以下、本発明の一の実施の形態を説明する。
なお、以下においては、本実施の形態の電子写真用トナーをY色(イエロー色)のイエロートナーで代表して説明するが、後述する本実施の形態の画像形成装置では、フルカラー画像形成のために、この本実施の形態の電子写真用トナーに相当するトナーとしてのイエロー色のイエロートナー以外に、上記C.I.ピグメントイエロー185を含まないマゼンタ色のマゼンタトナー、シアン色のシアントナー、ブラック色のブラックトナーを使用する場合を説明する。
したがって、以下では本実施の形態の電子写真用トナーに相当するイエロートナーの色(Y色)以外の色のトナーについても含めて説明する(基本的に、イエロートナー以外のトナーは、イエロートナーに含まれる上記C.I.ピグメントイエロー185を、後述する各着色剤に変更した以外は同様のものとしてもよいし、従来公知のトナーを用いても良い)。
なお、本実施の形態では用いないが、Y色を用いた二次色のトナーを用いる場合には、C.I.ピグメントイエロー185を含むと共に、後述するY色以外の着色剤を適宜含むことで、二次色のトナーとすればよい。
(電子写真用トナー)
本実施の形態の電子写真用トナーは、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、離型剤と、C.I.ピグメントイエロー185と、を含み、前記ポリエステル樹脂は、アルコール成分としてビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(以下、「BPA−EO」と称する場合がある)を有し、トナーの円形度が0.90以上0.98以下である。
上述のように、本実施の形態の電子写真用トナーに含まれる結着樹脂は、少なくともポリエステル樹脂を主成分としている。ポリエステル樹脂はカルボン酸成分とアルコール成分とから合成されるが、本実施の形態では、このポリエステル樹脂のアルコール成分としてBPA−EOを主成分としている。
ここで、「ポリエステル樹脂を主成分とする」とは、結着樹脂の全成分中のポリエステル樹脂の含有量が50重量%以上であることを示している。また、「BPA−EOを主成分とする」とは、ポリエステル樹脂の全アルコール成分中におけるBPA−EOの組成比率が20モル%以上であることを示している。
凝集合一法による電子写真用トナーの製造時における凝集工程(詳細後述)においては、BPA−EO樹脂微粒子は他の樹脂成分や着色剤等に遅れることなく凝集する。BPA−EOは、ビスフェノールAに比べて屈曲性を有しており、このため分子の屈曲性によるしなやかさによって着色剤であるC.I.ピグメントイエロー185同士の凝集が抑制されて、C.I.ピグメントイエロー185の間にBPA―EOが介在することとなる。従って、結果的にC.I.ピグメントイエロー185の電子写真用トナー中における分散性が向上すると考えられる。溶剤を用いた懸濁法や、ポリエステルの縮重合工程に本着色剤を共存させてトナーを得る手法では、特にC.I.ピグメントイエロー185が凝集を生じやすく、着色剤の良好な分散性を得るためには好ましくない場合があり、凝集法が好適である。また、凝集/合一工程においては樹脂の酸価が5mgKOH/g〜20mgKOH/gであることが好適である。C.Iピグメントイエローは強酸性条件では分散粒子の安定性に欠き、強塩基条件では分子構造が変化して色相が損なわれるといった特性を有している。そのため、凝集工程における各材料やpHには工程な条件が存在し、樹脂組成に基づく酸価としては5mgKOH/g〜20mgKOH/gであることがC.Iピグメントイエロー185の分散状態を良好に保つためには好適である。
また、本実施の形態の電子写真用トナーに含有されるC.I.ピグメントイエロー185は、耐熱分解性及び耐昇華性とともに、耐光性及び彩度に優れた顔料である。このため、本実施の形態の電子写真用トナーによれば、上述のようにBPA―EOを用いることでC.I.ピグメントイエロー185の電子写真用トナー中における良好な分散性が実現されるので、該トナーによって表現される色の彩度向上及び優れた耐光性の実現が図れると考えられる。
さらに、赤色画像の赤色は、イエロー色とマゼンタ色との減少混合により実現されるため、上記イエロー色の電子写真用トナーをイエロートナーとして用いて赤色画像を形成することで、彩度に優れた赤色画像が提供される。
電子写真用トナーにおけるC.I.ピグメントイエロー185の含有量としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択されるが、電子写真用トナー構成成分全体量中の0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。このC.I.ピグメントイエロー185の含有量を2質量%以上8質量%以下の範囲内とすることで、電子写真用トナーの発色性及び耐昇華性を実現するとともに、連続印刷時における帯電性変化の抑制がバランス良く実現される。
さらに、本実施の形態の電子写真用トナーの形状係数は、0.90以上0.98以下である事が必要であり、好ましくは、0.94以上0.97以下である。電子写真用トナーの形状係数が上記範囲内であることで、良好な転写性が得られる。
本発明におけるトナーの円相当径、円形度、及びそれらの頻度分布とは、トナーの形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではフロー式粒子像測定装置FPIA−3000(シスメックス社製)を用いて測定を行ない、下式を用いて算出した。
円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
ここで、「粒子投影面積」とは2値化されたトナー像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。
本発明に於ける円形度はトナーの凹凸の度合いを示す指標であり、トナーが完全な球形の場合に1.00を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
上記BPA−EOにおけるエチレンオキサイド付加物の付加数は、ビスフェノールA 1モルに対して片末端で1モル以上4モル以下であることが好ましく、2モル以上4モル以下であることがより好ましく、両末端に同様に付加されてなるが対称形でなくても良い。
なお、上記BPA−EOは、ビスフェノールAとエチレンオキサイドとの付加反応によって得られる。製造方法は特に制限されない。
その他、ポリエステル樹脂を構成する上記BPA−EO以外のアルコール成分、及びポリエステル樹脂を合成するために用いられるカルボン酸成分としては、特に限定されず、既知の多価アルコール及び多価カルボン酸が使用される。また、プロピレンオキサイドが付加されてなるBPA-POが併用されることも特に制限されない。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸が1種又は2種以上用いられる。
これら多価カルボン酸の内、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用してもよい。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上が用いられる。
これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましい。また良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
なお、カルボン酸成分とアルコール成分との重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸及びモノアルコールの少なくとも一方を加えて、重合末端のヒドロキシル基及びカルボキシル基の少なくとも一方をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整しても良い。モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどが挙げられる。
ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造され、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。上記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。上記ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180℃以上230℃以下の間で行われ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させる。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから、主成分と共に重縮合させるとよい。
上記ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、及び、アミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
本実施の形態の電子写真用トナーに使用されるポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5,000〜500,000であることが好ましく、更に好ましくは7,000〜100,000であり、数均分子量(Mn)は2,000〜10,000であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5〜50であることが好ましく、更に好ましくは1.8〜30である。
重量平均分子量及び数平均分子量が上記範囲内であると、低温定着性と発色性が両立される。
また、上記ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、それぞれ50℃以上80℃以下の範囲であることが好ましく、55℃以上70℃以下の範囲であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると、貯蔵中又は現像器中における電子写真用トナーのブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)が抑制されると共に、定着温度の向上が抑制されるため、好ましい発色が得られやすい。
ガラス転移温度の測定方法は、ASTMD3418−8に準拠して、示差走査熱量計(島津製作所社製:DSC60、自動接線処理システム付き)を用い、室温から150℃まで昇温速度10℃/分の条件下で測定することにより求める。なお、ガラス転移温度の特定は、吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度として求められる。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量、数平均分子量の設定範囲は前述通りである。この分子量及び分子量分布は、それ自体公知の方法で測定されるが、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」と略記する)により測定するのが一般的である。本発明において分子量分布は以下の条件で測定する。
