JP2009183548A - リン酸カルシウム組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に液剤を加えてから硬化するまでの時間、すなわち硬化時間が適切な範囲内にあり、しかも辺縁封鎖性の良好なリン酸カルシウム組成物を提供する。
【解決手段】リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物であって、無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むことを特徴とするリン酸カルシウム組成物である。
【選択図】図1

Description

本発明は、リン酸カルシウム組成物に関する。特に医療用材料に適したリン酸カルシウム組成物及びその製造方法に関する。
リン酸カルシウム組成物を焼結して得られるヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))は、骨や歯などの無機成分に近い組成を有し、骨と直接結合する性質である生体活性を有していることから、骨欠損部や骨空隙部の修復用材料としての利用が報告されている。しかし、このようなヒドロキシアパタイトからなる材料は、生体親和性は優れているが、複雑な形態を有する部位に応用するには、成形性という点で困難な場合があった。
一方、リン酸カルシウム組成物の中でもセメントタイプ、即ち硬化性を有するリン酸カルシウム組成物は、生体内や口腔内において生体吸収性のヒドロキシアパタイトへ徐々に転化し、さらに形態を保ったままで生体硬組織と一体化し得ることが知られている。このようなリン酸カルシウム組成物は、生体親和性が優れているだけではなく、成形性を有することから複雑な形態を有する部位への応用が容易であるとされている。
例えば、特開2007−190226号公報(特許文献1)には、平均粒径が5〜30μmのリン酸四カルシウム粒子及び平均粒径が0.1〜5μmのリン酸水素カルシウム粒子からなるリン酸カルシウム組成物であって、リン酸四カルシウム粒子が1.5μm以下の粒径の粒子を2〜20重量%含有することを特徴とするリン酸カルシウム組成物について記載されている。これによれば、硬化時間が適切な範囲内にあり、封鎖性の良好なリン酸カルシウム組成物が提供できるとされている。しかしながら、所望の部位に充填されたリン酸カルシウム組成物ペーストの封鎖性が必ずしも良好ではなく改善が求められていた。
また、特開2007−191318号公報(特許文献2)には、リン酸カルシウム粒子、及びリン酸カルシウム粒子以外の無機粒子からなるリン酸カルシウム粉体であって、リン酸カルシウム粒子の平均粒径が0.1〜25μmであり、無機粒子の平均粒径が0.002〜0.5μmであり、かつリン酸カルシウム粒子100重量部に対して無機粒子を0.1〜10重量部含有することを特徴とするリン酸カルシウム粉体について記載されている。これによれば、流動性が高く、かつ硬化物の機械的強度が低下することのないリン酸カルシウム粉体が提供できるとされている。しかしながら、このようにして得られたリン酸カルシウム粉体の封鎖性については記載されておらず、封鎖性の良好なものが求められていた。
また、WO2007/083601号(特許文献3)には、リン酸四カルシウム粒子、リン酸水素カルシウム粒子、及び、シリカ粒子又はチタニア粒子から選択される少なくとも1種の無機粒子からなるリン酸カルシウム組成物について記載されている。該リン酸カルシウム組成物は、骨修復用材料などとして用いた場合に、生成骨の機械的強度が高く、しかも骨置換率が高いとされている。しかしながら、このようにして得られたリン酸カルシウム組成物の封鎖性については記載されておらず、封鎖性の良好なものが求められていた。
特開2007−190226号公報 特開2007−191318号公報 WO2007/083601号
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に液剤を加えてから硬化するまでの時間、すなわち硬化時間が適切な範囲内にあり、しかも辺縁封鎖性の良好なリン酸カルシウム組成物を提供することを目的とするものである。また、そのようなリン酸カルシウム組成物の製造方法及び用途を提供することを目的とするものである。
上記課題は、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物であって、無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むことを特徴とするリン酸カルシウム組成物を提供することによって解決される。
このとき、無機粒子(D)がシリカ又は金属酸化物の粒子であることが好適であり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無水リン酸一水素カルシウム粒子であることが好適であり、酸性リン酸カルシウム複合体粒子の平均粒径が0.1〜7μmであることが好適であり、リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40であることが好適である。また、リン酸カルシウム組成物が粉体であることも好適な実施態様である。
更に上記課題は、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含む粉体と水を主成分とする液体とからなる医療用キットであって、無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むことを特徴とする医療用キットを提供することによっても解決される。
また、上記課題は、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物の製造方法であって、無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)とメカノケミカル的に複合化されてからリン酸四カルシウム粒子(A1)と混合されることを特徴とするリン酸カルシウム組成物の製造方法を提供することによって解決される。
このとき、前記複合化の際にジェットミル、ライカイ機、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハイブリダイザー、メカノフュージョン又は混練押出し機から選択される少なくとも1種を用いることが好適であり、中でも振動ボールミルを用いることが好適な実施態様である。
また、上記課題は、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法であって、無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むリン酸カルシウム組成物の粉体に、水を主成分とする液体を加えて混練することを特徴とするリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法を提供することによっても解決される。
上記リン酸カルシウム組成物の好適な実施態様は医療用組成物であり、特に骨セメントや歯科用充填材として好適である。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に液剤を加えてから硬化するまでの時間、すなわち硬化時間が適切な範囲内にあり、辺縁封鎖性が良好である。したがって、医療用材料に適しており、特に骨セメントや歯科用充填材に適している。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むものである。
リン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)を含むリン酸カルシウム組成物は、水の存在下で混練すると熱力学的に安定なヒドロキシアパタイトを生成して硬化する。このとき、リン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)に加えて、更に(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むことにより、リン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の封鎖性が著しく向上することが明らかになった。この理由については必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムが推定される。
