JP2009181841A - 燃料電池システムの生成水滞留判定方法と生成水滞留対応方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セルスタック2に燃料ガス・酸化剤ガス・循環水を供給する燃料ガス供給ライン10・酸化剤ガス供給ライン14・循環水ライン21を備え、セルスタック2から電力を取り出す出力電力ライン19に負荷20が接続されている。通常発電運転中に各セル1の電圧検出端子24に接続されたセル電圧監視モニタ25が設定値よりも電圧降下した異常セルを検出すると、セルスタック遮断リレー26が負荷20への電力供給を停止すると同時に、セルスタック2への燃料ガスの供給を停止し、酸化剤ガス加湿装置17を経由しない乾燥した酸化剤ガスを供給し、高温度の循環水を循環させる、滞留生成水除去モード運転を所定時間行ない、通常発電運転復帰後にセル電圧監視モニタ25が異常セルの電圧降下不検出時は、電圧降下の原因が生成水の滞留であると判断する。
【選択図】 図1
Description
この水素イオン(H+)は水の介在を得てイオン交換膜中をカソード側に移動し、電子(e−)はイオン交換膜が非導電体であるから外部の負荷を経由してカソード側の導電性多孔質体からなる電極に移動する。
セルのカソード側の酸化剤ガス流路には酸化剤ガス供給ラインを経て酸化剤ガスが供給されており、酸化剤ガス中の酸素(02)と、カソード側に移動してきた電子(e−)と水素イオン(H+)は、イオン交換膜上のカソード側触媒層において化学反応して水を生成する。
そして、セル内で化学反応を起こさなかった未反応ガスはそれぞれ燃料ガス排出ラインと酸化剤ガス排出ラインから連続して排出することができる。
したがって、このセルスタックを用いたコジェネレーションシステム(以下燃料電池コジェネシステムとする)は、この電子移動により外部に電気エネルギによる仕事をもたらし、同時に、化学反応による発熱を熱エネルギとして回収して利用するシステムである。
そして、カソード内に生成水が一旦滞留して、あるセルの酸化剤ガス流路を塞いでしまった場合、従来の生成水滞留トラブルを解決する手法として、一時的に酸化剤ガスの供給量を増加させることにより酸化剤ガス流路の内圧を上昇させて、滞留した生成水を押しだすことが行なわれる。
この方法によるときは、セルが複数積層されたセルスタックは、各セルのガス流路は並列に存在しているため、他のセルの酸化剤ガス流路を経由して酸化剤ガスが流れてしまい、滞留した生成水を押し出しによって排除しにくく、また、このときも発電は継続しているからセルスタック内には水が生成され続けるため、結局は生成した水の完全な排除ができずにセルの発電能力が回復できない事例も多く起きている。
イオン交換膜を導電性多孔質体からなる電極で挟んだ薄膜電極接合体の両側に、燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路が形成される導電性セパレータを配置した固体高分子電解質型燃料電池セル(以下セルとする)を設け、このセルを複数積層して固体高分子電解質型燃料電池セルスタック(以下セルスタックとする)を構成し、前記セルスタックの燃料ガス流路に水素リッチの燃料ガスを供給する燃料ガス供給ラインと、セルスタックの酸化剤ガス流路に酸素を含む酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給ラインと、燃料ガス及び酸化剤ガスを加湿するために燃料ガス供給ライン及び酸化剤ガス供給ラインにそれぞれ備え付けた燃料ガス加湿装置及び酸化剤ガス加湿装置と、セルスタック内で反応を起こさなかった未反応ガスをそれぞれ排出する燃料ガス排出ライン及び酸化剤ガス排出ラインとを有し、前記セルスタック内に配置した冷却水循環流路に循環水タンクから循環水を供給する循環水ラインと、その循環水ラインと冷却水循環流路に循環水を強制循環させるための循環水ライン上に設置した循環水ポンプとが設けられており、前記セルスタックから電力を取り出す出力電力ラインにはDC−ACインバータを含む負荷が接続され、セルスタックと負荷との間の出力電力ライン上にはセルスタック遮断リレーが配置された燃料電池システムであって、前記セルスタックを構成するセルの電圧検出端子にはセル電圧監視モニタが接続されており、そのセル電圧監視モニタが設定値よりも電圧降下する異常セルを検出すると、燃料電池システムは通常発電運転から、
