値であることを示している(以下、他の物理量についても同様。)。
AFR設定部(AFR setter)602は、今回の機関空燃比の制御目標値(上流側触媒53よりも上流側の排気ガスの空燃比の目標値)である目標空燃比AFR(k)を設定する(目標空燃比AFR(k)は原則的には理論空燃比stoichに設定される)とともに、これを各気筒の吸気行程に対応させながらRAM60cに順次記憶させるようになっている。Fib算出部(Fib calculator)603は、空気量算出部601によって算出された筒内吸入空気量Mc(k)を、AFR設定部602によって設定された目標空燃比AFR(k)で除することにより、基本燃料噴射量Fibを算出するようになっている。
<<サブF/B・サブF/B学習部>>
下流側目標値設定部(Downstream-side target value setter)604は、上流側触媒53から流出する排気ガスの空燃比の目標値である下流側目標値Vox_ref(理論空燃比に対応する値である0.5[V])を設定するようになっている。出力偏差量算出部(Output deviation calculator)605は、下記(1)式に基づいて、現時点(今回の噴射指示開始時点)での下流側目標値Vox_refから現時点でのO2センサ68の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求めるようになっている。
DVoxs=Vox_ref−Voxs ・・・(1)
下流側目標値設定部(Downstream-side target value setter)604は、上流側触媒53から流出する排気ガスの空燃比の目標値である下流側目標値Vox_ref(理論空燃比に対応する値である0.5[V])を設定するようになっている。出力偏差量算出部(Output deviation calculator)605は、下記(1)式に基づいて、現時点(今回の噴射指示開始時点)での下流側目標値Vox_refから現時点でのO2センサ68の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求めるようになっている。
DVoxs=Vox_ref−Voxs ・・・(1)
本発明のサブフィードバック部及びサブフィードバック学習部を構成するPIDコントローラ606は、出力偏差量DVoxsを比例・積分・微分処理(PID処理)することで、下記(2)式に基づいてサブF/B補正量Vsfb(サブフィードバック補正値)を求めるようになっている。ここで、下記(2)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(一定値)、Kiは予め設定された積分ゲイン(一定値)、Kdは予め設定された微分ゲイン(一定値)、SDVoxsは出力偏差量DVoxsの時間積分値(積算値)であり、DDVoxsは出力偏差量DVoxsの時間微分値である。
Vsfb=Kp・DVoxs+Ki・SDVoxs+Kd・DDVoxs ・・・(2)
Vsfb=Kp・DVoxs+Ki・SDVoxs+Kd・DDVoxs ・・・(2)
すなわち、PIDコントローラ606は、O2センサの出力に基づいて、後述するメインF/Bによる空燃比制御に対する補正(A/Fセンサ67の出力に対する補正)を行うためのであるサブF/B補正量Vsfbを取得するようになっている。
また、PIDコントローラ606は、所定タイミングが到来する毎に、積分項Ki・SDVoxsにおける定常的な成分をサブF/B学習値Learnとして取得するとともに、これをバックアップRAM60dに格納するようになっている。すなわち、PIDコントローラ606は、サブF/B補正量Vsfbに基づいて、定常的誤差を補正する(定常偏差分を学習する)ためのサブF/B学習値Learnを取得するようになっている。
なお、サブF/B及びサブF/B学習の詳細については周知なので、本明細書においては、これらについての詳細な説明は省略されている(後述するメインF/Bについても同様である)。
<<メインF/B部>>
本発明の失火影響抑制部及び帯域抑制部を構成する帯域除去フィルタ(BEF)607は、A/Fセンサ67の出力における、失火の発生の影響を抑制するようになっている。具体的には、BEF607は、A/Fセンサ67の出力値Vafsを処理することで、当該出力値Vafsにおける、失火が発生した場合に生じる特定の周波数帯域の成分を、減衰させるようになっている(詳細は後述する)。このBEF607における減衰周波数帯域は、失火時のA/Fセンサ67の出力値Vafsの応答を実験により求めることで、予め設定されている。
本発明の失火影響抑制部及び帯域抑制部を構成する帯域除去フィルタ(BEF)607は、A/Fセンサ67の出力における、失火の発生の影響を抑制するようになっている。具体的には、BEF607は、A/Fセンサ67の出力値Vafsを処理することで、当該出力値Vafsにおける、失火が発生した場合に生じる特定の周波数帯域の成分を、減衰させるようになっている(詳細は後述する)。このBEF607における減衰周波数帯域は、失火時のA/Fセンサ67の出力値Vafsの応答を実験により求めることで、予め設定されている。