本発明のリン酸カルシウム組成物を調製するに際して、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)と無機粒子(D)とをメカノケミカル的に粉砕して複合化することにより、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の表面が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子が得られる。例えば、無機粒子(D)としてシリカ粒子を用いた場合には、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の表面がシリカ粒子で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子が得られる。次いで、この酸性リン酸カルシウム複合体粒子とリン酸四カルシウム粒子(A1)とを混合することにより本発明のリン酸カルシウム組成物が得られることとなる。酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むリン酸カルシウム組成物と水を主成分とする液体とを混合してリン酸カルシウム組成物ペーストを調製する場合、リン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が溶解するとともに、酸性リン酸カルシウム複合体粒子表面に存在する無機粒子(D)の極性基を基点として効率的にヒドロキシアパタイトが生成するようである。例えば、無機粒子(D)としてシリカ粒子を用いた場合には、シリカ粒子のシラノール基を基点として効率的にヒドロキシアパタイトが生成するようである。特に、本発明のようにボールミル等を用いてメカノケミカル的に粉砕する処理を行うことにより、無機粒子(D)の極性基が増加すると考えられ、効率的にヒドロキシアパタイトが生成するようである。このとき、所望の部位に充填されたリン酸カルシウム組成物の硬化する際に形成される孔をヒドロキシアパタイトが塞ぐことで辺縁封鎖性が向上すると考えられる。また、リン酸四カルシウム粒子(A1)と比べて酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の平均粒径が小さいのでリン酸四カルシウム粒子(A1)の間隙に効率良くパッキングされると考えられ、このことからも辺縁封鎖性が向上すると考えられる。
本発明で使用されるリン酸四カルシウム[Ca(POO]粒子(A1)の製造方法は特に限定されない。市販されているリン酸四カルシウム粒子をそのまま用いてもよいし、適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。粉砕方法としては、後に説明する酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の粉砕方法と同様の方法が採用できる。
リン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径は5〜30μmであることが好ましい。平均粒径が5μm未満の場合は、リン酸四カルシウム粒子(A1)の溶解が過度になることにより水溶液中のpHが高くなりヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなることで、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。平均粒径は、より好適には10μm以上である。一方、平均粒径が30μmを超える場合は、液剤との混合により得られるペーストが十分な粘性を示さない、あるいはざらつき感が大きくなるなどペースト性状が好ましくないおそれがある。また、歯科用の根管充填材などとして使用する場合、狭い移植箇所へシリンジを用いて注入する際にノズルの先端が詰まるおそれもある。平均粒径は、より好適には25μm以下である。ここで、本発明で使用するリン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
本発明で使用される酸性リン酸カルシウム粒子(A2)は、無水物である無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、無水リン酸二水素カルシウム[Ca(HPO]粒子、酸性ピロリン酸カルシウム[CaH]であっても、水和物であるリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子やリン酸二水素カルシウム1水和物[Ca(HPO・HO]粒子であっても良いが、好適には無水物が使用され、中でも無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子がより好適に使用される。なお、本発明では、リン酸根のモル数を酸性リン酸カルシウム粒子(A2)のモル数とした。酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の平均粒径は0.1〜5μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがあり、より好適には0.5μm以上である。一方、平均粒径が5μmを超える場合は、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が液剤へ溶解しにくくなるため、リン酸四カルシウム粒子(A1)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなることでヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。平均粒径は、より好適には2μm以下である。酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の平均粒径は、上記リン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径と同様にして算出される。
このような平均粒径を有する酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の製造方法は特に限定されず、市販品を入手できるのであればそれを使用してもよいが、市販品を更に粉砕することが好ましい場合が多い。その場合、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、酸性リン酸カルシウム原料粉体をアルコールなどの液体の媒体と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥させることにより酸性リン酸カルシウム粒子(A2)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。
以上説明したように、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の平均粒径に比べてリン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径を大きくすることによって、両者の溶解度のバランスをとり、水溶液のpHを中性付近に維持することで、ヒドロキシアパタイト結晶の生成を円滑とすることが可能であり、硬化物の機械的強度を向上させることができる。具体的には、(A1)の平均粒径を(A2)の平均粒径の2倍以上とすることがより好ましく、4倍以上とすることがさらに好ましく、7倍以上とすることが特に好ましい。一方、(A1)の平均粒径を(A2)の平均粒径の35倍以下とすることがより好ましく、30倍以下とすることが更に好ましく、25倍以下とすることが特に好ましい。
リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)は、特に限定されないが、モル比で40/60〜60/40の範囲となるような配合割合で使用されることが好ましい。これによって、硬化物の機械的強度が高いリン酸カルシウム組成物を得ることができる。上記配合割合(A1/A2)は、より好適には45/55〜55/45であり、実質的に50/50であることが最適である。
本発明で使用される無機粒子(D)の種類は特に限定されず、シリカ又は金属酸化物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。金属酸化物の具体例としては、チタニア、アルミナ、ジルコニア、酸化セリウム(セリア)、酸化ハフニウム(ハフニア)、酸化イットリウム(イットリア)、酸化ベリリウム(ベリリア)、酸化ニオビウム(ニオビア)、酸化ランタン、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化イッテリビウム、酸化サマリウム、酸化ユーロピウム、酸化プラセオジウム、酸化マグネシウム、酸化ネオジウムなどを挙げることができる。中でも、金属酸化物としては、チタニア、ジルコニア又はアルミナが好ましく用いられる。本発明で使用される無機粒子(D)は、シリカ、チタニア、ジルコニア又はアルミナから選択される少なくとも1種がより好ましく、シリカ、チタニア又はジルコニアから選択される少なくとも1種が更に好ましく、シリカであることが特に好ましい。
本発明で使用される無機粒子(D)の平均粒径は、0.002〜2μmである。平均粒径が0.002μm未満の場合、リン酸カルシウム組成物の粘度が高くなり取り扱い性が悪化するおそれがあり、0.003μm以上であることが好ましく、0.005μm以上であることがより好ましい。一方、平均粒径が2μmを超える場合、リン酸カルシウム組成物ペーストの硬化時間が長くなるとともに、辺縁封鎖性も悪くなるおそれがあり、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることが更に好ましい。無機粒子(D)の平均粒径は、エポキシ樹脂中に分散させた一次粒子を透過型電子顕微鏡を用いて観察することによって算出される。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含有する。無機粒子(D)の含有量が1重量部未満の場合、封鎖性が低下するおそれがあり、2重量部以上であることが好ましく、5重量部以上であることがより好ましい。一方、無機粒子(D)の含有量が30重量部を超える場合、硬化時間が長くなるとともに封鎖性が低下するおそれがあり、20重量部以下であることが好ましく、15重量部以下であることがより好ましい。
本発明のリン酸カルシウム組成物を調製するに際して、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)と無機粒子(D)とをメカノケミカル的に複合化することにより、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子が得られる。ここで、酸性リン酸カルシウム複合体粒子とは、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の表面が無機粒子(D)でほぼ均一に被覆された複合体粒子のことをいう。すなわち、酸性リン酸カルシウム複合体粒子表面における無機粒子(D)の存在割合がほぼ同程度となるように酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の表面が無機粒子(D)でほぼ均一に被覆された複合体粒子のことをいう。後述の無機粒子(D)としてシリカ粒子を用いた実施例におけるエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分析の結果では、酸性リン酸カルシウム複合体粒子表面の任意の場所におけるSi元素の存在割合は、場所に関わらずほぼ同等であった。なお、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)として無水リン酸一水素カルシウム粒子、無水リン酸二水素カルシウム粒子、リン酸一水素カルシウム2水和物粒子、リン酸二水素カルシウム1水和物粒子、酸性ピロリン酸カルシウム粒子を用いた場合は、それぞれ無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子、無水リン酸二水素カルシウム複合体粒子、リン酸一水素カルシウム2水和物複合体粒子、リン酸二水素カルシウム1水和物複合体粒子、酸性ピロリン酸カルシウム複合体粒子が得られる。
本発明で使用される酸性リン酸カルシウム複合体粒子の平均粒径は0.1〜7μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがあり、0.5μm以上であることがより好ましい。一方、平均粒径が7μmを超える場合、表面積の減少並びに無機粒子(D)が厚く被覆されることにより、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が液剤へ溶解しにくくなるおそれがある。また、リン酸四カルシウム粒子(A1)の溶解が過度となり、硬化反応系のpHが高くなることでヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがあり、3μm以下であることがより好ましい。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むが、これに加えて更にスルホン酸塩(B)を含むことが好適な実施態様である。このようにスルホン酸塩(B)を含むことにより、リン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の封鎖性が著しく向上することが明らかになった。この理由については必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムが推定される。
すなわち、スルホン酸塩(B)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際に、スルホン酸塩(B)が界面活性剤として機能することでリン酸カルシウム組成物粒子の分散性が良好となり、効率良くパッキングされると考えられ、このことにより辺縁封鎖性が向上すると考えられる。また、原因については必ずしも明らかではないが、スルホン酸塩(B)が存在することにより、リン酸カルシウム組成物粒子間にヒドロキシアパタイトが効率的に生成し、所望の部位に充填されたリン酸カルシウム組成物の硬化する際に形成される孔をヒドロキシアパタイトが塞ぐことで辺縁封鎖性が向上すると考えられる。実際にスルホン酸塩(B)の添加により、リン酸カルシウム組成物の硬化物において生じた孔が小さくなる傾向が観察されており、スルホン酸塩(B)がヒドロキシアパタイトの析出形態や大きさに影響を与えているとも考えられる。
本発明で用いられるスルホン酸塩(B)としては特に限定されず、置換基を有してもよい炭素数1〜25の炭化水素基を有するスルホン酸塩、又はポリスルホン酸塩から選択される少なくとも1種を好適に用いることができる。中でもリン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の辺縁封鎖性が良好となる観点からポリスルホン酸塩がより好適に用いられる。また、本発明において、スルホン酸塩(B)のカチオン種としては特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられるが、ナトリウム又はカリウムが好適に用いられる。
置換基を有してもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基等を有するスルホン酸塩が挙げられる。
ここで、本発明において、置換基を有してもよいアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
本発明において、置換基を有してもよいアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
本発明において、置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
