JP2009184851A - カーボンナノチューブ成型体 - Google Patents
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Abstract
【課題】カーボンナノチューブの飛散性、ハンドリングや作業性を改良すると共に、単独またはカーボンナノチューブの本来の機能を最大限に引き出した成型体を提供する。
【解決手段】1種以上のカーボンナノチューブを混合し減圧後、加圧成型することにより、見かけかさ比重を高め、樹脂マスターバッチ製造時や分散液作製時の作業性を向上でき、カーボンナノチューブの特性を充分にひきだすことができる。
【選択図】なし
【解決手段】1種以上のカーボンナノチューブを混合し減圧後、加圧成型することにより、見かけかさ比重を高め、樹脂マスターバッチ製造時や分散液作製時の作業性を向上でき、カーボンナノチューブの特性を充分にひきだすことができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、カーボンナノチューブのハンドリング性などを向上させた成型体に関する。
カーボンナノチューブは、カーボンブラック、ダイヤモンド、黒鉛やフラーレンなどと違い、直径が数nm〜約500nm、長さが数10nm〜数10umというアスペクト比の大きなチューブ状の炭素同位体である。このカーボンナノチューブには、その製造法や後処理などにより様々なものがあるが、大きく分けると、シングルウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブなどがある。ここではこれらを総称してカーボンナノチューブとする。 カーボンナノチューブの製造法としては、アーク放電法、触媒気相製造法、レーザーアブレーション法やその他の方法がある。(非特許文献1)これらの製造法によりカーボンナノチューブの最終形状がかわるが、副生成物や不純物を取り除き、精製した状態は、通常、カーボンナノチューブの極めて細い繊維が絡み合った、0.1kg/l以下というような、非常にかさ高い(見かけ比重の低い)ものが多い。また、マルチウォールカーボンナノチューブについては、その直径が製法や後処理法により分布をもちうるが、ここでは、その平均値を、そのカーボンナノチューブの直径として表記する。 これに対し、カーボンブラックは平均粒子径が数10nm〜数100nmであり、アスペクト比はカーボンナノチューブに比較して非常に小さいものであり、その造粒技術として主に湿式と乾式が知られ、かさ比重もカーボンナノチューブと比較して大きいものが多い(非特許文献2)。このカーボンブラックについては、造粒技術が確立されており、そのメリットとしては、カーボンブラックの
1)飛散性を低減させることにより、人体への安全性や環境への汚染を低減させることができる。2)造粒することによりハンドリング性も向上でき、樹脂マスターバッチなどの製造時の時間短縮ができる。3)貯蔵量を増やすことができ、輸送時にはそのコストを低減できる。4)梱包を容易にし、包装費用を低減できる。などの効果があげられる。
実用上充分な程度にまで嵩密度を高くする方法として、カーボンブラックを加圧成型することが海外では試みられている。例えば、イギリス特許551862やドイツ特許836159ではカーボンブラック、ランプブラック等のプレス脱気を行っている。これらの特許文献においては、カーボンブラック粉体粒子間のガス(空気)を脱気する方法として、カーボンブラック内に管を挿入し、加圧の際に発生する粒子間のガスを成型容器の外に除去している。この方法では、挿入された管に設置された濾過材を通してガスを脱気するために脱気の速度を速くすることができず、また、濾過材の目詰まりが発生し、長期間の連続運転は不可能であった。
ドイツ特許1302382では、プレス型の上部、下部、側面に減圧用のポートを設置し濾過材をプレス型全面配し、濾過面積を広くして、上記イギリス特許551862やドイツ特許836159の問題点を解決する方法が提案されている。しかし、この方法を用いても濾過材を介してカーボンブラックの粒子間のガスを脱気する為に上記問題点の本質的な解決は成されていない。
特開平09-143389号公報においては、上記目的を達成するために、カーボンブラックの成型装置を研究して、カーボンブラックを加圧成型する前に予め減圧チャンバーを用いてカーボンブラック粒子間にある気体(空気)を脱気し、しかる後加圧成型することにより、従来用いられていた濾過材を用いずに脱気、加圧成型が可能であることを見いだしている。すなわち、予めカーボンブラック粒子間の気体を減圧チャンバーを用いて脱気した後、加圧成形することを特徴とするカーボンブラック加圧成型体の製造方法、並びにかかる方法で得られたカーボンブラック成型体が開示されている。 また、特開平09-169509号公報においては、カーボンブラックの成型体を製造する際に、原料の充填および加圧を複数回繰り返して行なう方法、また最終の加圧操作の圧力がそれ以前の圧力よりも高いカーボンブラックの加圧成型方法が開示されている。