(1)セルスタック遮断リレーを開放して負荷への電力供給を停止し、
(2)燃料ガス供給ラインへの燃料ガスの供給を停止し、
(3)酸化剤ガス供給ラインは酸化剤ガス加湿装置で加湿されていない酸化剤ガスを供給し、
(4)循環水ラインから前記セルスタックに高温度の循環水を循環させ、
る滞留生成水除去モード運転に切り替えし、その滞留生成水除去モード運転を所定時間行なった後で通常発電運転に復帰させ、復帰後の通常発電運転で前記セル電圧監視モニタは前記異常セルの電圧降下を監視しており、異常セルの電圧降下不検出時は、前回の電圧降下が生成水の滞留であると判断することを特徴とする。
また、セルスタック内で発生した熱量を回収する冷却水循環水路に供給する循環水を加熱する循環水ヒータを作動させて、セルスタック内に高温度の循環水を循環させ、セルスタック内を通常発電運転のように高温に維持している。
このように、滞留生成水除去モード運転では、燃料ガスの供給が停止して発電機能がなくなって生成水の増加はなく、セルの発電不良が生成水の滞留によるものであれば、酸化剤ガス流路を塞いでいる生成水は、高温の循環水によって加熱され、酸化剤ガス流路に送られる加湿されない乾燥した酸化剤ガスによって気化が促進され、水蒸気となった生成水を安全に酸化剤ガスとともにセルスタック外へ除去することが可能になった。
このため、従来から行なわれている発電を継続しながら酸化剤ガスの供給量を増やす方法よりも確実に、結果的には速やかに生成水の滞留を解消することができた。
そして、滞留生成水除去モード運転によって滞留生成水が排出された後であるから、先にセル電圧監視モニタによる異常となったセルの電圧検出時において、電圧異常を検出しなければ、電圧異常の原因が生成水滞留によるトラブルであったと判断できる。
このときは、セル電圧の異常降下の原因が生成水の滞留以外による故障によるものであると判定され、セルスタックを分解してその原因を突き止めることになるが、故障個所も見あたらず、結局、生成水滞留によるトラブルであると推定して再使用を開始することになる場合があった。
この対応を行なうことによって、前回の滞留生成水除去モード運転を開始することになった原因が生成水の滞留であれば、特別にセルスタック内が生成水の滞留し易い条件になっていない限り、電圧監視モニタはセルの電圧異常を検出することはなく、そのまま通常発電運転が継続できて、先の電圧異常の原因が生成水滞留によるトラブルであったものと判断できる。
上記のように、セル電圧監視モニタが異常セルの電圧降下を検出して、酸化剤ガスヘの加湿量の低減、セルスタック温度の上昇という滞留生成水除去モード運転を行なって、セルスタック内から滞留水を追い出してから、通常発電運転に復帰するときにおいて、滞留生成水除去モード運転を開始することになった原因が、酸化剤ガス流路内の生成水の滞留であればセル電圧値が正常の範囲内に戻り、セル電圧監視モニタが異常セルの電圧降下は検出されずにそのまま通常運転が継続できる。
また、セル電圧監視モニタが再びセルの電圧降下を検出した時でも、異常検出のセルが異なっておれば、先の異常セルの原因が酸化剤ガス流路における生成水滞留と判断できるから、新たに電圧異常を検出したセルを対象として、再び滞留生成水除去モード運転を所定時間行なった後で通常発電運転に復帰させており、新しく異常を発生したセルの電圧異常の原因が、セルの故障によるものか生成水の発生によるものかを判断することになる。
