JP2009183657A - 歩行訓練装具 - Google Patents

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Abstract

【課題】立脚支持、障害側股関節の内外旋を制御した振り出し、重心移動制御の補助の容易化によって、障害側下肢の立脚支持を補助し、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードが速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができる歩行訓練装具。
【解決手段】足関節の上から膝の下まで延び下腿前面を覆う下腿前面部7とこの下腿前面部を下腿に固定する固定部8からなる下腿対面部2と、下腿対面部の上に連結して膝蓋骨前面を覆う膝蓋骨対面部3と、膝蓋骨対面部の上に連結して大腿下部前面から起始し内外側二手に分かれ上行して後方に回り込み大腿後面上部で横に連結する大腿周回部4と、大腿周回部の上に連結して広く後方から殿部を覆う殿部対面部5と、殿部対面部の上に連結し殿部対面部を上に牽引することで膝関節と股関節伸展を補助する機構を有する牽引部6とを持ち、該牽引部の牽引によって下肢立脚支持を補助する歩行訓練装具。
【選択図】図1

Description

本発明は、歩行訓練装具に関する。
従来の脳卒中患者に対するリハビリテーションにおける歩行訓練では、患者の麻痺した片側上下肢の異常な筋緊張を抑えて随意的な動きを誘発することに重点が置かれ、装具等の利用もなるべく減らし、動作に対する補助をなるべく少なくする方法が、主流の1つであった。従来の脳卒中患者の歩行訓練において歩幅を大きくしたり、歩行スピードを上げることは、歩行の不安定さが増大し、障害側の異常筋緊張も高まるため、好ましくないと捉えられてきた。このような考え方に基づく歩行訓練は、健常側に頼った、歩幅が小さく、歩行スピードが遅く、心肺機能に対しても低運動負荷にしかならないため、筋力、体力に関するトレーニングの効率がよくなかった。
しかし近年、脳卒中患者に対し、部分免荷によって障害側下肢の立脚支持を補助し、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練法の有効性が注目されている(非特許文献1)。
脳卒中患者に対する歩行訓練において、内反尖足については従来の一般的な金属またはプラスチックの短下肢装具等で矯正することができる。しかし、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練を行うためには、障害側下肢立脚期の立脚支持、障害側下肢遊脚期の振り出し、および歩行周期全般にわたる重心移動制御に関して補助が必要である。
障害側下肢立脚期の立脚支持は、麻痺等によって下肢近位部の筋力低下や異常な筋緊張が生じており高運動負荷の歩行訓練では、股関節、膝関節の伸展位保持がより困難となるため、補助が必要となる。
障害側下肢遊脚期の障害側股関節の振り出しは、麻痺等によって下肢近位部の筋力低下や異常な筋緊張が生じており、高運動負荷の歩行訓練では、振り出しのスピードの遅れが目立ち、振り出し時に股関節の内旋または外旋を伴い不安定となり易いため、補助が必要となる。
歩行周期全般にわたる重心移動制御は、下肢振り出し時に前もって逆側下肢へ重心を移動することと、立脚時に支持脚へ重心を移動すること、及びこうした重心移動中に体幹の安定を保つことであるが、高運動負荷の歩行訓練ではより困難さが増すため、補助が必要となる。
これらの歩行補助は、補助者の素手や足で、患者の衣服や身体をつかんで引っ張ったり、押したりすることでなされるため、効率が悪く、補助者への負担は大きく、人手を要することになる。
図9に従来の脳卒中患者の歩行訓練装具の第1例として、患者が歩行訓練を行うトレッドミル101と、患者を吊り上げて体重を免荷する免荷装置102とからなり、該免荷装置102は、アーム103と、長さ調節可能な患者吊り上げ手段104と、免荷した体重を検出する体重検出手段105と、免荷する値を設定する免荷値設定器106とからなる免荷歩行訓練装置を示す(特許文献1)。