A/F出力算出部(A/F output calculator)608は、BEF607の出力値Vafs’とサブF/B補正量Vsfbとを加えた値(制御用空燃比相当出力値)を、テーブル変換部609に出力するようになっている。テーブル変換部(Table conversion device)609は、A/Fセンサ67の出力値Vafsと空燃比A/Fとの関係を規定したテーブルMapafsと、A/F出力算出部608の出力(制御用空燃比相当出力値=Vafs’+Vsfb)と、に基づいて、現時点での(今回の)制御用空燃比AFS(k)を求めるとともに、これを各気筒の吸気行程に対応させながらRAM60cに記憶させるようになっている。
目標空燃比遅延部(Target air-fuel ratio delay device)610は、AFR設定部602により吸気行程毎に求められRAM60cに記憶されている目標空燃比AFRのうち、現時点からNストローク前の目標空燃比AFR(k-N)をRAM60cから読み出すようになっている。ここで、ストローク数Nは、「行程遅れに係る時間」と「輸送遅れに係る時間」と「応答遅れに係る時間」の和(以下、「無駄時間L」と称呼する。)に相当するストローク数である。ここで、「行程遅れに係る時間」は、燃料の噴射指示から、この噴射指示により噴射された燃料の燃焼に基づく排気ガスが排気弁35を介して燃焼室25から排気通路へ排出されるまでの時間である。「輸送遅れに係る時間」は、排気ガスが排気弁35を介して排気通路へ排出されてからA/Fセンサ67(の検出部)に到達するまでの時間である。「応答遅れに係る時間」は、A/Fセンサ67(の検出部)に到達した排気ガスの空燃比がA/Fセンサ67の出力値Vafsとして現れるまでの時間である。
空燃比偏差算出部(Air-fuel ratio deviation calculator)611は、下記(3)式に基づいて、今回の制御用空燃比AFS(k)から、現時点からNストローク前の目標空燃比AFR(k-N)を減じることにより、空燃比偏差DAFを求めるようになっている。ここで、A/Fセンサ67の出力値Vafsが現時点から上述の無駄時間Lだけ前の噴射指示により噴射された燃料の燃焼に基づく排気ガスの空燃比を表すことを考慮すると、この空燃比偏差DAFは、現時点からNストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を表す量となる。
DAF=AFS(k)−AFR(k-N) ・・・(3)
DAF=AFS(k)−AFR(k-N) ・・・(3)
本発明のメインフィードバック部を構成するPIコントローラ612は、この空燃比偏差DAFを比例・積分処理(PI処理)することで、下記(4)式に基づいて、現時点からNストローク前の燃料供給量の過不足を補償するためのメインF/B補正量DFB(メインフィードバック補正値)を取得するようになっている。ここで、下記(4)式において、Gpは比例ゲイン(一定値)、Giは積分ゲイン(一定値)、SDAFは空燃比偏差DAFの時間積分値(積算値)である。
DFB=Gp・DAF+Gi・SDAF ・・・(4)
DFB=Gp・DAF+Gi・SDAF ・・・(4)
すなわち、PIコントローラ612は、BEF607の出力値Vafs’にサブF/B補正量Vsfbを加えた値(制御用空燃比相当出力値)に基づいて、上流側触媒53に流入する排気ガスの空燃比を目標空燃比に近づけるためのメインF/B補正量DFBを取得するようになっている。
指令燃料噴射量算出部(Command fuel injection quantity calculator)613は、基本燃料噴射量Fibに上述のメインF/B補正量DFBを加えることで、下記(5)式に基づいて指令燃料噴射量Ficを算出するようになっている。
Fic=Fib+DFB ・・・(5)
Fic=Fib+DFB ・・・(5)
<実施形態の構成による動作の説明>
以下、本実施形態の制御装置6の動作について説明する。
以下、本実施形態の制御装置6の動作について説明する。
<<空燃比制御の概要>>
上述のように、本制御装置6は、出力値Voxsに基づいてPIDコントローラ606にて比例・積分・微分処理(PID処理)及び学習処理を行うことで、下流側目標値Voxs_refとO2センサ68の出力値Voxsとの定常偏差がゼロになるように、サブFB補正量Vsfbを算出する。また、本制御装置6は、現時点での上流側空燃比センサ67の出力値Vafsに基づくBEF607の出力値Vafs’を、サブFB補正量Vsfbで補正することで、制御用空燃比相当出力値(Vafs’+Vsfb)を求める。そして、現時点からNストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を補償するために、現時点での制御用空燃比AFS(k)が現時点からNストローク前の目標空燃比AFR(k-N)と一致するように空燃比をフィードバック制御する(すなわち、基本燃料噴射量FibをメインF/B補正量DFBに基づいて補正することにより得られる指令燃料噴射量Ficの燃料の噴射指示を、今回の吸気行程を迎える気筒についてのインジェクタ39に対して行う。)。