上記の実施例では、セル電圧の異常降下を電圧監視モニタが検知した時点で、セルスタック遮断リレーを開放しながら同時に燃料ガス供給バルブも遮断して、セルスタックへの水素ガスの供給を止めて発電を停止する動作を行なうから、
セル電圧監視モニタによって発見されたセルの異常の原因がイオン交換膜の破損によるものであった場合であっても、滞留生成水除去モード運転は迅速かつ安全に対処することが可能となっている。
そして、滞留生成水除去モード運転が終了して通常発電運転に復帰した時において、前述のようなイオン交換膜の破損による発電不能が原因であった場合には、次の電圧監視モニタの電圧検出時に同じセルの電圧降下を検出するから、トラブルの原因が生成水の滞留でないことが判断できる。
この発明では、復帰後の通常発電運転において、異常セルの電圧降下が検出できた時には前回の異常セルと比較して、同一セルのときには直ちに異常セルの電圧降下の原因が生成水の滞留によるものではなく装置故障が発生したものと判定でき、この時は、セルスタック遮断リレーを開放してDC−ACインバータを含むすべての負荷からセルスタックを切り離し、燃料ガス遮断バルブを閉じて直ちに燃料電池システムの発電運転を停止する。
このためイオン交換膜が破損したまま運用してセルスタック内部で水素と酸化剤ガスが混合した状況となって爆発を起こす危険性が直ちに回避でき、重大事故を未然に防止することが可能な安全性の高いシステムが完成できたものである。
6はこの薄膜電極接合体5を更にその両側から挟んで一体化するための導電性セパレータ、7は導電性セパレータ6の薄膜電極接合体5のアノード側に配される表面に形成した燃料ガス流路、8は導電性セパレータ6の薄膜電極接合体5のカソード側に配される表面に形成した酸化剤ガス流路である。
1は導電性セパレータ6とその導電性セパレータ6に挟まれた前記薄膜電極接合体5によって構成する固体高分子電解質型燃料電池の単位発電素子としてのセル(固体高分子電解質型燃料電池セル)であり、2枚の導電性セパレータ6で挟まれた前記薄膜電極接合体5は、前記燃料ガス流路7に燃料ガスである水素ガス、酸化剤ガス流路8に酸化剤ガスである空気を供給すると、イオン交換膜3上に付着している触媒層の働きによって反応が促進され、イオン交換膜3を挟む電極4の間に起電力が発生する。
このセルスタック2は前記導電性セパレータ6と前記薄膜電極接合体5とで構成するセル1が多数直列接続されて積層しているから、燃料電池として所定の電圧を得ることが可能となる。
このため、燃料ガス入口マニホールド7aに送られた燃料ガスは複数段設置された燃料ガス流路7に分岐して送られ、未反応の燃料ガスは燃料ガス出口マニホールド7bに纏められてセルスタック2の外に排出される。同様に、酸化剤ガス入口マニホールド8aに送られた酸化剤ガスは複数段設置された酸化剤ガス流路8に分岐して送られ、未反応の酸化剤ガスと水蒸気となった生成水は酸化剤ガス出口マニホールド8bに纏められてセルスタック2の外に排出される。
9aはセルスタック2内の前記冷却水循環流路9に連通してセルスタック2の温度を調節する水を循環させるために、前記導電性セパレータ6と薄膜電極接合体5とを貫通して形成した循環水入口マニホールド、9bは前記冷却水循環流路9に循環させた水を排出するための循環水出口マニホールドであり、この循環水入口マニホールド9aを配置する位置は、セルスタック2の周縁のほぼ中央付近で複数のセル1を貫通するように形成し、前記冷却水循環流路9の入口と出口との端が夫々連通している。
一方、セルスタック2のカソード側の酸化剤ガス流路8内では、この酸化剤ガス流路8に酸化剤ガスとして送られた空気中の酸素(O2)が、イオン交換膜3を透過した水素イオン(H+)と、カソード側に移動してきた電子(e−)との間で、イオン交換膜3上のカソード側触媒層において化学反応を起こして水を生成し、このとき外部の負荷を経由して電子(e−)が移動することによる起電力が生じ、この外部の負荷に電流が流れる。