この装具は、障害側下肢の立脚支持を補助し、障害側下肢使用を促進するが、上からの1点を支点として牽引免荷する仕組みであり、前述の歩行時に必要な重心移動制御を阻害するために、歩きにくさはより増大するという欠点がある。歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練とするための、障害側股関節の内外旋を制御した振り出し、一点牽引で阻害された重心移動制御に対する補助は、補助者の素手や足で直接患者の身体を押したり衣服を引っ張ることでなされ、このような機器を導入しながら複数名の補助者を要するという欠点がある。体重の部分免荷をするためには強力な牽引力、これを身体に伝達するための強力な摩擦力が必要となるため、身体装着部により自由な運動が阻害されざるをえないという欠点がある。
図10に従来の脳卒中患者の歩行訓練装具の第2例として、患者201の関節トルクを計測する力センサ204と、前記患者の関節角度を計測する角度センサ206と、前記患者の下肢を駆動する下肢駆動部205と、前記患者の足関節を駆動する足関節駆動部203と、訓練データを記憶する訓練データ記憶部209と、前記下肢駆動部205と前記足関節駆動部203とを駆動し両下肢を協調させて動作させる訓練軌道を生成する訓練軌道生成部210と、を備えた、前記患者201の肢体を前記訓練軌道に沿って繰り返し動作させる歩行訓練装置207において、前記患者の生体情報を計測する生体情報計測手段202と、前記患者の歩幅あるいは歩行周期を計測して表示あるいは運動の合図を提示する訓練結果評価部208と、を備え、前記訓練結果評価部208は、前記生体情報計測手段202により計測された生体情報を基に前記患者の訓練状況を評価し、前記患者の歩幅と歩行周期の一方あるいは両方を変更することを特徴とする歩行訓練装置を示す(特許文献2)。
この装具は、患者の障害側下肢の歩幅と歩行周期を、患者の歩行訓練状況にあわせて調整できるが、障害側立脚支持の補助、障害側股関節の内外旋を制御した振り出しの補助、および重心移動制御の制御機構を持っていないという欠点がある。したがって、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練のためには、補助者が複数名必要となるという欠点がある。
図11に従来の脳卒中患者の歩行訓練装具の第3例を示す。図9−aは装着した様子を装着者の前方から見た斜視図であり、図9−bは着用した様子を装着者の後方から見た斜視図である。全体として伸縮性を有する素材によって成形され、締め付け力の強い強領域と締め付け力の弱い弱領域とを有し、前記強領域は、少なくとも、着用者の下腹部に相当する第1領域と、背腰部から骨盤にのびる第2領域、着用者の背腰部から大腿外側・下腿内側に延びる帯状の第3領域、着用者の大腿内側から下腿外側に伸び、着用者の膝の上部で前記第3領域と交差する帯状の第4領域とを含み、下半身に障害がある着用者のリハビリテーションを目的の1つとして使用されるタイツである(特許文献3)。
このタイツは、両下肢伸展を補助する機構のみを有しており、両脚に装着するとすれば、脳卒中片麻痺患者に適用した場合には、歩行時の下肢交互の動きが阻害されるという欠点がある。また、このタイツを片方にのみ装着したとしても、もともと健常者を対象としている製品であり、重度な麻痺を有する患者の下肢に対する立脚支持補助の効果は不十分であり、振り出し時には、股関節、膝関節の屈曲を阻害するという欠点がある。したがって、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練は困難であるという欠点がある。
図12に従来の脳卒中患者の歩行訓練装具の第4例として、障害側下肢の使用促進のために、装着者の片側健常下肢のみに装着する装着部301と、地面に接地する足部302と、装着部301と足部302とを連結する連結部303とを備えた装具を示す(特許文献4)。
この装具は、障害側下肢の使用促進を目指すものである。障害側立脚支持、障害側股関節の内外旋を制御した振り出し、重心移動制御といった、脳卒中患者の高運動負荷となる歩行において、補助するべき項目に対し、逆に負荷を増大させるものになるという欠点がある。
以上のように、従来の装具、器具等では、立脚支持、障害側股関節の内外旋を制御した振り出し、重心移動制御への補助を十分にすることができない。こうした器具を利用しても、最近注目されている障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができるのは、障害の軽い患者か、特別に手間をかけられる患者だけであった。
実用新案公開平6−15658 特開2005−74063 特開2004−238789 特許公開2007−97768 寺西利生他:脳卒中片麻痺患者に対する部分免荷トレッド見る歩行訓練.理学療法 22巻、6号、853−858、2005