本発明は、従来、問題であったカーボンナノチューブの飛散性、ハンドリングや作業性を改良するとともに、単独または複数のカーボンナノチューブの本来の機能を最大限引き出すことを目的とする。
カーボンブラックの造粒メカニズムとしては、各粒子間の隙間に、水、有機溶剤、界面活性剤、樹脂やその他、バインダーが浸透し毛細管力などの効果とともに、粒子を凝集させているとの考え方がある。これは、カーボンブラックが、通常、(1)結晶子が10〜15Åと小さく、(2)表面官能基量が多く950℃での揮発分が0.5%以上あり、(3)毛細管力が発生するほどにストラクチャーが発達していることが要因としてあげられ、常圧中、水で造粒するのが一般的である。これに対し、カーボンブラックと比較して、カーボンナノチューブには以下の構造上の特徴がある。
(1)結晶子が大きく発達している
(2)官能基量が少ない
(3)直線状の構造で大きなアスペクト比をもつ
(4)かさ密度が小さく、多量の空気を含んでいる。
これらの特徴はいずれも水や溶剤との濡れを妨げる要因となっている。以下、詳細に説明する。
(2)官能基量が少ない
(3)直線状の構造で大きなアスペクト比をもつ
(4)かさ密度が小さく、多量の空気を含んでいる。
これらの特徴はいずれも水や溶剤との濡れを妨げる要因となっている。以下、詳細に説明する。
(1)結晶子が大きく発達している
(2)官能基量が少ない
以上2点のためにカーボンナノチューブの極性は極めて小さい。極性が小さいと、水や溶剤の吸着点となる電荷をもつ構造部分がないため、濡れにくくなる。
(2)官能基量が少ない
以上2点のためにカーボンナノチューブの極性は極めて小さい。極性が小さいと、水や溶剤の吸着点となる電荷をもつ構造部分がないため、濡れにくくなる。
(1)直線状の構造で大きなアスペクト比をもつ
表面が凸凹であれば、その凹部分に水や溶剤を取りこみ易くなる。しかし、カーボンナノチューブのような直線的な構造体では、表面に凸凹部分は存在しないため、水や溶剤が浸入しにくく、濡れにくい。
表面が凸凹であれば、その凹部分に水や溶剤を取りこみ易くなる。しかし、カーボンナノチューブのような直線的な構造体では、表面に凸凹部分は存在しないため、水や溶剤が浸入しにくく、濡れにくい。
(2)かさ密度が小さく、多量の空気を含んでいる。
濡らすためには、空気を水や溶剤で置き換えることが必要である。したがってカーボンナノチューブ中に空気量が多いことは、水や溶剤の濡れを妨げる要因となる。
そのため、カーボンナノチューブの造粒には、カーボンブラック以上の困難を伴うものと容易に予想できる。
濡らすためには、空気を水や溶剤で置き換えることが必要である。したがってカーボンナノチューブ中に空気量が多いことは、水や溶剤の濡れを妨げる要因となる。
そのため、カーボンナノチューブの造粒には、カーボンブラック以上の困難を伴うものと容易に予想できる。
カーボンナノチューブについての造粒技術としては、高速気流中衝撃法での処理方法が提案されている(特許文献1,2)。この方法では、高速気流中で粉体を解砕し、かつ複合化する装置がもちいられている。この装置の本来の用途は、粉体母粒子表面に、異種の粉体微粒子を高速気流衝撃により付着させるというものであり、この装置の欠点としては、その回転の外周60〜100m/sという高速性により、その造粒粒子径は200um以下という非常に小さな造粒しかできないことであり、ミリメートルオーダーの造粒は困難である。そのため、飛散性にともなう安全性や環境への汚染性、ハンドリング性について課題を残している。また、そのハンドリングや作業性の悪さが、各用途におけるカーボンナノチューブの分散性を妨げ、その特性を充分に引き出せていないといえる。
ここで、本発明者らは特にカーボンナノチューブの上記(4)の性質、特に多量の空気を含んでいることに着眼して、本技術を見出すに至った。
即ち、カーボンナノチューブの造粒において、大きな障壁のひとつである、多量の空気は、上記特開平09-143389号公報の方法によって、改善が期待出来ること。造粒、加圧を複数回繰り返すことによって、その効果をさらに高めることが出来ること。最初から減圧、加圧の強度を高く設定するのではなく、始めのうちはその強度を弱く抑え、徐々にその強度を上げていく方法が、カーボンナノチューブの造粒において有効であることに思い至ったものである。
即ち、カーボンナノチューブの造粒において、大きな障壁のひとつである、多量の空気は、上記特開平09-143389号公報の方法によって、改善が期待出来ること。造粒、加圧を複数回繰り返すことによって、その効果をさらに高めることが出来ること。最初から減圧、加圧の強度を高く設定するのではなく、始めのうちはその強度を弱く抑え、徐々にその強度を上げていく方法が、カーボンナノチューブの造粒において有効であることに思い至ったものである。