この酸素(O2)と水素イオン(H+)と電子(e−)とによる化学反応は、水を生成するだけでなく発熱反応が起こり、この発熱反応による熱量は、前記セルスタック2内の冷却水循環経路9を通過する水によって外部に取り出している。
10はセルスタック2の燃料ガス入口マニホールド7aに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給ライン、11は燃料ガス出口マニホールド7bから反応後の残余の未反応燃料ガスを外部へ排出する燃料ガス排出ライン、12は前記燃料ガスを供給・停止するために前記燃料ガス供給ライン10に設置した燃料ガス遮断バルブ、13は燃料ガス遮断バルブ12と燃料ガス入口マニホールド7aとの間の前記燃料ガス供給ライン10に設置した燃料ガス加湿装置であり、前記燃料ガス中の水蒸気は燃料ガス加湿装置13によって加湿制御されることによって、常に所定量の湿り状態にある燃料ガスが前記セルスタック2に供給されるようになっている。
14はセルスタック2の酸化剤ガス入口マニホールド8aに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給ライン、15は酸化剤ガス出口マニホールド8bから反応後の残余の未反応酸化剤ガスを外部へ排出する酸化剤ガス排出ライン、16は酸化剤ガスを供給・停止するための前記酸化剤ガス供給ライン14に設置した酸化剤ガス遮断バルブ、17は酸化剤ガス遮断バルブ16と酸化剤ガス入口マニホールド8aとの間の前記燃料ガス供給ライン14に設置した酸化剤ガス加湿装置であり、前記酸化剤ガス中の水蒸気は酸化剤ガス加湿装置17によって加湿制御されることによって、常に所定量の湿り状態にある酸化剤ガスが前記セルスタック2に供給されるようになっている。
このため、セルスタック2内では燃料ガス中の水素ガス(H2)と酸化剤ガス中の酸素ガス(O2)とが反応して、水と反応熱と起電力とを発生し、この起電力を取り出して利用することができる。
そして、燃料ガス流路7内で未反応の燃料ガスは燃料ガス出口マニホールド7bから燃料ガス排出ライン11を経て排出され、一方、酸化剤ガス流路8の内の未反応の酸化剤ガスは、水蒸気になった生成された水と一緒に、酸化剤ガス出口マニホールド8bから酸化剤ガス排出ライン15を経て排出される。
このセルスタック2内における水素ガス(H2)と酸素ガス(O2)との反応は、固体高分子電解質型燃料電池において、高湿度の雰囲気において促進されるから、燃料ガス供給ライン10に燃料ガス加湿装置13、酸化剤ガス供給ライン14に酸化剤ガス加湿装置17を備え付け、この燃料ガス加湿装置13と酸化剤ガス加湿装置17によって、燃料ガスと酸化剤ガスを高湿度雰囲気として前記セルスタック2内に供給することは、発電出力を高める上で有効な手段となっている。
19は前記セルスタック2の出力端子18に接続する出力電力ライン、20は出力電力ライン19に接続される負荷であり、前記セルスタック2から前記出力端子18を使って取り出された発電出力は、前記出力電力ライン19を経由して負荷20に供給され適宜使用される。
その電力利用機器20bが家庭用の交流電源を用いる機器のときには、前記出力電力ライン19には直流電流が流れているから、DC−ACインバータ20aによって交流100V電源を作り出すことによって使用可能となる。
また、20cはDC−ACインバータ20aと家庭用の交流電源を用いる電力利用機器20bとの間に設けた接続切替器であり、その接続切替器20cを操作することで家庭用の交流電源を用いる電力利用機器20bは、前記セルスタック2からの直流電源の供給に代えて、電力会社の電力系統から電力の供給を受けることができる。