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、障害側下肢の立脚支持、障害側股関節の内外旋を制御した振り出し、歩行周期全般にわたる重心移動制御の補助が容易にでき、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができるよう歩行訓練装具を提供できることを目的としている。
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の記述的範囲を限定するものではない。
上記課題を解決するために、本発明は、足関節の上から膝の下まで延び下腿前面を覆う下腿前面部とこの下腿前面部を下腿に固定する固定部からなる下腿対面部と、下腿対面部の上に連結して膝蓋骨前面を覆う膝蓋骨対面部と、膝蓋骨対面部の上に連結して大腿下部前面から起始し内外側二手に分かれ上行して後方に回り込み大腿後面上部で横に連結する大腿周回部と、大腿周回部の上に連結して広く後方から殿部を覆う殿部対面部と、殿部対面部の上に連結し殿部対面部を上に牽引することで膝関節と股関節伸展を補助する機構を有する牽引部とを持ち、該牽引部の牽引によって下肢立脚支持を補助することを特徴とする。
また、前記下腿対面部の内側と外側の両方から起始して前方へ延びる2本のバンドであって、そのことで障害側の振り出し時に股関節が内旋しやすい場合は内側のバンドをより強く引き、障害側の振り出し時に股関節が外旋しやすい場合は外側のバンドをより強く引くことで、障害側股関節を内外旋中間位に保った状態での下肢振り出し補助をする振り出し補助装置を持つことを特徴とする。
また、体幹に巻かれたバンドであって、左右に引かれることで歩行周期全般にわたり、歩行周期に合わせて支持脚側側方への重心移動制御の補助をするバランス補助装置を持つことを特徴とする。
足関節の上から膝の下まで延び下腿前面を覆う下腿前面部とこの下腿前面部を下腿に固定する固定部からなる下腿対面部と、下腿対面部の上に連結して膝蓋骨前面を覆う膝蓋骨対面部と、膝蓋骨対面部の上に連結して大腿下部前面から起始し内外側二手に分かれ上行して後方に回り込み大腿後面上部で横に連結する大腿周回部と、大腿周回部の上に連結して広く後方から殿部を覆う殿部対面部と、殿部対面部の上に連結し殿部対面部を上に牽引することで膝関節と股関節伸展を補助する機構を有する牽引部とを持ち、該牽引部の牽引によって下肢立脚支持を補助することを特徴としたことで、障害側立脚支持を安定させることができ、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができる。
また、前記下腿対面部の内側と外側の両方から起始して前方へ延びる2本のバンドであって、そのことで障害側の振り出し時に股関節が内旋しやすい場合は内側のバンドをより強く引き、障害側の振り出し時に股関節が外旋しやすい場合は外側のバンドをより強く引くことで、障害側股関節を内外旋中間位に保った状態での振り出し補助を可能にする振り出し補助装置を持つことを特徴としたことで、障害側の振り出しのスピードが改善し、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができる。
また、体幹に巻かれたバンドであって、左右に引かれることで歩行周期全般にわたり、歩行周期に合わせて支持脚側側方への重心移動制御の補助をするバランス補助装置を持つことを特徴としたことで、歩行時の左右の重心移動が改善し、このことで両側下肢の振り出しが改善し、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができる。
本発明の実施の形態を図1〜図2に基づいて説明する。
図1は装着した様子を患者の前方から見た斜視図であり、60は破線で示した患者の身体、61は破線で示した補助者の上肢である。図1において、1は歩行訓練装具、2は下腿対面部、3は膝蓋骨対面部、4は大腿周回部、5は殿部対面部、6は牽引部の1例としての補助者前腕牽引部、7は下腿前面部、8は固定部の1例としてのカフバンド、9は振り出しの補助装置の1例としての振り出し補助バンド、10はバランス補助装置の1例としての体幹バンドである。
下腿対面部2は、下腿前面部7と、カフバンド8からなり、補助者前腕牽引部6によって装具が牽引された際に装具を下腿に固定するアンカーとなり、膝関節伸展を補助する。下腿前面部7は足関節の少し上から膝下まで延び下腿前面に接する。カフバンド8は、面ファスナ、バックル等で連結され下腿に下腿前面部7を固定する。