本発明は、カーボンナノチューブの1種もしくは複数を混合し、減圧脱気、加圧成型することにより、飛散性が少なくハンドリング性が向上したカーボンナノチューブ加圧成型体を提供することを目的とする。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、上記のようにカーボンブラック以上の困難さが予想される、カーボンナノチューブの加圧成型が、減圧脱気後加圧することによって、成型体の密度および粒径を制御することによって、可能となるのではないかと思い至って、本発明を達成したものである。
本発明者らは、上記のようにカーボンブラック以上の困難さが予想される、カーボンナノチューブの加圧成型が、減圧脱気後加圧することによって、成型体の密度および粒径を制御することによって、可能となるのではないかと思い至って、本発明を達成したものである。
上記(1)〜(3)の解決のためにカーボンナノチューブそのものの構造を改質し、水や溶剤に対する濡れを改善することは可能である。しかし、結晶子を小さくしたり、官能基量を増やしたり、直線的な構造を変えることは、カーボンナノチューブの持つ、導電性や熱伝導性や強度などの特性を損なってしまう。随意検討の結果、カーボンナノチューブの持つ機能を損なわない造粒方法として、以下の(A)(B)(C)の方法を開発した。
尚、(A)(B)(C)の内、複数の方法を組み合わせることも可能である。
(A)水への浸漬と脱気をコントロールすることにより濡れ性を促進する方法
これは、(4)の濡れの阻害要因となっている空気を積極的に除去するという方法である。空気を除去することにより濡れを促進することができる。
(B)液―液の界面をコントロールして、界面にカーボンナノチューブを配向させることにより造粒する方法
これは、極性の異なる複数の溶剤を用いることがポイントである。カーボンナノチューブは極性が極端に小さいため、非極性溶剤に対する親和性と極性溶剤に対する親和性の差が大きい。カーボンナノチューブの水や溶剤に対する濡れが小さくても、この溶媒間の極性の差を利用して、溶媒間の界面にカーボンナノチューブを配向させることができる。
(A)水への浸漬と脱気をコントロールすることにより濡れ性を促進する方法
これは、(4)の濡れの阻害要因となっている空気を積極的に除去するという方法である。空気を除去することにより濡れを促進することができる。
(B)液―液の界面をコントロールして、界面にカーボンナノチューブを配向させることにより造粒する方法
これは、極性の異なる複数の溶剤を用いることがポイントである。カーボンナノチューブは極性が極端に小さいため、非極性溶剤に対する親和性と極性溶剤に対する親和性の差が大きい。カーボンナノチューブの水や溶剤に対する濡れが小さくても、この溶媒間の極性の差を利用して、溶媒間の界面にカーボンナノチューブを配向させることができる。
(C)異なる直径・アスペクト比をもつカーボンナノチューブもしくは直径・アスペクト比の分布の広いカーボンナノチューブを用い、カーボンナノチューブ同士の架橋構造をつくる方法
この方法では、複数の大きさのカーボンナノチューブを用いることにより、幾何学的に絡ませ、凝集を生み、造粒させる。つまり、通常のカーボンナノチューブでは、その直線性のために水や溶剤を取りこむ構造がないが、形状の異なるカーボンナノチューブもしくは分布の広いカーボンナノチューブを用いることにより、水や溶剤の入りこむスペースをつくることができる。また、小さいカーボンナノチューブが架橋構造をつくるため、造粒物の強度を保つことができる。
以上のように、本発明者らは(A)(B)(C)の三つの方法を開発したが、(A)における、濡れの阻害要因となっている空気を積極的に除去するという課題を解決すべく、カーボンナノチューブを減圧後、加圧成型したところ、嵩密度の向上及び分散性を同時に満足しうるということを見出した。
以下、本発明を具体的に説明する。
この方法では、複数の大きさのカーボンナノチューブを用いることにより、幾何学的に絡ませ、凝集を生み、造粒させる。つまり、通常のカーボンナノチューブでは、その直線性のために水や溶剤を取りこむ構造がないが、形状の異なるカーボンナノチューブもしくは分布の広いカーボンナノチューブを用いることにより、水や溶剤の入りこむスペースをつくることができる。また、小さいカーボンナノチューブが架橋構造をつくるため、造粒物の強度を保つことができる。