GPC装置として、東ソー(株)HLC−8120GPC、SC−8020装置を用い、カラムはTSK gei, SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2)を用い、溶離液として和光純薬社製クロマトグラフ用THF(テトラヒドロフラン)を用いる。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、検量線はA−500、F−1、F−10、F−80、F−380、A−2500、F−4、F−40、F−128、F−700の10サンプルから作製した。また試料解析におけるデータ収集間隔は300msとする。
本実施の形態の電子写真用トナーを構成する成分としては、上述したように少なくともポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、離型剤と、C.I.ピグメントイエロー185と、を少なくとも含み、該ポリエステル樹脂が、アルコール成分としてビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(BPA−EO)を主成分としていれば特に限定されないが、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。また、本実施形態における電子写真用トナーの製造方法は特に限定されるものではないが湿式法を用いることが好ましい。以下、離型剤及び他の成分等について説明する。
なお、結着樹脂のその他の樹脂成分としては、結晶性を有するビニル系樹脂を使用してもよい。該結晶性を有するビニル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の長鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂が挙げられる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」なる記述は、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも含むことを意味するものである。
結着樹脂はその酸価が5KOHmg/g以上25KOHmg/g以下の範囲であることが望ましく、5KOHmg/g以上20KOHmg/g以下であることが更に望ましく、 8KOHmg/g以上15KOHmg/g以下であることが特に望ましい。
結着樹脂の酸価(樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)は、原料の多価カルボン酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整される。あるいは多価カルボン酸成分として無水トリメリット酸を使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。C.Iピグメントイエロー185の分散性を良好にするためには酸価は低いほど好適であるが、凝集合一工程にて良好な粒度分布を得るためには上記の酸価であることが望ましい。
結着樹脂中の上記ポリエステル樹脂の含有量は、上述のように50重量%以上であるが、60重量%以上であることが望ましく、70重量%以上であることがより望ましい。
トナーにおける結着樹脂は、該結着樹脂の損失弾性率G”(測定周波数1rad/sec、歪み量20%以下で測定)が10、000(Pa)となる温度をTmとした場合、Tmが80〜150(℃)の範囲にあることが望ましい。
ここで、上記損失弾性率は以下のようにして測定される。測定装置は、レオメトリックス社製のレオメーター、商品名「RDA II」(RHIOSシステムver.4.3)を用い、測定用プレートは直径8mmのパラレルプレートを用い、ゼロ点調整温度90℃、プレート間ギャップ3.5mm、昇温速度毎分1℃、初期測定歪み0.01、測定開始温度30℃で、温度上昇と共に検出トルクが10gcm程度になるように歪みを調節し、最大歪みを20%までとし、検出トルクが測定保証値の下限を下回った時点で測定終了とした。
(着色剤)
着色剤としては、公知の着色剤であれば特に限定されないが、例えば、下記に示すもの等がトナーの色彩に対応させて適宜選択して用いられる。
。
本実施の形態の電子写真用トナーであるイエロー色のイエロートナーは、上記説明したため詳細は省略するが、C.I.ピグメントイエロー185を含んでいる。これらの含有量は、前述した通りである。
フルカラー画像形成時にイエロートナーと共に用いられるシアン色のシアントナーにおいては、着色剤として、例えば、アニライド化合物、ベンジジン、ベンズイミダゾロン、ビスアゾ系染料、などが挙げられる。また、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同16、同17、同23、同60、同65、同73、同83、同180、C.I.バットシアン1、同3、同20等や、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーの部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCのシアン顔料、C.I.ソルベントシアン79、162等のシアン染料なども用いられる。
また、フルカラー画像形成時にイエロートナーと共に用いられるマゼンタトナーに関しては、その着色剤として、例えば、アントラキノン、キナクリドン、ビスアゾ系染料、モノアゾ系染料、などが挙げられる。
さらに、上記でも説明したが、Y色を用いて表現可能な二次色のトナーを用いる場合には、上記説明したC.I.ピグメントイエロー185共に、上記挙げた各種着色剤を適宜選択して用いればよい。
なお、二次色である緑色のトナーとする場合には、着色剤としては、例えば、ハロゲン化フタロシアニン等を用いてもよい。
カラー画像形成時に用いられる上記各色トナーに含まれる、上記着色剤の総含有量としては、特に制限は無いが、結着樹脂等との混合により作製されたトナー100質量%に対し、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。
(離型剤)
本実施形態における電子写真用トナーには、定着性や画像保存性を向上させる目的で離型剤を含有させる。用いられる離型剤としては、ASTMD3418−8に準拠して測定されたDSCにおける主体極大吸熱ピークが50〜140℃にあり、かつ140℃において1〜50mPasの溶融粘度を有する物質であることが望ましい。融点が50℃未満では定着時にオフセットが生じやすくなる場合がある。140℃を超えると、定着温度が高くなり、定着画像の表面の荒れが増加し光沢性が損なわれる場合がある。
また、離型剤は前記DSC曲線で吸熱開始温度が40℃以上であることが望ましく、より好適には50℃以上である。40℃より低いと複写機内やトナーボトル内でトナーの凝集が発生する場合がある。上記吸熱開始温度はワックスを構成する分子量分布のうち、低分子量のものやその構造のもつ極性基の種類、量で左右される。一般に高分子量化すれば融点とともに吸熱開始温度も上昇するが、このやり方ではワックス本来の低溶融温度と、低粘度をそこなってしまう。よってワックスの分子量分布のうち、これら低分子量のものだけを選別してのぞくことが有効であるが、この方法として、分子蒸留、溶剤分別、ガスクロマトグラフ分別等の方法がある。
また、溶融粘度が50mPasより高いと、溶融粘度ではトナーからの溶出が弱く、定着剥離性が不十分となってしまう場合がある。
前記離型剤の溶融粘度は、E型粘度計によって測定される。測定に際しては、オイル循環型恒温槽の備えられたE型粘度計(東京計器製)を用いる。測定には、コーン角1.34度を有したコーンプレート/カップの組み合わせのプレートを用いる。カップ内に試料を投入し、循環装置の温度を140℃にセットし、空の測定カップとコーンを測定装置にセットし、オイルを循環させながら恒温に保つ。温度が安定したところで測定カップ内に資料を1g入れ、コーンを静止状態で10分間静置させる。安定後、コーンを回転させ測定を行う。コーンの回転速度は60rpmとする。測定は3回行い、その平均値を溶融粘度ηとする。
前記離型剤の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウ等の動物系ワックス、脂肪酸エステル、モンタン酸エステルなどのエステル系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などが挙げられる。
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下の範囲内であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下の範囲内であることがより好ましい。離型剤の含有量が上記範囲内であると、高温でのホットオフセットが抑制されると共に、帯電性に悪影響を及ぼすことなく、また、トナーの機械的強度の低下が抑制される。
(その他の成分)
本実施形態における電子写真用トナーには、上記したような成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加してもよい。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
また、無機粉体は主にトナーの粘弾性調整を目的として添加され、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カルシウム、酸化セリウム等の下記に詳細に列挙するような通常、トナー表面の外添剤として使用されるすべての無機粒子が挙げられる。
電子写真用トナー表面に外添される無機粒子や有機粒子としては以下のようなものが挙げられる。
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。中でも、シリカ粒子や酸化チタン粒子が好ましく、疎水化処理された粒子が特に好ましい。
無機粒子は、一般にトナーの流動性を向上させる目的で使用される。無機粒子の1次粒子径としては、1nm以上200nm以下の範囲にあることが好ましく、その添加量としては、トナー100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部以下の範囲にあることが好ましい。
有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用され、具体的には例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
なお、本発明の電子写真用トナーは、上記説明したトナーをコア粒子とし、このコア粒子を被覆するシェル層を設けた構成であってもよい。
このシェル層は、該コア粒子と同じ組成であってもよいし、従来公知のシェル層として用いられる樹脂を用いても良いし、該コア粒子と同一組成の樹脂を用いても良い。
(電子写真用トナーの製造方法)
次に、本発明の電子写真用トナーの製造方法について述べる。本発明の電子写真用トナーを製造する方法としては、特に制限はないが、湿式法によることが好ましい。該湿式法としては、公知の溶融懸濁法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法等の方法が好適に挙げられる。以下、乳化重合凝集法を例に説明する。