膝蓋骨対面部3は下腿前面部8に連結して上に延び、膝蓋骨前面を覆う。補助者前腕牽引部6によって装具が牽引された際、膝蓋骨対面部3は膝関節を後方に押し、膝関節伸展を補助する。
大腿周回部4は、膝蓋骨対面部3に連結して上に延び、大腿下部前面から内外側二手に分かれ上行し後方に回り込み大腿上部後面で横に連結し、殿部対面部5へ移行していく。補助者前腕牽引部6によって殿部対面部が牽引された際に、大腿後面上部にかかる力を大腿前面下部に伝達し、膝関節伸展補助に働くようにする。
殿部対面部5は、大腿周回部4に連結して上に延び、広く殿部を覆い、縦2本、横3本のバンドを組み合わせて構成されている。補助者前腕牽引部6によって装具が牽引された際に、殿部対面部5は股関節を前方に押し、股関節伸展を補助する。
補助者前腕牽引部6は、殿部対面部5に連結して上に延び、殿部対面部5を牽引して関節運動補助のための力源を生ぜしむる部分であり、中に補助者の前腕を通して牽引しやすいようにループ状にしている。補助者前腕牽引部6を引き上げることにより膝関節と股関節伸展を補助する力が生じる。
振り出し補助バンド9は、カフバンド8の上部に付着し下腿の内外側それぞれから1本ずつ前方へ延びる2本のバンドで、先端でループを形成し、補助者による患者歩行時の障害側下肢の振り出し補助をしやすくしている。内側と外側から出る2本バンドの引く強さの調整により、振り出し時の股関節内外旋の制御をする。つまり、障害側の下肢振り出し時に股関節が内旋しやすい場合は振り出し補助バンド9の内側のバンドをより強く引き、障害側下肢振り出し時に股関節が外旋しやすい場合は振り出し補助バンド9の外側のバンドをより強く引くことで、障害側股関節を内外旋中間位に保った状態での振り出し補助を可能とする。
体幹バンド10は、体幹に巻かれ、補助者の手で把持され、左右に引かれることで歩行周期全般にわたり、歩行周期に合わせて支持脚側側方への重心移動制御の補助をするバランス補助装置として機能する。
図2は、本発明による歩行補助に関する力学的機序を、歩行周期に添って説明した図である。障害側下肢に本発明を装着した状態で歩行補助をしている状況を側面像と正面像として示す。図2−aは障害側下肢立脚期支持補助場面の側面像を示し、図2−bは障害側下肢遊脚期下肢振り出し補助場面の側面像を示している。図2−bでは、振り出し補助バンド9を省略している。図2−cは障害側下肢立脚期支持補助場面の正面像を示し、図2−dは障害側下肢遊脚期下肢振り出し補助場面の正面像を示している。図2−c、dでは振り出し補助バンド9を省略している。62は上肢を省略した患者の身体であり、障害側下肢を実線で、健側下肢を破線で示している。
歩行周期は、振り出した下肢の踵接地から、片足立脚支持、地面を蹴って下肢荷重が終了するまでの立脚期と、下肢が地面を離れて前に振り出され再び接地するまでの遊脚期とに分けられる。両下肢の立脚期と遊脚期は互いに逆の位相で繰り返され、左右下肢の立脚期には一部重複がある。
図2−aの障害側下肢立脚期支持補助場面において、補助者により補助者前腕牽引部6を上に牽引する力11が加えられると、膝蓋骨対面部3に対して上方向へ引く力12と、下腿対面部2が下腿に固定されているために下方向に引く力13が生じる。この結果、膝蓋骨対面部3には膝関節伸展補助をする力14が生じる。同じく、補助者前腕牽引部6を上に牽引すると、殿部対面部5に対して、殿部対面部5を上方向へ引く力15と、下腿対面部2が下腿に固定されているために殿部対面部5を下方向に引く力16が生じる。この結果、殿部対面部5には股関節伸展補助をする力17が生じる。
障害側下肢立脚期支持補助場面において、補助者前腕牽引部6を牽引する方向を、より上にすれば股関節伸展に強く働き、牽引の方向をやや後方にすれば膝伸展に強く働く。
こうした機構により体重の部分免荷をする装置(特許文献1)のような強力な牽引力や摩擦力を必要とせず、障害側下肢の立脚支持の補助が可能となる。
図2−bの障害側下肢遊脚期振り出し補助場面において、補助者により振り出し補助バンド9を前方へ引く力18が加えられると、この力は下腿対面部2に伝達され、振り出しの補助がなされる。振り出し補助バンド9は下肢の内外側の2箇所から引かれるので、障害側下肢の振り出し時に股関節が内旋しやすい場合は振り出し補助バンド9の内側のバンドをより強く引き、障害側下肢の振り出し時に股関節が外旋しやすい場合はふりだし補助バンド9の外側のバンドをより強く引くことで、障害側股関節を内外旋中間位に保った振り出しの補助が可能となる。