上述のように、本制御装置6は、出力値Voxsに基づいてPIDコントローラ606にて比例・積分・微分処理(PID処理)及び学習処理を行うことで、下流側目標値Voxs_refとO2センサ68の出力値Voxsとの定常偏差がゼロになるように、サブFB補正量Vsfbを算出する。また、本制御装置6は、現時点での上流側空燃比センサ67の出力値Vafsに基づくBEF607の出力値Vafs’を、サブFB補正量Vsfbで補正することで、制御用空燃比相当出力値(Vafs’+Vsfb)を求める。そして、現時点からNストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を補償するために、現時点での制御用空燃比AFS(k)が現時点からNストローク前の目標空燃比AFR(k-N)と一致するように空燃比をフィードバック制御する(すなわち、基本燃料噴射量FibをメインF/B補正量DFBに基づいて補正することにより得られる指令燃料噴射量Ficの燃料の噴射指示を、今回の吸気行程を迎える気筒についてのインジェクタ39に対して行う。)。
上述したように、制御用空燃比AFSは、A/Fセンサ67の出力値Vafs(BEF607の出力値Vafs’)に対応する検出空燃比をサブF/B補正量Vsfbに相当する分だけ補正した空燃比である。従って、制御用空燃比AFSは出力偏差量DVoxsにも応じて変化する。この結果、O2センサ68の出力値Voxsが下流側目標値Vox_refに一致するようにも空燃比がフィードバック制御される。このことは、上流側触媒53から流出する排気ガスの平均空燃比が理論空燃比となるように制御されること、ひいては、上流側触媒53に流入する排気ガスの平均空燃比が理論空燃比となるように制御されること、を意味する。
また、PIコントローラ612は積分項Gi・SDAFを含んでいるので、定常状態では空燃比偏差DAFがゼロになることが保証される。換言すれば、目標空燃比AFR(k-N)と制御用空燃比AFS(k)との定常偏差がゼロになる。このことは、定常状態において、制御用空燃比AFSが目標空燃比AFRに一致すること、ひいては、上流側触媒53の上下流の空燃比が目標空燃比AFRに一致することが保証されること、を意味する。
<<実施形態の構成による作用・効果>>
図4は、図3に示されている本実施形態の制御装置6の動作説明のためのタイムチャートである。図4においては、図1に示されている内燃機関1にて点火異常に起因する失火が繰り返し発生している場合における、検出空燃比、触媒上流の実排気空燃比、及びメインF/B補正量の変化の一例が示されている(後述する図7等も同様である)。
図4は、図3に示されている本実施形態の制御装置6の動作説明のためのタイムチャートである。図4においては、図1に示されている内燃機関1にて点火異常に起因する失火が繰り返し発生している場合における、検出空燃比、触媒上流の実排気空燃比、及びメインF/B補正量の変化の一例が示されている(後述する図7等も同様である)。
以下、図4を参照すると、(i)に示されているように失火が断続的に発生すると、(ii)に示されているように、A/Fセンサ67の出力値Vafsにて、リーン方向に大きなピークが断続的に発生する(図中の破線参照)。なお、このピークのタイミングが失火発生のタイミングよりも遅れているのは、上述した無駄時間Lに対応するものである。このようなピークの発生は、以下の理由に基づく。
点火異常により失火が発生すると、未燃の排気ガス中には、多量のHC、及び多量のO2(酸素)ガスが含まれている。もっとも、エアフローメータ62及びインジェクタ39は正常であるから、未燃の排気ガスの空燃比は、理論空燃比stoichあるいはその近傍に維持されている。
A/Fセンサ67は、限界電流式の酸素濃度センサであって、検知部との反応速度は、O2ガスの方がHCガスよりも大きい。したがって、失火が発生すると、HCよりも多量のO2ガスがA/Fセンサ67と反応することで、A/Fセンサ67の出力(すなわち検出空燃比)は、実排気空燃比よりもリーン方向にずれる。なお、かかる多量のHCガス及び多量のO2ガスのほとんどは、上流側触媒53内で処理されたり互いに反応したりするため、O2センサ68には、A/Fセンサ67のように多量のO2ガスが到達し得ない。従って、O2センサ68の出力Voxsが失火によりリーン方向にずれる傾向は非常に小さい。
ここで、本実施形態においては、A/Fセンサ67の出力値VafsがBEF607で処理される。すると、上述のようなリーン方向の大きなピークが抑制(減衰)される(図中(ii)における実線参照)。これにより、(iii)に示されているように、本来必要のない、メインF/B補正量DFBによる増量(リッチ側)補正が抑制される。よって、(iv)に示されているように、上流側触媒53に流入する排気ガスにおける実際の空燃比(真の機関空燃比)の平均値の、リッチ側へのシフトが、効果的に抑制される。