本発明において、置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基、シクロウンデカニル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
本発明で用いられる置換基を有してもよい炭素数1〜25の炭化水素基を有するスルホン酸塩の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、イソプロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、イソブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、オクタデカンスルホン酸、エイコサンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、へキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、タウリン等の塩が挙げられる。
また、本発明で用いられるスルホン酸塩(B)は、スルホ基を複数有するものであることが好ましく、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、テトラフルオロベンゼンジスルホン酸、ヘキサフルオロプロパンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフトールジスルホン酸等の塩が挙げられる。
上記スルホ基を複数有するものの中でもスルホン酸塩(B)がポリスルホン酸塩であることがより好ましい。ここで、ポリスルホン酸塩とはスルホン酸塩単量体が重合されたものあるいは重合体に対してスルホン化反応によりスルホ基を導入したものを表す。本発明で用いられるポリスルホン酸塩としては特に限定されず、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリナフチルメタンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸塩等が挙げられる。中でもポリスチレンスルホン酸塩及び/又はポリビニルスルホン酸塩が好適に用いられ、リン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の辺縁封鎖性が良好となる観点から、ポリスチレンスルホン酸塩及びポリビニルスルホン酸塩の両方がより好適に用いられる。
本発明で用いられるポリスルホン酸塩の分子量としては、分子量100未満のオリゴマーから架橋高分子まで任意の分子量のポリスルホン酸塩を用いることができる。中でも、分子量が1000〜1000万Da(ダルトン)であることが好ましい。分子量が1000Da未満の場合、リン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度の向上や硬化時間の短縮の効果が期待できないおそれがあるとともに、封鎖性が低下するおそれがあり、5000Da以上であることがより好ましく、1万Da以上であることが更に好ましい。一方、分子量が1000万Daを超える場合、リン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の粘度が高くなり、混練することが困難となるおそれがあり、800万Da以下であることがより好ましく、600万Da以下であることが更に好ましい。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の合計100重量部に対してスルホン酸塩(B)を0.5〜20重量部含むことが好ましい。スルホン酸塩(B)の含有量が0.5重量部未満の場合、封鎖性が低下するおそれがあり、2重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることが更に好ましい。一方、スルホン酸塩(B)の含有量が20重量部を超える場合、硬化時間が長くなるとともに封鎖性及び圧縮強度が低下するだけでなくリン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の粘度が高くなり、混練することが困難となるおそれがあり、18重量部以下であることがより好ましく、15重量部以下であることが更に好ましい。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、更にリン酸のアルカリ金属塩(C)を含むことが好ましい。このことにより、硬化時間を更に短くすることができるため操作性が向上するとともに、封鎖性を向上させることができる。用いられるリン酸のアルカリ金属塩(C)としては特に限定されないが、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一リチウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が用いられる。中でも、安全性、並びに高純度原料の入手の容易さの観点から、リン酸のアルカリ金属塩(C)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであることが好ましい。ここで、本発明のリン酸カルシウム組成物がスルホン酸塩(B)とリン酸のアルカリ金属塩(C)とを含むことにより硬化時間を更に短くすることができるため操作性が向上するとともに、封鎖性を向上させることができるため好ましい。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でリン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、スルホン酸塩(B)、リン酸のアルカリ金属塩(C)及びシリカ又は金属酸化物から選択される少なくとも1種の無機粒子(D)以外の成分を含有しても構わない。例えば必要に応じて増粘剤を配合することができる。これはリン酸カルシウム組成物ペーストの成形性又は均一な充填性を向上させるためである。増粘剤としては例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリアスパラギン酸塩、セルロース以外のデンプン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、キチン、キトサン等の多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステル、またコラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体などのタンパク質類等の高分子などから選択される1つ又は2つ以上が挙げられるが、水への溶解性及び粘性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、キトサン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩から選択される少なくとも1つが好ましい。増粘剤は、リン酸カルシウム粉体に配合したり、液剤に配合したり、又は混練中のペーストに配合することができる。
必要に応じてX線造影剤を含んでも良い。これはリン酸カルシウム組成物ペーストの充填操作のモニタリングや充填後の変化を追跡することができるからである。X線造影剤としては、例えば、硫酸バリウム、次硝酸ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、フッ化イッテルビウム、ヨードホルム、バリウムアパタイト、チタン酸バリウム等から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。X線造影剤は、リン酸カルシウム粉体に配合したり、液剤に配合したり、又は混練中のペーストに配合することができる。