この障害側下肢遊脚期振り出し補助場面では、補助者前腕牽引部6は緩めておき、殿部対面部5や膝蓋骨対面部3に関節伸展を補助する力が生じないようにし、障害側下肢の振り出しを妨げないようにする必要がある。
図2−cの障害側下肢立脚期支持補助場面において、体幹バンド10により、患者の障害側方向に引く力19が加えられ、患者の障害側側方への重心移動を促し障害側下肢による支持を促進すると同時に健側下肢振り出しを容易にする。
図2−dの障害側下肢遊脚期振り出し補助場面において、体幹バンド10により、患者の健側側方に引く力20が加えられ、振り出し側と逆の健側側方への重心移動を促し障害側下肢の振り出しを容易にする。
次に、本発明の使用方法を、患者の障害側下肢の歩行周期に添って説明する。
障害側下肢の立脚期には、補助者は患者の歩行に合わせて移動しながら、患者の後ろ側に位置する補助者の上肢前腕で補助者前腕牽引部6を上に牽引することにより、膝関節伸展と股関節伸展を補助する。牽引の方向を、より上にすれば股関節伸展に強く働き、やや後方にすれば膝伸展に強く働く。
また、障害側下肢の立脚期には、患者の後ろ側に位置する補助者の手で把持された体幹バンド10によって、立脚側の障害側側方への重心移動を促し、障害側下肢使用を促進すると同時に、健側下肢振り出しを容易にする。
障害側下肢の遊脚期には、補助者は患者の歩行に合わせて移動しながら、補助者の前側に位置する補助者の上肢の手で前腕振り出し補助バンド9を前方に引き、下肢振り出しを補助し、振り出し時の歩幅を大きくする。
また、障害側下肢の遊脚期には、振り出し補助バンド9の内側と外側の2本バンドの引く強さの調整により、振り出し時の股関節内外旋の制御をする。つまり、障害側の振り出し時に股関節が内旋しやすい場合は振り出し補助バンド9の内側のバンドをより強く引き、障害側の振り出し時に股関節が外旋しやすい場合は振り出し補助バンド9の外側のバンドをより強く引くことで、障害側股関節を内外旋中間位に保った状態での振り出し補助を可能とする。
また、障害側下肢の遊脚期には、補助者前腕牽引部6は牽引せずに緩めておき、大腿殿部5や膝蓋骨対面部3への力が加わらないようにして、障害側下肢振り出しを妨げないようにする。
また、障害側下肢の遊脚期の振り出し幅が大きすぎると、このあとの障害側下肢立脚期に立脚支持ができず膝折れが起こることがある。この場合には、直ちに補助者前腕牽引部6を牽引し、立脚支持の補助を行う。
また、障害側下肢の遊脚期には、患者の後ろ側に位置する補助者の手で把持された体幹バンド10により振り出す側と逆の健側側方への重心移動を促し、障害側下肢の振り出しを容易にする。
次に本発明の効果について、脳卒中患者における計測データに基づいて説明する。
図3に本発明を実施するための形態における、脳卒中患者1症例の歩行時の障害側下肢荷重の垂直成分を示す。記録にはアニマ社製下肢荷重計G−620を使用し、サンプリングタイム0.01秒(100Hz)で記録した。患者の障害側の片足が下肢荷重計の上に丁度載った場合の歩行の記録である。図3−a,bは、ともに2ステップ分を示している。図3−aは本発明装具を装着しない場合の記録で、図3−bは本発明装具装着時の記録である。本発明装具を装着しない場合の障害側下肢荷重時間は2.19秒と2.08秒であった。本発明装具を装着した場合の障害側下肢荷重時間は1.90秒と1.89秒であった。本発明装具を装着しない場合の方が歩行のテンポは速くなっている。しかし、下肢荷重量と時間とのなす力積は、本発明装具を装着しない場合の2ステップの平均が3480kg・秒、本発明装具を装着した場合の2ステップの平均が4547kg・秒と、本発明装具の装着した場合の方が大きくなっている。これは本発明装具の装着により障害側下肢肢肢の立脚支持、重心移動制御を補助することができ、障害側下肢使用を促進され、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができていることを示している。