以上のように、本発明者らは(A)(B)(C)の三つの方法を開発したが、(A)における、濡れの阻害要因となっている空気を積極的に除去するという課題を解決すべく、カーボンナノチューブを減圧後、加圧成型したところ、嵩密度の向上及び分散性を同時に満足しうるということを見出した。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明においては、これらカーボンナノチューブを加圧して成型する。この際使用する型としては、成型時の印加圧力に耐えうる強度を有していれば如何なる材質の型を用いてもよい。例えば金属製の型としてはSUS304、SUS316等のステンレス製金型、タングステンカーバイド等の超鋼等が使用できる。又、樹脂製型としては、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリ四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン(FEP)等のフッ素樹脂(「テフロン」(登録商標))製型、ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネイト、フェノール樹脂等のプラスチック類、更に複合材料としてCFRP、GFRP等のFRP、セラミックス製型としては、アルミナ、ジルコニア、ムライト等が使用挙げられる。加圧に使用するプレス機としては、油圧機械式プレス機、油圧ハンドプレス機、機械式プレス機、エアーシリンダー式プレス機等、加圧成型できるものであれば如何なるプレス成型機でもよい。
型の形状も特に制限されず、所望の成型体の形状にしたがって、三角形あるいはその他の多角形の断面を有する柱状体、特に立方体あるいは直方体の成型体とすることができ、取り扱いの点からも好適である。
型の形状も特に制限されず、所望の成型体の形状にしたがって、三角形あるいはその他の多角形の断面を有する柱状体、特に立方体あるいは直方体の成型体とすることができ、取り扱いの点からも好適である。
カーボンナノチューブを上述の型に入れ、加圧することにより成型する。上記のカーボンナノチューブを、本発明においては、加圧成型に先立ち予め減圧チャンバーを用いてカーボンナノチューブ粒子間の気体を脱気しておく。この脱気方法は減圧チャンバーを用いて行うのであれば特に限定されるものではないが、例えば、以下の如き方法が挙げられる。摺動可能なシリンダーとピストンとを有する型に成型しようとする原料のカーボンナノチューブを充填する。シリンダー上部にセットした真空チャンバー内及びシリンダー内はガスケット材によりその外部と実質的に遮断される。次に、真空チャンバーに接続した真空ポンプを機動させて真空チャンバー内及びシリンダー内を減圧する。この減圧状態を保持したまま、ピストンを下降させシリンダー内のカーボンナノチューブを加圧成型する。その後、真空ポンプの運転を再開し、上記工程を複数回繰り返す。チャンバー及びシリンダー内の雰囲気圧力を大気圧に戻す。その後、真空チャンバーとピストンを上昇させてカーボンナノチューブ成型体を取り出すことにより、減圧チャンバーによるカーボンナノチューブ粒子間の気体の脱気及びこれに引き続くカーボンナノチューブの加圧成型を行うことができる。
本発明において、減圧時の圧力は、0.001〜1気圧で行うのが好ましい。1気圧よりも高い場合、粒子中の脱気が行なえない。また、減圧度を極めて低くしても差し支えはないが、0.001気圧以下にしてもカーボンナノチューブの成型性において格別な優位性を発揮することもなく、このような高真空とする工業的な意味はない。成型スピードと装置構造上、カーボンナノチューブをより脱気しやすい点で、特に0.002〜0.9気圧とするのが好ましい。
所定の減圧度を達成する方法は如何なる方法でも構わないが、例えば、油回転式真空ポンプ、アスピレーター、摺動式真空ポンプ、フリーピストン式真空ポンプ、ダイヤフラム式真空ポンプ、拡散ポンプ、ターボ型真空ポンプ等が挙げられる。このようにして、本発明のカーボンナノチューブ成型体を得ることができる。
なお、本発明のカーボンナノチューブ成型体は、粉化率が50%以下、より好ましくは30%以下としたものが特に好ましい。粉化率としては、後述する実施例に記載した測定方法で求めることができる。粉化率を50%以下とすることにより、輸送中に成型体に加わる振動や摩擦等の外力による粉化を防止でき、ハンドリング性が特に優れたものとなる。また、原料である粉状カーボンナノチューブの嵩密度とカーボンナノチューブ成型体の嵩密度との比(以下、「嵩密度比」ともいう。)が2倍以上10倍以下、より好ましくは4倍以上8倍以下とするのが良い。この嵩密度比が2よりも低い場合、成型体のコンパクト性が低下する。一方、嵩密度比が10を超えると、分散性が低下する傾向にある。嵩密度比が2以上10以下とすれば、コンパクト性と分散性とが同時に極めて好ましい範囲で満足される。加圧成型時の圧力(成型圧力)は、3kgf/cm2以上600kgf/cm2以下、より好ましくは5kgf/cm2 以上500kgf/cm2以下とするのがよい。成型圧力が3kgf/cm2を下回ると、コンパクト性が低下、粉化率が増加する傾向にある。一方、成型圧力が600kgf/cm2 よりも高い場合、通常のインクや塗料等の製造時に使用される分散機では、分散性が十分でないことがある。一方、これ以上圧力を高くしてもコンパクト性向上の効果は殆ど得ることができない。このため、インク、塗料、着色樹脂、ゴム等を工業的に製造する際に使用するカーボンブラック成型体としては、3kgf/cm2以上600kgf/cm2 以下で加圧成型するのが適当である。