また、薬理学的に許容できるあらゆる薬剤等を配合することができ、消毒剤、抗癌剤、抗生物質、抗菌剤、アクトシン、PEG1などの血行改善薬、bFGF、PDGF、BMPなどの増殖因子、骨芽細胞、象牙芽細胞、未分化な骨髄由来幹細胞など硬組織形成を促進させる細胞などを配合することができる。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むものであるが、本発明のリン酸カルシウム組成物が粉体であることが好ましい。このとき、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)と無機粒子(D)とを粉体の状態でメカノケミカル的に複合化し、次いでリン酸四カルシウム粒子(A1)と粉体の状態で混合することによってリン酸カルシウム組成物が製造される。
以下、リン酸カルシウム組成物の製造方法について説明する。本発明のリン酸カルシウム組成物は、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)を無機粒子(D)とメカノケミカル的に複合化してからリン酸四カルシウム粒子(A1)と混合することにより得られる。このとき、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)と無機粒子(D)とをメカノケミカル的に複合化することにより、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の表面が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子が得られる。このことにより、辺縁封鎖性の良好なリン酸カルシウム組成物が得られることとなる。
メカノケミカル的に複合化する方法については特に限定されず、ジェットミル、ライカイ機、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハイブリダイザー、メカノフュージョン又は混練押出し機から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、振動ボールミルを用いることがより好ましい。複合化に使用する具体的な装置については限定されないが、ハイブリダイザーとしては株式会社奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム、メカノフュージョンとしてはホソカワミクロン株式会社製の循環型メカノフュージョンシステムAMS、混練押出し機としては株式会社栗本鐵工所製のKEXエクストルーダーなどが例示される。
このようにして得られた酸性リン酸カルシウム複合体粒子をリン酸四カルシウム粒子(A1)と混合することにより、辺縁封鎖性の良好なリン酸カルシウム組成物が得られる。混合する方法としては特に限定されず、例えば、ジェットミル、ライカイ機、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、高速回転ミル、ハイブリダイザー、メカノフュージョン、混練押出し機などを使用することができ、好適にはライカイ機、ボールミル、遊星ミル、高速回転ミルが使用され、より好適には高速回転ミルが使用される。このとき、アルコールなど水を含まない液体の媒体を存在させて混合することも可能である。
本発明のリン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物であって、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むリン酸カルシウム組成物は、粉体組成物として販売され、医療現場で使用されることが好ましい。本発明のリン酸カルシウム組成物を医療現場で使用する際には、水を主成分とする液体、すなわち液剤と混練してリン酸カルシウム組成物ペーストとし、所望の部位に充填あるいは塗布して使用することができる。水を主成分とする液体は、純水であってもよいし、他の成分を含有する水溶液又は水分散液であってもよい。
水に対して配合される成分としては、リン酸のアルカリ金属塩(C)を含むことが好ましい。リン酸のアルカリ金属塩(C)としては前述のものを用いることができる。また、リン酸アンモニウム塩類、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸などのpH緩衝剤、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ化物塩、グリセリン、プロピレングリコールなどの水溶性多価アルコールなどを用いることもできる。
また、本発明のリン酸カルシウム組成物が、更にスルホン酸塩(B)を含む場合には、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物の粉体に、スルホン酸塩(B)を含む水溶液を混合することによってもリン酸カルシウム組成物ペーストが得られる。すなわち、スルホン酸塩(B)をリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の合計100重量部に対して0.5〜20重量部含む水溶液を、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含む粉体に加えて混練することによりリン酸カルシウム組成物ペーストが製造される。
また、スルホン酸塩(B)は、必ずしも水に均一に溶解している必要はなく、スルホン酸塩(B)が水中でミセルを形成していても良いし、水に不溶の小粒径エマルジョン又はスラリー状であっても良い。
リン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の、リン酸カルシウム組成物と液剤との質量比(リン酸カルシウム組成物/液剤)は特に限定されないが、好適には1〜6であり、より好適には3〜5である。リン酸カルシウム組成物と液剤とが均一に混じるように、十分に混練してから速やかに所望の部位に充填あるいは塗布する。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、上述したようにリン酸カルシウム組成物ペーストとして所望の部位に充填あるいは塗布して使用することができる。このとき、リン酸カルシウム組成物ペーストは、通常、医療現場で調製される。したがって、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含む粉体と水を主成分とする液体とからなる医療用キットであって、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むリン酸カルシウム組成物の粉体と水を主成分とする液体とからなる医療用キットであることが本発明の実施態様の一つである。また、本発明のリン酸カルシウム組成物が、更にスルホン酸塩(B)又はリン酸のアルカリ金属塩(C)を含む場合には、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含む粉体とスルホン酸塩(B)又はリン酸のアルカリ金属塩(C)を含む水溶液とからなる医療用キットであることも本発明の実施態様の一つである。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、医療用の各種用途に好適に使用される。例えば、接着又は固着用の骨セメントとして好適に使用される。本発明のリン酸カルシウム組成物を上記用途に使用した場合、ペーストの充填性に優れており、複雑な形態をした部位の隅々にまで充填することができ、歯牙、骨などの硬組織修復材に好適である。また、歯科用充填材として、切削根管など表面に象牙細管が存在する患部にリン酸カルシウム組成物を充填する際などには、孔の内部でヒドロキシアパタイト結晶が効率的に析出することにより封鎖性が良好であり、特に根管充填材や根管修復材として好ましく用いられる。また、ペースト自体が生体内又は口腔内で短期間のうちにヒドロキシアパタイトに転化し、生体硬組織との一体化が起こることから生体親和性に優れている。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。本実施例においてリン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)及び酸性リン酸カルシウム複合体粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて測定し、測定の結果から算出されるメディアン径を平均粒径とした。