また、本実施形態においては、A/Fセンサ67の出力値VafsがBEF607で常に処理される。よって、失火タイミングが正確に判明していない場合であっても、失火によって発生した有害成分が効果的に減衰される。さらに、本実施形態においては、A/Fセンサ67の出力値Vafsにおける、失火によって発生したもの以外の有効な成分(特に低周波成分)を用いて、空燃比フィードバック制御が良好に行われ得る。
このように、本実施形態によれば、失火が発生した場合に、真の機関空燃比からリーン方向に大きくずれた見かけ上の空燃比のピークがA/Fセンサ67によって検出されることによる、機関空燃比の誤った方向への制御が、簡略な装置構成を用いて効果的に抑制され得る。したがって、不用意な空燃比変動が抑制され、以てドライバビリティが向上する。
一方、BEF607による処理がない場合、(ii)における破線で示されているA/Fセンサ67の出力値Vafsそのものに基づいて、空燃比フィードバック制御が行われる。すると、(v)に示されているように、失火の発生に対応して、本来不要な増量補正が行われる。このため、失火が繰り返し発生すると、メインF/B補正量DFBの平均値が、中心値「0」に対して増量方向にシフトする(図中ΔDFBav参照)。この結果、(vi)に示されているように、真の機関空燃比の平均値がリッチ側へシフトする(図中Δ[A/F]av参照)。このことは、サブF/B補正量Vsfbにおける積分項Ki・SDVoxs(あるいはサブF/B学習値Learn)が、本来収束すべき値に対して減量方向(リーン方向)へずれることにもつながる。
このような積分項Ki・SDVoxsやサブF/B学習値Learnのズレが発生すると、これらが本来収束すべき値にまで回復するためには、かなりの運転時間が必要となってしまう。さらに、失火の頻発(失火率の増大)によって大幅なズレが生じると、積分項Ki・SDVoxsやサブF/B学習値Learnの、本来収束すべき値への早期回復が、著しく困難となる。
<第2の実施形態>
以下、上述の実施形態(第1の実施形態)を変形した、他の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述の第1の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、本実施形態においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとし、当該構成要素の説明については、上述の第1の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする(第3以降の実施形態についても同様である)。
以下、上述の実施形態(第1の実施形態)を変形した、他の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述の第1の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、本実施形態においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとし、当該構成要素の説明については、上述の第1の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする(第3以降の実施形態についても同様である)。
本実施形態においては、BEF607は、上述の周波数帯域を、内燃機関1の運転状態に応じて変更するようになっている。具体的には、A/Fセンサ67の酸素濃度に対する応答特性(上述のような失火時の見かけ上のリーン応答の特性)は、当該A/Fセンサ67を通過する排気ガスの状態(量や速度等)による影響を受ける。そこで、本実施形態においては、BEF607は、図5に示されているマップのように、吸入空気流量Gaに基づいて、カットオフ周波数の上限値f1及び下限値f2を取得するようになっている。かかるマップも、予め実験等によって求められ得る。
本実施形態の構成によれば、BEF607のカットオフ周波数帯域を必要最小限に設定することが可能になる。これにより、A/Fセンサ67の出力値Vafsにおける、失火によって発生したもの以外の有効な成分(特に低周波成分)が減衰されてしまうことが、可及的に抑制される。したがって、本実施形態によれば、空燃比フィードバック制御がより良好に行われ得る。
<第3の実施形態>
図6は、図1に示されている制御装置6の、さらに他の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態においては、失火の発生を検知する失火検知部614がさらに備えられている。そして、BEF607は、失火検知部614による失火の発生の検知信号をトリガーとして、一定期間、上述のような帯域除去処理を行うようになっている。
図6は、図1に示されている制御装置6の、さらに他の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態においては、失火の発生を検知する失火検知部614がさらに備えられている。そして、BEF607は、失火検知部614による失火の発生の検知信号をトリガーとして、一定期間、上述のような帯域除去処理を行うようになっている。