なお、本発明のカーボンナノチューブ成型体は、粉化率が50%以下、より好ましくは30%以下としたものが特に好ましい。粉化率としては、後述する実施例に記載した測定方法で求めることができる。粉化率を50%以下とすることにより、輸送中に成型体に加わる振動や摩擦等の外力による粉化を防止でき、ハンドリング性が特に優れたものとなる。また、原料である粉状カーボンナノチューブの嵩密度とカーボンナノチューブ成型体の嵩密度との比(以下、「嵩密度比」ともいう。)が2倍以上10倍以下、より好ましくは4倍以上8倍以下とするのが良い。この嵩密度比が2よりも低い場合、成型体のコンパクト性が低下する。一方、嵩密度比が10を超えると、分散性が低下する傾向にある。嵩密度比が2以上10以下とすれば、コンパクト性と分散性とが同時に極めて好ましい範囲で満足される。加圧成型時の圧力(成型圧力)は、3kgf/cm2以上600kgf/cm2以下、より好ましくは5kgf/cm2 以上500kgf/cm2以下とするのがよい。成型圧力が3kgf/cm2を下回ると、コンパクト性が低下、粉化率が増加する傾向にある。一方、成型圧力が600kgf/cm2 よりも高い場合、通常のインクや塗料等の製造時に使用される分散機では、分散性が十分でないことがある。一方、これ以上圧力を高くしてもコンパクト性向上の効果は殆ど得ることができない。このため、インク、塗料、着色樹脂、ゴム等を工業的に製造する際に使用するカーボンブラック成型体としては、3kgf/cm2以上600kgf/cm2 以下で加圧成型するのが適当である。
また、上記減圧脱気および加圧成型を複数回繰り返して行なうことが好適であり、とりわけ、その減圧脱気および加圧成型のレベルを徐々に上げていった方が、本発明の目的には有利である。減圧脱気および加圧成型のレベルを段階的に上げて行く方が有利である理由に関しては、必ずしも明らかではないが、初期から加圧成型の強度を上げすぎると、造粒物内部の空気を十分に脱気しえなくなってしまうこと、初期から減圧脱気の強度を上げすぎると、一旦加圧成型されつつあった成型体内部において、再び脱気される空気を伴って、成型物が微細に破壊され、減圧脱気工程に引き続く成型加工を効率良く行なえないためと思われる。以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、カーボンナノチューブの1種もしくは複数を混合し、加圧成型することにより、飛散性が少なくハンドリング性が向上したカーボンナノチューブ成型体を提供することを目的とする。以下、本発明を詳細に説明する。すなわち、本発明は、(1) 予めカーボンナノチューブ粒子間の気体を減圧脱気した後加圧成型して得られる、カーボンナノチューブ加圧成型体。(2)前記減圧脱気および加圧成型を複数回繰り返すことを特徴とする、カーボンナノチューブ加圧成型体。(3)前記減圧および加圧の強度を段階的に高くすることを特徴とする、カーボンナノチューブ加圧成型体。
(4) 前記カーボンナノチューブ加圧成型体の粒子径が0.3mm以上10mm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れかに記載のカーボンナノチューブ加圧成型体。
(4) 前記カーボンナノチューブ加圧成型体の粒子径が0.3mm以上10mm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れかに記載のカーボンナノチューブ加圧成型体。
(5)カーボンナノチューブ粒子間の気体の脱気を1気圧以下0.001気圧以上での減圧により行うことを特徴とする、カーボンナノチューブ加圧成型体。
に関する。
に関する。
本発明により、カーボンナノチューブを、減圧後加圧成型することにより、その飛散性をおさえ計量仕込みを簡便にするだけでなく、飛散による人体への影響や、周辺の汚染を防止する効果もある。また、移送・貯蔵を簡便にするとともに、樹脂マスターバッチや分散液を高濃度配合にすることもでき、強度特性・電気的特性・熱伝導特性など種々の性能が向上する。その他、これまで1種のカーボンナノチューブで得られた強度特性・電気的特性・熱伝導特性などカーボンナノチューブの特性を、複数種のカーボンナノチューブを混合造粒することにより更に向上させることができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。 本発明で、使用されうるカーボンナノチューブについては、特に制限はないが、通常、短径が数nm〜約500nm、長さが数10nm〜数10umのものがある。これらに関して、単独使用する場合、複数種を使用する場合、両方についてその制限はないが、単独使用の場合は、直径が200nm以下、長さが数um程度のものが好適であり、さらには直径や長さの分布が広いものがより好適である。また、複数種を使用する場合、そのカーボンナノチューブの特性を活かすために、直径をかえたものや長さをかえたものを混合し使用することが望ましい。