図4に本発明を実施するための形態における、脳卒中患者5症例の10m歩行時の総ステップ数とこれにかかった時間を示す。歩行時間計測はストップウォッチを用い、総ステップ数は目測した。図4−aは総ステップ数を示し、図4−bは10m歩行時間を示している。白抜きの棒は本発明装具を装着していない場合で、黒塗りの棒は本発明装具を装着した場合である。装具を装着していない場合はステップ数の平均は38.4歩、時間の平均は56.6秒であり、装具を装着している場合はステップ数の平均は32.2歩、時間の平均は39.2秒であった。総ステップ数の比較から、本発明装具の装着により歩幅は大きくなっていることがわかる。また、要した時間の比較から、本発明装具の装着により、歩行速度が速くなっていることがわかる。これは、本装具装着により、障害側下肢振り出しが改善し、障害側下肢使用を促進され、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができることを示している。
図5は本発明を実施するための形態における、脳卒中患者1症例の6分間歩行時の酸素消費量の記録を示す。計測にはアニマ社製携帯型酸素消費量計AT−1100を使用し、1呼吸ごとの呼気ガスを分析し、酸素濃度、呼気流量から、体内で吸収利用された酸素の量を計算し、これを1分あたり、患者の体重1kgあたりの標準値にして示している。酸素消費量はその人にとってどの程度の強度の運動をしているかを示す指標としてもっとも信頼性が高く、1呼吸ごとの計測であるため、刻々の変化を追うことができる。図5−aは本発明装具を装着しない場合の記録で、図5−bは本発明装具装着時の記録である。計測は3分間の座位安静、その後の6分間歩行、更にその後3分間の座位安静の間、実施した。患者には訓練室内の1周37.5mの計測路を、6分間なるべく速く歩くよう指示した。尚、呼吸のペースは一定ではないため、グラフの横軸の時間は、図5−aと図5−bで全く同じではない。装具を装着していない場合の6分間歩行時の酸素摂取量の平均は4.6ml/kg/minであり、装具を装着している場合の6分間歩行時の酸素摂取量の平均は、5.9ml/kg/minであった。本発明装具装着により歩行時の酸素消費量が増えていた。これは、本発明装具の装着により、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができていることを示している。
図6は本発明を実施するための形態における、脳卒中患者5症例の6分間歩行時の歩行距離を示す。白抜きの棒は本発明装具を装着していない場合で、黒塗りの棒は本発明装具を装着した場合である。装具を装着していない場合の6分間歩行距離の平均は123.1mであり、装具を装着している場合の6分間歩行距離の平均は、155.0mであった。装具装着時のほうが歩行距離は長くなっていた。これは、本発明装具の装着により、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができていることを示している。
以上本発明に関して、図面を参照しつつ説明したが、この実施形態に限定されるわけではなく、前記の趣旨に適合しうる範囲で変更が可能である。本発明を実施するための他の形態について述べる。
素材、形状について、他の形態を述べる。
この本発明を実施するための形態の第1例において、歩行訓練装置1、振り出し補助バンド9、体幹バンド10は、厚地のアクリル繊維100%、幅5cmの帯を縫い合わせて作成されるが、例えば他の形状の帯、紐、弾性帯、ゴムまたは適当に裁断した布で作成することができる。
下腿対面部2、膝蓋骨対面部3、大腿周回部4、殿部対面部5は、皮革、プラスチック、カーボン樹脂、または金属を成型して作成し、各部分の連結には金属等の蝶番機構のある継ぎ手を用いることができる。また、カフバンド9は、一般的な短下肢装具や長下肢装具の装着下、または非装着下で、下腿前面部8を下腿に固定できる構造とする。
本発明を実施するための形態の第1例において、補助者前腕牽引部6は中に補助者の前腕を通して牽引しやすいようにループ状にしているが、他の牽引しやすい形状の器具を用いることができる。また、牽引の方法として、手で把持する、バンドを延長して補助者の頚部や肩にかける等の方式も考えられる。
本発明を実施するための形態の第1例において、振り出し補助バンド9は前方へ延びる2本のバンドにより前方へ引く形式であるが、歩行訓練の状況によっては、蝶番で連結された硬性の素材を用いることができ、後方から下肢を押し出して振り出しを補助する方式も考えられる。
本発明を実施するための形態の1例において、体幹に巻いた体幹バンド10により歩行周期にあわせた重心移動制御の補助を補助者が行っているが、他の、体幹からずれないようにして重心移動制御をしやするよう幅を広くしたり、体型に合わせて形成された器具、オムツ型にして股の部分を通してずれにくくした器具、把持部をもつ器具も利用できる。