実施例1
(1)リン酸カルシウム組成物の調製
本実験に使用するリン酸四カルシウム粒子(A1)は、以下の様にして調製した。市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(Product No. 1430, J.T.Baker Chemical Co.社製)及び炭酸カルシウム粒子(Product No. 1288, J.T.Baker Chemical Co.社製)を等モルとなる様に水中に加え、1時間撹拌した後、ろ過・乾燥することで得られたケーキ状の等モル混合物を焼成器(Model 51333, Lindberg, Watertown, WI)中で1500℃、24時間加熱し、その後デシケータ中で室温まで冷却することでTTCP(リン酸四カルシウム)塊を調製した。次に得られたTTCP塊を乳鉢で荒く砕き、その後篩がけを行うことで微粉ならびにTTCP塊を除き、0.5〜3mmの範囲に粒度を整え、粗リン酸四カルシウム粒子を得た。更に、本実施例で使用するリン酸四カルシウム粒子(A1)(平均粒径21.2μm)は、粗リン酸四カルシウム粒子100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で2時間30分粉砕を行うことで得た。
酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の一例として、本実験に使用する無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)(平均粒径1.1μm)は、市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(Product No. 1430, J.T.Baker Chemical Co.社製、平均粒径10.3μm)を50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)を120g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え120rpmの回転速度で24時間湿式粉砕を行うことで得られたスラリーをロータリーエバポレーターでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
次に得られた無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)200g、シリカ粒子(デグサ社製「AEROSIL 130」、平均粒径:0.016μm)20g、及び直径(10)mmのジルコニア製ボール2000gをアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type HD−B−104ポットミル」)に入れ、振動ボールミル(中央化工機商事株式会社製「NLM」)を用いて20時間乾式粉砕することによりシリカ粒子で被覆された無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子を得た。得られた無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子の平均粒径は1.2μmであった。ここで、得られた無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子を日立製作所製の電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM、「S−4200型」)を用いて観察し、図1の高倍率で測定したSEM写真で示されるように、球状粒子の表面に板状粒子がランダムに接合した無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子が観察された。上記球状粒子の測定点(+01)、板状粒子の測定点(平面:+02、側面:+03)について、堀場製作所製のエネルギー分散型X線分析装置(EDX、「EMAX−5770型」)を用いて元素分析を行った。得られたSEM/EDX半定量分析値の結果を表1にまとめて示す。
この無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子59.6gと上記リン酸四カルシウム粒子(A1)145.8gを高速回転ミル(アズワン株式会社製「SM−1」)を用いて混合することによりリン酸カルシウム組成物を得た。このとき、リン酸カルシウム組成物中のシリカの含有量は、無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)100重量部に対し10重量部であった。また、混合前と混合後でのリン酸四カルシウム粒子(A1)、無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)及びシリカ粒子の平均粒径は実質的に変化していない。
(2)硬化時間の測定
上記(1)で得たリン酸カルシウム組成物の硬化時間の測定をISO6876(Dental root canal sealing materials)に準じた方法で測定した。リン酸カルシウム組成物1gを精秤し、
これに対してNaHPO(リン酸水素二ナトリウム)3.2gを蒸留水100gに溶解した水溶液から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、0.8重量部を含有)を分取し、液剤として加えて混練することでリン酸カルシウム組成物ペーストを調製した(このときの混合重量比(粉/液)は4である)。このリン酸カルシウム組成物ペーストを、37℃、相対湿度98%に調整したキャビネット中において、ガラス板上に載せた内径10mm、高さ2mmの空洞を有するステンレス鋼製リング型に充填し、ペースト上部をスパチュラーを用いて平滑とした。次に、混練終了から180秒後より10秒毎に、重量が100gで直径が2mmの平らな末端部を有するインジケータを上記リン酸カルシウム組成物ペーストの垂直面へ垂直に静かに下げ、針先の痕が見えなくなるまでこの操作を繰り返し、混練より針先痕が見えなくなるまでの時間を測定した(n=5)。実施例1により得たリン酸カルシウム組成物の硬化時間は6分59秒±19秒であった。
(3)辺縁漏洩距離の測定
上記で得たリン酸カルシウム組成物1.0gを精秤し、これに対して上記(2)と同様に調製した液剤を0.25g加えて混練することでリン酸カルシウム組成物ペーストを調製し(このときの混合重量比(粉/液)は4である)、辺縁漏洩距離の測定に用いた。辺縁漏洩距離の測定はISO/TS11405(第2版、歯科材料−歯質への接着試験)の微小漏洩試験方法に準じて実施した。抜去した単根管の牛歯の歯根ならびに歯髄を除去した後、歯根部分を歯科用コンポジットレジン(クラレメディカル製「AP−X」)で塞いだ。次に、頬側面の中央を#80次いで#2000の研磨紙で研磨しエナメル質の平坦な面を作製した。このエナメル質の面に対して歯科用高速ハンドピースを用いて直径約3mm、深さ約2.5mmの窩洞を作製し、この窩洞中に上記ペーストを充填し、37℃、相対湿度98%の条件で4時間保存することで硬化させた。次に、この試料を37℃の蒸留水中で24時間保存した後にpH7.2に調整した0.2%塩基性フクシン溶液中に浸漬し25℃で24時間保存した。次に、Water−Cooled Diamond Blade(Buehler Ltd製「Isomet」)を用いて窩洞の中央部を切断し、断面をマイクロスコープ(キーエンス製)を用いて拡大像を観察し、歯質と材料の界面において最も深く色素が浸入した距離を辺縁漏洩距離とした(n=5)。実施例1により得たリン酸カルシウム組成物の辺縁漏洩距離は0.37±0.23mmであった。得られた結果を表4にまとめて示す。
実施例2及び3