本発明においては、一般的な造粒方法として、粒径増大と粒径細分の2つの方法があげられるが、カーボンナノチューブをもちいる場合、粒径増大の方法が選ばれる。ここで、粒径増大の代表的な例として、カーボンブラックの造粒があげられる。
造粒法としては、上記A)B)C)の他に、転動造粒、流動層造粒、複合型流動層、撹拌造粒、圧縮造粒、押し出し造粒、噴霧造粒、気流乾燥装置をもちいる造粒方法、真空圧縮造粒法やフラッシング法などの方法に、前記A)B)C)の考え方を導入した造粒方法もある。
造粒法としては、上記A)B)C)の他に、転動造粒、流動層造粒、複合型流動層、撹拌造粒、圧縮造粒、押し出し造粒、噴霧造粒、気流乾燥装置をもちいる造粒方法、真空圧縮造粒法やフラッシング法などの方法に、前記A)B)C)の考え方を導入した造粒方法もある。
本発明において可能な造粒方法としては、その条件から、乾式と湿式にわけられる。乾式方法としては、バインダーを使用する方法と使用しない方法に分けられ、バインダーとして主なものとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、界面活性剤、蜜蝋、セルロース系物質、リグニンスルホン酸や有機微粒子などがあげられる。
また、湿式造粒法としては、水や有機溶剤のみをもちいた方法とバインダーを併用した方法がある。特に、水については、そのイオン濃度や添加剤などに特別な制限はない。イオン濃度については、水中に親水性の酸化性物質を含ませることにより、カーボンナノチューブの酸化処理や不純物除去と造粒処理を一連の工程として行うこともできる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、界面活性剤、蜜蝋、セルロース系物質、リグニンスルホン酸や有機微粒子など、種々のものをバインダーとして併用することもできる。また、製造時に使用される有機溶剤としては、水溶性・非水溶性の制限はないが、脂肪族系、芳香族系、エステル系、ケトン系、エーテル系、アルコール系、グリコール系、含窒素系、ハロゲン系などがあげられる。また、有機溶剤中ではカーボンナノチューブのグラフト化処理なども可能であり、造粒処理と同時に行うこともできる。特に、製造後のカーボンナノチューブ集合体への残存を考慮すると、低沸点で環境影響の少ないものが好まれる。具体的には、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、ヘキサン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
また、湿式造粒法としては、水や有機溶剤のみをもちいた方法とバインダーを併用した方法がある。特に、水については、そのイオン濃度や添加剤などに特別な制限はない。イオン濃度については、水中に親水性の酸化性物質を含ませることにより、カーボンナノチューブの酸化処理や不純物除去と造粒処理を一連の工程として行うこともできる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、界面活性剤、蜜蝋、セルロース系物質、リグニンスルホン酸や有機微粒子など、種々のものをバインダーとして併用することもできる。また、製造時に使用される有機溶剤としては、水溶性・非水溶性の制限はないが、脂肪族系、芳香族系、エステル系、ケトン系、エーテル系、アルコール系、グリコール系、含窒素系、ハロゲン系などがあげられる。また、有機溶剤中ではカーボンナノチューブのグラフト化処理なども可能であり、造粒処理と同時に行うこともできる。特に、製造後のカーボンナノチューブ集合体への残存を考慮すると、低沸点で環境影響の少ないものが好まれる。具体的には、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、ヘキサン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
本発明において、造粒物を製造時に使用する設備・機械に、特に制限はないが、乾式では、造粒のみが行われ、湿式では造粒と乾燥が行われるようになっているのが普通である。代表的なものとして、流動層造粒装置、攪拌造粒装置、転動造粒装置、噴霧乾燥造粒装置などがあげられるが、これらの装置については、それぞれの複合型などもある。また、気流乾燥装置をもちいる造粒方法や真空圧縮造粒法やフラッシング法などの方法もあげられる。