図7に本発明の、患者、補助者の体格にあわせるため等の各部分の連結設置の可能性について示す。21は振り出し補助バンド2を必要ない場合には取り外し可能にするための連結、22は振り出し補助バンド9の長さを患者と補助者の体格のあわせて調整するための連結、23は大腿周回部4を患者の大腿部長、周径にあわせるための連結、24は補助者前腕牽引部6の位置を患者と補助者の体格に合わせるための連結、25は体幹バンドの位置周径を患者と補助者の体格に合わせるための連結である。以上の連結は、面ファスナ、バックル、ボタン、粘着テープ等を利用して設置することができる。
振り出し補助バンド9と歩行訓練装具1との連結は、カフバンド8の上部に限定されるわけではなく、歩行時の下肢振り出しの状況により、カフバンド8カフバンド8の下腿の下部から、大腿周回部4のレベルまで移動させて下肢内外から起始してもよい。例えば、患者の障害側下肢の支持性が著しく低い場合は、下腿対面部2の下部に振り出し補助バンド9との連結部位をおくことで、立脚期の膝折れを少なくできる。また、患者の障害側大腿四頭筋の痙性が高い場合や、反張膝になりやすい場合は、膝蓋骨対面部3のレベルに振り出し補助バンド9との連結部位を置くことで振り出し時の膝屈曲を促進できる。大殿筋の痙性が高い場合は、大腿周回部4のレベルに振り出し補助バンド9との連結部位を置くことで振り出し補助をより強力にする。
患者の障害側下肢の立脚支持が良好な場合は、膝対面部3、大腿周回部4、殿部対面部5、補助者前腕牽引部6は必要ない。
患者の障害側下肢振り出しが良好な場合は、振り出し補助バンド9は必要ない。
患者の立位重心移動制御が良好な場合は、体幹バンド10は必要ない。
本発明による、歩行訓練の補助者は原則的には1名であるが、体幹の障害が重度な場合や患者が大柄な場合、これを補助するもう1名が必要である。
力源、制御機構について、他の形態を述べる。
図8に、この本発明を実施するための形態の第2例を示す。62は上肢を省略した患者の身体である。患者は障害側下肢に歩行訓練装具1と振り出し補助バンド9、体幹バンド10を装着する。50は、他の各装置に連動して動くトレッドミル装置である。51は、歩行訓練をする患者の上後方に位置し歩行訓練装具1の殿部対面部5の上端に紐でつなげたアクチュエーターである。このアクチュエーター51のアームを上に動かして歩行訓練装具1を上へ牽引することで、障害側立脚期の立脚支持の補助を行なう。52は歩行訓練をする患者の前方に位置し振り出し補助バンド9に紐でつなげたアクチュエーターである。このアクチュエーター52のアームを前に動かして振り出し補助バンド9を前に引くことで、障害側遊脚期の下肢振り出しの補助を行なう。53は、振り出しの方向を調整するために、振り出し補助バンド9につながれた紐をアクチュエーター52のアーム先端に連結する部位を調整できる横木である。54は歩行訓練をする患者の上に位置し体幹バンド10の左右2ヶ所に紐でつなげたアクチュエーターである。このアクチュエーター54のアームを左右に動かして体幹バンド10を左右に引くことで、歩行周期全般にわたり、歩行周期に合わせて支持脚側側方への重心移動制御の補助をする。55は、これらのアクチュエーター51,52,53とトレッドミル50を患者の歩行に合わせて制御する装置である。本実施形態により、人手を介することなく、障害側下肢使用を促進させ、歩幅の大きい、歩行スピードの速い、心肺機能に対しても高運動負荷となる歩行訓練ができる。
発明の利用について、他の形態を述べる。
本発明は、部分免荷のある場合もない場合も、トレッドミル上での歩行訓練の補助のために使用できる。
本発明を装着し、一般に評価できる患者の少ない脳卒中患者のトレッドミル等の多段階的負荷試験のより最大酸素摂取量を評価すれば、評価可能となる脳卒中患者層を拡大することができる。
本発明は、立ち上がり、立位保持、階段昇降の補助にも使用できる。
本発明は、多発梗塞による屈曲性対麻痺、脊髄損傷による対麻痺に対しても使用できる。この場合は両下肢に2つの本発明装具を装着し、2つの本発明装具が牽引できるようにする。2つの本発明装具の補助者前腕牽引部10をバンドでつないで、1名の補助者がこのつないだ部分を肩から頚部にかけて牽引する方法が考えられる。または、補助者2名でもよい。
本発明は、脳卒中片麻痺患者を主対象としているが、頭部外傷、神経系感染症、神経系自己免疫疾患、神経変性疾患、下肢外傷、廃用症候群、脳性麻痺の患者にも使用できる。