本実施形態における失火検知部614は、クランクポジションセンサ65の出力に基づいて得られる回転数変動(エンジン回転数Neの変動)等に基づいて、失火の発生を検知するとともに、当該失火の発生気筒を特定し得るようになっている。このような失火検知部614は周知であるので(例えば、特開平8−75612号、特開2001−107799号、等参照。)、その構成についての詳細な説明は、本明細書では省略されている。
図7は、図6に示されている本実施形態の制御装置6の動作説明のためのタイムチャートである。図7に示されているように、失火が検知されると、BEF607に一定期間トリガーがかかる(図中2点鎖線で示されている長方形を参照)。すると、BEF607による帯域除去処理が行われる。これにより、失火による見かけ上のリーン側に突出するピークが抑制される(図中(ii)における実線参照)。一方、失火の発生が検知されていない場合には、BEF607にトリガーがかからないので、A/Fセンサ67の出力値Vafsがそのまま空燃比制御に用いられる。
本実施形態の構成によれば、失火が発生していない場合に、A/Fセンサ67の出力値Vafsにおける、適切な空燃比制御のために有用な成分まで除去されてしまうことが、可及的に抑制され得る。したがって、かかる構成によれば、よりいっそう適切な空燃比制御が実施され得る。
<第4の実施形態>
図8は、図1に示されている制御装置6の、さらに他の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態においても、失火の発生を検知する失火検知部614が備えられている。また、本実施形態においては、図3におけるBEF607に代えて、マスク処理部615が備えられている。このマスク処理部615は、失火の発生が検知された場合に、失火発生時に対応するA/Fセンサ67の出力値Vafsをマスク処理(全周波数帯域を除去)するようになっている。
図8は、図1に示されている制御装置6の、さらに他の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態においても、失火の発生を検知する失火検知部614が備えられている。また、本実施形態においては、図3におけるBEF607に代えて、マスク処理部615が備えられている。このマスク処理部615は、失火の発生が検知された場合に、失火発生時に対応するA/Fセンサ67の出力値Vafsをマスク処理(全周波数帯域を除去)するようになっている。
図9は、図8に示されている本実施形態の制御装置6の動作説明のためのタイムチャートである。図9に示されているように、失火が検知されると、マスク処理部615に一定期間トリガーがかかる(図中2点鎖線で示されている長方形を参照)。すると、A/Fセンサ67の出力値Vafsがマスク処理される。これにより、失火による見かけ上のリーン側に突出するピークが、ほぼ完全に除去される(図中(ii)における実線参照:なお、第1の実施形態においては、図4の(ii)ないし(iv)に示されているように、失火による影響がわずかながら残っている。)。一方、失火の発生が検知されていない場合には、マスク処理部615にトリガーがかからないので、A/Fセンサ67の出力値Vafsがそのまま空燃比制御に用いられる。
本実施形態の構成によれば、上述の第3の実施形態と同様の作用・効果が得られる他、失火が発生した場合における、積分項Ki・SDVoxsやサブF/B学習値Learnのズレの発生が、よりいっそう確実に抑制され得る。
<変形例の例示列挙>
なお、上述の各実施形態は、上述した通り、出願人が本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具体化の例を単に示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
なお、上述の各実施形態は、上述した通り、出願人が本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具体化の例を単に示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
以下、変形例について幾つか例示する。もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
また、上述の実施形態や、下記の各変形例に記載された事項は、技術的に矛盾しない範囲において、適宜組み合わせて適用され得ることも、いうまでもない。
(1)本発明は、上述した実施形態にて開示された具体的構成に限定されない。例えば、気筒数、気筒配列方式(直列、V型、水平対向)、燃料噴射方式(ポート噴射、筒内直接噴射)、触媒個数、空燃比センサ個数、サブF/Bやその学習の有無、等については、特に限定はない。
「フィルタ」には、所定の帯域の信号が除去できる任意の構成のものが含まれる。例えば、「フィルタ」には、デジタルフィルタ及びアナログフィルタが含まれ得る。また、「フィルタ」には、パッシブフィルタ及びアクティブフィルタが含まれ得る。