また、本発明において使用される造粒装置には、大きく分けて、横型のものと縦型のものがある。横型のものについては連続式のものが多く、1段または複数段のドラムで構成され撹拌ピンで造粒され、連続式にキルン式のドラム内で乾燥するものや、2軸で混練しつつ圧縮や乾燥をするものなど、種々のものがある。これらについては、その連続作業性によるコストメリットが大きく、汎用的な用途として多く用いられているため有用である。また、縦型の場合、連続式のものとバッチ式のものに分けられる。連続式のものには、造粒工程と乾燥工程を同時に行うものもあり、大量生産に適したものである。また、バッチ式のものについては、造粒工程と乾燥工程を別々に行うものもあり、その途中において、造粒物を回収するためにろ過などを必要とするものもある。
本発明において、複数のカーボンナノチューブの混合状態は非常に重要である。特に、カーボンナノチューブを湿式で造粒する場合には、その表面の濡れの状態に留意する必要がある。また、カーボンナノチューブを複数用いる場合、たとえば、乾式で粉体として流動させながら造粒する場合や、湿式で溶液中に浸漬して造粒する場合において、その複数のカーボンナノチューブの混合状態の均一性が、造粒物の硬さや大きさに影響する可能性がある。また、複数のカーボンナノチューブの混合が不充分で、不均一な場合、製造された成型体をもちいた樹脂マスターバッチや樹脂コンパウンドの特性にバラつきが生じる可能性があり、求める品質特性を得られない可能性もある。こういった問題を考慮し、流動層や溶液中のカーボンナノチューブは、用いる機械に応じて、充分に混合できる量、濃度で行う必要がある。
本発明により、製造されたカーボンナノチューブ成型体の硬さについては、ゴム用カーボンブラック-造粒粒子の特性-第3部:造粒粒子の硬さの求め方(JIS K6219-3:2006)を参考に、その硬さを測定することができる。ただし、JIS K6129-3:2006では、1.0mmもしくは1.4mmのふるいの網目に詰まったものを測定しているが、本発明によって成型されたカーボンナノチューブ集合体は、その粒子径を調整することもできるため、造粒物の全体像を反映する方法として、微粉末を除いた状態で測定することが望ましく、それ以外は、JIS K6129-3:2006に準拠することが望ましい。また、測定する機械については、自動のものと手動のものとがあるが、JIS K6129-3:2006に準拠して測定できる機械を選択することが望ましい。 以下、本発明について実施例に基いて詳述するが、本発明の目的を達成するために可能な方法であれば、以下の実施例に限定する必要はない。
(実施例1)
成型金型を用いて、カーボンナノチューブの成型を行った。金型のダイの内寸法は縦5mm、横10mm、深さ15mmである。パンチにダイをセットし、直径150nm、長さ5μm、かさ比重0.08 kgf/cm2 のカーボンナノチューブを1.5 g投入した。パンチにセットされた摺動可能な減圧チャンバーをダイに圧着した。アルバック社製油回転型真空ポンプを用いて減圧チャンバー内の空気を脱気した。減圧度が0.2気圧に達する迄に20秒を要した。減圧度が0.2気圧に達した後、直ちに成型圧力30 kgf/cm2 で成型した。減圧及び成型に費やした時間は40秒であった。
成型金型を用いて、カーボンナノチューブの成型を行った。金型のダイの内寸法は縦5mm、横10mm、深さ15mmである。パンチにダイをセットし、直径150nm、長さ5μm、かさ比重0.08 kgf/cm2 のカーボンナノチューブを1.5 g投入した。パンチにセットされた摺動可能な減圧チャンバーをダイに圧着した。アルバック社製油回転型真空ポンプを用いて減圧チャンバー内の空気を脱気した。減圧度が0.2気圧に達する迄に20秒を要した。減圧度が0.2気圧に達した後、直ちに成型圧力30 kgf/cm2 で成型した。減圧及び成型に費やした時間は40秒であった。
(実施例2〜4)
実施例1の操作を2回、4回、8回と複数回繰り返した。
実施例1の操作を2回、4回、8回と複数回繰り返した。
(実施例5)
実施例1の操作を行なうにあたって、0.8気圧で減圧後10 kgf/cm2 で加圧、0.4気圧で減圧後20 kgf/cm2 で加圧、0.2気圧で減圧後30 kgf/cm2 で加圧と、段階的に減圧および加圧の工程を繰り返した。
実施例1の操作を行なうにあたって、0.8気圧で減圧後10 kgf/cm2 で加圧、0.4気圧で減圧後20 kgf/cm2 で加圧、0.2気圧で減圧後30 kgf/cm2 で加圧と、段階的に減圧および加圧の工程を繰り返した。
〔密度の測定〕
密度の測定に際しては、直方体の縦と横と厚さをノギスにて測定し、その値から成型体の体積(cc)を算出した。また、電子式直読型上皿天秤にて成型体の重量(g)を測定した。成型体の重量と体積から成型体の密度(g/cc)を算出した。