乳化重合凝集法は、上記結着樹脂を溶剤に溶かして転相乳化法(詳細後述)などによって少なくとも樹脂粒子を分散させた分散液(以下、「乳化液」と称する場合がある)を調整する乳化工程(詳細後述)と、該乳化液中で凝集粒子を形成し凝集粒子分散液を調製する工程(凝集工程)と、前記凝集粒子分散液を加熱して、凝集粒子を融合する工程(融合工程)を含む製造方法である。
上記乳化重合凝集法を用いる場合には、例えば、少なくとも粒子径が1μm以下のポリエステル樹脂から構成される粒子を分散した樹脂粒子分散液と、着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合し、該樹脂粒子と該着色剤粒子と該離型剤粒子とを含む凝集粒子(コア粒子)を形成する第1の凝集工程、前記コア凝集粒子の表面にポリエステル樹脂を含むシェル層を形成しコア/シェル凝集粒子を得る第2の凝集工程、及び、前記コア/シェル凝集粒子をポリエステル樹脂粒子のガラス転移点またはポリエステル樹脂粒子の融点以上に加熱し融合・合一する融合工程と、を経て製造される。
なお、上記凝集工程においては、C.I.ピグメントイエロー185の顔料分散液の分散安定性を損なわないためにpHは3以上であることが好ましく、またC.I.ピグメントイエロー185の構造が変化して本来有する発色性の発現が変化し、結果的に彩度の低下が発生することを抑制するために凝集工程における分散液のpHは11以下の範囲に調整することが好ましい。
上記乳化工程において、上記ポリエステル樹脂の乳化粒子(液滴)は、水系媒体とポリエステル樹脂に剪断力を与えることにより形成される。その際、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱することで、ポリマー液の粘性を下げて乳化粒子が形成される。また、乳化粒子の安定化や水系媒体の増粘のため、分散剤を使用してもよい。以下、かかる乳化粒子の分散液のことを、「樹脂粒子分散液」という場合がある。
前記乳化粒子を形成する際に用いる乳化機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。前記ポリエステル樹脂の乳化粒子(液滴)の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒径)で0.005μm以上0.5μm以下が好ましく、0.01μm以上0.3μm以下がより好ましい。0.005μm以下では水中にほとんど溶解してしまうため、粒子作製が困難になり、また0.5μm以上では所望の粒径である3.0μm以上7.5μm以下の粒子を得ることが困難になる。なお、樹脂粒子の平均粒径は、例えばドップラー散乱型粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックUPA9340)やレーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定できる。
また、乳化時の樹脂の熔融粘度が高いと所望の粒径まで小さくならないため、大気圧以上に加圧可能な乳化装置を用いて温度を上げ、樹脂粘度を下げた状態で乳化することで、所望の粒径の樹脂粒子分散液を得ることができる。
前記乳化工程において、樹脂の粘度を下げて乳化性を向上させる目的で、あらかじめ樹脂に溶剤を添加しておく方法を用いても良い。使用される溶剤としては、ポリエステル樹脂を溶解させるものであれば特に限定はないが、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのベンゼン系溶剤などを用いることができるが、溶解性、脱溶剤性の観点から、酢酸エチルやメチルエチルケトンなどのケトン系溶剤を用いることが好ましい。
また、媒体である水との親和性向上、及び、粒度分布制御の目的で、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤を、水もしくは樹脂に直接添加しても良い。
また、粒度分布制御の目的で、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩や、アンモニアなどを添加してもよい。この中ではアンモニアが好ましく用いられる。
また、粒度分布制御の目的で、分散剤を添加してもよい。前記分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、の等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤;ラウリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等が挙げられる。これらの中では、アニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。前記分散剤の使用量としては、前記ポリエステル樹脂(結着樹脂)100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。
尚、前記乳化工程において、前記ポリエステル樹脂に、スルホン酸基を有するジカルボン酸を共重合させておく(即ち、酸由来構成成分中に、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分が好適量含まれる)と、界面活性剤等の分散安定剤を減らすことができる、或いは使用しなくても乳化粒子を形成できるが、樹脂の吸湿性が高くなり、帯電性が悪化する場合がある。添加量は酸成分中10モル%以下であることが好ましいが、ポリエステル樹脂主鎖の親水性、末端の酸価、水酸基価の量などにより、乳化性が確保できるときには、できる限り添加しないほうがよい。
また、乳化工程においては、転相乳化法を用いても良い。転相乳化法は、少なくともポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解させ、必要に応じて中和剤や分散安定剤を添加して、攪拌下にて、水系溶媒を滴下して、乳化粒子を得た後、樹脂分散液中の溶媒を除去して、乳化液を得る方法である。このとき、中和剤や分散安定剤の投入順は変更してもよい。
樹脂を溶解させる有機溶媒(樹脂溶解溶媒)としては、例えば、蟻酸エステル類、酢酸エステル類、酪酸エステル類、ケトン類、エーテル類、ベンゼン類、ハロゲン化炭素類が挙げられる。具体的には、蟻酸、酢酸、酪酸等のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等エステル類、アセトン、MEK、MPK、MIPK、MBK、MIBK等のメチルケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、トルエン、キシレン、ベンゼン等の複素環置換体類、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭素類などを単独であるいは2種以上組合せて用いることが可能であるが、入手し易さや脱溶剤時の回収容易性、環境への配慮の点から、低沸点溶媒の酢酸エステル類やメチルケトン類、エーテル類が通常好ましく用いられ、特に、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。前記有機溶媒は、樹脂粒子中に残存すると、微量でもVOC原因物質となるため揮発性の比較的高いものを用いることが好ましい。
前記水系溶媒としては、基本的にはイオン交換水が用いられるが、油滴を破壊しない程度に水溶性有機溶媒を含んでも構わない。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の短炭素鎖アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エーテル類、ジオール類、THF、アセトン等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒のイオン交換水との混合比は、質量比で1%以上50%以下、好ましくは1%以上30%以下が好ましく選択され水性成分として用いられる。また、水溶性有機溶媒は添加されるイオン交換水に混合するだけでなく、樹脂溶解液中に添加して使用しても構わない。水溶性有機溶媒を添加する場合には、樹脂と樹脂溶解溶媒との濡れ性を調整することができ、また、樹脂溶解後の液粘度を低下させる機能が期待できる。
前記乳化液が安定的に分散状態を保つよう、必要に応じて樹脂溶液及び水性成分に分散剤を添加してもよい。前記分散剤としては、水性成分中で親水性コロイドを形成するもので、特にヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルローズ等のセルローズ誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等の合成高分子類、ゼラチン、アラビアゴム、寒天等の分散安定化剤が挙げられる。また、シリカ、酸化チタン、アルミナ、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム等の固体微粉末も用いることができる。これらの分散安定化剤は通常、水性成分中の濃度が0質量%以上20質量%以下、好ましくは0質量%以上10質量%以下となるよう添加される。
前記分散剤としては、界面活性剤も用いられる。前記界面活性剤の例としては、後述する着色剤分散液に用いられるものと同様のものを使用することができる。例えば、サポニンなどの天然界面活性成分の他に、アルキルアミン塩酸・酢酸塩類、4級アンモニウム塩類、グリセリン類等のカチオン系界面活性剤、脂肪酸石けん類、硫酸エステル類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、スルホン酸塩類、リン酸、リン酸エステル、スルホコハク酸塩類等のアニオン系界面活性剤などが挙げられ、アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
前記乳化液のpHを調整するために、中和剤を添加してもよい。前期中和剤としては、硝酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなど一般の酸、アルカリが用いられる。
前記乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、乳化液を常温もしくは加熱下で有機溶剤を揮発させる方法、これに減圧を組み合わせる方法が好ましく用いられる。
前記凝集工程において凝集体を形成させるために、凝集剤を用いることが好ましい。用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤や、一般の無機金属化合物(無機金属塩)又はその重合体が挙げられる。無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族に属する2価以上の電荷を有するものであり、樹脂粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。