本発明は、脳卒中患者の歩行訓練、体力に関する概念を様変わりさせる可能性がある。脳卒中患者のための装具、コンピューター制御のリハビリテーション補助機器についても新たな方向性を示している。
本発明を実施するための形態を装着した様子を患者の前方から見た斜視図 本発明による歩行補助の力学的機序を説明した図 本発明を実施するための形態における、脳卒中患者1症例の歩行時の片側下肢荷重の垂直成分を示す図 本発明を実施するための形態における、脳卒中患者5症例の10m歩行時の総ステップ数とこれにかかった時間を示す図 本発明を実施するための形態における、脳卒中患者1症例の6分間歩行時の酸素消費量の記録を示す図 本発明を実施するための形態における、脳卒中患者5症例の6分間歩行時の歩行距離を示す図 本発明を実施するための形態における、患者、補助者の体格にあわせるため等の装具各部分の連結を示す図 本発明を実施するための形態の第2例を示す図 従来の脳卒中患者の歩行訓練装具の第1例 従来の脳卒中患者の歩行訓練装具の第2例 従来の脳卒中患者の歩行訓練装具の第3例 従来の脳卒中患者の歩行訓練装具の第4例
符号の説明
1 歩行訓練装具
2 下腿対面部
3 膝蓋骨対面部
4 大腿周回部
5 殿部対面部
6 補助者前腕牽引部
7 下腿前面部
8 カフバンド
9 振り出し補助バンド
10 体幹バンド
11 補助者前腕牽引部6を上に牽引する力
12 膝蓋骨対面部3を上方向へ引く力
13 膝蓋部対面部3を下方向に引く力
14 膝関節伸展補助の力
15 殿部対面部5を上方向へ引く力
16 殿部対面部5を下方向に引く力
17 股関節伸展補助の力
18 振り出し補助バンド9を前方へ引く力
19 患者の障害側方向に引く力
20 患者の障害側方向に引く力
21 振り出し補助バンド9を必要ない場合には取り外し可能にするための連結
22 振り出し補助バンド9の長さを患者と補助者の体格のあわせて調整するための連結
23 大腿周回部4を患者の大腿部長、周径にあわせるための連結
24 補助者前腕牽引部6の位置を患者と補助者の体格に合わせるための連結
25 体幹バンド10の位置、周径を患者と補助者の体格に合わせるための連結
50 トレッドミル装置
51 立脚支持補助のためのアクチュエーター
52 振り出し補助のためのアクチュエーター
53 振り出しの方向を調整するための横木
54 重心移動制御補助のためのアクチュエーター
55 歩行周期にあわせてトレッドミルと各アクチュエーターを調整する制御装置
60 破線で示した患者
61 破線で示した補助者の上肢
62 上肢を省略した患者の身体
101 トレッドミル
102 患者を吊り上げて体重を免荷する免荷装置
103 アーム
104 長さ調節可能な患者吊り上げ手段
105 免荷した体重を検出する体重検出手段
106 免荷する値を設定する免荷値設定器
201 患者
202 生体情報計測手段
203 足関節駆動部
204 力センサ
205 下肢駆動部
206 角度センサ
207 歩行訓練装置
208 訓練結果評価部
209 訓練データ記憶部
210 訓練軌道生成部
301 装着部
302 足部
303 連結部

Claims (3)

  1. 足関節の上から膝の下まで延び下腿前面を覆う下腿前面部とこの下腿前面部を下腿に固定する固定部からなる下腿対面部と、下腿対面部の上に連結して膝蓋骨前面を覆う膝蓋骨対面部と、膝蓋骨対面部の上に連結して大腿下部前面から起始し内外側二手に分かれ上行して後方に回り込み大腿後面上部で横に連結する大腿周回部と、大腿周回部の上に連結して広く後方から殿部を覆う殿部対面部と、殿部対面部の上に連結し殿部対面部を上に牽引することで膝関節と股関節伸展を補助する機構を有する牽引部とを持ち、該牽引部の牽引によって下肢立脚支持を補助する歩行訓練装具。
  2. 前記下腿対面部の内側と外側の両方から起始して前方へ延びる2本のバンドであって、そのことで障害側の振り出し時に股関節が内旋しやすい場合は内側のバンドをより強く引き、障害側の振り出し時に股関節が外旋しやすい場合は外側のバンドをより強く引くことで、障害側股関節を内外旋中間位に保った状態での下肢振り出し補助をする振り出し補助装置を持った、請求項1に記載の歩行訓練装具。
  3. 体幹に巻かれたバンドであって、左右に引かれることで歩行周期全般にわたり、歩行周期に合わせて支持脚側側方への重心移動制御の補助をするバランス補助装置を持った、請求項1または請求項2に記載の歩行訓練装具。
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