前記循環水タンク23には最初は低温度の水が貯えられており、前記循環水ポンプ22を作動すると、循環水タンク23内の水は循環水ライン21からセルスタック2の循環水入口マニホールド9aに送られ、前記セルスタック2内の冷却水循環流路9を通過する時に温水になって、前記循環水出口マニホールド9bから再び循環水ライン21を経由して循環水タンク23に戻される。このため、前記セルスタック2内における水素ガス(H2)と酸素ガス(O2)との反応によって発生した熱量は、循環水ライン21を流れる循環水の温度上昇によって排出できるから、セルスタック2は効率よく発電出力を取り出すことができるようになる。
また、セルスタック2のトラブルは薄膜電極接合体5が破壊しないときでも、生成水がセル1の酸化剤ガス流路8に滞留することで発生する発電不良のトラブルもある。このときも、セルスタック2の使用を中止し、分解して不良箇所を探すが見つからないときには、原因が生成水の滞留と判断して、生成水の除去だけを行なって使用を再開する。しかし、生成水が原因で修理を伴わないのであれば、セルスタック2を分解せずに対応できるほうが好ましい。
固体高分子電解質型燃料電池の構成を示す図2の実施例において、24はセルスタック2を構成するセル1の薄膜電極接合体5を挟んだ導電性セパレータ6から前記セルスタック2の外に向けて配置した電圧検出端子、25はその電圧検出端子24の間に接続したセル電圧監視モニタであり、このセル電圧監視モニタ25は各セル1ごとに配置して発電出力(起電力)を監視し、トラブルを発生させたセル1を特定することができる。
また、固体高分子電解質型燃料電池を機能させるための各部品の接続状態を示す図3の実施例において、26はセルスタック2の出力端子18に接続した出力電力ライン19のセルスタック2側に取り付けたセルスタック遮断リレーであり、このセルスタック遮断リレー26によって、DC−ACインバータ20aや電力利用機器20bなどからなる負荷20をセルスタック2から切り離すことができる。
20dは前記DC−ACインバータ20aと同様に負荷20の構成部品として機能する前記出力電力ライン19に流れている直流電流を溜め込む蓄電装置であって、前記セルスタック遮断リレー26の直後に配置されており、そのセルスタック遮断リレー26によって出力電力ライン19の直流電流が遮断されると、前記セルスタック2の出力端子18に代わり前記蓄電装置20dから前記DC−ACインバータ20aなどに直流電源が供給され、前記電力利用機器20bはそのまま作動を続けることができる。
29はセルスタック2の内部を冷却する循環水ライン21において、循環水を貯めておく循環水タンク23、もしくはセルスタック2への供給側の循環水ライン21に取り付けて循環水温度を高くするための循環水ヒータであり、この循環水ヒータ29に通電することによって、セルスタック2の内部を冷却する循環水を使って、全く逆の作用であるセルスタック2の内部を高温度にすることができる。
前記制御部30は内装したCPUの働きで、不揮発性メモリ33に記憶されたプログラムの手順にしたがって動作しており、このプログラムでは前記セル電圧監視モニタ25を常時監視しており、このセル電圧監視モニタ25が異常セルを検出すると、この異常の原因を追求するプログラムが作動するようになっている。
通常発電運転モード運転中において、前記制御部30はメインのプログラムの動作途中に図5に示すフローチャートを作動させており、その制御部30には前記セルスタック2を構成する複数のセル1の夫々に設置されたセル電圧監視モニタ25が接続されているから、前記制御部30はステップ1(S1)を作動させてセル電圧監視モニタ25の各セル1の出力を監視して、セル1の電圧異常を検出しないときは、メインのプログラムに戻る。
このステップ1(S1)で前記複数のセル電圧監視モニタ25の一つが異常な電圧降下を検知すると、制御部30は燃料電池システムを通常発電運転から、滞留生成水除去モード運転に変更する。
そして、ステップ2(S2)に進み、揮発性メモリ34に異常セルを特定する番号の書き込み有無の判断を行ない、もし異常セルの書き込みが無いときには、ステップ3(S3)で異常セルの位置を番号などで表して揮発性メモリ34に記憶する。