好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などである。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上で、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。この価数と添加量で、材料同士の凝集力を変化させることで、トナーの粘弾性を制御することができる点で、また、粒子の安定性を向上させ、粒度分布をシャープにできる点で、本発明のトナーには、凝集剤が添加されていることが好ましい。本実施の形態の電子写真用トナー中に含まれる、アルミ、亜鉛、カルシウムから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素は、凝集剤として添加されたものであることが好ましい。凝集剤の添加量は、凝集剤の種類や価数によって変動するが、おおむね、0.05質量%以上0.1質量%以下である。前記凝集剤は、トナー化の工程中に、水系媒体中に流出したり、粗粉を形成するなどにより、添加量すべてがトナー中に残留するわけではない。特にトナー化工程時に、樹脂中の溶剤量が多い場合には、溶剤と凝集剤が相互作用して、水系媒体中に流出しやすいため、残溶剤量に合わせて適宜調節する必要がある。
上記融合・合一工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集体の懸濁液のpHを5〜10の範囲にすることにより、凝集の進行を止め、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度で加熱を行うことにより凝集体を融合させ合一させる。
加熱温度としては、樹脂のTg以上であれば問題は無い。また加熱の時間としては、合一が十分に為される程度行えばよく、0.2〜10時間程度行えばよい。その後、樹脂のTg以下まで降温して、粒子を固化する際、降温速度によって粒子形状及び表面性が変化する。例えば、早い速度で降温した場合には球形化及び表面が平滑化しやすく、逆にゆっくり降温した場合は、粒子形状が不定形化し、粒子表面に凹凸が生じやすい。そのため、少なくとも0.5℃/分以上の速度で、好ましくは1.0℃/分以上の速度で樹脂のTg以下まで降温するのが好ましい。
融合・合一工程を終了した後は、粒子を洗浄し乾燥してトナーを得る。トナーの帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄を施すことが好ましく、洗浄度合いはろ液の伝導度でモニターするのが一般的で、最終的に、伝導度が25μS/cm以下となるようにすることが好ましい。洗浄時に酸やアルカリでイオンを中和する工程を含んでも良く、酸による処理はpHを4.0以下に、アルカリによる処理はpHを8.0以上にすることが好ましい。また、洗浄後の固液分離は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、フィルタープレスなどの加圧濾過等が好ましく用いられる。さらに、乾燥も、特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられ、最終的なトナーの水分率は1質量%以下、好ましくは0.7質量%以下になるように乾燥する。
本実施の形態のトナーには、アルミ、亜鉛、カルシウムから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を、元素組成比換算で0.05%以上0.30%以下含んでいることが好ましい。これら金属原子がポリエステル樹脂の極性成分とイオン架橋を形成し、定着画像の強度を向上させ、ホットオフセットを改善する。一方、含有量が多すぎると、熔融粘度も上昇し、定着画像グロスの低下や、低温定着性を損なう場合がある。ここで、金属元素の含有量は、蛍光X線装置による、全元素分析から求められる。試料は、トナー6gを、加圧成型器で荷重10t、加圧時間1分間で、加圧成型し、島津製作所の蛍光X線(XRF−1500)を使用して、測定条件は管電圧40kV、管電流90mA、測定時間30分で測定した、元素組成比から求められる。前記金属元素は、トナー作製時に凝集剤として添加することが好ましい。
本実施の形態において、着色剤を分散する着色剤分散液に用いられる分散剤は、一般的には界面活性剤である。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が好適にあげられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤がより好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤またはカチオン界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、離型剤分散液など、他の分散液に用いられる分散剤と同極性であることが好ましい。
前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネート等のアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類等があげられる。中でも、ドデシルベンゼンスルホネートやその分岐体などのアルキルベンゼンスルホネート系化合物が好ましい。
前記カチオン界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類等があげられる。
前記非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類等があげられる。
用いられる分散剤の添加量は、着色剤に対して、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。分散剤が少なすぎると粒径が小さくならない場合や、分散液の保存安定性が低下する場合がある。一方、多すぎる場合には、トナー中に残留する分散剤の量が多くなり、トナーの帯電性や粉体流動性が低下する場合がる。
用いられる水系分散媒は、蒸留水、イオン交換水など、金属イオンなどの不純物が少ないものであることが好ましい。また、消泡や表面張力調整の目的でアルコールなどを添加してもよい。また、粘度調整のために、ポリビニルアルコールやセルロース系ポリマーなどを添加してもよい。
上述のようにして得られた電子写真用トナーには、無機もしくは有機の粒子を添加してもよい。前記粒子の補強効果によりトナーの貯蔵弾性率が大きくなり、耐オフセット性や定着器からの剥離性を向上できる場合がある。また、前記粒子は着色剤や離型剤などの内添物の分散性を向上させる場合がある。前記無機粒子としては、シリカ、疎水化処理シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、コロイダルシリカ、アルミナ処理コロイダルシリカ、カチオン表面処理コロイダルシリカ、アニオン表面処理コロイダルシリカなどを単独もしくは併用して用い、なかでもOHP透明性とトナー中の分散性の観点からコロイダルシリカを用いることが好ましい。その粒径は、5nm以上50nm以下であることが好ましい。また、粒径の異なる粒子を併用することも可能である。前記粒子はトナー製造時に直接添加することもできるが、分散性を高めるためにあらかじめ超音波分散機などを用いて水など水溶性媒体へ分散されたものを用いることが好ましい。
本実施の形態の電子写真用トナーには、その他、帯電制御剤などの公知の材料を添加してもよい。その際に添加される材料の平均粒径としては、1μm以下であることが必要であり、0.01μm以上1μm以下であるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られる電子写真用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、前記平均粒径は、例えばマイクロトラックなどを用いて測定する。
前記種々の添加剤分散液を作製する手段としては、特に制限はないが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなど、その他、着色剤分散液や離型剤分散液の作製と同様の装置など、それ自体公知の分散装置が挙げられ、適宜最適なものを選択して用いればよい。
さらに、上記のようにして最終的に加熱して得られたトナーには、流動性助剤、クリーニング助剤、研磨剤等として、無機微粒子及び有機微粒子を外添混合することができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、酸化セリウム等の通常トナー表面の外添剤として使用される総ての粒子があげられる。これらの無機粒子は、その表面が疎水化されたものであることが好ましく、帯電性、粉体特性、保存性などのトナー諸特性や、現像性や転写性といったシステム適性を制御するために用いられる。
有機微粒子としては、例えば、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、エチレン系重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される総ての粒子が挙げられる。これらの粒子は転写性を向上させる目的で添加され、その1次粒径は0.05から1.0ミクロンであることが好ましい。
さらに、滑剤を添加することもできる。滑剤として、例えば、エチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、ユニリンなどの高級アルコールなどがあげられる。これらは一般にクリーニング性を向上させる目的で添加され、その1次粒径は、0.1から5.0ミクロンのものが用いられる。
本発明のトナーには、前記無機微粒子のなかでも少なくとも2種以上の外添剤を使用し、該外添剤の少なくとも1種は30nm〜200nmの、さらに好ましくは30nm〜180nmの平均1次粒子径を有することが好ましい。トナーが小粒径化することによって、感光体との非静電的付着力が増大するため、転写不良やホローキャラクターと呼ばれる画像抜けが引き起こされ、重ね合わせ画像等の転写ムラを生じさせる原因となるため、平均1次粒子径が30nm以上200nm以下の大径の外添剤を添加し、転写性を改善させることが好ましい。
平均1次粒子径が30nmより小さいと、初期的なトナーの流動性は良好であるが、トナーと感光体との非静電的付着力を十分に低減できず転写効率が低下し画像のぬけや、画像の均一性を悪化させてしまい、また経時による現像機内でのストレスによって微粒子がトナー表面に埋め込まれ、帯電性が変化しコピー濃度の低下や背景部へのカブリ等の問題を引き起こす。
また、平均1次粒子径が200nmより大きいと、トナー表面から脱離しやすく、また流動性の悪化にもつながる。具体的には、シリカ、アルミナ、酸化チタンが好ましく、特に、疎水化されたシリカを必須成分として添加することが好ましい。特にシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。また、粒径80から500nmの有機微粒子を併用することも転写性向上には好ましい。
外添剤を疎水化処理する疎水化剤としては公知の材料が挙げられ、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤、シリコーンオイルやポリマーコーティング処理などが挙げられる。これらの疎水化剤を単独又は組み合わせて用いることができる。これらの中でも、シラン系カップリング剤とシリコーンオイルが好ましく用いられる。