密度の測定に際しては、直方体の縦と横と厚さをノギスにて測定し、その値から成型体の体積(cc)を算出した。また、電子式直読型上皿天秤にて成型体の重量(g)を測定した。成型体の重量と体積から成型体の密度(g/cc)を算出した。
〔造粒物の硬さの測定〕
成型体の硬さについては、ペレットハードネステスターAS2000 PHT AUTO SYSTEMをもちいて、造粒物の全体像を反映するような方法として、微粉末を除いた状態で測定したこと以外は、JIS K6129-3:2006に準拠して測定を行った。
成型体の硬さについては、ペレットハードネステスターAS2000 PHT AUTO SYSTEMをもちいて、造粒物の全体像を反映するような方法として、微粉末を除いた状態で測定したこと以外は、JIS K6129-3:2006に準拠して測定を行った。
〔粉化率の測定〕
粉化率の測定方法を以下に記載する。カーボンナノチューブ加圧成型体を3±1g(W)0.001g迄精秤し、JIS K−6221に準拠した直径200mm、目開き1mmの篩に入れる。この篩に受け皿と蓋を取り付け、JISKー6221に準拠した振とう機で20秒間打撃を与えながら振とうする。振とう機から受け皿を取り外し、受け皿中のカーボンナノチューブの重量を0.001g迄精秤し、これを振とう後の重量(WR)とし、次式によって粉化率を算出した。
粉化率の測定方法を以下に記載する。カーボンナノチューブ加圧成型体を3±1g(W)0.001g迄精秤し、JIS K−6221に準拠した直径200mm、目開き1mmの篩に入れる。この篩に受け皿と蓋を取り付け、JISKー6221に準拠した振とう機で20秒間打撃を与えながら振とうする。振とう機から受け皿を取り外し、受け皿中のカーボンナノチューブの重量を0.001g迄精秤し、これを振とう後の重量(WR)とし、次式によって粉化率を算出した。
(数1)
粉化率(%)
= (WR/W)×100
以下、実施例1〜10の測定結果を表1に示す。
粉化率(%)
= (WR/W)×100
以下、実施例1〜10の測定結果を表1に示す。
本発明によって、得られる効果としては種々のものがある。一つは、カーボンナノチューブのかさ高さのために、樹脂マスターバッチ作製時や分散液作製時の仕込みの作業性の悪さの改善である。これは、カーボンナノチューブを、減圧後加圧成型することにより、その飛散性をおさえ計量仕込みを簡便にするだけでなく、飛散による人体への影響を抑えることができるとともに、周辺の汚染を防止する効果もある。また、成型物は、かさ比重が大きくなるためコンパクトに貯蔵することも可能である。このことにより、カーボンナノチューブを連続に均一に扱えることにより、樹脂マスターバッチや分散液を高濃度配合にすることもでき、強度特性・電気的特性・熱伝導特性など種々の性能が向上する可能性も考えられる。二つ目としては、複数のカーボンナノチューブを使用する場合、そのかさ高さから別々の樹脂マスターバッチや分散液を作製せざるをえなかったが、本発明による造粒物をもちいることにより、樹脂マスターバッチや分散液を一つにすることができ、複数のカーボンナノチューブを同時に使用することが容易になる。また、複数のカーボンナノチューブを均一に分散することができる。これにより、これまで1種のカーボンナノチューブでは得られなかった強度特性・電気的特性・熱伝導特性など種々のカーボンナノチューブの特性を引き出す基礎となりうる。
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、産業上の利用分野としては、樹脂コンポジット、ゴム成型物、塗料、インクその他、幅広い分野での利用を可能とするものである。本発明のカーボンナノチューブ成型体は本発明の製造方法によって容易に得ることができる。
Claims (5)
- 予めカーボンナノチューブ粒子間の気体を減圧脱気した後加圧成型して得られる、カーボンナノチューブ加圧成型体。
- 前記減圧脱気および加圧成型を複数回繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ加圧成型体。
- 前記減圧および加圧の強度を段階的に高くすることを特徴とする、請求項2に記載のカーボンナノチューブ加圧成型体。
- 前記カーボンナノチューブ加圧成型体の粒子径が0.3mm以上10mm以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のカーボンナノチューブ加圧成型体。
- カーボンナノチューブ粒子間の気体の脱気を1気圧以下0.001気圧以上での減圧により行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のカーボンナノチューブ加圧成型体。
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