このとき、負荷20の構成部品として蓄電装置20dが備え付けられているときには、この蓄電装置20dにはセルスタック2から供給される電力の一部を常に充電しているから、セルスタック遮断リレー26が開放してセルスタック2からの電力供給が無くなれば、直ちに蓄電装置20dが作動してこの蓄電装置20dから出力電力ライン19に、引き続いて直流電流を流すことができる。このため、電力利用機器20bはある程度の時間は引き続いて使用を継続することができる。
また、負荷を構成するDC−ACインバータ20aと電力利用機器20bとの間に接続切替器20cが設置されていて、この接続切替器20cに家庭用交流電源が供給されているときには、セルスタック遮断リレー26が開放した時に連動して前記接続切替器20cを動作させ、家庭用交流電源がこの接続切替器20cを経由して負荷20の電力利用機器20bに供給できるようになる。このため、電力利用機器20bはセルスタック遮断リレー26が開放しても、引き続いて使用を継続することができる。
更に、ステップ7(S7)の動作は、今まで放熱動作を行なうための循環水を逆に加熱動作に切り替えるために、循環水を加熱して高温度にする循環水ヒータ29を作動させており、この動作によってセルスタック2内を循環する循環水の温度が上昇して、セルスタック2内の温度を通常発電運転が行なわれている時のような高温度が維持される。
上記のステップ4(S4)からステップ7(S7)の4つの動作が全て行なわれることによって滞留生成水除去モード運転が可能になるものであり、これらの動作は同時に行なわれることが自然であり、ステップ4(S4)からステップ7(S7)の順序で行なう必要性はなく、そのときの燃料電池システムに最適な順序が選択されるから、その順序が適宜変わることもある。
一方、セルスタック2の酸化剤ガス流路8に生成水が滞留しているときには、高温水の供給によって高温度が維持されているセルスタック2内では滞留している生成水が少しずつ気化しており、また、セルスタック2へ供給する酸化剤ガスは、酸化剤ガス加湿装置バイパスライン27を経由して、加湿されない乾燥したままの空気が送られているから、気化した生成水を水蒸気としてセルスタック2外に排出することができる。そして、滞留した生成水の量が減少して酸化剤ガス流路8に乾燥した空気の通過間隙ができれば、通過する乾燥した空気によって酸化剤ガス流路8に滞留している生成水は急速に乾燥して除去することができる。
所定時間が経過したときには通常運転復帰動作に復帰させるために、ステップ9(S9)で循環水ヒータ29の作動を停止して冷却水がセルスタック2に供給できるようにし、ステップ10(S10)で酸化剤ガス供給ライン14の酸化剤ガスバイパスバルブ28を戻して酸化剤ガス加湿装置17を作動できるようにして酸化剤ガスをセルスタック2に供給し、ステップ11(S11)で燃料ガス供給ライン10の燃料ガス遮断バルブ12を開いてセルスタック2に燃料ガスの供給を開始し、ステップ12(S12)でスタック遮断リレー26を切り替えて負荷20にセルスタック2からの発電出力の供給を開始する。そして、この一連の動作によって、固体高分子電解質型燃料電池は通常発電運転が開始するようになる。
なお、この通常運転復帰動作も先の滞留生成水除去モード運転の開始と同様に、ステップ9(S9)からステップ12(S12)の動作は殆ど同時に行なわれ、また、動作の入れ替えを行なっても、特に問題は発生しない。
上記のように、ステップ9(S9)からステップ12(S12)の動作によって滞留生成水除去モード運転を終了して、前記セルスタック2の運転状態が通常運転に復帰するから、ステップ13(S13)によってメインのプログラムに戻る。
そして、通常発電運転に復帰してからも、メインプログラムの途中で図5のフローチャートのステップ1(S1)の動作が繰り返されることによって、セル電圧監視モニタ25の出力が常に監視されており、その後、セル1の電圧の異常を検知しないときには、異常セルの原因が酸化剤ガス流路8に滞留した生成水であったと判断して、そのまま通常発電運転を継続することができる。