シラン系カップリング剤としては、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤等いずれのタイプも使用することができ、その具体例としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、トリメチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、βー(3.4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γークロロプロピルトリメトキシシラン等や、それらの一部の水素原子をフッ素原子に変えた、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラん、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、3−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリエトキシシランなどのフッ素系シラン化合物、水素原子の一部をアミノ基で置換したアミノ系シラン化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
疎水化処理された粒子を用いると高湿度下での帯電量を向上させる事ができ、結果として帯電の環境安定性を向上させる事ができる。本発明のトナーでは、少なくとも1種以上の外添剤にシリコーンオイル系処理が施されたものが含まれていることが好ましい。
粒子の疎水化処理法としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン等の溶媒で混合希釈した処理剤を、ブレンダー等で強制的に攪拌させた微粒子に滴下したり、スプレーしたりして充分に混合し、必要に応じて洗浄、濾過を行った後、加熱乾燥させ、乾燥後凝集物をブレンダーや乳鉢等で解砕して処理する方法や、微粒子を処理剤の溶媒溶液に浸析した後、乾燥させる、あるいは、微粒子を水中に分散してスラリー状にした上で処理剤溶液を滴下し、その後微粒子を沈降させて加熱乾燥して解砕する方法や、微粒子へ直接処理剤を噴霧する方法等、従来公知の方法が用いられる。
前記処理剤の微粒子への付着量は、微粒子に対して0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜25質量%がより好ましい。付着量は、処理の段階で処理剤の混合量を増やしたり、処理後の洗浄工程数を変える等の方法によって処理量が変えられる。
また、処理剤の付着量は、XPSや元素分析により定量される。処理剤の付着量が少ないと高湿度下で帯電性が低下する場合が有り、処理量が多すぎると低湿度下で帯電が過剰になりすぎたり、遊離した処理剤が現像剤の粉体流動性を悪化させる場合がある。
前記外添剤は、トナー粒子と共にサンプルミルやヘンシェルミキサーなどで機械的衝撃力を加えられてトナー粒子表面に付着又は固着させられる。
(トナーの特性)
本実施の形態の電子写真用トナーの体積平均粒子径としては、1μm以上20μm以下の範囲にあることが好ましく、2μm以上8μm以下の範囲にあることがより好ましく、また、個数平均粒子径としては、1μm以上20μm以下の範囲にあることが好ましく、2μm以上8μm以下の範囲にあることがより好ましい。
体積平均粒子径および個数平均粒子径の測定は、例えば、コールターマルチサイザーII型(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で測定することにより得ることができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(ベックマン−コールター社製:アイソトンII)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。また、レーザー回折粒度測定器でも測定される。
また、本実施の形態の電子写真用トナーは、その帯電量が10μC/g以上70μC/g以下の範囲にあるのが好ましく、15μC/g以上50μC/g以下の範囲がより好ましい。前記帯電量が、10μC/g未満であると、背景部汚れが発生し易くなり、70μC/gを越えると、画像濃度の低下が発生し易くなる。また、30℃、80RH%の高湿度下と10℃、20RH%の低湿度下での帯電量の比率は0.5以上1.5以下の範囲が好ましく、0.7以上1.2以下の範囲がより好ましい。前記比率が範囲内にあると環境に影響されることなく鮮明な画像を得ることができる。帯電量は外添剤の寄与も大きいが、未外添時の帯電量が重要であることは言うまでもない。また、着色剤分散液や離型剤分散液などに使用される界面活性剤量をトータルで減らすとともに、残留した界面活性剤やイオンなどを充分に洗浄することが必要で、洗浄ろ液の伝導度が0.01mS/cm以下となるように洗浄することが好ましい。また、トナーの乾燥も重要であり、水分量が0.5質量%以下となるように乾燥することが好ましい。
さらに、本実施の形態の電子写真用トナーは、重量平均分子量(Mw)が5000以上150000以下のものが用いられるが、特に画像光沢度の高い画像を得るためには、Mwが5000以上30000以下、Mnが2000以上10000以下であることが好ましく、Mwが6000以上20000以下、Mnが2500以上7500以下であることがより好ましい。分子量分布の指標であるMw/Mnは、2以上10以下であることが好ましい。Mw及びMnが高すぎると発色性が悪くなってしまう事が有り、Mw及びMnが低すぎると定着後の画像強度が得られにくくなる。一方、前記比(Mw/Mn)で表される分子量分布が、前記数値範囲内にあると、特に光透過性、着色性を向上させることができる。Mw/Mnの値が大きいとき、すなわち、Mwが大きい、もしくは、Mnが小さい場合、画像光沢を得ることが難しくなる。
(電子写真用現像剤)
本実施の形態の電子写真用トナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいはキャリアとから構成される二成分現像剤として用いられるが、帯電の維持性や安定性に優れる二成分現像剤が望ましい。
キャリアとしては、樹脂で被膜されたキャリアであることが望ましく、窒素含有樹脂で被膜されたキャリアであることがさらに好適である。該窒素含有樹脂としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含むアクリル系樹脂、ウレア、ウレタン、メラミン、グアナミン、アニリン等を含むアミノ樹脂、またアミド樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。またこれらの共重合樹脂でもかまわない。キャリアの被膜樹脂としては、前記窒素含有樹脂の中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。また前記窒素含有樹脂と窒素を含有しない樹脂とを組み合わせて使用してもよい。また前記窒素含有樹脂を粒子状にし、窒素を含有しない樹脂中に分散して使用してもよい。特にウレア樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂は負帯電性が高く、また樹脂硬度が高いため、被膜樹脂の剥がれなどによる帯電量の低下が効果的に抑制される。
一般に、キャリアは適度な電気抵抗値を有することが必要であり、具体的には109〜1014Ωcm程度の電気抵抗値が求められている。例えば鉄粉キャリアのように電気抵抗値が106Ωcmと低い場合には、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする等の問題が生じる場合がある。一方、絶縁性(体積抵抗率が1014Ωcm以上)の樹脂を厚く被覆してしまうと電気抵抗値が高くなりすぎ、キャリア電荷がリークしにくくなり、その結果エッジの効いた画像にはなるが、反面大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなるというエッジ効果という問題が生じる場合がある。そのためキャリアの抵抗調整のために樹脂被覆層中に導電性粉末を分散させることが望ましい。
導電性粉末の具体例としては、金、銀、銅等の金属;カーボンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズやカーボンブラック、金属で覆ったもの;等が挙げられる。この中でも製造安定性、コスト、導電性の良さからカーボンブラックが好ましい。
上記樹脂被覆層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被膜層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被膜層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被膜層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被膜層形成用溶液を混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被膜樹脂を粒子化し被膜樹脂の融点以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被膜させるパウダーコート法が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましく用いられる。上記方法により形成される樹脂被膜層の平均膜厚は、通常0.1〜10μm、より好適には0.2〜5μmの範囲である。
キャリアに用いられる芯材(キャリア芯材)としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、又は、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、磁気ブラシ法を用いる観点からは、磁性キャリアであるのが望ましい。キャリア芯材の平均粒径としては、一般的には10〜100μmが好ましく、20〜80μmがより好ましい。
前記二成分現像剤におけるトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより望ましい。
(画像形成装置)
本実施の形態の画像形成装置は、前述の本実施の形態の電子写真用トナーを含む現像剤を用いて、記録媒体上にトナーによる可視像としてのトナー像を転写し、このトナー像を該記録媒体上に定着することにより記録媒体上に画像を形成可能であれば特に限定されないが、具体的には以下のような、像保持体上に画像データの画像に応じた静電潜像を形成する潜像形成装置、像保持体上に形成された静電潜像を、上記電子写真用トナーを含む現像剤によって現像して可視像としてのトナー像を形成する現像装置、このトナー像を被転写部材としての記録媒体上に転写する転写装置、及び記録媒体上にトナー像を定着させる定着装置と、を有する。
なお、この際、現像剤としては上記説明した現像剤が用いられ、多色用現像の場合には、上記イエロートナーに加えて、シアン、マゼンタ、ブラック等の有彩色のトナーを含む現像剤と組み合わせて用いられる。
なお、この画像形成装置において、例えば上記現像装置を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、像保持体を少なくとも備え、本実施の形態の現像剤を収容するプロセスカートリッジが好適に用いられる。