実施例1において、シリカ粒子(デグサ社製「AEROSIL 130」)の含有量を、それぞれ無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)100重量部に対し1.5重量部(実施例2)及び25重量部(実施例3)となるようにして無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子を調製した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。このとき、無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子の平均粒径は実施例2では約1.1μmであり、実施例3では約1.2μmであった。
実施例4〜6
実施例1において、振動ボールミルを用いる代わりに、それぞれ下記の粉砕装置を用いてシリカ粒子で被覆された無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子を調製した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。このとき、無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子の平均粒径は実施例4〜6のいずれも約1.2μmであった。
・実施例4:ボールミル(アズワン株式会社製「ANZ−51S」)
・実施例5:ライカイ機(アズワン株式会社製、自動乳鉢「ANM−150」)
・実施例6:ジェットミル(セイシン企業製、「Co−Jet α−mkII」)
実施例7
実施例1で得られた平均粒径1.1μmの無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)を用いる代わりに、市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(Product No. 1430, J.T.Baker Chemical Co.社製、平均粒径10.3μm)300g及びシリカ粒子(デグサ社製「AEROSIL 130」、平均粒径:0.016μm)30gを700mlの蒸留水に懸濁させて得られたスラリーを、アイメックス株式会社製のビーズミル(RMH−03、ビーズ;直径0.5mmのジルコニア製、1050g仕込み)を3000rpmの回転速度で運転させている中に流量35ml/minで1回通過させ、粉砕して複合化することによりシリカ粒子で被覆された無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子を得た。このとき、無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子の平均粒径は約1.0μmであった。次いで、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。
実施例8〜10
実施例1において、シリカ粒子(デグサ社製「AEROSIL 130」、平均粒径:0.016μm)を用いる代わりに、それぞれ下記の金属酸化物の粒子を用いて振動ボールミルで乾式粉砕することにより金属酸化物の粒子で被覆された無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子を調製した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。このとき、金属酸化物の粒子で被覆された無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子の平均粒径は実施例8〜10のいずれも約1.2μmであった。
・実施例8:チタニア粒子
(デグサ社製「Titanium Dioxide P25」、平均粒径0.021μm)
・実施例9:アルミナ粒子
(デグサ社製「Aluminum Oxide C」、平均粒径0.013μm)
・実施例10:ジルコニア粒子
(デグサ社製試作品、平均粒径0.030μm)
実施例11
実施例1で得られた平均粒径1.1μmの無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)を用いる代わりに、市販の無水リン酸二水素カルシウム粒子(和光純薬工業株式会社製)を振動ボールミルを用いて乾式粉砕することにより得られた平均粒径4.3μmの無水リン酸二水素カルシウム粒子(A2)を用いた以外は、実施例1と同様にして無水リン酸二水素カルシウム複合体粒子を調製した。このとき、無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子の平均粒径は約4.5μmであった。次いでリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。
実施例12
実施例1において、リン酸四カルシウム粒子(A1)と無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)のモル比(A1/A2)を0.7とした以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。
実施例13
実施例1において、NaHPO(リン酸水素二ナトリウム)3.2gを蒸留水100gに溶解した水溶液を液剤として用いる代わりに、PSS−1(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)水溶液(東ソー有機化学株式会社製「PS−100」、分子量約100万Da、固形分20%)を凍結乾燥して得たPSS−1粉末10g、PVSA(ポリビニルスルホン酸ナトリウム)水溶液(Polysciences,Inc.製、固形分25%)51.2g及びNaHPO(リン酸水素二ナトリウム)3.2gに対して蒸留水を加えて溶解し、全量を100gに調製した溶液から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、それぞれPSS−1を2.5重量部、PVSAを3.2重量部、NaHPOを0.8重量部それぞれ含有)を分取し、液剤として用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。
比較例1
実施例1において、シリカ粒子(デグサ社製「AEROSIL 130」)を添加せずに上記リン酸四カルシウム粒子(A1)145.8g及び無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)(平均粒径1.1μm)を54.2gを高速回転ミル(アズワン株式会社製「SM−1」)を用いて混合した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。
比較例2及び3
実施例1において、振動ボールミルを用いる代わりに、それぞれ下記の粉砕装置を用いて無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)及びシリカ粒子を20時間粉砕することにより、無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)及びシリカ粒子の混合物を得た。次いでリン酸四カルシウム粒子(A1)と高速回転ミル(アズワン株式会社製「SM−1」)を用いて混合した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。
・比較例2:回転羽粉砕機(高速回転ミル)(アズワン株式会社製「SM−1」)
・比較例3:回転揺動混合機(アズワン株式会社製、ロッキングミキサー)
ここで、比較例2で得られた無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)及びシリカ粒子の混合物を実施例1と同様にして日立製作所製の電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM、「S−4200型」)を用いて観察し、図2〜4のSEM写真で示されるように、大粒子(平均粒径:約1μm)及び小粒子(平均粒径:約10nm)が観察された。図2〜4の大粒子及び小粒子(A及びB)の測定点(+)について、堀場製作所製のエネルギー分散型X線分析装置(EDX、「EMAX−5770型」)を用いて元素分析を行った。C(炭素)を除外したSEM/EDX半定量分析値の結果を表2に、C(炭素)を含んだSEM/EDX半定量分析値の結果を表3にまとめて示す。