尚、通常発電運転に復帰してからも、メインプログラムの途中でセル電圧監視モニタ25の出力を監視して、異常セルの原因が酸化剤ガス流路8に滞留した生成水であったと断定するためには、セル1の電圧の異常を検知しない状態が所定時間継続する必要がある。
このため、メインプログラムの動作途中でセル電圧監視モニタ25の出力を監視するステップ1(S1)の動作を、電圧異常なしで経過したカウントを行ない、特定の数のカウントが完了したときに異常セルの原因が生成水の滞留と断定して、揮発性メモリ34に記憶した異常セルの番号をクリヤすることになる。
このときは、ステップ2(S2)に進み、揮発性メモリ34に既に異常セルの番号が書き込まれているかどうかの判断を行ない、もし既に異常セルの番号の書き込みがあるときには、ステップ14(S14)に進んで揮発性メモリ34に既に書き込まれている異常セルの番号と新たに見つかった異常セルの番号とが一致しているかどうかの判断を行なう。
そして、新たに見つかった異常セルの番号が記憶されている異常セルの番号と同じであったときには、異常な電圧降下の原因が生成水の滞留が原因ではなく構成部品の故障と判断して、ステップ15(S15)に進み、制御部30は固体高分子電解質型燃料電池の運転を停止し、必要に応じて使用者に警報を行なうと共に、この異常に対して始めてセルスタック2を分解して、故障の原因を突き止めることになる。
しかし、新たに検出された異常セルについては、異常状態を起こしている原因は不明であり、この原因を追求するために、前記ステップ3(S3)に移行して揮発性メモリ34に異常となったセルの番号を記憶する。その後は、ステップ4(S4)に進み、今までの通常発電運転を所定時間だけ滞留生成水除去モード運転に変更して、異常セルの原因が生成水の滞留かどうかの判断を行なっている。
また、セル1に軽微なトラブルが発生しているときには、ある程度の時間運転が経過してからセル電圧監視モニタ25が異常を検出するときがある。このようなときでも、酸化剤ガス流路8に生成水が滞留しない条件であれば、時間がかかるもののセル1の故障を見つけることができる。
しかし、生成水が滞留しやすい条件の時には、軽微なトラブルによる異常が検出される前に、他のセル1で生成水の滞留を原因とする異常が検出されるときがあり、前回の異常を検出した原因が軽微ではあるが修理を必要とするトラブルであっても、異常セルの番号が違うから、異常の原因が生成水の滞留によるものと判断され、そのまま通常発電運転が継続される恐れがある。
このため、異常セルが発生した原因はセル1の故障と判断されて、ステップ15(S15)に進んで、セルスタック2の運転が停止され、生成水の滞留が原因であるときでもセルスタック2を分解して故障箇所を探すことになる。
また、酸化剤ガスを低湿度に変更するステップ10a(S10a)や、燃料ガスを低湿度に変更するステップ11a(S11a)の動作を追加しており、このステップでは、燃料ガス供給ライン10における燃料ガス加湿装置13、酸化剤ガス供給ライン14における酸化剤ガス加湿装置17の加湿量を減少させる動作によって実現することができる。
このため、生成水の滞留を原因とする異常セルが検出できても、通常発電運転に復帰してからは生成水の発生が抑制されており、2回続けて同じセル1が異常セルとなったときには、生成水の滞留を原因とするものではなく、確実にセル1の故障であると判断できるようになった。
2 固体高分子電解質型燃料電池セルスタック(セルスタック)
3 イオン交換膜
4 電極
5 薄膜電極接合体
6 導電性セパレータ
7 燃料ガス流路(アノード側)
8 酸化剤ガス流路(カソード側)
9 冷却水循環流路
10 燃料ガス供給ライン
11 燃料ガス排出ライン
13 燃料ガス加湿装置
14 酸化剤ガス供給ライン
15 酸化剤ガス排出ライン
17 酸化剤ガス加湿装置