以下、本実施の形態の画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
図1は、4連タンデム方式のフルカラー画像を形成する画像形成装置40を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置40は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1〜第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、所定方向に互いに所定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置40本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図1における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に所定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
上述した第1〜第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2〜第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。なお、この第1のユニット10Yの現像装置4Yに、上記説明した本実施の形態のイエロートナーである電子写真用トナーを含む現像剤が予め貯留されている。
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を所定の電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V〜−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って所定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
現像装置4Y内には、上記説明した本実施の形態の電子写真用トナーとキャリアを含む2成分現像剤が収容されている。イエロートナーは、例えば、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き所定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が所定の1次転写位置へ搬送される。
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに所定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2〜第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
第1〜第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に所定のタイミングで給紙され、所定の2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
ここで、上述のように、画像形成装置40においては、中間転写ベルト20上に本実施の形態の電子写真用トナーであるイエロートナーが転写された後に、マゼンタ色、シアン色、ブラック色のトナーが順次転写される。このため、例えば、赤色の画像を形成する場合には、中間転写ベルト20上に転写されたイエロートナー上にマゼンタ色のマゼンタトナーが重ねて転写され、これらのトナーが記録媒体Pへ転写される。従って、記録媒体P上に形成された赤色画像は、記録媒体P上にマゼンタトナー及びイエロートナーが順次積層された構成となっている。
すなわち、記録媒体P上に形成された赤色画像は、下層側にマゼンタ色のトナーが一し、上層側にイエロー色のトナーが位置することとなっており、イエロー色の光吸収帯域は可視領域の短波長側及び一部紫外線領域にもかかることが知られていることから、着色剤の分解を促す太陽光の短波長側の光がマゼンタトナー側の層へ到達することが抑制される。このため、本実施の形態の電子写真用トナーを用いて形成された赤色画像は、マゼンタトナーがイエロートナーによって保護された状態となっており、本実施の形態の電子写真用トナーはマゼンタトナーの保護層として機能することとなる。
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
本実施例においては、トナーは以下の如き方法にて得られる。即ち、まず下記の樹脂分散液、着色剤分散液、離型剤分散液をそれぞれ調製する。次いで、これらを所定量混合攪拌しながら、これに金属塩凝集剤を添加し、イオン的に中和させ上記各粒子の凝集粒子を形成せしめる。所望のトナー粒子径到達前に樹脂粒子を追添加し、トナー粒子径を得る。その後、無機水酸化物で系内のpHを弱酸性から中性の範囲に調製後、当該樹脂粒子のガラス転移温度以上(または融点以上)に加熱し、合一融合せしめる。反応終了後、十分な洗浄・固液分離・乾燥の工程を経て所望のトナー粒子を得る。以下、上記に沿って説明する。
<各種特性の測定方法>
まず、実施例、比較例で用いたトナー等の物性測定方法について説明する。
(樹脂の分子量、分子量分布測定方法)
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂等の分子量、分子量分布は、GPCにより「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、前述の条件により測定した。
(樹脂粒子、着色剤粒子等の体積平均粒径)
樹脂粒子、着色剤粒子等の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定した。
(樹脂の融点、ガラス転移温度の測定方法)
樹脂のガラス転移点(Tg)は、ASTMD3418−8に準拠して、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)を用い、前述の条件により測定した。なお、融点は吸熱ピークのピーク温度とし、ガラス転移点は階段状の吸熱量変化における中間点の温度とした。
(樹脂の酸価)
樹脂を2g秤量し、アセトン−トルエン160mlに溶解、または溶解性の不十分なものについては加熱溶解したのち、この試料を用いJIS K0070−1992の中和滴定法により、酸価を測定した。
<各分散液の調製>
(ポリエステル樹脂分散液(A1))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:20モル%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:30モル%
・テレフタル酸:30モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:20モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。また、付加量は片方末端への付加量を示しており化合物としては両末端に付加されてなる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が56℃、酸価が12mgKOH/g、重量平均分子量26、000であるポリエステル樹脂(A1)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A1)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.13μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A2)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド1モル付加物: 20モル%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:30モル%
・テレフタル酸:25モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:25モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が62℃、酸価が14 mgKOH/g、重量平均分子量27,000であるポリエステル樹脂(A2)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A2)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.12μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A3))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド3モル付加物:25モル%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:25モル%
・テレフタル酸:30モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:20モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が59℃、酸価が 11mgKOH/g、重量平均分子量29,000であるポリエステル樹脂(A3)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A3)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.13μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A4))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物:20モル%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:30モル%
・テレフタル酸:35モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:15モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が57℃、酸価が12mgKOH/g、重量平均分子量27,500であるポリエステル樹脂(A4)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A4)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.14μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A5))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド1モル付加物:35モル%
・飽和炭化水素ジオール:15モル%