比較例4
実施例1において、シリカ粒子(デグサ社製「AEROSIL 130」)の代わりに粒径の異なるシリカ粒子(塩野義製薬株式会社製「カープレックス FPS−4」、平均粒径2.3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。このとき、無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子の平均粒径は約1.5μmであった。
比較例5及び6
実施例1において、シリカ粒子(デグサ社製「AEROSIL 130」)の含有量を、それぞれ0.5重量部(比較例5)及び35重量部(比較例6)とした以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を得て評価を行った。得られた結果を表4にまとめて示す。このとき、無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子の平均粒径は、比較例5では約1.1μmであり、比較例6では約1.3μmであった。
表1のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いた元素分析の結果からも分かるように、無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子表面の測定点(+01、+02及び+03)におけるSi元素の存在割合はほぼ同等であり、無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で均一に被覆されていることが分かった。
また、表4から分かるように、平均粒径が0.002〜2μmの無機粒子(D)を無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)100重量部に対して1〜30重量部含み、かつ無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子を含む実施例1〜13では、無機粒子(D)を加えなかった比較例1と比べて、辺縁漏洩距離が短いことから充填部位の封鎖性が良好である。このことにより、無機粒子(D)を一定量含むことによる効果は明らかである。
表2及び表3のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いた元素分析の結果からも分かるように、大粒子表面におけるSi元素の存在割合と比べて小粒子のSi元素の存在割合が高く、無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)表面のシリカ粒子の存在割合は不均一であった。このように、無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子がうまく形成されていなかった比較例2及び3では、無機粒子(D)を加えなかった比較例1と比べて硬化時間も長く、窩洞底まで色素が浸入してしまい辺縁封鎖性も悪かった。また、無機粒子(D)の平均粒径が0.005〜2μmの範囲内にない比較例4では、無機粒子(D)を加えなかった比較例1と比べて、硬化時間も長く、窩洞底まで色素が浸入してしまい辺縁封鎖性も悪かった。また、無機粒子(D)の含有量が1〜30重量部の範囲内にない比較例5及び6では、無機粒子(D)を加えなかった比較例1と比べて比較例5では辺縁漏洩距離が少しだけ改善されるに留まり、比較例6では窩洞底まで色素が浸入してしまい辺縁封鎖性が悪かった。
実施例1で得られた無水リン酸一水素カルシウム複合体粒子のSEM写真である。 比較例2で得られた無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)及びシリカ粒子の混合物における大粒子のSEM写真である。 比較例2で得られた無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)及びシリカ粒子の混合物における小粒子AのSEM写真である。 比較例2で得られた無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)及びシリカ粒子の混合物における小粒子BのSEM写真である。

Claims (13)

  1. リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物であって、
    無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むことを特徴とするリン酸カルシウム組成物。
  2. 無機粒子(D)がシリカ又は金属酸化物の粒子である請求項1記載のリン酸カルシウム組成物。
  3. 酸性リン酸カルシウム複合体粒子の平均粒径が0.1〜7μmである請求項1または2に記載のリン酸カルシウム組成物。
  4. リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40である請求項1〜3のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
  5. 粉体である請求項1〜4のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
  6. リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含む粉体と水を主成分とする液体とからなる医療用キットであって、
    無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むことを特徴とする医療用キット。
  7. リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物の製造方法であって、
    無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)とメカノケミカル的に複合化されてからリン酸四カルシウム粒子(A1)と混合されることを特徴とするリン酸カルシウム組成物の製造方法。
  8. 前記複合化の際にジェットミル、ライカイ機、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハイブリダイザー、メカノフュージョン又は混練押出し機から選択される少なくとも1種を用いる請求項7記載のリン酸カルシウム組成物の製造方法。
  9. 前記複合化の際に振動ボールミルを用いる請求項8記載のリン酸カルシウム組成物の製造方法。
  10. リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、及び(A1)、(A2)以外の無機粒子(D)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法であって、
    無機粒子(D)の平均粒径が0.002〜2μmであり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)100重量部に対して無機粒子(D)を1〜30重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無機粒子(D)で被覆された酸性リン酸カルシウム複合体粒子を含むリン酸カルシウム組成物の粉体に、水を主成分とする液体を加えて混練することを特徴とするリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法。
  11. 請求項1〜5のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる医療用組成物。
  12. 請求項1〜5のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる骨セメント。
  13. 請求項1〜5のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる歯科用充填材。
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