19 出力電力ライン
20 負荷
20a DC−ACインバータ
21 循環水ライン
22 循環水ポンプ
23 循環水タンク
25 セル電圧監視モニタ
26 セルスタック遮断リレー
27 酸化剤ガス加湿装置バイパスライン
28 酸化剤ガスバイパスバルブ
29 循環水ヒータ
Claims (3)
- イオン交換膜を導電性多孔質体からなる電極で挟んだ薄膜電極接合体の両側に、燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路が形成される導電性セパレータを配置した固体高分子電解質型燃料電池セル(以下セルとする)を設け、
このセルを複数積層して固体高分子電解質型燃料電池セルスタック(以下セルスタックとする)を構成し、
前記セルスタックの燃料ガス流路に水素リッチの燃料ガスを供給する燃料ガス供給ラインと、セルスタックの酸化剤ガス流路に酸素を含む酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給ラインと、燃料ガス及び酸化剤ガスを加湿するために燃料ガス供給ライン及び酸化剤ガス供給ラインにそれぞれ備え付けた燃料ガス加湿装置及び酸化剤ガス加湿装置と、セルスタック内で反応を起こさなかった未反応ガスをそれぞれ排出する燃料ガス排出ライン及び酸化剤ガス排出ラインとを有し、
前記セルスタック内に配置した冷却水循環流路に循環水タンクから循環水を供給する循環水ラインと、その循環水ラインと冷却水循環流路に循環水を強制循環させるための循環水ライン上に設置した循環水ポンプとが設けられており、
前記セルスタックから電力を取り出す出力電力ラインにはDC−ACインバータを含む負荷が接続され、セルスタックと負荷との間の出力電力ライン上にはセルスタック遮断リレーが配置された燃料電池システムであって、
前記セルスタックを構成するセルの電圧検出端子にはセル電圧監視モニタが接続されており、
そのセル電圧監視モニタが設定値よりも電圧降下する異常セルを検出すると、燃料電池システムは通常発電運転から、
(1)セルスタック遮断リレーを開放して負荷への電力供給を停止し、
(2)燃料ガス供給ラインへの燃料ガスの供給を停止し、
(3)酸化剤ガス供給ラインは酸化剤ガス加湿装置で加湿されていない酸化剤ガスを供給し、
(4)循環水ラインから前記セルスタックに高温度の循環水を循環させ、
る滞留生成水除去モード運転に切り替えし、
その滞留生成水除去モード運転を所定時間行なった後で通常発電運転に復帰させ、
復帰後の通常発電運転で前記セル電圧監視モニタは前記異常セルの電圧降下を監視しており、異常セルの電圧降下不検出時は、前回の電圧降下が生成水の滞留であると判断することを特徴とする燃料電池システムの生成水滞留判定方法。 - 前記滞留生成水除去モード運転から復帰した後の通常発電運転では、
前記燃料ガス供給ラインと酸化剤ガス供給ラインにおける、前記燃料ガス加湿装置及び前記酸化剤ガス加湿装置による加湿量を減少し、かつ、前記セルスタック内の冷却水循環流路へ循環する循環水の温度を上昇させて、前記セル電圧監視モニタは前記異常セルの電圧降下を監視することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムの生成水滞留判定方法。 - 請求項1又は2に記載の燃料電池システムの生成水滞留判定方法において、復帰後の通常発電運転で前記セル電圧監視モニタは、各セルの電圧降下を監視しており、
異常セル以外のセルの電圧降下検出時は、前記滞留生成水除去モード運転に切り替えて所定時間運転した後で通常発電運転に復帰して生成水滞留判定を行ない、
異常セルの電圧降下不検出時は通常発電運転を継続し、
異常セルの電圧降下検出時は以降の燃料電池システムの運用を停止することを特徴とする燃料電池システムの生成水滞留対応方法。
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