・テレフタル酸:30モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:20モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が64℃、酸価が 9mgKOH/g、重量平均分子量28,500であるポリエステル樹脂(A5)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A5)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.15μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A6−1))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:50モル%
・テレフタル酸:25モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:25モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が64℃、酸価が11mgKOH/g、重量平均分子量29,000であるポリエステル樹脂(A6−1)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A6−1)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.12μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A6−2))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド3モル付加物:40モル%
・飽和炭化水素ジオール:10モル%
・テレフタル酸ジメチルエステル:25モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:25モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が63℃、酸価が12mgKOH/g、重量平均分子量26,500であるポリエステル樹脂(A6−2)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A6−2)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.13μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A6−3))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド3モル付加物:35モル%
・飽和炭化水素ジオール:15モル%
・テレフタル酸:30モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:20モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が60℃、酸価が13mgKOH/g、重量平均分子量31,000であるポリエステル樹脂(A6−3)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A6−3)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.15μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A7−1))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:50モル%
・テレフタル酸ジメチルエステル:20モル%
・触媒: 0.5モル%
・脂肪酸:30モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が61℃、酸価が5mgKOH/g、重量平均分子量32,000であるポリエステル樹脂(A7−1)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A7−1)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.23μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A7−2))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド3モル付加物:50モル%
・テレフタル酸:20モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:30モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が59℃、酸価が20mgKOH/g、重量平均分子量25,000であるポリエステル樹脂(A7−2)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A7−2)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.11μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A7−3))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド3モル付加物:50モル%
・テレフタル酸ジメチルエステル:30モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:5モル%
・脂肪酸ジメチルエステル:15モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が65℃、酸価が20mgKOH/g、重量平均分子量35,000であるポリエステル樹脂(A7−3)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A7−3)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.42μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(A7−4))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:50モル%
・テレフタル酸:20モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:30モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が58℃、酸価が21mgKOH/g、重量平均分子量24,000であるポリエステル樹脂(A7−4)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(A7−4)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.10μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(B1))
・ビスフェノールAエチレンオキサイド3モル付加物:19モル%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:31モル%
・テレフタル酸:25モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:25モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が59℃、酸価が12mgKOH/g、重量平均分子量28,000であるポリエステル樹脂(B1)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(B1)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.15μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
(ポリエステル樹脂分散液(B2))
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:40モル%
・飽和炭化水素ジオール:10モル%
・テレフタル酸:30モル%
・触媒:0.5モル%
・脂肪酸:20モル%
(上記において、アルコール成分及び酸成分を各々100モル%とした。以下もこれに準ずる。)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が62℃、酸価が15mgKOH/g、重量平均分子量25,000であるポリエステル樹脂(B2)を得た。
5Lのセパラブルフラスコに、樹脂を溶解しうる相当量の酢酸エチルとイソプロピルアルコールとの混合溶剤を投入し、これに上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に希アンモニア水溶液を適量滴下し、更にイオン交換水に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、ポリエステル樹脂分散液(B2)を得た。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は、0.13μmであった(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調整して30質量%とした)。
以上のポリエステル樹脂分散液の概要を、まとめて表1に示す。
(イエロー着色剤分散液Y1の調整)
イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー185(BASF社製)を20質量部、アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC(有効成分として着色剤に対して10質量%))2質量部、及びイオン交換水78質量部を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、6000rpmで5分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡し、続けて分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は25パス相当行った。その後イオン交換水を加えて、固形分濃度を25質量%に調整した。得られた着色剤分散液の体積平均粒径を測定したところ、0.15μmであった。
(イエロー着色剤分散液Y2の調整)
イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー111(;チバスペシャルティケミカルズ社製)を20質量部、アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC(有効成分として着色剤に対して10質量%))2質量部、及びイオン交換水78質量部を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、6000rpmで5分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡し、続けて分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は25パス相当行った。その後イオン交換水を加えて、固形分濃度を25質量%に調整した。得られた着色剤分散液の体積平均粒径を測定したところ、0.14μmであった。