図5のマップにおいて、吸入空気流量Gaに代えてエンジン回転数Neが用いられてもよい。あるいは、図5のマップは、吸入空気流量Gaとエンジン回転数Neとをパラメータとした3次元マップであってもよい。さらには、吸入空気流量Gaやエンジン回転数Neに代えて、もしくはこれらとともに、他のパラメータ(冷却水温THW等)が用いられてもよい。
失火検知部614は、シリンダブロック部2に装着された筒内圧センサや振動センサの出力に基づいて、失火の発生等を検知するように構成され得る。
(2)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
さらに、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されているものは、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。
1…内燃機関 2…シリンダブロック部 3…シリンダヘッド部
4…吸気系統 5…排気系統 53…上流側触媒
6…制御装置 60…ECU 60a…CPU
62…エアフローメータ 65…クランクポジションセンサ
67…上流側空燃比センサ 68…下流側空燃比センサ
602…AFR(目標空燃比)設定部 603…Fib(基本燃料噴射量)算出部
604…Vox_ref(下流側目標値)設定部 606…PIDコントローラ
607…帯域除去フィルタ(BEF) 612…PIコントローラ
614…失火検知部 615…マスク処理部
4…吸気系統 5…排気系統 53…上流側触媒
6…制御装置 60…ECU 60a…CPU
62…エアフローメータ 65…クランクポジションセンサ
67…上流側空燃比センサ 68…下流側空燃比センサ
602…AFR(目標空燃比)設定部 603…Fib(基本燃料噴射量)算出部
604…Vox_ref(下流側目標値)設定部 606…PIDコントローラ
607…帯域除去フィルタ(BEF) 612…PIコントローラ
614…失火検知部 615…マスク処理部
Claims (6)
- 排気ガス浄化用の触媒よりも上流側の排気通路に配設された上流側空燃比センサの出力に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する、空燃比制御装置において、
前記出力における失火の発生の影響を抑制する、失火影響抑制部を備えたことを特徴とする、空燃比制御装置。 - 内燃機関の空燃比を制御する、空燃比制御装置であって、
排気ガス浄化用の触媒よりも上流側の排気通路に配設された上流側空燃比センサの出力に基づいて、前記触媒に流入する排気ガスの空燃比を目標空燃比に近づけるためのメインフィードバック補正値を取得する、メインフィードバック部と、
前記触媒よりも下流側の前記排気通路に配設された下流側空燃比センサの出力に基づいて、前記メインフィードバック補正値による空燃比制御に対する補正を行うためのサブフィードバック補正値を取得する、サブフィードバック部と、
前記サブフィードバック補正値に基づいて、定常的誤差を補正するためのサブフィードバック学習値を取得する、サブフィードバック学習部と、
前記上流側空燃比センサの前記出力における、失火の発生の影響を抑制する、失火影響抑制部と、
を備えたことを特徴とする、空燃比制御装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の、空燃比制御装置であって、
前記失火影響抑制部は、
失火が発生した場合に生じる周波数帯域の、前記上流側空燃比センサの前記出力を抑制する、帯域抑制部を備えたことを特徴とする、空燃比制御装置。 - 請求項3に記載の、空燃比制御装置であって、
前記失火影響抑制部は、
前記内燃機関の運転状態に応じて、抑制する周波数帯域を変更する、帯域変更部をさらに備えたことを特徴とする、空燃比制御装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の、空燃比制御装置であって、
前記失火影響抑制部は、
失火発生時に対応する前記上流側空燃比センサの前記出力をマスク処理する、マスク処理部を備えたことを特徴とする、空燃比制御装置。 - 請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載の、空燃比制御装置において、
失火の発生を検知する失火検知部をさらに備え、
前記失火影響抑制部は、前記失火検知部により失火の発生が検知された場合に、前記上流側空燃比センサの前記出力における、失火の発生の影響を抑制するための処理を実行することを特徴とする、空燃比制御装置。
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2008
- 2008-02-18 JP JP2008035482A patent/JP2009191813A/ja active Pending
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