(イエロー着色剤分散液Y3の調整)
イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー74(クラリアント社製)を20質量部、アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC(有効成分として着色剤に対して10質量%))2質量部、及びイオン交換水78質量部を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、6000rpmで5分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡し、続けて分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は25パス相当行った。その後イオン交換水を加えて、固形分濃度を25質量%に調整した。得られた着色剤分散液の体積平均粒径を測定したところ、0.12μmであった。
(マゼンタ着色剤分散液M1の調整)
マゼンタ顔料(山陽色素社製、PR238(ナフトール))20質量部、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR)2質量部、イオン交換水78質量部を混合し、ホモジナイザー(LKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、3000rpmで2分間、顔料を水になじませ、さらに5000回転で10分間分散後、通常の攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで約1時間分散させてマゼンタ着色剤分散液(M1)を得た。得られた着色剤分散液の体積平均粒径を測定したところ、0.14μmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を6%に調整した。
(離型剤分散液)
カルナバワックス(融点:81℃)40質量部、アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC)2質量部、イオン交換水58質量部を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、6000rpmで5分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡し、続けて圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、その後イオン交換水を加えて、固形分濃度を25質量%に調整した。得られた離型剤分散液の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径は0.23μmであった。
<実施例1>
(イエロートナーの製造)
・イオン交換水 :100質量部
・ポリエステル樹脂分散液(A1):380質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)、ネオゲンRK、20質量%)
:2質量部
以上を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
その後、イエロー着色剤分散液Y1を50質量部及び離型剤分散液60質量部を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0質量%硝酸水溶液を添加し、pHを4.0に調整した。ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)で分散しながら、ポリ塩化アルミニウム0.4質量部を添加後、攪拌機しながら、50℃まで昇温し、マルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmとなったところで、ポリエステル樹脂分散液(A1)を200質量部投入した。投入後30分間保持した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、90℃まで昇温し、90℃で3時間保持した後、冷却、ろ過、これを更にイオン交換水にて再分散し、濾過、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで繰り返し洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、イエロー色のイエロートナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)1.5質量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)1.0質量部とを加え、サンプルミルを用いて10000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してイエロートナー1を得た。
(静電荷像現像剤の作製)
トルエン14質量部にカーボンブラック0.2質量部を混合し、サンドミルで20分攪拌分散したカーボン分散液に、スチレン/メチルメタクリレート共重合体(共重合比:15/85)2質量部を混合攪拌したコート剤樹脂溶液と、フェライト粒子(体積平均粒径:50μm)をニーダーに投入し、攪拌しながら減圧し、乾燥させることによりキャリアを作製した。
このキャリア100質量部と、前記トナー8部とをVブレンダーにて混合し、イエロー現像剤1を得た。
(マゼンタトナーの製造)
・イオン交換水: :50質量部
・ポリエステル樹脂分散液(A1):360質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)、ネオゲンRK、20質量%)
:2質量部
以上を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
その後、上記マゼンタ着色剤分散液M1を250質量部及び離型剤分散液 60質量部を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0質量%硝酸水溶液を添加し、pHを4.0に調整した。ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)で分散しながら、ポリ塩化アルミニウム0.4質量部を添加後、攪拌機しながら、50℃まで昇温し、マルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmとなったところで、ポリエステル樹脂分散液(C1)を200質量部を投入した。投入後30分間保持した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、90℃まで昇温し、90℃で3時間保持した後、冷却、ろ過、これを更にイオン交換水にて再分散し、濾過、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで繰り返し洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、マゼンタ色のマゼンタトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)1.5質量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)1.0質量部とを加え、サンプルミルを用いて10000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してマゼンタトナーを得た。
(静電荷像現像剤の調整)
トルエン14質量部にカーボンブラック0.2質量部を混合し、サンドミルで20分攪拌分散したカーボン分散液に、スチレン/メチルメタクリレート共重合体(共重合比:15/85)2質量部を混合攪拌したコート剤樹脂溶液と、フェライト粒子(体積平均粒径:50μm)をニーダーに投入し、攪拌しながら減圧し、乾燥させることによりキャリアを作製した。
このキャリア100質量部と、前記各トナー8部とをVブレンダーにて混合し、イエロー現像剤、及びマゼンタ現像剤各々を調整した。
(評価)
上記調整したイエロートナー(イエロー現像剤)について下記評価を行うと共に、上記調整したイエロー現像剤及びマゼンタ現像剤を用いて画像評価を行った。
なお、評価装置としては、富士ゼロックス(株)社製Docu Center Color 400を用いて、該画像形成装置に現像剤としてイエロー現像剤及びマゼンタ現像剤をセットした。そして、記録媒体としては、普通紙(NIP−1500LT、小林記録紙、連量64g/cm2)を用い、該画像形成装置により1inch四方(2.54cm×2.54cm)の赤色ベタ画像を形成した。具体的には、赤色ベタ画像(濃度100%)を形成したときのトナーの付着量(記録媒体上のトナー載り量)が5.5g/m2、となるように調整(現像バイアスを調整)して画像形成を行った。
なお、上記画像形成処理は、23℃、55%RHの環境において行い、解像度800dpiで画像形成を行った。
上記形成された赤色ベタ画像について色再現性測定値(L*、a*、b*)をそれぞれ評価した。なお、上記L*、a*、b*の各数値は、分光計(938 Spectrodentitometer、X−Rite社)で彩度C=((a*)2+(b*)2)1/2を測定した。この測定結果から、以下の判断基準により色再現性を評価した。評価結果を表2に示した。
G0:彩度Cが85以上である場合。
G1:彩度Cが80以上85未満である場合。
G2:彩度Cが75以上80未満である場合。
G3:彩度Cが75未満である場合。
(耐光性評価)
上記赤色ベタ画像の形成された記録媒体上の赤色ベタ画像について、O.D.(画像濃度)、L*、a*、およびb*を測定した。
その後、該赤色ベタ画像の形成された記録媒体を所定の光照射条件(光源:キセノンランプ、光量(平均):紫外波長領域における光量が約60W/m2、照射時間:960時間)で光照射した。試験装置としてサンテスターCPSプラス(アトラス社製)を用いた。照射後の画像のL*、a*、およびb*を測定して、光照射によるΔEを求めた。
赤色ベタ画像のΔEが小さいことは、すなわち色の変化が小さく、耐光性に優れていることを示している。
G0(耐光性良好):色差(ΔE)が15以下である場合。
G1(耐光性凡庸):色差(ΔE)が15以上40以下である場合。
G2(耐光性不良):色差(ΔE)が40を超える場合。
<実施例2〜12、比較例1〜5>
上記実施例1と同様に、イエロー現像剤及びマゼンタ現像剤を調整した。なお、マゼンタ現像剤は実施例1で調整した現像剤を用い、イエロー現像剤としては、上記実施例1で用いたポリエステル樹脂分散液(A1)及びイエロー着色剤分散液Y1に変えて、下記表2に示すポリエステル樹脂分散液及び着色剤分散液を用いた以外は実施例1と同様にしてイエロートナーを調整した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。
評価結果を表2、表3に示した。
表2〜表3に示すように、本実施の形態の電子写真トナーを用いて赤色ベタ画像を形成した実施例においては、比較例に比べて、良好な転写性が得られると共に、耐光性が高く且つ良好な彩度を示す赤色ベタ画像が形成されたといえる。